単純ヘルペスウイルスを処置するための組成物および方法
【課題】被験体におけるHSV感染を処置する際に使用するための組成物を提供すること。
【解決手段】上記組成物は、少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有し、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の少なくとも1つの症状を処置することによって、被験体におけるHSV感染を処置する際に使用する。一実施形態において、上記緑茶ポリフェノールは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである。別の実施形態において、上記緑茶ポリフェノールは、本明細書に記載される構造にしたがう、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである。
【解決手段】上記組成物は、少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有し、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の少なくとも1つの症状を処置することによって、被験体におけるHSV感染を処置する際に使用する。一実施形態において、上記緑茶ポリフェノールは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである。別の実施形態において、上記緑茶ポリフェノールは、本明細書に記載される構造にしたがう、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2010年7月6日に出願された米国仮出願番号61/361,752の利益を主張し、ならびに、本出願は、2008年2月7日に出願された米国特許出願番号12/063,139の一部継続出願であり、これは2006年8月6日に出願されたPCT/US2006/031120の国内段階であり、これは2005年8月11日に出願された米国仮特許出願番号60/707,234への優先権を主張し、上記出願の全ては、許容される場合に、本明細書によってその全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(配列表への言及)
「MCG_2009_017_Sequence_Listing_Text_File.txt」という名称のテキストファイル(2011年に6月23日に作成され、14,471バイトのサイズを有する)として、本明細書と共に提出された配列表は、37C.F.R.§1.52(e)(5)に従って、本明細書によって参照により援用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、概して、ウイルス感染を処置するための組成物および方法、より詳しくは、緑茶ポリフェノール組成物および単純ヘルペスウイルスの処置または予防におけるその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、2つの一般的なウイルス感染症で現れるウイルスであり、これらの2つの一般的なウイルス感染症は各々、皮膚または粘膜(例えば口または唇)における有痛の水様水疱または性器における有痛の水様水疱によって特徴付けられる。この疾患は接触感染性であり、HSVに対する療法またはワクチンは現在のところ存在しない。唇における感染は、「単純ヘルペス(cold sore)」または「熱性水疱」として一般に知られている。無症候性である場合、HSVは神経細胞体中で休止しており、アウトブレイク中、皮膚に向かう軸索内で複製する。アウトブレイクが過ぎたとき、ウイルスは、神経体にのみ存在するようになるまで、神経に沿って「死滅(die back)」する。神経体内でのウイルスの休止は処置の困難さの一因となっている。
【0005】
現在、利用可能な処置としては、抗ウイルス医薬、例えば、アシクロビル、ファムシクロビル(famciclovir)、ペンシクロビル(pancyclovir)、バラシクロビル(valacyclovir)等の経口投与が挙げられ、これらは、症状の持続期間を低減し、治癒を促進する。処置は、典型的には、アウトブレイクの最初の症状の時に開始する。別の選択肢は、連日抑制療法(daily suppressive therapy)の使用であり、これは、抗ウイルス薬を数年にわたって毎日服用する。抑制療法は、症状の出現頻度およびアウトブレイクの再発を低減し得る。さらに、抑制療法は、無症状の排出(shedding)を低減し、性的接触またはキスを通じた伝染のリスクを低下させる。
【0006】
単純ヘルペスに対する処方箋無しでの処置は、典型的には、短期間の間有効であり、しばしば毒性要因を含む。
【0007】
任意の抗ウイルス医薬を服用することに伴なう重大な問題は、副作用、例えば、錯乱、幻覚、渇きの増大、発赤(redness)、皮膚(口の内側を含む)の水疱形成、剥脱または弛緩、尿排泄量の低減、発作、皮膚発疹またはじんま疹、胃痛、振せん、異常な衰弱または疲労感、下痢、めまい感、頭痛、太陽への感受性の増大、食欲の減退、悪心または嘔吐であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、被験体においてウイルス感染の1つまたは複数の症状を処置するための、副作用の低減を伴なった、改善された組成物および方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、被験体においてHSV感染を処置するための方法および組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
ウイルス、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を処置するための組成物および方法が提供される。1つの実施形態は、HSVによって引き起こされる病変を処置するための治療組成物を提供する。有用な組成物としては、1つまたは複数の緑茶ポリフェノール(GTP)またはその誘導体を含む組成物が挙げられる。コントロールと比較して、組成物は、前駆期に投与された場合、HSVによる病変の形成を阻害し、病変が現れた後に投与された場合、HSV感染による病変の持続期間を大いに低減する。例示的方法は、細胞を、1つまたは複数のGTPまたはその誘導体を含む組成物と接触させることによって、細胞におけるHSV複製を阻害することを含む。別の方法は、被験体に1つまたは複数のGTPまたはその誘導体を含む組成物を局所的に投与することによって、被験体におけるHSVの1つまたは複数の症状を処置することを含む。
【0011】
代表的緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、および(−)−エピカテキン−3−ガレートが挙げられるが、これに限定されない。プロアントシアニジン、これらGTPのエナンチオマー、異性体、薬学的に受容可能な塩、およびプロドラッグもまた挙げられる。好ましいGTPは、C1〜C30基を有する1つまたは複数の炭化水素鎖を含むように修飾されている。
【0012】
本発明はここで以下の項目を参照しながら記載される:
(項目1A)
少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有する組成物であって、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の少なくとも1つの症状を処置することによって、被験体におけるHSV感染を処置する際に使用するための、組成物。
(項目2A)
上記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目3A)
上記緑茶ポリフェノールが、以下の構造
【0013】
【化1】
による、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートであり、該脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、またはテトラコサン酸とのエステルである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目4A)
上記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとステアリン酸とのエステルである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目5A)
上記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとパルミチン酸とのエステルである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目6A)
上記被験体がヒトである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目7A)
上記組成物が麻酔薬をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目8A)
上記組成物が局所投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目9A)
上記組成物が経口投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目10A)
上記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目11A)
上記HSVがHSV−1である、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目12A)
上記組成物が、少なくとも2種の緑茶ポリフェノールを含有し、該緑茶ポリフェノールは独立して、C1〜C30の基でエステル化されており、該C1〜C30の基は、同じであるかまたは異なる、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目13A)
HSVが、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘−帯状ヘルペスウイルス(VZV)、ヒトヘルペスウイルス6(突発性発疹または小児バラ疹)およびヒトヘルペスウイルス8(カポージ肉腫関連ヘルペスウイルス)のうちのいずれかである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目1B) 被験体において単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を処置するための方法であって、該方法は、HSV感染の少なくとも1つの症状を処置するために、少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有する組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目2B) 上記緑茶ポリフェノールが、4’位でステアリン酸でエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである、上記項目に記載の方法。
