説明

半導電性樹脂組成物、導電部材、及び画像形成装置

【課題】 耐摩耗性、耐屈曲性、及び寸法安定性を向上可能な半導電性樹脂組成物、導電部材、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】 半導電性組成物を、有機化処理された薄片状フィラーを含有するアミド系樹脂により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性樹脂組成物、導電部材、及び画像形成装置に係り、特に、電子写真方式の画像形成装置に使用される半導電性樹脂組成物、導電部材、及びこれらを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンター、複写機、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置では、予め一様に帯電された像担持体上に、画像信号を変調したレーザ等により静電潜像を形成した後、帯電されたトナーによりこの静電潜像を現像してトナー画像を形成する。そして、このトナー画像を、中間転写体を介して、あるいは直接記録媒体に静電的に転写することにより所望の画像を得ている。
【0003】
このような中間転写体としては、半導電性の無端ベルト(半導電性ベルト)が用いられているが、この半導電性ベルトとしては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート等の耐熱性樹脂を用いたものが知られている。
【0004】
これらの耐熱性樹脂には、導電性、熱伝導性、絶縁性、補強、または低摩擦化等の目的に応じて、無機粒子、金属粉、金属酸化物、有機金属酸化物等の機能性フィラーを添加することが行われている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1には、耐熱性無端ベルトの最内周層に、マトリックス樹脂としてポリベンゾイミゾダール(以下、PBIという)を用い、低摩擦化を実現するために潤滑性のフィラーを添加する技術が示されている。この潤滑性フィラーとしては、層状構造を持ったフィラーが好ましく用いられ、このようなフィラーをポリベンゾイミゾダールに含有させることで、無端ベルトの内周面の低摩擦化を実現している。このような低摩擦化の実現により、無端ベルトの内周面の摩耗を抑制し、ベルトの摩耗に起因する画像のズレ等による画質低下を抑制することができる。
【0006】
特許文献2の技術によれば、合成樹脂から選ばれる弾性マトリックスに導電性を付与するために添加する炭素フィブリルの分散性を高めると共に、弾性マトリックスの電気抵抗率の変動を抑制するために、薄片状無機充填剤を配合している。薄片状無機充填剤としては、薄片状、鱗片状、または板状の雲母、セリサイト、モンモリロナイト、及びアルミナ等を用い、合成樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホン、及びポリフェニルサルホン等が用いられている。このように、合成樹脂中に、薄片状無機充填剤を含有することにより、導電剤の分散性を高めると共に電気抵抗の変動を抑制することができる。
【0007】
【特許文献1】特開2004―70046号公報
【特許文献2】特開2003―156902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に技術及び特許文献2の技術によれば、樹脂に層状構造を持ったフィラーまたは薄片状無機充填剤を含有させることにより、低摩擦化、導電剤の分散性の向上、または電気抵抗変動の抑制を実現することができるものの、樹脂中に含有される層状構造を持ったフィラーまたは薄片状無機充填剤各々と樹脂との界面において、界面欠陥が生じやすいとう問題がある。このため、このような樹脂による部材が繰返し屈曲変形されると、クラックの発生、界面剥離による部材の摩耗、及び界面間のずれによる樹脂の収縮が発生するという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、耐摩耗性、耐屈曲性、及び寸法安定性を向上可能な半導電性樹脂組成物、導電部材、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、本発明は、
<1> 有機化処理された薄片状フィラーを含有するアミド系樹脂からなる半導電性樹脂組成物である。
【0011】
<2> 前記アミド系樹脂100質量部に対する前記薄片状フィラーの含有量が0.1質量部以上5.0質量部以下である上記<1>に記載の半導電性樹脂組成物である。
【0012】
<3> 前記薄片状フィラーの厚みが、0.001μm以上0.1μm以下であり、且つ最大長が0.01μm以上10.00μm以下である上記<1>または上記<2>に記載の半導電性樹脂組成物である。
【0013】
<4> 上記<1>から上記<3>の何れか1つに記載の半導電性樹脂組成物からなる導電部材である。
<5> 上記<4>に記載の導電部材を、転写部材として用いた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の半導電性樹脂組成物、この半導電性樹脂組成物からなる導電部材、及びこの導電部材を転写部材として用いた画像形成装置によれば、半導電性組成物が、有機化処理された薄片状フィラーを含有するアミド系樹脂からなるので、耐摩耗性、耐屈曲性、及び寸法安定性を向上可能な半導電性樹脂組成物、導電部材、及び画像形成装置を提供することができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
<半導電性樹脂組成物>
本発明の半導電性樹脂組成物は、有機化処理された薄片状フィラーを含有するアミド系樹脂からなることを特徴としている。この半導電性樹脂組成物により、電子写真用画像形成装置における帯電部材、現像部材、及び転写部材等に用いられる導電部材が構成される。
【0016】
<アミド系樹脂>
