説明

半導体集積回路装置及びそれを用いた非接触型ICカード並びに携帯情報端末

アンテナを介して安定した送信を行なう半導体集積回路装置及びそれを用いた非接触型ICカード並びに携帯情報端末が提供される。半導体集積回路装置は、アンテナL1に接続されるアンテナ端子LA,LB、アンテナからアンテナ端子に与えられる交流信号を整流平滑して直流電圧を得る整流平滑回路B1並びに直流電圧を安定化するシャントレギュレータB6及びシリーズレギュレータB7とを有する電源回路B5と、電源回路から直流電圧を供給されて動作する内部回路B8とを具備する。リーダ・ライタへの送信時にシリーズレギュレータが動作し、シャントレギュレータが停止し、リーダ・ライタへの送信時以外は、シャントレギュレータが動作し、シリーズレギュレータが停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、半導体集積回路装置に適用して好適な電源回路技術に係り、特に電磁波を受信して電源を生成する半導体集積回路装置及びそれを用いた非接触型のICカード並びに携帯情報端末に関する。
【背景技術】
バッテリ等の電源を持たず、アンテナで受けた電磁波から電源を生成して動作する非接触型のICカードやICタグが交通や金融等の分野で盛んに使われるようになってきた。非接触型ICカードは、リーダ・ライタ(質問器)からの電磁波を変調して送られるデータを受信し、更に、受信している電磁波を変調してデータをリーダ・ライタ(質問器)に送信する(例えば、特開2001−274339号公報及び特開2000−348152号公報参照)。
【発明の開示】
図1に、リーダ・ライタから電磁波の形態で供給される電力を非接触型ICカードに備えられるアンテナで受信し、アンテナの両端子から出力される電流−電圧特性VLが示される。これは、アンテナ端子に接続される負荷に流れる電流に依存してアンテナの両端の電圧が変化し、出力抵抗Rをもった電圧源Vと等価であることを示している。このとき、上記電流−電圧特性の傾きが、上記出力抵抗Rとなる。
図2に、整流平滑回路B1とシリーズレギュレータB2と負荷変調回路B3が示される。整流平滑回路B1は、整流回路と平滑容量で構成され、アンテナ端子LA及びLBに入力される信号を整流及び平滑し、接続点N1とグランド端子の間に出力電圧Vを出力する。
シリーズレギュレータB2は、負荷が変動して電源電流が変化しても出力端子VDDの電圧が一定になるように接続点N1と出力端子VDDの間の電圧を変化させる。この場合、接続点N1と出力端子VDDの間を抵抗に置き換えると、抵抗値はそこを流れる電流と接続点N1と出力端子VDDの間の電圧とで定められる。即ち、シリーズレギュレータB2は、接続点N1と出力端子VDDに直列接続される等価的な抵抗を変化させることで、出力端子VDDに出力される電圧が所定の電圧になるように制御する回路と云い換えることができる。例えば、出力端子VDDが所定の電圧レベルを超えようとした場合、接続点N1と出力端子VDDに直列接続される等価的な抵抗の抵抗値が大きくなり、接続点N1と出力端子VDDの電位差が大きくなる。これより、出力電圧VDDが下がるように負帰還動作がなされ、出力端子VDDの電圧は所定の電圧に保たれる。
ICカードからリーダ・ライタへデータを送信するための負荷変調回路B3は、アンテナ端子LAとグランド端子の間に接続される。負荷変調回路B3は制御信号S1により、負荷変調回路B3をオンさせると出力電流I、を流し、負荷変調回路B3をオフさせると出力電流は流れなくなる。即ち、負荷変調回路B3は制御信号S1により、負荷変調回路B3に流れる電流I、に電流変化ΔIを発生させる。
図2において、負荷変調回路B3をオンした場合と、負荷変調回路B3をオフした場合のアンテナ端子LAに流れる電流Ia11の電流変化ΔIa111は式(1)のようになる。
ΔIa111=ΔI ・・・(1)
この電流変化がリーダ・ライタに戻る電磁波に変化を与え、これによってリーダ・ライタはデータを非接触型ICカードから受信する。
同様に、出力端子VDDに流れる電流Iにおいて、送信データとは無関係の電流変化ΔIが発生した場合、アンテナ端子に流れる電流変化ΔIa112は式(2)のようになる。
ΔIa112=ΔI ・・・(2)
このとき、電流変化ΔIa112が上記リーダ・ライタが受信するために必要な電流変化より大きくなった場合、リーダ・ライタはデータとして受信することになる。しかし、これは非接触型ICカードが送信するデータとは無関係であるため、リーダ・ライタ側では誤ったデータを受信したことになる。従って、リーダ・ライタ側では通信エラーとして処理される。