(項目3B) 上記緑茶ポリフェノールが少なくとも2つの位置でエステル化されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目4B) 上記被験体がヒトである、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目5B) 上記組成物が麻酔薬をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目6B) 上記組成物が局所投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目7B) 上記組成物が経口投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目8B) 上記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目9B) 上記HSVがHSV−1である、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目10B) 被験体において単純ヘルペスウイルス(HSV)を処置する方法であって、該方法は、少なくとも2種の緑茶ポリフェノールを含有する組成物を投与する工程を包含し、該緑茶ポリフェノールは独立して、C1〜C30の基でエステル化されており、該C1〜C30の基は、同じであるかまたは異なる、方法。
(項目11B) 上記2種以上の緑茶ポリフェノールは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目12B) 上記被験体がヒトである、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0014】
(摘要)
緑茶ポリフェノール組成物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)を処置する際に使用するためのそれらの使用が提供される。代表的な緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、および1つ以上のエステル結合した脂肪酸を有する緑茶ポリフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、EGCGエステル濃度(μM)に対するVero細胞/mlの線グラフである。上側の線は生細胞を表し、下側の線は死細胞を表す。
【図2】図2は、ポリフェノール濃度(μM)に対する490nmの吸光度の棒グラフである。各セットの左側の棒はEGCGを表す。各セットの右側の棒はEGCGエステルを表す。
【図3】図3は、ポリフェノール濃度(μM)に対するHSV−1ウイルス力価(PFU/ml)の棒グラフである。
【図4】図4は、EGCGエステル濃度(μM)に対するHSV1ウイルス力価(PFU/ml)のウイルス力価の棒グラフである。
【図5】図5は、希釈に対する蛍光の線グラフである。ひし形は、E.coli+GFPを表す。四角は、E.coli−GFPを表す。読み取りは蛍光計で行われた。
【図6】図6は、細胞のみ、HSV1/Veroまたは75μMのEGCGエステルHSV1/Veroに対する蛍光の棒グラフである。GFP発現が測定された。
【図7】図7は、GFPをHSV1の遺伝子UL46に導入するためのクローニングストラテジーの概略である。
【図8】図8は、コントロール、EGCGおよびEGCGエステルに対する閾値サイクルの棒グラフである。このグラフは、HSV1糖タンパク質DのリアルタイムPCRデータを提供する。
【図9】図9は、コントロール、EGCGおよびEGCGエステルに対する相対量の棒グラフである。このデータは、HSV1/Vero細胞、EGCG−HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞におけるHSV1糖タンパク質Dの増幅を示す。
【図10】図10は、ポジティブコントロール、EGCGおよびEGCGエステルに対するパーセンテージの棒グラフである。
【図11】図11は、HSV1に対するEGCGエステルの、考えられる作用モードの概略図である。
【図12A】図12A〜図12Cは、1人の被験体の口の領域の写真である。図12A〜図12Cは、初期段階の単純ヘルペス形成(12A)、および図12Aに示したものと同じエピソードにおける11時間の処置後(12B)を示す。図12Cは、発生後の11時間の処置無しでの、別のエピソードにおける同じ被験体を示す。
【図12B】図12A〜図12Cは、1人の被験体の口の領域の写真である。図12A〜図12Cは、初期段階の単純ヘルペス形成(12A)、および図12Aに示したものと同じエピソードにおける11時間の処置後(12B)を示す。図12Cは、発生後の11時間の処置無しでの、別のエピソードにおける同じ被験体を示す。
【図12C】図12A〜図12Cは、1人の被験体の口の領域の写真である。図12A〜図12Cは、初期段階の単純ヘルペス形成(12A)、および図12Aに示したものと同じエピソードにおける11時間の処置後(12B)を示す。図12Cは、発生後の11時間の処置無しでの、別のエピソードにおける同じ被験体を示す。
【図13A】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13B】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13C】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13D】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13E】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13F】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13G】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13H】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
本開示の種々の実施形態を説明する前に、本発明は、その用途が以下の説明に記載される構成の細部および成分の配置に限定されないことが理解されるべきである。他の実施形態が、種々の方法で実施または実行され得る。また、本明細書中で使用される語句および専門用語は、説明の目的であり、限定であるとみなされるべきではないことが理解されるべきである。
【0017】
本開示全体にわたって、種々の刊行物、特許および公開特許明細書が参照される。許容される場合、これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示は、技術水準をより完全に記載するために、その全体が本開示に参考として援用される。
【0018】
本開示の理解を容易にするために、以下の定義が提供される:
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈がそうではないことを明示的に示さない限り、複数の対象物を含む。従って、例えば、「因子(a factor)」への言及は、1つの因子または因子の混合物をいい、そして「処置の方法(the method of treatment)」への言及は、当業者に公知である等価な工程および方法への言及を含む、などである。
【0019】
「アシルオキシ」とは、本明細書中で使用される場合、以下の化学式:
【0020】
【化2】
を有する置換基をいい、この式において、Rは、直鎖、分枝鎖、または環状の、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基である。
【0021】
「アルコキシカルボニル」とは、本明細書中で使用される場合、以下の化学式:
【0022】
【化3】
を有する置換基をいい、この式において、Rは、直鎖、分枝鎖、または環状のアルキル基である。
【0023】
用語「アルケニル」とは、1つ以上の二重結合を有する、一価の、非分枝または分枝の炭化水素鎖をいう。アルケニル基の二重結合は、共役していなくても、別の不飽和基と共役していてもよい。
【0024】
用語「アルキニル」とは、1つ以上の三重結合を有する、一価の、非分枝または分枝の炭化水素鎖をいう。アルキニル基の三重結合は、共役していなくても、別の不飽和基と共役していてもよい。
【0025】
用語「細胞」とは、複製または分裂が可能な、膜に囲まれた生物学的単位をいう。
【0026】
用語「エマルジョン」とは、互いに不溶性の成分から調製された混合物をいう。これらの成分から、混合条件の適切な選択および操作によって、均質な巨視的外見の混合物を生成することが可能である。エマルジョンの最も一般的な型は、水性成分と親油性成分とが使用されるものであり、これらは、当該分野において頻繁に、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョンと称される。水中油エマルジョンにおいては、親油性相が水相中に分散しており、一方で、油中水エマルジョンにおいては、水相が親油性相中に分散している。一般的に公知である、皮膚に塗布されるエマルジョンベースの処方物としては、化粧品(例えば、クリーム、ローション、洗剤、洗顔乳液、および乳剤など)、ならびに皮膚の状態、疾患または異常を処置するための成分を含有する皮膚用製品が挙げられる。
【0027】
用語「緑茶ポリフェノールまたはGTP」とは、Camellia sinensisの葉に存在するポリフェノール化合物をいう。緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECG)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)、プロアントシアニジン、これらのエナンチオマー、これらのエピマー、これらの異性体、これらの組み合わせ、およびこれらのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。修飾緑茶ポリフェノールとは、1つ以上の炭化水素鎖(例えば、C1〜C30)を有する緑茶ポリフェノール、ならびに本明細書中に開示される式Iおよび式IIによる化合物をいう。
【0028】
用語「宿主」とは、生存生物をいい、哺乳動物(例えば、霊長類であり、特にヒト)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「親水性」とは、本明細書中で使用される場合、水と容易に相互作用する強い極性基を有する物質をいう。
【0030】
「疎水性」とは、本明細書中で使用される場合、水に対する親和性を欠き、水をはじく傾向があり、水を吸収せず、そして水中に溶解せず、水と混合もしない、物質をいう。
【0031】
用語「単離された」とは、本明細書中に開示される種々の組成物を説明するために使用される場合、その天然環境の成分から同定され、そして分離および/または回収された、物質を意味する。例えば、単離されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、天然では会合する少なくとも1種の成分との会合がない。その天然環境の夾雑成分とは、そのポリペプチドまたはポリヌクレオチドについての診断用途または治療用途を代表的に妨害する物質であり、そしてそれらとしては、酵素、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が挙げられ得る。単離された物質は、組換え細胞内にインサイチュでその物質を含む。しかし、単離された物質は、通常、少なくとも1回の精製工程により調製される。
