半導電性樹脂組成物および配線回路基板
【課題】電子部品に損傷を与えることなく、帯電を防止することができるとともに、耐熱性などの樹脂特性を保持することのできる半導電性層を形成することのできる半導電性樹脂組成物およびその半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を備える配線回路基板を提供すること。
【解決手段】イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマーおよびスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を溶媒に配合して、これらが溶解する半導電性樹脂組成物を調製する。この半導電性樹脂組成物を、回路付サスペンション基板1の、端子部6を含むカバー層5の表面と、カバー層5およびベース層3から露出する金属支持層2の表面とに塗布、乾燥、加熱、水洗し、半導電性層10を形成した後、端子部6と、カバー層5およびベース層3から露出する金属支持層2の表面とに形成された半導電性層10を除去する。
【解決手段】イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマーおよびスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を溶媒に配合して、これらが溶解する半導電性樹脂組成物を調製する。この半導電性樹脂組成物を、回路付サスペンション基板1の、端子部6を含むカバー層5の表面と、カバー層5およびベース層3から露出する金属支持層2の表面とに塗布、乾燥、加熱、水洗し、半導電性層10を形成した後、端子部6と、カバー層5およびベース層3から露出する金属支持層2の表面とに形成された半導電性層10を除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性樹脂組成物および配線回路基板、詳しくは、電気機器や電子機器に装備される配線回路基板、および、その配線回路基板に半導電性層を形成するための半導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線回路基板や回路付サスペンション基板などの配線回路基板は、通常、ポリイミドからなるベース層と、そのベース層の上に形成された銅箔からなる導体回路と、ベース層の上および導体回路の上に形成されたポリイミドからなるカバー層とを備えており、電子部品を実装して、各種の電気機器や電子機器に搭載されている。この配線回路基板において、配線回路基板が帯電した場合には、実装された電子部品が静電破壊するという不具合がある。
【0003】
そして、配線回路基板が帯電することを防止するために、ベース層やカバー層に、導電層によって覆われたシリカ粒子を分散させた静電気防止芳香族ポリイミドフィルムを適用することが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−77406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の静電気防止芳香族ポリイミドフィルムを、配線回路基板のベース層やカバー層に適用すると、静電気防止芳香族ポリイミドフィルムの表面からシリカ粒子が脱離して、その脱離したシリカ粒子が電子部品に損傷を与えるという不具合がある。
本発明の目的は、電子部品に損傷を与えることなく、帯電を防止することができるとともに、耐熱性などの樹脂特性を保持することのできる半導電性層を形成することのできる半導電性樹脂組成物、および、その半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を備える配線回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および溶媒を含有していることを特徴としている。
また、本発明の半導電性樹脂組成物では、前記導電性ポリマーが、ポリアニリンであることが好適である。
【0006】
また、本発明の半導電性樹脂組成物では、さらに、感光剤を含有することが好適である。
また、本発明の配線回路基板は、導体層と、前記導体層に隣接する絶縁層と、前記絶縁層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部と、上記した半導電性樹脂組成物を用いて、前記絶縁層の表面に形成される半導電性層とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の配線回路基板は、導体層と、前記導体層に隣接する樹脂層と、前記樹脂層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、前記樹脂層が、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴としている。
また、本発明の配線回路基板は、金属支持層と、前記金属支持層の上に形成されるベース層と、前記ベース層の上に形成される導体層と、前記導体層の上に形成されるカバー層と、前記カバー層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、前記ベース層および/または前記カバー層が、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導電性樹脂組成物を用いて半導電性層を形成すれば、その形成された半導電性層は、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止しながら、配線回路基板が帯電することを防止することができる。
また、本発明の配線回路基板では、樹脂層が半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電層であるので、配線回路基板が帯電することを防止して、実装される電子部品の静電破壊を防止することができる。しかも、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止することができる。さらに、耐熱性などの樹脂特性を保持することができる。
【0009】
また、本発明の配線回路基板では、ベース層および/またはカバー層が半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であるので、配線回路基板が帯電することを防止して、実装される電子部品の静電破壊を防止することができる。しかも、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止することができる。さらに、耐熱性などの樹脂特性を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および溶媒を含有している。
本発明において、イミド樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。これらは、市販品として入手でき、そのような市販品として、ポリイミドとして、例えば、PI−113、PI−117、PI−213B(以上、丸善石油化学社製)、リカコート−20(新日本理化社製)が挙げられる。また、ポリエーテルイミドとして、ウルテム1000、ウルテムXH6050(以上、日本イージープラスチック社製)が挙げられる。また、ポリアミドイミドとして、例えば、HR16NN、HR11NN(東洋紡績社製)が挙げられる。
【0011】
また、イミド樹脂前駆体としては、例えば、ポリアミック酸が挙げられる。ポリアミック酸は、通常、有機テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得ることができる。
有機テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物などが挙げられる。また、これら有機テトラカルボン酸二無水物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0012】
また、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニルなどが挙げられる。また、これらジアミンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0013】
そして、ポリアミック酸は、これら有機テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを、実質的に等モル比となるような割合で、適宜の有機溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒中で、通常、0〜90℃で1〜24時間反応させることよって、ポリアミック酸の溶液として得ることができる。なお、ポリアミック酸の重量平均分子量は、例えば、5000〜200000程度、好ましくは、10000〜100000程度である。
【0014】
本発明において、導電性ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、またはこれらの誘導体が挙げられる。好ましくは、ポリアニリンが挙げられる。また、これら導電性ポリマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、導電性ポリマーは、好ましくは、還元体である。導電性ポリマーが酸化体であると、導電性ポリマーとポリアミック酸とを混合する場合に、ゲル化する傾向がある。なお、導電性ポリマーは、後述するように、半導電性樹脂組成物を用いて半導電性層を形成することによって、導電性が付与される。
【0015】
また、本発明の半導電性樹脂組成物は、上記した導電性ポリマーの酸化を防止するために、好ましくは、還元剤や酸化防止剤を含有している。
還元剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミン、ジメチルアミノプロピオニトリル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノプロパノール、ピペラジン、モルホリンなどが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。また、これら還元剤および酸化防止剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0016】
本発明において、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、例えば、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物のアルカリ金属塩であって、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を、アルカリ水溶液で処理することによって、得ることができる。
スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の調製は、特に制限されないが、例えば、芳香族ジアミノビスフェノールとスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸とを、縮合剤下で反応させて、その後、その反応液を、水洗する。
【0017】
芳香族ジアミノビスフェノールとしては、特に制限されないが、溶解性を考慮すると、好ましくは、下記式(1)または(2)で示される化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】
(式中、R1は、C(CF3)2またはS(=O)2を示す。)
【0019】
【化2】
(式中、R2は、C(CF3)2またはS(=O)2を示す。)
スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、下記式(3)で示される化合物が挙げられる。
【0020】
【化3】
上記した芳香族ジアミノビスフェノールとスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸との反応は、より具体的には、上記した芳香族ジアミノビスフェノールと、上記したスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸とを、縮合剤としてのポリリン酸および五酸化二リン下で配合して、窒素雰囲気下で、100〜250℃、4〜10時間、撹拌する。
【0021】
また、上記した芳香族ジアミノビスフェノールとスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸との反応において、さらに、下記式(4)で示される芳香族ジカルボン酸を配合することもできる。
【0022】
【化4】
芳香族ジアミノビスフェノールと、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸および必要により配合される芳香族ジカルボン酸との配合割合は、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸および必要により配合される芳香族ジカルボン酸の総量100モル部に対して、芳香族ジアミノビスフェノールが、例えば、90〜110モル部、好ましくは、95〜105モル部である。芳香族ジカルボン酸を配合する場合には、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との配合割合は、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との総量100モル部に対して、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸が、例えば、30〜70モル部である。スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸が70モル部より多いと、溶媒への溶解性が低下し、30モル部より少ないと、ドーパントとしての性能が低下する傾向がある。
【0023】
上記の反応により得られた反応液を水洗するには、例えば、得られた反応液と、水とを配合し、その配合された液(水溶液)が中性になるまで、撹拌して洗浄する。なお、この反応液と水との配合により、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物は、固体として析出する。
次いで、析出したスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を、アルカリ水溶液で処理するには、例えば、(飽和)炭酸水素ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液中に、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を配合して、室温で、例えば、0.5〜2時間、撹拌する。
【0024】
本発明において、溶媒は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤を溶解(分散)できれば、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。また、これら溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体として、ポリアミック酸が用いられる場合には、ポリアミック酸を溶解する反応溶媒を、そのまま半導電性樹脂組成物の溶媒として用いることができる。
【0025】
そして、本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩、必要により還元剤または酸化防止剤、および、溶媒を配合することによって、調製することができる。
導電性ポリマーの配合割合は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、1〜300重量部、好ましくは、5〜100重量部である。導電性ポリマーの配合割合が、これより少ないと、導電性が十分でない場合がある。また、これより多いと、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体の良好な膜特性が損なわれる場合がある。
【0026】
スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の配合割合は、導電性ポリマー100重量部に対して、例えば、10〜100重量部、好ましくは、20〜50重量部である。スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の配合割合が、これより多いと、膜強度が低下する場合があり、一方、これより少ないと、導電性が発現しない場合がある。
還元剤または酸化防止剤の配合割合は、例えば、導電性ポリマー100重量部に対して、0.1〜1000重量部、好ましくは、1〜500重量部である。還元剤または酸化防止剤の配合割合が、これより少ないと、パターンニングの精度が低下する場合がある。また、これより多いと、最終的な膜物性が低下する場合がある。
【0027】
また、溶媒は、これらイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤が、半導電性樹脂組成物に対して、1〜40重量%(固形分濃度)、好ましくは、5〜30重量%(固形分濃度)となるように、配合する。固形分濃度がこれより少なくても多くても、目的の膜厚に制御することが困難となる場合がある。
【0028】
また、半導電性樹脂組成物の調製は、特に制限されず、例えば、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により還元剤または酸化防止剤を、溶媒に配合して、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤が溶媒に対して均一に溶解(分散)するまで、撹拌混合する。また、予めイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体を溶媒に溶解(分散)した樹脂溶液と、予め導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤を溶媒に溶解させた導電性ポリマー溶液とを、混合することもできる。これによって、溶媒中において、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤が溶解(分散)される半導電性樹脂組成物が調製される。
【0029】
このようにして得られた半導電性樹脂組成物を、塗布、乾燥し、その後、必要により加熱(硬化)し、次いで、水洗すれば、半導電性層を形成することができる。
そして、半導電性樹脂組成物を用いて形成された半導電性層は、半導電性層の全体にわたって均一に導電性ポリマーを含有しているので、静電気の帯電を有効に除去することができる。
【0030】
また、この半導電性層では、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止することができる。さらに、耐熱性などの樹脂特性を保持することができる。
さらに、この半導電性層では、半導電性層を形成するための半導電性樹脂組成物が、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を含有しており、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩が、後述する水洗による金属イオンの解離によって、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)する。そのため、半導電性層を形成した後、別途、ドーパントによるドーピングが不要であり、生産性の向上を図ることができる。
【0031】
さらにまた、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、耐熱性が高く、例えば、通常のスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の耐熱温度が300℃程度であるのに対し、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の耐熱温度が約400℃である。そのため、後述する温度における加熱(硬化)においても分解せず十分に耐えることができる。
【0032】