本発明の半導電性樹脂組成物を構成するアミド系樹脂は、アミド基を有する樹脂であれば特に制限無く用いることができる。
上記アミド基を有する樹脂の具体例としては、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、
ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等のアミド基を有する熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記各種のアミド系樹脂の内、本発明の半導電性樹脂組成物に好適に用いられるものとしては、機械的強度の観点から、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0017】
<薄片状フィラー>
本発明の半導電性樹脂組成物を構成するアミド系樹脂は、有機化処理された薄片状態フィラーを含有している。
薄片状フィラーは、薄片状(シート状)の構造体であり、複数のこの薄片状フィラーが積層することで構成された層状構造を有する構造体から剥離された1層の構造体である。
【0018】
層状構造を有する構造体は、層状構造を持つ珪酸塩鉱物等であり、具体的には、例えば、カオリナイト、ハロサイト等のカオリナイト族:モンモリロナイト、ハイデライト、サポナイト、ヘクトライト、マイカ等のスメクタイト族:バーミキュライト族:が代表的であるが、本発明においては、吸水性が低いこと、高い膨潤性の観点からスメクタイト族((モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントライト、及びマイカ)が好ましい。また、層状構造を有する構造体としては、このスメクタイト族においては天然由来のものでも、天然物の処理品でも、膨潤性のフッ素化マイカのような合成品でもよい。
【0019】
層状構造を有する構造体を構成する各薄片状フィラーは、珪酸で構成された四面体が平面方向に多数結合して形成された形態や、アルミニウムやマグネシウムを含む八面体が平面方向に多数結合して形成された形態で存在している。
【0020】
−有機化処理−
層状構造を有する上記構造体は、多数のシート状構造体がイオン物質を介在して積層されているので、通常の処理では、層状構造を消失させて、各薄片状フィラーを剥離することは困難である。
【0021】
このため、本発明では、予め層状構造を有する上記構造体を有機化剤により有機化させる有機化処理を行い、有機化剤により各薄片状フィラー間に介在するイオン物質を化学的に結合させた後、層状構造を消失させて薄片状フィラーを生成することが最も好適である。この有機化処理により、容易に積層された薄片状フィラーが剥離される。
【0022】
この有機化処理によって、各薄片状フィラーは層状構造の構造体から剥離されると共に、各薄片状フィラーの表面は有機化処理されて有機物との親和性が高くなる。
【0023】
ここで、有機化処理とは、アミド系樹脂(ポリアミドイミド樹脂或いはポリアミド樹脂等)では、例えばステアリルアンモニウム塩を用いた化学修飾(或いは処理)等によって親油基をフィラー表面に結合させる処理をしめしており、それによりポリマーとの親和性を高めることが可能である。
【0024】
すなわち、薄片状フィラーの表面には、有機化処理されることによって、疎水基をもったジメチルステアリル基、トリメチルステアリル基等が結合される。
【0025】
具体的には、有機化処理されることにより、薄片状フィラーの表面、が親油性を持った表面に化学的改質される。
【0026】
有機化剤としては、特にオニウムイオンを含む化合物が好ましく、このオニウムイオンとしては特に1〜4級のアンモニウムイオンが好ましい。1〜4級のアンモニウムイオンとしては、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、トリオクチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ラウリン酸アンモニウムイオン、アルキルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムイオン等が挙げられる。
本発明で用いる有機化剤としては、層間剥離距離の観点から、長鎖の疎水基をもった4級アンモニウム塩が好ましい。
【0027】
―有機化処理方法―
層状構造を有する上記構造体の有機化剤による有機化処理の方法としては、例えば、第1段階として、層状構造を有する上記構造体を水中に分散させる。その固体分散濃度は通常1質量%〜15質量%が望ましいが、層状構造を有する上記構造体が十分分散可能な濃度の範囲なら自由に設定することが出来る。次にこの懸濁液に、前述した有機化剤を含む溶液(例えば、アンモニウムイオンを含む溶液)を添加混合するか、又は逆に有機化剤を含む溶液(例えば、アンモニウムイオンを含む溶液)に、層状構造を有する上記構造体の懸濁液を添加混合する。反応は室温で十分進行するが、加温しても良い。加温の最高温度は用いる有機化剤(例えばアンモニウムイオン)の分解温度以下であれば、任意に設定可能である。
ついで、固液を分離し、固形分を水洗浄して副生物を十分に除去する。この後、固形分を乾燥することにより有機化処理された薄片状フィラーを得ることが出来る。また、この有機化剤(例えばアンモニウムイオン)の処理量としては、過剰の有機化剤(アンモニウムイオン)を使用して処理を行なうことにより得られる。その場合には、層状構造を有する上記構造体1質量部に対して、0.5質量部以上の有機剤の塩(例えばアンモニウム塩)を溶解した水溶液で処理することが望ましい。
【0028】
薄片状フィラーの厚みは、0.001μm以上0.1μm以下であり、より好ましくは、0.001μm以上0.075μm以下であり、特に好ましくは、0.001μm以上0.05μm以下である。
【0029】
薄片状フィラーの厚みが0.001μm未満であると、補強効果低下という問題が生じ、厚みが0.1μmより大きいと、分散性の低下という問題が生じる。
【0030】