【0032】
「脂溶性」とは、本明細書中で使用される場合、疎水性液体(例えば、ヒマシ油)中で5g/100ml以上の溶解度を有する物質をいう。
【0033】
用語「脂溶性緑茶ポリフェノール」とは、そのポリフェノールに結合した、例えばC1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖を有する緑茶ポリフェノールをいう。C1〜C30の基としては、例えば、コレステロールが挙げられる。代表的な脂溶性緑茶ポリフェノールとしては、本明細書中に開示される式Iおよび式IIによるものが挙げられる。この用語は、「修飾緑茶ポリフェノール」と交換可能に使用される。
【0034】
用語「作動可能に連結した」とは、成分がその通常の機能を実施するように構成された並置物をいう。例えば、コード配列に作動可能に連結したコントロール配列またはプロモーターは、このコード配列の発現を行うことが可能であり、そしてタンパク質に作動可能に連結した細胞小器官局在化配列は、この連結したタンパク質を特定の細胞小器官に局在させるように方向付ける。
【0035】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、生物に重大な刺激を引き起こさず、そして投与される化合物の生物学的活性および特性を阻止しない、キャリアまたは希釈剤をいう。
【0036】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、そして無機酸または有機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、およびクエン酸など)との反応により得られる塩をいう。
【0037】
「薬学的組成物」とは、本明細書中に記載される緑茶ポリフェノールまたはその薬学的に受容可能な塩のうちの1つ以上と、他の化学成分(例えば、生理学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤)との混合物をいう。薬学的組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0038】
用語「プロドラッグ」とは、インビボで生物学的に活性な形態に転換する剤(核酸およびタンパク質が挙げられる)をいう。プロドラッグは、しばしば有用である。なぜなら、いくつかの状況において、プロドラッグは、親化合物より投与が容易であり得るからである。プロドラッグは、例えば、経口投与により生体利用可能であり得、一方で、その親化合物はそうではないかもしれない。プロドラッグはまた、薬学的組成物中で、親薬物より溶解度が改善しているかもしれない。プロドラッグは、種々の機構(酵素プロセスおよび代謝加水分解が挙げられる)によって、親薬物に転換され得る。Harper,N.J.(1962).Drug Latentiation in Jucker編,Progress in Drug Research,4:221−294;Morozowichら(1977).Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design in E.B.Roche編.Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,APhA;Acad.Pharm.Sci.;E.B.Roche編,(1977).Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,APhA;H.Bundgaard編,(1985)Design of Prodrugs,Elsevier;Wangら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug,Curr.Pharm.Design.5(4):265−287;Paulettiら(1997).Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies,Adv.Drug.Delivery Rev.27:235−256;Mizenら(1998).The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β−Lactam antibiotics,Pharm.Biotech.11,:345−365;Gaignaultら(1996).Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs,Pract.Med.Chem.671−696;M.Asgharnejad(2000).Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs,G.L.Amidon,P.I.LeeおよびE.M.Topp編,Transport Processes in Pharmaceutical Systems,Marcell Dekker,p.185−218;Balantら(1990)Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.,15(2):143−53;BalimaneおよびSinko(1999).Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues,Adv.Drug Delivery Rev.,39(1−3):183−209;Browne(1997).Fosphenytoin(Cerebyx)、Clin.Neuropharmacol.20(1):1−12;Bundgaard(1979).Bioreversible derivatization of drugs−−principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs,Arch.Pharm.Chemi.86(1):1−39;H.Bundgaard編,(1985)Design of Prodrugs,New York:Elsevier;Fleisherら(1996).Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs,Adv.Drug Delivery Rev.19(2):115−130;Fleisherら(1985).Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting,Methods Enzymol.112:360−81;Farquhar D,ら(1983).Biologically Reversible Phosphate−Protective Groups,J.Pharm.Sci.,72(3):324−325;Han,H.K.ら(2000).Targeted prodrug design to optimize drug delivery,AAPS PharmSci.,2(1):E6;Sadzuka Y.(2000).Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite,Curr Drug Metab.,1(1):31−48;D.M.Lambert(2000)Rationale and applications of 脂質s as prodrug carriers,Eur.J.Pharm.Sci.,11補遺2:S15−27;Wang,W.ら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs.Curr.Pharm.Des.,5(4):265−87。
【0039】
用語「置換C1〜C30」とは、1個〜30個の炭素のアルキル鎖、アルケニル鎖、またはアルキニル鎖であって、1つ以上の炭素が独立して、1つ以上の基(ハロゲン、ヒドロキシ基、アリール基、複素環式基、またはアルキルエステルが挙げられるが、これらに限定されない)で置換されている、鎖をいう。C1〜C30の範囲は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19などの、C30まで、およびC1〜C30に入る範囲(例えば、C1〜C29、C2〜C30、C3〜C28など)を含む。この範囲はまた、C30未満、C19未満などを含む。
【0040】
用語「処置する(treating)または処置(treatment)」とは、疾患、障害、症状または状態の1つ以上の症状または生理学的局面を、軽減すること、減少させること、または阻害することをいう。
【0041】
「水溶性」とは、本明細書中で使用される場合、5g/100ml以上の水への溶解度を有する物質をいう。
【0042】
用語「処置する(treating)または処置(treatment)」とは、疾患、障害、症状または状態の1つ以上の症状または生理学的局面を、軽減すること、減少させること、または阻害することをいう。
【0043】
本明細書中に提供される数値範囲は、間にある各整数を含むことが理解される。
【0044】
(II.単純ヘルペスウイルス)
単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型は、Herpesviridaeファミリー、Alphaherpesviridaeサブファミリー、およびSimplexvirus属に属している。
【0045】
(A.HSV構造)
HSVウイルスは、直径約200nmの大きさを有する。HSV1および2は、エンベロープを有する約152Kb長の2本鎖DNAウイルスであり、ユニーク長(Ul)およびユニーク短(Us)領域として公知である2つのDNAセグメントを含む(Garner,Advanced Drug Delivery Reviews.2003;55:1497−1513)。ビリオンは、3つの主要な構造;エンベロープと呼ばれる外側部分(これは、11個の糖タンパク質(gB、gC、gD、gE、gG、gH、gI、gJ、gK、gL、gM)を含む)、15個のタンパク質からなるテグメント層、ならびにウイルスDNAおよび4個の構造タンパク質を封入する正二十面体のカプシドを有する(Foster,et al.,Journal of Virological Methods.1998;75:151−160;Garner,Advanced Drug Delivery Reviews.2003;55:1497−1513;Willard,Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。
【0046】
(B.HSVライフサイクル)
ヒトがHSVに曝露されるとすぐに、細胞、分子および免疫システム生物学における一連の重要なイベントが起こる。ウイルスエンベロープ上に位置するいくつかの糖タンパク質は、細胞認識、細胞融合、最終的には細胞侵入に関与する(Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24;Subramanian,et al.,PNAS.2006;104(8):2903−2908)。HSVとその宿主細胞との最初の接触は、細胞表面プロテオグリカンに含まれるヘパラン硫酸(heparin sulfate)鎖への結合による。ウイルス糖タンパク質BおよびCは、この結合反応を補助し、これにより、糖タンパク質Dは、宿主細胞受容体の1つにリクルートされて結合する。一旦、糖タンパク質Dが細胞受容体に結合すると、糖タンパク質B、HおよびLは、糖タンパク質Dおよび細胞受容体と共に融合複合体を形成する。この融合複合体は、ビリオンの形質膜が宿主細胞形質膜に融合することを可能にし、この後、ウイルスのヌクレオカプシドおよびテグメントが侵入する。結果として、糖タンパク質Dは、細胞認識および受容体結合に必須であるが、5個の糖タンパク質全てが、ウイルス吸着および融合が首尾よく行われるために必要である(Carfi,et al.Molecular Cell.2001;8:169−179;Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。
