単位回路、電気光学装置、及び電子機器
【課題】データ線からのクロストークを防止する。
【解決手段】単位回路Uは、電源線19とノードZ1との間に設けられた第1容量素子C1と、電源線19とノードZ2との間に設けられた第2容量素子C2と、ノードZ1とノードZ2との間に設けられた第3容量素子C3とを備える。また、ノードZ1とデータ線14との間にはデータ書込期間においてオン状態となるトランジスタTr1が設けられている。駆動トランジスタTdrのゲートとドレインの間には初期化期間及び補償期間においてオン状態となるトランジスタTr3が設けられている。さらに、ノードZ2と初期化電位VSTが供給される電位線との間にはトランジスタTr2が設けられており、トランジスタTr2とTr3との間にはトランジスタTr4が設けられている。
【解決手段】単位回路Uは、電源線19とノードZ1との間に設けられた第1容量素子C1と、電源線19とノードZ2との間に設けられた第2容量素子C2と、ノードZ1とノードZ2との間に設けられた第3容量素子C3とを備える。また、ノードZ1とデータ線14との間にはデータ書込期間においてオン状態となるトランジスタTr1が設けられている。駆動トランジスタTdrのゲートとドレインの間には初期化期間及び補償期間においてオン状態となるトランジスタTr3が設けられている。さらに、ノードZ2と初期化電位VSTが供給される電位線との間にはトランジスタTr2が設けられており、トランジスタTr2とTr3との間にはトランジスタTr4が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Organic Light Emitting Diode)」という)素子など電気光学素子を備えた単位回路、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオードを用いた表示装置が普及しつつある。この表示装置は、複数の画素を備える。各画素には、有機発光ダイオードとこれを駆動するトランジスタなどが形成される。表示装置を面内において均一で安定した表示を得るためには各画素の有機発光ダイオードを同一光量で発光させる必要がある。しかし、トランジスタの特性にはばらつきがあるため、画素毎の表示むらが発生するといった問題があった。この問題を解決するために、特許文献1には、駆動トランジスタの閾値電圧の誤差を補償する構成が開示されている。
【0003】
図14は、特許文献1に開示された構成を示す回路図である。この構成においては、第1に、トランジスタTrAを介して駆動トランジスタTdrをダイオード接続し、これによって駆動トランジスタTdrのゲート(ノードZ2)をその閾値電圧Vthに応じた電位(Vel−Vth)に設定する。この電位は容量素子Cxに保持される。第2に、トランジスタTrBを介してデータ線Lと容量素子CyのノードZ1とを電気的に接続することで、ノードZ1の電位(駆動トランジスタTdrのゲートの電位)をデータ線Lの電位Vdataに応じて変化させる。以上の動作によって、駆動トランジスタTdrのゲートの電位はノードZ1の電位の変化量に応じたレベルだけ変動し、この変動後の電位に応じた電流Iel(閾値電圧Vthに依存しない電流)の供給によってOLED素子Eが駆動される。
【特許文献1】特開2004−133240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の構成では、トランジスタTrBのドレイン・ソース間の容量などによってデータ線LとノードZ1が容量カップリングし、また、素子の配置などに起因して、データ線LとノードZ2が容量カップリングする。このため、寄生容量C4や寄生容量C5によってデータ線Lの電位が変動すると、駆動トランジスタTdrのゲート電位が変動するといった問題があった。また、このような容量カップリングによるクロストークは、一つの単位回路だけでなく、隣接する単位回路のデータ線との間でも問題となる。
さらに、従来の構成では、1水平走査期間内で閾値電圧の補償とデータの書き込みとを実行していたため、閾値電圧の補償に十分な時間をとれず、これに時間をかけるとデータを正確に書き込むことができないといった問題があった。
本発明は、クロストークを防止すること、あるいは、駆動トランジスタの閾値電圧を正確に補償し、確実にデータ電圧の書き込みを行うことを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る単位回路は、駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子を備えたものであって、第1電極(例えば、図2に示す電極Ea1)と第2電極(例えば、図2に示す電極Ea2)とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、第3電極(例えば、図2に示す電極Eb1)と第4電極(例えば、図2に示す電極Eb2)とを備え、前記第3電極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4電極に固定の電位が供給される第2容量素子と、第5電極(例えば、図2に示す電極Ec1)と第6電極(例えば、図2に示す電極Ec1)とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子(例えば、図2に示すトランジスタTr1)と、初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段(例えば、図2に示すトランジスタTr2〜Tr4)と、補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段(例えば、図2に示すトランジスタTr3)とを備える。
【0006】
この単位回路によれば、第1容量素子、第2容量素子及び第3容量素子がパイ型に接続されている。このため、電位を保持すべきノードと画素電源Vel間に容量を接続することにより、データ線の電位が変動してもクロストークの影響を受け難くすることができる。また、補償期間と書込期間とを1水平走査期間内で完了させる必要は必ずしもないので、複数の水平走査期間に亘って補償動作を実行することが可能となる。これにより、正確に閾値電圧を補償することができるとともにデータを確実に書き込むことが可能となる。
【0007】
上述した単位回路において、前記初期化手段は、前記初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させるとともに、前記第2のノードに初期化電位を供給することが好ましい。これにより、第2のノードの電位を初期化電位に設定できるので、確実に閾値電圧の補償を実行できる。すなわち、初期化電位は駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を閾値電圧以上とできるように定めることが好ましい。
【0008】
また、初期化手段に具体的な態様としては、前記初期化電位を供給する電位線と前記第1のノードとの間に設けられた第2スイッチング素子(例えば、図2に示すトランジスタTr2)と、一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子(例えば、図3に示すトランジスタTr3)と、前記電位線と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子(例えば、図4に示すトランジスタTr4)とを備えることが好ましい。この場合、第2〜第4スイッチング素子をオン状態とすれば、第3容量素子の第5電極と第6電極とを短絡して蓄積された電荷を放電することができ、しかも駆動トランジスタのゲート(第2のノード)の電位を初期化電位に設定することができる。
【0009】
また、初期化手段に具体的な他の態様としては、一方の入力端子が前記初期化電位を供給する電位線と電気的に接続された第2スイッチング素子と、一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子の他方の入力端子と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子とを備えることが好ましい。この場合にも、第3容量素子の第5電極と第6電極とを短絡して蓄積された電荷を放電すると同時に、駆動トランジスタのゲート(第2のノード)の電位を初期化電位に設定することができる。
【0010】
さらに、前記初期化手段の前記第3スイッチング素子は、その他方の入力端子が前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続されており、前記補償期間においてオン状態となり、前記補償手段と兼用されることが好ましい。この場合には、第3スイッチング素子をオン状態とすることで駆動トランジスタをダイオード接続することができる。
【0011】
また、上述した単位回路において、電源電位を供給する電源線を備え、前記駆動トランジスタのソース、前記第1容量素子の前記第2電極、及び前記第2容量素子の前記第4電極が前記電源線と電気的に接続されることが好ましい。この場合には、一本の電源線で駆動トランジスタの電源を供給し、第1容量素子及び第2容量素子の電位を固定するので、構成を簡素化できる。
【0012】
また、上述した単位回路において、前記駆動トランジスタと前記電気光学素子とを結ぶ電気的な経路に設けられ、前記駆動期間においてオン状態となり、前記初期化期間、前記補償期間、前記書込期間においてオフ状態となる発光制御スイッチング素子(例えば、図2に示す発光制御トランジスタTel)を備えることが好ましい。この場合には、駆動期間以外に駆動電流が電気光学素子に供給されないので、正確に低階調を表現することができ、本来、黒を表示すべきところが灰色がかって見える黒浮きを防止することができる。
【0013】
また、上述した単位回路において、前記第1容量素子、前記第2容量素子、及び前記第3容量素子の各容量値を等しく設定することが好ましい。この場合には、合成容量の大きさを最大にできるので、データ線からのクロストークの影響をより一層防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る電気光学装置は、複数のデータ線と複数の単位回路とを含み、前記複数の単位回路の各々は、駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子と、第1電極と第2電極とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、第3電極と第4電極とを備え、前記第3極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4極に固定の電位が供給される第2容量素子と、第5電極と第5電極とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子と、初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段と、補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段とを備える。
【0015】
この発明によれば、第1容量素子、第2容量素子及び第3容量素子がパイ型に接続されている。このため、電位を保持すべきノードと画素電源Vel間に容量を接続することにより、データ線の電位が変動してもクロストークの影響を受け難くすることができる。また、補償期間と書込期間とを1水平走査期間内で完了させる必要は必ずしもないので、複数の水平走査期間に亘って補償動作を実行することが可能となる。これにより、正確に閾値電圧を補償することができるとともにデータを確実に書き込むことが可能となる。電気光学装置の典型例は、電気エネルギの付与によって輝度や透過率といった光学的な性状が変化する電気光学素子を被駆動素子として採用した装置(例えば発光素子を電気光学素子として採用した発光装置)である。
