説明

半導電性ロール、及びその製造方法、並びに該半導電性ロールを用いた画像形成装置

【課題】 振れ精度、真円度が向上し、均一帯電が可能な半導電性ロール、及び該半導電性ロールを低い製造不良率で製造する半導電性ロールの製造方法、並びに該半導電性ロールを帯電部材として用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 芯金2の外周に発泡層4を形成し、該芯金2を接着剤を介してチューブ6に挿入し、接着剤を硬化させることにより該芯金2の外周に形成している発泡層4とチューブ6とを接着させる半導電性ロールの製造方法であって、前記接着剤の硬化前に、前記芯金2を挿入したチューブ6の形状を矯正することを特徴とする半導電性ロールの製造方法、及び該半導電性ロールの製造方法により製造された、発泡層のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°であり、前記半導電性ロールの振れ精度が0.35mm以下であることを特徴とする半導電性ロール、並びに該半導電性ロールを帯電ロールとして用いた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザープリンター、ファクシミリ、これら複合OA機器などの電子写真方式を利用した画像形成装置の帯電ロールに用いられる半導電性ロール、及びその製造方法、並びに該半導電性ロールを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置の多くは、有害とされているオゾンの発生が非常に少ない接触帯電および接触転写方式を採用しており、なかでもロール状態での耐摩耗性や転写部での転写材搬送性に優れたロール状の部材が主流となっている。この部材の多くは、弾性を有する材料が用いられ像担持体である感光体や中間転写体に対して確実にニップの形成を可能としている。
これらのロールは一般的に、ステンレス(SUS)、Fe、Alの金属もしくは合金等の芯金上に、カーボンブラック、イオン導電性剤を加えることによりその抵抗を1×105〜1×1012[Ω]程度にしたゴムや樹脂を形成した、半導電性の弾性ロールが用いられている。
【0003】
帯電ロールを例に挙げて説明する。近年高画質化の要求から、トナーの小粒子化が図られている。このトナーの小粒子径化によって、その粒子形状がほぼ球形であるため、次の様なデメリットがあることが知られている。すなわち、転写後に、クリーナーレスの画像形成装置において像担持体表面に残留しているトナー、あるいは、クリーニング工程を有する画像形成装置においてクリーニング工程を通過後に像担持体表面に残留しているトナーが、接触帯電器と像担持体との当接部を通過した際に、このトナーが変形して像担体表面に付着する。この際このような付着が繰りかえされることにより、像担持体表面にトナーが異物として固着するトナーフィルミングが発生する課題がある。
【0004】
これらの課題に対し、帯電器の発泡層を有する帯電器を用いる等の提案がなされているなど、近年、帯電器の低硬度化が進んでいる。具体的には、金属シャフトの外周に、3次元網目構造からなる導電性弾性層が形成され、さらに該導電性弾性層の外周に、半導電性弾性層が形成されてなることを特徴とする電子写真用ロールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に提案されている電子写真用ロールは、金属シャフトに接着された3次元網目構造を有する導電性発泡層と半導電性弾性シームレスチューブで構成されているので、半導電性ロールとして機能させるためには、この導電層発泡層と半導電シームレスチューブを組み合わせる必要がある。通常これら半導電性ロールは何らかの部材に接触した状態で回転しながら使用される。
【0005】
このため前記発泡層とチューブが固定されていない場合、回転によりチューブの位置がずれる問題が生じるため、通常は前記発泡層と弾性層チューブを接着などの手段により固定することが一般的である。しかしながらここで使用されるチューブは前記発明においては100μm以上とあるが、チューブ加工性と性能との関係から500μm〜1000μm程度の厚さのものが使用されるが、この程度の厚さではチューブ単体でその形状を保持することか難しく、かつ発泡層にチューブを外挿した際の歪が接着によって固定されるためにより振れ、真円度といった形状精度を確保することが難しい。この結果所望の精度を有する半導電性ロールを確保することが難しく、結果、製造不良率が高く、非常にロールとしてコストが高いといった課題を有していた。

【特許文献1】特開2003−162105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決することを目的とする。即ち、本発明は、振れ精度、真円度が向上し、均一帯電が可能な半導電性ロール、及び該半導電性ロールを低い製造不良率で製造する半導電性ロールの製造方法、並びに該半導電性ロールを帯電部材として用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討の結果、下記の本発明が前記課題を解決することを見出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
