説明

単球/マクロファージ阻害化合物を用いる補体活性化の脱感作

本発明は、これに限定されるものではないが、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、エマルジョン、及びコロイド製剤の組成物を含む医薬組成物の投与に起因する、C介在性偽アレルギー(CARPA)とも称される、補体活性化関連急性過敏症を予防、軽減、治療、又は管理するために設計された方法及び組成物に関する。本発明の方法は、特異的にマクロファージ及び/又は単球の活性を低減又は阻害し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する、1種又は複数の活性化合物を含有する有効量の1種又は複数の治療剤を投与することを含む。好ましい実施形態において、活性化合物はビスホスホネートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C介在性偽アレルギー(CARPA)とも称される、補体活性化関連急性過敏症を予防、軽減、治療、又は管理するために設計された方法及び組成物に関する。好ましい実施形態において、これに限定されるものではないが、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、エマルジョン、及びコロイド製剤中の組成物を含む医薬組成物投与に関連するCARPAが、予防、軽減、治療、又は管理される。本発明の方法は、特異的にマクロファージ及び/又は単球の活性を低減又は阻害し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する、製剤中に活性化合物を含有する有効量の1種又は複数の治療剤を投与することを含む。いくつかの実施形態において、活性化合物は、ビスホスホネートである。より特定の実施形態において、ビスホスホネートは、アレンドロネートである。
【背景技術】
【0002】
医薬組成物は、この数十年の間にヒトの生存率を変えてきた。しかしながら、哺乳動物に投与されるとき、多くの薬剤組成物は一部の患者に有害反応を引き起こす。一部の例では、このアレルギー反応は重篤であり、生命にかかわる可能性がある。近年、強い有害反応を伴う医薬組成物の例は、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、エマルジョン、及びコロイド製剤中の組成物である。
【0003】
医薬組成物におけるリポソーム、ミセル、ナノ粒子、エマルジョン、又はコロイド製剤の使用は、医療分野において広く認識され、普及してきている。現在、より効果的に薬剤が標的器官又は細胞型に送達されるように、多くの薬剤は、リポソーム薬剤製剤、薬剤溶解性を向上させる界面活性剤を含む液剤、懸濁剤、及びエマルジョンとして販売されている。例えば、非イオン性乳化剤ビヒクル「Cremophor EL」は、広範な薬剤との使用が知られており、これにはミコナゾール(Handbook on injectable Drugs)、エキノマイシン(echinomycin)(Handbook on injectable Drugs)、テニポシド(Rowinsky et al. 1992, Seminars in Oncology, 19, 646)、ジアゼパム(Lau et al. 1989, Int. J. Pharm. 54, 171)、アルテシン(althesin)(Dye et al. 1980, Br. Med. J. 230, 1353)、及びパクリタキセル(Rowinsky et al. 1992, 同上)が含まれる。しかしながら、これらの製剤の多くは患者に過敏性反応をもたらし、この反応のためその製剤による治療の中止が余儀なくされ、それにより患者は薬剤の有益な作用を奪われる。さらに、ドキシル(Doxil)及びアンビソム(Ambisome)などのリポソーム製剤、又はタキソール(Taxol)などのミセル製剤の医薬組成物も同様に、患者に過敏性反応をもたらし得る(Chanan-Khan et al. 2003, Ann Oncol. 14:1430-7; Cesaro et al. 1999, Support Care Cancer 7:284-6; Weiss et al. 1990, J. Clin Oncol. 8:1263-8)。
【0004】
過敏性反応を誘発する医薬組成物に関する臨床研究は、この反応が多くの場合、注入開始直後に発現し、呼吸困難、頻呼吸、頻脈、低血圧及び高血圧、胸痛、並びに背痛などの心肺窮迫の症状を含むことを明らかにしている。これらの反応は、補体活性化(complement-activating)関連急性過敏症、又はC介在性偽アレルギー(CARPA)と呼ばれている。IgE介在性(I型)アレルギーとは異なり、CARPAは通常、事前の感作なしに薬剤への最初の暴露で起こり、症状は一般にその後の処置においては軽減又は消失する(タキフィラキシー)。例えばドキシルのようなリポソーム薬剤で処置された患者の中でそのような反応が起こる頻度は6.8%であり、これは他のリポソーム薬剤試験で報告されている発生率と同程度である(Dezube, B. J., 1996 In: Doxil Clinical Series, Califon, N. J. Gardiner-Caldwell SynerMed, p.1-8)。これらの反応は、患者の約0.9%で致命的となる可能性があり、したがって、そのリポソーム製剤によるさらなる治療が不可能となる。さらに、ミセル製剤のタキソールは、全患者の41%〜44%で軽度の反応を誘発する(紅潮、又は発疹など)。しかしながら、タキソール処置患者の1.5%〜3%は、アナフィラキシー様反応、呼吸困難、高血圧、及び紅潮を含むはるかに重度の反応を有し、薬剤の中止及び適切な応急処置が必要とされる(Rowinsky et al., 1993, Semin. Oncol. 204:1-15、及びWeiss et al., 1990, J. Clin Oncol. 8:1263-8)。タキソールの心臓毒性及びアナフィラキシー様反応を防ぐために、これまで抗ヒスタミン薬及びコルチコステロイドによる患者の前処置への依存、並びに薬剤の注入時間の延長が試みられてきた。さらに、補体活性化は、ポリマーナノ粒子の静脈注射/注入にも関連する。
【非特許文献1】Handbook on injectable Drugs
【非特許文献2】Rowinsky et al. 1992, Seminars in Oncology, 19, 646
【非特許文献3】Lau et al. 1989, Int. J. Pharm. 54, 171
【非特許文献4】Dye et al. 1980, Br. Med. J. 230, 1353
【非特許文献5】Chanan-Khan et al. 2003, Ann Oncol. 14:1430-7
【非特許文献6】Cesaro et al. 1999, Support Care Cancer 7:284-6
【非特許文献7】Weiss et al. 1990, J. Clin Oncol. 8:1263-8
【非特許文献8】Dezube, B. J., 1996 In: Doxil Clinical Series, Califon, N. J. Gardiner-Caldwell SynerMed, p.1-8
【非特許文献9】Rowinsky et al., 1993, Semin. Oncol. 204:1-15
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、補体活性化医薬組成物の投与に関連する過敏性反応を防ぐ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
C介在性偽アレルギー(CARPA)とも称される、補体活性化関連急性過敏症を予防、軽減、治療、又は管理するために設計された方法及び組成物に関する。好ましい実施形態において、これに限定されるものではないが、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、エマルジョン、及びコロイド製剤中の組成物を含む医薬組成物投与に関連するCARPAが、予防、軽減、治療、又は管理される。本発明の方法は、補体活性化が阻害又は低減され、過敏性反応を引き起こすことができないように、特異的にマクロファージ及び/又は単球の活性を低減又は阻害し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する、製剤中に活性化合物を含有する有効量の1種又は複数の治療剤を、それを必要としている患者に投与することを含む。本発明による1種又は複数の治療剤の投与は、医薬組成物の投与に起因するCARPAの副作用の阻害又は改善を主たる目的とする急性短期治療として作用する。1種又は複数の治療剤は、補体活性化医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に投与される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物を投与される患者は、事前の医薬組成物の投与に反応して先行するCARPAエピソードを有する。他の実施形態において、本発明の組成物を投与される患者は、CARPAエピソードをまだ有していないが、既知の補体活性化医薬組成物による処置を受けている。
【0007】
