説明

半導電性ローラ用ゴム組成物およびそれを用いた半導電性ローラ

【課題】イオン導電性ゴムを半導電層に用いたローラにおいて、同一製造ロットから作られるローラごとの電気抵抗のばらつきが小さく、かつ電気抵抗の環境依存性がより低い半導電性ローラ用ゴム組成物およびそれを用いた半導電性ローラを提供する。
【解決手段】エピクロルヒドリンゴムとNBRとのブレンドからなるベースゴム100重量部に対して、リチウム塩とアジピン酸との混合物などの制電剤を3〜10重量部添加した半導電性ローラ用ゴム組成物およびそれを用いた半導電性ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子複写機やレーザービームプリンタ(以下、LBPと記す)などの画像形成装置において、感光体周辺に設置される転写ローラや現像ローラや帯電ローラなどに好適な半導電性ローラ用ゴム組成物およびそれを用いた半導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子複写機、LBPなどではオゾンレスを目的として、画像形成装置における帯電や転写が従来のワイヤーコロトロンによるチャージャー方式からローラ方式に変わってきており、感光体に接触し、該感光体との接触部を通過する転写材に、感光体上の画像を転写する転写ローラや、感光体に接触し該感光体を帯電する帯電ローラが採用されつつある。
【0003】
かかるローラは、高品位画像を得るために低硬度であるとともに、体積固有抵抗で表して103 〜1011Ω・cm程度の半導電性である必要がある。この半導電性ローラに適用されるゴムは、電子導電性ゴムとイオン導電性ゴムの2種類に大別される。
【0004】
電子導電性の半導電性ゴムは、シリコーンゴムやEPDMのような電気絶縁体に、導電性付与材、例えば導電性カーボンブラックなどを充填して製造される。このゴムは、カーボンブラックのストラクチャーによる電気伝導を単に利用したものであるため、半導電領域ではその体積固有抵抗が2桁から4桁程度のバラツキを示す。これは、ゴムの混練り時や加工時のミキサーや押出機や成型機中でのせん断により、カーボンブラックのストラクチャーが破壊され、電気抵抗値が安定しないためである。
【0005】
一般に、カーボンブラックの充填量とゴムの体積固有抵抗との間の関係曲線には、103 〜107 Ω・cm付近で電気抵抗が急激に低下する、いわゆるパーコレーション領域が存在する。このため半導電性領域では、カーボンブラックの充填量の僅かな変動、あるいは、混練り条件の僅かな違いにより、ローラの初期抵抗が大きく変動する。
【0006】
一方、エピクロルヒドリンゴム、NBR、ウレタンゴム、それらの発泡体などのイオン導電性ゴムは、ベースポリマー自体が半導性を有するので、ローラの初期抵抗はほとんど変動しない。そこで、特にカラー複写機やカラーLBPなど高い画像品質が要求される画像形成装置の転写ローラなどの半導電層では、イオン導電性ゴムが主流となっている。
【0007】
しかしながら、イオン導電性ゴムの抵抗値は測定する環境に依存性があり、環境条件の変動によりローラの抵抗が変動するという問題点があった。ここでいう電気抵抗の環境依存性とは、低温低湿(例えば10℃15%)の条件下における抵抗値と、高温高湿(例えば28℃85%)の条件下における抵抗値との間に差ができることを意味する。イオン導電性ゴムのうちNBRでは概して抵抗差は1桁程度の差であるのに対してエピクロルヒドリンゴムでは、環境条件の変動による差が1桁を超え、変動幅が大きいという不具合があった。従って、環境依存による不具合を回避するためにはエピクロルヒドリンゴムではなくNBRを採用すればよいわけであるが、NBRは体積固有抵抗で表して1011Ω・cm程度のゴムであり、より低い抵抗値が必要とされる場合にはエピクロルヒドリンゴムもしくはエピクロルヒドリンゴムとNBRのブレンドゴムが適用され、NBR単独では使用できないという不具合があった。イオン導電性ゴムの電気抵抗を制御するには、通常、第4級アンモニウム塩、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、過塩素酸リチウムなどを添加するという処方もあるが、これらの添加剤では、環境依存性が改善されない。
【0008】
環境依存性の大きいゴムでは、低温低湿時の電気抵抗値は高く、高温高湿時の抵抗値は低い傾向にある。これは、温度が高いとベースポリマーのブラウン運動が盛んになるため、および湿度変動による水分の影響のためである。
【0009】
さきに本発明者らは、エピクロルヒドリンゴムなどのイオン導電性ゴムに所定の平均粒径のファーネスブラックからなるカーボンブラックを所定量以上添加したゴム組成物で、半導電性ローラの弾性層を形成することにより、ローラの電気抵抗の環境依存性を軽減できることを見出し、特開2001-140855号(特願平11-327065号)として開示した。
【0010】
この処方では環境依存性は軽減できるものの、標準状態(例えば22℃55%)では、同一製造ロット内のテストピースもしくはローラの抵抗値に±0.3logΩ/□程度のばらつきがみられるという欠点があった。この処方ではカーボンブラックをゴムに分散させて形成される導電通路をイオン導電性ゴムに併用したものであるから、上述したカーボンブラックのパーコレーション領域において発生する抵抗値のばらつきの影響をうけて初期状態にてばらつきが発生するものと勘案される。
【0011】
【特許文献1】特開2001-140855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これらの点に鑑みてなされたものであり、イオン導電性ゴムを半導電層に用いたローラにおいて、標準状態でもばらつきが少なく、かつ環境依存性のより小さい半導電性ローラ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前述した目的を達成するために鋭意研究した結果、エピクロルヒドリンゴムとNBRとのブレンドからなるベースゴム100重量部に対して、リチウム塩とアジピン酸との混合物などの制電剤を3〜10重量部添加した半導電性ローラ用ゴム組成物で、半導電性ローラの弾性層を形成することにより、ローラの電気抵抗のばらつきが少なく、かつ環境依存性を軽減できることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