<1> 芯金の外周に発泡層を形成し、該芯金を接着剤を介してチューブに挿入し、接着剤を硬化させることにより該芯金の外周に形成している発泡層とチューブとを接着させる半導電性ロールの製造方法であって、前記接着剤の硬化前に、前記発泡層を形成した芯金を挿入したチューブの形状を矯正することを特徴とする半導電性ロールの製造方法である。
【0008】
<2> 前記形状の矯正が、前芯金を挿入したチューブを二本の当接させた円筒形状のロール上に載置し、前記二本の当接させた円筒形状のロールをそれぞれ該円筒形状のロールの回転軸を中心に回転させることによりなされることを特徴とする<1>に記載の半導電性ロールの製造方法である。
<3> 前記形状の矯正が、前記発泡層を形成した芯金を挿入したチューブを円筒形状のロールに当接させ、該芯金の回転軸と該円筒形状のロールの回転軸とを、平行にして一定の距離に保ちながら、前記円筒形状のロールを該円筒形状のロールの回転軸を中心に回転させることによりなされることを特徴とする<1>に記載の半導電性ロールの製造方法である。
【0009】
<4> 前記形状の矯正が、前記発泡層を形成した芯金を挿入したチューブを平滑な平面に当接させ、該チューブを芯金の回転軸を中心に回転させることによりなされることを特徴とする<1>に記載の半導電性ロールの製造方法である。
<5> 前記芯金の回転軸と前記平滑な平面とを、平行にして一定の距離に保ちながら、前記チューブを芯金の回転軸を中心に回転させることを特徴とする<4>に記載の半導電性ロールの製造方法である。
【0010】
<6> <1>〜<5>の何れか1つに記載の半導電性ロールの製造方法により製造された半導電性ロールであって、前記発泡層のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°であり、前記半導電性ロールの振れ精度が0.35mm以下であることを特徴とする半導電性ロールである。
<7> 芯金の外周に発泡層が形成され、更に該発泡層の外周にゴムチューブからなる半導電性弾性層が形成された半導電性ロールであって、前記発泡層のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°であり、前記半導電性ロールの振れ精度が0.35mm以下であることを特徴とする半導電性ロールである。
【0011】
<8> 少なくとも、像担持体と、これに接触する帯電部材とを備え、静電潜像を形成するに先立ち、前記帯電部材に電圧を印加させつつ、前記帯電部材と前記像担持体とをそれぞれ周動回転させることにより、前記像担持体表面を帯電する構成を含む画像形成装置であって、前記帯電部材が<6>又は<7>に記載の半導電性ロールであることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、振れ精度、真円度が向上し、均一帯電が可能な半導電性ロール、及び該半導電性ロールを低い製造不良率で製造する半導電性ロールの製造方法、並びに該半導電性ロールを帯電部材として用いた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の半導電性ロールの製造方法は、図1に示すように、芯金2の外周に発泡層4を形成し、該外周に発泡層4を形成した芯金2をチューブ6に、発泡層4の外周とチューブ6の内周とが接着剤を介して接するように挿入し、発泡層4とチューブ6とを接着剤を硬化させることにより接着させる半導電性ロールの製造方法であって、前記接着剤の硬化前に、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6の形状を矯正することを特徴とする。このように前記接着剤の硬化前に、チューブ6の形状を矯正することにより、チューブ6の挿入時に生じた歪を除去するため、振れ精度、真円度が向上した半導電性ロールが得られる。
【0014】
芯金2は、例えば、アルミニウム、銅合金、ステンレス鋼等の金属または合金の材質、または、導電性の樹脂などの導電性の材質等が挙げられる。
【0015】
次に、発泡層4について説明する。本発明において、発泡層とは、「3次元網目構造」を有する層である。ここで「3次元網目構造」とは、3次元に網目が形成された骨格と、その骨格相互間に存在する空間とからなり、空間が前記骨格により仕切られること無く、相互に連通した状態となっているものをいう。したがって、構造体内部に多数の気泡を有する、所謂発泡体は、一般に個々の気泡が独立しており、膜により気泡相互が仕切られ連通した状態とはなっていないので、本発明に言う「3次元網目構造」の概念には含まれない。
【0016】