【0016】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、本発明の電子装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る電子装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)、液晶装置の背面側に配置されてこれを照明する装置(バックライト)、あるいは、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿を照明する装置など各種の照明装置など、様々な用途に本発明の電子装置を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<1.実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る電子装置の構成を示すブロック図である。同図に例示された電子装置Dは、画像を表示する手段として各種の電子機器に搭載される電気光学装置(発光装置)であり、複数の単位回路(画素回路)Uが面状に配列された素子アレイ部10と、各単位回路Uを駆動するための走査線駆動回路22及びデータ線駆動回路24とを含む。なお、走査線駆動回路22及びデータ線駆動回路24は、素子アレイ部10とともに基板上に形成されたトランジスタによって構成されてもよいしICチップの形態で実装されてもよい。
【0018】
図1に示すように、素子アレイ部10には、X方向に延在するm本の走査線12と、X方向に直交するY方向に延在するn本のデータ線14とが形成される(m及びnはともに自然数)。各単位回路Uは、走査線12とデータ線14との交差に対応する各位置に配置される。したがって、これらの単位回路Uは縦m行×横n列のマトリクス状に配列する。各単位回路Uには、電源線17を介して高位側の高電源電位Velが供給される。
【0019】
走査線駆動回路22は、複数の走査線12の各々を順番に選択するための回路である。データ線駆動回路24は、走査線駆動回路22が選択する走査線12に接続された1行分(n個)の単位回路Uの各々に対応するデータ信号X[1]〜X[n]を生成して各データ線14に出力する。第i行(iは1≦i≦mを満たす整数)の走査線12が選択される期間(後述するデータ書込期間P2)にて第j列目(jは1≦j≦nを満たす整数)のデータ線14に供給されるデータ信号X[j]は、第i行に属する第j列目の単位回路Uに指定された階調に応じた電位となる。各単位回路Uの階調は、外部から供給される階調データによって指定される。
【0020】
次に、図2を参照して、各単位回路Uの具体的な構成を説明する。同図においては、第i行の第j列目に位置するひとつの単位回路Uのみが図示されているが、その他の単位回路Uも同様の構成である。同図に示すように、単位回路Uは、電源線17と低電源電位VCTとの間に介在する電気光学素子Eを含む。電気光学素子Eは、これに供給される駆動電流Ielに応じた階調(輝度)となる電流駆動型の被駆動素子である。本実施形態における電気光学素子Eは、有機EL(ElectroLuminescent)材料からなる発光層を陽極と陰極との間に介在させたOLED素子(発光素子)である。
【0021】
図2に示すように、図1において便宜的に1本の配線として図示された走査線12は、実際には4本の配線(第1制御線121・第2制御線122・第3制御線123・第4制御線124)を含む。各配線には走査線駆動回路22から所定の信号が供給される。さらに詳述すると、第i行目の走査線12を構成する第1制御線121には走査信号GWRT[i]が供給される。同様に、第2制御線122には初期化信号GPRE[i]が供給され、第3制御線123には補償制御信号GINI[i]が供給され、第4制御線124には発光制御信号GEL[i]が供給される。なお、各信号の具体的な波形やこれに応じた単位回路Uの動作については後述する。
【0022】
図2に示すように、電源線17から電気光学素子Eの陽極に至る経路上にはpチャネル型の駆動トランジスタTdrが介挿される。駆動トランジスタTdrのソース(S)は電源線17に接続される。この駆動トランジスタTdrは、ソース(S)とドレイン(D)との導通状態(ソース−ドレイン間の抵抗値)がゲートの電位(以下「ゲート電位」という)Vgに応じて変化することで当該ゲート電位Vgに応じた駆動電流Ielを生成する手段である。すなわち、電気光学素子Eは、駆動トランジスタTdrの導通状態に応じて駆動される。
【0023】
駆動トランジスタTdrのドレインと電気光学素子Eの陽極との間には両者の電気的な接続を制御するnチャネル型のトランジスタ(以下「発光制御トランジスタ」という)Telが介在する。この発光制御トランジスタTelのゲートは第4制御線124に接続される。したがって、発光制御信号GEL[i]がハイレベルに遷移すると発光制御トランジスタTelがオン状態に変化して電気光学素子Eに対する駆動電流Ielの供給が可能となる。これに対し、発光制御信号GEL[i]がローレベルである場合には発光制御トランジスタTelがオフ状態を維持するから、駆動電流Ielの経路が遮断されて電気光学素子Eは消灯する。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の単位回路Uは、3個の容量素子(C1・C2・C3)と、nチャネル型の4個のトランジスタ(Tr1・Tr2・Tr3・Tr4)とを含む。第1容量素子C1は、電極Ea1と電極Ea2との間隙に誘電体が介挿された素子であり、その容量値はCh1である。同様に、第2容量素子C2は、電極Eb1と電極Eb2との間隙に誘電体が介挿された素子であり、その容量値はCh2である。第3容量素子C3は、電極Ec1と電極Ec2との間隙に誘電体が介挿された素子であり、その容量値はCcである。第1容量素子C1の電極Ea2及び第2容量素子C2の電極Eb2は電源線17に接続される。一方、第1容量素子C1の電極Ea1は第3容量素子C3の電極Ec1に接続され、第2容量素子C2の電極Eb1は第3容量素子C3の電極Ec2に接続される。
【0025】
トランジスタTr1は、ノードZ1(第3容量素子C3の電極Ec1)とデータ線14との間に介在して両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr1のゲートは第1制御線121と接続され、走査信号GWRT[i]が供給される。また、トランジスタTr4は、初期化電位VSTが供給される電位線(図示略)と駆動トランジスタTdrのドレインとの間に設けられ両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr4のゲートは第2制御線122と接続され、走査信号GWRT[i]が供給される。トランジスタTr2は、ノードZ1と初期化電位VSTが供給される電位線との間に設けられ両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr2のゲートは第3制御線123と接続され、補償制御信号GINI[i]が供給される。トランジスタTr3は、ノードZ2(第3容量素子C3の電極Ec2)と駆動トランジスタTdrのドレインとの間に設けられ両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr3のゲートは第3制御線123と接続され、補償制御信号GINI[i]が供給される。
【0026】
次に、図3を参照して、電子装置Dで利用される各信号の具体的な波形を説明する。同図に示すように、走査信号GWRT[1]〜GWRT[m]は各フレーム期間F内の所定の期間(以下「データ書込期間」という)P2ごとに順番にハイレベルとなる信号である。すなわち、走査信号GWRT[i]は、ひとつのフレーム期間Fのうち第i番目のデータ書込期間P2にてハイレベルを維持するとともにそれ以外の期間にてローレベルを維持する。走査信号GWRT[i]のハイレベルへの遷移は第i行の選択を意味する。
【0027】
図3に示すように、走査信号GWRT[i]のハイレベルとなる水平走査期間1Hより以前の補償期間P2(この例では、直前の水平走査期間1H及びその前の水平走査期間1H)において、補償制御信号GINI[i]がハイレベルとなる。補償期間P2では駆動トランジスタTdrの閾値電圧Vthが第2容量素子C2に充電される。なお、この例では、補償期間P2の開始前の所定の期間に初期化期間P0が割り当てられる。データ書込期間P2は、外部から供給される階調データによって単位回路Uに指定される階調に応じた電圧Vdataを第2容量素子C2に保持させるための期間である。駆動期間P3においては、第2容量素子C2に保持された電圧に基づいて電気光学素子Eが駆動される。以下、図4ないし図6を参照しながら、第i行に属する第j列目の単位回路Uの動作の詳細を初期化期間P0、補償期間P1、データ書込期間P2、及び駆動期間P3とに区分して説明する。
【0028】
(A)初期化期間P0
図4に初期化信号GPRE[i]がハイレベルとなる初期化期間P0における単位回路Uの様子を示す。この状態では、初期化信号GPRE[i]及び補償制御信号GINI[i]がハイレベルとなるので、トランジスタTr2、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオン状態となる。このため、第3容量素子C3の電極Ec1及び電極Ec2に蓄積された電荷が放電され、それらの電位が初期化電位VSTに設定される。また、初期化期間P0では、走査信号GWRT[i]及び発光制御信号GEL[i]がローレベルとなり、トランジスタTr1及び発光制御トランジスタTelがオフ状態となる。
【0029】
(B)補償期間P1
図5に補償期間P1における単位回路Uの様子を示す。この状態では、初期化信号GPRE[i]がハイレベルからローレベルに遷移する一方、補償制御信号GINI[i]がハイレベルとなる。このため、トランジスタTr4がオン状態からオフ状態へ遷移し、トランジスタTr2及びTr3がオン状態を維持する。このとき、第3容量素子C3の電極Ec1の電位は初期化電位VSTに固定される。また、駆動トランジスタTdrがダイオード接続される。駆動トランジスタTdrのソースからドレインに電流が流れ込む。これによって、駆動トランジスタTdrのゲート・ソース間電圧は閾値電圧Vthに漸近するので、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgは「Vel−Vth」に収束する。第2容量素子C2は閾値電圧Vthを保持する。補償期間P1の時間が短いと、ゲート電位Vgを「Vel−Vth」に収束させることができない。本実施形態では、データ書込期間P2と補償期間P0とを独立して設定することができるので、両者を1水平走査期間1Hに設ける必要はない。このため、補償期間P1をデータ書込期間P2が設定される水平走査期間と別の水平走査期間に設けることができる。この例では、図3に示すように2個の水平走査期間に跨って補償期間P1を設ける。この結果、閾値電圧Vthの補償を十分行うことが可能となる。
【0030】
なお、初期化電位VSTは、「Vel−Vth」より低い電位に設定されている。このため、補償動作を開始する時点で駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgは十分低いので、電気光学素子Eに電流を流してゲート電位Vgを下げる必要がない。このため、補償期間P1では、ローレベルの発光制御信号GEL[i]によって発光制御トランジスタTelがオフ状態を維持し、電気光学素子Eに対する駆動電流Ielの供給が遮断される。仮に、ゲート電位Vgを下げるために電気光学素子Eに駆動電流Ielを流すと、本来、黒を表示すべき場合に灰色がかった表示となり、画質が劣化するが、本実施形態によれば初期化電位VSTを供給するので、表示品質を向上させることができる。