したがって、本発明は、エピクロルヒドリンゴムとNBRとのブレンドからなるベースゴム100重量部に対して、リチウム塩とアジピン酸の混合物などの制電剤を3〜10重量部添加してなる半導電性ローラ用ゴム組成物を提供する。
【0015】
本発明はまた、エピクロルヒドリンゴムとNBRとのブレンド比が重量部で表して80:20〜5:95である半導電性ローラ用ゴム組成物を提供する。
【0016】
本発明はまた、少なくとも芯金の外周に上記半導電性ローラ用ゴム組成物で弾性層を形成した半導電性ローラを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
前記エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリンとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとの共重合体;上記成分の他に第3成分として、不飽和結合を有したアリルグリシジルエーテルを含む三元共重合体;エピクロルヒドリンのホモポリマー;エピクロルヒドリンとアリルグリシジルエーテルとの共重合体を包含する。
【0018】
このエピクロルヒドリンゴムの具体的なグレードとしては、エピクロマーH,C,C55,D,CG,CG−102,CG−104,CG−105,CG−107,CG−109(以上、ダイソー株式会社製商品名)、ゼクロン1000,1100,2000,3100,3101,3102,3103,3105,3106,ゼオスパン303,306(以上、日本ゼオン株式会社製商品名)、Hydorin H,C(以上、Zeon Chemicals Inc.(米国)製商品名)などが例示される。
【0019】
前記NBRは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体であり、カルボキシル基含有品や部分架橋型や塩化ビニルとのブレンド品などを含む。
【0020】
NBRの具体的なグレードとしては、ニポール DN003,DN009,1041,1041L,1031,1001,DN101,DN101L,DN103,DN115,1042,1042AL,1052J,1032,DN200,DN201,DN201,DN202,DN202H,DN206,DN207,DN212,DN215,DN219,DN223,DN225,1043,DN300,DN302,DN302H,DN306,DN315,DN401,DN401L,DN401LL,DN402,DN406,DN407,1072J,DN631,DN1201,DN1201L,DN224,DN1105,DN1205,DN1305,1203JNS,DN502SCR,DN508SCR,PB5501NF,PB5501LN,PB5502NF,VN1000(以上、日本ゼオン株式会社製商品名)、JSR N215L、N222L、N222SH、N220S、N220SH、N224SH,N235S,N230SV,N230SL,N230S,N230SH,N232S,N232SH,N238H,N231L,N231H,N237,N237H,N239SV,N236H,N241,N241H,N240S,N242S,N251H,N250S,N260S,N520,N530,N640H,N640,N202S,N201,N210S,N211SL,PN20HA,PN30A(以上、JSR株式会社製商品名)などが例示される。
【0021】
本発明は、エピクロルヒドリンゴムとNBRを各々単独でブレンドしてもよいし、あるいは、電気抵抗値、加硫速度などの調整目的で、2種類以上のエピクロルヒドリンゴム同士のブレンドを用いてもよいし、必要に応じてSBRやEPDMなどの他の種類のゴムをブレンドしてもよい。
【0022】
本発明において、肝要の添加物である制電剤は、ポリエーテル/ポリオレフィンブロックポリマーとリチウム塩及びアジピン酸エステルの混合物であるサンコノールTBX−310、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体とリチウム塩及びアジピン酸エステルの混合物であるサンコノールTBX−8310(以上、三光化学工業株式会社製商品名)などが例示されるが、ゴムへの分散性の観点からサンコノールTBX−8310の使用が望ましい。
【0023】
本発明において制電剤の添加量はベースゴム100重量部に対して1〜10重量部、好ましくは3〜10重量部、さらに好ましくは3〜5重量部である。1重量部未満では抵抗値の環境依存性の改善効果がなく、また10重量部を超える添加量では増量効果がないばかりかコストが高くなる上に加工性が悪くなるなどの弊害がある。
【0024】
本発明のローラ用ゴム組成物の加硫(架橋)は、不飽和結合を有するゴムであれば、通常の硫黄加硫系を適用することができる。この硫黄加硫に用いられる硫黄は、ベースゴム100重量部に対して、0〜5重量部程度添加される。
【0025】
この硫黄としては、回収硫黄を粉砕し、微粉としたものが使用される。これには、金華印微粉硫黄150mesh,200mesh,300mesh,325mesh(以上、鶴見化学工業株式会社製商品名)が例示される。
【0026】
また、分散性などを改良した表面処理硫黄も適宜使用され、これには、サルファックスA,200S,MC,PS,PMC(以上、鶴見化学工業株式会社製商品名)などが例示される。
【0027】
また、未加硫ゴムからのブルームを避けるために不溶性硫黄が使用され、これには、セイミ硫黄(日本乾溜工業株式会社製商品名)やサンフェル,サンフェル90(以上、三新化学工業株式会社製商品名)が例示される。
【0028】