また、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物が上記した溶媒(例えば、NMP)に対して不溶であるのに対し、上記した溶媒(例えば、NMP)に対して可溶であるため、均一に導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)して、半導電性層を形成することができる。
また、本発明の半導電性樹脂組成物には、さらに、感光剤を含有させることができる。感光剤としては、例えば、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン(ニフェジピン)、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1−メチル−4−ヒドロピリジン(N−メチル体)、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジアセチル−1,4−ジヒドロピリジン(アセチル体)などのジヒドロピリジン誘導体が挙げられる。また、これら感光剤は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、感光剤は、例えば、ポリエチレングリコールなどの溶媒に溶解して、溶液として調製することもできる。
【0033】
感光剤は、上記したイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により還元剤または酸化防止剤とともに、溶媒に配合する。感光剤の配合割合は、例えば、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは、0.5〜75重量部である。感光剤のイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体に対する配合割合が、これより少なくても多くても、露光部と未露光部との適切な溶解速度差が得られず、パターンニングが困難な場合がある。なお、感光剤が配合される場合でも、溶媒は、これらイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩、必要により配合される還元剤または酸化防止剤、および、感光剤が、半導電性樹脂組成物に対して、1〜40重量%(固形分濃度)、好ましくは、5〜30重量%(固形分濃度)となるように、配合する。
【0034】
なお、感光剤を配合する場合には、上記したイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体として、好ましくは、イミド樹脂前駆体が用いられる。
このようにして得られた、感光剤が含有された半導電性樹脂組成物(以下、感光性半導電性樹脂組成物という。)では、感光剤が含有されているので、塗布および乾燥した後に、露光および現像し、必要により加熱(硬化)し、次いで、水洗すれば、半導電性層を所望のパターンで形成することができる。
【0035】
次に、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、カバー層の表面に備える配線回路基板について説明する。
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板を示す概略平面図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板の長手方向に沿う部分断面図である。
【0036】
図1において、この回路付サスペンション基板1は、ハードディスクドライブに搭載され、磁気ヘッド(図示せず)を実装して、その磁気ヘッドを、磁気ディスクとの間で相対的に走行させるときの空気流に抗して、磁気ディスクとの間に微小間隔を保持しながら支持する金属支持層としての金属支持基板2に、磁気ヘッドとリード・ライト基板とを接続するための導体層としての導体パターン4が一体的に形成されている。
【0037】
なお、図1では、金属支持基板2に対する導体パターン4の相対配置を明確に示すために、後述するベース層3、カバー層5および半導電性層10を省略して示している。
導体パターン4は、磁気ヘッド側接続端子部6Aと、外部側接続端子部6Bと、これら磁気ヘッド側接続端子部6Aおよび外部側接続端子部6Bを接続するための配線7とを、一体的に連続して備えている。
【0038】
配線7は、金属支持基板2の長手方向に沿って複数設けられ、幅方向(長手方向に直交する方向)において互いに間隔を隔てて並列配置されている。
磁気ヘッド側接続端子部6Aは、金属支持基板2の先端部に配置され、各配線7の先端部がそれぞれ接続されるように、複数設けられている。この磁気ヘッド側接続端子部6Aには、磁気ヘッドの端子部(図示せず)が接続される。
【0039】
外部側接続端子部6Bは、金属支持基板2の後端部に配置され、各配線7の後端部がそれぞれ接続されるように、複数設けられている。この外部側接続端子部6Bには、リード・ライト基板の端子部(図示せず)が接続される。
また、金属支持基板2の先端部には、磁気ヘッドを実装するためのジンバル8が設けられている。ジンバル8は、磁気ヘッド側接続端子部6Aを長手方向において挟むように、金属支持基板2を切り抜くことによって形成されている。
【0040】
この回路付サスペンション基板1は、図2に示すように、金属支持基板2と、金属支持基板2の上に形成されたベース層3と、ベース層3の上に形成された導体パターン4と、導体パターン4を被覆するように、ベース層3の上に形成された絶縁層としてのカバー層5とを備えている。
また、カバー層5には、磁気ヘッド側接続端子部6Aまたは外部側接続端子部6Bが配置される部分に対応して、厚さ方向を貫通する開口部9が形成されており、この開口部9から露出する導体パターン4が、磁気ヘッド側接続端子部6Aまたは外部側接続端子部6B(以下、総称して端子部6とする。)として設けられている。なお、図2では、磁気ヘッド側接続端子部6Aおよび外部側接続端子部6Bのいずれか一方のみが示されている。
【0041】
そして、カバー層5の表面には、半導電性層10が形成されている。
半導電性層10は、上記したカバー層5の上面のみに形成され、側面には形成されていない。また、半導電性層10はカバー層5の上面に加え、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部にも形成されている。
図3は、図2に示す回路付サスペンション基板において、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、形成する工程を示す、工程図である。次に、図3を参照して、回路付サスペンション基板1に半導電性層10を形成する方法を説明する。
【0042】
この方法では、まず、図3(a)に示すように、半導電性層10を形成するための回路付サスペンション基板1を用意する。この回路付サスペンション基板1は、半導電性層10が形成される以前の回路付サスペンション基板1であって、上記したように金属支持基板2と、金属支持基板2の上にパターンとして形成されたベース層3と、ベース層3の上に形成された導体パターン4と、導体パターン4を被覆するように、ベース層3の上にパターンとして形成されたカバー層5とを備えている。
【0043】
金属支持基板2は、例えば、ステンレス箔、42アロイ箔、アルミニウム箔、銅−ベリリウム箔、りん青銅箔などの金属箔からなる。金属支持基板2の厚みは、例えば、5〜100μmである。
ベース層3は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂から形成される。好ましくは、ポリイミドからなる。ベース層3の厚みは、例えば、5〜50μmである。
【0044】
導体パターン4は、例えば、銅箔、ニッケル箔、金箔、はんだ箔またはこれらの合金箔などの導体箔からなり、上記した端子部6および配線7が一体的に形成される配線回路パターンとして形成されている。この導体パターン4は、サブトラクティブ法やアディティブ法などの公知のパターンニング法(後述)により形成されている。導体パターン4の厚みは、例えば、3〜50μmである。
【0045】
カバー層5は、ベース層3と同様の合成樹脂からなり、その厚みは、例えば、3〜50μmである。
そして、この回路付サスペンション基板1には、上記した端子部6が、カバー層5を開口させて、導体パターン4を露出させることによって、その導体パターン4の露出部分として形成されている。
【0046】
そして、この方法では、図3(b)に示すように、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に、半導電性層10を形成する。
半導電性層10は、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成する。半導電性層10を形成するには、例えば、まず、上記した半導電性樹脂組成物を、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に均一に塗布する。半導電性樹脂組成物の塗布は、特に制限されず、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法など公知の塗布方法が用いられる。次いで、塗布された半導電性樹脂組成物を乾燥する。半導電性樹脂組成物の乾燥は、溶媒の種類によって適宜決定されるが、例えば、60〜250℃、好ましくは、80〜200℃で、例えば、1〜30分間、好ましくは、3〜15分間加熱する。乾燥時間が、これより短いと、溶媒の除去が不十分となり、半導電性層10の表面抵抗値が大きく変化する場合がある。また、これより長いと、生産効率が低下する場合がある。
【0047】
なお、半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、乾燥後、半導電性樹脂組成物を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性層10が、形成される。
次いで、上記により形成されたドーピングされる以前の半導電性層10を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層10を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層10の水洗は、例えば、ドーピングされる以前の半導電性層10が形成された回路付サスペンション基板1を、20〜90℃の水中で、0.5〜3時間、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層10の水洗により、半導電性層10が含有するスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、その金属イオンが水素イオンに置換して、スルホン酸の金属塩が解離のスルホン酸に変換されることにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となる。スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を含有する半導電性層10では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0048】
半導電性層10の厚みは、例えば、0.5〜5μmである。半導電性層10の厚みが、これより薄いと、均一な層が得られない場合があり、これより厚いと、乾燥が不十分となり、かつ、コストの上昇を生じる場合がある。
また、半導電性層10の表面抵抗値は、例えば、105〜1012Ω/□、好ましくは、106〜1011Ω/□である。半導電性層10の表面抵抗値が、これより低いと、実装された電子部品(磁気ヘッドやリード・ライト基板の端子部、以下同様。)の誤動作を生じる場合があり、また、これより大きいと、静電気の帯電を有効に除去できない場合がある。
【0049】
なお、半導電性層10の表面抵抗値は、例えば、MITSUBISHI PETROCHEMICAL社製のHiresta IP MCP−HT260(プローブ:HRS)を用いて測定することができる。
次いで、この方法では、図3(c)に示すように、端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)を除く半導電層10の表面を、エッチングレジスト11で被覆する。エッチングレジスト11は、例えば、ドライフィルムフォトレジストを半導電性層10の表面に積層し、露光および現像する公知の方法により形成する。
【0050】
その後、この方法では、図3(d)に示すように、エッチングレジスト11から露出する半導電性層10をエッチングにより除去する。エッチングは、例えば、エッチング液として水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いて、浸漬法またはスプレー法によって、ウエットエッチングする。
そして、この方法では、図3(e)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
【0051】
なお、上記した半導電性層10の水洗は、ドーピングされる以前の半導電性層10を、乾燥(必要により加熱(硬化))したすぐ後にしなくても、このエッチングレジスト11の除去の後に、することもできる。
これによって、半導電性層10は、カバー層5の表面に形成される(但し、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層10が形成されている。また、カバー層5の側面には、半導電層10が形成されていない。)。
【0052】
その後、端子部6の表面には、必要に応じて、金やニッケルからなるめっき層が、電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。
そして、この回路付サスペンション基板1は、その後、金属支持基板2を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバル8を形成するとともに、外形加工することにより、形成される。
【0053】
これによって、カバー層5の表面に半導電性層10が形成された回路付サスペンション基板1を得ることができる。
図4は、図2に示す回路付サスペンション基板において、感光性半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、形成する工程を示す、工程図である。次に、図4を参照して、感光性半導電性樹脂組成物を用いて、回路付サスペンション基板1に半導電性層10を所望のパターンで形成する方法を説明する。
【0054】
この方法では、まず、上記と同様に、図4(a)に示すように、回路付サスペンション基板1を用意する。
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に、感光性半導電性樹脂組成物を用いて皮膜12を形成する。皮膜12を形成するには、まず、感光性半導電性樹脂組成物を、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布する。次いで、塗布された感光性半導電性樹脂組成物を、上記と同様に、乾燥する。
【0055】
その後、この方法では、図4(c)に示すように、皮膜12を、フォトマスク13を介して露光する。フォトマスク13は、光を透過しない遮光部分13aと、光を透過する光透過部分13bとを所望のパターンで備えており、ネガ画像でパターンニングする場合には、半導電性層10を形成しない部分(端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)の表面)には、遮光部分13aが対向し、半導電性層10を形成する部分(カバー層5の表面(上面))には、光透過部分13bが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光する。
【0056】
次いで、必要によりネガ画像を形成するための所定温度で加熱後、図4(d)に示すように、半導電性層10における遮光部分13aが対向していた未露光部分、すなわち、半導電性層10における端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)の表面に対応する部分を、現像により除去する。現像は、例えば、現像液としてアルカリ水溶液などを用いる、浸漬法またはスプレー法などが用いられる。これによって、皮膜12が、カバー層5の表面(上面)に、所望のパターンで形成される。
【0057】
なお、ポジ画像でパターンニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)の表面にフォトマスク13の光透過部分13bを対向させて露光した後、必要によりポジ画像を形成するための所定温度で加熱後、現像する。
【0058】
その後、この方法では、図4(e)に示すように、感光性半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、そのイミド樹脂前駆体を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性層10が、所望のパターンとして形成される。
【0059】
次いで、上記した所望のパターンとして形成されたドーピングされる以前の半導電性層10を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層10を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層10の水洗は、例えば、半導電性樹脂組成物を用いて形成されるドーピングされる以前の半導電性層10の水洗と同様に、ドーピングされる以前の半導電性層10が形成された回路付サスペンション基板1を、上記と同様の水中で、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層10の水洗により、半導電性層10が含有するスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、その金属イオンが水素イオンに置換して、スルホン酸の金属塩が解離のスルホン酸に変換されることにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となる。そして、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を含有する半導電性層10では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0060】
これによって、上記と同様に、半導電性層10が、カバー層5の表面に形成される(但し、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層10が形成されている。また、カバー層5の側面には、半導電性層10が形成されていない。)。
そして、この回路付サスペンション基板1では、半導電性層10は、優れた耐熱性を保持しつつ、導電性ポリマーが脱離しにくいので、実装する電子部品に損傷を与えることを防止しながら、静電気の帯電を有効に除去して、実装する電子部品の静電破壊を確実に防止することができる。
【0061】
また、上記の方法では、半導電性樹脂組成物が、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を含有しており、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩が、半導電性樹脂組成物の積層後において、水洗されることによって、金属イオンの解離により、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となって、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)している。そのため、半導電性層10を形成した後、別途、ドーパントによるドーピングが不要であり、生産性の向上を図ることができる。
【0062】
さらに、上記の方法において、半導電性樹脂組成物に配合されるスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、耐熱性が高く、例えば、通常のスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の耐熱温度が300℃程度であるのに対し、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の耐熱温度が約400℃である。そのため、例えば、半導電性樹脂組成物がイミド樹脂前駆体を含有する場合に、上記した温度における加熱(硬化)においても分解せず十分に耐えることができるので、回路付サスペンション基板1の耐熱性の向上を図ることができる。