【0047】
HSV−1の糖タンパク質B内の短いリシンリッチ領域(KPKKNKKPK(配列番号1))が、Vero細胞を用いた実験において除去された場合、ヘパラン硫酸(heparin sulfate)が、受容体によって結合されないことがあった。糖タンパク質BおよびCは、ヘパラン硫酸鎖での最初の結合において必要とされないが、これらは、このプロセスをより効率的にする。したがって、gDだけでなく、gB内のこのリシンリッチ領域も、宿主細胞への十分なウイルス侵入になくてはならないようである(Carfi,et al.Molecular Cell.2001;8:169−179;Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。
【0048】
糖タンパク質Dは、いくつかの宿主受容体のうちの1つを認識し、結合し得る。これらとしては、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター)、TNF−受容体ファミリーのメンバー;ネクチン−1またはネクチン−2、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;ならびにヘパラン硫酸(heparin sulfate)および3−O−スルホトランスフェラーゼの反応によって生じた細胞表面上の場所が挙げられる(Shukla,et al.,Journal of Clinical Investigations.2001;108:503−510;Spear et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。HSV−1糖タンパク質Dの構造は、X線結晶学によって得られており、gD内のいくつかのアミノ酸残基は、受容体HVEMおよびネクチン−1の結合に重要であることが分かっている(Carfi,et al.,Molecular Cell.2001;8:169−179;Manoj et al.,PNAS.2004;101(34):12414−12421;Whitebeck,et al.,Journal of Virology.1997;71(8):6083−6093)。HSV−1糖タンパク質DとHSV−2糖タンパク質Dとは、82%のアミノ酸類似性を含んでいることが分かっている。
【0049】
一旦、細胞内に入ると、HSVは、内部細胞コンパートメントにアクセスするために細胞輸送機構を乗っ取る。ウイルス粒子は、ウイルス成分が、非常に効率的な方法でそれらの目的地に到達することを可能にしている極めて迅速な様式で、細胞質の様々な領域の至る所に移動する(Willard,M.,Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。ウイルス粒子は、ヌクレオポア(nucleopore)を介して核に送られ、そこでウイルスゲノムの侵入が起こり、ウイルス転写および複製が開始される。HSVは、微小管を使用し、ダイニンモーターシステムの助けを借りながら、逆方向の輸送によって核へ移動する(Bearer,et al.,Proceedings of the National Academy of Science.2000;97(14):8146−8150.Garner,Advanced Drug Delivery Reviews.2003;55:1497−1513.Stanberry,University Press of Mississipi.2nd Ed.2006)。核に侵入することができることは、ウイルス転写、翻訳、複製、および子孫ヌクレオカプシド中へのDNAのパッケージングに必須である。興味深いことに、扁平な細胞、例えば、Vero細胞において、微小管の使用を介したウイルス粒子の輸送プロセスは、首尾よく感染が達成されるために必ずしも必要というわけではないのかもしれない。Vero細胞は、ビリオンの核への輸送に拡散を使用することができる(Newcomb,et al.,Journal of Molecular Biology.2007;370:633−642.)。
【0050】
HSV−1およびHSV−2は溶解感染中に上皮細胞に感染し、潜伏感染においては感覚ニューロンに移動する。潜伏感染中、ウイルスは溶解サイクルへと誘発されるまで、神経細胞内で休止状態のままでいる(Kang,et al.,Virology.2003;312:233−244;Stanberry,University Press of Mississipi.2nd Ed.2006)。これは、HSV感染患者の生涯にわたってHSVが永続的に生き残り、複製することを可能にする(Kang,et al.,Virology.2003;312:233−244;Wysocka,et al.,Trends in Biochemical Sciences.2003;28(6):294−304.)。ウイルスが潜伏するためには、ウイルス粒子は、初めの感染部位での神経軸索から、感覚神経節(ganglia3)へと移動しなければならない。潜伏感染神経細胞は、HSVのDNAを複製しないが、これらの細胞は、潜伏関連転写物(LAT)として公知の、ゲノムの短い配列のmRNAを生じる。この配列を除去した研究が行われ、ウイルスが再発性感染を引き起こすことができなかったことが示された(Kang,et al.,Virology.2003;312:233−244.)。
【0051】
これらの潜伏感染細胞は、長期間にわたって非反応性であり得るが、その一生の間、いつでも再活性化し得る。ウイルス再活性化に関連し得るいくつかの因子としては、例えば、ストレス、熱、寒さ、紫外線光、情動応答、および下垂体ホルモンまたは副腎ホルモンがある。ウイルスが再活性化されると、ウイルスゲノムは、軸索内での順方向の輸送によって上皮に移動し、そこで、ウイルス複製が起こる(Fatahzadeh,et al.American Academy of Dermatology.2007;6(27):737−763;Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。
【0052】
HSV感染の天然宿主として唯一公知であるのはヒトであるが、種々の様々な動物由来の培養細胞、例えば、ミドリザル腎臓細胞由来のVero細胞も、実験室内でHSVを感染させることができる(Foster,et al.,Journal of Virological Methods.1998;75:151−160)。HSVビリオンを用いたインビトロ実験は、動物の免疫システムを伴なわないため、ウイルスが細胞に効率的に感染することを可能にする。したがって、いくつかの細胞は、HSVのエンベロープ糖タンパク質gDによるウイルス侵入に必要な受容体のうちの少なくとも1つを含む(Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24.)。
【0053】
処置されない場合、単純ヘルペスには、初期発現から完全治癒まで5つの段階がある。最初の徴候は、前駆段階(本明細書では発生段階ともいう)であり、これは病変が出現するまさにその場所における、刺痛、かゆみ、炎症、紅斑、過敏症、および/またはうずきからなる。前駆(発生)は、通例、1〜2日間続き、水疱が現れたときに(これは水疱段階の開始のシグナルである)、終わる。水疱は透明な黄色の流体で満たされている。いくつかの別々の水疱が現れて合体し、さらなる水疱が介在スペース中に出現する場合もある。約2日後、水疱は破裂を開始して紅斑性開放創が露出し、色が灰色になる。これは湿潤段階である。高度に感染性の黄色流体が1日程度にわたって創傷から滲み出す。創傷は、痂皮段階において、黄色の痂皮で覆われ、これは、2〜3日間続く。痂皮の下の皮膚では、痛みとかゆみが続き、痂皮は破れて出血が開始する。この段階がゆっくりと消散するにつれて、患者は治癒段階に入る。2次的な痂皮は次第に小さくなっていき、ゆっくりと脱落してピンクの皮膚が現れ、周囲の影響を受けていない表皮の外観を徐々に呈する。発生から治癒までの上記状態の通常の持続期間は、7〜10日間であるが、2週間も長く続くことがあり得る。
【0054】
本発明の1つの局面は、HSV感染の1つまたは全ての段階、例えば、単純ヘルペス形成を緩和および/排除する組成物の供給である。
【0055】
(C.HSVの処置)
最も店頭販売されている単純ヘルペスの局所処置薬は、痛みを低減するための局所麻酔薬、皮膚保護剤(石油または酸化亜鉛)、または消毒剤である。これらの局所処置薬の大多数は、痛み、不快感および単純ヘルペスの出現を低減しようとするものであるが、通例、病変の持続期間にはほとんど効果がない。さらに、抗ウイルス医薬は、病変のアウトブレイクの発生を低減しようとする試み、および身体中のウイルス活性を損なわせようとする試みにおいて開発されてきた。これらの抗ウイルス医薬の多くは、経口投与される。抗ウイルス医薬はまた、病変内のウイルスの活性をスローダウンさせようとする試みにおいて局所処置薬として開発されてきており、通例、小疱形成の前に投与されたときに、最も有効である。
【0056】
口部または性器HSV感染の処置のための、現在の好ましい抗ウイルス薬物は、アシクロビル(Zovirax,Glaxo SmithKline,Research Triangle Park,NC)、バラシクロビル(Valtrex,Glaxo SmithKline,Research Triangle Park,NC)、パンシクロビル(penciclovir)(Denavir,Novaris Pharma GmbH,Wehr,Germany)、およびファムシクロビル(famiciclovir)(Famvir,Novartis Pharmaceuticals Corporation,East Hanover,NJ)である。これらの薬物は、しばしば、7〜10日間にわたって経口投与される。バラシクロビルおよびファムシクロビルは両方とも、身体中で、薬の活性形態(アシクロビルおよびパンシクロビル)へと分解される。ヌクレオシドの類似体であることから、これらの薬物は、ウイルス複製を停止させることができる(Brady,et al.Antiviral Research.2003;61:73−81;Fatahzadeh,et al.American Academy of Dermatology.2007;6(27):737−763;Morfin,et al,Journal of Clinical Virology.2002;26:29−37)。
【0057】
HSVチミンキナーゼは、アシクロビルをリン酸化し、宿主細胞は、それをさらにリン酸化して、結果として活性なアシクロビル三リン酸塩が生じる。活性アシクロビルは、その後、ウイルスDNAポリメラーゼを阻害し得、これにより、ウイルスDNAの延長を防ぐ。これらの薬物を使用することに伴なう1つの問題は、これらの薬物は、HSVがそのチミンキナーゼを変え始め、そしてアシクロビルおよびヌクレオシドの類似体として機能する他の薬物に対して抵抗性となるまでに限り有効であることである(Frobert,et al.,Antiviral Research.2008;7928-7936;Lebel,et al.,Journal of Clinical Virology.2006;37:34−37)。