また、特に低圧縮永久歪みが要求される場合には、硫黄を全く使用しないかわりに、含硫黄有機化合物が加硫剤(架橋剤)として使用される。これには、アクターR(川口化学工業株式会社製商品名)の如きモルフォリンジスルフィド、アクセルTMT(川口化学工業株式会社製商品名)の如きテトラメチルチウラムジサルファイド、アクセルTET(川口化学工業株式会社製商品名)の如きテトラエチルチラウムジサルファイド、アクセルTRA(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジペンタメチレンチウラムテトラサルファイドなどが例示され、ベースゴム100重量部に対して、0.5〜5重量部程度添加される。
【0029】
また、硫黄加硫では、加硫物特性、特に圧縮永久歪みや加工安定性を改善するために、通常、1〜6種類程度の加硫促進剤が、それぞれベースゴム100重量部に対して、0.5〜3重量部程度併用して添加される。これには、チアゾール類、チオウレア類、チラウム類、ジチオカルバミン酸塩類およびグアニジン類が例示される。
【0030】
チアゾール類としては、アクセルM(川口化学工業株式会社製商品名)の如き2−メルカプトベンゾチアゾール,アクセルDM(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジベンゾチアゾールジサルファイド,アクセルCZ(川口化学工業株式会社製商品名)の如きN−シクロヘキシルベンゾチアゾール,アクセルNS(川口化学工業株式会社製商品名)の如きN−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド,アクセルBNS−R(川口化学工業株式会社製商品名)の如きN−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド,アクセルDZ−G(川口化学工業株式会社製商品名)の如きN,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどが例示される。
【0031】
チオウレア類としては、アクセルEUR(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジエチルチオウレア,アクセル22−S(川口化学工業株式会社製商品名)の如きエチレンチオウレアなどが例示される。
【0032】
チラウム類としては、アクセルTMT(川口化学工業株式会社製商品名)の如きテトラメチルチウラムジサルファイド,アクセルTET(川口化学工業株式会社製商品名)の如きテトラエチルチウラムジサルファイド,アクセルTBT(川口化学工業株式会社製商品名)の如きテトラブチルチウラムジサルファイド,アクセルTRA(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド,アクセルTS(川口化学工業株式会社製商品名)の如きテトラメチルチウラムモノサルファイドなどが例示される。
【0033】
ジチオカルバミン酸塩類としては、アクセルPZ(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジメチルジチオカルバミン酸亜鉛,アクセルEZ(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジエチルジチオカルバミン酸亜鉛,アクセルBZ(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジブチルジチオカルバミン酸亜鉛,アクセルTL−PT(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジチオカルバミン酸テルリウムなどが例示される。
【0034】
グアニジン類としては、アクセルD(川口化学工業株式会社製商品名)の如きジフェニルグアニジンなどが例示される。
【0035】
本発明のローラ用ゴム組成物のベースゴムとして、エピクロルヒドリンゴムなどの不飽和結合を有しないゴムを使用する場合には、架橋剤として、通常のパーオキサイドを適用できる。
【0036】
これには、Di−cup 40C(Hercules社(米国)製商品名)の如きジクミルパーオキサイド、パーヘキサ25B−40(日本油脂株式会社製商品名)の如き2,5−ジメチル2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキサンなどが例示される。添加量は、ベースゴム100重量部当たり、1〜10重量部程度である。
【0037】
また、必要に応じて、架橋助剤、例えば酸化マグネシウムやタイク(日本化成株式会社)の如きトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、アクリエステルTMP(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きトリメタクリル酸(TMPMA)、アクリエステルED(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きジメタクリル酸エチレンなどが、1〜10重量部程度併用される。
【0038】
本発明のローラ用ゴム組成物では、低硬度の組成物を得るため、および、配合剤の混合・分散を助け、圧延、押し出しなどの成形作業を容易にし、未加硫ゴムの粘着性を増して成形しやすくするために、ベースゴム100重量部に対して、0〜80重量部、好ましくは0〜30重量部程度の軟化剤が充填される。この軟化剤の使用には、イオン導電性ゴムとの相溶性に配慮する必要がある。必要以上の添加は、感光体の汚染を誘発するので好ましくない。
【0039】
具体的な軟化剤としては、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、リン酸誘導体などの使用が良好である。
【0040】