このような電流変化ΔIは、例えば、電源端子VDDに接続されるCPUを代表とする制御回路等の動作によって発生する。
以上のように、シリーズレギュレータを適用した場合、非接触型ICカード側に搭載される回路の動作による電流変化を誤って受信することにより、リーダ・ライタと非接触型ICカードの間で不要な通信が行なわれ、その結果、通信品質が劣化するという問題があった。
図3に、整流平滑回路B1とシャントレギュレータB4と負荷変調回路B3が示される。整流平滑回路B1は、整流回路と平滑容量で構成され、アンテナ端子LA及びLBに入力される信号を整流及び平滑し、出力端子VDDとグランド端子の間に出力電圧VDDを出力する。
シャントレギュレータB4は、出力端子VDDとグランド端子の間に流れる電流を変化させることで、出力端子VDDに出力される電圧が、所定の電圧になるように制御する。例えば、出力端子VDDが所定の電圧レベルを超えようとした場合、シャントレギュレータB4に流れる電流I3が増加し、これに伴って、アンテナ端子LAに流れる電流Ia11が増加する。図1で示したように、アンテナは出力抵抗Rを持つ電圧源と等価であるため、上記Ia11の増加に伴い、アンテナ端子LAの電位は下がる。これより、出力電圧VDDが下がるように負帰還動作がなされ、出力端子VDDは所定の電圧に保たれる。
図4に、出力端子VDDに流れる電流Iの電流変化ΔIが発生した場合の各電流波形の一例が示される。図4において、Iは出力端子VDDに流れる電流、IはシャントレギュレータB4に流れる電流、Iは出力端子VDDに流れる電流IとシャントレギュレータB4に流れる電流Iとの和である。
出力端子VDDに流れる電流IがΔIだけ増大すると、上記シャントレギュレータB4による負帰還動作がなされ、その結果、シャントレギュレータB4に流れる電流IはΔIだけ減少する。逆に、出力端子VDDに流れる電流IがΔIだけ減少すると、同様の負帰還動作により、シャントレギュレータB4に流れる電流IはΔIだけ増加する。
以上により、出力端子VDDに流れる電流Iの電流変化ΔIとシャントレギュレータB4に流れる電流Iの電流変化が相殺されることで、整流平滑回路B1の出力端子に流れる電流の電流変化は無くなり、その結果、アンテナ端子LAに流れる電流Ia11の電流変化も無くなる。
ところで、整流平滑回路B1の入出力間の内部抵抗、即ち、端子LAと端子VDDの間の抵抗は、一般に非常に低い。そのため、シャントレギュレータB4の動作によって、整流平滑回路B1の前の入力側の電流変化は、出力側の電流変化と同様の制御を受ける。
即ち、制御信号S1により負荷変調回路B3が発生する電流変化ΔIにおいても、電流変化ΔIとシャントレギュレータB4に流れる電流Iの電流変化が相殺され、アンテナ端子LAに流れる電流Ia11の電流変化は無くなる。
以上により、シャントレギュレータを適用した場合、負荷変調回路B3が電流変化Iを発生しても、電圧制御電流源B6に流れる電流Iにより相殺され、非接触型ICカード全体の電流変化は無くなるという問題があった。
本発明の目的は、アンテナを介して安定した送信を行なう半導体集積回路装置及びそれを用いた非接触型ICカード並びに携帯情報端末を提供することにある。
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。即ち、半導体集積回路装置は、アンテナに接続されるアンテナ端子と、前記アンテナから前記アンテナ端子に与えられる交流信号を整流平滑して直流電圧を得る整流平滑回路並びに前記直流電圧を安定化するシャントレギュレータ及びシリーズレギュレータを有する電源回路と、前記電源回路から前記直流電圧を供給されて動作する内部回路とを具備し、リーダ・ライタへの送信時に前記シリーズレギュレータが動作し、前記シャントレギュレータが停止し、リーダ・ライタへの送信時以外は、前記シャントレギュレータが動作し、前記シリーズレギュレータが停止することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
