説明

単層シール又は多層シールのシール層及びその製造方法

多層シール又は単層シールのシール層及びその製造方法。
本発明は、支持領域及びシール領域を有する単層シール又は多層シールのシール層に関する。発明に従って、支持領域及びシール領域は、打ち抜き加工されたすべり面によって構成され、このすべり面はコスト効率よく1回の打ち抜き加工で製造し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持領域及びシール領域を有する金属製単層シール又は金属製多層シールのシール層に関する。更に、本発明は、このようなシール又はシール層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特にシリンダヘッドガスケットの場合は、多層スチールシールが実際には非常に広く普及している。このスチールシールは、一般に、カバー層としてのばね板スチールの薄いビード片と、これらのビード片の間に配置されカバー層のビードを支持する役割を果たす金属板の担体片と、の組み合わせにより構成される。
【0003】
多層シールにおいて用いられるもののように、支承と組み合わせられるビードの使用可能な弾性は比較的小さい。
【0004】
例えば、多層シールにおいて支持面が負荷から解放されている場合には、ばね金属板片がビードの弾性により担体層から持ち上げられた状態になる。
【0005】
ばね金属板装置内の多層シールのシール層における従来のビードは、上側及び下側でのシール線のオフセット配置により、エンジンが動作しているときに角運動が生じるという更に別の不都合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、容易にかつコスト効率よく製造できる金属製のシール又はシール層を開示するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は本発明に従って達成され、少なくとも1つの支持領域及び1つのシール領域が、金属板の元々の厚さに比べて大きな厚さを有する打ち抜き加工されたすべり面により具体化される。
【0008】
打ち抜き加工されたすべり面として前記支持領域及びシール領域を具体化することは、該支持及びシール工程がシール又はシール層において行われるという利点を有する。前記すべり面は、打ち抜き加工され、金属板の元々の厚さに比べて大きい厚さを有して具体化されるので、後者は、コスト効率よく製造でき、また、前記すべり面の領域は前記打ち抜き加工により加工硬化されるので、非常に安定する。
【0009】
1つの好ましい実施の形態によれば、前記少なくとも1つのすべり面は、横打ち抜き加工と垂直放出打ち抜き加工との組み合わせにより形成され、この組み合わせにおいて、前記すべり面の領域が相対的に大きな材料厚さとなるように、一定の材料厚さを有する1枚の金属板が横方向に圧縮される。
【0010】
横打ち抜き加工及び垂直放出打ち抜き加工によりすべり面を形成することは、該打ち抜き加工工程の間、追加の支持が不要で、その結果として、低い打ち抜き加工力ですべり面を形成できるという利点を有する。前記支持は、該支持のために過剰な打ち抜き加工力が必要とならないように、それ自体打ち抜き加工されたすべり面により形成される。横打ち抜き加工及び垂直放出打ち抜き加工により形成することのその他の利点は、方法の請求項に基づいて、以下に、特定し、説明する。
【0011】
前記支持及びシール領域を、打ち抜き加工されたすべり面により形成することは、全シール又はシール層を単一の打ち抜き加工工程にて形成できるという利点もある。このことは、特に、カバー層及び一枚の担体板スチールにより構成される多層スチールシールに比べて、極めてコスト効率がよい。本発明によるシール層がばね板スチール層と組み合わされた時でさえ、このことは、3層多層シールに比べて、非常に費用節約となる。
【0012】
1つの好ましい実施の形態によれば、少なくとも1つのすべり面の上側及び/又は下側には、1つの段差が抜き加工される。前記段差は、規定されたシール線が形成され、及び該段差の配列及び高さに依存して前記すべり面の弾性が設定できるという大きな利点を有している。
【0013】
ここで、前記少なくとも1つのすべり面と前記シールの前記元々の表面との間の前記接合部が少なくとも1つの相対的に薄いヒンジ点により形成されている場合は有利である。
【0014】
前記相対的に薄いヒンジ点により、前記シール又は前記シール層の取り付けの間、前記すべり面の方向を定めておくことができる。前記すべり面内に例えば1つの段差が打ち抜き加工されると、前記すべり面は、傾いた位置をとり、該すべり面を、前記シールの元々の表面の残りの部分に接続する前記相対的に薄いヒンジ点がこの変形を吸収する。