【0063】
さらにまた、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物が上記した溶媒(例えば、NMP)に対して不溶であるのに対し、上記した溶媒(例えば、NMP)に対して可溶である。そのため、均一に導電性ポリマーに導電性が付与(ドーピング)された半導電性層10を、カバー層5の表面に形成することができる。
【0064】
なお、半導電性層10は、その目的および用途により、ベース層3に形成してもよく、また、ベース層3およびカバー層5の両方に形成してもよい。
また、半導電性層10は、単一層で形成してもよく、また、多層で形成することもできる。半導電性層10を多層で形成する場合には、カバー層5から離間するに従って、各半導電性層10に含まれる導電性ポリマーの配合割合が少なくなるように、各半導電性層10を形成する。
【0065】
また、本発明の配線回路基板は、図5に示すように、カバー層5の表面に半導電性層10を形成せずに、ベース層3および/またはカバー層5を、直接、半導電層から形成することにより、形成することもできる。
すなわち、この回路付サスペンション基板1は、金属支持基板2と、金属支持基板2の上にパターンとして形成されたベース層3と、ベース層3の上に形成された導体パターン4と、導体パターン4を被覆するように、ベース層3の上にパターンとして形成されたカバー層5とを備えている。また、カバー層5には、開口部9が形成されており、その開口部9から露出する導体パターン4が、端子部6として設けられている。そして、この回路付サスペンション基板1では、ベース層3および/またはカバー層5が、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層から、形成されている。
【0066】
次に、この回路付サスペンション基板1の製造方法について、図6を参照して説明する。
この方法では、図6(a)に示すように、まず、金属支持基板2を用意する。金属支持基板2としては、例えば、上記と同様の金属箔が用いられ、好ましくは、ステンレス箔が用いられる。また、その厚みは、例えば、15〜30μm、好ましくは、20〜25μmである。
【0067】
次に、この方法では、図6(b)に示すように、金属支持基板2の上に、ベース層3を、導体パターン4を積層可能な所望のパターンとして、形成する。
ベース層3は、半導電性層または樹脂層から形成する。すなわち、カバー層5を半導電性層から形成しない場合には、必ず半導電性層から形成し、カバー層5を半導電性層から形成する場合には、その目的および用途により、半導電性層または樹脂層から適宜選択して形成する。
【0068】
ベース層3を半導電性層から形成する場合には、例えば、まず、図7(a)に示すように、上記と同様の半導電性樹脂組成物を、金属支持基板2の表面に均一に塗布し、乾燥し、必要により加熱(硬化)させることにより、ドーピングされる以前の半導電性層を形成する。その後、上記により形成された半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるベース層3を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、例えば、ドーピングされる以前の半導電性層を、20〜90℃の水中で、0.5〜3時間、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるベース層3では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0069】
また、この半導電性層の表面抵抗値は、例えば、105〜1012Ω/□、好ましくは、106〜1011Ω/□である。半導電性層の表面抵抗値が、これより小さいと、実装された電子部品の誤動作を生じる場合があり、また、これより大きいと、静電気の帯電を有効に除去できない場合がある。
次いで、上記のようにして形成されたベース層3を、所望のパターンに形成するには、図7(b)に示すように、ベース層3の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図7(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するベース層3をエッチングにより除去した後、図7(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
【0070】
エッチングレジスト11は、例えば、ドライフィルムフォトレジストをベース層3の表面に積層し、露光および現像する公知の方法により形成する。
ベース層3のエッチングは、例えば、エッチング液として水酸化カリウム水溶液などのアルカリ現像液を用いて、浸漬法またはスプレー法によって、ウエットエッチングする。
これによって、金属支持基板2の上に、半導電性層からなるベース層3が、導体パターン4を積層可能な所望のパターンとして形成される。
【0071】
なお、上記した半導電性層の水洗は、ドーピングされる以前の半導電性層を、乾燥(必要により加熱(硬化))したすぐ後にしなくても、このエッチングレジスト11の除去の後に、することもできる。
また、上記した感光性半導電性樹脂組成物を用いれば、ベース層3をエッチングせずとも、ベース層3を所望のパターンとして形成することができる。
【0072】
感光性半導電性樹脂組成物を用いて、所望のパターンでベース層3を形成するには、図8(a)に示すように、まず、感光性半導電性樹脂組成物を、金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布された感光性半導電性樹脂組成物を、上記と同様に、乾燥して、ベース皮膜14を形成する。
その後、この方法では、図8(b)に示すように、ベース皮膜14を、フォトマスク13を介して露光する。ネガ画像でパターンニングする場合には、図8(b)に示すように、半導電性層を形成しない部分には、遮光部分13aが対向し、半導電性層を形成する部分には、光透過部分13bが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光する。
【0073】
次いで、必要によりネガ画像を形成するために所定温度で加熱後、図8(c)に示すように、ベース皮膜14における遮光部分13aが対向していた未露光部分を、現像により除去する。現像は、例えば、現像液としてアルカリ現像液などを用いて、浸漬法またはスプレー法などが用いられる。これによって、ベース皮膜14が、所望のパターンに形成される。
【0074】
なお、ポジ画像でパターンニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち、ベース層3を形成しない部分には、光透過部分13bが対向し、それ以外のベース層3を形成する部分には、遮光部分13aが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光した後、必要によりポジ画像を形成するために所定温度で加熱後、現像する。
その後、図8(d)に示すように、感光性半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、ベース皮膜14を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で、加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性層が、所望のパターンとして形成される。
【0075】
次いで、上記したパターンとして形成されたドーピングされる以前の半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるベース層3を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、半導電性樹脂組成物を用いて形成されるドーピングされる以前の半導電性層10の水洗と同様に、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板1を、上記と同様の水中で、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるベース層3では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0076】
これによって、上記と同様に、ベース層3が、所望のパターンとして形成される。
また、ベース層3を樹脂層から形成する場合には、公知の方法に準拠すればよく、例えば、まず、図7(a)に示すように、ポリイミド(上記したイミド樹脂前駆体を含む。)、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂のワニスを調製して、そのワニスを、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法など公知の塗布方法により、金属支持基板2の表面に均一に塗布し、乾燥後、必要により加熱硬化させて、樹脂層からなるベース層3を形成する。
【0077】
そして、上記と同様の方法により、図7(b)に示すように、ベース層3の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図7(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するベース層3をエッチングにより除去した後、図7(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
これによって、金属支持基板2の上に、樹脂層からなるベース層3が、導体パターン4を積層可能な所望のパターンとして形成される。
【0078】
また、上記したワニスに、感光剤を含有させれば、ベース層3をエッチングせずとも、ベース層3を所望のパターンとして形成することができる。なお、感光剤としては、上記と同様の感光剤が挙げられる。
例えば、感光剤を含むポリイミド前駆体(以下、感光性ポリアミック酸樹脂という。)のワニスを用いる場合には、図8(a)に示すように、まず、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを、金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布されたワニスを、上記と同様に、乾燥して、ベース皮膜14を形成する。
【0079】
次いで、図8(b)に示すように、上記と同様の方法により、ベース皮膜14を、フォトマスク13を介して露光した後、必要により所定温度で加熱後、図8(c)に示すように、上記と同様の方法により、現像により除去する。
その後、図8(d)に示すように、ベース皮膜14を、例えば、減圧下、300℃以上で加熱することにより、硬化(イミド化)させて、ベース層3を形成する。
【0080】
これによって、上記と同様に、ベース層3が、所望のパターンとして形成される。
また、このようにして形成されるベース層3の厚みは、例えば、5〜20μm、好ましくは、8〜15μmである。
次いで、この方法では、図6(c)に示すように、ベース層3の上に、導体パターン4を形成する。導体パターン4は、例えば、上記と同様の導体箔からなり、好ましくは、銅箔からなる。また、導体パターン4を形成するには、ベース層3の表面に、例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法などの公知のパターンニング法によって、導体パターン4を、上記した端子部6および配線7が一体的に形成される配線回路パターンとして形成する。
【0081】
サブトラクティブ法では、まず、ベース層3の全面に、必要により接着剤層を介して導体を積層し、次いで、この導体の上に、配線回路パターンと同一パターンのエッチングレジストを形成し、このエッチングレジストをレジストとして、導体をエッチングして導体パターン4を形成し、その後に、エッチングレジストを除去する。
また、アディティブ法では、まず、ベース層3の全面に、導体薄膜からなる種膜を形成し、次いで、この種膜の表面に、配線回路パターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する種膜の表面に、電解めっきにより、配線回路パターンとして導体パターン4を形成し、その後に、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の種膜を除去する。
【0082】
このようにして形成される導体パターン4では、その厚みが、5〜20μm、好ましくは、5〜15μmである。
次に、この方法では、図6(d)に示すように、カバー層5を、ベース層3の上に、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして、形成する。
カバー層5は、半導電性層または樹脂層から形成する。すなわち、ベース層3を半導電性層から形成しない場合には、必ず半導電性層から形成し、ベース層3を半導電性層から形成する場合には、その目的および用途により、半導電性層または樹脂層から適宜選択して形成する。
【0083】
カバー層5を半導電性層から形成する場合には、例えば、まず、図9(a)に示すように、上記した半導電性樹脂組成物を、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法で、均一に塗布し、乾燥し、必要により加熱硬化させることにより、ドーピングされる以前の半導電性層を形成する。その後、上記により形成されたドーピングされる以前の半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるカバー層5を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、例えば、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板1を、20〜90℃の水中で、0.5〜3時間、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるカバー層5では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0084】
この半導電性層の表面抵抗値は、上記と同様に、例えば、105〜1012Ω/□、好ましくは、106〜1011Ω/□である。半導電性層の表面抵抗値が、これより小さいと、実装された電子部品の誤動作を生じる場合があり、また、これより大きいと、静電気の帯電を有効に除去できない場合がある。
そして、上記と同様の方法により、図9(b)に示すように、カバー層5の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図9(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するカバー層5をエッチングにより除去した後、図9(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
【0085】
なお、上記した半導電性層の水洗は、ドーピングされる以前の半導電性層を、乾燥(必要により加熱(硬化))したすぐ後にしなくても、このエッチングレジスト11の除去の後に、することもできる。
これによって、ベース層3の上に、半導電性層からなるカバー層5が、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして形成される。
【0086】
また、上記と同様に、感光性半導電性樹脂組成物を用いれば、カバー層5をエッチングせずとも、カバー層5を所望のパターンとして形成することができる。
感光性半導電性樹脂組成物を用いて、所望のパターンでカバー層5を形成するには、図10(a)に示すように、まず、感光性半導電性樹脂組成物を、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布された感光性半導電性樹脂組成物を、上記と同様に、乾燥して、カバー皮膜15を形成する。
【0087】
次いで、図10(b)に示すように、カバー皮膜15を、フォトマスク13を介して露光する。例えば、ネガ画像でパターンニングする場合には、図10(b)に示すように、カバー層5を形成しない部分には、遮光部分13aが対向し、それ以外のカバー層5を形成する部分には、光透過部分13bが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光する。
【0088】
次いで、必要によりネガ画像を形成するために所定温度で加熱後、図10(c)に示すように、カバー皮膜15における遮光部分13aが対向していた未露光部分を、上記と同様の方法で、現像により除去する。
なお、ポジ画像でパターンニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち、カバー層5を形成しない部分には、光透過部分13bが対向し、それ以外のカバー層5を形成する部分には、遮光部分13aが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光した後、必要によりポジ画像を形成するために所定温度で加熱後、現像する。
【0089】
その後、図10(d)に示すように、感光性半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、カバー皮膜15を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で、加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性が、所望のパターンとして形成される。
次いで、上記したパターンとして形成されたドーピングされる以前の半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるカバー層5を、所望のパターンで形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層10の水洗と同様に、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板1を、上記と同様の水中で、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるカバー層5では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0090】
これによって、上記と同様に、ベース層3の上に、半導電性層からなるカバー層5が、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして形成される(図6(d))。
また、カバー層5を樹脂層から形成する場合には、公知の方法に準拠すればよく、例えば、まず、図9(a)に示すように、上記と同様の樹脂層を形成するための合成樹脂のワニスを調製して、そのワニスを、上記と同様の方法により、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に均一に塗布し、乾燥後、必要により加熱硬化させて、樹脂層からなるカバー層5を形成する。
【0091】
そして、上記と同様の方法により、図9(b)に示すように、カバー層5の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図9(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するカバー層5をエッチングにより除去した後、図9(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
これによって、ベース層3の上に、樹脂層からなるカバー層5が、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして形成される(図6(d)参照)。
【0092】
また、上記したワニスに、感光剤を含有させれば、カバー層5をエッチングせずとも、カバー層5を所望のパターンとして形成することができる。なお、感光剤としては、上記と同様の感光剤が挙げられる。
例えば、感光剤を含むポリイミド前駆体(感光性ポリアミック酸樹脂)のワニスを用いる場合には、図10(a)に示すように、まず、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布されたワニスを、上記と同様に、乾燥して、カバー皮膜15を形成する。
【0093】