第1図は、リーダ・ライタからの電磁波を受信したときのアンテナの電流−電圧特性を示す図であり、第2図は、整流平滑回路及びシリーズレギュレータで構成される電源回路と負荷変調回路を説明するための構成図であり、第3図は、整流平滑回路及びシャントレギュレータで構成される電源回路と負荷変調回路を説明するための構成図であり、第4図は、第3図の電源回路の動作波形の一例を示す図であり、第5図は、本発明に係る半導体集積回路装置及び非接触型ICカードの第1の実施例を説明するための構成図であり、第6図は、第1の実施例の非接触型ICカードの構造を説明するための鳥瞰図であり、第7図は、第1の実施例に搭載される電源回路を説明するための回路構成図であり、第8図は、第7図の電源回路が有するシリーズレギュレータを説明するための回路図であり、第9図は、第7図の電源回路が有するシャントレギュレータを説明するための回路図であり、第10図は、本発明の第2の実施例に搭載される電源回路を説明するための回路図であり、第11図は、本発明の第3の実施例に搭載される電源回路を説明するための回路図であり、第12図は、本発明の第4の実施例に搭載される電源回路を説明するための回路図であり、第13図は、本発明の第5の実施例を説明するための携帯電話の鳥瞰図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明に係る半導体集積回路装置及びそれを用いた非接触型ICカード並びに携帯情報端末を図面に示した幾つかの実施例を参照して更に詳細に説明する。なお、第5図〜第13図における同一の符号は、同一物又は類似物を表示するものとする。
【実施例1】
第5図に、本発明の半導体集積回路装置及び非接触型ICカードの第1の実施例の基本構成を示す。第5図において、ICCは非接触型ICカード、IC及びL1は、ICカードICCに搭載されるそれぞれ半導体集積回路装置及びアンテナである。半導体集積回路装置ICは、電源回路B5、内部回路B8及びアンテナL1を接続するためのアンテナ端子LA及びLBを有している。
第6図にICカードICCの構造を示す。ICカードICCは、樹脂モールドされたプリント配線基板25によってカードの形態を成す。外部のリーダ・ライタ35からの電磁波を受けるアンテナL1は、プリント配線基板25の配線により形成される渦巻き状のコイル26によって構成される。半導体集積回路装置ICは、1個のICチップ27で構成され、プリント配線基板25に実装される。ICチップ27にアンテナL1であるコイル26が接続される。
本発明は、典型的には外部と入出力のための端子を表面に持たない非接触型ICカードに適用される。勿論、非接触インターフェースと入出力のための端子を持つデュアルタイプICカードに適用しても良い。特に限定はされないが、同図の半導体集積回路装置ICは、公知の半導体集積回路装置の製造技術によって、単結晶シリコン等のような1個の半導体基板上において形成され、ICチップ27を成す。
リーダ・ライタ35からの電磁波を受けたアンテナL1は、アンテナ端子LA及びLBに高周波の交流信号を出力する。交流信号は、部分的に情報信号(データ)によって変調されている。
第5図において、電源回路B5は、整流平滑回路B1とシャントレギュレータB6とシリーズレギュレータB7により構成される。整流平滑回路B1は、アンテナL1が受信した交流信号を整流及び平滑する。シャントレギュレータB6は、整流平滑回路B1の出力電圧が所定の電圧レベル以上にならないように制御し、シリーズレギュレータB7は、出力端子VDDを定電圧化する。シャントレギュレータB6及びシリーズレギュレータB7は、制御部B11から入力される制御信号S2及びS3によって、上記電圧制御動作を制御される。
電源回路B5の出力電源電圧VDDが、内部回路B8にその動作電源電圧として供給される。内部回路B8は、受信部B9、送信部B10、制御部B11、メモリB12から構成される。受信部B9は、ICカードICに備えられるアンテナL1によって受信された、情報信号によって変調された交流信号を復調し、得られたディジタルの情報信号を制御部B11に供給する。更に、受信部B9は、クロック信号を生成する機能も持つ。送信部B10は、制御部B11が生成するディジタルの情報信号を受け、アンテナL1が受信している交流信号を同情報信号によって変調する。送信部B10の出力側に、第5図には示していないが、上記変調を行なう負荷変調回路が配置される。リーダ・ライタ35は、アンテナL1からの電磁波の反射が上記変調によって変化するのを受けて制御部B11からの情報信号を受信する。
なお、ICカードICCがリーダ・ライタ35と行なう送受信は、リーダ・ライタ35からの変調された電磁波を受けてデータを受信する受信時と、無変調の電磁波を受けてデータを生成する等の内部処理を行なう内部処理時と、生成したデータをリーダ・ライタ35に送る送信時とに分けられる。本明細書では、受信時と内部処理時とを総称して「送信時以外」と言うこととする。
