説明

単相用光変流器

【課題】大電流の測定を確実に行え、小型化できて経済的に製作することができ、また組立作業も容易な単相用光変流器を提供する。
【解決手段】内部に通電導体2を配置する円筒状容器1の外周面の一部に取付座を固着し、この取付座にファラデー効果部材を収納するケースを着脱自在に固定している。ファラデー効果部材10は、所定寸法の2本の光ファイバー24A、24Bを用いて通電導体2と略直交する第1及び第2の光路11A、11Bを予め定めた間隔で平行に設けると共に、各光ファイバーの一端面に直線偏波光を反射させる鏡面12を設けて構成している。第1及び第2の光路11A、11Bにそれぞれ同一光源からの直線偏波光を入射させ、鏡面12で反射して往復する直線偏波光のファラデー回転角により、通電導体2を流れる電流を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単相用光変流器に係り、特に単相の大電流を確実に測定できる単相用光変流器に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置(以下、「GIS」と略称する)等に用いられる高電圧の通電導体に流れる電流を測定するには、従来から通電導体が貫通する巻線形変流器が使用されている。しかし、巻線形変流器は大型で大重量となることから、光の偏波面が磁界の作用により回転するファラデー効果を利用した光変流器が検討されており、特に他相の磁界による影響のない単相用として好適となっている。
【0003】
通常、単相用光変流器は通電導体の周囲に光路を設け、この光路内に光源からの直線偏波光を通過させたとき、通電導体を流れる電流の磁界作用で回転する直線偏波光のファラデー回転角を検出器側で検出し、電流の大きさを測定するものである。
【0004】
単相用光変流器の一形式としては、ファラデー効果部材としてブロック状の鉛ガラスを用いたものがある(例えば特許文献1参照)。この単相用光変流器は、電流が流れる通電導体の周囲に、ブロック状の鉛ガラスを組み合せて配置することにより光路を形成し、この光路内に光源からの直線偏波光を通過させ、通電導体中の電流の磁界作用で変化するファラデー回転角を検出器にて検出し、電流を計測する。
【0005】
また別の形式の単相用光変流器としては、ファラデー効果部材として光ファイバーを用いするものがある(例えば特許文献2参照)。この単相用光変流器は、光ファイバーが通電導体を取り囲むように配置して閉ループの光路を形成し、上記と同様に光路に直線偏波光を通過させて電流を計測する。
【0006】
しかし、光路をブロック状の鉛ガラスで構成する単相用光変流器は、小型化が難しくまた組み立て複雑であることから、光路を軽量である光ファイバーで構成する単相用光変流器が有利とされてきている。
【0007】
なお、光ファイバーで閉ループの光路を構成する単相用光変流器にも、光路内を通った直線偏波光が反射して戻り、検出器側でファラデー回転角を検出する反射型と、直線偏波光が光路内を通過し、そのまま検出器側でファラデー回転角を検出する透過型とが知られている。
【0008】
一方、GISは高電圧で大容量大型化になり、内部に通電導体を配置して絶縁ガスを封入する円筒状容器も直径が大きくなっている。このため、GISに取り付ける単相用光変流器は、大直径の円筒状容器の外部或いは内部に、光ファイバーを配置して閉ループの光路を設けて構成することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平3−105259号公報
【特許文献2】特開平7−248338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した従来の単相用光変流器は、いずれもファラデー効果部材で閉ループの光路を形成しするものであるから、通電導体に事故電流等の大電流が流れたとき、光路内を通る直線偏波光は、大電流電流の磁界作用でファラデー回転角が飽和してしまうため、検出器側でファラデー回転角から正確に電流を測定することができなくなる問題がある。
【0011】
また従来の単相用光変流器は、ファラデー効果部材を用い、通電導体を取り囲むように閉ループの光路を設ける必要があった。このため、GISの如き大直径の円筒状容器の外部或いは内部に、光ファイバーを配置して閉ループの光路を設けるとなると、定められた位置に配置する作業が難しく、作業性が悪くなるという問題があった。更に、円筒状容器は直射日光や通電導体の温度上昇により上下に温度差が生じ、ファラデー効果部材の上下で温度差のため、測定誤差の原因となる。これは、ファラデー効果部材に軽量の光ファイバーを用いる場合であっても同様である。