好ましい実施形態において、治療剤は、特異的にマクロファージ及び/又は単球を標的とする。マクロファージ及び単球は食細胞であるから、これらの実施形態において、治療剤は、主として又は排他的に食作用によって細胞に侵入するような特性の粒子を含むように調製される。この治療剤は、製剤の大きさ又は荷電などの生理化学的特性が主として食作用によって、又は食作用によってのみ内在化され得るようなものである製剤中に活性化合物を含む。治療剤は、封入状活性化合物(encapsulated active compounds)、又は粒子状活性化合物(particulate active compounds)を含むことができる。ひとたび食作用を受けると、活性化合物は製剤から標的細胞、例えばマクロファージ及び単球に放出され、細胞の機能を阻害し、且つ/又は細胞を破壊する。好ましい実施形態において、治療剤の活性化合物は、ビスホスホネートである。より好ましい実施形態において、ビスホスホネートは、アレンドロネートである。
【0008】
一実施形態において、本発明は、封入状の活性化合物を含む有効量の1種又は複数の治療剤を、それを必要としている個体に投与することによって、CARPAを予防、軽減、治療、又は管理する方法に関する。他の実施形態において、本発明は、粒子状活性化合物を含む有効量の1種又は複数の治療剤を、それを必要としている個体に投与することによって、CARPAを予防、軽減、治療、又は管理する方法に関する。活性化合物は、特定の大きさを有する適切な担体に封入されるか、特定の大きさを有する粒子に作られる。治療剤が主として又は排他的に食作用によって取り込まれることを可能にする、製剤の大きさ及び/又は荷電などの特性により、この治療剤は特異的にマクロファージ及び/又は単球を標的とする。ひとたび製剤が細胞に取り込まれると、封入した担体又は粒子から活性化合物が放出され、作用因子は食細胞の活性を阻害し、且つ/又は食細胞を破壊することができる。
【0009】
他の実施形態において、本発明は、CARPAを予防、軽減、治療、又は管理するために、薬剤として許容されるビヒクル、担体、安定剤、又は希釈剤と共に、封入状活性化合物及び粒子状活性化合物からなる群から選択された製剤中の活性化合物を含む治療剤を、それを必要としている対象に投与するための薬剤組成物を含む。そのような投与を必要としているそれらの対象は、i)最近、補体活性化医薬組成物による処置を受けた、ii)現在、補体活性化医薬組成物による処置を受けている、又はiii)近々、補体活性化医薬組成物による処置を受けることになっている対象である。
【0010】
本発明の治療剤は、好ましくは0.03〜1.0μmの大きさの範囲である製剤中に活性化合物を含む。しかしながら、用いられる薬剤及び/又は担体の種類に応じて、より好ましい範囲には、これに限定されるものではないが、0.07〜0.5μm、0.1〜0.3μm、及び0.1〜0.18μmが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、C介在性偽アレルギー(CARPA)とも称される、補体活性化関連急性過敏症を予防、軽減、治療、又は管理するために設計された方法及び組成物に関する。ひとたび活性化されると、補体系は、マクロファージ及び単球を利用して過敏性反応を引き起こす。この反応中、罹患した患者の血液において、マクロファージ/単球分泌物の大幅な増加が観察される。したがって、本発明の目的は、循環細胞の活性を阻害又は低減し、且つ/又は循環細胞の数を低減することにより、マクロファージ及び/又は単球の活性を直接又は間接的に阻害又は低減することによって、CARPAを予防、軽減、治療、又は管理することである。好ましい実施形態において、CARPAは、これに限定されるものではないが、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、エマルジョン、及びコロイド製剤中の組成物を含む、補体活性化医薬化合物の投与に起因する。したがって、本発明の方法は、一部の患者の補体活性化医薬組成物投与に伴う望ましくない重度の副作用を軽減又は除去するために用いることができる。
【0012】
本発明は、患者がその医薬組成物に耐性であり得るように、補体活性化医薬組成物の投与前、投与中、又は投与後の急性短期間に、マクロファージ及び/又は単球の活性を低減又は阻害し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減するように設計された方法及び組成物に関する。本発明の方法は、患者において特異的にマクロファージ及び/又は単球の活性を低減又は阻害し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する1種又は複数の治療剤を含有する有効量の製剤を投与することを含む。
【0013】
本発明の方法に用いられる治療剤は、患者において特異的にマクロファージ及び/又は単球の活性を低減又は阻害し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する。治療剤の特異性は、活性化合物が特定の細胞型(例えばマクロファージ及び/又は単球)のみに作用する能力を有するような、治療剤中の活性化合物の製剤によるものである。好ましい実施形態において、食細胞に対する製剤の特異性は、それが食作用によってのみ、又は主として食作用によって内在化され得るような、製剤の生理化学的特性、例えば大きさ又は荷電によるものである。ひとたび食作用を受け、細胞内に入ると、活性化合物は、食細胞の活性を阻害又は低減し、且つ/又は食細胞を破壊する。特定の作用機序に縛られることを意図するものではないが、治療剤の活性化合物は、食細胞を無力化及び/又は破壊する前に、細胞内に入った直後に放出される。
【0014】
治療剤の活性化合物の製剤、例えば封入状又は粒子状の製剤は、過敏性反応の重要なトリガーである細胞、すなわちマクロファージ及び/又は単球を一過性に枯渇及び/又は不活性化することによって、補体活性化に起因する過敏性反応を抑制する。治療剤は、食作用によって、マクロファージ及び単球に取り込まれる。対照的に、非食細胞は、製剤の大きな寸法及び/又は他の生理化学的特性のため、治療剤を取り込むことができない。
【0015】
本明細書で用いられる「食作用」という用語は、食細胞に侵入する好ましい手段を指し、当分野で充分に理解されている。しかしながら、この用語は、同じ作用を達成することのできる、他の形態のエンドサイトーシスも包含するものと理解されるべきである。特に、受容体介在エンドサイトーシス、及び細胞の外部から物質を吸着/内在化する他の細胞手段も本発明の方法及び組成物に包含されるものと理解される。
【0016】
本発明はまた、封入状又は粒子状の活性化合物、及び薬剤として許容される賦形剤、希釈剤、又は担体を含む1種又は複数の治療剤を、それを必要としている哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物において過敏性反応を予防、軽減、治療、又は管理するための薬剤組成物に関する。好ましい実施形態において、活性化合物の少なくとも1種は、ビスホスホネートである。より好ましい実施形態において、ビスホスホネートは、リポソームに封入されている。
【0017】
活性化合物
本発明の治療剤及び方法に用いられる活性化合物は、製剤の生理化学的特性、例えば大きさ又は荷電などのために、患者において特異的にマクロファージ及び/又は単球の活性を低減又は阻害し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する。この活性化合物は、マクロファージ又は単球などの食細胞の内部に入ると、食細胞がもはや正常に機能できないか、且つ/又は生存できないように食細胞を阻害、破壊、停止、変更、及び/又は改変する、細胞内阻害剤、不活性化剤、毒素、停止物質、及び/又は細胞増殖抑制/細胞毒性物質であることができる。
【0018】
本明細書では、「活性化合物」という用語は、封入化されて又は粒状化されて治療剤の全部又は一部を構成し、製剤に不活性化効力/毒性を提供する、例えばマクロファージ及び/又は単球の活性を阻害又は低減し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する分子を指す。活性化合物であり得る化合物には、これに限定されるものではないが、無機又は有機化合物、或いはこれに限定されるものではないが、無機又は有機化合物を含む小分子(500ダルトン未満)又は大分子、これに限定されるものではないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、翻訳後修飾タンパク質、抗体などを含むタンパク様分子、或いはこれに限定されるものではないが、2本鎖DNA、1本鎖DNA、2本鎖RNA、1本鎖RNA、又は3重らせん核酸分子を含む核酸分子が含まれる。活性化合物は、任意の既知生物(これに限定されるものではないが、動物、植物、細菌、真菌、原生生物、又はウイルスを含む)由来の天然産物、或いは合成分子のライブラリー由来であることができる。活性化合物は、モノマー化合物、並びにポリマー化合物であることができる。
【0019】
好ましい実施形態において、活性化合物は、ビスホスホネート、又はその類似体である。本明細書では、「ビスホスホネート」という用語は、ジェミナル及び非ジェミナル両方のビスホスホネートを示す。特定の実施形態において、ビスホスホネートは以下の式(I)を有し、
【0020】


式中、Rは、H、OH、又はハロゲン原子であり、Rは、ハロゲン、場合によってヘテロアリール、或いはアミノが第一級、第二級、又は第三級であってよいヘテロシクリルC〜C10アルキルアミノ又はC〜Cシクロアルキルアミノで置換されている直鎖又は分枝鎖C〜C10アルキル又はC〜C10アルケニル、Yが水素、C〜Cシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールである−NHYであり、或いは、Rは、Zがクロロ置換フェニル又はピリジニルである−SZである。