本発明において、3次元網目構造としては、骨格間の最短距離が200μm以上であることが好ましく、300〜700μmの間であることがより好ましい。また、前記骨格の太さとしては、1000μm以下であることが好ましく、50〜300μmの間であることがより好ましい。このような構造とすることにより、従来のスポンジ等の発泡体では発現出来なかった超低硬度の導電性弾性層を実現することができる。
【0017】
発泡層4における3次元網目構造の骨格間の最短距離が200μmを下回ると、発泡層4が硬くなり、目的とする超低硬度が発現出来なくなる場合がある。また、発泡層4における3次元網目構造の骨格の太さが1000μmを上回っても、発泡層4が硬くなり、目的とする超低硬度が発現出来なくなる場合がある。
【0018】
なお、ここで言う「骨格間の最短距離」とは、2以上の分岐点を介して繋がる2つの骨格であって対向する骨格同士、あるいは、直接的に繋がりを持たない独立した骨格同士、における最短距離を意味するものとする。また、骨格は、分岐点周辺では太くなっている場合があるが、前記「骨格の太さ」とは、分岐点周辺以外の平均的な太さの部分について論じたものである。
【0019】
発泡層4を形成する導電性または半導電性のバインダー材料としては、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ポリブタジエンゴム)、ハイスチレンゴム(Hi styrene resin masterbactch),IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、ハロゲン化ブチルゴム(Halogenated butylrubber),NBR(ニトリルブタジエンゴム)、水添加NBR(H−NBR)、EPDM(エチレンープロピレンージエン3元共重合ゴム)、EPM(エチレンプロピレンゴム),NBRとEPDMとをブレンドしたゴム、CR(クロロプレンゴム)、ACM(アクリルゴム)、CO(ヒドリンゴム),ECO(エピクロルヒドリンゴム)、塩素化ポリエチレン(Chlorinated−PE),VAMAC(エチレン・アクリルゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、AU(ウレタンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、NR(天然ゴム)、CSM(クロロスルホン化ポリエチレンゴム)等のゴム材料が挙げられる。前記バインダー材料としては、上記例示に制限されるものではない。
【0020】
発泡層4は、前記材料群から選ばれたバインダー材料を用い、以下に示す何れかの方法を選択することで、3次元網目構造からなる層を成形することが出来る。
・前記バインダー材料を適当な溶剤に溶かした後、攪拌機により泡立ててから所定の形状に成形する方法。
・前記バインダー材料に発泡剤を練り込んだ後、所定の形状に成形し加熱発泡させる方法。
・前記バインダー材料を特定の溶剤にのみ溶ける成分と共に混練し、所定の形状に成形した後に前記特定の溶剤に浸漬して前記成分を溶解させ、溶解しなかった前記バインダー材料の部分のみを残す方法。
【0021】
この際、3次元網目構造体からなる層に導電性を付与するには、(1)当該層を成形するに際し、各材料(溶液、混練物等)に導電性材料を予め混合しておくことで導電性を付与する方法、(2)所定の形状に成形した後、これを導電性材料を分散および/または溶解した導電性塗料あるいは導電性接着剤に浸漬させたり、あるいは該導電性塗料を噴霧したりすることによって、事後的に導電性を付与する方法、等が挙げられ、本発明においては、何れの方法により導電性を発現させてもよい。
【0022】
チューブ6は、半導電性部材性弾性層を形成するもので、その構成材料としては、SBR(スチレンブタジエンゴム)、BR(ポリブタジエンゴム)、ハイスチレンゴム(Hi Styrene esin masterbatch)、IR(イソプレンゴム)、IIR(ブチルゴム)、ハロゲン化ブチルゴム(Halogenated butylrubber)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、水添化NBR(H−NBR)、EPDM、EPM(エチレンプロピレンゴム)、NBR/EPDMブレンド、CR(クロロプレンゴム)、ACM(アクリルゴム)、CO(ヒドリンゴム)、ECO(エピクロルヒドリンゴム)、塩素化ポリエチレン(Chlorinated−PE)、VAMAC(エチレン−アクリルゴム)、VMQ(シリコーンゴム)、U(ウレタンゴム)、FKM(フッ素ゴム)、NR(天然ゴム)、CSM(クロロスルフォン化ポリエチレンゴム)等のゴム材料;PVC(ポリ塩化ビニル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド、ナイロン、エチレン酢酸ビニル、エチレンエチルアクリレート、エチレンアクリル酸メチル、スチレンブタジエン、ポリアリレート、ポリカーボネート、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂材料から選ばれる。この中でもゴム材料であることが好ましい。