次いで、図10(b)に示すように、上記と同様の方法により、カバー皮膜15を、フォトマスク13を介して露光した後、必要により所定温度で加熱後、図10(c)に示すように、上記と同様の方法により、現像により除去する。
その後、図10(d)に示すように、カバー皮膜15を、例えば、減圧下、300℃以上で加熱することにより、硬化(イミド化)させて、カバー層5を形成する。
【0094】
これによって、上記と同様に、カバー層5が、所望のパターンとして形成される(図6(d))。
また、このようにして形成されるカバー層5の厚みは、例えば、2〜10μm、好ましくは、3〜7μmである。
そして、この回路付サスペンション基板1は、その後、金属支持基板2を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバル8を形成するとともに、外形加工することにより、形成される。なお、端子部6の表面には、必要に応じて、金やニッケルからなるめっき層が、電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。
【0095】
そして、この回路付サスペンション基板1では、優れた耐熱性を保持しつつ、導電性ポリマーが脱離しにくいので、実装する電子部品に損傷を与えることを防止しながら、静電気の帯電を有効に除去して、実装する電子部品の静電破壊を確実に防止することができる。しかも、この回路付サスペンション基板1では、ベース層3および/またはカバー層5が半導電性層であるため、カバー層5の表面に、さらに半導電性層10を形成する必要がなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0096】
また、上記の方法では、半導電性樹脂組成物が、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を含有しており、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩が、ベース層3および/またはカバー層5となる半導電性樹脂組成物の積層後において、水洗されることによって、金属イオンの解離により、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となって、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)している。そのため、半導電性層からなるベース層3および/またはカバー層5を形成した後、別途、ドーパントによるドーピングが不要であり、生産性の向上を図ることができる。
【0097】
さらに、半導電性樹脂組成物に配合されるスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、耐熱性が高く、例えば、通常のスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の耐熱温度が300℃程度であるのに対し、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の耐熱温度が約400℃である。そのため、例えば、半導電性樹脂組成物がイミド樹脂前駆体を含有する場合に、上記した温度における加熱(硬化)においても分解せず十分に耐えることができるので、回路付サスペンション基板1の耐熱性の向上を図ることができる。
【0098】
さらにまた、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物が上記した溶媒(例えば、NMP)に対して不溶であるのに対し、上記した溶媒(例えば、NMP)に対して可溶である。そのため、均一に導電性ポリマーに導電性が付与(ドーピング)された半導電性層からなるベース層3および/またはカバー層5を形成することができる。
【0099】
なお、上記の回路付サスペンション基板1では、ベース層3および/またはカバー層5の少なくともいずれか一方が、半導電性層であればよく、すなわち、上記した回路付サスペンション基板1は、ベース層3およびカバー層5がともに半導電性層である態様、ベース層3が半導電性層でありカバー層5が樹脂層である態様、ベース層3が樹脂層でありカバー層5が半導電性層である態様の、3つの態様が含まれる。この回路付サスペンション基板1では、これらのうち、少なくともカバー層5が半導電性層である態様が好適である。
【0100】
また、上記の説明では、本発明の配線回路基板を、回路付サスペンション基板1を例示して説明したが、本発明の配線回路基板には、片面フレキシブル配線回路基板、両面フレキシブル配線回路基板、さらには、多層フレキシブル配線回路基板などが含まれる。
例えば、図11に示す片面フレキシブル配線回路基板21では、ベース層3、導体パターン4およびカバー層5が順次積層されており、カバー層5が開口されることにより、導体パターン4の露出部分が端子部6として形成されている。そして、半導電性層10が、端子部6の表面を除くカバー層5の表面に形成されている(但し、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層7が形成されている。また、カバー層5の側面には、半導電性層10が形成されていない。)。
【0101】
また、例えば、図12に示す片面フレキシブル配線回路基板31では、ベース層3、導体パターン4およびカバー層5が順次積層されており、カバー層5が開口されることにより、導体パターン4の露出部分として端子部6が形成されている。そして、この片面フレキシブル配線回路基板31では、ベース層3およびカバー層5の少なくともいずれか一方が、半導電性層から形成されている。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されることはない。
合成例1(ポリアミック酸樹脂の合成)
撹拌機および温度計を備えた1Lのセパラブルフラスコに、p−フェニレンジアミン27.6g(0.25mol)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.0g(0.05mol)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)767gを添加して撹拌し、p−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた。
【0103】
これに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物88.3g(0.3mol)を徐々に添加し、30℃以下の温度で2時間撹拌を続け、濃度14重量%のポリアミック酸樹脂の溶液を得た。なお、この溶液の30℃での粘度は500Pa・sであった。
合成例2(スルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩の合成)
撹拌機および温度計を備えた500mLのセパラブルフラスコに、芳香族ジアミノビスフェノール(上記式(1):R1はS(=O)2)11.21g(40mmol)、テレフタル酸(上記式(4)に相当)2.26g(13.6mmol)、5−スルホイソフタル酸(上記式(3)に相当)7.08g(26.4mmol)を入れ、ポリリン酸137.39g、五酸化二リン47.50gを添加して撹拌した。
【0104】
次いで、窒素雰囲気下において、150℃で2時間、さらに200℃で4時間、撹拌して反応させた。得られた反応液を、水に投入して、ポリマーを析出させつつ、その水が中性になるまで、ポリマーを洗浄し、これにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾールを得た。
次いで、得られたスルホン化ポリベンゾオキサゾールを、(飽和)炭酸水素ナトリウム水溶液中に投入し、1時間、撹拌した後、水で十分に洗浄することにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩を得た。
【0105】
実施例1(カバー層の表面に半導電性層を備える回路付サスペンション基板)
ステンレス箔からなる金属支持基板の上に、ポリイミドからなるベース層、銅箔からなる導体パターン、ポリイミドからなるカバー層が、順次積層されてなる回路付サスペンション基板を用意した(図4(a)参照)。なお、カバー層には、開口部が形成されており、その開口部から露出する導体パターンの露出部分が端子部とされている。
【0106】
別途、可溶性ポリアニリン(還元体)5g、および、合成例2で得られたスルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩2gを、N―メチル―2―ピロリドン(NMP)45g中に入れて撹拌して溶解し、さらに、還元剤としてフェニルヒドラジン1.5gを添加して撹拌して、ポリアニリンNMP溶液を調製した。
合成例1で得られたポリアミック酸樹脂の溶液10gに、感光剤(ニフェジピン0.42gとアセチル体0.28g)を添加して撹拌し、さらに、上記ポリアニリンNMP溶液2.8gを添加して撹拌し、感光性半導電性樹脂組成物を得た。
【0107】
この感光性半導電性樹脂組成物を、上記回路付サスペンション基板の、端子部の表面を含むカバー層の表面、および、カバー層およびベース層から露出する金属支持基板の表面に、スピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃で10分間加熱することより、厚み7μmの皮膜を形成した(図4(b)参照)。
次いで、フォトマスクを介して、露光量700mJ/cm2にて、紫外線を露光し(図4(c)参照)、180℃で10分間露光後加熱した後、現像することにより、皮膜をネガ画像でパターンニングした(図4(d)参照)。
【0108】
その後、1.33Paに減圧した状態で、360℃で加熱して、イミド化して、ドーピングされる以前の半導電性層を、所望のパターンで形成した。次いで、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板を、80℃の水(温水)で2時間、浸漬処理した。この水洗により、ドーピングして、ベース層の表面に半導電性層を形成した(図4(e)参照)。なお、この半導電性層の厚みは、5μmであった。また、半導電性層の初期の表面抵抗値は、4.5×1010Ω/□であった。
【0109】
その後、化学エッチングにより、金属支持基板を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバルを形成するとともに、外形加工することにより、半導電性層が、カバー層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た。
実施例2(半導電性層からなるカバー層を備える回路付サスペンション基板)
厚み20μmのステンレス箔からなる金属支持基板を用意して(図6(a)参照)、その金属支持基板の上に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを均一に塗布し、次いで、塗布されたワニスを、90℃で15分加熱することにより、ベース皮膜を形成した(図8(a)参照)。
【0110】
その後、そのベース皮膜を、フォトマスクを介して、700mJ/cm2で露光させ(図8(b)参照)、190℃で10分加熱した後、アルカリ現像液を用いて現像した(図8(c)参照)。その後、1.33Paに減圧した状態で、385℃で硬化させることにより、樹脂層からなる厚み10μmのベース層を、所望のパターンで形成した(図8(d)、図6(b)参照)。
【0111】
次いで、銅箔からなる厚み10μmの導体パターンを、アディティブ法により形成した(図6(c)参照)。
別途、可溶性ポリアニリン(還元体)5g、および、合成例2で得られたスルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩2gを、N―メチル―2―ピロリドン(NMP)45g中に入れて撹拌して溶解し、さらに、還元剤としてN,N−ジベンジルヒドロキシルアミン4gを添加して撹拌して、ポリアニリンNMP溶液を調製した。
【0112】
次いで、合成例1で得られたポリアミック酸樹脂の溶液10gに、感光剤(N−メチル体0.24gおよびニフェジピン0.35g)を添加して撹拌し、さらに、上記ポリアニリンNMP溶液2.8gを添加して撹拌して、感光性半導電性樹脂組成物を得た。
次いで、上記した感光性半導電性樹脂組成物を、導体パターンを被覆するように、金属支持基板から露出するベース層およびベース層から露出する金属支持基板の表面に、スピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃で10分加熱することにより、厚み7μmのカバー皮膜を形成した(図10(a)参照)。
【0113】
その後、そのカバー皮膜を、フォトマスクを介して、700mJ/cm2で露光させ(図10(b)参照)、180℃で10分加熱した後、アルカリ現像液を用いて現像することにより、カバー皮膜をネガ画像でパターンニングした(図10(c)参照)。
その後、1.33Paに減圧した状態で、320℃で加熱しイミド化して、ドーピングされる以前の半導電性層を、所望のパターンで形成した。次いで、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板を、80℃の水(温水)で2時間、浸漬処理した。この水洗により、ドーピングして、半導電性層からなるカバー層を、開口部が形成される所望のパターンで形成した(図10(d)、図6(d)参照)。なお、この半導電性層からなるカバー層の厚みは、5μmであった。また、半導電性層からなるカバー層の初期の表面抵抗値は、5.5×109Ω/□であった。
【0114】
その後、化学エッチングにより、金属支持基板を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバルを形成するとともに、外形加工することにより、ベース層が樹脂層からなり、カバー層が半導電性層からなる、回路付サスペンション基板を得た。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板を示す概略平面図である。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板(カバー層の表面に半導電性層を備える形態)の長手方向に沿う部分断面図である。
【図3】図2に示す回路付サスペンション基板において、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、形成する工程を示す、工程図であって、(a)は、回路付サスペンション基板を用意する工程、(b)は、端子部の表面を含むカバー層の表面、および、ベース層およびカバー層から露出する金属支持基板の表面に、半導電性層を形成する工程、(c)は、カバー層の表面を、エッチングレジストで被覆する工程、(d)は、エッチングレジストから露出する半導電性層を除去する工程、(e)は、エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図4】図2に示す回路付サスペンション基板において、感光性半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を形成する工程を示す、工程図であって、(a)は、回路付サスペンション基板を用意する工程、(b)は、端子部の表面を含むカバー層の表面、および、ベース層およびカバー層から露出する金属支持基板の表面に、皮膜を形成する工程、(c)は、皮膜を、フォトマスクを介して露光する工程、(d)は、皮膜の未露光部分を、現像により除去する工程、(e)は、皮膜を硬化(イミド化)させて半導電性層を形成する工程を示す。
【図5】本発明の配線回路基板の他の実施形態である回路付サスペンション基板(半導電性層からなるベース層および/またはカバー層を備える形態)の長手方向に沿う部分断面図である。
【図6】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、金属支持基板の上にベース層を所望のパターンとして形成する工程、(c)は、ベース層の上に導体パターンを形成する工程、(d)は、ベース層の上にカバー層を所望のパターンとして形成する工程を示す。
【図7】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(b)金属支持基板の上にベース層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための工程図であって、(a)は、金属支持基板の表面にベース層を形成する工程、(b)は、ベース層の表面をエッチングレジストで被覆する工程、(c)は、エッチングレジストから露出するベース層をエッチングする工程、(d)は、エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図8】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(b)金属支持基板の上にベース層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための他の工程図であって、(a)は、金属支持基板の表面にベース皮膜を形成する工程、(b)は、ベース皮膜をフォトマスクを介して露光する工程、(c)は、ベース皮膜の未露光部分を現像により除去する工程、(d)は、ベース皮膜を硬化させてベース層を形成する工程を示す。
【図9】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(d)ベース層の上にカバー層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための工程図であって、(a)は、導体パターンから露出するベース層、および、ベース層から露出する金属支持基板の表面にカバー層を形成する工程、(b)は、カバー層の表面をエッチングレジストで被覆する工程、(c)は、エッチングレジストから露出するカバー層をエッチングする工程、(d)は、エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図10】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(d)ベース層の上にカバー層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための他の工程図であって、(a)は、導体パターンから露出するベース層、および、ベース層から露出する金属支持基板の表面にカバー皮膜を形成する工程、(b)は、カバー皮膜をフォトマスクを介して露光する工程、(c)は、カバー皮膜の未露光部分を現像により除去する工程、(d)は、カバー皮膜を硬化させてカバー層を形成する工程を示す。
【図11】本発明の配線回路基板の他の実施形態である片面フレキシブル配線回路基板(カバー層の表面に半導電性層を備える形態)を示す断面図である。
【図12】本発明の配線回路基板の他の実施形態である片面フレキシブル配線回路基板(半導電性層からなるベース層および/またはカバー層を備える形態)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 回路付サスペンション基板
2 金属支持基板
3 ベース層
4 導体パターン
5 カバー層
6 端子部
10 半導電性層
21、31 片面フレキシブル配線回路基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性樹脂組成物および配線回路基板、詳しくは、電気機器や電子機器に装備される配線回路基板、および、その配線回路基板に半導電性層を形成するための半導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル配線回路基板や回路付サスペンション基板などの配線回路基板は、通常、ポリイミドからなるベース層と、そのベース層の上に形成された銅箔からなる導体回路と、ベース層の上および導体回路の上に形成されたポリイミドからなるカバー層とを備えており、電子部品を実装して、各種の電気機器や電子機器に搭載されている。この配線回路基板において、配線回路基板が帯電した場合には、実装された電子部品が静電破壊するという不具合がある。
【0003】
そして、配線回路基板が帯電することを防止するために、ベース層やカバー層に、導電層によって覆われたシリカ粒子を分散させた静電気防止芳香族ポリイミドフィルムを適用することが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−77406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の静電気防止芳香族ポリイミドフィルムを、配線回路基板のベース層やカバー層に適用すると、静電気防止芳香族ポリイミドフィルムの表面からシリカ粒子が脱離して、その脱離したシリカ粒子が電子部品に損傷を与えるという不具合がある。