【0021】
より特定の実施形態において、ビスホスホネートは、アレンドロネート、又はその類似体である。アレンドロネートには、その種々の塩が含まれ、これに限定されるものではないが、カルシウム、ナトリウム、及び他の類似の塩、並びにエステルが含まれる。アレンドロネートは種々の水和状態でも存在し、それらも本発明に包含され、これに限定されるものではないが、アレンドロネート一水和物、二水和物、及び三水和物、並びに化合物の無水形態が含まれる。そのような実施形態において、アレンドロネートは、以下の式(II)を有する。
【0022】

【0023】
他の特定の実施形態において、本発明の方法に活性化合物としてさらなるビスホスホネートを用いることができる。他のビスホスホネートの例には、これに限定されるものではないが、クロドロネート、チルドロネート、3−(N,N−ジメチルアミノ)−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、例えばジメチル−APD、1−ヒドロキシ−エチリデン−1,1−ビスホスホン酸、例えばエチドロネート、1−ヒドロキシ−3(メチルペンチルアミノ)−プロピリデン−ビスホスホン酸(イバンドロン酸)、例えばイバンドロネート、6−アミノ−1−ヒドロキシヘキサン−1,1−ジホスホン酸、例えばアミノ−ヘキシル−BP、3−(N−メチル−N−ペンチルアミノ)−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、例えばメチル−ペンチル−APD、1−ヒドロキシ−2−(イミダゾール−1−イル)エタン−1,1−ジホスホン酸、例えばゾレドロン酸、1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジル)エタン−1,1−ジホスホン酸(リセドロン酸)、例えばリセドロネート、3−[N−(2−フェニルチオエチル)−N−メチルアミノ]−1−ヒドロキシプロパン−1,1−ビスホスホン酸、1−ヒドロキシ−3−(ピロリジン−1−イル)プロパン−1,1−ビスホスホン酸、1−(N−フェニルアミノチオカルボニル)メタン−1,1−ジホスホン酸、例えばFR78844(Fujisawa)、5−ベンゾイル−3,4−ジヒドロ−2H−ピラゾール−3,3−ジホスホン酸テトラエチルエステル、例えばU81581(Upjohn)、及び1−ヒドロキシ−2−(イミダゾ[1,2−a]ピリジン−3−イル)エタン−1,1−ジホスホン酸、例えばYM529、2−(2−アミノピリミジニオ(aminopyrimidinio))エチリデン−1,1−ビスホスホン酸ベタイン(ISA−13−1)、又はそれらの類似体が含まれる。
【0024】
本発明はさらに、これに限定されるものではないが、ガリウム、金、セレン、ガドリニウム、シリカ、ミトラマイシン、シロリムス、エベロリムス、及び他のそれらの類似体を含む、他の活性化合物を含有する治療剤も包含する。一般に、例えば5−フルオロウラシル、シスプラチナ、アルキル化剤、及び他の抗増殖化合物又は抗炎症化合物、例えばステロイド、アスピリン、及び非ステロイド性抗炎症薬などの化学療法剤も活性化合物として用いることができる。
【0025】
本発明は、C介在性偽アレルギー(CARPA)とも称される、補体活性化関連急性過敏症を予防、軽減、治療、又は管理するための、一種又は複数の治療剤の投与を包含することを意図している。複数の治療剤を組み合わせて患者に投与することができる。組み合わせて投与される治療剤は、同一又は異なる製剤に(例えば、封入状又は粒子状の製剤)異なる活性化合物を有することができ、或いは異なる製剤に同じ活性化合物を有することもできる。「組み合わせて」という用語は、全く同時に治療剤を投与することに限定されず、治療剤が共に作用して、別の方法で投与されたときに比べて利点が増大するように、治療剤を連続してある期間内に患者に投与することを意味する。例えば、各治療剤は、同時に、又は任意の順序で異なる時点に連続して投与することができるが、同時に投与されない場合、所望の治療効果が提供されるように、各治療剤は充分に接近した時点で投与されるべきである。各治療剤は、適切な又は所望の作用部位に治療剤が有効に運ばれる任意の適切な形態及び任意の適切な経路で、個別に投与することができる。
【0026】
活性化合物の同定
本発明は、活性化合物として用いることのできる化合物をスクリーニングする方法を提供する。特定の作用機序に縛られることを意図するものではないが、本発明の方法に用いる活性化合物である化合物は、製剤自体の生理化学的特性によってひとたびマクロファージ及び/又は単球を標的とすると、i)食細胞活性を阻害し、ii)食細胞活性を低減し、iii)循環中のマクロファージ/単球を排除し、且つ/又はiv)循環中のマクロファージ及び/又は単球の数を低減することができる。
【0027】
活性化合物をスクリーニングする方法は一般に、候補治療剤を食細胞(例えばマクロファージ及び/又は単球)と共にin vitro又はin vivoでインキュベートし、次いで食細胞の活性又は寿命の変化(例えば、低減)を分析し、それによって本発明に用いる活性化合物を同定することを含む。当分野で知られている任意の方法を用いて、食細胞の活性又は寿命を分析することができる。
【0028】
一実施形態において、食細胞活性は、活性化刺激に反応する細胞活性化のレベルによって分析される。例えば、マクロファージ/単球活性化は、マクロファージ化学誘導タンパク質−1(MCP−1)、及びマクロファージ炎症タンパク質−1α(MIP−1α)、並びにインターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織壊死因子α(TNF−α)、ヒスタミン、トリプターゼ、PAF、及びエイコサノイド、例えばTXA、TXB、LTB、LTB、LTC、LTD、LTE、PGD、及びTXDなどのマクロファージによって産生される他の物質などの、化学走化性因子のレベルを定量化することによって分析できる。当分野で知られている任意の方法を用いて、食細胞分泌物のレベルを分析することができ、これに限定されるものではないが、ELISA、免疫沈降、及び定量的ウエスタンブロットが含まれる。
【0029】
他の実施形態において、食細胞の寿命が分析される。例えば、細胞増殖は、H−チミジンの取り込みを測定する、細胞を直接カウントする、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)などの既知の遺伝子又は細胞周期マーカーの転写活性の変化を検出する、或いはトリパンブルー染色を行うことによって分析できる。当分野で知られている任意の方法を用いて、mRNA転写産物のレベル(例えば、ノザンブロット、RT−PCR、Q−PCRなどによって)、又はタンパク質のレベル(例えば、ELISA、ウエスタンブロットなど)を分析することができる。
【0030】
一実施形態において、食細胞の活性を低下させる因子は、
a)第1因子及び第2因子と食細胞を接触させる段階であって、前記第1因子は前記食細胞を活性化する因子であり、前記第2因子は候補因子である段階、及び
b)前記接触食細胞において活性化レベルを求める段階によって同定され、
ここで前記第2因子の不在下で前記第1因子と接触させた食細胞(すなわち、コントロール細胞)における活性化レベルと比較したときの前記接触食細胞における活性化の低下は、前記第2因子が食細胞の活性を低下させることを示す。
【0031】
他の実施形態において、食細胞の量を低減する因子は、
a)食細胞を因子と接触させ、
b)前記接触食細胞の生存率を求めることによって同定され、
ここで前記因子と接触させなかった食細胞(すなわち、コントロール細胞)の生存率と比較したときの前記接触食細胞における生存率の低下は、前記因子が食細胞を減少させることを示す。
【0032】
他の実施形態において、候補因子は、治療的に望ましい方法で食細胞の活性又は寿命を変えることが知られている因子と実質的に同様であるか、又はより良い様式で食細胞の活性又は寿命を変える能力に関して分析される。本明細書では、「実質的に同様」とは、例示された因子、すなわち食細胞の活性、機能、運動性及び/又は枯渇を阻害する因子と同様の作用を食細胞に対して有する因子を指す。
【0033】
さらに、候補因子は、本発明の方法で用いることができる能力を評価するために、CARPAの動物モデルにおいて用いることができる。動物モデルは、候補因子を活性剤として用いることができるかどうか判定するために第1の分析で用いることができ、並びにin vitro分析で所望の活性を有することが認められた因子の有用性を確認するために第2の分析で用いることもできる。
【0034】
一実施形態において、用いられる動物モデルは、ブタCARPAモデルである(例えば、実施例を参照のこと)。ブタに少量のある種のリポソームを静脈注射すると、直ちにアナフィラキシーショック又はアナフィラキシー様ショックに特有の著しい血行動態変化及び心肺変化、並びに皮膚変化がもたらされる。この反応は血液中のマクロファージ分泌物(特にTXA)の大幅な増大を伴う。これらの反応は、エピネフリン、心臓マッサージ、及び/又は電気ショックで蘇生されることなく、致命的となり得る。ブタにおける反応は、ある種のリポソーム剤及び抗癌剤の注入後、ヒトに比較的高い割合(2〜45%)で観察される過敏症候群によく似ている。例えば、ブタに心肺窮迫を引き起こすドキシルの瞬時投与は、注入の最初の20〜60秒にヒトの血液に到達し、敏感な個体にCARPAを引き起こす投与に相当する。ヒトの場合と異なり、ブタのリポソーム誘発性CARPAは、比較的小さい生物学的変動を示し(例えば、本質的に全てのブタがある種の反応性リポソーム調剤に同様に反応する)、したがってこのモデルは高度に再現可能である。