【0015】
前記打ち抜き加工された段差の形状は、取付けられた状態で、支持領域と弾性的にプレストレスされたシール線を備えたすべり面が弾性的に湾曲したものとなる。前記すべり面に後で塗布されるコーティングに依存してシール縁形成を選択することが有利である。
【0016】
前記段差は、直角に打ち抜き加工するのではなく、鈍角に打ち抜き加工し、この角度は、選択したコーティングの硬度及び耐摩耗性に応じて選択することが有利である。
【0017】
すべり面の上側と下側に段差が打ち抜き加工されている1つの実施の形態によれば、これらの段差を、シール縁が平行となるように配置することができる。このことは、シール縁の長さに亘って同一の押圧力分布を有し、従って該シール縁の長さに亘る全ての位置ですべり面の一定の弾性を有する、シールの領域又は全体で利点がある。
【0018】
すべり面の上側及び下側に段差が形成されれば、代わりに、シール縁が平行ではないように段差を押圧することも可能である。上側及び下側でのシール縁間の距離の変動により、シール用すべり面の弾性をシール縁の長さに亘って設定することが可能となる。このことは、例えば、シール縁の長さに亘って異なる圧力分布が存在し、一方でエンジンが冷えているときと、他方でエンジンが熱いときとの異なる温度条件のために、同一の弾性が、シール縁の長さに亘って必ずしも最適の値を示さず、位置に応じて異なる弾性が必要となる、シリンダヘッドガスケット等に適用する場合に有利である。
【0019】
更に、弾性を設定するための段差の打ち抜きにおいて、互いに面平行であるか又は傾けて打ち抜き加工することが有利である。この実施の形態は、すべり面の上側及び下側に必ずしも段差を必要とせず、むしろすべり面の一方の側だけに段差が打ち抜き加工されるときにも可能である。
【0020】
すべり面の支持領域は、該すべり面の内側又は外側に配置できる。必要に応じて、一方又は他方の実施の形態が有利である。例えば、シリンダヘッドガスケットの場合には、燃焼室間の両側の外側に支持を選択することが有利であり、一方、カラースリーブを有するエンジンの場合には、支持がカラーの背後の筐体上にあり、すべり面がカラーの上だけに弾性的に押圧されるように支持を選択することが有利である。
【0021】
支持領域をすべり面の両面上に設け、該支持領域を異なる材料厚さを有するように構成することも可能である。シリンダヘッドとシリンダブロックとの間にクランプされるシールは、取り付けられた状態でこれらの構成部品に、程度が部分的に異なる変形を生じ、その結果、部分的に多少の円錐形状も生じる。
【0022】
負荷のあるすべり面の幅を5〜6mmとすれば、このすべり面の断面の圧力分布は、外部の支持と内部の支持、即ち、すべり面の支持領域、とが異なる厚さで具体化されるという事実によって、選択的な態様で分布することができる。
【0023】
特に、シール又はシール層がシリンダヘッドガスケットとして用いられる場合には、すべり面が燃焼室の開口の間で合して、その後再び分岐することが有利である。
【0024】
更に別の有利な実施の形態によれば、すべり面の非支持領域が、一方の側又は両側に凹部を有すれば、好都合である。このことにより、湾曲している断面の断面係数を変更することにより、弾性・塑性変形曲線を選択的に設定できる。
【0025】
このシール又はシール層は、シリンダヘッドガスケット又はフランジシールとして有利に用いられる。双方の型のシールは、極めて好都合で速い形成、特に単一の打ち抜き加工工程による形成、の利点が莫大な費用節約を齎すように、量産品を構成する。
【0026】
上記目的は、上述したシール又はシール層を形成するための方法によっても達成される。この方法は、一定の材料厚さを有する金属板シール層が、打ち抜き加工具中に挿入され、前記シール又は前記シール層のすべり面が、打ち抜き加工により形成されることを特徴とする。
【0027】
前記すべり面は、単一の打ち抜き加工工程により形成されることが好ましい。
【0028】
前記すべり面は、横打ち抜き加工及び垂直放出打ち抜き加工の組み合わせにより形成されることが有利である。そのために、すべり面を生成するべき範囲での打ち抜き工程の間、上側部分及び下側部分の間の空間が、最大の打ち抜き加工力が存在するときに、完全に充填される、上側部分及び下側部分を有する打ち抜き工具を使用することが有利である。
【0029】
この目的のために、突起又は爪ファスナーを、前記打ち抜き加工具の上部及び下部、形成されるすべり面の両面、の双方上に形成することが有利である。
【0030】