第7図に電源回路B8の基本回路構成を示す。第7図において、アンテナ端子LA及びLBに整流平滑回路B1が接続され、整流平滑回路B1の出力端子に接続される接続点N2にシャントレギュレータB6が接続され、接続点N2と出力電圧端子VDDの間にシリーズレギュレータB7が接続される。更に、第7図において、アンテナ端子LAと接地間に負荷変調回路B3が接続される。
整流平滑回路B1は、整流回路と平滑容量で構成され、アンテナ端子LA及びLBに入力される交流信号を整流及び平滑し、接続点N2とグランド端子の間に出力電圧V2を得る。
シャントレギュレータB6は、制御信号S2により電圧安定化動作の可否を制御される。シャントレギュレータB6は、送信時以外に動作が許可され、その場合は、接続点N2とグランド端子に流れる電流を変化させることで、接続点N2に出力される電圧レベルが、所定の電圧以上にならないように出力電圧V2を制御する。シャントレギュレータB6は、送信時には動作が許可されず、その場合は、上記電圧安定化動作を停止する。
シリーズレギュレータB7は、制御信号S3により電圧安定化動作の動作の可否を制御される。送信時に動作が許可され、その場合は、接続点N2と出力端子VDDに直列接続される抵抗を変化させることで、出力端子VDDに出力される電圧レベルが所定の電圧以上にならないように制御する。シリーズレギュレータB7は、送信時以外に動作が許可されず、その場合は、上記電圧安定化動作を停止する。
第7図において、負荷変調回路B3のオン・オフによりデータをリーダ・ライタへ送信する場合は、シャントレギュレータB6の動作を禁止し、シリーズレギュレータB7の動作を許可することで、負荷変調回路B3による電流変化の相殺を防ぐことができる。逆に、負荷変調回路B3によるデータの送信を行なわない場合は、即ち負荷変調回路B3がオンオフ動作を停止している場合は、シャントレギュレータB6の動作を許可することで、ICカードIC内の電流変化をリーダ・ライタへの伝達を防ぐことができる。このとき、シリーズレギュレータB7の動作の可否は、回路構成やシリーズレギュレータの検出電圧レベル、シャントレギュレータの検出電圧レベルなどから決定すれば良い。
以上の動作により、ICカード内の電流変化をリーダ・ライタへ伝達し易いシリーズレギュレータの電流変化伝達特性の利点と、ICカード内の電流変化を相殺するシャントレギュレータの電流変化伝達特性の利点とを利用することが可能になる。
第8図にシリーズレギュレータB7の一例を示す。シリーズレギュレータB7は、電源電圧VDDの電圧レベルの変化に対応した検出電圧を形成する電圧検出回路B13と、電圧検出回路B13の検出電圧に従って入力端子IN1と出力端子OUT1の間の等価的な抵抗成分を変化させるMOSトランジスタM1と、スイッチ回路B21とから構成される。電圧検出回路B13は、次の回路により構成される。電源端子VDDとなる出力端子OUT1とグランド端子の間には、分圧抵抗R2とR3が設けられる。これら分圧抵抗R2とR3の接続点に得られる分圧電圧は、演算増幅回路A1の非反転入力(+)に供給される。演算増幅回路A1の反転入力端子(−)とグランド端子の間には基準電圧源Vrefが設けられる。分圧電圧と基準電圧源Vrefの差に応じた演算増幅回路A1の出力電圧は、スイッチ回路21を経てMOSトランジスタM1のゲートに与えられ、MOSトランジスタM1の等価的な抵抗成分を変化させる。スイッチ回路21は、制御信号S3によって制御され、シリーズレギュレータB7の動作が許可されるときには、MOSトランジスタM1のゲートを演算増幅回路A1に接続し、許可されないときには、即ち電圧安定化動作を停止するときにはMOSトランジスタM1のゲートを接地する。ゲートを接地されたMOSトランジスタM1はほぼ短絡状態になり低抵抗になる。なお、電圧安定化動作を停止するために、上記ゲートに固定の電圧を与えるようにしても良い。