【0031】
(C)データ書込期間P2
図6に走査信号GWRT[i]がハイレベルであるデータ書込期間P2における単位回路Uの様子を示す。データ書込期間P2では、トランジスタTr1がオン状態となる一方、トランジスタTr2〜Tr4、及び発光制御トランジスタTelがオフ状態となる。この状態で、第3容量素子C3の電極Ec1はデータ線14に電気的に接続される。このとき、データ線14にはデータ信号X[j]として、電位(VST−α・Vdata)が供給される。したがって、第3容量素子C3の電極Ec1の電位は、初期化電位VSTから電位(VST−α・Vdata)に変化する。この変化分をΔV1とすれば、ΔV1は以下の式(1)で与えられる。
ΔV1=−α・Vdata……(1)
但し、αは係数であり、α=(Cc+Ch2)/Ch2である。
第3容量素子C3はカップリング容量として機能するので、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgは、ΔV1を第3容量素子C3と第2容量素子C2で分圧した電圧だけ変化する。この変化分をΔV2とすれば、ΔV2は以下の式(1)で与えられる。
ΔV2=ΔV1・Ch2/(Cc+Ch2)
=−Vdata……(2)
さらに、初期化期間P0の終了時点のゲート電位Vgは、Vg=Vel−Vthであるから、データ書込期間P2が終了した時点におけるゲート電位Vgは、以下に示す式(3)で与えられる。
Vg=Vel−Vth+ΔV2
=Vel−Vth−Vdata……(3)
【0032】
(D)駆動期間P3
図6に駆動期間P3における単位回路Uの様子を示す。この状態では、走査信号GWRT[i]、初期化信号GPRE[i]、及び補償制御信号GINI[i]がローレベルになる。したがって、トランジスタTr1がオフ状態となり、第3容量素子の電極Ea1がデータ線14から電気的に分離される。また、トランジスタTr2〜Tr4がオフ状態となる。一方、駆動期間P3では発光制御信号GEL[i]がハイレベルになり、トランジスタTelがオン状態に変化して駆動トランジスタTdrからゲート電位Vgに応じた大きさの駆動電流Ielが電気光学素子Eに供給される。駆動トランジスタTdrが飽和領域にて動作すると仮定すると、駆動電流Ielは以下の式(4)で表現される電流値となる。式(4)における「β」は駆動トランジスタTdrの利得係数である。
Iel=(β/2)(Vgs−Vth)2……(4)
【0033】
駆動トランジスタTdrのソースは電源線17に接続されているから、式(4)における電圧Vgsはゲート電位Vgと高電源電位Velとの差分値(Vgs=Vel−Vg)である。駆動期間P3においてゲート電位Vgが式(3)で与えられることを考慮すると、式(4)は式(5)に変形される。
Iel=(β/2){Vel−(Vel−Vth−Vdata)−Vth}2
=(β/2)(Vdata)2 ……(5)
式(2)から理解されるように、駆動電流Ielは電位Vdataによって決定され、駆動トランジスタTdrの閾値電圧Vthには依存しない。したがって、各単位回路Uにおける駆動トランジスタTdrの閾値電圧Vthのバラツキを補償して各電気光学素子Eの階調(輝度)のムラを抑制することができる。
【0034】
以上に説明したように、本実施形態においては、補償期間P1とデータ書込期間P2とを異なる水平走査期間1Hに配置することができる。これにより、補償期間P1及びデータ書込期間P2の時間を長くすることができるので、正確に閾値電圧Vthを補償するとともに電圧Vdataを十分書き込むことができる。この結果、輝度ムラを無くすとともに表示階調の精度を向上させることが可能となる。
【0035】
次に、データ線14と単位回路Uのノード間のクロストークが、どの程度影響するかについて説明する。まず、比較例として、図14に示す従来の単位回路について検討する。図14において寄生容量C4は、データ線LとノードZ1との間に付随し、その容量値はCaである。また、寄生容量C5は、データ線LとノードZ2との間に付随し、その容量値はCbである。ここで、データ線14の電位の変動振幅をVampとして、第4容量C4による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVaとすると、変動電圧ΔVaは、Ca、Cc、Ch1+Ch2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVaは、以下に示す式(6)で与えられる。
【数1】
【0036】
Caが、Cc、Ch1、及びCh2と比較して非常に小さいとすると、式(6)は以下に示す式(7)に変形することができる。
【数2】
【0037】
同様に、第5容量C5による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVbとすると、変動電圧ΔVbは、Cb、Ch1+Ch2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVbは、以下に示す式(8)で与えられる。
【数3】
【0038】
Cbが、Ch1及びCh2と比較して非常に小さいとすると、式(8)は以下に示す式(9)に変形することができる。
【数4】
【0039】
ここで、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgの変動電位をΔVgとすると、変動電位ΔVgは以下に示す式(10)で与えられる。
【数5】
【0040】
次に、図2に示す本実施形態ついて検討する。第4容量C4による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVa’とすると、変動電圧ΔVaは、Ca、Cc、Ch1+Ch2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVa’は、以下に示す式(11)で与えられる。
【数6】
【0041】
CaがCh1と比較して非常に小さいとすると、式(11)は以下に示す式(12)に変形することができる。
【数7】
【0042】
同様に、第5容量C5による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVb’とすると、変動電圧ΔVb’は、Cb、Cc、Ch1、及びCh2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVb’は、以下に示す式(13)で与えられる。
【数8】
【0043】
ここで、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgの変動電位をΔVg’とすると、変動電位ΔVg’は以下に示す式(14)で与えられる。
【数9】
【0044】
次に、クロストークの比較を行う。Cc=Ch1=Ch2=Cとすると式(10)及び式(14)は、以下に示す式(15)及び式(16)に変形され、さらに単位回路Uにおける構成要素の配置によって大略Ca=4Cbであるので、式(15)及び式(16)は式(17)及び(18)に変形することができる。
【数10】
【0045】
式(17)と式(18)を比較すると、図14に示す単位回路と比較して図2に示す本実施形態の単位回路Uは、クロストークの影響を約1/3に低減できることが分かる。これにより、データ線14の電位が変動してもクロストークの影響を受け難い単位回路Uを提供することができる。
このように、第1〜第3容量素子C1〜C3をパイ型に接続して、第1容量素子C1及び第2容量素子C2をノードZ1及びノードZ2に設けることによって、トランジスタTr1のソース・ドレイン間の容量Cdsによって発生するクロストークを低減することができる。さらに、第1容量素子C1の容量値Ch1、第2容量素子C2の容量値Ch2、及び第3容量素子C3の容量値Ccを等しく設定することによって、ノードZ1及びノードZ2の各合成容量の大きさを最大にすることができる。これによって、クロストークの影響をより一層低減することができる。
また、上述したクロストークは、ある単位回路Uとこれにデータ電位を供給するデータ線14との間を問題としたが、当該単位回路Uと隣接する単位回路Uのデータ線14との間にも同様の問題があるが、本実施形態の単位回路Uを採用することによって、隣接する単位回路Uのデータ線14からのクロストークも同様に低減することができる。
【0046】
<2.単位回路Uの態様>
次に、上述した実施形態の単位回路Uの各種の態様について説明する。
(1)変形例1
図8に単位回路U1を示す。この単位回路U1では、トランジスタTr2とトランジスタTr3の各ゲートに異なる信号が供給される。この例では、第2制御線123に第2補償制御信号GINI2[i]が供給され、第5制御線125には第1補償制御信号GINI1[i]が供給される。単位回路U1の動作は、初期化期間P0、補償期間P1、データ書込期間P2、及び駆動期間P3では、上述した実施形態と同様であり、第1補償制御信号GINI1[i]及び第2補償制御信号GINI2[i]として、上述した補償制御信号GINIが供給される(図3参照)。
【0047】
電気光学装置Dの出荷前には各種の検査を行うが、この検査の一つとして第1容量素子C1と第3容量素子C3との短絡を検査する。検査期間において、走査信号GWRT[i]、第1補償制御信号GINI1[i]及び初期化信号GPRE[i]はハイレベルとなり、発光制御信号GEL[i]及び第2補償制御信号GINI2[i]はローレベルとなる。これにより、トランジスタTr1、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオン状態となる。仮に、第1容量素子C1の電極Ea1及び電極Ea2が短絡していれば、データ線14の電位が高電源電位Velとなる。また、仮に第3容量素子C3の電極Ec1及び電極Ec2が短絡していれば、データ線14の電位が初期化電位VSTとなる。したがって、データ線14の電位を測定することによって第1容量素子C1及び第3容量素子C3の短絡を検出することができる。このように単位回路U1によれば検査を容易に実行することが可能となる。
【0048】
(2)変形例2
図9に単位回路U2を示す。この単位回路U2は、初期化電位VSTを供給する電源線とトランジスタTr4の一方の入力端子との間にトランジスタTr2を設けた点を除いて、図2に示す実施形態の単位回路Uと同様に構成されている。この単位回路U2においても、実施形態と同様の信号を第1〜第4制御線121〜124に供給することにより、初期化期間P0において第3容量素子C3の電荷を放電させ、補償期間P1において閾値電圧Vthを第2容量素子C2に保持させ、データ書込期間P2において第3容量素子C3をカップリング容量として作用させてデータ電位に応じた電位を駆動トランジスタTdrのゲートに印加して保持させることができる。そして、駆動期間P3において、閾値電圧Vthを補償した大きさの駆動電流Ielを電気光学素子Eに供給することができる。
【0049】
(3)変形例3
図10に単位回路U1を示す。この単位回路U1では、トランジスタTr2とトランジスタTr3の各ゲートに異なる信号が供給される。この例では、第2制御線123に第2補償制御信号GINI2[i]が供給され、第5制御線125には第1補償制御信号GINI1[i]が供給される。単位回路U1の動作は、初期化期間P0、補償期間P1、データ書込期間P2、及び駆動期間P3では、上述した実施形態と同様であり、第1補償制御信号GINI1[i]及び第2補償制御信号GINI2[i]として、上述した補償制御信号GINIが供給される(図3参照)。