本発明の目的は、電子部品に損傷を与えることなく、帯電を防止することができるとともに、耐熱性などの樹脂特性を保持することのできる半導電性層を形成することのできる半導電性樹脂組成物、および、その半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を備える配線回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および溶媒を含有していることを特徴としている。
また、本発明の半導電性樹脂組成物では、前記導電性ポリマーが、ポリアニリンであることが好適である。
【0006】
また、本発明の半導電性樹脂組成物では、さらに、感光剤を含有することが好適である。
また、本発明の配線回路基板は、導体層と、前記導体層に隣接する絶縁層と、前記絶縁層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部と、上記した半導電性樹脂組成物を用いて、前記絶縁層の表面に形成される半導電性層とを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、本発明の配線回路基板は、導体層と、前記導体層に隣接する樹脂層と、前記樹脂層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、前記樹脂層が、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴としている。
また、本発明の配線回路基板は、金属支持層と、前記金属支持層の上に形成されるベース層と、前記ベース層の上に形成される導体層と、前記導体層の上に形成されるカバー層と、前記カバー層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、前記ベース層および/または前記カバー層が、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導電性樹脂組成物を用いて半導電性層を形成すれば、その形成された半導電性層は、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止しながら、配線回路基板が帯電することを防止することができる。
また、本発明の配線回路基板では、樹脂層が半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電層であるので、配線回路基板が帯電することを防止して、実装される電子部品の静電破壊を防止することができる。しかも、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止することができる。さらに、耐熱性などの樹脂特性を保持することができる。
【0009】
また、本発明の配線回路基板では、ベース層および/またはカバー層が半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であるので、配線回路基板が帯電することを防止して、実装される電子部品の静電破壊を防止することができる。しかも、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止することができる。さらに、耐熱性などの樹脂特性を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および溶媒を含有している。
本発明において、イミド樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミドなどが挙げられる。これらは、市販品として入手でき、そのような市販品として、ポリイミドとして、例えば、PI−113、PI−117、PI−213B(以上、丸善石油化学社製)、リカコート−20(新日本理化社製)が挙げられる。また、ポリエーテルイミドとして、ウルテム1000、ウルテムXH6050(以上、日本イージープラスチック社製)が挙げられる。また、ポリアミドイミドとして、例えば、HR16NN、HR11NN(東洋紡績社製)が挙げられる。
【0011】
また、イミド樹脂前駆体としては、例えば、ポリアミック酸が挙げられる。ポリアミック酸は、通常、有機テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させることによって得ることができる。
有機テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物などが挙げられる。また、これら有機テトラカルボン酸二無水物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0012】
また、ジアミンとしては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノ−2,2−ジメチルビフェニル、2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4'−ジアミノビフェニルなどが挙げられる。また、これらジアミンは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0013】
そして、ポリアミック酸は、これら有機テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを、実質的に等モル比となるような割合で、適宜の有機溶媒、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒中で、通常、0〜90℃で1〜24時間反応させることよって、ポリアミック酸の溶液として得ることができる。なお、ポリアミック酸の重量平均分子量は、例えば、5000〜200000程度、好ましくは、10000〜100000程度である。
【0014】
本発明において、導電性ポリマーとしては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、またはこれらの誘導体が挙げられる。好ましくは、ポリアニリンが挙げられる。また、これら導電性ポリマーは、単独使用または2種以上併用することができる。
また、導電性ポリマーは、好ましくは、還元体である。導電性ポリマーが酸化体であると、導電性ポリマーとポリアミック酸とを混合する場合に、ゲル化する傾向がある。なお、導電性ポリマーは、後述するように、半導電性樹脂組成物を用いて半導電性層を形成することによって、導電性が付与される。
【0015】
また、本発明の半導電性樹脂組成物は、上記した導電性ポリマーの酸化を防止するために、好ましくは、還元剤や酸化防止剤を含有している。
還元剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドラジン、フェニルヒドラジン、ヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、N,N−ジベンジルヒドロキシルアミン、ジメチルアミノプロピオニトリル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノプロパノール、ピペラジン、モルホリンなどが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。また、これら還元剤および酸化防止剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0016】
本発明において、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、例えば、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物のアルカリ金属塩であって、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を、アルカリ水溶液で処理することによって、得ることができる。
スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の調製は、特に制限されないが、例えば、芳香族ジアミノビスフェノールとスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸とを、縮合剤下で反応させて、その後、その反応液を、水洗する。
【0017】
芳香族ジアミノビスフェノールとしては、特に制限されないが、溶解性を考慮すると、好ましくは、下記式(1)または(2)で示される化合物が挙げられる。
【0018】
【化1】
(式中、R1は、C(CF3)2またはS(=O)2を示す。)
【0019】
【化2】
(式中、R2は、C(CF3)2またはS(=O)2を示す。)
スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸としては、特に制限されないが、例えば、下記式(3)で示される化合物が挙げられる。
【0020】
【化3】
上記した芳香族ジアミノビスフェノールとスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸との反応は、より具体的には、上記した芳香族ジアミノビスフェノールと、上記したスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸とを、縮合剤としてのポリリン酸および五酸化二リン下で配合して、窒素雰囲気下で、100〜250℃、4〜10時間、撹拌する。
【0021】
また、上記した芳香族ジアミノビスフェノールとスルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸との反応において、さらに、下記式(4)で示される芳香族ジカルボン酸を配合することもできる。
【0022】
【化4】
芳香族ジアミノビスフェノールと、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸および必要により配合される芳香族ジカルボン酸との配合割合は、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸および必要により配合される芳香族ジカルボン酸の総量100モル部に対して、芳香族ジアミノビスフェノールが、例えば、90〜110モル部、好ましくは、95〜105モル部である。芳香族ジカルボン酸を配合する場合には、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との配合割合は、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との総量100モル部に対して、スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸が、例えば、30〜70モル部である。スルホン酸基を有する芳香族ジカルボン酸が70モル部より多いと、溶媒への溶解性が低下し、30モル部より少ないと、ドーパントとしての性能が低下する傾向がある。
【0023】
上記の反応により得られた反応液を水洗するには、例えば、得られた反応液と、水とを配合し、その配合された液(水溶液)が中性になるまで、撹拌して洗浄する。なお、この反応液と水との配合により、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物は、固体として析出する。
次いで、析出したスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を、アルカリ水溶液で処理するには、例えば、(飽和)炭酸水素ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液中に、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を配合して、室温で、例えば、0.5〜2時間、撹拌する。
【0024】
本発明において、溶媒は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤を溶解(分散)できれば、特に制限されないが、例えば、N−メチル−2ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。また、これら溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体として、ポリアミック酸が用いられる場合には、ポリアミック酸を溶解する反応溶媒を、そのまま半導電性樹脂組成物の溶媒として用いることができる。
【0025】
そして、本発明の半導電性樹脂組成物は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩、必要により還元剤または酸化防止剤、および、溶媒を配合することによって、調製することができる。
導電性ポリマーの配合割合は、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、1〜300重量部、好ましくは、5〜100重量部である。導電性ポリマーの配合割合が、これより少ないと、導電性が十分でない場合がある。また、これより多いと、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体の良好な膜特性が損なわれる場合がある。
【0026】
スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の配合割合は、導電性ポリマー100重量部に対して、例えば、10〜100重量部、好ましくは、20〜50重量部である。スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の配合割合が、これより多いと、膜強度が低下する場合があり、一方、これより少ないと、導電性が発現しない場合がある。
還元剤または酸化防止剤の配合割合は、例えば、導電性ポリマー100重量部に対して、0.1〜1000重量部、好ましくは、1〜500重量部である。還元剤または酸化防止剤の配合割合が、これより少ないと、パターンニングの精度が低下する場合がある。また、これより多いと、最終的な膜物性が低下する場合がある。
【0027】
また、溶媒は、これらイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤が、半導電性樹脂組成物に対して、1〜40重量%(固形分濃度)、好ましくは、5〜30重量%(固形分濃度)となるように、配合する。固形分濃度がこれより少なくても多くても、目的の膜厚に制御することが困難となる場合がある。
【0028】
また、半導電性樹脂組成物の調製は、特に制限されず、例えば、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により還元剤または酸化防止剤を、溶媒に配合して、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤が溶媒に対して均一に溶解(分散)するまで、撹拌混合する。また、予めイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体を溶媒に溶解(分散)した樹脂溶液と、予め導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤を溶媒に溶解させた導電性ポリマー溶液とを、混合することもできる。これによって、溶媒中において、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により配合される還元剤または酸化防止剤が溶解(分散)される半導電性樹脂組成物が調製される。
【0029】
このようにして得られた半導電性樹脂組成物を、塗布、乾燥し、その後、必要により加熱(硬化)し、次いで、水洗すれば、半導電性層を形成することができる。
そして、半導電性樹脂組成物を用いて形成された半導電性層は、半導電性層の全体にわたって均一に導電性ポリマーを含有しているので、静電気の帯電を有効に除去することができる。
【0030】
また、この半導電性層では、導電性ポリマーが半導電性層から脱離しにくいので、電子部品に損傷を与えることを防止することができる。さらに、耐熱性などの樹脂特性を保持することができる。
さらに、この半導電性層では、半導電性層を形成するための半導電性樹脂組成物が、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を含有しており、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩が、後述する水洗による金属イオンの解離によって、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)する。そのため、半導電性層を形成した後、別途、ドーパントによるドーピングが不要であり、生産性の向上を図ることができる。
【0031】
さらにまた、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、耐熱性が高く、例えば、通常のスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の耐熱温度が300℃程度であるのに対し、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の耐熱温度が約400℃である。そのため、後述する温度における加熱(硬化)においても分解せず十分に耐えることができる。
【0032】
また、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物が上記した溶媒(例えば、NMP)に対して不溶であるのに対し、上記した溶媒(例えば、NMP)に対して可溶であるため、均一に導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)して、半導電性層を形成することができる。
また、本発明の半導電性樹脂組成物には、さらに、感光剤を含有させることができる。感光剤としては、例えば、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1,4−ジヒドロピリジン(ニフェジピン)、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジメトキシカルボニル−2,6−ジメチル−1−メチル−4−ヒドロピリジン(N−メチル体)、4−o−ニトロフェニル−3,5−ジアセチル−1,4−ジヒドロピリジン(アセチル体)などのジヒドロピリジン誘導体が挙げられる。また、これら感光剤は、単独使用または2種以上併用することができる。なお、感光剤は、例えば、ポリエチレングリコールなどの溶媒に溶解して、溶液として調製することもできる。
【0033】
感光剤は、上記したイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および必要により還元剤または酸化防止剤とともに、溶媒に配合する。感光剤の配合割合は、例えば、イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体100重量部に対して、例えば、0.1〜100重量部、好ましくは、0.5〜75重量部である。感光剤のイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体に対する配合割合が、これより少なくても多くても、露光部と未露光部との適切な溶解速度差が得られず、パターンニングが困難な場合がある。なお、感光剤が配合される場合でも、溶媒は、これらイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩、必要により配合される還元剤または酸化防止剤、および、感光剤が、半導電性樹脂組成物に対して、1〜40重量%(固形分濃度)、好ましくは、5〜30重量%(固形分濃度)となるように、配合する。
【0034】
なお、感光剤を配合する場合には、上記したイミド樹脂またはイミド樹脂前駆体として、好ましくは、イミド樹脂前駆体が用いられる。
このようにして得られた、感光剤が含有された半導電性樹脂組成物(以下、感光性半導電性樹脂組成物という。)では、感光剤が含有されているので、塗布および乾燥した後に、露光および現像し、必要により加熱(硬化)し、次いで、水洗すれば、半導電性層を所望のパターンで形成することができる。