前記パラフィン系オイルの軟化剤としては、ダイアナプロセスオイルPW−32,PW−90,PW−150,PW−380,PS−32,PS−90,PS−430,PX−32,PX−90(以上、出光興産株式会社製商品名)、フレクソン845(以上、エッソ石油株式会社製商品名)、シンタックPA−95,PA−100,PA−140(以上、神戸油化学工業株式会社製商品名)、コスモプロセス10,40,40C(以上、コスモ石油株式会社製商品名)、サンパー(Sunper)110,115,120,130,150,180,2100,2210,2280(以上、日本サン石油株式会社製商品名)、フッコールP−200,P−400,P−500(以上、富士興産株式会社製商品名)、三菱10,三菱12(以上、三菱石油株式会社製商品名)などが例示される。
【0041】
前記ナフテン系オイルの軟化剤としては、ダイアナプロセスオイルNS−24,NS−100,NM−26,NM−68,NM−150,NM−280,NP−24,NU−80,NF−90(以上、出光興産株式会社製商品名)、エッソプロセスオイル725,765(以上、エッソ石油株式会社製商品名)、シンタックN−40,N−60,N−70,N−75,N−85(以上、神戸油化学工業株式会社製商品名)、シェルフレックス371JY,371N,451,N−40,22,22R,32R,100R,100S,100SA,220RS,220S,260,320R,680(以上、シェルジャパン株式会社製商品名)、サンセン(Sunthene)310,380,410,415,420,430,450,480,3215,4130,4240,Ciro Light R.P.O.(以上、日本サン石油株式会社製商品名)、コウモレックス2号(日本石油株式会社製商品名)、フッコール1150N,1400N(以上、富士興産株式会社製商品名)、三菱20(三菱石油株式会社製商品名)、ナプレックス32,38(以上、モービル石油株式会社製商品名)、ペトレックスPN−3(山文油化株式会社製商品名)などが例示される。
【0042】
前記芳香族オイルの軟化剤としては、ダイアナプロセスオイルAC−12,AC−460,AE−24,AE−50,AE−200,AH−16,AH−58(以上、出光興産株式会社製商品名)、エッソプロセスオイル110,120(以上、エッソ石油株式会社製商品名)、シンタックHA−10,HA−15,HA−30,HA−35(以上、神戸油化学工業株式会社製商品名)、コスモプロセス40A(コスモ石油株式会社製商品名)J SO Aroma790(日本サン石油株式会社製商品名)、コウモレックス300,700(以上、日本石油株式会社製商品名)、アロマックス#1,#3,#5(以上、富士興産株式会社製商品名)、ヘビープロセス油 三菱34,三菱38,三菱44(以上、三菱石油株式会社製商品名)、モービルゾール K,22,30,130(以上、モービル石油株式会社製商品名)、ペトレックスLPO−R,LPO−V,PF−1,PF−2(以上、山文油化株式会社製商品名)などが例示される。
【0043】
また、DOP(大八化学工業株式会社製商品名)やビニサイザー80(花王株式会社製商品名)の如きジ−(2−エチルヘキシル)フタレート(DOP)、レオフレックス9P(シェルジャパン株式会社製商品名)やダイヤサイザー11,99(以上、三菱化学株式会社製商品名)の如き高級アルコール・フタレート、DIOP(ワッカー−ケミー(Wacker−Chemie)(ドイツ)社製商品名)の如きジイソオクチル・フタレート(DIOP)、サンソサイザーDOS(新日本理化株式会社製商品名)の如きジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、Alizona208(アリゾナ・ケミ(Alizona Chem)(アメリカ)社製商品名)の如きイソオクチル・トール油脂肪酸エステル、TBP(大八化学工業株式会社製商品名)の如きトリブチル・フォスフェート(TBP)、TBEP(大八化学工業株式会社製商品名)の如きトリブトキシエチル・フォスフェート(TBEP)、サンソサイザーTCP(新日本理化株式会社製商品名)の如きトリクレジル・フォスフェート(TCP)、CDP(大八化学工業株式会社製商品名)の如きクレジル・ジフェニクル・フォスフェート(CDP)、Koremoll CE 5422(BASF(ドイツ)社製商品名)の如きジフェニルアルカン、BXA(大八化学工業株式会社製商品名)の如きジブチルジグリコール・アジペート、チオコール TP−95(モートン・インターナショナル(Morton International)(アメリカ)社製商品名)の如きジ(ブトキシエトキシエチル)アジペートなども使用することができる。
【0044】
前記軟化剤は、通常、1〜2種類が適宜使用され、必要に応じてナフテン系オイルとパラフィン系オイルとをブレンドするように異種類のオイルを併用添加してもよい。
【0045】
また、ローラとした場合のゴム層の表面の研磨性等を考慮して、黒サブ、白サブ、飴サブ、ゴールデンファクチス、ネオファクチス、無硫黄ファクチス(以上、天満サブ化工株式会社製商品名)の如きサブ(ファクチス)も、5〜50重量部程度併用できる。
【0046】
本発明では、ベースゴム100重量部に対して、0〜80重量部、好ましくは0〜40重量部程度のカーボンブラックやシリカ系充填剤などの補強剤が添加される。40重量部を越える使用は、低硬度の組成物が得難くなるとともに、ゴムの混練り性が悪くなる。
【0047】
カーボンブラックとしては、旭#90(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN110,N134(以上、昭和キャボット株式会社製商品名),シースト9(東海カーボン株式会社製商品名),ダイヤブラック−A(三菱化学製商品名)などのSAFカーボン(平均粒径18〜22μm)、シースト9H(東海カーボン株式会社製商品名)などのSAF−HSカーボン(平均粒径20μm前後)、旭#80(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN220(昭和キャボット株式会社製商品名),シースト6(東海カーボン株式会社製商品名),ダイヤブラック