なお、薄片状フィラーの厚みは、次のようにして算出した平均値である。TEM観察により、アミド系樹脂に含有された薄片状フィラーの厚みを10点計測し、この計測範囲を10箇所で同様に計測する。
【0031】
また、薄片状フィラーの最大長は、0.01μm以上10.00μm以下であり、より好ましくは、0.01μm以上5μm以下であり、特に好ましくは、0.01μm以上2.5μm以下である。
薄片状フィラーの最大長が0.1μm未満であると、補強効果が不十分という問題が生じ、最大長が10.00μmより大きいと、表面凹凸が発生する、という問題が生じる。
【0032】
薄片状フィラーのアスペクト比(最大長/厚み)は、10以上10000以下であり、より好ましくは、10以上5000以下である。
薄片状フィラーのアスペクト比が10未満であると、可とう性強度の低下という問題が生じ、アスペクト比が10000より大きいと、脆性発現という問題が生じる。
【0033】
上記アミド系樹脂100質量部に対する薄片状フィラーの含有量は、0.1質量部以上5.0質量部以下の範囲内であることが必須であり、好ましくは、0.1質量部以上4質量部以下の範囲内、特に好ましくは、0.1質量部以上3質量部以下である。
アミド系樹脂100質量部に対する薄片状フィラーの含有量が0.1質量部未満であると、補強効果不十分であり、含有量が5.0質量部より多いと、強度向上に対して逆効果(可とう性低下)である。
【0034】
本発明の半導電性樹脂組成物を構成するアミド系樹脂は、ポリマー構造中に、水素結合しやすいアミド基を有している。このようなアミド系樹脂中に、有機化処理されて有機物との親和性が向上され、層間距離が拡大しているのでポリマーが絡みこみやすい状態にある薄片状フィラーが含有されるので、アミド系樹脂のアミド基と、薄片状フィラー表面の水酸基との分子間結合が強固に行われること及びフィラーとポリマーの絡み合い向上効果で、アミド系樹脂と薄片状フィラーとの界面の欠陥が生じにくくなる。
【0035】
このため、半導電性樹脂組成物の、アミド系樹脂と薄片状フィラーとの界面剥離による摩耗、界面間のズレによるアミド系樹脂の収縮を防止することができる。従って、耐摩耗性、耐屈曲性、及び寸法安定性を向上することができる。
【0036】
また、薄片状フィラーは、厚みが少なくとも0.001μm以上0.1μm以下の範囲内であり、且つ最大長が少なくとも0.01μm以上10.00μm以下の範囲内であるので、アミド系樹脂中にナノレベルで分散・配合されるため、ミクロンレベルで分散しているよりも飛躍的に薄片状フィラーの表面積が増大する。
【0037】
そのため、薄片状フィラーにより拘束されるアミド系樹脂の分子鎖の割合が、ミクロンレベルの分散状態と比較して非常に少ない配合量で最も大きくなり、薄片状フィラーによる補強効果が非常に大きくなる。このため、半導電性組成物に、アミド系樹脂の特徴である機械的強度を劣化させずに高い耐摩耗性を付与させることができる。
【0038】
<導電剤>
本発明の半導電性樹脂組成物を構成するアミド系樹脂は導電剤を含有することができる。
アミド系樹脂100質量部に対する導電剤の含有量は、1.0質量部以上50質量部以下の範囲内であることが必須であり、好ましくは、1.0質量部以上40質量部以下の範囲内、特に好ましくは、1.0質量部以上35質量部以下である。
アミド系樹脂100質量部に対する導電剤の含有量が1.0質量部未満であると、導電性不足であり、含有量が50質量部より多いと、機械的強度の低下(特に引裂き強度)という問題が生じる。
【0039】
導電剤は、半導電性樹脂組成物が好適な導電性を発揮するために用いられるものである。本発明に用いられる導電剤としては、例えば、電子伝導性の導電剤として、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛、炭素繊維等の炭素材料;アルミニウム、マグネシウム等金属粉;金属繊維等の金属材料;表面処理された金属酸化物粉;等を挙げることができる。また、イオン伝導性の導電剤として、過酸化リチウム等のアルカリ金属過酸化物;過塩素酸リチウム等の過塩素酸塩;テトラブチルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩;燐酸エステル塩;等を挙げることができる。但し、導電剤としては上記に限定されるものではない。
【0040】
前記イオン伝導性の導電剤は、熱可塑性樹脂中の不対電子を有する原子と一種の配位結合をするため、本発明において用いられるアミド系樹脂中に分子レベルで均一に分散される。したがって、分散不良に伴う抵抗値のバラツキが生じないし、部分的帯電不良等に起因する画像欠陥が発生することも少ない。しかし、抵抗の環境依存性および連続通電による抵抗変動が発生するなどの問題が生じる場合があり、また、イオン伝導性の導電剤の配合量については、ブリードの発生を抑制する必要があることから、前記アミド系樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。5質量部を超えて添加した場合には、ブリードが発生するなどの問題が生じることがある。
【0041】
一方、電子伝導性の導電剤は、前記イオン伝導性の導電剤を用いた場合に発生する、抵抗の環境変動及び連続通電による抵抗変動などの問題が起こることが少ないので、本発明においては好ましく用いることができる。
【0042】
―半導電性樹脂組成物の製造方法―
本発明に用いられる半導電性樹脂組成物は、上記各構成成分をタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の如き混合機で混合することにより製造することができる。半導電性樹脂組成物の製造においては、各構成成分の混合方法、混合の順序は特に限定されることはない。一般的な方法としては、全構成成分を予めタンブラー、Vブレンダー等で混合し、その混合物を押出機によって均一に溶融混合する方法であるが、構成成分の形状に応じて、前記構成成分中の2種以上の溶融混合物に、残りの構成成分を溶融混合する方法を用いることもできる。