【0035】
次に、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、カバー層の表面に備える配線回路基板について説明する。
図1は、本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板を示す概略平面図、図2は、図1に示す回路付サスペンション基板の長手方向に沿う部分断面図である。
【0036】
図1において、この回路付サスペンション基板1は、ハードディスクドライブに搭載され、磁気ヘッド(図示せず)を実装して、その磁気ヘッドを、磁気ディスクとの間で相対的に走行させるときの空気流に抗して、磁気ディスクとの間に微小間隔を保持しながら支持する金属支持層としての金属支持基板2に、磁気ヘッドとリード・ライト基板とを接続するための導体層としての導体パターン4が一体的に形成されている。
【0037】
なお、図1では、金属支持基板2に対する導体パターン4の相対配置を明確に示すために、後述するベース層3、カバー層5および半導電性層10を省略して示している。
導体パターン4は、磁気ヘッド側接続端子部6Aと、外部側接続端子部6Bと、これら磁気ヘッド側接続端子部6Aおよび外部側接続端子部6Bを接続するための配線7とを、一体的に連続して備えている。
【0038】
配線7は、金属支持基板2の長手方向に沿って複数設けられ、幅方向(長手方向に直交する方向)において互いに間隔を隔てて並列配置されている。
磁気ヘッド側接続端子部6Aは、金属支持基板2の先端部に配置され、各配線7の先端部がそれぞれ接続されるように、複数設けられている。この磁気ヘッド側接続端子部6Aには、磁気ヘッドの端子部(図示せず)が接続される。
【0039】
外部側接続端子部6Bは、金属支持基板2の後端部に配置され、各配線7の後端部がそれぞれ接続されるように、複数設けられている。この外部側接続端子部6Bには、リード・ライト基板の端子部(図示せず)が接続される。
また、金属支持基板2の先端部には、磁気ヘッドを実装するためのジンバル8が設けられている。ジンバル8は、磁気ヘッド側接続端子部6Aを長手方向において挟むように、金属支持基板2を切り抜くことによって形成されている。
【0040】
この回路付サスペンション基板1は、図2に示すように、金属支持基板2と、金属支持基板2の上に形成されたベース層3と、ベース層3の上に形成された導体パターン4と、導体パターン4を被覆するように、ベース層3の上に形成された絶縁層としてのカバー層5とを備えている。
また、カバー層5には、磁気ヘッド側接続端子部6Aまたは外部側接続端子部6Bが配置される部分に対応して、厚さ方向を貫通する開口部9が形成されており、この開口部9から露出する導体パターン4が、磁気ヘッド側接続端子部6Aまたは外部側接続端子部6B(以下、総称して端子部6とする。)として設けられている。なお、図2では、磁気ヘッド側接続端子部6Aおよび外部側接続端子部6Bのいずれか一方のみが示されている。
【0041】
そして、カバー層5の表面には、半導電性層10が形成されている。
半導電性層10は、上記したカバー層5の上面のみに形成され、側面には形成されていない。また、半導電性層10はカバー層5の上面に加え、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部にも形成されている。
図3は、図2に示す回路付サスペンション基板において、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、形成する工程を示す、工程図である。次に、図3を参照して、回路付サスペンション基板1に半導電性層10を形成する方法を説明する。
【0042】
この方法では、まず、図3(a)に示すように、半導電性層10を形成するための回路付サスペンション基板1を用意する。この回路付サスペンション基板1は、半導電性層10が形成される以前の回路付サスペンション基板1であって、上記したように金属支持基板2と、金属支持基板2の上にパターンとして形成されたベース層3と、ベース層3の上に形成された導体パターン4と、導体パターン4を被覆するように、ベース層3の上にパターンとして形成されたカバー層5とを備えている。
【0043】
金属支持基板2は、例えば、ステンレス箔、42アロイ箔、アルミニウム箔、銅−ベリリウム箔、りん青銅箔などの金属箔からなる。金属支持基板2の厚みは、例えば、5〜100μmである。
ベース層3は、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂から形成される。好ましくは、ポリイミドからなる。ベース層3の厚みは、例えば、5〜50μmである。
【0044】
導体パターン4は、例えば、銅箔、ニッケル箔、金箔、はんだ箔またはこれらの合金箔などの導体箔からなり、上記した端子部6および配線7が一体的に形成される配線回路パターンとして形成されている。この導体パターン4は、サブトラクティブ法やアディティブ法などの公知のパターンニング法(後述)により形成されている。導体パターン4の厚みは、例えば、3〜50μmである。
【0045】
カバー層5は、ベース層3と同様の合成樹脂からなり、その厚みは、例えば、3〜50μmである。
そして、この回路付サスペンション基板1には、上記した端子部6が、カバー層5を開口させて、導体パターン4を露出させることによって、その導体パターン4の露出部分として形成されている。
【0046】
そして、この方法では、図3(b)に示すように、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に、半導電性層10を形成する。
半導電性層10は、上記した半導電性樹脂組成物を用いて形成する。半導電性層10を形成するには、例えば、まず、上記した半導電性樹脂組成物を、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に均一に塗布する。半導電性樹脂組成物の塗布は、特に制限されず、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法など公知の塗布方法が用いられる。次いで、塗布された半導電性樹脂組成物を乾燥する。半導電性樹脂組成物の乾燥は、溶媒の種類によって適宜決定されるが、例えば、60〜250℃、好ましくは、80〜200℃で、例えば、1〜30分間、好ましくは、3〜15分間加熱する。乾燥時間が、これより短いと、溶媒の除去が不十分となり、半導電性層10の表面抵抗値が大きく変化する場合がある。また、これより長いと、生産効率が低下する場合がある。
【0047】
なお、半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、乾燥後、半導電性樹脂組成物を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性層10が、形成される。
次いで、上記により形成されたドーピングされる以前の半導電性層10を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層10を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層10の水洗は、例えば、ドーピングされる以前の半導電性層10が形成された回路付サスペンション基板1を、20〜90℃の水中で、0.5〜3時間、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層10の水洗により、半導電性層10が含有するスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、その金属イオンが水素イオンに置換して、スルホン酸の金属塩が解離のスルホン酸に変換されることにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となる。スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を含有する半導電性層10では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0048】
半導電性層10の厚みは、例えば、0.5〜5μmである。半導電性層10の厚みが、これより薄いと、均一な層が得られない場合があり、これより厚いと、乾燥が不十分となり、かつ、コストの上昇を生じる場合がある。
また、半導電性層10の表面抵抗値は、例えば、105〜1012Ω/□、好ましくは、106〜1011Ω/□である。半導電性層10の表面抵抗値が、これより低いと、実装された電子部品(磁気ヘッドやリード・ライト基板の端子部、以下同様。)の誤動作を生じる場合があり、また、これより大きいと、静電気の帯電を有効に除去できない場合がある。
【0049】
なお、半導電性層10の表面抵抗値は、例えば、MITSUBISHI PETROCHEMICAL社製のHiresta IP MCP−HT260(プローブ:HRS)を用いて測定することができる。
次いで、この方法では、図3(c)に示すように、端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)を除く半導電層10の表面を、エッチングレジスト11で被覆する。エッチングレジスト11は、例えば、ドライフィルムフォトレジストを半導電性層10の表面に積層し、露光および現像する公知の方法により形成する。
【0050】
その後、この方法では、図3(d)に示すように、エッチングレジスト11から露出する半導電性層10をエッチングにより除去する。エッチングは、例えば、エッチング液として水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液を用いて、浸漬法またはスプレー法によって、ウエットエッチングする。
そして、この方法では、図3(e)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
【0051】
なお、上記した半導電性層10の水洗は、ドーピングされる以前の半導電性層10を、乾燥(必要により加熱(硬化))したすぐ後にしなくても、このエッチングレジスト11の除去の後に、することもできる。
これによって、半導電性層10は、カバー層5の表面に形成される(但し、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層10が形成されている。また、カバー層5の側面には、半導電層10が形成されていない。)。
【0052】
その後、端子部6の表面には、必要に応じて、金やニッケルからなるめっき層が、電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。
そして、この回路付サスペンション基板1は、その後、金属支持基板2を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバル8を形成するとともに、外形加工することにより、形成される。
【0053】
これによって、カバー層5の表面に半導電性層10が形成された回路付サスペンション基板1を得ることができる。
図4は、図2に示す回路付サスペンション基板において、感光性半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、形成する工程を示す、工程図である。次に、図4を参照して、感光性半導電性樹脂組成物を用いて、回路付サスペンション基板1に半導電性層10を所望のパターンで形成する方法を説明する。
【0054】
この方法では、まず、上記と同様に、図4(a)に示すように、回路付サスペンション基板1を用意する。
次いで、この方法では、図4(b)に示すように、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に、感光性半導電性樹脂組成物を用いて皮膜12を形成する。皮膜12を形成するには、まず、感光性半導電性樹脂組成物を、端子部6の表面を含むカバー層5の表面、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布する。次いで、塗布された感光性半導電性樹脂組成物を、上記と同様に、乾燥する。
【0055】
その後、この方法では、図4(c)に示すように、皮膜12を、フォトマスク13を介して露光する。フォトマスク13は、光を透過しない遮光部分13aと、光を透過する光透過部分13bとを所望のパターンで備えており、ネガ画像でパターンニングする場合には、半導電性層10を形成しない部分(端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)の表面)には、遮光部分13aが対向し、半導電性層10を形成する部分(カバー層5の表面(上面))には、光透過部分13bが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光する。
【0056】
次いで、必要によりネガ画像を形成するための所定温度で加熱後、図4(d)に示すように、半導電性層10における遮光部分13aが対向していた未露光部分、すなわち、半導電性層10における端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)の表面に対応する部分を、現像により除去する。現像は、例えば、現像液としてアルカリ水溶液などを用いる、浸漬法またはスプレー法などが用いられる。これによって、皮膜12が、カバー層5の表面(上面)に、所望のパターンで形成される。
【0057】
なお、ポジ画像でパターンニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち端子部6(周縁部を除く)、および、ベース層3およびカバー層5から露出する金属支持基板2(金属支持基板2に隣接するカバー層5およびベース層3の側面を含む)の表面にフォトマスク13の光透過部分13bを対向させて露光した後、必要によりポジ画像を形成するための所定温度で加熱後、現像する。
【0058】
その後、この方法では、図4(e)に示すように、感光性半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、そのイミド樹脂前駆体を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性層10が、所望のパターンとして形成される。
【0059】
次いで、上記した所望のパターンとして形成されたドーピングされる以前の半導電性層10を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層10を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層10の水洗は、例えば、半導電性樹脂組成物を用いて形成されるドーピングされる以前の半導電性層10の水洗と同様に、ドーピングされる以前の半導電性層10が形成された回路付サスペンション基板1を、上記と同様の水中で、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層10の水洗により、半導電性層10が含有するスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、その金属イオンが水素イオンに置換して、スルホン酸の金属塩が解離のスルホン酸に変換されることにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となる。そして、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物を含有する半導電性層10では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0060】
これによって、上記と同様に、半導電性層10が、カバー層5の表面に形成される(但し、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層10が形成されている。また、カバー層5の側面には、半導電性層10が形成されていない。)。
そして、この回路付サスペンション基板1では、半導電性層10は、優れた耐熱性を保持しつつ、導電性ポリマーが脱離しにくいので、実装する電子部品に損傷を与えることを防止しながら、静電気の帯電を有効に除去して、実装する電子部品の静電破壊を確実に防止することができる。
【0061】
また、上記の方法では、半導電性樹脂組成物が、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を含有しており、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩が、半導電性樹脂組成物の積層後において、水洗されることによって、金属イオンの解離により、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となって、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)している。そのため、半導電性層10を形成した後、別途、ドーパントによるドーピングが不要であり、生産性の向上を図ることができる。
【0062】
さらに、上記の方法において、半導電性樹脂組成物に配合されるスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、耐熱性が高く、例えば、通常のスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の耐熱温度が300℃程度であるのに対し、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の耐熱温度が約400℃である。そのため、例えば、半導電性樹脂組成物がイミド樹脂前駆体を含有する場合に、上記した温度における加熱(硬化)においても分解せず十分に耐えることができるので、回路付サスペンション基板1の耐熱性の向上を図ることができる。
【0063】
さらにまた、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物が上記した溶媒(例えば、NMP)に対して不溶であるのに対し、上記した溶媒(例えば、NMP)に対して可溶である。そのため、均一に導電性ポリマーに導電性が付与(ドーピング)された半導電性層10を、カバー層5の表面に形成することができる。
【0064】
なお、半導電性層10は、その目的および用途により、ベース層3に形成してもよく、また、ベース層3およびカバー層5の両方に形成してもよい。
また、半導電性層10は、単一層で形成してもよく、また、多層で形成することもできる。半導電性層10を多層で形成する場合には、カバー層5から離間するに従って、各半導電性層10に含まれる導電性ポリマーの配合割合が少なくなるように、各半導電性層10を形成する。
【0065】
また、本発明の配線回路基板は、図5に示すように、カバー層5の表面に半導電性層10を形成せずに、ベース層3および/またはカバー層5を、直接、半導電層から形成することにより、形成することもできる。
すなわち、この回路付サスペンション基板1は、金属支持基板2と、金属支持基板2の上にパターンとして形成されたベース層3と、ベース層3の上に形成された導体パターン4と、導体パターン4を被覆するように、ベース層3の上にパターンとして形成されたカバー層5とを備えている。また、カバー層5には、開口部9が形成されており、その開口部9から露出する導体パターン4が、端子部6として設けられている。そして、この回路付サスペンション基板1では、ベース層3および/またはカバー層5が、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層から、形成されている。
【0066】
次に、この回路付サスペンション基板1の製造方法について、図6を参照して説明する。
この方法では、図6(a)に示すように、まず、金属支持基板2を用意する。金属支持基板2としては、例えば、上記と同様の金属箔が用いられ、好ましくは、ステンレス箔が用いられる。また、その厚みは、例えば、15〜30μm、好ましくは、20〜25μmである。
【0067】
次に、この方法では、図6(b)に示すように、金属支持基板2の上に、ベース層3を、導体パターン4を積層可能な所望のパターンとして、形成する。
ベース層3は、半導電性層または樹脂層から形成する。すなわち、カバー層5を半導電性層から形成しない場合には、必ず半導電性層から形成し、カバー層5を半導電性層から形成する場合には、その目的および用途により、半導電性層または樹脂層から適宜選択して形成する。