そして、検査期間においては、まず、走査信号GWRT[i]をハイレベルとし、発光制御信号GEL[i]、第1補償制御信号GINI1[i]、第2補償制御信号GINI2[i]及び初期化信号GPRE[i]をローレベルとする。これにより、トランジスタTr1がオン状態となり、トランジスタTr2、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオフ状態となる。仮に、第1容量素子C1の電極Ea1及び電極Ea2が短絡していれば、データ線14の電位が高電源電位Velとなる。したがって、データ線14の電位を測定することによって第1容量素子C1の短絡を検出することができる。
【0050】
次に、第3容量素子C3の短絡を検査する。第1に、走査信号GWRT[i]及び発光制御信号GEL[i]をローレベルとし、第1補償制御信号GINI1[i]、第2補償制御信号GINI2[i]及び初期化信号GPRE[i]をハイレベルとする。これにより、トランジスタTr1及び発光制御トランジスタTelがオフ状態となり、トランジスタTr2、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオン状態となる。このとき、第3容量素子C3の電極Ec1及び電極Ec2の電位は、初期化電位VSTとなる。
第2に、走査信号GWRT[i]及び第1補償制御信号GINI1[i]をハイレベルとし、発光制御信号GEL[i]、第2補償制御信号GINI2[i]及び初期化信号GPRE[i]をローレベルとする。これにより、トランジスタTr1及びトランジスタTr3がオン状態となり、発光制御トランジスタTel、トランジスタTr2、及びトランジスタTr4がオフ状態となる。仮に、第3容量素子C3が短絡していれば、電極Ec1の電位は「Vel−Vth」に収束し、短絡していなければ初期化電位VSTとなる。したがって、データ線14の電位を検出することによって第1容量素子C1の短絡を検出することができる。
【0051】
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
単位回路Uの具体的な構成は以上の例示に限定されない。例えば、単位回路Uを構成する各トランジスタの導電型は適宜に変更される。また、発光制御トランジスタTelは適宜に省略される。
また、上述した実施形態において、電気光学素子EとしてOLED素子を例示したが、本発明の電子装置に採用される電気光学素子(被駆動素子)はこれに限定されない。例えば、OLED素子に代えて、無機EL素子や、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子といった様々な自発光素子、さらには液晶素子や電気泳動素子やエレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を利用することができる。また、本発明は、バイオチップなどのセンシング装置にも適用される。
【0052】
<3.応用例>
次に、本発明に係る電子装置(電気光学装置)を利用した電子機器について説明する。図11ないし図13には、以上に説明した何れかの形態に係る電子装置Dを表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0053】
図11は、以上の各形態に係る電子装置Dを採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電子装置Dと、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。電子装置DはOLED素子を電気光学素子Eとして使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0054】
図12に、以上の各形態に係る電子装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電子装置Dとを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電子装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0055】
図13に、以上の各形態に係る電子装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する電子装置Dとを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が電子装置Dに表示される。
【0056】
なお、本発明に係る電子装置が適用される電子機器としては、図11から図13に示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る電子装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘッドが使用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の電子装置は利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る電子装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ひとつの単位回路Uの構成を示す回路図である。
【図3】電子装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】初期化期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図5】補償期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図6】データ書込期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図7】駆動期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図8】変形例1に係る単位回路U1の構成を示す回路図である。
【図9】変形例2に係る単位回路U2の構成を示す回路図である。
【図10】変形例3に係る単位回路U3の構成を示す回路図である。
【図11】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図14】従来の単位回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0058】
D……電子装置、U,U1〜U3……単位回路、E……電気光学素子、10……素子アレイ部、12……走査線、121……第1制御線、122……第2制御線、123……第3制御線、124……第4制御線、125……第5制御線、14……データ線、17……電源線、22……走査線駆動回路、24……データ線駆動回路、C1……第1容量素子、C2……第2容量素子、C3……第3容量素子、Ea1,Ea2,Eb1,Eb2,Ec1,Ec2……電極、Tdr……駆動トランジスタ、Tel……発光制御トランジスタ、Tr1,Tr2,Tr3,Tr4……トランジスタ、P0……初期化期間、P1……補償期間、P2……データ書込期間、P3……駆動期間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード(以下「OLED(Organic Light Emitting Diode)」という)素子など電気光学素子を備えた単位回路、電気光学装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオードを用いた表示装置が普及しつつある。この表示装置は、複数の画素を備える。各画素には、有機発光ダイオードとこれを駆動するトランジスタなどが形成される。表示装置を面内において均一で安定した表示を得るためには各画素の有機発光ダイオードを同一光量で発光させる必要がある。しかし、トランジスタの特性にはばらつきがあるため、画素毎の表示むらが発生するといった問題があった。この問題を解決するために、特許文献1には、駆動トランジスタの閾値電圧の誤差を補償する構成が開示されている。
【0003】
図14は、特許文献1に開示された構成を示す回路図である。この構成においては、第1に、トランジスタTrAを介して駆動トランジスタTdrをダイオード接続し、これによって駆動トランジスタTdrのゲート(ノードZ2)をその閾値電圧Vthに応じた電位(Vel−Vth)に設定する。この電位は容量素子Cxに保持される。第2に、トランジスタTrBを介してデータ線Lと容量素子CyのノードZ1とを電気的に接続することで、ノードZ1の電位(駆動トランジスタTdrのゲートの電位)をデータ線Lの電位Vdataに応じて変化させる。以上の動作によって、駆動トランジスタTdrのゲートの電位はノードZ1の電位の変化量に応じたレベルだけ変動し、この変動後の電位に応じた電流Iel(閾値電圧Vthに依存しない電流)の供給によってOLED素子Eが駆動される。
【特許文献1】特開2004−133240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の構成では、トランジスタTrBのドレイン・ソース間の容量などによってデータ線LとノードZ1が容量カップリングし、また、素子の配置などに起因して、データ線LとノードZ2が容量カップリングする。このため、寄生容量C4や寄生容量C5によってデータ線Lの電位が変動すると、駆動トランジスタTdrのゲート電位が変動するといった問題があった。また、このような容量カップリングによるクロストークは、一つの単位回路だけでなく、隣接する単位回路のデータ線との間でも問題となる。
さらに、従来の構成では、1水平走査期間内で閾値電圧の補償とデータの書き込みとを実行していたため、閾値電圧の補償に十分な時間をとれず、これに時間をかけるとデータを正確に書き込むことができないといった問題があった。
本発明は、クロストークを防止すること、あるいは、駆動トランジスタの閾値電圧を正確に補償し、確実にデータ電圧の書き込みを行うことを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る単位回路は、駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子を備えたものであって、第1電極(例えば、図2に示す電極Ea1)と第2電極(例えば、図2に示す電極Ea2)とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、第3電極(例えば、図2に示す電極Eb1)と第4電極(例えば、図2に示す電極Eb2)とを備え、前記第3電極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4電極に固定の電位が供給される第2容量素子と、第5電極(例えば、図2に示す電極Ec1)と第6電極(例えば、図2に示す電極Ec1)とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子(例えば、図2に示すトランジスタTr1)と、初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段(例えば、図2に示すトランジスタTr2〜Tr4)と、補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段(例えば、図2に示すトランジスタTr3)とを備える。
【0006】