なお、上記アミド系樹脂を溶剤に溶解させた溶液状のワニスに、上記薄片状フィラーを添加して、溶液中にて分散させるようにしてもよい。
【0043】
前記半導電性樹脂組成物には、上記の構成成分の他にその特性を損なわない限りにおいて、必要に応じて任意の添加剤、例えば離型剤、帯電防止剤、光安定剤、酸化防止剤、補強剤、軟化剤、発砲剤、染顔料、及び無機充填剤等を添加することができる。
【0044】
以上のようにして本発明に用いられる半導電性樹脂組成物を得ることができる。本発明の導電部材は、上記半導電性樹脂組成物からなるものであり、既述の如く電子写真用の画像形成装置における転写装置、帯電装置、及び現像装置等に用いられる導電部材として広く使用できるものである。本発明の導電部材はこれらの中では特に、中間転写体、及び帯電部材や転写部材として用いられる導電ロールに好ましく使用される。
【0045】
(転写部材)
前述のようにして得られた導電性樹脂組成物を成形することにより、本発明の転写部材としての導電部材を得ることができる。本発明の転写部材は、電子写真式複写機、レーザープリンタ等における感光装置、中間転写装置、転写分離装置、搬送装置、帯電装置、現像装置等に好適に使用される。本発明の転写部材は、用途、機能等に応じて、材質、形状、大きさ等が適宜設定される。
【0046】
次に、本発明の転写部材の作製方法について順次説明する。
−転写部材の作製−
転写部材の作製工程は、塗布溶液を、ブラスト加工され離形剤が予め塗布された円筒状の芯体(以下、円筒状芯体と称する)表面に塗布して、塗膜を形成する塗膜形成工程と、該塗膜を加熱乾燥及び加熱反応させて管状体を形成する管状体形成工程と、管状体を前記円筒状芯体から剥離する剥離工程とを含んでいる。また、必要に応じて他の工程を有していてもよい。
【0047】
以下、本発明の転写部材の製造方法を工程毎に分けて詳細に説明する。
−塗膜形成工程−
塗膜形成工程では、まず、上記アミド系樹脂と、有機化処理された上記薄片状フィラー、及び上記導電剤を、各々前述した含有量ジェットミルを用いて混合分散した塗布溶液を調製する。
【0048】
円筒状芯体の表面に、管状体を作製する際、乾燥時、あるいは加熱時に、反応生成水または残留溶剤によって、皮膜に部分的に膨れが生じることがある。その場合、円筒状芯体の表面を、算術平均粗さRaで0.2〜2μmの範囲程度に粗面化することにより、残留溶剤または水の蒸気は、円筒状芯体と管状体との間にできるわずかな隙間を通って外部に出ることができるようになり、膨れを防止することができる。円筒状芯体表面の粗面化には、ブラスト、切削、サンドペーパーがけ等の方法を用いることができる。
なお、円筒状芯体の表面が粗面であっても、その表面に形成された転写部材の表面は粗面になることはなく、平滑である。
【0049】
後述する剥離工程において、円筒状芯体に形成される管状体は、円筒状芯体表面に接着するおそれがあるため、円筒状芯体の表面には離型性が付与されていることが好ましい。離型性を付与するには、フッ素系樹脂やシリコーン樹脂で円筒状芯体を被覆する方法や、円筒状芯体表面に離型剤を塗布する方法等を用いることができる。
【0050】
円筒状芯体に塗布溶液を塗布する方法としては、円筒状芯体を塗布溶液に浸漬して上昇させる(引き上げる)浸漬塗布法、円筒状芯体を回転させながら表面に塗布溶液を吐出する流し塗り法、その際にブレードで皮膜をメタリングするブレード塗布法など、公知の方法が採用できる。上記流し塗り法やブレード塗布法では塗布部を水平移動させるので、皮膜はらせん状に形成されるが、塗布溶液は乾燥が遅いために、継ぎ目は自然に平滑化される。
【0051】
なお、上記「円筒状芯体表面に塗布する」とは、円筒状芯体の表面に層を有する場合は、その層の表面に塗布することをいう。また、「円筒状芯体を上昇」とは、塗布時の液面との相対関係であり、「円筒状芯体を停止し、塗布液面を下降」させる場合を含む。
【0052】
塗布溶液の塗布を前記浸漬塗布法で行う場合、塗布溶液は粘度が非常に高いので、膜厚が所望値より厚くなりすぎることがある。その際は、以下の如き環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法が適用できる。
【0053】
環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法を、図1を参照して説明する。
図1は、この塗布法に用いる塗布装置の一例を示す概略構成図である。ただし、図は塗布主要部のみを示し、他の装置は省略している。
【0054】
上記環状体により膜厚を制御する浸漬塗布法は、図1に示すように、塗布槽20に収容された塗布溶液28に、円筒状芯体18の外径よりも大きな円孔26が設けられた環状体24を浮かべ、円筒状芯体18を塗布槽20外部から円孔26を通して塗布溶液28中に浸漬させた後に、円筒状芯体18を引き上げる塗布法である。
【0055】
環状体24は、塗布溶液28液面に浮くように構成されており、その材質としては、塗布溶液28によって侵されないものであればよく、例えば、種々の金属やプラスチック等から選ばれる。また、浮上しやすいように、例えば、中空構造であってもよいし、沈没防止のために、環状体24の外周面または塗布槽20に、環状体24を支えるための足や腕を設けてもよい。
【0056】
環状体24は、塗布溶液28の液面を自由に動くことができる必要がある。そこで、塗布溶液28の液面でわずかの力で動くことができるよう、環状体24を溶液面に浮遊させる方法のほか、環状体24をロールやベアリングで支える方法、環状体24をエア圧で支える方法、などの方法で自由移動可能に設置されることが好ましい。
【0057】
また、環状体24が塗布槽20の中央部に位置するように、環状体24を一時的に固定する固定部材を設けてもよい。このような固定部材としては、環状体24を固定するための足部材や、塗布槽20と環状体24とを固定するための部材などがある。但し、これらの固定部材を用いた場合、円筒状芯体18を浸漬した後、引き上げる際には、環状体24が自由に動き得るように、上記固定部材は取り外し可能なように配置される。