【0012】
本発明の目的は、通電導体に事故電流等の大電流が流れた場合であっても、短い第1及び第2の光路内を通過する直線偏波光のファラデー回転角が飽和しにくくて大電流の測定を確実に行え、小型化して経済的に製作することができる単相用光変流器を提供することにある。
【0013】
また本発明の他の目的は、円筒状容器の外面の一部に容易に取り付けることができ、組立及び交換作業が容易な単相用光変流器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の単相用光変流器は、円筒状容器の内部に通電導体を配置し、前記円筒状容器に直線偏波光の光路を形成するファラデー効果部材を設け、前記光路を通る直線偏波光のファラデー回転角から前記通電導体を流れる電流を計測する際に、前記ファラデー効果部材は所定寸法の2本の光ファイバーを用いて前記通電導体と略直交する第1及び第2の光路を予め定めた間隔で略平行に設けると共に、前記各光ファイバーの一端面に直線偏波光を反射させる鏡面を設けて構成され、前記各光路にそれぞれ同一光源からの直線偏波光を入射させ、前記鏡面で反射して戻る直線偏波光のファラデー回転角により電流を測定することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の単相用光変流器は、円筒状容器の内部に通電導体を配置し、前記円筒状容器に直線偏波光の光路を形成するファラデー効果部材を設け、前記光路を通る直線偏波光のファラデー回転角から前記通電導体を流れる電流を計測する際に、前記円筒状容器の外周面の一部に取付座を固着し、前記取付座に前記ファラデー効果部材を収納するケースを着脱自在に固定し、前記ファラデー効果部材は所定寸法の2本の光ファイバーを用いて前記通電導体と略直交する第1及び第2の光路を予め定めた間隔で略平行に設けると共に、前記各光ファイバーの一端面に直線偏波光を反射させる鏡面を設けて構成され、前記各光路にそれぞれ同一光源からの直線偏波光を入射させ、前記鏡面で反射して戻る直線偏波光のファラデー回転角により電流を測定することを特徴としている。
【0016】
好ましくは、前記ケース内に位置固定用ベースを配置し、前記各光ファイバーは前記位置固定用ベースにそれぞれ保護管を介在させて配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の単相用光変流器によれば、ファラデー効果部材として所定寸法の光ファイバーを用いているから、第1及び第2の光路が短くなるため、直線偏波光のファラデー回転角が飽和しにくいので、事故時等の大電流の測定を確実に行える効果がある。また、短い光ファイバーで形成する第1及び第2の光路を通過する直線偏波光のファラデー回転角で、小範囲の磁場を測定するものであるため、測定精度も温度差の影響も小さくできるばかりか、単相用光変流器を小型化できるから、経済的に製作することができる利点がある。
【0018】
更に、本発明の単相用光変流器は、円筒状容器の外面の一部に取付座を固着し、この取付座に着脱自在に固定するケース内には、ファラデー効果部材となる光ファイバーを収納し、円筒状容器内の通電導体と略直交する第1及び第2の光路を予め定めた間隔で平行に設けているため、通電導体と関係なく組み立てて取り付けることができるから、組立及び交換作業も容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の単相用光変流器を示す原理説明図である。
【図2】本発明を適用した単相用光変流器の一実施例を示す概略縦断面図である。
【図3】図2の単相用光変流器をA−A線から見た概略断面図である。
【図4】図2の要部を示す拡大図である。
【図5】図4の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の単相用光変流器は、内部に通電導体を配置する円筒状容器の外周面の一部に、直線偏波光の光路を形成するファラデー効果部材を設けている。ファラデー効果部材は所定寸法の2本の光ファイバーを用いて前記通電導体と略直交する第1及び第2の光路を予め定めた間隔で略平行に設けると共に、前記各光ファイバーの一端面に直線偏波光を反射させる鏡面を設けて構成する。そして、第1及び第2の光路にそれぞれ同一光源からの直線偏波光を入射させ、鏡面で反射して戻る直線偏波光のファラデー回転角により電流を測定する。
【0021】
まず、本発明の単相用光変流器の原理について、図1を用いて順に説明する。本発明の単相用光変流器では、内部に通電導体2を配置する円筒状容器1の外周面の一部に、ファラデー効果部材10を通電導体2と略直交するように配置している。