この単位回路によれば、第1容量素子、第2容量素子及び第3容量素子がパイ型に接続されている。このため、電位を保持すべきノードと画素電源Vel間に容量を接続することにより、データ線の電位が変動してもクロストークの影響を受け難くすることができる。また、補償期間と書込期間とを1水平走査期間内で完了させる必要は必ずしもないので、複数の水平走査期間に亘って補償動作を実行することが可能となる。これにより、正確に閾値電圧を補償することができるとともにデータを確実に書き込むことが可能となる。
【0007】
上述した単位回路において、前記初期化手段は、前記初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させるとともに、前記第2のノードに初期化電位を供給することが好ましい。これにより、第2のノードの電位を初期化電位に設定できるので、確実に閾値電圧の補償を実行できる。すなわち、初期化電位は駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を閾値電圧以上とできるように定めることが好ましい。
【0008】
また、初期化手段に具体的な態様としては、前記初期化電位を供給する電位線と前記第1のノードとの間に設けられた第2スイッチング素子(例えば、図2に示すトランジスタTr2)と、一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子(例えば、図3に示すトランジスタTr3)と、前記電位線と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子(例えば、図4に示すトランジスタTr4)とを備えることが好ましい。この場合、第2〜第4スイッチング素子をオン状態とすれば、第3容量素子の第5電極と第6電極とを短絡して蓄積された電荷を放電することができ、しかも駆動トランジスタのゲート(第2のノード)の電位を初期化電位に設定することができる。
【0009】
また、初期化手段に具体的な他の態様としては、一方の入力端子が前記初期化電位を供給する電位線と電気的に接続された第2スイッチング素子と、一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子の他方の入力端子と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子とを備えることが好ましい。この場合にも、第3容量素子の第5電極と第6電極とを短絡して蓄積された電荷を放電すると同時に、駆動トランジスタのゲート(第2のノード)の電位を初期化電位に設定することができる。
【0010】
さらに、前記初期化手段の前記第3スイッチング素子は、その他方の入力端子が前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続されており、前記補償期間においてオン状態となり、前記補償手段と兼用されることが好ましい。この場合には、第3スイッチング素子をオン状態とすることで駆動トランジスタをダイオード接続することができる。
【0011】
また、上述した単位回路において、電源電位を供給する電源線を備え、前記駆動トランジスタのソース、前記第1容量素子の前記第2電極、及び前記第2容量素子の前記第4電極が前記電源線と電気的に接続されることが好ましい。この場合には、一本の電源線で駆動トランジスタの電源を供給し、第1容量素子及び第2容量素子の電位を固定するので、構成を簡素化できる。
【0012】
また、上述した単位回路において、前記駆動トランジスタと前記電気光学素子とを結ぶ電気的な経路に設けられ、前記駆動期間においてオン状態となり、前記初期化期間、前記補償期間、前記書込期間においてオフ状態となる発光制御スイッチング素子(例えば、図2に示す発光制御トランジスタTel)を備えることが好ましい。この場合には、駆動期間以外に駆動電流が電気光学素子に供給されないので、正確に低階調を表現することができ、本来、黒を表示すべきところが灰色がかって見える黒浮きを防止することができる。
【0013】
また、上述した単位回路において、前記第1容量素子、前記第2容量素子、及び前記第3容量素子の各容量値を等しく設定することが好ましい。この場合には、合成容量の大きさを最大にできるので、データ線からのクロストークの影響をより一層防止することができる。
【0014】
また、本発明に係る電気光学装置は、複数のデータ線と複数の単位回路とを含み、前記複数の単位回路の各々は、駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子と、第1電極と第2電極とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、第3電極と第4電極とを備え、前記第3極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4極に固定の電位が供給される第2容量素子と、第5電極と第5電極とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子と、初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段と、補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段とを備える。
【0015】
この発明によれば、第1容量素子、第2容量素子及び第3容量素子がパイ型に接続されている。このため、電位を保持すべきノードと画素電源Vel間に容量を接続することにより、データ線の電位が変動してもクロストークの影響を受け難くすることができる。また、補償期間と書込期間とを1水平走査期間内で完了させる必要は必ずしもないので、複数の水平走査期間に亘って補償動作を実行することが可能となる。これにより、正確に閾値電圧を補償することができるとともにデータを確実に書き込むことが可能となる。電気光学装置の典型例は、電気エネルギの付与によって輝度や透過率といった光学的な性状が変化する電気光学素子を被駆動素子として採用した装置(例えば発光素子を電気光学素子として採用した発光装置)である。
【0016】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。この電子機器の典型例は、本発明の電子装置を表示装置として利用した機器である。この種の電子機器としては、パーソナルコンピュータや携帯電話機などがある。もっとも、本発明に係る電子装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)、液晶装置の背面側に配置されてこれを照明する装置(バックライト)、あるいは、スキャナなどの画像読取装置に搭載されて原稿を照明する装置など各種の照明装置など、様々な用途に本発明の電子装置を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<1.実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る電子装置の構成を示すブロック図である。同図に例示された電子装置Dは、画像を表示する手段として各種の電子機器に搭載される電気光学装置(発光装置)であり、複数の単位回路(画素回路)Uが面状に配列された素子アレイ部10と、各単位回路Uを駆動するための走査線駆動回路22及びデータ線駆動回路24とを含む。なお、走査線駆動回路22及びデータ線駆動回路24は、素子アレイ部10とともに基板上に形成されたトランジスタによって構成されてもよいしICチップの形態で実装されてもよい。
【0018】
図1に示すように、素子アレイ部10には、X方向に延在するm本の走査線12と、X方向に直交するY方向に延在するn本のデータ線14とが形成される(m及びnはともに自然数)。各単位回路Uは、走査線12とデータ線14との交差に対応する各位置に配置される。したがって、これらの単位回路Uは縦m行×横n列のマトリクス状に配列する。各単位回路Uには、電源線17を介して高位側の高電源電位Velが供給される。
【0019】
走査線駆動回路22は、複数の走査線12の各々を順番に選択するための回路である。データ線駆動回路24は、走査線駆動回路22が選択する走査線12に接続された1行分(n個)の単位回路Uの各々に対応するデータ信号X[1]〜X[n]を生成して各データ線14に出力する。第i行(iは1≦i≦mを満たす整数)の走査線12が選択される期間(後述するデータ書込期間P2)にて第j列目(jは1≦j≦nを満たす整数)のデータ線14に供給されるデータ信号X[j]は、第i行に属する第j列目の単位回路Uに指定された階調に応じた電位となる。各単位回路Uの階調は、外部から供給される階調データによって指定される。
【0020】
次に、図2を参照して、各単位回路Uの具体的な構成を説明する。同図においては、第i行の第j列目に位置するひとつの単位回路Uのみが図示されているが、その他の単位回路Uも同様の構成である。同図に示すように、単位回路Uは、電源線17と低電源電位VCTとの間に介在する電気光学素子Eを含む。電気光学素子Eは、これに供給される駆動電流Ielに応じた階調(輝度)となる電流駆動型の被駆動素子である。本実施形態における電気光学素子Eは、有機EL(ElectroLuminescent)材料からなる発光層を陽極と陰極との間に介在させたOLED素子(発光素子)である。
【0021】
図2に示すように、図1において便宜的に1本の配線として図示された走査線12は、実際には4本の配線(第1制御線121・第2制御線122・第3制御線123・第4制御線124)を含む。各配線には走査線駆動回路22から所定の信号が供給される。さらに詳述すると、第i行目の走査線12を構成する第1制御線121には走査信号GWRT[i]が供給される。同様に、第2制御線122には初期化信号GPRE[i]が供給され、第3制御線123には補償制御信号GINI[i]が供給され、第4制御線124には発光制御信号GEL[i]が供給される。なお、各信号の具体的な波形やこれに応じた単位回路Uの動作については後述する。
【0022】
図2に示すように、電源線17から電気光学素子Eの陽極に至る経路上にはpチャネル型の駆動トランジスタTdrが介挿される。駆動トランジスタTdrのソース(S)は電源線17に接続される。この駆動トランジスタTdrは、ソース(S)とドレイン(D)との導通状態(ソース−ドレイン間の抵抗値)がゲートの電位(以下「ゲート電位」という)Vgに応じて変化することで当該ゲート電位Vgに応じた駆動電流Ielを生成する手段である。すなわち、電気光学素子Eは、駆動トランジスタTdrの導通状態に応じて駆動される。
【0023】
駆動トランジスタTdrのドレインと電気光学素子Eの陽極との間には両者の電気的な接続を制御するnチャネル型のトランジスタ(以下「発光制御トランジスタ」という)Telが介在する。この発光制御トランジスタTelのゲートは第4制御線124に接続される。したがって、発光制御信号GEL[i]がハイレベルに遷移すると発光制御トランジスタTelがオン状態に変化して電気光学素子Eに対する駆動電流Ielの供給が可能となる。これに対し、発光制御信号GEL[i]がローレベルである場合には発光制御トランジスタTelがオフ状態を維持するから、駆動電流Ielの経路が遮断されて電気光学素子Eは消灯する。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の単位回路Uは、3個の容量素子(C1・C2・C3)と、nチャネル型の4個のトランジスタ(Tr1・Tr2・Tr3・Tr4)とを含む。第1容量素子C1は、電極Ea1と電極Ea2との間隙に誘電体が介挿された素子であり、その容量値はCh1である。同様に、第2容量素子C2は、電極Eb1と電極Eb2との間隙に誘電体が介挿された素子であり、その容量値はCh2である。第3容量素子C3は、電極Ec1と電極Ec2との間隙に誘電体が介挿された素子であり、その容量値はCcである。第1容量素子C1の電極Ea2及び第2容量素子C2の電極Eb2は電源線17に接続される。一方、第1容量素子C1の電極Ea1は第3容量素子C3の電極Ec1に接続され、第2容量素子C2の電極Eb1は第3容量素子C3の電極Ec2に接続される。