【0058】
前記円孔26の内径は、所望の塗布膜厚を鑑みて調整する。所望の塗布膜厚(乾燥膜厚)は、濡れ膜厚と塗布溶液28の不揮発分濃度との積になる。これから、所望の濡れ膜厚が求められる。また、円孔26の内径と円筒状芯体18の外径との差から求められる両者の間隙は、所望の濡れ膜厚の1倍〜2倍の範囲であるのが好ましい。1倍〜2倍の範囲とするのは、塗布溶液28の粘度及び/または表面張力などにより、間隙が濡れ膜厚になるとは限らないからである。このように、所望の乾燥膜厚及び所望の濡れ膜厚から、所望の円孔26の径が定められる。
【0059】
環状体24に設けられる円孔26の内壁面は、塗布溶液に浸る下部が広く、上部が狭い形状であれば、図1に示すように、傾斜面であってもよい。また、階段状や曲線的な面でもあってもよい。
【0060】
浸漬塗布を行う際、円筒状芯体18を、円孔26を通して塗布溶液28に浸漬する。その際、円筒状芯体18が環状体24に接触しないようにする。次いで、円孔26の中を通して円筒状芯体18を引き上げる。この際、円筒状芯体18と円孔26との間隙により塗膜22の厚さが決定される。引き上げ速度は、0.1〜1.5m/minの範囲程度が好ましい。この塗布方法に好ましい塗布溶液の固形分濃度は10〜40質量%の範囲、粘度は1〜100Pa・sの範囲である。
【0061】
円筒状芯体18を、円孔26を通して引き上げる際、塗布溶液28の介在により、円筒状芯体18と環状体24との間に摩擦抵抗が生じ、環状体24には上昇力が作用し環状体24は少し持ち上げられる。この時、環状体24は自由移動可能状態でるため、円筒状芯体18と環状体24との摩擦抵抗が周方向で一定になるように、環状体24は動く。即ち、ある位置で環状体24と円筒状芯体18との間隙が狭まろうとした場合、狭まろうとした部分では摩擦抵抗が大きくなる一方、その反対側では摩擦抵抗が小さくなり、一時的に摩擦抵抗が不均一な状態が生じる。
しかしながら、環状体24は自由に動きうること、円筒状芯体18の外周が円形であること、及び環状体24の円孔26が円形であることから、そのような摩擦抵抗が不均一な状態から均一な状態になるように、環状体24が自動的に動き、環状体24が円筒状芯体18と接触するようなことはない。
【0062】
また、摩擦抵抗が均一となる位置は、円筒状芯体18の外周の円形と、環状体24の円孔26の円形とがほぼ同心円となる位置である。よって、円筒状芯体18断面の円の中心が、軸方向において許容範囲内でずれている場合であっても、環状体24はそれに追随するように動く。従って、円筒状芯体18の表面には、一定の濡れ膜厚を有する塗膜22が形成される。
【0063】
なお、塗膜形成工程おいて、上記浸漬塗布法を用いるほかにも、塗布層の底部に、円筒状芯体18の外径より若干小さい穴を有する環状シール材を設け、円筒状芯体18を環状シール材の中心に挿通させ、塗布槽に塗布溶液を収容し、円筒状芯体を、塗布槽の下部から上部に順次つき上げられ、環状シール材を挿通させることにより、円筒状芯体の表面に塗膜を形成する、環状塗布法を適用してもよい。
【0064】
−管状体形成工程−
この工程においては、前記塗膜を加熱乾燥及び加熱反応させて、円筒状芯体18表面に管状体を形成する。なお、本発明において該管状体とは、塗膜から溶剤を除去し加熱反応させた膜を意味する。
【0065】
まず、管状体形成工程において、塗膜中に存在する溶剤を除去する目的で、静置しても塗膜が変形しない程度の加熱乾燥を行う。加熱条件は、80℃〜180℃の温度範囲で10分間〜120分間であることが好ましい。
その際、温度が高いほど、加熱時間は短くてよい。また、加熱することに加え、風を当てることも有効である。加熱は、一定時間内において段階的に温度を上昇させたり、一定速度で温度を上昇させて行ってもよい。
【0066】
なお、塗膜から溶剤を除去させすぎると、塗膜はまだベルトとしての強度を保持していないので、割れを生じるおそれがある。そこで、ある程度(具体的には塗膜中に15〜45質量%)、溶剤を残留させておくとよい。
【0067】
塗膜を加熱乾燥させてから加熱反応までは、連続的に行えばよいが、途中で一旦、温度を低下させてもよい。ここで、「温度を低下させる」とは、加熱乾燥により高温状態となっている塗膜を、円筒状芯体ごと冷却し、温度を低下させることをいう。低下させる温度は、常温でもよい。温度を低下させることは、溶剤を除去する加熱乾燥装置と塗膜を加熱反応させる加熱反応装置とが異なっている場合に有効である。
【0068】
その際、塗膜は、温度の低下により収縮する。その収縮率は円筒状芯体の軸方向で0.5〜2%と小さい範囲であるが、この収縮により、塗膜は、円筒状芯体の表面でズレを生じ、円筒状芯体との間により広い隙間が生じる。一度、このような隙間が発生すると、加熱反応の際に、残留溶剤等が抜けやすくなる。
前記加熱乾燥装置と加熱反応装置とが同じである場合、一旦、温度を低下させることは不要である。
【0069】
管状体形成工程において、上述の乾燥の後、好ましくは300℃〜450℃の範囲、より好ましくは350℃前後で、20分間〜60分間、塗膜を加熱反応させることで、管状体を形成することができる。加熱反応の際、塗膜中に溶剤が残留していると、皮膜に膨れが生じることがあるため、加熱の最終温度に達する前に、完全に残留溶剤を除去することが好ましく、具体的には、加熱前に、200℃〜250℃の温度範囲で、10分間〜30分間加熱乾燥して残留溶剤を除去し、続けて、温度を段階的、または一定速度で徐々に上昇させて加熱し、管状体形成することが好ましい。
【0070】
−剥離工程−
加熱反応後、円筒状芯体18を常温に冷却し、形成された管状体を剥離する本工程を経ることで、転写部材を得ることができる。
円筒状芯体18には、予め離型剤が塗布されているので、管状体の内周面と円筒状芯体18の外周面とが直接接することはないので、円筒状芯体18から管状体を容易に剥離して転写部材を得ることができる。
【0071】