【0035】
活性化合物の製剤
食作用によってのみ、又は主として食作用によって内在化するのに充分な大きさであり、それによってマクロファージ及び単球に特異性を付与する粒子に活性化合物が含まれるように、治療剤は製剤中に活性化合物を含む。細胞内に入った場合、非食細胞は活性化合物に影響を受ける可能性があるが、非食細胞には、このように製剤化されたとき(すなわち、治療剤として)活性化合物を内在化する機構はない。治療剤は、好ましくは0.03〜1.0μm、より好ましくは0.07〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μm、より好ましくは0.1〜0.18μmの大きさの範囲で製剤化された活性化合物を含む。しかしながら、これは単に一例であり、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく、他の大きさの範囲を用いることができる。
【0036】
当分野で知られている任意の方法を用いて、食作用によってのみ、又は主として食作用によって内在化できるように、活性化合物を製剤に取り込むことができる。活性化合物の製剤(すなわち、治療剤)は、標的部位への化合物の送達を増進するのに充分な時間、活性化合物を隔離することができる。さらに、活性化合物の製剤は、標的部位において標的細胞内にあるとき(例えば、マクロファージ又は単球)、粒子から化合物を放出することができる。したがって、治療剤が細胞外であるとき、不溶性形態のビスホスホネート(例えば、封入状又は粒子状の形態)のみが存在する。
【0037】
一実施形態において、活性化合物は、所望の特性を有する担体(すなわち、封入剤)に封入されている。「封入状活性化合物」という用語には、粒子内に封入されている活性化合物、包埋されている活性化合物、及び/又は吸着されている活性化合物、粒子マトリックスに分散されている活性化合物、粒子表面に吸着又は結合されている活性化合物、或いはこれらの任意の形態の組合せが含まれる。粒子には、これに限定されるものではないが、不活性ポリマー粒子、例えばマイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、マイクロスフェア、ナノ粒子、マイクロ粒子、及びリポソームなどが含まれる。
【0038】
特定の実施形態において、封入化剤はリポソームである。リポソームは、当分野で知られている任意の方法で調製することができる(例えば、Monkkonen, J. et al., 1994, J. Drug Target, 2:299-308; Monkkonen, J. et al., 1993, Calcif. Tissue Int., 53:139-145; Lasic DD., Liposomes Technology Inc., Elsevier, 1993, 63-105.(chapter 3); Winterhalter M, Lasic DD, Chem Phys Lipids, 1993 Sep;64(1-3):35-43を参照のこと)。リポソームは、正荷電、又は中性、より好ましくは負荷電であることができる。リポソームは、単一の脂質層であることができ、或いは多重膜であることができる。本発明による適切なリポソームは、好ましくは非毒性リポソームであり、例えばホスファチジル−コリンホスホグリセロール、及びコレステロールから調製されたものなどである。用いられるリポソームの直径は、好ましくは0.03〜1.0μm、より好ましくは100〜300nmの範囲である。しかしながら、マクロファージ及び/又は単球による食作用に適切な他の大きさの範囲も用いることができる。
【0039】
他の特定の実施形態において、封入化剤は、活性化合物が所望の特性を有する担体に包埋されるような包埋剤である。包埋によって封入されている活性化合物には、担体内に包埋、封入、及び/又は吸着されている活性化合物、担体マトリックスに分散されている活性化合物、担体表面に吸着又は結合されている活性化合物、或いはこれらの任意の形態の組合せが含まれる。特定の実施形態において、包埋剤(又は担体)は、マイクロ粒子、ナノ粒子、ナノスフェア、マイクロスフェア、マイクロカプセル、又はナノカプセルである(例えば、M. Donbrow, Microencapsulation and Nanoparticles in Medicine and Pharmacy, CRC Press, Boca Raton, FL, 347, 1991)。担体という用語には、ポリマー調剤と非ポリマー調剤の両方が含まれる。より特定の実施形態において、封入化剤は、ナノ粒子である。好ましくは、ナノ粒子は、直径0.03〜1.0μmであり、球状、非球状、又はポリマー粒子であることができる。活性化合物は、ナノ粒子に包埋、ポリマーマトリックスに均一又は不均一に分散、或いは表面に分散されているか、これらの任意の形態の組合せであることができる。好ましい実施形態において、ナノ粒子を製造するために用いられるポリマーは、生体適合性且つ生分解性であり、例えばポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマー(PLGA)などである。しかしながら、ナノ粒子の製造に用いることのできる他のポリマーには、これに限定されるものではないが、PLA(ポリ乳酸)、及びそれらのコポリマー、ポリ無水物、ポリアルキル−シアノアクリレート(ポリイソブチルシアノアクリレートなど)、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、及びそれらの誘導体、キトサン、アルブミン、ゼラチンなどが含まれる。
【0040】
他の実施形態において、治療剤は粒子形態であり、粒子はそれぞれ所望の特性を有する。粒子状活性化合物には、担体に封入、包埋、又は吸着されていない、活性化合物の任意の不溶性懸濁又は分散粒子形態が含まれる。粒子状形態である活性化合物には、作用物質の懸濁又は分散コロイド、凝集体、フロック、不溶性塩、不溶性複合体、及びポリマー鎖が含まれる。そのような粒子状物質は、それらが貯蔵/投与される流体(例えば、食塩水又は水)、並びにそれらが治療効果を提供する流体(例えば、血液又は血清)において不溶性である。典型的に「不溶性」とは、10,000部超の溶媒で1部の粒子状活性化合物が可溶性であることを指す。当分野で知られている任意の方法を用いて、粒子状物質又は凝集体を製造することができる。好ましくは、粒子は直径0.03〜1.0μmであり、任意の特定の形状であることができる。
【0041】
粒径の決定
治療剤は、活性化合物粒子(例えば、封入状又は粒子状の活性化合物)の大きさが、食作用によってのみ、又は主として食作用によって内在化するのに充分なほど大きい、すなわち、好ましくは0.03μm超であるように、好ましくは製剤化されている活性化合物を含む。好ましい実施形態において、そのような製剤は、0.03〜1.0μm、より好ましくは0.07〜0.5μm、より好ましくは0.1〜0.3μm、もっとも好ましくは0.1〜0.18μmである。当分野で知られている任意の方法を用いて、それを必要としている患者に治療剤を投与する前に、治療剤中の粒子の大きさを決定することができる。例えば、レーザー光散乱を利用するNicomp Submicron Particle Sizer(model 370, Nicomp, Santa Barbara, CA)又はMalvern Zetasizer Nano ZS(model ZS-ZEN3600, Malvern, Worcestershire, United Kingdom)を用いることができる。
【0042】
好ましい実施形態の粒子より小さい粒子を含む様々な大きさの粒子を生成する方法を用いて、活性化合物を封入化又は粒状化することができる。当分野で知られている任意の方法を用いて、所望の大きさの範囲外である化合物(例えば、小さ過ぎる又は大き過ぎる)から所望の大きさである封入状又は粒子状の活性化合物を分離することができる。治療剤には、所望の大きさの範囲内であると決定された活性化合物のみ、又は主としてそのような活性化合物を含むことができる。
【0043】
補体活性化医薬組成物
好ましい実施形態において、本発明の方法及び組成物は、任意の補体活性化医薬組成物の投与に起因するCARPAを予防、軽減、治療、又は管理するために用いられる。治療上有効量の組成物を投与することにより、古典経路、第2経路、又は各経路の任意の組合せによって補体が活性化される場合、医薬組成物は補体活性化である。医薬組成物による補体活性化の結果として、患者は過敏性反応(例えば、CARPA)を起こす。
【0044】
一実施形態において、医薬組成物を患者に投与した後、患者が1つ又は複数の以下の症状を経験する場合、その医薬組成物は補体活性化である。心肺窮迫(例えば、呼吸困難、頻呼吸、頻脈、胸痛、背痛など)、血圧の変化、肺動脈圧の上昇、全身動脈圧の変化、心拍数の増加、心拍出量の低下、呼気中のPCOの低下、毛細血管POの低下、肺及び全身血管抵抗の上昇、皮膚の発赤及び紅潮、並びにEKGの変化(例えば、頻脈、徐脈、不整脈、ST低下、T波逆転)などである。他の実施形態において、医薬組成物を患者に投与した後、投与前の分泌物量と比べて、患者の血液中のマクロファージ分泌物(例えば、ヒスタミン、トリプターゼ、PAF、及びエイコサノイド、例えばTXA、TXB、LTB、LTB、LTC、LTD、LTE、PGD、及びTXDなど)の量が上昇している場合、その医薬組成物は補体活性化である。
【0045】