I,N220M(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのISAFカーボン(平均粒径19〜29μm)、旭#75(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN339(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストKH(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックN339(三菱化学株式会社製商品名)などのN−339カーボン(平均粒径24μm前後)、旭#80L(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN219(昭和キャボット株式会社製商品名),シースト600(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックLI(三菱化学株式会社製商品名)などのISAF−LSカーボン(平均粒径21〜24μm)、旭#78(旭カーボン株式会社製商品名),シースト5H(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラック II(三菱化学株式会社製商品名)などのI−ISAF−HSカーボン(平均粒径21〜31μm)、旭#70(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN330(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストS(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラック−H(三菱化学株式会社製商品名)などのHAFカーボン(平均粒径26〜30μm)、旭#70H(旭カーボン株式会社製商品名),シースト3H(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラック−SH(三菱化学株式会社製商品名)などのHAF−HSカーボン(平均粒径22〜30μm)、旭#70IH(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN351(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストNH(東海カーボン株式会社製商品名)などのN−351カーボン(平均粒径29μm前後)、旭70L(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN326(昭和キャボット製商品名),シースト300(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックLH(三菱化学株式会社製商品名)などのHAF−LSカーボン(平均粒径25〜29μm)、旭70IN(旭カーボン株式会社製商品名),シーストN(東海カーボン製商品名)などのLI−HAFカーボン(平均粒径29μm前後)、旭60H(旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックMAF(昭和キャボット株式会社製商品名),シースト116(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックN550M,SF,M(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのMAFカーボン(平均粒径30〜35μm)、旭#60,#60U(以上、旭カーボン株式会社製商品名),ショウブラックN550(昭和キャボット株式会社製商品名),シーストSO,FM(以上、東海カーボン株式会社製商品名),ダイヤブラック−E,EY(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのFEFカーボン(平均粒径40〜52μm)、旭#50,#50U,#51(以上、旭カーボン株式会社製商品名),シーストS(東海カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックR(三菱化学株式会社製商品名)などのSRFカーボン(平均粒径58〜94μm)、旭#35(旭カーボン株式会社製商品名),ダイアブラックN760M,LR(以上、三菱化学株式会社製商品名)などのSRF−LMカーボン、旭#55(旭カーボン株式会社製商品名),シーストV(東海カーボン株式会社製商品名)などのGPFカーボン(49〜84μm)が例示される。
【0048】
前記シリカ系充填剤としては、アエロジル130,200,300,380,R972,R974(以上、日本アエロジル株式会社製商品名)やレオロシールQS13,QS30,QS38,QS102(以上、株式会社トクヤマ製商品名)の如き乾式シリカ、カープレックス#67,#80,#100,#1120,XR,22S,CS−5,CS−7(以上、シオノギ製薬株式会社製商品名)やシルトンA,R−2(以上、水沢化学工業株式会社製商品名)やトクシールAL−1,Gu,U,UR,US(以上、株式会社トクヤマ製商品名)やニップシールAQ,ER,LP,NA,NP,NS−K,VN3(以上、日本シリカ株式会社製商品名)やUltrasil VN3(デグサ(Degussa)(ドイツ)社製商品名)やHi−Sil233(ピー・ピー・ジー・インダストリーズ(PPG Industries)(アメリカ)社製商品名)の如き湿式シリカなどが例示される。
【0049】