なお、抜き取られた転写部材は、その両端は膜厚の均一性が劣っていたり、皮膜の破片が付着していたりするので、その部分は不要部分として切断する。さらに必要に応じて、穴あけ(パンチング)加工、リブ付け加工、等が施されることがある。
【0072】
このようにして得られた転写部材は、電子写真複写機やレーザープリンタ等の画像形成装置における中間転写体や、転写ロールとして用いることができる。
【0073】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、本発明の転写部材を中間転写体や、転写ロールとして用いた中間転写体方式の画像形成装置であれば特に限定されるものではない。例えば、現像装置内に単色のトナーのみを収容する通常のモノカラー画像形成装置や、感光体ドラム等の像担持体上に担持されたトナー像を中間転写体に順次一次転写を繰り返すカラー画像形成装置、各色の現像装置を備えた複数の像担持体を中間転写体上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等があげられる。
【0074】
以下に、本発明の画像形成装置の1例として、一次転写を繰り返すカラー画像形成装置を示す。
図2に示す画像形成装置80は、像担持体30、中間転写体10、転写電極であるバイアスローラ34、記録媒体68を貯留するための用紙トレー36、BK(ブラック)トナーにより現像を行うための現像装置44、Y(イエロー)トナーにより現像を行うための現像装置38、M(マゼンタ)トナーにより現像を行うための現像装置40、C(シアン)トナーにより現像を行うための現像装置42、中間転写体上の残留トナーを除去するためのベルトクリーナー49、剥離爪62、中間転写体を支持するための支持ロール48、支持ロール50、及び支持ロール54、バックアップローラ56、導電性ローラ52、電極ローラ58、クリーニングブレード70、及び用紙トレー36に貯留されている記録媒体68をピックアップしてフィードローラ143の設置位置へ案内するためのピックアップローラ66を備えている。
【0075】
なお、導電性ローラ52、電極ローラ58が、本発明の転写ロールに相当する。
【0076】
バックアップローラ56は、中間転写体10を介してバイアスローラ34に対向するように設けられている。バックアップローラ56の近傍には、バックアップローラ56に圧接して回転する電極ローラ58が設けられている。
【0077】
画像形成装置80において、像担持体30は矢印F方向に回転され、図示しない帯電装置によりその表面が一様に帯電される。一様に帯電された像担持体30上が、図示を省略するレーザ書込み装置等の画像書込装置(図示省略)によって走査露光されると、第一色(例えば、BK)の静電潜像が像担持体30上に形成される。この静電潜像は現像装置44によって現像されて可視化されたトナー像Tが像担持体30上に形成される。トナー像Tが、像担持体30の回転により導電性ローラ52の配置された一次転写部に到ると、導電性ローラ52によりトナー像Tに逆極性の電界が作用され、トナー像Tが静電的に中間転写体10に吸着されつつ中間転写体10の矢印G方向の回転により一次転写される。
【0078】
以下、同様にして第2色のトナー像、第3色のトナー像、第4色のトナー像が順次像担持体30上に形成された後に、中間転写体10において重ね合わせられて、多色トナー像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよい。
【0079】
中間転写体10に転写された多色トナー像は、中間転写体10の回転によってバイアスローラ34の設置位置に到る。
【0080】
記録媒体68は、用紙トレー36からピックアップローラ66により一枚ずつ取り出され、フィードローラ64によりで中間転写体とバイアスローラ34との間に所定のタイミングで給送される。給送された記録媒体68には、バイアスローラ34及びバックアップローラ56による圧接搬送と中間転写体10の回転により、中間転写体10に担持された多色トナー像が転写される。
【0081】
多色トナー像の転写は、バイアスローラ34と中間転写体10とを介して対向配置されたバックアップローラ56に圧接されている電極ローラ58に多色トナー像の極性と同極性の転写電圧を印加することにより、多色トナー像を記録媒体68へ静電反発により転写する。以上のようにして、記録媒体68上に画像を形成することができる。
【0082】
多色トナー像が転写された記録媒体68は、剥離爪113により中間転写体10から剥離され、図示しない定着装置に搬送され、加圧/加熱処理で多色トナー像を固定して永久画像とされる。なお、多色トナー像の記録媒体68への転写が終了した中間転写体10は、ベルトクリーナー109により残留トナーが除去される。また、バイアスローラ34には、ポリウレタン等からなるクリーニングブレード70が常時当接するように設けられており、転写により付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0083】
単色画像の転写の場合、一次転写されたトナー像Tを直ちに二次転写して定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合、各色のトナー像が一次転写部で正確に一致するように中間転写体10と像担持体30との回転を同期させて各色のトナー像がずれないように中間転写体10の回転及び像担持体30の回転が制御される。
【実施例】
【0084】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例によって限定されるものではない。
【0085】
(実施例1)
<中間転写体の作製>
アミド系樹脂としてポリアミドイミドワニス(HPC7200、日立化成社製:固形分20質量%、N-メチルピロリドン60質量%、ジメチルアセトアミド20質量%含有)を用い、このポリアミドイミドワニス500質量部(固形分100質量部)に、トリメチルステアリルアンモニウムクロライドによって表面が親油性となるように有機化処理されたモンモリナイト(クニピア、クニミネ工業社製)を5質量部、およびカーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0%))35質量部を添加し、ジェットミルを用いて混合分散させ、塗布溶液とした。