【0023】
また、チューブ6の内周と発泡層4の外周とを接着させる接着剤としては、ウレタン、ポリエステル、ナイロン、エポキシ等の樹脂バインダーに導電剤、例えば、導電性カーボンや金属粉末を分散し、溶剤に溶解した導電性接着塗料等が挙げられる。前記接着剤の塗布方法としては、噴霧、スプレー塗布、浸漬塗布、刷毛塗り等の何れでも構わない。
このように接着剤を塗布して形成された導電性接着層の厚みとしては、特に制限はないが、1〜20μm程度が好ましい。また、導電性接着層における100V印加時の電気抵抗としては、103Ω以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の半導電性ロールの製造方法は、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6の形状を、前記接着剤の硬化前に矯正することを特徴とする。この矯正を行うことにより、後述する本発明の半導電性ロールにおける振れ精度を0.35mm以下とすることができる。
ここで、矯正するとは、外的力を加えて、半導電性ロールの振れ精度、及び真円度を矯正することをいう。
【0025】
前記矯正する方法としては、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を二本の当接させた円筒形状のロール上に載置し、該二本の当接させた円筒形状のロールをそれぞれ回転軸を中心に回転させる方法(第一の方法)が挙げられる。該円筒形状のロールとしては、アルミ製のパイプが挙げられるが、平滑性が得られるものであれば特に制限はない。また、中空パイプでも中実のものでも構わない。円筒形状のロールの外径、回転数、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6との距離は、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6の半径により異なるので、汎用性を持たせるため、可変設定可能であることが好ましい。一方、載置時間としては、0.5〜30secが好ましく、3〜10secがより好ましい。
【0026】
また、前記矯正する方法として、図2に示すように、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を円筒形状のロール8に当接させ、円筒形状のロール8を回転軸を中心に回転させる方法(第二の方法)が挙げられる。円筒形状のロール8としては、前記第一の方法における円筒形状のロールが好ましく用いられる。円筒形状のロール8の外径、回転数、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6との距離は特に限定されない。
前記第二の方法においては、芯金2の回転軸と該円筒形状のロール8の回転軸とを平行にして、一定の距離(図2における距離51)に保ちながら、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を円筒形状のロール8に当接させ、円筒形状のロール8を回転軸を中心に回転させることが好ましい。
この方法における発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6と円筒形状のロール8との食い込み量としては、0.1〜0.5mmが好ましく、0.2〜0.3mmがより好ましい。また、当接時間としては、0.5〜30secが好ましく、3〜10secがより好ましい。
【0027】
更に、前記矯正する方法として、図3に示すように、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を平滑な平面9に当接させ、芯金2の回転軸を中心に回転させる方法(第三の方法)が挙げられる。このとき、芯金2の回転軸と平滑な平面とを平行にして一定の距離(図3における距離54)に保ちながら、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を芯金2の回転軸を中心に回転させることが好ましい。
この方法における発泡層4を形成した芯金2を挿入した平滑な平面9との食い込み量としては、0.1〜0.5mmが好ましく、0.2〜0.3mmがより好ましい。また、当接時間としては、0.5〜30secが好ましく、3〜10secがより好ましい。更に、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6の回転数としては、15〜300rpmが好ましく、30〜240rpmがより好ましい。
【0028】
第一の本発明の半導電性ロールは、既述の本発明の半導電性ロールの製造方法により製造された半導電性ロールであって、発泡層4のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°であり、前記半導電性ロールの振れ精度が0.35mm以下であることを特徴とする半導電性ロールである。尚、本発明における振れ精度は、JIS B0021に定義されている「円周振れ」を意味するものである。