一実施形態において、補体活性化医薬組成物は、タキフィラキシー(例えば、その医薬組成物への暴露の増大により症状が軽減)を示す。他の実施形態において、補体活性化医薬組成物は、タキフィラキシーを示さない。他の実施形態において、補体活性化医薬組成物は、リポソーム、ミセル、ナノ粒子、エマルジョン、又はコロイド製剤である。
【0046】
補体活性化医薬組成物の例には、これに限定されるものではないが、ドキシル(Doxil)(及びドキソルビシンの他の補体活性化製剤)、アンビソム(Ambisome)及びアベルセット(Abelcet)(及びアンホテリシンBの他の補体活性化製剤)、ダウノゾーム(DaunoXome)(及びダウノルビシンの他の補体活性化製剤)、ネオラル(Neoral)及びサンディミュン(Sandimmune)(及びシクロスポリンの他の補体活性化製剤)、ビュウモン(Vumon)(及びテニポシドの他の補体活性化製剤)、アンフォシル(Amphocil)(及びアンフォテリシンBの他の補体活性化製剤)、アルテシン(Althesin)(及びαキサロンの他の補体活性化製剤)、T−クイル(T-Quil)、バルリリース(Valrelease)、及びステソリッドMR(Stesolid MR)(及びジアゼパムの他の補体活性化製剤)、エポントール(Epontol)(及びプロパニジドの他の補体活性化製剤)、タキソール(Taxol)(及びパクリタキシルの他の補体活性化製剤)、タキソテール(Taxotere)(及びドセタキセルの他の補体活性化製剤)、ミコナゾール、及びエキノマイシンが含まれる。
【0047】
製剤の投与
有効量の治療剤は、マクロファージ及び/又は単球の阻害/枯渇をもたらす単回処置の期間、それを必要としている患者に投与される。マクロファージ及び/又は単球に対する処置の効果は、好ましくは1ヶ月未満、好ましくは2週間未満、より好ましくは1週間未満の間持続する。いくつかの実施形態において、治療剤は、短期急性治療として投与される。他の実施形態において、治療剤は、慢性治療として投与される。それを必要としている個体(又はそのような個体の動物モデル)に化合物を投与し、異なる時点での阻害/枯渇レベルをモニターすることによって、実験的にこれを決定することができる。阻害の時期を、適切な所望の臨床効果、例えば補体活性化医薬組成物投与後のCARPAの低減と相関させることもできる。
【0048】
一実施形態において、アレンドロネートなどのビスホスホネートを含有する0.01〜10mg/kgのリポソームがCARPA阻害剤として患者に投与される。より特定の実施形態において、アレンドロネートなどのビスホスホネートを含有する0.3〜4mg/kgのリポソームがCARPA阻害剤として患者に投与される。より特定の実施形態において、アレンドロネートなどのビスホスホネートを含有する0.5〜2mg/kgのリポソームがCARPA阻害剤として患者に投与される。
【0049】
他の実施形態において、クロンドロネート(clondronate)などのビスホスホネートを含有する0.001〜1mg/kgのリポソームがCARPA阻害剤として患者に投与される。より特定の実施形態において、クロンドロネートなどのビスホスホネートを含有する0.03〜0.4mg/kgのリポソームがCARPA阻害剤として患者に投与される。より特定の実施形態において、クロンドロネートなどのビスホスホネートを含有する0.05〜0.2mg/kgのリポソームがCARPA阻害剤として患者に投与される。
【0050】
他のビスホスホネートを用いる他の実施形態において、治療のために投与される治療剤の量は、例えば上記の活性化合物の同定に関して記載した種類のin vitro及びin vivo分析を用いて、当分野の技術者によって実験的に決定され得る。1つの治療剤が既知の投与量のビスホスホネートを含み、1つが未知の投与量のビスホスホネートを含む場合、治療剤の活性を比較することができる。この方法で、未知の投与量であるビスホスホネートの活性レベルを既知の投与量であるビスホスホネートの活性レベルに近づけ、それに応じて投与量を調節することができる。例えば、この分析を用いて、アレンドロネート含有リポソームの分析における活性レベルに近づけるために用いなければならないパミドロネート含有リポソームの量を決定することができ、それによってパミドロネート含有リポソームの量はアレンドロネート含有リポソームの0.01〜10mg/kgに相当することが示される。
【0051】
本発明の治療剤(又は本発明の治療剤を含む薬剤組成物)は、補体活性化医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に、患者に投与することができる。一実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物は、補体活性化医薬組成物の投与前に、患者に投与される。治療剤又はその薬剤組成物は、補体活性化医薬組成物が投与される3日前まで、1〜6時間前、1時間以内前、1時間未満前、又は数分以内前に投与されるのが好ましい可能性がある。一実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物を投与される患者は、事前の医薬組成物の投与に反応して先行するCARPAエピソードを有している。他の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物を投与される患者は、CARPAエピソードをまだ有していないが、既知の補体活性化医薬組成物による処置を受けている。さらに他の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物を投与される患者は、(補体活性化医薬組成物の投与又は他の理由により)CARPAを発症する危険性がある。
【0052】
他の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物は、補体活性化医薬組成物の投与と同時に、又は実質的に同時に投与される。そのような実施形態において、患者は事前の医薬組成物の投与に反応して先行するCARPAエピソードを有しているか、且つ/又は患者は既知の補体活性化医薬組成物による処置を受けているか、且つ/又は患者はCARPAを発症する危険性がある。特定の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物と医薬組成物は、互いに10分以内に投与される。他の特定の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物とリポソームである医薬組成物は、混合され、1つの組成物として投与される。他の特定の実施形態において、医薬組成物のリポソーム製剤が投与されるとき、治療剤又はその薬剤組成物と医薬組成物は、混合され、同じリポソームに封入される。
【0053】
他の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物は、これに限定されるものではないが、心肺窮迫(例えば、呼吸困難、頻呼吸、頻脈、胸痛、背痛など)、血圧の変化、肺動脈圧の上昇、全身動脈圧の変化、心拍数の増加、心拍出量の低下、呼気中のPCOの低下、毛細血管POの低下、肺及び全身血管抵抗の上昇、皮膚の発赤及び紅潮、EKGの変化、及び/又は血液中の1種又は複数のマクロファージ分泌物(例えば、ヒスタミン、トリプターゼ、PAF、及びエイコサノイド、例えばTXA、TXB、LTB、LTB、LTC、LTD、LTE、PGD、及びTXDなど)の増加を含むCARPAの症状を示している患者に投与される。他の症状は当業者及び医師には明らかであろう。
【0054】
治療剤又はその薬剤組成物と補体活性化医薬組成物とが別々に投与される実施形態において、前記投与は、1時間未満の間隔、約1時間の間隔、約1時間から約2時間の間隔、約2時間から約3時間の間隔、約3時間から約4時間の間隔、約4時間から約5時間の間隔、約5時間から約6時間の間隔、約6時間から約7時間の間隔、約7時間から約8時間の間隔、約8時間から約9時間の間隔、約9時間から約10時間の間隔、約10時間から約11時間の間隔、約11時間から約12時間の間隔、24時間以内又は48時間以内の間隔で行うことができる。特定の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物と補体活性化医薬組成物は、同一の患者来院時に投与される。他の特定の実施形態において、治療剤又はその薬剤組成物が最初に投与される。他の実施形態において、補体活性化医薬組成物が最初に投与される。
【0055】
当業者は、個々の患者に特有な種々の生理的要因(例えば、体重、病歴、及び遺伝的素因など)、CARPAの予期されるリスクに影響を及ぼす種々の要因(投与される医薬組成物の種類など)、及び用いる製剤の種類(例えば、封入状、包埋状、粒子状など)に応じて適切な用量及び投与時期を容易に決定することができる。
【0056】
治療有用性の特徴
「有効量」という用語は、所望の治療結果、すなわちマクロファージ及び/又は単球の活性の阻害又は低減、及び/又はマクロファージ及び/又は単球の量の除去又は低減を達成するのに有効である特定の治療剤の量を示す。一実施形態において、マクロファージ及び/又は単球の活性を阻害又は低減し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する所望の治療結果は、補体活性化を阻害する。他の実施形態において、マクロファージ及び/又は単球の活性を阻害又は低減し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する所望の治療結果は、補体活性化医薬化合物の投与に起因する補体活性化の増大を阻害する。他の実施形態において、マクロファージ及び/又は単球の活性を阻害又は低減し、且つ/又はマクロファージ及び/又は単球の量を除去又は低減する所望の治療結果は、補体活性化医薬化合物の投与に起因するCARPAを阻害又は軽減する。