【0086】
塗布溶液が塗布される円筒状芯体としては、外径302mm、長さ400mmのアルミ製円筒を用い、この円筒状芯体の表面を、ブラスト加工することにより、円筒状芯体表面の表面粗さRaが0.5μmとしたものを用意した。
さらに円筒芯体表面にはシリコーン系離型剤(商品名:KS700、信越化学(株)製)を厚み2μmとなるように塗布して、300℃で1時間、焼き付け処理した。
【0087】
一方、環状体としては、外径400mm、内径320mm、高さ30mmのステンレス製の中空状のリングの内側に、外径が320mmで、断面が三角形であるテフロン(登録商標)製リングを嵌合させたものを用いた。このテフロン(登録商標)製リングの最小孔径は303.6mmであった。
【0088】
次に、上記環状体を塗布溶液に浮かべた後、環状体を動かないよう固定し、円筒状芯体の軸方向を垂直にして、円筒状芯体を前記環状体の孔へ500mm/minの速度で挿入し、浸漬した。次いで環状体の固定を解除し、150mm/minの速度で円筒状芯体を引き上げた。引き上げ途中では環状体が円筒状芯体に接触することはなく、円筒状芯体表面には濡れ膜厚が約700μmの塗膜が形成された。
次に、塗膜がその表面に形成された円筒状芯体を、乾燥炉に入れた。320℃まで2時間、320℃を30分保持し、管状体を得た後に、管状体を円筒状芯体から剥離して、中間転写体を得た。
【0089】
円筒状芯体表面には予め離型剤が塗布されていたため、剥離に際して、管状体(転写ベルト本体)の内周面が円筒状芯体と接着することはなかった。またこの転写ベルト本体の厚みは80μmであり、表面抵抗率の常用対数値は10.8logΩ/□であった。
なお、表面抵抗率は、円形電極(例えば、油化電子(株)製HRプローブ)を用い、測定することができる。具体的には、図4に示すような円形電極を用いて測定することができる。図4は、表面抵抗を測定する円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。図4に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを具える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径より大きい内径を有し、かつ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒上のリング電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間に測定対象となる半導電性ベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧100(V)を印加して、10秒後に流れる電流I(A)を測定し、下記式(1)により、半導電性ベルトTの表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出することができる。ここで、下記式(1)中、d(mm)は、円柱状電極部Cの外径を示す。なお、前記表面抵抗率の測定は22℃、55%RHの環境で行った。
式(1) ρs=π×(D+d)/(D−d)×(100(V)/I)
【0090】
(実施例2)
<中間転写体の作製>
実施例1において、薄片状フィラーとしてスメクタイト(SPN、コープケミカル社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして中間転写体を作製した。
【0091】
(実施例3)
<中間転写体の作製>
実施例1において、薄片状フィラーとしてマイカ(ソマシフMPE、コープケミカル社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして中間転写体を作製した。
【0092】
(実施例4)
<中間転写体の作製>
実施例1において、アミド系樹脂として、ポリアミド樹脂(PA100 富士化成工業製:固形分20質量%、メチルエチルケトン40質量%、キシレン40質量%含有)を用い、このポリアミド樹脂500質量部(固形分100質量部)に、薄片状フィラーとしてスメクタイト(SPN、コープケミカル社製)5質量部、およびカーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0質量%))35質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして中間転写体を作製した。
【0093】
(比較例1)
<中間転写体の作製>
実施例1において、薄片状フィラーとして、層状構造の有機化処理されていないモンモリナイト(クニピア、クニミネ工業社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして中間転写体を作製した。
【0094】
(比較例2)
実施例1において、薄片状フィラーとして、層間剥離のしない(有機化処理されていない)マイカ(ミクロマイカMK100;コープケミカル社製)を加えたこと以外は実施例1と同様にして中間転写体を作製した。
【0095】
(比較例3)
実施例1において、ポリアミドイミドワニスに変えて、ポリアリレート樹脂(ダイセル化学社製、溶剤トルエン、固形分15質量%)(アミド基を有さない樹脂)を用い、このポリアリレート樹脂666.6質量部(固形分100質量部)に、薄片状フィラーとしてスメクタイト(SPN、コープケミカル社製)5質量部、およびカーボンブラック(SPECIAL BLACK4(Degussa社製、pH3.0、揮発分:14.0質量%))35質量部を用いた事以外は、実施例1と同様にして中間転写体を作製した。
【0096】
(評価)
上記実施例1〜実施例4、及び比較例1〜比較例3において作製した中間転写体を、富士ゼロックス社製カラー複写機DC1250に実装し、300000枚の走行試験を実施し、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0097】