横打ち抜き加工と通例の垂直放出打ち抜き加工との組み合わせにより、爪ファスナーの間の領域の打ち抜き加工鋳型の内部に非常に高い圧力が生じるように、終端として作用する爪ファスナーを両側に生じる。この高い圧力が、鋳型の表面に対して、打ち抜き加工材料を押圧し、従って、組み合わされた打ち抜き加工工程の終了時の校正を自動的に行う。
【0031】
校正を伴い、実際に打ち抜き加工されるシール又はシール層に隣接する追加の支持を用いない、この組み合わされた打ち抜き加工方法は、次の3つの機能を単一の工程中で実施する。
【0032】
1.爪ファスナーにより、両側に打ち抜き加工されるすべり面の分離。
2.爪ファスナー間、即ち、分離される領域の内側方向の、材料の排除、及び、従って、材料を厚くすること。
3.充填により成型された領域の較正。
【0033】
3個の機能の全てが、単一の工程のみにより実施できる。この工程においては、摩擦力が最小であるために単一の打ち抜き加工力のみが必要である。
【0034】
打ち抜き加工具の上部及び下部の間に余分な支持が何ら必要ないので、該支持のために何の過剰な押圧力も必要とされない。支持が何ら必要とされないので、該支持の望ましくない局所的変形による厚さの誤差も入り込み得ないことも事実である。この方法の更に別の利点は、追加の支持のために何の空間も必要とされず、従って前記すべり面のどのような所望の外形も可能であるので、シリンダヘッドガスケットの複雑な外形が存在する場合でも、すべり面を適用できることも事実である。放出工程中に大きな摩擦力が何ら発生しないように、また、小さな打ち抜き加工力で全体の変形を実行できるように、全体の負荷、即ち、完全な押圧力、は、大きな打ち抜き加工表面のための打ち抜き加工工程の終了時にのみ発生する。
【0035】
シール又はシール層のためのブランクの場合、打ち抜き加工工程の前に、燃焼室、流体線及びねじのための開口を打ち抜くことが既に可能である。しかし、これらの開口を第2の打ち抜き工程又は前記打ち抜き加工工程との組み合わせで打ち抜くことも可能である。
【0036】
図及び従属請求項の以下の記述中に更に別の利点が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下、本発明を、図に示された典型的な実施の形態に基づいて、詳細に説明する。
【図1】上から見たシリンダヘッドガスケットを示す図。
【図2】上から見たフランジシールを示す図。
【図3】図1の断面A−Aを20倍に拡大して示す図。
【図4】図1の断面B−Bを20倍に拡大して示す図。
【図5】図1の断面C1−C1を20倍に拡大して示す図。
【図6】図1の断面C2−C2を20倍に拡大して示す図。
【図7A】シリンダヘッドとエンジンブロックとの間のシールの領域におけるカラースリーブモータの詳細の概略断面を示す図。
【図7B】取り付け前の図7Aにて用いられるシールを示す図。
【図7C】図7Bに示すシールの別の実施の形態を示す図。
【図8A】打ち抜き加工具の断面を示す図。
【図8B】図8Aの打ち抜き加工具を用いて成形されたシール又はシール層を示す図。
【図9A】更に別の打ち抜き加工具の断面を示す図。
【図9B】図9Aに従う打ち抜き加工具で成形されたシール又はシール層を示す図。
【図10】下側に凹部を有するすべり面を形成するための打ち抜き加工具の断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、上から見た4シリンダエンジン用のシリンダヘッドガスケットを示す。このシリンダヘッドガスケットは、図示した典型的な実施の形態において、金属製の単層シール、又は金属製の多層シールのシール層として、具体化できる。このシリンダヘッドガスケットは、4個の燃焼室開口1と、複数個のねじ開口2と、流体線(即ち、水と油の接続線)用の開口3とを有する。
【0039】
特に、燃焼室開口1は、シール領域4及び支持領域5により囲まれていなければならず、この支持領域5は、シール領域4の弾性を維持する役割を果たす。図1において、支持領域5及びシール領域4は、破線として示されている。
【0040】
図2は、シール又はシール層の異なる実施の形態を示し、今回はフランジシールとしての実施の形態である。該フランジシールは、流体又は気体の輸送のための開口6を中心に有し、この開口6も支持領域5及びシール領域4に取り囲まれている。後者は、ここでも概略的に破線で示されている。
【0041】
更に、フランジシールは、ねじによる固定用としてだけの役割を果たす開口7を両側に有する。
【0042】