ここで、アスカーF硬度計による硬度は、高分子計器(株)製アスカーゴム硬度計F型を使用し、25℃55%RHで測定することにより測定した値である。
一方、振れ精度は、アサカ理研工業株式会社ロール径測定システムROLL2000を使用することにより測定した値である。具体的には、測定しようとする半導電性ロールを、円周振れの測定基準面となる両端部を支持するように、アサカ理研工業株式会社ロール径測定システムROLL2000にセットし、帯電ロールの回転数60rpm、回転時間5secの条件下で、被測定物である半導電性ロールと、この半導電性ロール並行に設置されたナイフエッジとの距離を測定し、この5sec間における距離の変動幅から円周振れを求めた。上記の測定を半導電性ロールの両端部から5mmの位置、および、軸方向中央部分の3箇所について測定し、その平均を本発明における振れ精度(円周振れ)とした。
【0029】
上述のように、第一の本発明の半導電性ロールにおける発泡層のアスカーF硬度計による硬度は、30〜80°であることを必須とし、30〜50°であることが好ましく、30〜40°であることがより好ましい。前記スカーF硬度計による硬度が30°未満であると、チューブに発泡層を形成した芯金を挿入した後のロール形状を維持できない場合があり、80°を超えると、帯電器としてロールを使用した際、感光体と帯電器間での当接圧が高くなり、不具合を引き起こす場合がある。
【0030】
また、第一の本発明の半導電性ロールの振れ精度は、0.35mm以下であることを必須とし、0.2mm以下であることが好ましい。前記振れ精度が0.35mmを超えると、半導電ロールを帯電器として使用した場合、感光体に接触しない部分が生じ、帯電不良等の不具合が生じる場合がある。
【0031】
第一の本発明の半導電性ロールにおける発泡層4の厚みとしては、チューブを挿入した後、弾性層として充分機能させ、かつ寸法精度が安定化する点で、0.5〜10.0mmであることが好ましく、1.0〜5.0mmであることがより好ましい。
また、チューブ6により形成された半導電性弾性層の厚みとしては、加工性、形状維持性、電気的特性の安定性の点で、0.1〜2.0mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましい。
【0032】
一方、第二の本発明の半導電性ロールは、芯金の外周に発泡層が形成され、更に該発泡層の外周にゴムチューブからなる半導電性弾性層が形成された半導電性ロールであって、前記発泡層のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°であり、前記半導電性ロールの振れ精度が0.35mm以下であることを特徴とする。
【0033】
第二の本発明の半導電性ロールにおけるチューブは、その材料がゴム材料に限定されるが、物性、寸法等の好ましい態様は、第一の本発明の半導電性ロールにおけるチューブと同様である。
また、第二の本発明の半導電性ロールにおける芯金、発泡層の好ましい態様は、第一の本発明の半導電性ロールにおける芯金、発泡層の好ましい態様と同様である。
【0034】
本発明の画像形成装置は、少なくとも、像担持体と、これに接触する帯電部材とを備え、静電潜像を形成するに先立ち、前記帯電部材に電圧を印加させつつ、前記帯電部材と前記像担持体とをそれぞれ周動回転させることにより、前記像担持体表面を帯電する構成を含む画像形成装置であって、前記帯電部材が既述の第一の本発明の半導電性ロール又は第二の本発明の半導電性ロール(以下、併せて「本発明の半導電性ロール」という場合がある。)に記載の半導電性ロールであることを特徴とする。
【0035】
以下、本発明の画像形成装置の一例を図4を用いて説明する。図4は、本発明の半導電性ロールを用いた画像形成装置10の一例を示す概略構成図である。なお、図4中の矢印は、各回転部材の回転方向を示している。また、既述の本発明の半導電性ロールは、像担持体を帯電させるための帯電ロールとして用いている。
図4に示すように、画像形成装置10は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の画像を形成する画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kが、所定の間隔をおいて並列状に配置されている。なお、ここでは、画像形成ユニット12Y、12M、12C、12Kはほぼ同構成とされているので、イエロー色に対応する画像形成ユニット12Yを例にとって説明する。
【0036】
画像形成ユニット12Yは、感光体ドラム(像担持体)14Yを備えており、感光体ドラム14Yは矢印Aの方向に図示しない駆動手段によって所定のスピードで回転駆動されるようになっている。
感光体ドラム14Yには、後述する帯電装置の帯電ロール16Yが接触するように配置されており、感光体ドラム14Yの表面を帯電させる。