また、白艶華CC,DD,O,U(以上、白石工業株式会社製商品名)の如き活性化炭酸カルシウム、白艶華A,AA(以上、白石工業株式会社製商品名)の如き特殊炭酸カルシウム、ミストロンベーパー(日本ミストロン株式会社製商品名)の如きマグネシウム・シリケート、ハイトロン,ハイトロンA,ミクロライト,US−100,US−150S,US−150SS,ハイラック,ハイラックSS(以上、竹原化学工業株式会社製商品名)の如きけい酸マグネシウム、ウィンナークレーA(ハードクレー:川茂株式会社製商品名)やハードトップクレー,ソフトクレー,クラウンクレー(以上、白石カルシウム株式会社製商品名)やシルカナイト,NNクレー,スペシャル・カオリンクレー,ハードブライト,5号クレー,SPMAクレー,ユニオンクレーRC−1,グロッマクスLL,ハイドライトPX(以上、竹原化学工業株式会社製商品名)やJP−100カオリン,5Mカオリン,NNカオリン,ハードシル,STカオリン,カルタボ(以上、土屋カオリン工業株式会社製商品名)の如きクレー(けい酸アルミニウム)、ST−100,ST−200,ST−301(以上、白石カルシウム株式会社製商品名)やNulok321,Nucap100,Nucap190,Nucap200,Nucap390(以上、ジェイ・エム・ヒューバー(J.M.Huber)(アメリカ)社製商品名)やBurgess KE,CB,5178,2211(以上、バーゲス・ピグメント(Burgess Pigment)(アメリカ)社製商品名)の如きシラン改質クレーなどを適宜併用してもよい。
【0050】
本発明のローラ用ゴム組成物には、必要に応じて、寸法安定性や低価格などを目的として、ベースゴム100重量部に対して、5〜100重量部程度の増量充填剤を添加してもよい。
【0051】
前記増量充填剤としては、Green Ball(井上石灰工業株式会社製商品名)やタマパールTP−121,TP−121R,TP222H,TP−222HS,TP−123,TP−123CS(以上、奥多摩工業株式会社製商品名)やシルバーW(白石工業株式会社製商品名)の如き軽質炭酸カルシウム、ホワイトロンSSB,SB,S(以上、白石カルシウム株式会社製商品名)やサンライト#100,#300,#700,#800,#1000,#1500,#2000,#2200,#2500(以上、竹原化学工業株式会社製商品名)やNS#100,NS#200,NS#400,NS#600,NS#1000,NS#2300,NS#2500,NS#2700,NS#3000,SS#30,SS#80,NN#200,NN#500(以上、日東粉化工業株式会社製商品名)やスーパーS,SS,SSS,4S,#1500,#1700,#2000(以上、丸尾カルシウム株式会社製商品名)の如き重質炭酸カルシウム、JET−S(浅田製粉株式会社製商品名)やタルクGTA,CTA1,CTA2,微粉タルク(以上、クニミネ工業株式会社製商品名)やMS,MS−P,MS−A,ND,SW,SW−E,SWA,SWB,SSS,SS,S(以上、日本タルク株式会社製商品名)などのタルク(滑石)、クリスタライトAA,VX−S,VX−S−2,VX−SR(以上、株式会社龍森製商品名)やMin−U−Sil 5,10,15,30(以上、ユー・エス・シリカ(U.S.Silica)(アメリカ)社製商品名)やImsil A−10,A−15,A−25,A−108(以上、イリノイ・ミネラルズ(Illinois Minerals)(アメリカ)社製商品名)の如き石英粉、JA−30W,325M(以上、浅田製粉株式会社製商品名)やNYAD325,400,1250,G(以上、ナイコ(NYCO)(アメリカ)社製商品名)の如きウォラストナイト(メタけい酸カルシウム)、Celite 270,281,501,503,505,535,545,560,577,FC,SSC,Super Floss,Snow Floss(以上、ジョンズ−マンビル(Johns−Manville)(アメリカ)社製商品名)やラジオライト#100,#200,#300,#500,#500S,#600,#700,#800,#800−S,#900,F,SPF,ファインフローA,ファインフローB(以上、昭和化学工業株式会社製商品名)の如きけい藻土、亜鉛華2種(堺化学工業株式会社製商品名)の如き酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化チタン、二硫化モリブデンなどが例示され、通常は1〜数種類が補強性充填剤と共に併用される。
【0052】
本発明のローラ用ゴム組成物を転写ローラなどに適用する場合には、半導電性のために、必要に応じて導電性付与剤、例えば導電性カーボンブラック、導電性酸化亜鉛、導電性酸化錫、導電性酸化チタンなどを、ベースゴム100重量部に対して、種類にもよるが一般に3〜150重量部程度適宜併用する。
【0053】
本発明のローラ用ゴム組成物には、必要に応じて、ゴム練り性や押し出し性の改善のために、ベースゴム100重量部に対して、0.3〜5重量部程度の滑剤や内部離型剤を添加することができる。あまり多量の添加は、ブルームやブリードや融合不良などを引き起こすので、種類にもよるが通常は0.5〜1重量部程度添加される。
【0054】
前記滑剤や内部離型剤としては、三井ハイワックス100P,110P,200P,210P,220P,320P,420P(以上、三井石油化学工業株式会社製商品名)の如き低分子ポリエチレン、ルナックS−20,S−30,S−40(以上、花王株式会社製商品名)やFA−KR(日本油脂株式会社製商品名)やアデカ脂肪酸SA−20,SA−300,SA−400(以上、旭電化株式会社製商品名)の如きステアリン酸、プラストロジン,プラストロジンS(以上、藤沢薬品工業株式会社製商品名)の如き脂肪酸アミド、アーモワックスEBS(ライオン・アクゾ株式会社製商品名)の如き脂肪酸窒素誘導体、レオドールSP−L10(花王株式会社製商品名)の如きソルビタンモノラウレート(ラウリン酸ソルビタンエステル)、レオドールSP−P10(花王株式会社製商品名)の如きソルビタンモノパルミテート(パルミチン酸ソルビタンエステル)、レオドールSP−S10(花王株式会社製商品名)の如きソルビタンモノステアレート(ステアリン酸ソルビタンエステル)、レオドールSP−O10(花王株式会社製商品名)の如きソルビタンモノオレエート(オレイン酸ソルビタンエステル)、リパール860K(ライオン株式会社製商品名)の如きソディアムジアルキルスルホサクシネート(ジ2エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムなど)、Aflex42(レイン・ケミー(Rein Chemi)(ドイツ)社製商品名)の如き極性化合物と界面活性剤の混合物、Struktol