【0025】
トランジスタTr1は、ノードZ1(第3容量素子C3の電極Ec1)とデータ線14との間に介在して両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr1のゲートは第1制御線121と接続され、走査信号GWRT[i]が供給される。また、トランジスタTr4は、初期化電位VSTが供給される電位線(図示略)と駆動トランジスタTdrのドレインとの間に設けられ両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr4のゲートは第2制御線122と接続され、走査信号GWRT[i]が供給される。トランジスタTr2は、ノードZ1と初期化電位VSTが供給される電位線との間に設けられ両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr2のゲートは第3制御線123と接続され、補償制御信号GINI[i]が供給される。トランジスタTr3は、ノードZ2(第3容量素子C3の電極Ec2)と駆動トランジスタTdrのドレインとの間に設けられ両者の電気的な接続を制御するスイッチング素子である。トランジスタTr3のゲートは第3制御線123と接続され、補償制御信号GINI[i]が供給される。
【0026】
次に、図3を参照して、電子装置Dで利用される各信号の具体的な波形を説明する。同図に示すように、走査信号GWRT[1]〜GWRT[m]は各フレーム期間F内の所定の期間(以下「データ書込期間」という)P2ごとに順番にハイレベルとなる信号である。すなわち、走査信号GWRT[i]は、ひとつのフレーム期間Fのうち第i番目のデータ書込期間P2にてハイレベルを維持するとともにそれ以外の期間にてローレベルを維持する。走査信号GWRT[i]のハイレベルへの遷移は第i行の選択を意味する。
【0027】
図3に示すように、走査信号GWRT[i]のハイレベルとなる水平走査期間1Hより以前の補償期間P2(この例では、直前の水平走査期間1H及びその前の水平走査期間1H)において、補償制御信号GINI[i]がハイレベルとなる。補償期間P2では駆動トランジスタTdrの閾値電圧Vthが第2容量素子C2に充電される。なお、この例では、補償期間P2の開始前の所定の期間に初期化期間P0が割り当てられる。データ書込期間P2は、外部から供給される階調データによって単位回路Uに指定される階調に応じた電圧Vdataを第2容量素子C2に保持させるための期間である。駆動期間P3においては、第2容量素子C2に保持された電圧に基づいて電気光学素子Eが駆動される。以下、図4ないし図6を参照しながら、第i行に属する第j列目の単位回路Uの動作の詳細を初期化期間P0、補償期間P1、データ書込期間P2、及び駆動期間P3とに区分して説明する。
【0028】
(A)初期化期間P0
図4に初期化信号GPRE[i]がハイレベルとなる初期化期間P0における単位回路Uの様子を示す。この状態では、初期化信号GPRE[i]及び補償制御信号GINI[i]がハイレベルとなるので、トランジスタTr2、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオン状態となる。このため、第3容量素子C3の電極Ec1及び電極Ec2に蓄積された電荷が放電され、それらの電位が初期化電位VSTに設定される。また、初期化期間P0では、走査信号GWRT[i]及び発光制御信号GEL[i]がローレベルとなり、トランジスタTr1及び発光制御トランジスタTelがオフ状態となる。
【0029】
(B)補償期間P1
図5に補償期間P1における単位回路Uの様子を示す。この状態では、初期化信号GPRE[i]がハイレベルからローレベルに遷移する一方、補償制御信号GINI[i]がハイレベルとなる。このため、トランジスタTr4がオン状態からオフ状態へ遷移し、トランジスタTr2及びTr3がオン状態を維持する。このとき、第3容量素子C3の電極Ec1の電位は初期化電位VSTに固定される。また、駆動トランジスタTdrがダイオード接続される。駆動トランジスタTdrのソースからドレインに電流が流れ込む。これによって、駆動トランジスタTdrのゲート・ソース間電圧は閾値電圧Vthに漸近するので、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgは「Vel−Vth」に収束する。第2容量素子C2は閾値電圧Vthを保持する。補償期間P1の時間が短いと、ゲート電位Vgを「Vel−Vth」に収束させることができない。本実施形態では、データ書込期間P2と補償期間P0とを独立して設定することができるので、両者を1水平走査期間1Hに設ける必要はない。このため、補償期間P1をデータ書込期間P2が設定される水平走査期間と別の水平走査期間に設けることができる。この例では、図3に示すように2個の水平走査期間に跨って補償期間P1を設ける。この結果、閾値電圧Vthの補償を十分行うことが可能となる。
【0030】
なお、初期化電位VSTは、「Vel−Vth」より低い電位に設定されている。このため、補償動作を開始する時点で駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgは十分低いので、電気光学素子Eに電流を流してゲート電位Vgを下げる必要がない。このため、補償期間P1では、ローレベルの発光制御信号GEL[i]によって発光制御トランジスタTelがオフ状態を維持し、電気光学素子Eに対する駆動電流Ielの供給が遮断される。仮に、ゲート電位Vgを下げるために電気光学素子Eに駆動電流Ielを流すと、本来、黒を表示すべき場合に灰色がかった表示となり、画質が劣化するが、本実施形態によれば初期化電位VSTを供給するので、表示品質を向上させることができる。
【0031】
(C)データ書込期間P2
図6に走査信号GWRT[i]がハイレベルであるデータ書込期間P2における単位回路Uの様子を示す。データ書込期間P2では、トランジスタTr1がオン状態となる一方、トランジスタTr2〜Tr4、及び発光制御トランジスタTelがオフ状態となる。この状態で、第3容量素子C3の電極Ec1はデータ線14に電気的に接続される。このとき、データ線14にはデータ信号X[j]として、電位(VST−α・Vdata)が供給される。したがって、第3容量素子C3の電極Ec1の電位は、初期化電位VSTから電位(VST−α・Vdata)に変化する。この変化分をΔV1とすれば、ΔV1は以下の式(1)で与えられる。
ΔV1=−α・Vdata……(1)
但し、αは係数であり、α=(Cc+Ch2)/Ch2である。
第3容量素子C3はカップリング容量として機能するので、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgは、ΔV1を第3容量素子C3と第2容量素子C2で分圧した電圧だけ変化する。この変化分をΔV2とすれば、ΔV2は以下の式(1)で与えられる。
ΔV2=ΔV1・Ch2/(Cc+Ch2)
=−Vdata……(2)
さらに、初期化期間P0の終了時点のゲート電位Vgは、Vg=Vel−Vthであるから、データ書込期間P2が終了した時点におけるゲート電位Vgは、以下に示す式(3)で与えられる。
Vg=Vel−Vth+ΔV2
=Vel−Vth−Vdata……(3)
【0032】
(D)駆動期間P3
図6に駆動期間P3における単位回路Uの様子を示す。この状態では、走査信号GWRT[i]、初期化信号GPRE[i]、及び補償制御信号GINI[i]がローレベルになる。したがって、トランジスタTr1がオフ状態となり、第3容量素子の電極Ea1がデータ線14から電気的に分離される。また、トランジスタTr2〜Tr4がオフ状態となる。一方、駆動期間P3では発光制御信号GEL[i]がハイレベルになり、トランジスタTelがオン状態に変化して駆動トランジスタTdrからゲート電位Vgに応じた大きさの駆動電流Ielが電気光学素子Eに供給される。駆動トランジスタTdrが飽和領域にて動作すると仮定すると、駆動電流Ielは以下の式(4)で表現される電流値となる。式(4)における「β」は駆動トランジスタTdrの利得係数である。
Iel=(β/2)(Vgs−Vth)2……(4)
【0033】
駆動トランジスタTdrのソースは電源線17に接続されているから、式(4)における電圧Vgsはゲート電位Vgと高電源電位Velとの差分値(Vgs=Vel−Vg)である。駆動期間P3においてゲート電位Vgが式(3)で与えられることを考慮すると、式(4)は式(5)に変形される。
Iel=(β/2){Vel−(Vel−Vth−Vdata)−Vth}2
=(β/2)(Vdata)2 ……(5)
式(2)から理解されるように、駆動電流Ielは電位Vdataによって決定され、駆動トランジスタTdrの閾値電圧Vthには依存しない。したがって、各単位回路Uにおける駆動トランジスタTdrの閾値電圧Vthのバラツキを補償して各電気光学素子Eの階調(輝度)のムラを抑制することができる。
【0034】
以上に説明したように、本実施形態においては、補償期間P1とデータ書込期間P2とを異なる水平走査期間1Hに配置することができる。これにより、補償期間P1及びデータ書込期間P2の時間を長くすることができるので、正確に閾値電圧Vthを補償するとともに電圧Vdataを十分書き込むことができる。この結果、輝度ムラを無くすとともに表示階調の精度を向上させることが可能となる。
【0035】
次に、データ線14と単位回路Uのノード間のクロストークが、どの程度影響するかについて説明する。まず、比較例として、図14に示す従来の単位回路について検討する。図14において寄生容量C4は、データ線LとノードZ1との間に付随し、その容量値はCaである。また、寄生容量C5は、データ線LとノードZ2との間に付随し、その容量値はCbである。ここで、データ線14の電位の変動振幅をVampとして、第4容量C4による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVaとすると、変動電圧ΔVaは、Ca、Cc、Ch1+Ch2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVaは、以下に示す式(6)で与えられる。
【数1】
【0036】
Caが、Cc、Ch1、及びCh2と比較して非常に小さいとすると、式(6)は以下に示す式(7)に変形することができる。
【数2】
【0037】
同様に、第5容量C5による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVbとすると、変動電圧ΔVbは、Cb、Ch1+Ch2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVbは、以下に示す式(8)で与えられる。
【数3】
【0038】
Cbが、Ch1及びCh2と比較して非常に小さいとすると、式(8)は以下に示す式(9)に変形することができる。
【数4】
【0039】
ここで、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgの変動電位をΔVgとすると、変動電位ΔVgは以下に示す式(10)で与えられる。
【数5】
【0040】
次に、図2に示す本実施形態ついて検討する。第4容量C4による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVa’とすると、変動電圧ΔVaは、Ca、Cc、Ch1+Ch2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVa’は、以下に示す式(11)で与えられる。