【0057】
本発明の治療方法の毒性及び有効性は、例えばLD50(集団50%の致死量)、無毒性量(NOAEL)、及びED50(集団50%の治療的有効量)を求める細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順によって判定することができる。毒性量と治療的有効量との比が治療指数であり、LD50/ED50又はNOAEL/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す製剤が好ましい。毒性の副作用を示す製剤を用いることもできるが、非罹患細胞への損傷可能性を最小限に抑え、それによって副作用を低減するために、そのような製剤の作用因子の標的が罹患組織部位となるように送達系の設計には注意が払われるべきである。
【0058】
細胞培養試験及び動物実験から得られるデータは、ヒトに用いる製剤の用量範囲を決定するのに用いることができる。そのような製剤の用量は、好ましくは、ほとんど又は全く毒性を持たないED50を含む範囲内の循環濃度である。用いる投与形態及び利用する投与経路に応じて、用量はその範囲内で多様であってよい。本発明の方法で用いられる任意の製剤に関して、細胞培養試験から有効用量を最初に推定することができる。細胞培養で求められるIC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成する用量を動物モデルにおいて定めることができる。そのような情報を用いて、ヒトに有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによって測定することができる。
【0059】
本発明のプロトコル及び組成物は、好ましくは、ヒトに用いる前に所望の治療活性に関してin vitro、次いでin vivoで試験する。そのようなin vitro試験の一例は、食細胞(例えば、マクロファージ及び/又は単球)を培養で増殖し、治療剤に暴露するか、又は別の方法で投与し、細胞に対するこの試験の効果、例えば活性の阻害又は低減、及び/又は完全又は部分細胞死を観察するin vitro細胞培養試験である。食細胞は樹立細胞系から得ることができ、或いは一次細胞系として個体から新しく単離することもできる。当分野で標準的な多くの試験を用いて、食細胞に対する製剤の活性を測定することができ、例えば、マクロファージ/単球の活性化は、マクロファージ化学誘導タンパク質−1(MCP−1)、インターロイキン−1ベータ(IL−1β)、組織壊死因子α(TNF−α)、及びマクロファージ炎症タンパク質−1α(MIP−1α)などの化学走化性因子のレベルを定量化することによって評価分析できる。当分野で標準的な多くの試験を用いて、食細胞の生存及び/又は増殖を評価することができ、例えば、細胞増殖は、H−チミジンの取り込みを測定する、細胞を直接カウントする、癌原遺伝子(例えば、fos、myc)などの既知の遺伝子又は細胞周期マーカーの転写活性の変化を検出することによって分析でき、細胞の生存は、トリパンブルー染色によって評価できる。
【0060】
好ましい有効用量の選択は、当業者に知られているいくつかの要因を考慮して、当業者によって(例えば、臨床試験を経て)決定され得る。そのような要因には、過敏性反応の重篤度及び種類、投与される補体活性化医薬組成物の種類、治療計画(例えば、治療剤を緩徐注入として1日1回投与、単回ボーラス、1日数回、又は数日毎に1回投与)、対象となる患者の年齢、体重、病歴、及び補体の活性化に影響を及ぼす他の臨床的要因、例えば、喘息、及び他の免疫又は自己免疫疾患など、治療前に患者が免疫無防備状態であるかどうか、並びに投与される薬剤組成物の精度に反映する当業者に既知の他の要因が含まれる。
【0061】
薬剤組成物及び投与経路
本発明に用いられる治療剤は、当分野で知られている通常の任意の技法によって、薬剤組成物に製剤化することができる(例えば、Alfonso, G. et al., 1995, The Science and Practice of Pharmacy, Mack Publishing, Easton PA, 19th ed.を参照のこと)。本発明の方法に用いるための1種又は複数の治療剤を含む製剤は、それぞれの患者に特異的な種々の要因(例えば、過敏性反応の重篤度及び種類、投与される補体活性化医薬組成物の種類、患者の年齢、体重、反応、及び病歴)、治療剤中の活性化合物の数及び種類、製剤の種類(例えば、封入状、粒子状など)、組成物の形態(例えば、液体、半液体、又は固体形態)、治療計画(例えば、治療剤を緩徐注入として1日1回、単回ボーラス、1日数回、又は数日毎に1回投与)、及び/又は投与経路(例えば、経口、静脈内、筋内、動脈内、骨髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、経腸、局所、舌下、膣内、又は直腸手段)に応じて、多くの形態であることができる。本発明の組成物には、薬剤担体、ビヒクル、賦形剤、又は希釈剤を含むことができ、これに限定されるものではないが、水、食塩溶液、緩衝食塩溶液、油(例えば、石油、動物油、植物油、又は合成油)、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、エタノール、デキストロースなどが含まれる。組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤又は乳化剤、或いはpH緩衝剤を含むこともできる。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、エマルジョン、錠剤、丸剤、カプセル剤、粉剤、持続放出性製剤などの形態を取ることができる。
【0062】
非経口投与に適した薬剤製剤は、水溶液、好ましくは生理的適合性緩衝液、例えば、ハンクス液、リンゲル液、又は生理的緩衝食塩水などに製剤化することができる。水性注射用懸濁液は、その懸濁液の粘度を上げる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランを含むことができる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射用懸濁液として調製することもできる。適切な親油性溶媒又はビヒクルには、脂肪油、例えばゴマ油など、或いは合成脂肪酸脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチル、又はトリグリセリドなど、或いはリポソームが含まれる。場合によって、懸濁液は、化合物の安定性を高め、高度に濃縮された溶液の調製を可能とする適切な安定剤又は薬剤を含むこともできる。
【0063】
薬剤組成物は、塩として提供されてもよく、これに限定されるものではないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などの多くの酸と共に塩を形成することができる。塩は対応する遊離塩基形態と比べて、水性溶媒又は他のプロトン性溶媒に、より溶解性となる傾向がある。
【0064】
薬剤組成物は、全身又は局所、例えば補体活性化医薬組成物の注射部位の近くに投与することができる。さらに、全身投与は、対象となる特定の領域又は組織型を標的とし得る投与を包含することが意図される。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明の薬剤を、医療装置の被覆物として投与するのが望ましいことがある。そのような被覆物は、薬剤組成物が患者の特定部位に直接適用されるのを可能にすることができる。
【0066】
本明細書に挙げた全ての刊行された論文、書籍、参照便覧、及び要約は、本発明が関連する最新技術をより詳細に説明するために、それらの全体を参照により本明細書の一部とする。
【0067】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、上述の主題に様々な変更を加えることができるため、上述の説明に含まれているか、又は添付の請求の範囲に定義されている全ての主題は、本発明の記述及び例示として解釈されることが意図される。上述の教示にかんがみて、本発明の変更及び変形が可能である。
【実施例】
【0068】
本明細書に記載する以下の実施例は、本発明を実施する種々の態様を例示及び例証するためのものであり、どのような形でも本発明を限定するものではない。
【0069】
外科的処置
雄及び雌の若い(20〜40kg)ヨークシャーブタを、筋内ケタミン(Ketalar)で鎮静させ、その後、ノーズコーンを用いてハロタン又はイソフルランで麻酔する。気管に挿管して、1〜2.5%のハロタン又はイソフルランを用い、麻酔器で機械換気を行う。肺動脈圧(PAP)及び心拍出量(CO)を測定するために、熱希釈式連続心拍出量検出器を備えた肺動脈カテーテルを、右内頸静脈から右房を通して肺動脈まで進める。血液採取及び全身動脈圧(SAP)の測定のために、別のカテーテルを右大腿動脈に挿入し、近位大動脈まで進める。血圧値及び2〜3誘導の心電図(ECG)を継続的に得る。
【0070】
CARPA活性化化合物注射