感光体ドラム14Yの図中左側には、図示しない光走査装置が配置されており、感光体ドラム14Yにレーザ光18Yを照射する。これによって、感光体ドラム14Yの表面に静電潜像が形成される。
【0037】
また、レーザ光の照射位置よりも感光体ドラム14Yの回転方向下流側には、現像器20Yが配置されている。この現像器20Yは、感光体ドラム14Yの表面に形成された静電潜像を、イエロー色のトナーによって顕像化して、表面にトナー像を形成する。
感光体ドラム14Yのトナー像は、第1の一次中間転写ドラム22へ一次転写され、イエロー色とマゼンダ色のカラー像となり、二次中間転写ドラム26へ二次転写されることで、第2の二次中間転写ドラム24から転写されたシアン色、ブラック色のトナー像と重なり、イエロー色、マゼンダ色、シアン色、ブラック色のフルカラートナー像となる。
【0038】
ここで、図示しない用紙カセットから、記録紙Pが用紙搬送ロール30を経て、二次中間転写ドラム26と転写ロール28のニップ部に送り込まれ、記録紙Pの表面に、フルカラートナー像が静電転写される。このフルカラートナー像が転写した記録紙Pは、定着器32で加熱加圧されることによりトナー像が定着する。以上が、画像形成プロセスである。
【0039】
本発明の半導電性ロールは、前記発泡層のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°と軟らかいため、帯電部材として用いると、感光体ドラム(像担持体)上に残留するトナー等を吸収するため、感光体ドラムに傷をつけることがない。また、振れ精度が0.35mm以下と良好であるため、均一な帯電性が得られる。
【実施例】
【0040】
<実施例1>
図4における帯電ロール16を以下のように作製した。
ポリエーテルとイソシアネートとを混合し、攪拌機を用いて十分泡立てた。得られたウレタン樹脂を加熱硬化させ、3次元網目構造からなるウレタン材料を作製した。得られた3次元網目構造のウレタン材料の構造を顕微鏡で観察したところ、骨格間の最短距離は300μm以上(平均500μm)であり、且つ該骨格の太さは800μm以下(平均250μm)であった。得られた3次元網目構造からなるウレタン材料を、一辺が10mmで長さが320mmの角柱として切り出し、その中心に5mmφで長手方向に貫通する穴を設けた。次いで、外周にポリエステル系導電性接着剤を5μmの厚さでコーティングした。6mmφの硫黄快削鋼にニッケルメッキを施した(SUM−Ni)金属シャフトを、前記3次元網目構造からなるウレタン材料に設けられた穴に挿し込み、両者を一体化した。
このときのアスカーF硬度計による硬度は30°であった。
【0041】
その後、この金属シャフトを高速で回転させ外周の3次元網目構造からなるウレタン材料を研磨して、外径Φ8.5mmの3次元網目構造のウレタンからなる弾性層を備えたロールを作製した。さらに得られたロールをポリエステル系導電性接着剤に浸漬し、3次元網目構造のウレタンからなる弾性層の導電化処理を施して、導電性弾性層(発泡層)を形成した。これとは別に、エピクロルヒドリンゴム100質量部にイオン導電剤PEL−100(日本カーリット社製)3質量部を添加して十分混練した後、これを押し出し機を用いて成形後、研磨によって所望の外径に加工を行い、外径Φ10.0mm、肉厚750μmで長さ230mmの半導電性弾性層となるエピクロルヒドリンゴム製のチューブを作製した。そしてこの半導電性弾性層となるゴム製のチューブの内及び外周面に浸漬コーティング方法によってフッ素系樹脂を、膜厚5μmでコーティングした。一方、前記金属シャフトを挿し込んだウレタン樹脂の外周に、前記ポリエステル系導電性接着剤を5μm塗布し、チューブに対し圧入することにより前記ゴム製のチューブに挿入した。このときの前記金属シャフトを挿し込んだウレタン樹脂を挿入したゴム製のチューブの振れ精度(矯正前の振れ精度)を測定した。
【0042】
また、以下の発泡層を形成した芯金をゴム製のチューブに挿入する際に発生するゴム製のチューブの歪を、前記第二の方法(発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を円筒形状のロール8に当接させ、円筒形状のロール8を回転軸を中心に回転させる方法)により矯正するための矯正装置を作製した。
具体的には、長さ250mm、Φ20mmで全振れ精度が20μmのアルミパイプを用意し、このアルミパイプ(Φ20mm)と半導電性ロール(Φ10mm)の中心軸間距離を14.7mm(食い込み量0.3mm)となるように、アルミパイプと半導電性ロールの位置を固定でき、アルミパイプを回転駆動可能な装置を製作した。
【0043】
前記金属シャフトを挿し込んだウレタン樹脂を挿入したゴム製のチューブを、前記矯正装置を用い、アルミパイプの回転数45rpm、回転時間10secの条件で、半導電性ロールに生じた歪を除去した。得られた半導電性ロールの振れ精度(矯正後の振れ精度)を測定した。
【0044】
以上の条件で、半導電性ロールを96本作製し、それぞれの半導電性ロールに対して、矯正前の振れ精度及び矯正後の振れ精度を測定した。その結果を図5に示す。図5は、矯正前の振れ精度及び矯正後の振れ精度の結果を棒グラフとして表した図である。