【0058】
ファムシクロビルの作用モードはまた、アシクロビルと同様のプロセスにおいてウイルスDNAポリメラーゼを阻害することによるが、その効能はアシクロビルより弱い。ファムシクロビルは、細胞内で、より高い濃度を得ることができ、アシクロビルと比較して、より長い半減期を有する。ファムシクロビルはまた、アシクロビルよりも低頻度での投与を可能にする。最後に、非環式ヌクレオシド5’−一リン酸であるシドフォビル(cidofovir)は、宿主細胞キナーゼによってリン酸化され、上記様式でウイルスDNAポリメラーゼを阻害することができる。シドフォビルへのHSV抵抗性はまた、DNAポリメラーゼ遺伝子が変異したときに生じ得る(Brady,et al.Antiviral Research.2003;61:73−81;Stanberry,University Press of Mississipi.2nd Ed.2006)。これらの様々な薬物の服用から生じる強い抵抗性から、HSVの排出を防ぐために、新規かつより有効な医薬が開発されることが必要とされている(Morfin,et al,Journal of Clinical Virology.2002;26:29−37)。
【0059】
(III.緑茶ポリフェノール)
1つの実施形態は、1種以上の緑茶ポリフェノール、好ましくは、C1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖で修飾された1種以上の緑茶ポリフェノール、またはこれらの組み合わせを有する組成物を提供する。代表的な緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、および(−)−エピカテキン−3−ガレートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい修飾GTPとしては、修飾(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、その薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、または誘導体が挙げられ、コントロールと比較して、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を処置するために有効な量である。実験用のコントロールまたはコントロール群は、当該分野において公知である。一般に、HSV複製の阻害に対する緑茶ポリフェノール組成物の効果は、HSVの阻害に対する、緑茶ポリフェノールを含まない組成物の効果と比較され得る。代表的な宿主としては、哺乳動物(例えば、ヒト)、または哺乳動物(例えば、ヒト)由来の細胞が挙げられる。
【0060】
修飾GTP(緑茶ポリフェノールの誘導体または改変物)としては、溶解度または宿主におけるバイオアベイラビリティを増加させるための化学修飾を有する緑茶ポリフェノールが挙げられる。特定の実施形態において、これらの化学修飾としては、生理学的条件下で電荷を有する化学基の付加が挙げられる。他の実施形態において、修飾としては、緑茶ポリフェノールと、他の生物学的部分(例えば、ポリペプチド、炭水化物、脂質、またはこれらの組み合わせ)との結合が挙げられる。好ましい修飾としては、C1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖での修飾が挙げられる。
【0061】
別の実施形態は、1種以上の緑茶ポリフェノール、修飾緑茶ポリフェノールを、必要に応じて薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含有する、薬学的組成物を提供する。これらの1種以上の緑茶ポリフェノールおよび/または修飾緑茶ポリフェノールは、宿主におけるウイルス感染の1つ以上の症状の処置(例えば、HSV複製の阻害)のために有効な量である。好ましい組成物は、抗ウイルス量の修飾緑茶ポリフェノールを含有する。他の実施形態において、この組成物中の活性成分は、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、C1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖で修飾された(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、またはこれらの組み合わせ、その薬学的に受容可能な塩もしくはプロドラッグから本質的になる。この活性成分は、単一の光学異性体の形態であり得る。代表的に、1つの光学異性体は、他の光学異性体と比較して、85重量%、90重量%、95重量%、または99重量%多く存在する。この組成物はまた、少なくとも1種のさらなる活性成分(例えば、第二の治療剤)を含有し得ることが理解される。本開示の薬学的組成物のさらなる説明が、以下に提供される。
【0062】
(A.没食子酸エピガロカテキン(EGCG))
緑茶は、植物Camellia sinensisから製造される。Camellia sinensisは、カテキンポリフェノール、特に、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)に富む。EGCGは、他のいずれの植物においても見出されておらず、チャにおいて見出される主要なカテキンである(Sharangi,Food Research International 2009;42:5−6)。EGCGは、FDAのリストに、安全な消費製品として載っている(Patersonら,Science 2005;310:451−453)。科学者らは、EGCGが、エンベロープ糖タンパク質(gp120)のその受容体(CD4)への結合を阻害することによって、HIVを阻害し得ることを示した(Williamsonら,Journal of Allergy Clinical Immunology.2006;118:1369−1374)。インフルエンザもまた、EGCGによって、赤血球凝集素エンベロープ糖タンパク質との相互作用(これは、エンベロープ構造の変化をもたらし得る)を介して阻害される(Songら,Antivirus Response.2005;68:66−74)。さらに、EGCGはまた、ウイルスDNA合成を妨害し、これによりウイルス複製を止めることによって、B型肝炎を阻害する(Heら,World Journal of Gastroenterology.2011;17(11):1507−1514)。
【0063】
緑茶はまた、他の数種の研究の主題であるが、ウイルス学者らは、緑茶が様々なウイルス感染を阻害する能力を有するか否かに焦点を当てることを試みている。ベロ細胞、およびHSV−1とHSV−2との両方を用いて実施された研究において、研究者らは、EGCGがHSV感染を濃度依存様式で首尾よく阻害すると結論付けた。他の緑茶カテキンもまた試験されたが、EGCGのみが阻害効果を生じた。結果はまた、HSV−1の吸着および侵入後にEGCGで処理したベロ細胞の処理が、ウイルス産生を阻害しないことを示した。EGCGは、効果が見られるために、ウイルスが吸着される前に適用される必要がある。また、EGCGでのベロ細胞の処理後、HSVビリオンのエンベロープが損傷された。その結果として、EGCGは、HSVの阻害に対して直接的影響を有するようであった(Isaacsら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy.2008;52(3):962−970)。
【0064】
EGCGで処理したHSV−1および処理していないHSV−1を、gB、gD、およびキャプシドタンパク質に対する抗体でImmunogold標識すると、処理していないビリオンと比較して、処理したビリオンにおいて30%および40%の低下があった。従って、一旦、ウイルスをEGCGで処理すると、そのエンベロープ糖タンパク質は、モノクローナル抗体に結合する能力が低下する(Isaacsら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy.2008;52(3):962−970)。
【0065】
緑茶中のEGCG化合物がHSVを阻害することはもはや疑いがないが、EGCGを含む局所外用薬を調製する際に直面する問題は、EGCGが非常に不安定であり、非常に急速に酸化され、適用し得るかなり前にその抗ウイルス活性を失うことである。EGCGを用いてなされた研究のほとんどは、新たに調製したEGCGを用いて行われる必要がある。そうでなければ、EGCGは、その強力な抗ウイルス活性を失う(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718;Chenら,Handbook of Green Tea and Health Research.ISBN 978−1−60741−045−4,編者:H.McKinleyおよびM.Jamieson,pp.(C)2009 Nova Science Publishers,Inc.)。また、EGCGは水溶性であるので、局所外用薬として利益を得ることができない。
【0066】
(B.修飾緑茶ポリフェノール組成物)
緑茶ポリフェノールは、脂質媒体への溶解度が乏しい。従って、親油性茶ポリフェノールはまた、脂溶性媒体中での使用について開示される。親油性茶ポリフェノール(LTPまたは修飾緑茶ポリフェノール)は、緑茶ポリフェノール(GTP)の触媒エステル化により調製され得る。
【0067】
従って、非修飾緑茶ポリフェノールに対して、皮膚および細胞膜への緑茶ポリフェノールの透過性を増加させるため、または疎水性媒体中での溶解度を増加させるために修飾された緑茶ポリフェノールを含有する組成物が、提供される。修飾され得る緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECG)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)、プロアントシアニジン、これらのエナンチオマー、これらのエピマー、これらの異性体、これらの組み合わせ、およびこれらのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態は、エステル結合したC1〜C30の炭化水素鎖(例えば、脂肪酸)を1つ以上の位置に有する、緑茶ポリフェノールを提供する。別の実施形態は、ポリフェノールに結合した1つ以上のコレステロール基を有する、緑茶ポリフェノールを提供する。このコレステロール基は、例えば、エーテル結合によってこのポリフェノールに直接結合し得るか、またはC1〜C10のリンカーが、このコレステロール基をこのポリフェノールに接続し得る。
【0068】