以下の実験に用いるCARPA活性化化合物は、i)2mg/mlの塩酸ドキソルビシン及び16mg/mlの脂質を含むドキシル(リン脂質濃度:13.3mM、150μgドキソルビシン/リン脂質μmol)、ii)45:5:50の比率のジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、及びコレステロールからなる多重膜小胞体(MLV)、並びにiii)ザイモサンである。ドキシル、MLV、及びザイモサンの反応性用量を、PBS又は生理食塩水で総量1mlに希釈し、1mlのツベルクリン注射器を用いて、頸静脈(導入シートを介して)又は肺動脈(肺カテーテルを介して)に注射する。注射は比較的高速(10〜20秒以内)で行い、続いて10mlのPBS又は食塩水を注射し、カテーテルの空間に残存する小胞があればそれを洗浄する。
【0071】
実験群及び処置
動物を実験群に割り当て、表1に従って処置する。全ての処置の投与は、各注射30分間隔で静脈内注射によって行う。全ての実験群に関して、活性化剤処置は、30分間隔で投与されるi)ドキシル(0.01mgドキソルビシン/kg又は0.08mg脂質/kg)、ii)0.25mg脂質/kgのMLV、及びiii)0.25mg/kgのザイモサンからなる3回の連続注射である。
【0072】
【表1】

【0073】
ビヒクルコントロール群の動物は、CARPA活性化剤処置として、0分にドキシル、30分にMLV、60分にザイモサンの注射を受ける。これらの注射はそれぞれ著しい(致命的ではない)心肺反応を誘発するが、各注射後約30分以内に、全ての生理学的測定及び血液測定はベースラインに戻る。コントロールとして、アレンドロネート含有リポソーム組成物のビヒクルを単独(リポソームなし)で90分に注射する。その後、120分にドキシル、150分にMLV、180分にザイモサンを注射することによって、CARPA活性化剤を再び投与する。2セット目のCARPA活性化剤注射は、最初の活性剤投与で得られた反応と実質的に同じであるか(例えば、MLV、ザイモサン)、又は最初の活性剤投与で得られた反応よりわずかに弱いものの、依然として著しい反応を誘発し(例えば、ドキシル)、ビヒクル単独では保護効果を示さないことを実証している。
【0074】
リポソームコントロール群の動物は、ビヒクルコントロール群と同じように処置されるが、ただし90分ではビヒクルの代わりに空のリポソームが注射される。2セット目のCARPA活性化剤注射は、最初の活性剤投与で得られた反応と実質的に同じであるか(例えば、MLV、ザイモサン)、又は最初の活性剤投与で得られた反応よりわずかに弱いものの、依然として著しい反応を誘発し(例えば、ドキシル)、空のリポソームが保護効果を示さないことを実証している。
【0075】
脱感作群の動物は、ビヒクルコントロール群と同じように処置されるが、ただし90分ではビヒクルの代わりにアレンドロネート含有リポソームが注射される。投与されるアレンドロネートの用量は、ヒトでは約0.3〜0.7mg/kgか、又は他の適用で確立されたヒトの最大耐量に相当する。2セット目のCARPA活性化剤注射は、反応を誘発しないか、最初の活性剤投与で得られた反応と比べて著しく低減した反応を誘発し、アレンドロネート含有リポソームが保護効果を示すことを実証している。
【0076】
前脱感作群の動物は、0分にアレンドロネート含有リポソームを投与される。投与されるアレンドロネートの用量は、他の適用で確立されたヒトの最大耐量に相当する。その後、動物は2連続で活性化剤による処置を受ける(例えば、30分にドキシル、60分にMLV、90分にザイモサン、及び120分にドキシル、150分にMLV、180分にザイモサン)。活性剤の注射は両セット共、反応を誘発しないか、アレンドロネート含有リポソームの前投与なしで得られた反応と比べて著しく低減した反応を誘発し、アレンドロネート含有リポソームが保護効果を示すことを実証している。
【0077】
測定される心血管変動値
処置前、処置中、及び処置後の実験動物において、いくつかの生理的パラメータを測定する(前項を参照のこと)。分析される血行動態及び生化学マーカーを表2に挙げる。さらに、ベースラインと比較したときの、CARPA中(例えば、活性化剤の注射時)に各マーカーで観察された変化も示す。
【0078】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の治療剤をそれを必要としている患者に投与することを含む、過敏性反応を治療又は阻害する方法であって、前記治療剤が、1種又は複数の封入状又は粒子状の活性化合物を含み、前記治療剤が、30nmから1μmの範囲内の大きさである方法。
【請求項2】
過敏性反応が、補体活性化関連偽アレルギー(CARPA)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療剤が、単回投与として提供される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
治療剤が、複数回投与で提供される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
治療剤が、静脈内、筋内、動脈内、皮下、又は経口的に投与される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
治療剤が、患者の罹患部位に直接適用される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
1種又は複数の活性化合物の少なくとも1種が、ビスホスホネートである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項8に記載の方法。
【請求項10】
治療剤が、リポソームビスホスホネートである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
過敏性反応を誘発することなく、補体活性化医薬組成物を用いてそれを必要としている患者を治療する方法であって、
i)1種又は複数の封入状又は粒子状の活性化合物を含み、かつ30nmから1μmの範囲内の大きさである有効量の治療剤、及びii)前記補体活性化医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項13】
治療剤が、単回投与として提供される請求項12に記載の方法。
【請求項14】
治療剤が、複数回投与で提供される請求項12に記載の方法。
【請求項15】
治療剤が、静脈内、筋内、動脈内、皮下、又は経口的に投与される請求項12に記載の方法。
【請求項16】
治療剤が、患者の罹患部位に直接適用される請求項12に記載の方法。
【請求項17】
治療剤が、医療装置に被覆されている請求項16に記載の方法。
【請求項18】
医療装置が、ステントである請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療剤が、1時間以内に完了する注入剤として投与される請求項12に記載の方法。
【請求項20】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与前に投与される請求項12に記載の方法。
【請求項21】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与の2〜3日前に投与される請求項20に記載の方法。
【請求項22】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与と同時に投与される請求項12に記載の方法。
【請求項23】
1種又は複数の活性化合物の少なくとも1種が、ビスホスホネートである請求項12に記載の方法。
【請求項24】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
治療剤が、リポソームビスホスホネートである請求項12に記載の方法。
【請求項27】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
補体活性化医薬組成物が、パクリタキセル、又はその薬剤誘導体を含む請求項12に記載の方法。
【請求項29】
補体活性化医薬組成物が、リポソーム製剤である請求項12に記載の方法。
【請求項30】
補体活性化医薬組成物が、ドキシルを含む請求項12に記載の方法。
【請求項31】
i)ビスホスホネート、金、ガリウム、ガドリニウム、及びセレンからなる群から選択される活性化合物、ii)カプセル化剤、及びiii)薬剤として許容される賦形剤を含む薬剤組成物。
【請求項32】
ビスホスホネートが、ジェミナルビスホスホネートを含む請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項31に記載の組成物。
【請求項34】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項33に記載の組成物。
【請求項35】
カプセル化剤が、リポソームである請求項31に記載の組成物。
【請求項36】
活性化合物が、カプセル化剤によってカプセル化されており、30nmから1μmの範囲内の大きさである請求項31に記載の組成物。
【請求項37】
i)ビスホスホネート、金、ガリウム、ガドリニウム、及びセレンからなる群から選択される粒子状活性化合物、及びii)薬剤として許容される賦形剤を含む薬剤組成物。
【請求項38】
ビスホスホネートが、ジェミナルビスホスホネートを含む請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項37に記載の組成物。
【請求項40】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
粒子状活性化合物が、30nmから1μmの範囲内の大きさである請求項37に記載の組成物。
【請求項42】