図3は、図1の断面A−Aを20倍に拡大して示す。断面A−Aの右側は、成形されていない断面7におけるシール又はシール層を示す。成形されていない状態においては、金属板層は高さhを有する。厚くされたすべり面9は、相対的に狭い接続ウェブ8を介して成形されていないシール用金属板片7に接続されている。厚くされたすべり面9は、打ち抜き加工で製造され、元々の断面hから断面h+Dhに厚くされる。すべり面9は、特に材料厚さh+Dhに厚くされた領域たる支持領域5と、シール領域4とを有する。
【0043】
すべり面が取り付けられた状態で弾性的にプレストレスされ、その形成により規定された領域でシール効果を引き起こす、厚くされたすべり面9のそれらの領域をシール領域4と呼ぶ。当業者にとって、各支持領域5においてもシール効果が達成されることは自明である。図示された典型的な実施の形態においては、当業者は、取り付け後、図3において、右側の支持領域5も下側で、特に左側の領域において、弾性的にプレストレスされ、従って、シール効果に寄与することを理解できる。支持領域5の領域に配置されたこれらのシール領域は、以下の典型的な実施の形態及び図においては、参照記号4を備えてはいない。
【0044】
図3Bは、図3Aに表示され説明されたすべり面の別の実施形態を示す。本実施形態では、図3Bに従い、凹部13は、図3Aに示された様に段差10の下に整合せずに配置されているのではなく、外側へ向かって配置され、及び寸法L1とL2の凹部13が段差10又はシール領域4の下側に、図3Bの表示に従って配置されている。寸法L1とL2は同じであってよく、好ましくは、寸法が凹部13の中央に配置されるよう、凹部13が段差10又はシール領域4の下側に配置される。しかし、段差の弾性をどの程度にしたいかにより、凹部13はさらに支持領域5に入り込んでよい。つまり寸法L1又はL2はより大きく選択されてよい。同様に、弾性を生成するために、寸法L1とL2を同一ではなく選択することも可能である。
【0045】
図3Cは、図3Bに表示したすべり面の取付け後の図である。取付け高さ及びシリンダヘッドとエンジンブロック間のシールクリアランスは、H+σHであり、支持領域5によってすべり面両側が決定される。右側の支持領域(図3B参照)が左側の支持領域に比べて高さσSだけ下側へずれているため、右側の支持領域の取付け後に再び合計σSだけ左側の支持領域5高さに整合される。2つの支持領域L1、L及びL2の間の領域は、その際に弾性変形する。セクションL1とL2内には、それぞれ向かい合っている凹部13にくぼみ30が生じ、このくぼみは、シール領域4又はシール縁11がシリンダヘッド又はエンジンブロックに対して弾性的にプレストレスされるようプレスされることに追加的に寄与する。取付け時の弾性変形により、自動的に、くぼみ30及び弾性的にプレストレスされたシール縁11又はシール領域4によって、ある種のビード円頂が生じ、これが最適なシール効果をもたらす。くぼみ30はさらに、シール又はシール層全体のコーティングを、取付け後及び作動後にくぼみ30内に集めることができ、さらにそのことによって、シール縁11がある程度摩耗した場合に、常に直接隣接してくぼみ30内にコーティングがシール効果のために使用されるという利点を備えている。
【0046】
支持領域5の下面、つまりストッパー領域を短縮することにより、取付け時に残りのストッパー面又は支持領域5の面に対してシール縁11の曲がりが生じるように、シール縁11下部の慣性モーメントが選択的に低減される。これにより、追加的な適合、及び取付け後のシール縁11又はシール領域4の弾性的なプリテンションの上昇がもたらされる。図3B及び3Cに記述されたように、取付け時には弾性的な小さいビード円頂が支持領域5の支持面の終端に形成され、その特性はすでに打ち抜き加工プロセスで決定される。これは、図3B及び3Cに従った構造でも実施することができる。
【0047】
厚くされた高さh+Dhに比べて鉛直のオフセットDsを各表面に形成する段差10が、すべり面9の上側及び下側の両方に打ち抜き加工されている。規定されたシール縁11が、段差10により、シール領域4の上に設けられている。段差10は、支持領域5との接合部において鉛直ではなく、むしろ、シール又はシール層に後で塗布されるコーティングに対する角度が調整された斜面12により形成される。
【0048】
更に、より高い程度の弾性をすべり面に与える凹部13が、すべり面9の両側に設けられている。これらの凹部13は、それらが段差10の間に配置され、有利には、外側で段差10と整列するように配置されている。
【0049】
これらの段差は、寸法Lだけ互いに隔てられて配置されている。寸法Lの選択が大きくなればなるほど、すべり面9は、より柔らかくかつより弾性的になる。凹部13は、すべり面を更により柔らかくかつより弾性的にする。寸法L又は凹部の配置は、どの様な弾性が必要であるかに応じて、シール縁11又はシール領域4の長さに亘って変化し得る。