【0022】
ファラデー効果部材10は、後述する如く小幅の寸法Lにして小型化したものが使用される。このファラデー効果部材10には、同一長さの第1及び第2の光路11A、11Bが形成され、2つの光路11A、11Bは予め定めた相互間の寸法Lを維持するように略平行に設けている。このようにすることで、円筒状容器1内の通電導体2の中心点と第1の光路11Aとの間は、寸法Lになる。
【0023】
各光路11A、11Bの一端面に鏡面12を備えており、各光路11A、11Bを通過した直線偏波光が鏡面12で反射され、2つの光路11A、11Bを戻るようにしている。なお、ファラデー効果部材10の一端面に設ける鏡面12は、反射フィルムを貼付や反射材を蒸着して形成、或いは別途形成したガラス製の鏡材を使用できる。
【0024】
ファラデー効果部材10の寸法Lは、直線偏波光が上記したように各光路11A、11Bを往復するから、この往復する間に通電導体2に流れる電流の磁界作用で、直線偏波光のファラデー回転角が変化する長さの小さな寸法にすることができる。この寸法Lは、円筒状容器1の外周面の寸法と比較すると遥かに小さな寸法であって、L≪2πLである。
【0025】
実際に円筒状容器1に設けるときの各寸法L、L、Lは、ファラデー効果部材の厚さ寸法Lが10〜500mm、第1及び第2の光路間の寸法Lが10〜200mm、ファラデー効果部材の第1の光路と通電導体の中心との間の寸法Lが100〜1000mmであって、円筒状容器1の大きさによって適宜定められる。
【0026】
2つの光路11A、11Bには、従来と同様であるため図示していないが、それぞれ同一光源に連なる入射光側に偏光子を、また出射光側に検光子を、直線偏波光のファラデー回転角を検出する検出器等を有して単相用光変流器を構成する。
【0027】
そして、各光路11A、11Bに矢印で示すように同一光源からの直線偏波光を通過させ、一端面に設けた鏡面12で反射されて矢印で示すように2つの光路11A、11Bを戻るようにしている。このように往復する各直線偏波光が、流れる電流の磁界の作用で回転する2つのファラデー回転角から、検出器(図示せず)側において演算を行って電流を計測する。
【0028】
本発明の単相用光変流器に使用するファラデー効果部材10は小型であるから、寸法Lの影響で誤差を受けやすい。このため、同一ながさ寸法の第1及び第2の光路11A、11Bの2つを設けており、各光路11A、11Bの2つを用いることで影響をなくしている。円筒状容器1内の通電導体2に流れる電流は、各光路11A、11Bの双方からの直線偏波光のファラデー回転角から、検出器において下記のようにして測定する。
【0029】
また、ファラデー効果部材10のファラデー回転角θは、ベルデ定数をV、磁場の強さをH、光路長をLすると、θ=VHL<45°の場合には飽和しないことは良く知られている。つまり、ベルデ定数Vと磁場の強さHを一定にする場合には、ファラデー回転角θは光路長Lに比例する。例えば、ファラデー効果部材10の寸法LがL/20であるとすると、従来の光変流器のファラデー回転角θ=45°の電流が流れたとしても、本発明の単相用光変流器ではファラデー回転角θ<1°であり、飽和することがなくなる。
【0030】
次に、ファラデー効果部材10内に、寸法Lを維持して略平行な2つの光路11A、11Bを利用しての電流の測定について説明する。各光路11A、11Bを通過してきた直線偏波光のファラデー回転角をθ、θ、各光路11A、11Bの磁場の強さをH、Hとすると、それぞれθ=VH及びθ=VHである。また、H=I/(2πL)及びH=I/(2π(L+L))である。これらの式から通電導体2に流れる電流Iは、I=2πθθ/(θ−θ)VLの式が導かれる。この式から、通電導体2に流れる電流を正確に測定できる。したがって、略平行で同じ長さの2つの光路11A、11Bを利用すると、寸法Lの寸法誤差に影響されず、また事故時等の大電流が流れたときでもファラデー回転角は飽和せず、検出器側で演算して電流を測定することができる。
【実施例1】
【0031】
次に、GISやガス絶縁母線に適用した例である図2から図5を用い、本発明の単相用光変流器を具体的に説明する。円筒状容器1は内部に通電導体2を配置し、絶縁ガスを封入することによって絶縁を維持している。
【0032】
円筒状容器1の外周面の一部、この例では図2及び図3に示すように日光の直射を受けることの少ない円筒状容器1の下面部分に、取付座21を溶接等により固着して通電導体2と直交するようにしている。そして、取付座21にファラデー効果部材10を収納するケース22を、ボルト23によって着脱自在に取り付けている。
【0033】