【数6】
【0041】
CaがCh1と比較して非常に小さいとすると、式(11)は以下に示す式(12)に変形することができる。
【数7】
【0042】
同様に、第5容量C5による駆動トランジスタTdrのゲート電位の変動電圧をΔVb’とすると、変動電圧ΔVb’は、Cb、Cc、Ch1、及びCh2の容量比により分圧される。したがって、変動電圧ΔVb’は、以下に示す式(13)で与えられる。
【数8】
【0043】
ここで、駆動トランジスタTdrのゲート電位Vgの変動電位をΔVg’とすると、変動電位ΔVg’は以下に示す式(14)で与えられる。
【数9】
【0044】
次に、クロストークの比較を行う。Cc=Ch1=Ch2=Cとすると式(10)及び式(14)は、以下に示す式(15)及び式(16)に変形され、さらに単位回路Uにおける構成要素の配置によって大略Ca=4Cbであるので、式(15)及び式(16)は式(17)及び(18)に変形することができる。
【数10】
【0045】
式(17)と式(18)を比較すると、図14に示す単位回路と比較して図2に示す本実施形態の単位回路Uは、クロストークの影響を約1/3に低減できることが分かる。これにより、データ線14の電位が変動してもクロストークの影響を受け難い単位回路Uを提供することができる。
このように、第1〜第3容量素子C1〜C3をパイ型に接続して、第1容量素子C1及び第2容量素子C2をノードZ1及びノードZ2に設けることによって、トランジスタTr1のソース・ドレイン間の容量Cdsによって発生するクロストークを低減することができる。さらに、第1容量素子C1の容量値Ch1、第2容量素子C2の容量値Ch2、及び第3容量素子C3の容量値Ccを等しく設定することによって、ノードZ1及びノードZ2の各合成容量の大きさを最大にすることができる。これによって、クロストークの影響をより一層低減することができる。
また、上述したクロストークは、ある単位回路Uとこれにデータ電位を供給するデータ線14との間を問題としたが、当該単位回路Uと隣接する単位回路Uのデータ線14との間にも同様の問題があるが、本実施形態の単位回路Uを採用することによって、隣接する単位回路Uのデータ線14からのクロストークも同様に低減することができる。
【0046】
<2.単位回路Uの態様>
次に、上述した実施形態の単位回路Uの各種の態様について説明する。
(1)変形例1
図8に単位回路U1を示す。この単位回路U1では、トランジスタTr2とトランジスタTr3の各ゲートに異なる信号が供給される。この例では、第2制御線123に第2補償制御信号GINI2[i]が供給され、第5制御線125には第1補償制御信号GINI1[i]が供給される。単位回路U1の動作は、初期化期間P0、補償期間P1、データ書込期間P2、及び駆動期間P3では、上述した実施形態と同様であり、第1補償制御信号GINI1[i]及び第2補償制御信号GINI2[i]として、上述した補償制御信号GINIが供給される(図3参照)。
【0047】
電気光学装置Dの出荷前には各種の検査を行うが、この検査の一つとして第1容量素子C1と第3容量素子C3との短絡を検査する。検査期間において、走査信号GWRT[i]、第1補償制御信号GINI1[i]及び初期化信号GPRE[i]はハイレベルとなり、発光制御信号GEL[i]及び第2補償制御信号GINI2[i]はローレベルとなる。これにより、トランジスタTr1、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオン状態となる。仮に、第1容量素子C1の電極Ea1及び電極Ea2が短絡していれば、データ線14の電位が高電源電位Velとなる。また、仮に第3容量素子C3の電極Ec1及び電極Ec2が短絡していれば、データ線14の電位が初期化電位VSTとなる。したがって、データ線14の電位を測定することによって第1容量素子C1及び第3容量素子C3の短絡を検出することができる。このように単位回路U1によれば検査を容易に実行することが可能となる。
【0048】
(2)変形例2
図9に単位回路U2を示す。この単位回路U2は、初期化電位VSTを供給する電源線とトランジスタTr4の一方の入力端子との間にトランジスタTr2を設けた点を除いて、図2に示す実施形態の単位回路Uと同様に構成されている。この単位回路U2においても、実施形態と同様の信号を第1〜第4制御線121〜124に供給することにより、初期化期間P0において第3容量素子C3の電荷を放電させ、補償期間P1において閾値電圧Vthを第2容量素子C2に保持させ、データ書込期間P2において第3容量素子C3をカップリング容量として作用させてデータ電位に応じた電位を駆動トランジスタTdrのゲートに印加して保持させることができる。そして、駆動期間P3において、閾値電圧Vthを補償した大きさの駆動電流Ielを電気光学素子Eに供給することができる。
【0049】
(3)変形例3
図10に単位回路U1を示す。この単位回路U1では、トランジスタTr2とトランジスタTr3の各ゲートに異なる信号が供給される。この例では、第2制御線123に第2補償制御信号GINI2[i]が供給され、第5制御線125には第1補償制御信号GINI1[i]が供給される。単位回路U1の動作は、初期化期間P0、補償期間P1、データ書込期間P2、及び駆動期間P3では、上述した実施形態と同様であり、第1補償制御信号GINI1[i]及び第2補償制御信号GINI2[i]として、上述した補償制御信号GINIが供給される(図3参照)。
そして、検査期間においては、まず、走査信号GWRT[i]をハイレベルとし、発光制御信号GEL[i]、第1補償制御信号GINI1[i]、第2補償制御信号GINI2[i]及び初期化信号GPRE[i]をローレベルとする。これにより、トランジスタTr1がオン状態となり、トランジスタTr2、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオフ状態となる。仮に、第1容量素子C1の電極Ea1及び電極Ea2が短絡していれば、データ線14の電位が高電源電位Velとなる。したがって、データ線14の電位を測定することによって第1容量素子C1の短絡を検出することができる。
【0050】
次に、第3容量素子C3の短絡を検査する。第1に、走査信号GWRT[i]及び発光制御信号GEL[i]をローレベルとし、第1補償制御信号GINI1[i]、第2補償制御信号GINI2[i]及び初期化信号GPRE[i]をハイレベルとする。これにより、トランジスタTr1及び発光制御トランジスタTelがオフ状態となり、トランジスタTr2、トランジスタTr3、及びトランジスタTr4がオン状態となる。このとき、第3容量素子C3の電極Ec1及び電極Ec2の電位は、初期化電位VSTとなる。
第2に、走査信号GWRT[i]及び第1補償制御信号GINI1[i]をハイレベルとし、発光制御信号GEL[i]、第2補償制御信号GINI2[i]及び初期化信号GPRE[i]をローレベルとする。これにより、トランジスタTr1及びトランジスタTr3がオン状態となり、発光制御トランジスタTel、トランジスタTr2、及びトランジスタTr4がオフ状態となる。仮に、第3容量素子C3が短絡していれば、電極Ec1の電位は「Vel−Vth」に収束し、短絡していなければ初期化電位VSTとなる。したがって、データ線14の電位を検出することによって第1容量素子C1の短絡を検出することができる。
【0051】
以上の各形態には様々な変形を加えることができる。具体的な変形の態様を例示すれば以下の通りである。なお、以下の各態様を適宜に組み合わせてもよい。
単位回路Uの具体的な構成は以上の例示に限定されない。例えば、単位回路Uを構成する各トランジスタの導電型は適宜に変更される。また、発光制御トランジスタTelは適宜に省略される。
また、上述した実施形態において、電気光学素子EとしてOLED素子を例示したが、本発明の電子装置に採用される電気光学素子(被駆動素子)はこれに限定されない。例えば、OLED素子に代えて、無機EL素子や、フィールド・エミッション(FE)素子、表面導電型エミッション(SE:Surface-conduction Electron-emitter)素子、弾道電子放出(BS:Ballistic electron Surface emitting)素子、LED(Light Emitting Diode)素子といった様々な自発光素子、さらには液晶素子や電気泳動素子やエレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を利用することができる。また、本発明は、バイオチップなどのセンシング装置にも適用される。
【0052】
<3.応用例>
次に、本発明に係る電子装置(電気光学装置)を利用した電子機器について説明する。図11ないし図13には、以上に説明した何れかの形態に係る電子装置Dを表示装置として採用した電子機器の形態が図示されている。
【0053】
図11は、以上の各形態に係る電子装置Dを採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電子装置Dと、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。電子装置DはOLED素子を電気光学素子Eとして使用しているので、視野角が広く見易い画面を表示できる。
【0054】
図12に、以上の各形態に係る電子装置Dを適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電子装置Dとを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電子装置Dに表示される画面がスクロールされる。
【0055】
図13に、以上の各形態に係る電子装置Dを適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002と、各種の画像を表示する電子装置Dとを備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった様々な情報が電子装置Dに表示される。
【0056】
なお、本発明に係る電子装置が適用される電子機器としては、図11から図13に示した機器のほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。また、本発明に係る電子装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光書込み型のプリンタや電子複写機といった画像形成装置においては、用紙などの記録材に形成されるべき画像に応じて感光体を露光する書込みヘッドが使用されるが、この種の書込みヘッドとしても本発明の電子装置は利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る電子装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ひとつの単位回路Uの構成を示す回路図である。
【図3】電子装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】初期化期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図5】補償期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図6】データ書込期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図7】駆動期間における単位回路の様子を示す回路図である。
【図8】変形例1に係る単位回路U1の構成を示す回路図である。