第9図にシャントレギュレータB6の一例を示す。出力端子OUT2の電圧レベルの変化に対応した検出電圧を形成する電圧検出回路B13と、電圧検出回路B13の検出電圧に従って電流を流す電圧制御電流源B14と、スイッチ回路B22とから構成される。電圧検出回路B13は、前記第8図と同様であるので、その説明を省略する。電圧制御電流源B14は、簡便には、MOSトランジスタM2から構成される。MOSトランジスタM2のゲートに、分圧電圧と基準電圧源Vrefの差に応じた演算増幅回路A1の出力電圧が、スイッチ回路22を経て与えられる。MOSトランジスタM2は、演算増幅回路A1の出力電圧に応じて自身に流れる電流を変化させる。スイッチ回路22は、制御信号S2によって制御され、シリーズレギュレータB7の動作が許可されるときには、MOSトランジスタM2のゲートを演算増幅回路A1に接続し、許可されないときには、即ち電圧安定化動作を停止するときにはMOSトランジスタM2のゲートを接地する。ゲートを接地されたMOSトランジスタM2は開放状態になり、電流は流れない。なお、電圧安定化動作を停止するために、上記ゲートに固定の電圧を与えるようにしても良い。
以上、本実施例により、負荷変調回路B3が動作する送信時に、シャントレギュレータB6の動作を停止させることで、非接触型ICカードからリーダ・ライタへの通信において、安定したデータの送信を行なうことが可能になった。
なお、シャントレギュレータB6の変形例としては、より簡便にはツェナーダイオードで代用することができる。その場合は、電圧検出回路B13の接続は無く、ツェナーダイオードの持つツェナー電圧によって整流電圧が制限される。ツェナーダイオードの動作許可及び不許可は、ツェナーダイオードに直列に接続したスイッチのオン、オフによって行なわれる。
また、上記ではアンテナL1をICカードICCのプリント配線基板25に形成したが、アンテナを更に小さいコイルとし、これを半導体集積回路装置として構成されるICチップの上に形成することが可能である。そのようにアンテナを形成したICチップはICタグとして機能する。
更に、上記ではアンテナがいずれもコイル状であるが、これとは別に、アンテナが例えば小さい紙片等に形成された薄くて細長い帯状の金属パターンで、これに半導体集積回路装置ICのアンテナ端子LA,LBが接続され、それによって応答器となる電子装置が構成されても良い。
【実施例2】
第10図に、第7図の電源回路において整流とシリーズレギュレータの電圧制御を1個のトランジスタで行なうように構成した第2の実施例を示す。第10図において、ICカードICCに具備されるアンテナを接続するためのアンテナ端子LA及びLBが備えられ、MOSトランジスタM3、M4、M5、M6、M7、M8と、抵抗R4、R5と、平滑用の容量C1と、シリーズレギュレータ制御回路B15とにより、上記特開2001−274339号公報に開示された電源回路が構成される。本実施例の電源回路においては、上記に更にシャントレギュレータB6が接続される。アンテナ端子LAの交流電圧が正のとき、MOSトランジスタM8がオン、MOSトランジスタM7がオフとなり、MOSトランジスタM3に交流電圧の正が与えられ、アンテナ端子LBが接地される。アンテナ端子LAの交流電圧が負のとき、MOSトランジスタM7がオン、MOSトランジスタM8がオフとなり、MOSトランジスタM5に交流電圧の正が与えられ、アンテナ端子LAが接地される。MOSトランジスタM3及びM5は、それぞれアンテナ端子LA及びLBから電源端子VDDへの一方向にのみ電流が流れ、かつその電流がそれぞれのゲートに与えられる電圧によって制御される。即ち、両トランジスタは、整流とシリーズレギュレータの電圧制御の二つの動作を行なう。
シリーズレギュレータ制御回路B15は、電圧検出回路B13と電圧制御電流源B14とスイッチ回路B21とにより構成され、制御信号S3によって、動作の可否が制御される。制御電流回路B15の出力電流は、MOSトランジスタM4及びM6を経てそれぞれ抵抗R4及びR5に流れ、それぞれMOSトランジスタM3及びM5のゲートに与える制御電圧を発生する。
シャントレギュレータB6は、電圧検出回路B13と電圧制御電流源B14とスイッチ回路22とにより構成され、制御信号S2によって、動作の可否が制御される。
また、アンテナ端子LBとグランド端子の間に、制御信号S1によって制御される負荷変調回路B3が接続される。
シリーズレギュレータ制御回路B15の動作を許可し、シャントレギュレータB6の動作を禁止した送信時の場合において、負荷変調回路B3に流れる電流Iの電流変化ΔIによるアンテナ端子LAに流れる電流Ia11の電流変化ΔIa113を算出すると、式(1)のようになる。但し、抵抗R4とR5の抵抗値は等しいものとする。
ΔIa113=ΔI×R4/(R4+R)・・・(1)