【0050】
図3においては、シール又はシール層が変形していない状態での断面A−Aが示されている。取り付けられた状態においては、シール領域4が弾性的にプレストレスされて段差10を押圧するために、すべり面9は弾性的に変形する。この変形は、接続ウェブ8により吸収される。従って、接続ウェブ8は、すべり面9と変形しないシール用金属板片7との間のヒンジ点として作用する。
【0051】
図4は、図1の断面B−Bを示す。図4は、図3におけるものと本質的に同じすべり面9の形成を示す。ここで、すべり面9は、詳しくは、図4に従って、接続ウェブ8を介して変形しないシール用金属板片7に両側で接続されている。
【0052】
図5は、図1の断面C1−C1を示し、また、20倍に拡大して示している。図5の断面は、2つの燃焼室開口1の間の領域を示している。シールすべり面9の構成は、図3及び図4に示した構成と本質的に同様である。両側に省略されているものは、接続ウェブ8を介して変形しない金属板片7への接続だけである。このことは、燃焼室開口の間の領域において、すべり面が共に延び、即ち、接続され、そして再び分岐していることを示している。
【0053】
図6は、燃焼室開口1の間の領域におけるシール又はシール層の代替の実施の形態を示す。図6において、断面C2−C2は、やはり20倍に拡大して示されている。このシールすべり面は、この領域で、打ち抜き加工により厚さh+Dhに厚くされている。高さの差Dsを有し外側に向いている段差10が、下側の両側に打ち抜き加工されている。鉛直のオフセットDsを有する2個の段差10も、上側に打ち抜き加工されている。これらの上側の段差は、凹部がそれらの間に形成されるように、内側に向いている。弾性的な湾曲を引き起こすために、下側の段差10は、上側の段差10の内側、即ち、凹部の領域、に配置されている。下側の段差10の間の領域と、上側の段差10の外側の領域とは、支持領域5として機能する。すべり面の材料厚さは常にh+Dhである。
【0054】
すべり面9が2個の燃焼室開口の間に配置されていない場合には、下方の支持領域5は、すべり面9が図3〜図5に示すように再び形成されるように、分岐する。
【0055】
段差10が打ち抜き加工された結果として、シール領域4又はシール縁11が形成される。この典型的な実施の形態においては、段差10は、直角に打ち抜き加工される。
【0056】
図7Aは、カラースリーブを有するエンジンに用いられたときの本発明によるシール又はシール層の実施の形態を示し、図7Bは、取り付け前のシールのみを示す。
【0057】
図7Aは、エンジンブロック14、対応するスリーブカラー16を有するカラースリーブ15、関連付けられたシリンダヘッド17、及びそれらの間に配列された、カラースリーブモータの単層金属シールの細部を概略的に示す。右側の領域に、シール用金属板の変形しない領域7が見え、これは、次に、接続ウェブ8を介して厚くされたすべり面9に接続されている。
【0058】
すべり面9の形成は、図7Bを参照して以下に説明するが、図7Bは、図3〜図6と同様に、取付け前の状態のすべり面9を示す。2個の段差10が上側に打ち抜き加工され、1個の段差10が下側に打ち抜き加工されている。
【0059】
支持領域5が、下側の段差10と、すべり面9の上側の左側の段差10との間に形成されている。この領域で、すべり面9は、材料厚さh+Dhに厚くされている。
【0060】
シールの下側の支持領域5は、カラースリーブ15のカラー16の上に配置するように意図されてはいない。このため、凹部13が、支持領域5に隣り合ってシール下側に設けられる。そして、燃焼室1の方向に向けられたシール又はシール層の左側の領域だけが、カラースリーブ15のカラー16上に弾性的にプレストレスされた状態で載置されるように、燃焼空間の方向に向けられた段差10が真下凹部13の上側に設けられている。
【0061】
自由端の下側が、厚くされた支持領域5と同じレベルにあるため、カラースリーブ16の表面が支持領域5の下側より高いレベルにあるという事実によって、弾性のあるプレストレシングが達成される。
【0062】
支持領域5の右側で、シール又はシール層が、材料厚さh+Dh−Xを有している。材料厚さがXだけ小さくされた結果として、取り付けられた状態で、すべり面9は、右側の領域でやはり弾性的に変形し、右側の打ち抜き加工された段差10上で、規定されたシール領域4が形成される。
【0063】
支持領域5の左側では、凹部13と別の段差10とのために、自由端が、上側で相対的に薄くされている。スリーブカラー16の表面は、支持領域5が押圧するモータブロック14の表面よりも幾分高いレベルにあるので、該自由端は、スリーブカラー16の表面を、弾性的にプレストレスされて、押圧し、従って、更に別のシール領域4を形成する。