【0068】
ベース層3を半導電性層から形成する場合には、例えば、まず、図7(a)に示すように、上記と同様の半導電性樹脂組成物を、金属支持基板2の表面に均一に塗布し、乾燥し、必要により加熱(硬化)させることにより、ドーピングされる以前の半導電性層を形成する。その後、上記により形成された半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるベース層3を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、例えば、ドーピングされる以前の半導電性層を、20〜90℃の水中で、0.5〜3時間、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるベース層3では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0069】
また、この半導電性層の表面抵抗値は、例えば、105〜1012Ω/□、好ましくは、106〜1011Ω/□である。半導電性層の表面抵抗値が、これより小さいと、実装された電子部品の誤動作を生じる場合があり、また、これより大きいと、静電気の帯電を有効に除去できない場合がある。
次いで、上記のようにして形成されたベース層3を、所望のパターンに形成するには、図7(b)に示すように、ベース層3の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図7(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するベース層3をエッチングにより除去した後、図7(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
【0070】
エッチングレジスト11は、例えば、ドライフィルムフォトレジストをベース層3の表面に積層し、露光および現像する公知の方法により形成する。
ベース層3のエッチングは、例えば、エッチング液として水酸化カリウム水溶液などのアルカリ現像液を用いて、浸漬法またはスプレー法によって、ウエットエッチングする。
これによって、金属支持基板2の上に、半導電性層からなるベース層3が、導体パターン4を積層可能な所望のパターンとして形成される。
【0071】
なお、上記した半導電性層の水洗は、ドーピングされる以前の半導電性層を、乾燥(必要により加熱(硬化))したすぐ後にしなくても、このエッチングレジスト11の除去の後に、することもできる。
また、上記した感光性半導電性樹脂組成物を用いれば、ベース層3をエッチングせずとも、ベース層3を所望のパターンとして形成することができる。
【0072】
感光性半導電性樹脂組成物を用いて、所望のパターンでベース層3を形成するには、図8(a)に示すように、まず、感光性半導電性樹脂組成物を、金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布された感光性半導電性樹脂組成物を、上記と同様に、乾燥して、ベース皮膜14を形成する。
その後、この方法では、図8(b)に示すように、ベース皮膜14を、フォトマスク13を介して露光する。ネガ画像でパターンニングする場合には、図8(b)に示すように、半導電性層を形成しない部分には、遮光部分13aが対向し、半導電性層を形成する部分には、光透過部分13bが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光する。
【0073】
次いで、必要によりネガ画像を形成するために所定温度で加熱後、図8(c)に示すように、ベース皮膜14における遮光部分13aが対向していた未露光部分を、現像により除去する。現像は、例えば、現像液としてアルカリ現像液などを用いて、浸漬法またはスプレー法などが用いられる。これによって、ベース皮膜14が、所望のパターンに形成される。
【0074】
なお、ポジ画像でパターンニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち、ベース層3を形成しない部分には、光透過部分13bが対向し、それ以外のベース層3を形成する部分には、遮光部分13aが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光した後、必要によりポジ画像を形成するために所定温度で加熱後、現像する。
その後、図8(d)に示すように、感光性半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、ベース皮膜14を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で、加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性層が、所望のパターンとして形成される。
【0075】
次いで、上記したパターンとして形成されたドーピングされる以前の半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるベース層3を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、半導電性樹脂組成物を用いて形成されるドーピングされる以前の半導電性層10の水洗と同様に、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板1を、上記と同様の水中で、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるベース層3では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0076】
これによって、上記と同様に、ベース層3が、所望のパターンとして形成される。
また、ベース層3を樹脂層から形成する場合には、公知の方法に準拠すればよく、例えば、まず、図7(a)に示すように、ポリイミド(上記したイミド樹脂前駆体を含む。)、ポリアミドイミド、アクリル、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂のワニスを調製して、そのワニスを、例えば、ロールコート法、グラビアコート法、スピンコート法、バーコート法など公知の塗布方法により、金属支持基板2の表面に均一に塗布し、乾燥後、必要により加熱硬化させて、樹脂層からなるベース層3を形成する。
【0077】
そして、上記と同様の方法により、図7(b)に示すように、ベース層3の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図7(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するベース層3をエッチングにより除去した後、図7(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
これによって、金属支持基板2の上に、樹脂層からなるベース層3が、導体パターン4を積層可能な所望のパターンとして形成される。
【0078】
また、上記したワニスに、感光剤を含有させれば、ベース層3をエッチングせずとも、ベース層3を所望のパターンとして形成することができる。なお、感光剤としては、上記と同様の感光剤が挙げられる。
例えば、感光剤を含むポリイミド前駆体(以下、感光性ポリアミック酸樹脂という。)のワニスを用いる場合には、図8(a)に示すように、まず、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを、金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布されたワニスを、上記と同様に、乾燥して、ベース皮膜14を形成する。
【0079】
次いで、図8(b)に示すように、上記と同様の方法により、ベース皮膜14を、フォトマスク13を介して露光した後、必要により所定温度で加熱後、図8(c)に示すように、上記と同様の方法により、現像により除去する。
その後、図8(d)に示すように、ベース皮膜14を、例えば、減圧下、300℃以上で加熱することにより、硬化(イミド化)させて、ベース層3を形成する。
【0080】
これによって、上記と同様に、ベース層3が、所望のパターンとして形成される。
また、このようにして形成されるベース層3の厚みは、例えば、5〜20μm、好ましくは、8〜15μmである。
次いで、この方法では、図6(c)に示すように、ベース層3の上に、導体パターン4を形成する。導体パターン4は、例えば、上記と同様の導体箔からなり、好ましくは、銅箔からなる。また、導体パターン4を形成するには、ベース層3の表面に、例えば、サブトラクティブ法、アディティブ法などの公知のパターンニング法によって、導体パターン4を、上記した端子部6および配線7が一体的に形成される配線回路パターンとして形成する。
【0081】
サブトラクティブ法では、まず、ベース層3の全面に、必要により接着剤層を介して導体を積層し、次いで、この導体の上に、配線回路パターンと同一パターンのエッチングレジストを形成し、このエッチングレジストをレジストとして、導体をエッチングして導体パターン4を形成し、その後に、エッチングレジストを除去する。
また、アディティブ法では、まず、ベース層3の全面に、導体薄膜からなる種膜を形成し、次いで、この種膜の表面に、配線回路パターンと逆パターンでめっきレジストを形成した後、めっきレジストから露出する種膜の表面に、電解めっきにより、配線回路パターンとして導体パターン4を形成し、その後に、めっきレジストおよびそのめっきレジストが積層されていた部分の種膜を除去する。
【0082】
このようにして形成される導体パターン4では、その厚みが、5〜20μm、好ましくは、5〜15μmである。
次に、この方法では、図6(d)に示すように、カバー層5を、ベース層3の上に、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして、形成する。
カバー層5は、半導電性層または樹脂層から形成する。すなわち、ベース層3を半導電性層から形成しない場合には、必ず半導電性層から形成し、ベース層3を半導電性層から形成する場合には、その目的および用途により、半導電性層または樹脂層から適宜選択して形成する。
【0083】
カバー層5を半導電性層から形成する場合には、例えば、まず、図9(a)に示すように、上記した半導電性樹脂組成物を、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法で、均一に塗布し、乾燥し、必要により加熱硬化させることにより、ドーピングされる以前の半導電性層を形成する。その後、上記により形成されたドーピングされる以前の半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるカバー層5を形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、例えば、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板1を、20〜90℃の水中で、0.5〜3時間、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるカバー層5では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0084】
この半導電性層の表面抵抗値は、上記と同様に、例えば、105〜1012Ω/□、好ましくは、106〜1011Ω/□である。半導電性層の表面抵抗値が、これより小さいと、実装された電子部品の誤動作を生じる場合があり、また、これより大きいと、静電気の帯電を有効に除去できない場合がある。
そして、上記と同様の方法により、図9(b)に示すように、カバー層5の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図9(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するカバー層5をエッチングにより除去した後、図9(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
【0085】
なお、上記した半導電性層の水洗は、ドーピングされる以前の半導電性層を、乾燥(必要により加熱(硬化))したすぐ後にしなくても、このエッチングレジスト11の除去の後に、することもできる。
これによって、ベース層3の上に、半導電性層からなるカバー層5が、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして形成される。
【0086】
また、上記と同様に、感光性半導電性樹脂組成物を用いれば、カバー層5をエッチングせずとも、カバー層5を所望のパターンとして形成することができる。
感光性半導電性樹脂組成物を用いて、所望のパターンでカバー層5を形成するには、図10(a)に示すように、まず、感光性半導電性樹脂組成物を、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布された感光性半導電性樹脂組成物を、上記と同様に、乾燥して、カバー皮膜15を形成する。
【0087】
次いで、図10(b)に示すように、カバー皮膜15を、フォトマスク13を介して露光する。例えば、ネガ画像でパターンニングする場合には、図10(b)に示すように、カバー層5を形成しない部分には、遮光部分13aが対向し、それ以外のカバー層5を形成する部分には、光透過部分13bが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光する。
【0088】
次いで、必要によりネガ画像を形成するために所定温度で加熱後、図10(c)に示すように、カバー皮膜15における遮光部分13aが対向していた未露光部分を、上記と同様の方法で、現像により除去する。
なお、ポジ画像でパターンニングする場合には、図示しないが、上記した逆、すなわち、カバー層5を形成しない部分には、光透過部分13bが対向し、それ以外のカバー層5を形成する部分には、遮光部分13aが対向するように、フォトマスク13を配置して、露光した後、必要によりポジ画像を形成するために所定温度で加熱後、現像する。
【0089】
その後、図10(d)に示すように、感光性半導電性樹脂組成物が、イミド樹脂前駆体を含有する場合には、カバー皮膜15を、例えば、減圧下、300℃以上、好ましくは、320〜420℃で、加熱することにより、硬化(イミド化)させる。これにより、ドーピングされる以前の半導電性が、所望のパターンとして形成される。
次いで、上記したパターンとして形成されたドーピングされる以前の半導電性層を、水洗して、ドーピングすることにより、半導電性層からなるカバー層5を、所望のパターンで形成する。ドーピングされる以前の半導電性層の水洗は、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層10の水洗と同様に、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板1を、上記と同様の水中で、浸漬処理する。このドーピングされる以前の半導電性層の水洗により、上記と同様に、半導電性層からなるカバー層5では、そのスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物がドーパントとして機能することにより、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)することができる。
【0090】
これによって、上記と同様に、ベース層3の上に、半導電性層からなるカバー層5が、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして形成される(図6(d))。
また、カバー層5を樹脂層から形成する場合には、公知の方法に準拠すればよく、例えば、まず、図9(a)に示すように、上記と同様の樹脂層を形成するための合成樹脂のワニスを調製して、そのワニスを、上記と同様の方法により、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に均一に塗布し、乾燥後、必要により加熱硬化させて、樹脂層からなるカバー層5を形成する。
【0091】
そして、上記と同様の方法により、図9(b)に示すように、カバー層5の表面を、所望のパターンに対応してエッチングレジスト11で被覆し、図9(c)に示すように、エッチングレジスト11から露出するカバー層5をエッチングにより除去した後、図9(d)に示すように、エッチングレジスト11を、エッチングまたは剥離により除去する。
これによって、ベース層3の上に、樹脂層からなるカバー層5が、導体パターン4を被覆し、かつ、開口部9が形成される所望のパターンとして形成される(図6(d)参照)。
【0092】
また、上記したワニスに、感光剤を含有させれば、カバー層5をエッチングせずとも、カバー層5を所望のパターンとして形成することができる。なお、感光剤としては、上記と同様の感光剤が挙げられる。
例えば、感光剤を含むポリイミド前駆体(感光性ポリアミック酸樹脂)のワニスを用いる場合には、図10(a)に示すように、まず、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを、導体パターン4を被覆するように、導体パターン4から露出するベース層3、および、ベース層3から露出する金属支持基板2の表面に、上記と同様の方法により、均一に塗布し、次いで、塗布されたワニスを、上記と同様に、乾燥して、カバー皮膜15を形成する。
【0093】
次いで、図10(b)に示すように、上記と同様の方法により、カバー皮膜15を、フォトマスク13を介して露光した後、必要により所定温度で加熱後、図10(c)に示すように、上記と同様の方法により、現像により除去する。
その後、図10(d)に示すように、カバー皮膜15を、例えば、減圧下、300℃以上で加熱することにより、硬化(イミド化)させて、カバー層5を形成する。
【0094】
これによって、上記と同様に、カバー層5が、所望のパターンとして形成される(図6(d))。
また、このようにして形成されるカバー層5の厚みは、例えば、2〜10μm、好ましくは、3〜7μmである。
そして、この回路付サスペンション基板1は、その後、金属支持基板2を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバル8を形成するとともに、外形加工することにより、形成される。なお、端子部6の表面には、必要に応じて、金やニッケルからなるめっき層が、電解めっきまたは無電解めっきにより形成される。
【0095】
そして、この回路付サスペンション基板1では、優れた耐熱性を保持しつつ、導電性ポリマーが脱離しにくいので、実装する電子部品に損傷を与えることを防止しながら、静電気の帯電を有効に除去して、実装する電子部品の静電破壊を確実に防止することができる。しかも、この回路付サスペンション基板1では、ベース層3および/またはカバー層5が半導電性層であるため、カバー層5の表面に、さらに半導電性層10を形成する必要がなく、製造コストの低減を図ることができる。
【0096】
また、上記の方法では、半導電性樹脂組成物が、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩を含有しており、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩が、ベース層3および/またはカバー層5となる半導電性樹脂組成物の積層後において、水洗されることによって、金属イオンの解離により、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物となって、導電性ポリマーに導電性を付与(ドーピング)している。そのため、半導電性層からなるベース層3および/またはカバー層5を形成した後、別途、ドーパントによるドーピングが不要であり、生産性の向上を図ることができる。
【0097】
さらに、半導電性樹脂組成物に配合されるスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、耐熱性が高く、例えば、通常のスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の耐熱温度が300℃程度であるのに対し、このスルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩の耐熱温度が約400℃である。そのため、例えば、半導電性樹脂組成物がイミド樹脂前駆体を含有する場合に、上記した温度における加熱(硬化)においても分解せず十分に耐えることができるので、回路付サスペンション基板1の耐熱性の向上を図ることができる。