【図9】変形例2に係る単位回路U2の構成を示す回路図である。
【図10】変形例3に係る単位回路U3の構成を示す回路図である。
【図11】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図12】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図14】従来の単位回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0058】
D……電子装置、U,U1〜U3……単位回路、E……電気光学素子、10……素子アレイ部、12……走査線、121……第1制御線、122……第2制御線、123……第3制御線、124……第4制御線、125……第5制御線、14……データ線、17……電源線、22……走査線駆動回路、24……データ線駆動回路、C1……第1容量素子、C2……第2容量素子、C3……第3容量素子、Ea1,Ea2,Eb1,Eb2,Ec1,Ec2……電極、Tdr……駆動トランジスタ、Tel……発光制御トランジスタ、Tr1,Tr2,Tr3,Tr4……トランジスタ、P0……初期化期間、P1……補償期間、P2……データ書込期間、P3……駆動期間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子を備えた単位回路であって、
第1電極と第2電極とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、
第3電極と第4電極とを備え、前記第3電極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4電極に固定の電位が供給される第2容量素子と、
第5電極と第6電極とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、
ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、
書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子と、
初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段と、
補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段と、
を備えたことを特徴とする単位回路。
【請求項2】
前記初期化手段は、前記初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させるとともに、前記第2のノードに初期化電位を供給することを特徴とする請求項1に記載の単位回路。
【請求項3】
前記初期化手段は、
前記初期化電位を供給する電位線と前記第1のノードとの間に設けられた第2スイッチング素子と、
一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子と、
前記電位線と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の単位回路。
【請求項4】
前記初期化手段は、
一方の入力端子が前記初期化電位を供給する電位線と電気的に接続された第2スイッチング素子と、
一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子の他方の入力端子と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の単位回路。
【請求項5】
前記初期化手段の前記第3スイッチング素子は、その他方の入力端子が前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続されており、前記補償期間においてオン状態となり、前記補償手段と兼用されることを特徴とする請求項3又は4に記載の単位回路。
【請求項6】
電源電位を供給する電源線を備え、前記駆動トランジスタのソース、前記第1容量素子の前記第2電極、及び前記第2容量素子の前記第4電極が前記電源線と電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の単位回路。
【請求項7】
前記駆動トランジスタと前記電気光学素子とを結ぶ電気的な経路に設けられ、前記駆動期間においてオン状態となり、前記初期化期間、前記補償期間、前記書込期間においてオフ状態となる発光制御スイッチング素子を備えることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の単位回路。
【請求項8】
前記第1容量素子、前記第2容量素子、及び前記第3容量素子の各容量値を等しく設定したことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の単位回路。
【請求項9】
複数のデータ線と複数の単位回路とを含み、
前記複数の単位回路の各々は、
駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子と、
第1電極と第2電極とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、
第3電極と第4電極とを備え、前記第3電極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4電極に固定の電位が供給される第2容量素子と、
第5電極と第6電極とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、
ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、
書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子と、
初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段と、
補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を具備することを特徴とする電子機器。
【請求項1】
駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子を備えた単位回路であって、
第1電極と第2電極とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、
第3電極と第4電極とを備え、前記第3電極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4電極に固定の電位が供給される第2容量素子と、
第5電極と第6電極とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、
ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、
書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子と、
初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段と、
補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段と、
を備えたことを特徴とする単位回路。
【請求項2】
前記初期化手段は、前記初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させるとともに、前記第2のノードに初期化電位を供給することを特徴とする請求項1に記載の単位回路。
【請求項3】
前記初期化手段は、
前記初期化電位を供給する電位線と前記第1のノードとの間に設けられた第2スイッチング素子と、
一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子と、
前記電位線と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の単位回路。
【請求項4】
前記初期化手段は、
一方の入力端子が前記初期化電位を供給する電位線と電気的に接続された第2スイッチング素子と、
一方の入力端子が前記第2のノードに電気的に接続された第3スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子の他方の入力端子と前記第3スイッチング素子の他方の入力端子との間に設けられた第4スイッチング素子と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の単位回路。
【請求項5】
前記初期化手段の前記第3スイッチング素子は、その他方の入力端子が前記駆動トランジスタのドレインと電気的に接続されており、前記補償期間においてオン状態となり、前記補償手段と兼用されることを特徴とする請求項3又は4に記載の単位回路。
【請求項6】
電源電位を供給する電源線を備え、前記駆動トランジスタのソース、前記第1容量素子の前記第2電極、及び前記第2容量素子の前記第4電極が前記電源線と電気的に接続されることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の単位回路。
【請求項7】
前記駆動トランジスタと前記電気光学素子とを結ぶ電気的な経路に設けられ、前記駆動期間においてオン状態となり、前記初期化期間、前記補償期間、前記書込期間においてオフ状態となる発光制御スイッチング素子を備えることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の単位回路。
【請求項8】
前記第1容量素子、前記第2容量素子、及び前記第3容量素子の各容量値を等しく設定したことを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の単位回路。
【請求項9】
複数のデータ線と複数の単位回路とを含み、
前記複数の単位回路の各々は、
駆動電流の大きさに応じた光量で発光する電気光学素子と、
第1電極と第2電極とを備え、前記第1電極が第1のノードに電気的に接続され、前記第2電極に固定の電位が供給される第1容量素子と、
第3電極と第4電極とを備え、前記第3電極が第2のノードに電気的に接続され、前記第4電極に固定の電位が供給される第2容量素子と、
第5電極と第6電極とを備え、前記第5電極が前記第1のノードに電気的に接続され、前記第6電極が前記第2のノードに接続される第3の容量素子と、
ゲートが前記第2のノードと電気的に接続され、前記駆動電流を出力する駆動トランジスタと、
書込期間においてオン状態となり、データ線を介して供給されるデータ電位を前記第1のノードに供給する第1スイッチング素子と、
初期化期間において前記第3容量素子に蓄積された電荷を放電させる初期化手段と、
補償期間において前記駆動トランジスタのソースとドレインとを電気的に接続する補償手段と、
を備えたことを特徴とする電気光学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気光学装置を具備することを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−316462(P2007−316462A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147741(P2006−147741)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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