A60(シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)社製商品名)の如き高級不飽和脂肪酸亜鉛、Struktol EF44(シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)社製商品名)の如き特殊脂肪酸亜鉛、Struktol WB16(シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)社製商品名)の如き脂肪酸カルシウムと脂肪酸アミドの混合物、Struktol WB42(シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)製商品名)の如き脂肪酸エステルと脂肪酸金属塩の混合物、Struktol WB212(シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)社製商品名)の如き高級脂肪酸エステル水和物と無機キャリアの混合物、Struktol WB222(シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)社製商品名)の如き多価アルコール脂肪酸エステル、Struktol WS180,WS280(以上、シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)社製商品名)の如き有機シリコーン縮合物、Struktol W33FL(シール・アンド・ザイラッカー(Schill & Seillacher)(ドイツ)社製商品名)の如き高分子量天然脂肪族アルコールと脂肪族石鹸を不活性フィラーに処理した混合物、KF96(信越化学工業株式会社製商品名)の如きシリコーンオイル、パラフィンワックス、モンタンワックスなどが例示される。
【0055】
本発明の組成物の加硫または架橋は、当業者に周知の常法により行われる。
【実施例】
【0056】
つぎに、本発明に係る半導電性ローラのより具体的な実施例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
まず、ベースゴムたるエピクロルヒドリンゴムとしてエピクロマーCG−102(ダイソー株式会社製商品名)を60重量部、NBRとしてJSR N250S(JSR株式会社製品名)を40重量部、軟化剤としてのジブチルジグリコール・アジペート(BXA、大八化学工業株式会社製商品名)を5重量部、酸化亜鉛として亜鉛華2種(堺化学工業株式会社製商品名)を5重量部、ステアリン酸としてルナックS−20(花王株式会社製商品名)を1重量部、加硫剤として金華印微粉硫黄325meshを1.0重量部、加硫促進剤としてアクセルDM(川口化学工業株式会社製商品名)を1.0重量部とアクセルTS(川口化学工業株式会社製商品名)を0.5重量部、カーボンブラックとして旭#50(旭カーボン株式会社製商品名)を20重量部、制電剤としてサンコノールTBX−8310を表1に示した所定量を計量した。各成分を、周知のゴム練りロールで混練りして、未加硫のローラ用ゴム組成物を得た。
【0058】
次に、前記ローラ用ゴム組成物を、外径がφ8mm、ゴム部の全長が320mmの芯金と共に、180℃でプレス成型し、芯金の外周にゴム層を加硫形成した。次に、この芯金のゴム層を、研磨機でφ20mmに研磨して、図1に示すゴムローラ1を製造した。
【0059】
このローラを、標準状態(22℃55%、以下、N/Nと略す)にて24間放置した後、ハイレスターUP(三菱化学株式会社製商品名)にて表面抵抗(Ω/□)を測定した。なお、このときの同一ロットのローラの抵抗ばらつきは±log0.05(Ω/□)以内であった。
【0060】
次に、このローラを、高温高湿状態(28℃85%、以下H/Hと略す)にて24時間放置した後、ハイレスターUPにて表面抵抗(Ω/□)を測定した。
【0061】
次に、このローラを低温低湿状態(10℃15%、以下L/Lと略す)にて24時間放置した後、ハイレスターUPにて表面抵抗(Ω/□)を測定した。
【0062】
以上の結果から、各々のローラについて、L/Lの測定値からH/Hの測定値を引いた差を求めた。その結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1に示す試験結果から、実施例中、イオン導電性ゴム100重量部に制電剤を1〜10重量部含有させた組成物で芯金外周に弾性層を形成したローラは、従来品(サンコノールが0phr)の環境変動による電気抵抗の変動を軽減させることが判明した。例えば、表1において、制電剤(サンコノール)を用いた場合に、その配合量が5重量部であると、L/LとH/Hとの抵抗差が、添加しない場合の1.25(logΩ/□)から0.92(logΩ/□)に軽減する。そして5重量部を超えると、L/LとH/Hとの抵抗差が一定となり増量効果が見られなくなる。
【0065】
この理由は、以下のように推定されるが、本発明はその理論に拘束されるわけではない。ベースゴムであるエピクロルヒドリンゴム、NBRなどのイオン導電性ゴムは、ポリマーにエチレンオキサイドなどの大きな極性基を持ち、電子偏在しているため、極性基に配位しているカチオンイオンの影響により、その電気抵抗がイオン導電性を示す。しかしながら、ゴムの主鎖のブラウン運動によるセグメントの運動に伴って配位の組み替えが進行し、結果としてゴムのブラウン運動の大小、言い換えれば温度条件の高低により抵抗値の環境依存性が発生する。このことはエピクロルヒドリンゴムなどのイオン導電性ゴムの環境依存性は湿度よりも温度に依存する点からも支持される。
【0066】
リチウム塩及びアジピン酸エステルの混合物からなる制電剤を添加したイオン導電性ゴムでは、ゴム分子中にリチウムイオン(Li+)が配位しており、外部から電場が印加されると、ゴムのブラウン運動とは関係なくイオン導電性を発揮することができるので、イオン導電性ゴムの環境依存性を軽減することができるのである。
【0067】
〔実施例2〕