ケース22内に収納するファラデー効果部材10として、図2から図5に示すものでは2本の光ファイバー24A、24Bを用いている。これら各光ファイバー24A、24Bは、同一の長さ寸法にして略平行な第1及び第2の光路を形成するものであり、円筒状容器1内の通電導体2と略直交するように設けられる。
【0034】
第1及び第2の光路を形成する各光ファイバー24A、24Bは、上記したものと同様に直線偏波光の入射側及び出射側とは反対の端面にそれぞれ鏡面26A、26Bを設けて反射型とし、直線偏波光を光ファイバー24A、24B内を往復させる構成にしている。
【0035】
2本の光ファイバー24A、24Bは、それぞれ緩衝材として使用する保護管25A、25Bを介在させて位置固定用ベース27部分に配置して寸法変化のない状態に位置決めする。そして、図5に示すように緩衝材28を介在させてから、上部の開口からケース22の内部に配置する。
【0036】
ケース22上部の開口は、ケースカバー29を螺子30にて固定して閉鎖してから、円筒状容器10の外周面に固着した取付座21に、ケース22をボルト23によって着脱自在に取り付けている。
【0037】
第1及び第2の光路となる2本の光ファイバー24A、24Bには、ケース22に取り付ける接続端子等にて受光用及び送光用光ファイバー(図示せず)が結合されて、単相用光変流器を構成する。
【0038】
このように単相用光変流器を構成すれば、同一光源からの直線偏波光が、それぞれ第1及び第2の光路を往復させられたとき、通電導体を流れる電流の磁界の作用で回転する2つのファラデー回転角を、検出器側で演算することにより電流を正確に測定することができる。また、短い光ファイバー24A、24Bを用いて直線偏波光を往復させるものであるため、通電導体に大電流が流れたときでもファラデー回転角は飽和しないから、電流の測定を問題なく行わせることができる。
【0039】
なお、円筒状容器1の外周面の一部に固着する取付座21は、円筒状容器1の軸方向に形成されるフランジ部を活用して取り付けることもできる。いずれの位置に固着する場合でも、取付座21に取り付けるケース22内のファラデー効果部材である光ファイバー24A、24Bで作る各光路が、直射日光の照射を受けて温度上昇し易い箇所以外に設けようにし、温度変化によって電流の測定に誤差が生じないようにする。
【符号の説明】
【0040】
1…円筒状容器、2…通電導体、10…ファラデー効果部材、11A、11B…光路、26A、26B…鏡面、21…取付座、22…ケース、24A、24B…光ファイバー、25A、25B…保護管、27…位置固定用ベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状容器の内部に通電導体を配置し、前記円筒状容器に直線偏波光の光路を形成するファラデー効果部材を設け、前記光路を通る直線偏波光のファラデー回転角から前記通電導体を流れる電流を計測する単相用光変流器において、前記ファラデー効果部材は所定寸法の2本の光ファイバーを用いて前記通電導体と略直交する第1及び第2の光路を予め定めた間隔で略平行に設けると共に、前記各光ファイバーの一端面に直線偏波光を反射させる鏡面を設けて構成され、前記各光路にそれぞれ同一光源からの直線偏波光を入射させ、前記鏡面で反射して戻る直線偏波光のファラデー回転角により電流を測定することを特徴とする単相用光変流器。
【請求項2】
円筒状容器の内部に通電導体を配置し、前記円筒状容器に直線偏波光の光路を形成するファラデー効果部材を設け、前記光路を通る直線偏波光のファラデー回転角から前記通電導体を流れる電流を計測する単相用光変流器において、前記円筒状容器の外周面の一部に取付座を固着し、前記取付座に前記ファラデー効果部材を収納するケースを着脱自在に固定し、前記ファラデー効果部材は所定寸法の2本の光ファイバーを用いて前記通電導体と略直交する第1及び第2の光路を予め定めた間隔で略平行に設けると共に、前記各光ファイバーの一端面に直線偏波光を反射させる鏡面を設けて構成され、前記各光路にそれぞれ同一光源からの直線偏波光を入射させ、前記鏡面で反射して戻る直線偏波光のファラデー回転角により電流を測定することを特徴とする単相用光変流器。
【請求項3】
請求項2において、前記ケース内に位置固定用ベースを配置し、前記各光ファイバーは前記位置固定用ベースにそれぞれ保護管を介在させて配置したことを特徴とする単相用光変流器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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