図5に示す振れ精度の分布より、発泡層を形成した芯金を挿入したチューブの形状を矯正することにより、振れ精度として約1割の精度向上を果たすことができた。
また、前記矯正により、良好な振れ精度の指針である振れ精度0.2mm以下の半導電性ロールの比率が87%から97%へ改善された。
【0045】
尚、実施例1では、前記第二の方法(発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を円筒形状のロール8に当接させ、円筒形状のロール8を回転軸を中心に回転させる方法)により、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6の形状の矯正を行ったが、前記第一の方法(泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を二本の当接させた円筒形状のロール上に載置し、該二本の当接させた円筒形状のロールをそれぞれ回転軸を中心に回転させる方法)、及び前記第三の方法(発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6を平滑な平面9に当接させ、芯金2の回転軸を中心に回転させる方法)によって、発泡層4を形成した芯金2を挿入したチューブ6の形状の矯正を行っても、実施例1と同様の効果があげられる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の半導電性ロールを説明するための図である。
【図2】芯金を挿入したチューブの形状を矯正する方法の一例を示す図である。
【図3】芯金を挿入したチューブの形状を矯正する方法の他の例を示す図である。
【図4】本発明の画像形成装置の一例の概略図である。
【図5】矯正前の振れ精度及び矯正後の振れ精度の結果を棒グラフとして表した図である。
【符号の説明】
【0047】
2 芯金
4 発泡層
6 チューブ
8 円筒形状のロール
9 平滑な平面
10 画像形成装置
14 感光体ドラム(像担持体)
16 帯電ロール
20 現像装置
22、24 1次中間転写ドラム
26 2次中間転写ドラム
28 転写ロール
30 用紙搬送ロール
32 定着装置
40 導電性シャフト
42 導電性発泡弾性層
44 半導電シームレスチューブ
51、54 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金の外周に発泡層を形成し、該芯金を接着剤を介してチューブに挿入し、接着剤を硬化させることにより該芯金の外周に形成している発泡層とチューブとを接着させる半導電性ロールの製造方法であって、
前記接着剤の硬化前に、前記芯金を挿入したチューブの形状を矯正することを特徴とする半導電性ロールの製造方法。
【請求項2】
前記形状の矯正が、前記芯金を挿入したチューブを円筒形状のロールに当接させ、該芯金の回転軸と該円筒形状のロールの回転軸とを、平行にして一定の距離に保ちながら、前記円筒形状のロールを該円筒形状のロールの回転軸を中心に回転させることによりなされることを特徴とする請求項1に記載の半導電性ロールの製造方法。
【請求項3】
前記形状の矯正が、前記芯金を挿入したチューブを平滑な平面に当接させ、該チューブを芯金の回転軸を中心に回転させることによりなされることを特徴とする請求項1に記載の半導電性ロールの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の半導電性ロールの製造方法により製造された半導電性ロールであって、
前記発泡層のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°であり、前記半導電性ロールの振れ精度が0.35mm以下であることを特徴とする半導電性ロール。
【請求項5】
芯金の外周に発泡層が形成され、更に該発泡層の外周にゴムチューブからなる半導電性弾性層が形成された半導電性ロールであって、
前記発泡層のアスカーF硬度計による硬度が30〜80°であり、前記半導電性ロールの振れ精度が0.35mm以下であることを特徴とする半導電性ロール。
【請求項6】
少なくとも、像担持体と、これに接触する帯電部材とを備え、静電潜像を形成するに先立ち、前記帯電部材に電圧を印加させつつ、前記帯電部材と前記像担持体とをそれぞれ周動回転させることにより、前記像担持体表面を帯電する構成を含む画像形成装置であって、前記帯電部材が請求項4又は5に記載の半導電性ロールであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−330198(P2006−330198A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151507(P2005−151507)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】