別の実施形態は、1つ以上のアシルオキシ基を有する緑茶ポリフェノール化合物を提供し、このアシル基は、C1〜C30である。アルキル鎖、アルケニル鎖、またはアルキニル鎖の、例えば脂肪酸エステル化を介する緑茶ポリフェノールへの付加は、非修飾緑茶ポリフェノールと比較して、緑茶ポリフェノールの安定性を増加させ、そして疎水性媒体(脂質、脂肪、石鹸、洗剤、界面活性剤または油が挙げられる)への緑茶ポリフェノールの溶解度を増加させると考えられる。1つ以上の炭化水素鎖(例えば、エステル結合したC1〜C30の基またはC1〜C30のアシルオキシ基)を有する緑茶ポリフェノールは、非修飾緑茶ポリフェノールと比較して、皮膚または細胞膜により透過しやすく、これによって、エステル結合した炭化水素鎖を含む緑茶ポリフェノールまたはアシルオキシを含む緑茶ポリフェノールが、細胞に容易に侵入できるようにし、そして細胞に対する生物学的効果(例えば、遺伝子発現の調節)を有するようにすると考えられる。1つ以上の炭化水素鎖は、エステル結合以外の結合(例えば、チオ結合)を使用して、緑茶ポリフェノールに結合してもよいことが理解される。エステル化緑茶ポリフェノールは、皮膚をきれいにして緑茶ポリフェノールを皮膚に送達する組成物を製造するために、油、洗剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせと合わせられ得る。これらの油、洗剤、または界面活性剤は、有利なことに、緑茶ポリフェノールと水性媒体との接触を減少させることによって、緑茶ポリフェノールの安定性を増大させる。特定の実施形態は、本開示の修飾緑茶ポリフェノールの単一の光学異性体、エナンチオマー、またはエピマーを提供する。他の実施形態は、本開示の修飾緑茶ポリフェノールの単一の光学異性体、エナンチオマー、またはエピマーを含有する組成物を提供する。
【0069】
1つの実施形態は、式I:
【0070】
【化4】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供し、式Iにおいて、R1、R2、R3、R4、R5、およびR7は各々独立して、H、OH、
【0071】
【化5】
であり;
ここでR8は、直鎖、分枝鎖または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR8が環状である場合、R8はC3〜C30の基であり;そして
R6は、O、−NR9R10、またはSであり、ここでR9およびR10は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR9および/またはR10が環状である場合、R9および/またはR10はC3〜C30の基であり;
ここでR1、R2、R3、R4、R5、R7、R9、またはR10のうちの少なくとも1つは、
【0072】
【化6】
であり;
この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0073】
式Iの好ましい実施形態において、R8は、直鎖または分枝鎖のアルキル鎖である。式Iのより好ましい実施形態において、R8は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基である。式Iの特に好ましい実施形態において、R8はC17H35基である。
【0074】
1つの実施形態は、上記のとおりであるが、R1、R2、R3、R5、およびR7がOHである場合はR4が
【0075】
【化7】
ではない、式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0076】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも2つが独立して
【0077】
【化8】
であり;
ただし、R1、R2、R3、R5がOHであり、そしてR7が
【0078】
【化9】
である場合、R4が
【0079】
【化10】
ではない、上記のような式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0080】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも3つが独立して
【0081】
【化11】
である、上記のような式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0082】
なお別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも4つが独立して
【0083】
【化12】
である、上記のような式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0084】
別の実施形態は、式II:
【0085】
【化13】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供し、式IIにおいて、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10は各々独立して、H、OH、
【0086】
【化14】
であり;
R11は、直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR11が環状である場合、R11はC3〜C30の基であり;
R5およびR6は独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して
【0087】
【化15】
であり;
この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0088】
式IIの好ましい実施形態において、R11は、直鎖または分枝鎖のアルキル鎖である。式IIのより好ましい実施形態において、R11は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基である。式IIの特に好ましい実施形態において、R11はC17H35基である。
【0089】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0090】
【化16】
である、式IIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0091】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0092】
【化17】
である、上記のような式IIによる化合物を提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0093】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0094】
【化18】
である、上記のような式IIによる化合物を提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0095】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が各々独立して、H、OH、
【0096】
【化19】
であり;
R11が、直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR11が環状である場合、R11はC3〜C30の基であり;
R5およびR6が独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して、
【0097】
【化20】
であり;
そしてR1、R2、R3、R7、R8、R9、およびR10がOHである場合、R4は
【0098】
【化21】
ではない、式IIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0099】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0100】
【化22】
である、式IIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0101】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0102】
【化23】
である、上記のような式IIによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0103】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0104】
【化24】
である、上記のような式IIによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0105】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が各々独立して、H、OH、
【0106】
【化25】
であり;
R11が、直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR11が環状である場合、R11はC3〜C30の基であり;
R5およびR6が独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して
【0107】
【化26】
であり;
そしてR1、R2、R3、R7、R8、R9、およびR10がOHである場合、R4は
【0108】
【化27】
ではない、式IIによる化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0109】
1つの実施形態は、式III:
【0110】
【化28】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供し、式IIIにおいて、R1、R2、R3、R4、R5、およびR7は各々独立して、H、OH、
【0111】
【化29】
であり;
ここでR8は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基であり、
R6は、O、−NR9R10、またはSであり、ここでR9およびR10は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR9および/またはR10が環状である場合、R9および/またはR10はC3〜C30の基であり;
ここでR1、R2、R3、R4、R5、R7、R9、またはR10のうちの少なくとも1つは、
【0112】
【化30】
であり、この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0113】
式IIIの特に好ましい実施形態において、R8はC17H35基である。
【0114】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの1つ以上が
【0115】
【化31】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0116】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも2つが独立して
【0117】
【化32】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0118】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも3つが独立して
【0119】
【化33】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0120】
なお別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも4つが独立して
【0121】
【化34】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0122】
別の実施形態は、式IV:
【0123】