【0098】
さらにまた、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩は、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物が上記した溶媒(例えば、NMP)に対して不溶であるのに対し、上記した溶媒(例えば、NMP)に対して可溶である。そのため、均一に導電性ポリマーに導電性が付与(ドーピング)された半導電性層からなるベース層3および/またはカバー層5を形成することができる。
【0099】
なお、上記の回路付サスペンション基板1では、ベース層3および/またはカバー層5の少なくともいずれか一方が、半導電性層であればよく、すなわち、上記した回路付サスペンション基板1は、ベース層3およびカバー層5がともに半導電性層である態様、ベース層3が半導電性層でありカバー層5が樹脂層である態様、ベース層3が樹脂層でありカバー層5が半導電性層である態様の、3つの態様が含まれる。この回路付サスペンション基板1では、これらのうち、少なくともカバー層5が半導電性層である態様が好適である。
【0100】
また、上記の説明では、本発明の配線回路基板を、回路付サスペンション基板1を例示して説明したが、本発明の配線回路基板には、片面フレキシブル配線回路基板、両面フレキシブル配線回路基板、さらには、多層フレキシブル配線回路基板などが含まれる。
例えば、図11に示す片面フレキシブル配線回路基板21では、ベース層3、導体パターン4およびカバー層5が順次積層されており、カバー層5が開口されることにより、導体パターン4の露出部分が端子部6として形成されている。そして、半導電性層10が、端子部6の表面を除くカバー層5の表面に形成されている(但し、端子部6を囲むカバー層5の内周側面および端子部6の周縁部には、半導電性層7が形成されている。また、カバー層5の側面には、半導電性層10が形成されていない。)。
【0101】
また、例えば、図12に示す片面フレキシブル配線回路基板31では、ベース層3、導体パターン4およびカバー層5が順次積層されており、カバー層5が開口されることにより、導体パターン4の露出部分として端子部6が形成されている。そして、この片面フレキシブル配線回路基板31では、ベース層3およびカバー層5の少なくともいずれか一方が、半導電性層から形成されている。
【実施例】
【0102】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、何ら実施例に限定されることはない。
合成例1(ポリアミック酸樹脂の合成)
撹拌機および温度計を備えた1Lのセパラブルフラスコに、p−フェニレンジアミン27.6g(0.25mol)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル9.0g(0.05mol)を入れ、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)767gを添加して撹拌し、p−フェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルを溶解させた。
【0103】
これに、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物88.3g(0.3mol)を徐々に添加し、30℃以下の温度で2時間撹拌を続け、濃度14重量%のポリアミック酸樹脂の溶液を得た。なお、この溶液の30℃での粘度は500Pa・sであった。
合成例2(スルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩の合成)
撹拌機および温度計を備えた500mLのセパラブルフラスコに、芳香族ジアミノビスフェノール(上記式(1):R1はS(=O)2)11.21g(40mmol)、テレフタル酸(上記式(4)に相当)2.26g(13.6mmol)、5−スルホイソフタル酸(上記式(3)に相当)7.08g(26.4mmol)を入れ、ポリリン酸137.39g、五酸化二リン47.50gを添加して撹拌した。
【0104】
次いで、窒素雰囲気下において、150℃で2時間、さらに200℃で4時間、撹拌して反応させた。得られた反応液を、水に投入して、ポリマーを析出させつつ、その水が中性になるまで、ポリマーを洗浄し、これにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾールを得た。
次いで、得られたスルホン化ポリベンゾオキサゾールを、(飽和)炭酸水素ナトリウム水溶液中に投入し、1時間、撹拌した後、水で十分に洗浄することにより、スルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩を得た。
【0105】
実施例1(カバー層の表面に半導電性層を備える回路付サスペンション基板)
ステンレス箔からなる金属支持基板の上に、ポリイミドからなるベース層、銅箔からなる導体パターン、ポリイミドからなるカバー層が、順次積層されてなる回路付サスペンション基板を用意した(図4(a)参照)。なお、カバー層には、開口部が形成されており、その開口部から露出する導体パターンの露出部分が端子部とされている。
【0106】
別途、可溶性ポリアニリン(還元体)5g、および、合成例2で得られたスルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩2gを、N―メチル―2―ピロリドン(NMP)45g中に入れて撹拌して溶解し、さらに、還元剤としてフェニルヒドラジン1.5gを添加して撹拌して、ポリアニリンNMP溶液を調製した。
合成例1で得られたポリアミック酸樹脂の溶液10gに、感光剤(ニフェジピン0.42gとアセチル体0.28g)を添加して撹拌し、さらに、上記ポリアニリンNMP溶液2.8gを添加して撹拌し、感光性半導電性樹脂組成物を得た。
【0107】
この感光性半導電性樹脂組成物を、上記回路付サスペンション基板の、端子部の表面を含むカバー層の表面、および、カバー層およびベース層から露出する金属支持基板の表面に、スピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃で10分間加熱することより、厚み7μmの皮膜を形成した(図4(b)参照)。
次いで、フォトマスクを介して、露光量700mJ/cm2にて、紫外線を露光し(図4(c)参照)、180℃で10分間露光後加熱した後、現像することにより、皮膜をネガ画像でパターンニングした(図4(d)参照)。
【0108】
その後、1.33Paに減圧した状態で、360℃で加熱して、イミド化して、ドーピングされる以前の半導電性層を、所望のパターンで形成した。次いで、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板を、80℃の水(温水)で2時間、浸漬処理した。この水洗により、ドーピングして、ベース層の表面に半導電性層を形成した(図4(e)参照)。なお、この半導電性層の厚みは、5μmであった。また、半導電性層の初期の表面抵抗値は、4.5×1010Ω/□であった。
【0109】
その後、化学エッチングにより、金属支持基板を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバルを形成するとともに、外形加工することにより、半導電性層が、カバー層の表面に形成された回路付サスペンション基板を得た。
実施例2(半導電性層からなるカバー層を備える回路付サスペンション基板)
厚み20μmのステンレス箔からなる金属支持基板を用意して(図6(a)参照)、その金属支持基板の上に、感光性ポリアミック酸樹脂のワニスを均一に塗布し、次いで、塗布されたワニスを、90℃で15分加熱することにより、ベース皮膜を形成した(図8(a)参照)。
【0110】
その後、そのベース皮膜を、フォトマスクを介して、700mJ/cm2で露光させ(図8(b)参照)、190℃で10分加熱した後、アルカリ現像液を用いて現像した(図8(c)参照)。その後、1.33Paに減圧した状態で、385℃で硬化させることにより、樹脂層からなる厚み10μmのベース層を、所望のパターンで形成した(図8(d)、図6(b)参照)。
【0111】
次いで、銅箔からなる厚み10μmの導体パターンを、アディティブ法により形成した(図6(c)参照)。
別途、可溶性ポリアニリン(還元体)5g、および、合成例2で得られたスルホン化ポリベンゾオキサゾールナトリウム塩2gを、N―メチル―2―ピロリドン(NMP)45g中に入れて撹拌して溶解し、さらに、還元剤としてN,N−ジベンジルヒドロキシルアミン4gを添加して撹拌して、ポリアニリンNMP溶液を調製した。
【0112】
次いで、合成例1で得られたポリアミック酸樹脂の溶液10gに、感光剤(N−メチル体0.24gおよびニフェジピン0.35g)を添加して撹拌し、さらに、上記ポリアニリンNMP溶液2.8gを添加して撹拌して、感光性半導電性樹脂組成物を得た。
次いで、上記した感光性半導電性樹脂組成物を、導体パターンを被覆するように、金属支持基板から露出するベース層およびベース層から露出する金属支持基板の表面に、スピンコーターを用いて均一に塗布し、90℃で10分加熱することにより、厚み7μmのカバー皮膜を形成した(図10(a)参照)。
【0113】
その後、そのカバー皮膜を、フォトマスクを介して、700mJ/cm2で露光させ(図10(b)参照)、180℃で10分加熱した後、アルカリ現像液を用いて現像することにより、カバー皮膜をネガ画像でパターンニングした(図10(c)参照)。
その後、1.33Paに減圧した状態で、320℃で加熱しイミド化して、ドーピングされる以前の半導電性層を、所望のパターンで形成した。次いで、ドーピングされる以前の半導電性層が形成された回路付サスペンション基板を、80℃の水(温水)で2時間、浸漬処理した。この水洗により、ドーピングして、半導電性層からなるカバー層を、開口部が形成される所望のパターンで形成した(図10(d)、図6(d)参照)。なお、この半導電性層からなるカバー層の厚みは、5μmであった。また、半導電性層からなるカバー層の初期の表面抵抗値は、5.5×109Ω/□であった。
【0114】
その後、化学エッチングにより、金属支持基板を、化学エッチングによって切り抜いて、ジンバルを形成するとともに、外形加工することにより、ベース層が樹脂層からなり、カバー層が半導電性層からなる、回路付サスペンション基板を得た。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の配線回路基板の一実施形態である回路付サスペンション基板を示す概略平面図である。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板(カバー層の表面に半導電性層を備える形態)の長手方向に沿う部分断面図である。
【図3】図2に示す回路付サスペンション基板において、半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を、形成する工程を示す、工程図であって、(a)は、回路付サスペンション基板を用意する工程、(b)は、端子部の表面を含むカバー層の表面、および、ベース層およびカバー層から露出する金属支持基板の表面に、半導電性層を形成する工程、(c)は、カバー層の表面を、エッチングレジストで被覆する工程、(d)は、エッチングレジストから露出する半導電性層を除去する工程、(e)は、エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図4】図2に示す回路付サスペンション基板において、感光性半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層を形成する工程を示す、工程図であって、(a)は、回路付サスペンション基板を用意する工程、(b)は、端子部の表面を含むカバー層の表面、および、ベース層およびカバー層から露出する金属支持基板の表面に、皮膜を形成する工程、(c)は、皮膜を、フォトマスクを介して露光する工程、(d)は、皮膜の未露光部分を、現像により除去する工程、(e)は、皮膜を硬化(イミド化)させて半導電性層を形成する工程を示す。
【図5】本発明の配線回路基板の他の実施形態である回路付サスペンション基板(半導電性層からなるベース層および/またはカバー層を備える形態)の長手方向に沿う部分断面図である。
【図6】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法を説明するための工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、金属支持基板の上にベース層を所望のパターンとして形成する工程、(c)は、ベース層の上に導体パターンを形成する工程、(d)は、ベース層の上にカバー層を所望のパターンとして形成する工程を示す。
【図7】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(b)金属支持基板の上にベース層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための工程図であって、(a)は、金属支持基板の表面にベース層を形成する工程、(b)は、ベース層の表面をエッチングレジストで被覆する工程、(c)は、エッチングレジストから露出するベース層をエッチングする工程、(d)は、エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図8】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(b)金属支持基板の上にベース層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための他の工程図であって、(a)は、金属支持基板の表面にベース皮膜を形成する工程、(b)は、ベース皮膜をフォトマスクを介して露光する工程、(c)は、ベース皮膜の未露光部分を現像により除去する工程、(d)は、ベース皮膜を硬化させてベース層を形成する工程を示す。
【図9】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(d)ベース層の上にカバー層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための工程図であって、(a)は、導体パターンから露出するベース層、および、ベース層から露出する金属支持基板の表面にカバー層を形成する工程、(b)は、カバー層の表面をエッチングレジストで被覆する工程、(c)は、エッチングレジストから露出するカバー層をエッチングする工程、(d)は、エッチングレジストを除去する工程を示す。
【図10】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法において、(d)ベース層の上にカバー層を所望のパターンとして形成する工程、を説明するための他の工程図であって、(a)は、導体パターンから露出するベース層、および、ベース層から露出する金属支持基板の表面にカバー皮膜を形成する工程、(b)は、カバー皮膜をフォトマスクを介して露光する工程、(c)は、カバー皮膜の未露光部分を現像により除去する工程、(d)は、カバー皮膜を硬化させてカバー層を形成する工程を示す。
【図11】本発明の配線回路基板の他の実施形態である片面フレキシブル配線回路基板(カバー層の表面に半導電性層を備える形態)を示す断面図である。
【図12】本発明の配線回路基板の他の実施形態である片面フレキシブル配線回路基板(半導電性層からなるベース層および/またはカバー層を備える形態)を示す断面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 回路付サスペンション基板
2 金属支持基板
3 ベース層
4 導体パターン
5 カバー層
6 端子部
10 半導電性層
21、31 片面フレキシブル配線回路基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および溶媒を含有していることを特徴とする、半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリアニリンであることを特徴とする、請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、感光剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項4】
導体層と、前記導体層に隣接する絶縁層と、前記絶縁層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部と、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物を用いて、前記絶縁層の表面に形成される半導電性層とを備えていることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項5】
導体層と、前記導体層に隣接する樹脂層と、前記樹脂層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、
前記樹脂層が、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項6】
金属支持層と、前記金属支持層の上に形成されるベース層と、前記ベース層の上に形成される導体層と、前記導体層の上に形成されるカバー層と、前記カバー層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、
前記ベース層および/または前記カバー層が、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項1】
イミド樹脂またはイミド樹脂前駆体、導電性ポリマー、スルホン化ポリベンゾオキサゾール化合物の金属塩および溶媒を含有していることを特徴とする、半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリアニリンであることを特徴とする、請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、感光剤を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項4】
導体層と、前記導体層に隣接する絶縁層と、前記絶縁層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部と、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物を用いて、前記絶縁層の表面に形成される半導電性層とを備えていることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項5】
導体層と、前記導体層に隣接する樹脂層と、前記樹脂層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、
前記樹脂層が、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴とする、配線回路基板。
【請求項6】
金属支持層と、前記金属支持層の上に形成されるベース層と、前記ベース層の上に形成される導体層と、前記導体層の上に形成されるカバー層と、前記カバー層が開口されることにより露出される導体層からなる端子部とを備える配線回路基板において、
前記ベース層および/または前記カバー層が、請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性樹脂組成物を用いて形成される半導電性層であることを特徴とする、配線回路基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−99867(P2007−99867A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−290184(P2005−290184)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
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