【0064】
図7Cは、図7Bの代替の実施の形態を示す。図7Cによる実施の形態も中心に支持領域を有する。ここで、凹部13が、下側で支持領域の右側に配置され、段差10が凹部13の上に配置されている。すべり面9の左側の部分は、やはり相対的に薄くされて、左側の外側の端部の材料厚さh+Dh−xを有している。
【0065】
この支持領域は、材料厚さh+Dhを有し、段差10もまた、支持領域5の右の上側で打ち抜き加工され、その材料は、下側でh+Dh−xに厚くされ、上側の段差10に対してオフセットされている。
【0066】
すべり面9の全てが、その後に、ヒンジ点8を介して、材料厚さDhの変形しないシール用金属板片7に接続されている。
【0067】
取り付けの間、支持領域5が、図7Aに示したようにエンジンブロック及びシリンダヘッド間のシールを支持する。
【0068】
左側の外側領域が、カラースリーブ15の表面上で弾性的にプレストレスされた態様で再び押圧される。カラースリーブ15の表面は、一般に、支持領域5がその上に支持される、周囲のエンジンブロックの表面より僅かに上に配置されるので、上記領域が押圧される。
【0069】
同様に、下側の段差10上にもシール領域4が形成されるように、材料厚さh+Dh−xを有するすべり面の右側領域が、取り付け後、弾性的にプレストレスされる。接続ウェブ8は、対応する変形を吸収する。このデザインは、すべり面9が支持領域の両側で上方に曲げられ、従って支持領域5に関して力の対称性が形成され、更に、支持領域5に作用する連続的なトルクが回避されるという利点を有している。
【0070】
図8Aは、本発明に係るシール又はシール層を製造するための、上側部分18及び下側部分19を有する打ち抜き加工具の概略図である。空洞21をそれらの間に規定する、爪ファスナーと称する、整列した突起20が、上側部分18の下面と下側部分19の上面に配置されている。突起20は、それぞれ、内側に、打ち抜き加工工程の間材料を横に加圧し、従って該材料を厚くする斜面22を備えている。接続ウェブ8を形成するために、前記突起は、それらの端部に、短い外側の斜面24に隣接する水平部23を有し、外側斜面24上に隣接する鉛直部25を有している。上側部分18の下側と下側部分19の上側との間の距離は、打ち抜き加工工程の終了位置での空洞21と空洞21の側との双方において、高さh+Dh、即ち、元々の金属板の厚さに厚くされた部分を加えた高さを有している。
【0071】
打ち抜き加工具の外形は、突起20の結果、特に斜面22の結果として、空洞21の領域で材料が横に加圧され、従って元々の金属板厚さhから厚さh+Dhに厚くされることを確実にする。打ち抜き加工される材料中への突起20の侵入は、打ち抜き加工段階初期の打ち抜き加工力により打ち勝つだけでよいので、比較的小さな打ち抜き加工力で、突起20が該材料に侵入する。突起20の外側には、この領域の厚くされた部分は、十分に回避され得るので、短い外側の斜面24と、隣接する鉛直の領域25とのみが設けられている。このことは、したがって、この領域においては横の方への排除は行われないので、鉛直の領域25により達成される。
【0072】
この短い外側の斜面24は、単に、シール用金属板片の変形しない領域7に接続ウェブ8を安定して接続することを達成する働きをする。
【0073】
図8Bは、図8Aに係る工具により製造されたシール又はシール層の基本図である。両側に材料厚さhを有するシール用金属板片の変形しない領域が配置される。すべり面9は、横打ち抜き加工により、材料厚さh+Dhに厚くされる。図8Aによる打ち抜き加工具において、下部の斜面22は上部の斜面22より長くされており、その結果、非対称のすべり面外形が形成され、弾力性のあるスプリングバックにより、すべり面が僅かに湾曲している。その結果、1個のシール領域4が底面の中央に形成され、2個のシール領域4が上面の両側に形成される。図示された典型的な実施の形態においては、元々の金属板の厚さは1.3mmである一方で、厚くされた領域では、すべり面9はh+Dh=1.48mmの材料厚さを有する。従って、厚くされた部分Dhは、0.18mmである。
【0074】
図9Aは、図8Aの示すものと同様な打ち抜き加工具を示す。ここで、上側と下側の両方で空洞21中に段差26が形成されている。図9は、図9Aに係る工具により形成されたすべり面9の領域におけるシールの帰結される断面を示す。
【0075】