【化35】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。式IVにおいて、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10は各々独立して、H、OH、
【0124】
【化36】
であり;
R11は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基であり;
R5およびR6は独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して
【0125】
【化37】
である。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0126】
式IVの特に好ましい実施形態において、R11はC17H35基である。
【0127】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの1つ以上が
【0128】
【化38】
である、上記のような式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0129】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0130】
【化39】
である、式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0131】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0132】
【化40】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて提供する。
【0133】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0134】
【化41】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて提供する。
【0135】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つが独立して
【0136】
【化42】
である、式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0137】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0138】
【化43】
である、式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0139】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0140】
【化44】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0141】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0142】
【化45】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0143】
1つの実施形態において、1つの脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールが提供される。別の実施形態は、少なくとも2つの脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。特定の実施形態は、16炭素より大きい炭化水素鎖を有する1つ以上の脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。好ましい実施形態は、17〜25炭素長の炭化水素鎖を有する1つ以上の脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。特に好ましい実施形態は、1つ以上のステアリン酸鎖でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。
【0144】
代表的な緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECG)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な脂肪酸としては、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、およびテトラコサン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
(EGCGのエステル化)
HSV1とHSV2との両方が、世界中のヒト集団にとって重大な脅威をもたらし、そして毎年この疾患に感染するヒトの数は、増加していることが示されている。EGCGの治療用途は、以前から提唱されているが、その元の形態のEGCGは、急激な酸化および抗ウイルス活性の損失なしに、局所塗布において実行するのに適切ではない。他方で、EGCGエステルは、この目的のために理想的な候補である。EGCGの脂質エステルは、酵素的にかまたは化学的にかのいずれかで、形成され得る(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718)。
【0146】
EGCGエステルは、以前に中国のChenらにより精製された。これは、緑茶ポリフェノールとC16−脂肪酸との間での触媒エステル化から達成された。このエステル化は、4グラムの緑茶ポリフェノールと6.5グラムのヘキサデカノイルクロリドとを混合することによりもたらされた。次に、50mLの酢酸エチルおよび触媒を40℃でこの混合物に添加した。3時間の撹拌後、この溶液を30mLの脱イオン水で3回洗浄した。次いで、その有機層をエバポレートし、そして減圧を使用して40℃でさらに乾燥させた。これにより、8.7gの粉末生成物が得られた。GTPとヘキサデカノイルクロリドとの間での類似のエステル化の合成の機構を、以下に示す(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718)。
【0147】
【化46】
次に、高速(high current)クロマトグラフィー分離を使用して、このEGCGエステル生成物を精製した。n−ヘキサン−酢酸エチル−メタノール−水からなる2相(1:1)溶媒を、この分離カラムにおいて使用した。5グラムのEGCGエステルを50mLの上相溶液に溶解した。精製およびHPLC分析の後に、EGCGエステルが首尾よく精製されたようであった。EGCGアシル誘導体の構造を以下に示す(この誘導体は、本明細書中でEGCG−パルミテートとも称される)。(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718)。
【0148】
【化47】
好ましい実施形態において、EGCGは、上記構造による4’位でステアリン酸でエステル化される。
【0149】
特定の好ましい実施形態において、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)は、以下の構造により、4’位で脂肪酸エステルでエステル化される:
【0150】
【化48】
ここでこの脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸 (パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸またはテトラコサン酸とのエステルである。
【0151】
好ましい実施形態において、この脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとステアリン酸とのエステルである。この好ましい実施形態におけるエステル化EGCGの構造は、本明細書中で、EGCG−ステアレートと称される。
【0152】
好ましい実施形態において、この脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとパルミチン酸とのエステルである。
【0153】
(C.生物活性成分および併用療法)
本開示の緑茶ポリフェノールを含有する組成物は、必要に応じて、もう1種の生物活性剤またはさらなる治療剤を含有する。特定の実施形態において、1種以上の生物活性剤は、緑茶ポリフェノールと結合体化し得る。生物活性剤としては、治療剤、予防剤および診断剤が挙げられる。これらは、有機分子または無機分子、タンパク質、ペプチド、糖類、多糖類、茶サポニン、ビタミン類、コレステロール、または核酸分子であり得る。代表的なビタミンとしては、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンD、ビタミンE、またはこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。治療剤の例としては、タンパク質(例えば、ホルモン、抗原、および増殖エフェクター分子);核酸(例えば、アンチセンス分子);ならびに有機低分子または無機低分子(例えば、抗菌剤、抗ヒスタミン薬、免疫調節剤、うっ血除去薬、神経活性剤、麻酔薬、アミノ酸、および鎮静剤)が挙げられる。診断剤の例としては、放射性同位体および放射線不透過剤が挙げられる。
【0154】
(1.抗乾癬剤)
修飾緑茶ポリフェノールに加えて、適切な抗乾癬剤としては、サリチル酸;フランカルボン酸モメタゾン;ステロイド(コルチゾンなどのコルチコステロイドおよびプロピオン酸オルクスクロベタゾール(oluxclobetasol propionate)が挙げられる);5−フルオロウラシル;エピネフリン;アントラリン;ビタミンD3アナログ(例えば、カルシポトリエン(calcipotriene));メトトレキサート;マソプロコール(masprocol);グルコン酸トリメタキセート(trimethaxate gluconate);レチノイド;シクロスポリン;パクリタキセル;5−アミノレブリン酸;ベルガソール(bergasol);スズ−エチルエチオプルプリン(tin−ethyl etio purpurin);ベンゾポルフィリン誘導体;抗体(例えば、ABX−IL8抗体、CD11aモノクローナル抗体およびICM3モノクローナル抗体);酵素インヒビター(トリプターゼインヒビターおよびホスホリパーゼA−2インヒビターが挙げられる);新脈管形成遮断剤;T細胞遮断剤、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
(2.抗真菌剤)
