説明

半自動溶接用シーラー

【課題】半自動のアーク溶接に使用する場合においても燃えにくく、且つ作業性が良好な半自動溶接用シーラーを得る。
【解決手段】ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とし、防錆油を7〜13重量%含有して半自動溶接用シーラーとすることで、水分の含有によりアーク溶接を行うに際しての通電性を確保することができ、鉄粉を内在していないので、長期保存においても錆びが発生することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車修理に際して行われる金属板同士の溶接に使用される塗料に関し、特に半自動のアーク溶接機を使用する半自動溶接において、金属板同士の間に塗布して介在させる半自動溶接用シーラーに関する。
【背景技術】
【0002】
スポット溶接に使用されるシーラー塗料は、例えばアクリルレジンにカーボン及び鉄粉を含有させて瓶などの容器内に充填したものが使用されている。鉄粉はスポット溶接を行うに際しての通電性を確保するために用いられるものである。
このようなシーラー塗料は、鉄板同士の溶接を行うに際して、図3に示すように、アース電極(図示せず)が接続されている一方の鉄板1上に刷毛等で塗料2を塗布し硬化させた後、この鉄板1上に他方の鉄板3を載置して、他方の鉄板3の反塗布面側から所定の間隔で可動側電極ガン(図示せず)によりスポット溶接4を行うことにより両方の鉄板1,3を溶接固定するものである(スポット溶接を行う具体的な装置は、例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2001−340970
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述のシーラー塗料は、鉄粉が含有されているので、鉄粉を均一に分散させるためには、鉄板に塗布する前に容器内で十分に攪拌する必要があり、使用に際して煩雑であった。
また、長時間放置すると、内部の鉄粉にさびが生じたり、鉄粉が沈殿して塗料が固くなるという問題点があった。
【0004】
特に上述したスポット溶接において、可動側電極ガンを手動で移動させて溶接を行う方式が半自動溶接であるが、半自動によるアーク溶接の場合、溶接面積の範囲が広くなるので溶接温度を高く設定する必要があり、シーラー塗料が燃え易くなるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、半自動溶接に使用する場合においても燃えにくく、且つ作業性が良好な半自動溶接用シーラーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の半自動溶接用シーラーは、ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とし、防錆油を7〜13重量%含有したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の半自動溶接用シーラーによれば、ゴムを基材とするエマルジョンで構成されているので、防錆油を含有するものであっても半自動のアーク溶接を行うに際して燃え難くすることができる。また、鉄粉を内在していないので、長期保存においても錆びが発生することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の半自動溶接用シーラーの実施の形態の一例について説明する。
半自動溶接用シーラーは、ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とし、防錆油を含有して構成されている。すなわち、30〜40重量部のゴム基材に対して、60〜70重量部の水を混合してエマルジョン化することで半自動溶接用シーラーを得る。半自動溶接用シーラーの粘度は刷毛で塗布可能な程度であり、容器内に充填可能な液体状で構成されている。防錆油は、7〜13重量%含有され、鉄板面に塗布した場合の錆び止めとしての役目を有している。
また、エマルジョン化により水が含有されているので、アーク溶接を行うに際しての通電性を確保することができる。
【0009】
ゴムを基材とするエマルジョン(65%が水分)を主成分とすることで、前記エマルジョンに対して油成分(防錆油)を加えると、分子量の低いゴムに対して水が押し出されて表面に付着することで、燃え難い性質とさせることができる。
【0010】
半自動溶接用シーラーには、着色のためにカーボン粉を含有してもよい。このカーボン粉も難燃性なので、半自動溶接用シーラーに含有するのに適したものである。
【0011】
次に、半自動溶接用シーラーの使用例について、図1及び図2を参照しながら説明する。
半自動スポット溶接機械を使用して鉄板同士の溶接を行う場合、一方の鉄板10に対して他方の鉄板30に複数の直径5〜10mm程度の孔31を形成し、この孔部分でアーク溶接を行う。
先ず、鉄板10上の旧塗膜をサンドペーパーで剥して鉄板素地を出す。半自動溶接用シーラーが充填された容器に刷毛の先端を埋浸させることで半自動溶接用シーラーを刷毛に付着させ、溶接を行いたい一方の鉄板10上に半自動溶接用シーラー20を塗布する。
次に、他方の鉄板30を一方の鉄板10上に重ねることで鉄板間に半自動溶接用シーラー20を介在させる。
【0012】
続いて、鉄板10の端部にマイナス端子を接続し、孔31に可動用ガンを近づけ、スパークさせることでアーク溶接を行い、孔31に溶接部40を盛り上げるように形成して両方の鉄板10,30を溶接固定する。この時、孔31に対応する鉄板10上は半自動溶接用シーラー20に被覆されているが、水分を含んで通電性が良好なのでアーク溶接による溶接部40の形成に支障を来たすことがない。
孔31の鉄板30より突出した部分の溶接部40aを削って連続する平面(点線で示す)とし、その後に通常の塗装処理を行うことで修理作業を終了する。
【0013】
この半自動溶接用シーラーによれば、ゴムを基材とするエマルジョンを主成分としているので、分子量の低いゴムに対して水が表面に付着することで燃えにくくすることができ、アーク溶接の際に自動のスポット溶接より高温(1300度)となる半自動タイプの溶接方法であっても、支障なく使用することができる。
また、難燃性材料を含有することで、アーク溶接を行うに際して塗料部分が燃焼することを更に防止できる。
【実施例】
【0014】
半自動溶接用シーラーの具体例について説明する。
半自動溶接用シーラーとして、下表の材料及び配合で作成したものを使用した。
この半自動溶接用シーラーを介在させて鉄板同士の溶接を行ったところ、アーク溶接による溶接間隔が3〜4cm程度に狭まっても、また、5回/分の連発に対しても塗料に燃焼が発生することがなかった。
【0015】
(表1)
ゴムエマルジョン 100重量部
防錆油 10重量部
【0016】
ゴムエマルジョンは、ゴム基材をエマルジョン化したもので、65重量%の水分を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】鉄板同士のアーク溶接(半自動溶接)を行う場合のアーク溶接箇所の斜視説明図である。
【図2】溶接箇所の断面説明図である。
【図3】鉄板同士のスポット溶接を行う場合のスポット溶接箇所の斜視説明図である。
【符合の説明】
【0018】
10 鉄板
20 半自動溶接用シーラー
30 鉄板
31 孔
40 溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムを基材とするエマルジョンを主成分とし、防錆油を7〜13重量%含有したことを特徴とする半自動溶接用シーラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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