シールすべり面9も、打ち抜き加工具中の段差26の結果として、上側と下側とに段差10を有する。段差10が、例えば、高さDs=0.08mmを有するとすると、全すべり面の肥厚化が、全体の材料厚さh+Dh=1.4mmまでのみ発生する。上側及び下側の段差10がオフセットされるデザインの結果として、上側と下側との間の内法は1.48mmであるが、図3〜図5について説明したように、すべり面9は、打ち抜き加工された段差10により弾性的に及び可塑的に変形し、支持領域5は、厚くされた領域h+Dhにより、この例によれば、1.4mmの材料厚さに形成される。
【0076】
図10は、図8Aに示した打ち抜き加工具とは、すべり面9の下側の凹部13を形成するための突起27が更に下部に設けられている点で異なる、別の打ち抜き加工具の断面を示す。
【0077】
このシールの製造は極めて単純で、従ってコスト効率がよい。一定の材料厚さを有する金属板層が、打ち抜き加工具中に挿入され、打ち抜き加工工程において、所望のすべり面9と外形とを有するシール層又はシールが形成される。このシールは、そのうえ、耐摩耗コーティングを単に追加的に備えることができる。
【0078】
このシールすべり面の外形の全ては、図中に示されていない場合であっても、例えば、傾いて打ち抜き加工された段差、又は上側のただ1個の段差、又は下側の1個の段差、又は複数の凹部は、1個の打ち抜き加工工程において形成される。各すべり面は、横打ち抜き加工により厚くされ、該すべり面の所望の外形が、打ち抜き加工具の上側部分及び下側部分の形成によって達成される。打ち抜き加工具の上側部分及び下側部分の間にすべり面9が形成される空洞は、打ち抜き加工工程で完全に充填され、その結果として校正も同時に生じ、したがって、すべり面9が所望の外形及び厚さで常に製造される。本発明によるシール又はシール層の形成のための追加の支持は不必要である。また、追加の支持によって、比較的大きな打ち抜き加工力が必要となり、追加的空間が取られてしまうであろうから、追加の支持は望ましくもない。
【0079】
本発明は、例示した典型的な実施の形態に限定されるものではなく、その代わりに、特に、打ち抜き加工された段差を有しない実施の形態、又は各場合に、上側及び下側にただ1個の段差をそれぞれ有する実施の形態も可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 燃焼室開口
2 ねじ開口
3 流体線のための開口
4 シール領域
5 支持領域
6 開口
7 シール用金属板片の変形しない断面
8 接続ウェブ
9 すべり面
10 段差
11 シール縁
12 斜面
13 凹部
14 エンジンブロック
15 カラースリーブ
16 スリーブカラー
17 シリンダヘッド
18 打ち抜き加工具の上側部分
19 打ち抜き加工具の下側部分
20 打ち抜き加工具の上側部分及び下側部分の突起、爪ファスナー
21 空洞
22 斜面
23 水平部
24 外側の斜面
25 鉛直の領域
26 段差
27 凹部のための突起





【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持領域(5)及び複数のシール領域(4)を有する金属製単層シール又は金属製多層シールのシール層において、
少なくとも1つの支持領域(5)及び1つのシール領域(4)が、金属板の元々の厚さに比べて大きな厚さを有する打ち抜き加工されたすべり面(9)により具体化されることを特徴とする単層シール又は多層シールのシール層。
【請求項2】
前記少なくとも1つのすべり面(9)は、横打ち抜き加工により、前記金属板の元々の厚さより大きな材料厚さを有することを特徴とする請求項1記載の単層シール又はシール層。
【請求項3】
前記少なくとも1つのすべり面(9)は、単一の打ち抜き加工工程により形成されたことを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項4】
少なくとも1つのすべり面(9)の上側及び/又は下側に、1つの段差(10)が打ち抜き加工されることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項5】
前記打ち抜き加工された段差(10)により、シール縁(11)が形成されていることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項6】
少なくとも1つの相対的に薄いヒンジ点又は接続ウェブ(8)により、前記少なくとも1つのすべり面(9)と、前記シールの元々の表面との間に接合部が形成されていることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項7】