次に、ベースゴムたるエピクロルヒドリンゴムとしてのエピクロマーCG−102(ダイソー株式会社製商品名)と共にNBRであるJSR N250S(JSR株式会社製品名)を表2のブレンド比にて、ベースゴムの合計を100重量部とし、軟化剤としてのジブチルジグリコール・アジペート(BXA、大八化学工業株式会社製商品名)を5重量部、酸化亜鉛として亜鉛華2種(堺化学工業株式会社製商品名)を5重量部、ステアリン酸としてルナックS−20(花王株式会社製商品名)を1重量部、加硫剤として金華印微粉硫黄325meshを1.0重量部、加硫促進剤としてアクセルDM(川口化学工業株式会社製商品名)を1.0重量部とアクセルTS(川口化学工業株式会社製商品名)を0.5重量部、カーボンブラックとして旭#50(旭カーボン株式会社製商品名)を20重量部、制電剤としてサンコノールTBX−8310を5重量部計量した。各成分を、周知のゴム練りロールで混練りして、未加硫のローラ用ゴム組成物を得た。
【0068】
次に、前記ローラ用ゴム組成物を、外径がφ8mm、ゴム部の全長が320mmの芯金と共に、180℃でプレス成型し、芯金の外周にゴム層を加硫形成した。次に、この芯金のゴム層を、研磨機でφ20mmに研磨して、図1に示すゴムローラ1を製造した。
【0069】
このローラを、標準状態(22℃55%、以下、N/Nと略す)にて24間放置した後、ハイレスターUP(三菱化学株式会社製商品名)にて表面抵抗(Ω/□)を測定した。なお、このときの同一ロットのローラの抵抗ばらつきは±log0.05(Ω/□)以内であった。
【0070】
次に、このローラを、高温高湿状態(28℃85%、以下H/Hと略す)にて24時間放置した後、ハイレスターUPにて表面抵抗(Ω/□)を測定した。
【0071】
次に、このローラを低温低湿状態(10℃15%、以下L/Lと略す)にて24時間放置した後、ハイレスターUPにて表面抵抗(Ω/□)を測定した。
【0072】
以上の結果から、各々のローラについて、L/Lの測定値からH/Hの測定値を引いた差を求めた。その結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表2に示す試験結果から、実施例2中、イオン導電性ゴムとしてエピクロルヒドリンゴムとNBRのブレンド比が、重量部でエピクロルヒドリンゴム80:NBR20〜エピクロルヒドリンゴム5:NBR95とした組成物で芯金外周に弾性層を形成したローラは、従来の環境変動による電気抵抗の変動を軽減させることができ、この範囲であれば環境変動による電気抵抗の変動を1桁以内に抑えることができることが判明した。
【0075】
この結果は、抵抗値の環境依存性低減にはエピクロルヒドリンゴムとNBRのブレンドが不可避であり、特に少量のNBRのブレンドが有効であることを意味する。
【0076】
〔比較例1〕
そこでベースゴムにエピクロルヒドリンゴムであるエピクロマーCG−102(ダイソー株式会社製商品名)を100重量部とし、制電剤としてサンコノールTBX−8310を5重量部添加した以外は実施例1と同様に測定した結果を表3に示す。
【表3】

【0077】
〔比較例2〕
次にベースゴムにNBRであるJSR N250S(JSR株式会社製品名)を100重量部とし、制電剤としてサンコノールTBX−8310を5重量部添加した以外は実施例1と同様に測定した結果を表4に示す。
【表4】

【0078】
表3及び表4に示す試験結果から、NBRとエピクロルヒドリンゴムをブレンドせずにサンコノールTBX−8310を添加した場合は、標準状態での電気抵抗値を下げる効果はあるものの、環境依存性改善にはさほど効果がないことがわかった。
【0079】
なお、本発明の実施例には、芯金の外周に弾性層を形成したローラ1を例示したが、弾性層の外周にウレタン層やポリアミド層やフッ素樹脂層などを形成してもよいし、また、本発明のゴム組成物以外の組成物で形成した弾性体の外周の表層に、本発明の組成物を形成してもよい。さらには、本発明の組成物は、アゾジカルボンアミドなどの発泡剤を添加してスポンジゴムとしてもよい。
【0080】
(発明の効果)
以上説明したように、本発明の半導電性ローラ用ゴム組成物によれば、同一ロットのローラの電気抵抗のばらつきが小さく、環境変化に依存した電気抵抗変化の少ないローラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明に従うローラ用ゴム組成物を用いた半導電性ローラの実施の形態の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 ローラ
2 芯金
3 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピクロルヒドリンゴムとNBRとのブレンドからなるベースゴム100重量部に対して、制電剤を3〜10重量部添加した半導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記制電剤がリチウム塩とアジピン酸との混合物であることを特徴とする請求項1に記載の半導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記エピクロルヒドリンゴムとNBRとのブレンド比が、重量部でエピクロルヒドリンゴム80:NBR20〜エピクロルヒドリンゴム5:NBR95であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導電性ローラ用ゴム組成物。
【請求項4】
少なくとも芯金の外周に請求項1、2または3に記載の半導電性ローラ用ゴム組成物で弾性層が形成されていることを特徴とする半導電性ローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−197267(P2008−197267A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31058(P2007−31058)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000143307)株式会社荒井製作所 (100)
【Fターム(参考)】