また、シリーズレギュレータ制御回路B15の動作を禁止し、シャントレギュレータB6の動作を許可した送信時以外の場合において、出力端子VDDに流れる電流Iの電流変化ΔIによるアンテナ端子に流れるの電流変化ΔIa114を算出すると、式(2)のようになる。
ΔIa114=0・・・(2)
第10図において、負荷変調回路B3のオン・オフによりデータをリーダ・ライタへ送信する場合は、シャントレギュレータB6の動作を禁止し、シリーズレギュレータ制御回路B15の動作を許可することで、負荷変調回路B3による電流変化の相殺を防ぐことができる。逆に、負荷変調回路B3によるデータの送信を行なわない場合は、シャントレギュレータB6の動作を許可し、シリーズレギュレータ制御回路B15の動作を禁止することで、ICカード内の電流変化をリーダ・ライタへの伝達を防ぐことができる。
このように、整流平滑回路とシリーズレギュレータが分離されている必要はなく、上記特開2001−274339号公報に記載のシリーズレギュレータとしての機能を持つ整流平滑回路に本発明を適用することが可能である。
【実施例3】
第11図に、第10図の電源回路において、電圧検出回路をシャントレギュレータとシリーズレギュレータ制御回路とで共有するように構成した第3の実施例を示す。
第11図において、レギュレータ方式制御回路B16は、第10図におけるシリーズレギュレータ制御回路B15としての機能と第10図におけるシャントレギュレータB6としての機能を有する。レギュレータ方式制御回路B16において、第10図におけるシリーズレギュレータ制御回路B15に含まれる電圧検出回路B13と第10図におけるシャントレギュレータB6に含まれる電圧検出回路B13が共有されている。また、レギュレータ方式制御回路B16において、第10図におけるシリーズレギュレータ制御回路B15に含まれる電圧制御電流源B14と第10図におけるシャントレギュレータB6に含まれる電圧制御電流源B14が共有され、MOSトランジスタM9で置き換えられている。
MOSトランジスタM10は、制御信号S2によって、オン・オフを制御され、スイッチとして動作する。MOSトランジスタM11は、制御信号S3によって、オン・オフを制御され、スイッチとして動作する。したがって、MOSトランジスタM10がオンし、MOSトランジスタM11がオフした場合は(送信時以外)、MOSトランジスタM9に流れる電流は、電源端子VDDに流れ、シャントレギュレータの動作が行なわれる。逆に、MOSトランジスタM10がオフし、MOSトランジスタM11がオンした場合は(送信時)、MOSトランジスタM9に流れる電流が抵抗R4及びR5に流れ、シリーズレギュレータの動作が行なわれる。これにより、回路を簡略化しながら、第10図と同様の機能を実現することができた。
【実施例4】
第12図に、第10図の電源回路において、電圧検出回路をシャントレギュレータとシリーズレギュレータ制御回路とで共有するように構成した第4の実施例を示す。
第11図と同様に、第12図においても、レギュレータ方式制御回路B16は、第10図におけるシリーズレギュレータ制御回路B15としての機能と第10図におけるシャントレギュレータB7としての機能を有する。レギュレータ方式制御回路B16において、第10図におけるシリーズレギュレータ制御回路B15に含まれる電圧検出回路B13と、第10図におけるシャントレギュレータB6に含まれる電圧検出回路B13が共有されている。
また、レギュレータ方式制御回路B16は、第10図におけるシリーズレギュレータ制御回路B15に含まれる電圧制御電流源B14として動作するMOSトランジスタM13と、第10図におけるシャントレギュレータB7に含まれる電圧制御電流源B14として動作するMOSトランジスタM12とを具備し、電圧検出回路B13の検出電圧をMOSトランジスタM12とM13のどちらに供給するかを選択する選択回路B17を具備する。
選択回路B17は、与えられた制御信号S2により、シャントレギュレータB7の動作が許可されるとき(送信時以外)、演算増幅回路A1の出力電圧をMOSトランジスタM12のゲートに供給し、シャントレギュレータB7の動作が不許可のとき(送信時)、MOSトランジスタM12のゲートを接地に接続する。更に、選択回路B17は、与えられた制御信号S3により、シリーズレギュレータ制御回路系のMOSトランジスタM13の動作が許可されるとき(送信時)、演算増幅回路A1の出力電圧をMOSトランジスタM13のゲートに供給し、MOSトランジスタM13の動作が不許可のとき(送信時以外)、MOSトランジスタM13のゲートを接地に接続する。このように、選択回路B17は、MOSトランジスタM12及びM13のどちらか一方を動作させる。