前記シール縁(11)の変形は、前記すべり面に塗布されたコーティングの機能として具体化されることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項8】
前記すべり面(9)の前記上側及び前記下側に段差(10)が形成される場合、これらの段差(10)は、前記シール縁(11)が平行になるように打ち抜き加工されることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項9】
前記すべり面(9)の前記上側及び前記下側に段差(10)が形成される場合、これらの段差(10)は、前記シール縁(11)が平行にならないように打ち抜き加工されることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項10】
前記段差(10)は、面平行又は傾いた形状に打ち抜き加工されることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項11】
1つのすべり面の前記支持領域(5)は、前記すべり面(9)の前記内側又は前記外側に配置されていることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項12】
異なる材料厚さを有する支持領域(5)が各すべり面(9)の両面に設けられていることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項13】
1つのすべり面(9)の非支持領域は、一面又は両面に凹部(13)を有することを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項14】
複数のすべり面(9)が、シール又はシール層毎に形成されているとき、前記すべり面は接続されかつ分岐することを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項15】
前記シールは、少なくとも単一層のシリンダヘッドガスケット又はフランジシールであることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項16】
前記シール又はシール層全体が、単一の打ち抜き加工工程で形成し得ることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項17】
前記全シール又はシール層は、追加の機能のための追加の打ち抜き加工工程を用いて形成し得ることを特徴とする前記請求項の少なくとも1項記載の単層シール又はシール層。
【請求項18】
一定の材料厚さを有する金属板が中に挿入され、前記シール又はシール層の前記すべり面(9)が打ち抜き加工によって達成されることを特徴とする請求項1乃至17の何れか1項記載のシール又はシール層を製造する方法。
【請求項19】
前記すべり面(9)は単一の打ち抜き加工工程で形成されることを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記すべり面は、横打ち抜き加工と垂直放出打ち抜き加工との組み合わせにより形成されることを特徴とする請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
前記打ち抜き加工具は、前記打ち抜き加工工程の間、すべり面の領域の前記上側部分及び前記下側部分の間の空間が、最大の打ち抜き加工力が存在するときに、完全に充填されるために、上側部分及び下側部分を有していることを特徴とする請求項18乃至20の何れか1項記載の方法。
【請求項22】
前記打ち抜き加工具の前記上側部分及び前記下側部分は、形成されるすべり面の両側に、突起又は爪ファスナー(20)を有することを特徴とする請求項18乃至21の何れか1項記載の方法。
【請求項23】
前記打ち抜き加工工程の後にコーティングが施されることを特徴とする請求項18乃至22の何れか1項記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−521177(P2011−521177A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508801(P2011−508801)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056077
【国際公開番号】WO2009/138132
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(510301530)エスティーイー ゲゼルシャフト ファー ディクタングステクニック エムベーハー (1)
【Fターム(参考)】