有効量の治療剤をそれを必要としている患者に投与することを含む、過敏性反応を治療又は阻害する方法であって、
i)前記患者においてマクロファージ若しくは単球の活性を低減又は阻害するか、或いはii)前記患者においてマクロファージ若しくは単球の量を低減するか又はマクロファージ若しくは単球を除去する活性化合物であり、かつ、封入状又は粒子状の活性化合物を1種又は複数含む有効量の治療剤を
投与することを含む方法。
【請求項43】
過敏性反応が、補体活性化関連偽アレルギー(CARPA)である請求項42に記載の方法。
【請求項44】
治療剤が、単回投与として提供される請求項42に記載の方法。
【請求項45】
治療剤が、複数回投与で提供される請求項42に記載の方法。
【請求項46】
治療剤が、静脈内、筋内、動脈内、皮下、又は経口的に投与される請求項42に記載の方法。
【請求項47】
治療剤が、患者の罹患部位に直接適用される請求項42に記載の方法。
【請求項48】
1種又は複数の活性化合物の少なくとも1種が、ビスホスホネートである請求項42に記載の方法。
【請求項49】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項49に記載の方法。
【請求項51】
治療剤が、リポソームビスホスホネートである請求項42に記載の方法。
【請求項52】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項51に記載の方法。
【請求項53】
封入状又は粒子状の活性化合物が、30nmから1μmの範囲内の大きさである請求項42に記載の方法。
【請求項54】
過敏性反応を誘発することなく、補体活性化医薬組成物を用いてそれを必要としている患者を治療する方法であって、
a)i)前記患者においてマクロファージ若しくは単球の活性を低減又は阻害するか、或いはii)前記患者においてマクロファージ若しくは単球の量を低減するか又はマクロファージ若しくは単球を除去する活性化化合物であり、かつ、封入状又は粒子状である活性化合物を1種又は複数含む有効量の治療剤
及び
b)前記補体活性化医薬組成物
を投与することを含む方法。
【請求項55】
治療剤が、単回投与として提供される請求項54に記載の方法。
【請求項56】
治療剤が、複数回投与で提供される請求項54に記載の方法。
【請求項57】
治療剤が、静脈内、筋内、動脈内、皮下、又は経口的に投与される請求項54に記載の方法。
【請求項58】
治療剤が、患者の罹患部位に直接適用される請求項54に記載の方法。
【請求項59】
治療剤が、医療装置に被覆されている請求項58に記載の方法。
【請求項60】
医療装置が、ステントである請求項59に記載の方法。
【請求項61】
治療剤が、1時間以内に完了する注入剤として投与される請求項54に記載の方法。
【請求項62】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与前に投与される請求項54に記載の方法。
【請求項63】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与の2〜3日前に投与される請求項62に記載の方法。
【請求項64】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与と同時に投与される請求項54に記載の方法。
【請求項65】
1種又は複数の活性化合物の少なくとも1種が、ビスホスホネートである請求項54に記載の方法。
【請求項66】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項65に記載の方法。
【請求項67】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項66に記載の方法。
【請求項68】
治療剤が、リポソームビスホスホネートである請求項54に記載の方法。
【請求項69】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項68に記載の方法。
【請求項70】
補体活性化医薬組成物が、パクリタキセル、ドキシル、又はそれらの薬剤誘導体を含む請求項54に記載の方法。
【請求項71】
補体活性化医薬組成物が、リポソーム製剤である請求項54に記載の方法。
【請求項72】
封入状又は粒子状の活性化合物が、30nmから1μmの範囲内の大きさである請求項54に記載の方法。
【請求項73】
有効量の治療剤をそれを必要としている患者に投与することを含む、過敏性反応を治療又は阻害する方法であって、
i)前記患者においてマクロファージ若しくは単球の活性を低減又は阻害するか、或いはii)前記患者においてマクロファージ若しくは単球の量を低減するか又はマクロファージ若しくは単球を除去する活性化化合物であり、かつ、30nmから1μmの大きさである活性化合物を1種又は複数含む有効量の治療剤を
投与することを含む方法。
【請求項74】
過敏性反応が、補体活性化関連偽アレルギー(CARPA)である請求項73に記載の方法。
【請求項75】
治療剤が、単回投与として提供される請求項73に記載の方法。
【請求項76】
治療剤が、複数回投与で提供される請求項73に記載の方法。
【請求項77】
治療剤が、静脈内、筋内、動脈内、皮下、又は経口的に投与される請求項73に記載の方法。
【請求項78】
治療剤が、患者の罹患部位に直接適用される請求項73に記載の方法。
【請求項79】
1種又は複数の活性化合物の少なくとも1種が、ビスホスホネートである請求項73に記載の方法。
【請求項80】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項79に記載の方法。
【請求項81】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項80に記載の方法。
【請求項82】
活性化合物が、封入状又は粒子状である請求項73に記載の方法。
【請求項83】
治療剤が、リポソームビスホスホネートである請求項82に記載の方法。
【請求項84】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項83に記載の方法。
【請求項85】
過敏性反応を誘発することなく、補体活性化医薬組成物を用いてそれを必要としている患者を治療する方法であって、
a)i)前記患者においてマクロファージ又は単球の活性を低減又は阻害するか、或いはii)前記患者においてマクロファージ若しくは単球の量を低減するか又はマクロファージ若しくは単球を除去する活性化合物であって、かつ、30nmから1μmの大きさである活性化合物を1種又は複数含む有効量の治療剤
及び
b)前記補体活性化医薬組成物
を投与することを含む方法。
【請求項86】
治療剤が、単回投与として提供される請求項85に記載の方法。
【請求項87】
治療剤が、複数回投与で提供される請求項85に記載の方法。
【請求項88】
治療剤が、静脈内、筋内、動脈内、皮下、又は経口的に投与される請求項85に記載の方法。
【請求項89】
治療剤が、患者の罹患部位に直接適用される請求項85に記載の方法。
【請求項90】
治療剤が、医療装置に被覆されている請求項89に記載の方法。
【請求項91】
医療装置が、ステントである請求項90に記載の方法。
【請求項92】
治療剤が、1時間以内に完了する注入剤として投与される請求項85に記載の方法。
【請求項93】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与前に投与される請求項85に記載の方法。
【請求項94】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与の2〜3日前に投与される請求項93に記載の方法。
【請求項95】
治療剤が、補体活性化医薬組成物の投与と同時に投与される請求項85に記載の方法。
【請求項96】
1種又は複数の活性化合物の少なくとも1種が、ビスホスホネートである請求項85に記載の方法。
【請求項97】
ビスホスホネートが、アレンドロネート、パミドロネート、クロンドロネート、エチドロネート、及びチルドロネートからなる群から選択される請求項96に記載の方法。
【請求項98】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項97に記載の方法。
【請求項99】
活性化合物が、封入状又は粒子状である請求項85に記載の方法。
【請求項100】
治療剤が、リポソームビスホスホネートである請求項99に記載の方法。
【請求項101】
ビスホスホネートが、アレンドロネートである請求項100に記載の方法。
【請求項102】
補体活性化医薬組成物が、パクリタキセル、ドキシル、又はそれらの薬剤誘導体を含む請求項85に記載の方法。
【請求項103】
補体活性化医薬組成物が、リポソーム製剤である請求項85に記載の方法。
【請求項104】
封入状又は粒子状の活性化合物が、30nmから1μmの範囲内の大きさである請求項85に記載の方法。

【公表番号】特表2007−510711(P2007−510711A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538981(P2006−538981)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003620
【国際公開番号】WO2005/044175
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(506154351)バイオレスト リミテッド (2)
【Fターム(参考)】