従って、レギュレータ方式制御回路B16、選択回路B17がMOSトランジスタM12に電圧検出回路B13の検出電圧を供給した場合は、シャントレギュレータとして動作し、選択回路B17がMOSトランジスタM13に電圧検出回路B13の検出電圧を供給した場合は、シリーズレギュレータ制御回路として動作する。これにより、第10図と同様の機能を実現することができる。
第11図において、MOSトランジスタM9、M10、M11は大電流を流す必要があるため、MOSトランジスタのゲート幅を大きくする必要があり、チップ上における使用面積が大きい。しかし、第12図において、大電流を流す必要があるのはMOSトランジスタM12及びM13である。従って、第11図の場合に比べて、チップ上における使用面積を小さくすることができる。
【実施例5】
第13図に、実施例1〜実施例4の非接触型ICカードのいずれかを内蔵した本発明の携帯情報端末の第5の実施例を示す。第13図において、31は、携帯情報端末である携帯電話、32は、携帯電話30の折りたたみ型の筐体、33は、筐体32の本体の内側表面に設けたデータを入力する入力装置、34は筐体32の内部で入力装置33の裏面側に配置した非接触型ICカードである。第13図では示されないが、筐体32の蓋の内側表面に表示装置が配置されている。また、筐体32の蓋の名部に音声又はデータによって通信を行なうための送受信回路及びデータ処理回路が設置されている。データ処理回路に入出力されるデータが上記表示装置に表示される。
ICカード34は、データを出力する端子及び電源電圧を入力する端子を有し、これら端子を介してデータ処理回路に接続される。ICカード34の内部回路のデータは、入力装置33の操作によって上記表示装置に表示される。
また、ICカード34は、リーダ・ライタ35の近傍に置かれたとき、携帯電話31の電源投入の有無と関係なく、リーダ・ライタ35との間でデータの送受信を行なう。なお、ICカード34は、携帯電話31に着脱可能な形で内蔵されても良い。
本実施例により、リーダ・ライタを介さずとも、ICカード34の有するデータを知ることが可能になり、ICカード34の利便性を高めることができる。
なお、本実施例では、ICカード34は、携帯電話31に内蔵されたが、手帳タイプのパーソナルコンピュータやノート型パーソナルコンピュータ等その他の携帯情報端末の全般に内蔵可能である。
以上、本発明者よりなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本願発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、シャントレギュレータの動作可否を制御する制御信号と、シリーズレギュレータの動作可否を制御する制御信号とは、1つの制御信号で実現することもできる。
また、第5図の非接触型ICカードにおいて、電源回路、受信部、送信部、制御部、メモリを複数の半導体集積回路装置で構成するものであっても良い。本発明は、交流電圧を整流及び平滑して内部電源電圧を生成する半導体集積回路装置及び非接触型ICカードに広く利用することができる。
本発明の一実施態様によれば、シリーズレギュレータとシャントレギュレータとを具備した電源回路において、送信時にシャントレギュレータの動作が停止するので、非接触型ICカードからリーダ・ライタへ安定したデータの送信を行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
本願発明は、ICカード等に適用して好適であり、交通、金融、運送、商業等に広く利用可能である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナから前記アンテナ端子に与えられる交流信号を整流平滑して直流電圧を得る整流平滑回路並びに前記直流電圧を安定化するシャントレギュレータ及びシリーズレギュレータを有する電源回路と、
前記電源回路から前記直流電圧を供給されて動作する内部回路とを具備し、
リーダ・ライタへの送信時に前記シリーズレギュレータが電圧安定化動作を行ない、前記シャントレギュレータが電圧安定化動作を停止し、
前記リーダ・ライタへの送信時以外は、前記シャントレギュレータが電圧安定化動作を行ない、前記シリーズレギュレータが電圧安定化動作を停止することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