−画質−
記録媒体の通紙前(初期)、及び記録媒体を3000枚連続通紙した後に、A4サイズの用紙(記録紙)を用いてマゼンタ30%のハーフトーン画像を出力し、白抜け発生状況及び画像乱れを目視にて判定した。評価基準としては、画質上問題にならないレベルを○とし、画質上問題のあるレベルを×とした。
【0098】
−ベルト外観(破損)―
ベルト外観(破損状況)は、破損部目視確認、及び顕微鏡観察によるクラック有無確認によって行った。
【0099】
―トナー汚染−
中間転写体へのトナー汚染について、20,000枚の走行試験後、画質上にて画質欠陥(濃度差)がみられない場合は○(汚染無し)、画質欠陥が発生(ハーフトーン白抜け、濃度差有り等)した場合は×(汚染有り)とした。
【0100】
―耐摩耗性―
スラスト摩耗試験を用い、金属(SUSからなる表面粗さRa0.1μm)の円筒状ヘッドと、中間転写体とを接触させて、該中間転写体に該円筒状ヘッドにより一定の圧力を加えた状態で円筒状ヘッドを回転させることによって、中間転写体を摩擦させて、摩擦開始から一定時間経過後の中間転写体の摩耗量を測定した。この摩耗量が、予め定めた所定量以上の場合を、耐摩耗性×とし、該所定量未満の場合を、耐摩耗性○とした。
【0101】
−耐屈曲性―
中間転写体耐屈曲性は、後述する対ロール屈曲試験装置において、屈曲回数が10000kcycle以上であることがより好ましい。
本発明では、10000kcycle以上である場合を、耐屈曲性が良好であるもの(○)とし、5000kcycle以上10000kcycle未満である場合を、(△)とし、5000kcycle未満である場合を、耐屈曲性が不良である(×)として評価した。
【0102】
上記対ロール屈曲回数は、図3に示す測定装置を用いて測定することができる。図3に示す測定装置は、少なくとも、平行に保たれた3本の金属ロール71(φ28mm)と、それらの端面に設けられた正三角形(一辺の長さ:30mm)の固定板72とからなる。固定板72の頂点と金属ロール71の中心軸とは一致し、金属ロール71及び固定板72は、それぞれ回転可能となっている。
【0103】
図3に示す測定装置を用いて測定するには、まず、図3(a)に示すように、例えば、長さ300mm、幅20mmの試験片73(中間転写体)の一端を固定し、他端に400gの荷重を吊り下げてベルトテンションを加える。次に、図3(b)に示すように、金属ロール71を自由に回転する構成として、さらに、160rpmの速度で図3における向かって時計周りに固定板72を回転させる。そして、3本の金属ロール71を1組として、1回転を1サイクル(cycle)とし、試験片73が破断するまでのサイクル数を測定し、対ロール屈曲数とする。
【0104】
―寸法安定性―
吸湿膨張率を測定する。具体的には、高温高湿(30℃/85%雰囲気)下において、中間転写体(幅25mm、長さ150mm)に、300gのテンションをかけて、伸び変化量(膨張量)から吸湿膨張率を測定し、伸び変化量がが低いほど寸法安定性良好であるとした。
<寸法安定性評価>
○:吸湿膨張率50ppm以下
△:吸湿膨張率50ppmより大きく80ppm以下
×:吸湿膨張率80ppmより大きい
以上についての評価結果を表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
表1に示すように、有機化処理された薄片状フィラーを含有するアミド系樹脂からなる半導電性樹脂組成物からなる中間転写体を画像形成装置に実装した場合には、耐摩耗性、ベルト外観、トナー汚染、初期画質、20000枚走行後の画質、寸法安定性、及び耐屈曲性の全てにおいて、良好な結果が得られた。一方、有機化処理されていない薄片状フィラーを用いた場合には、比較例1に示すように、耐摩耗性について良好な結果が得られず、比較例2に示すように、画質劣化及びトナー汚染が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】中間転写体の作製方法を示す模式図である。
【図2】本発明の転写部材を中間転写体として備えた画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】屈曲回数を測定する装置の概略を示す概略図(a)及び概略図(b)である。
【図4】表面抵抗率、体積抵抗率を測定する円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
【符号の説明】
【0108】
10 中間転写体(転写部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化処理された薄片状フィラーを含有するアミド系樹脂からなる半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記アミド系樹脂100質量部に対する前記薄片状フィラーの含有量が0.1質量部以上5.0質量部以下である請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記薄片状フィラーの厚みが、0.001μm以上0.1μm以下であり、且つ最大長が0.01μm以上10.00μm以下である請求項1または請求項2に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の半導電性樹脂組成物からなる導電部材。
【請求項5】
請求項4に記載の導電部材を、転写部材として用いた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−78971(P2007−78971A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265212(P2005−265212)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】