前記アンテナ端子に接続される負荷変調回路を更に具備し、
前記負荷変調回路を流れる電流の有無により、前記リーダ・ライタへの送信が行なわれることを特徴とする請求の範囲第1項に記載の半導体集積回路装置。
【請求項3】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナから前記アンテナ端子に与えられる交流信号を整流平滑して直流電圧を得る整流平滑回路及び前記直流電圧を安定化するレギュレータを有する電源回路と、
前記電源回路から前記直流電圧を供給されて動作する内部回路とを具備し、
前記レギュレータは、リーダ・ライタへの送信時にシリーズレギュレータとして動作し、前記リーダ・ライタへの送信時以外は、シャントレギュレータとして動作することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
アンテナからの交流信号を入力するための2端子のアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に入力された交流信号を整流平滑化して電源電圧を出力する整流平滑回路と、
前記電源電圧の電圧を安定化し、電源端子に安定化した電源電圧を出力するレギュレータと、 前記アンテナ端子の一方の端子とグランド端子の間に接続した負荷変調回路を含む内部回路とを具備し、
前記レギュレータは、前記負荷変調回路が動作しているときに前記整流平滑回路と前記電源端子の間の電圧を制御し、前記負荷変調回路が動作を停止しているときに前記電源端子とグランド端子の間を流れる電流を制御することを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
アンテナからの交流信号を入力するための2端子のアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に入力された交流信号を整流平滑化して電源電圧を出力し、更に前記電源電圧の電圧を安定化し、電源端子に安定化した電源電圧を出力する電源回路と、
前記電源回路の電圧安定化動作を制御する制御信号を生成する制御回路を含む内部回路とを具備し、
前記電源回路は、リーダ・ライタへの送信時に前記前記整流平滑回路と前記電源端子の間の電圧を変化させるように前記制御信号によって制御され、前記リーダ・ライタへの送信時以外に前記電源端子とグランド端子の間を流れる電流を変化させるように前記制御信号によって制御されることを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項6】
前記アンテナがコイルによって構成され、前記コイルによって構成された前記アンテナを更に具備することを特徴とする請求の範囲第1項、第3項、第4項又は第5項のいずれか一に記載の半導体集積回路装置。
【請求項7】
アンテナを構成するコイルと、
前記コイルによって構成される前記アンテナに接続される請求の範囲第1項〜第5項のいずれか一に記載の半導体集積回路装置とを有することを特徴とするICカード。
【請求項8】
データを処理するデータ処理回路と、
前記データ処理回路が入出力するデータを表示する表示装置と、
前記データ処理回路にデータを入力するための入力装置と、
請求の範囲第7項に記載のICカードとを具備し、
前記表示装置と前記ICカードとが電気的に結合され、前記ICカードの有するデータが前記表示装置に表示されることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項9】
音声又はデータを用いて通信を行なうための送受信回路を更に備えていることを特徴とする請求の範囲第8項に記載の携帯情報端末。
【請求項10】
前記携帯情報端末が携帯電話であることを特徴とする請求の範囲第9項に記載の携帯情報端末。

【国際公開番号】WO2005/072065
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【発行日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517364(P2005−517364)
【国際出願番号】PCT/JP2004/000955
【国際出願日】平成16年1月30日(2004.1.30)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】