種々の公知の抗真菌剤が、記載される組成物を調製するために使用され得る。潜在的な抗真菌剤のリストは、「Martindale-The Complete Drug Reference」,第32版,Kathleen Parfitt,(1999)の367−389頁に見出され得る。適切な抗真菌薬としては、アンホテリシン、アモロルフィン、ビフォナゾール、ブロモクロロサリチルアニリド(bromochlorosalicyanilide)、ブクロサミド、ブテナフィン、ブトコナゾール、カンジシジン、クロルダントイン、クロルミダゾール、クロルフェネシン、クロロキシレノール(chlorxylenol)、シクロピロックスオラミン、シロフンギン、クロトリマゾール、クロコナゾール、エベルコナゾール(eberconazole)、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチクロール、フェンチコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ハチマイシン、ハロプロジン、ヒドロキシスチルバミン、イセチオネート、ヨードクロロヒドロキシキノン、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ルフルカルバン(luflucarban)、メパルトリシン、ミコナゾール、ナフチフィン、ナタマイシン、ネチコナゾール、ニフロキシム、ナイスタチン、オモコナゾール、オキシコナゾール、ペンタマイシン、プロピオン酸、プロチオファート、ピロールニトリン、ラブコナゾール(ravuconazole)、サペルコナゾール、硫化セレン、セルタコナゾール、スルベンチン、スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール(terconazole)、チオコナゾール、トルシクラート、トルナフテート、トリアセチン、チミダゾール(timidazole)、ウンデセン酸、ボリコナゾール、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの剤のうちのいくつかは、抗菌活性もまた有することが公知である。
【0156】
1つの実施形態において、抗真菌剤(単数または複数)は、アゾールである。適切なイミダゾール抗真菌剤およびトリアゾール抗真菌剤は、フルコナゾール、チミダゾール、セクニダゾール、硝酸ミコナゾール、エコナゾール、ハロプロジン、メトロニダゾール、イトラコナゾール、テルコナゾール、ポサコナゾール(posaconazole)、ラブコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、サピルコナゾール(sapirconazole)およびこれらの組み合わせである。
【0157】
代替の実施形態において、抗真菌剤(単数または複数)は、クロロキシレノール、ウンデシレン酸、硫化セレン、ヨードクロロヒドロキシキノン、ブロモクロロサリチルアニリド、トリアセチン、またはこれらの組み合わせである。
【0158】
他の抗真菌剤としては、ベンスルダジン酸、安息香酸、ビフェナミン、クロコナゾール(cloconazole)、クロキシキン、デルモスタチン(dermostatin)、ハレタゾール、モネンシン、オキシコナゾール、ニトレート、ペチロシン、ピリチオン(pyrithione)、ルビジェルビン(rubijervine)、テルビナフィン、チオコナゾール(ticonazole)、およびウンデシレン酸(undecylinic acid)が挙げられる。
【0159】
(3.抗菌剤)
種々の公知の抗菌剤が、記載される組成物を調製するために使用され得る。潜在的な抗菌剤の列挙は、「Martindale-The Complete Drug Reference」,第32版,Kathleen Parfitt,(1999)の112−270頁に見出され得る。有用な抗菌剤のクラスとしては、アミノ配糖体、抗マイコバクテリア薬、セファロスポリンおよびβ−ラクタム、クロラムフェニコール、グリコペプチド、リンコサミド(lincosamide)、マクロライド、ペニシリン、キノロン、スルホンアミドおよびジアミノピリジン、テトラサイクリン、および多様なものが挙げられる。好ましい実施形態において、抗菌剤は、メトロニダゾール、チミダゾール、セクニダゾール、エリスロマイシン、バクトバン(bactoban)、ムピロシン、ネオマイシン、バシトラシン、シクロピロクス(cicloprox)、フルオロキノロン、オフロキサシン、セファレキシン、ジクロキサシリン、ミノサイクリン、リファンピン、ファムシクロビル、クリンダマイシン、テトラサイクリンおよびゲンタマイシンからなる群より選択される。
【0160】
適切なアミノ配糖体としては、Streptomycesおよび他の放線菌目由来の抗生物質が挙げられ、ストレプトマイシン、フラマイセチン、カナマイシン、ネオマイシン、パロモマイシン(paramomycin)、およびトブラマイシン、ならびにゲンタマイシン、シソマイシン(sissomycin)、ネチルマイシン、イセパマイシン、およびミクロノマイシン(micronomycin)が挙げられる。
【0161】
適切な抗マイコバクテリア薬としては、リファマイシン、リファキシミン、リファンピシン、リファブチニソニアジド(rifabutinisoniazid)、ピラジンアミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、チオアセタゾン、アミノサリチル酸、カプレオマイシン、シクロセリン、ダプソン、クロファジミン、エチオナミド、プロチオナミド、オフロキサシン、およびミノサイクリンが挙げられる。
【0162】
セファロスポリンおよびβ−ラクタムは一般に、グラム陽性菌に対する活性を有し、そしてより新しい世代の化合物は、グラム陰性菌に対する活性もまた有する。適切なセファロスポリンおよびβ−ラクタムとしては、以下が挙げられる:
第一世代;セファロチン、セファゾリン(cephazolin)、セファラジン、セファロリジン、セフロキサジン、セファドロキシル(cephadroxil)、セファトリジン、セファレキシン、ピブセファレキシン(pivcephalexin)、セファクロール、およびセフプロジル。
【0163】
第二世代;セファマンドール(cephamandole)、セフロキシムアキセチル、セフォニシド、セフォラニド、セフォチアム、およびセファマイシン。
【0164】
第三世代;セフォタキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフィキシム、セフジニル、セフェタメト、セフポドキシム、セフチブテン、ラタモキセフ、セフタジジム、セフォペラゾン、セフピラミド、およびセフスロジン。
【0165】
第四世代:セフェピムおよびセフピローム。
【0166】
他のセファロスポリンとしては、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォテタン、セフブペラゾン、セフミノクス、イミペネム、メロペネム、アズトレオナム、カルモナム、およびロラカルベフ(loracarbef)が挙げられる。
【0167】
クロラムフェニコールは、グラム陽性菌およびグラム陰性菌を阻害する。適切なクロラムフェニコールとしては、クロラムフェニコール、そのコハク酸ナトリウム誘導体、チアンフェニコール、およびアジドアムフェニコールが挙げられる。
【0168】
適切なグリコペプチドとしては、バンコマイシン、テイコプラニン、およびラモプラニンが挙げられる。適切なリンコサミドとしては、リンコマイシンおよびクリンダマイシンが挙げられ、これらは、主として好気性の感染を処置するために使用される。
【0169】
マクロライドは、ラクタム環を有し、このラクタム環に、糖が結合している。適切なマクロライドとしては、エリスロマイシン、ならびにスピラマイシン(spiromycin)、オレアンドマイシン、ジョサマイシン、キタマイシン(kitamycin)、ミデカマイシン、ロキタマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシン、フルリスロマイシン(flurithromycin)、タイロシン;およびストレプトグラミン(streptgramin)(またはシネルギスチン(synergistin))(プリスチナマイシン、およびバージニアマイシンが挙げられる);ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0170】
適切なペニシリンとしては、天然ペニシリンならびに半合成ペニシリンF、G、X、K、およびVが挙げられる。より新しいペニシリンとしては、フェネチシリン、プロピシリン、メチシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、ヘタシリン、メタンピシリン、ピバンピシリン、カルベニシリン(carbenecillin)、カルフェシリン、カリンダシリン、スルベニシリン(sulbenecillin)、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン、テモシリン、メシリナム、およびピブメシリナム(pivemecillinam)が挙げられる。ラクタマーゼインヒビター(例えば、クラブラン酸、スルバクタム、およびタゾバクタム(tazobacytam))が、しばしば同時に投与される。
【0171】
適切なキノロンとしては、ナリジクス酸、オキソリン酸、シノキサシン、アクロソキサシン(acrosoxacin)、ピペミド酸(pipemedic acid)、ならびにフルオロキノロンであるフルメキン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、グレパフロキサシン(grepafloxacin)、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ペフロキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、ダノフロキサシン、エンロフロキサシン、およびマルボフロキサシン(marbofloxacin)が挙げられる。
【0172】
スルホンアミドおよびジアミノピリジンとしては、「サルファ」剤の元であるスルファニルアミド、ならびに多数の誘導体(スルファピリジン、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾール、スルファジメトキシン、スルファジメトキシジアジン、スルファドキシン、スルファメトピラジン(sulfametopyrazine)、スルファジアジン銀、酢酸マフェナイド、およびスルファサラジン(sulfasalizine)が挙げられる)、ならびに関連化合物(トリメトプリム、バキロプリム、ブロジモプリム、オルメトプリム、テトロキソプリムが挙げられる)が挙げられ、コ・トリモキサゾールなどの他の薬物と組み合わせられる。
【0173】
テトラサイクリンは代表的に、スペクトルが広く、そして天然産物であるクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ならびに半合成のメタサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリンが挙げられる。
【0174】
上記カテゴリーのいずれにも当てはまらない適切な抗菌剤としては、スペクチノマイシン、ムピロシン、ニューマイシン、ホスホマイシン、フシジン酸、ポリミキシン、コリスチン、バシトラシン、グラミシジン、チロスリシン、クリオキノール,クロルキナルドール(chloroquinaldol)、ハロキナール(haloquinal)、ニトロフラントニン(nitrofurantonin)、ニトロイミダゾール(メトロニダゾール(metronizole)、チミダゾールおよびセクニダゾールが挙げられる)、ならびにヘキサミンが挙げられる。
【0175】
抗生物質および抗真菌剤は、イオン交換樹脂と錯化してレジネートを生成するために適切な、遊離酸もしくは遊離塩基、薬学的に受容可能な塩、またはエステルもしくは他の容易に加水分解可能な基との不安定な結合体として、存在し得る。
【0176】
(4.防腐剤)
防腐剤が、局所投与のために処方される組成物中に含まれ得る。適切な防腐剤としては、ヨウ素、ヨードフォア(カデキソマーヨードが挙げられる)、クロルヘキシジン、グルコネート、チメロサール、過酸化水素、ならびに過酸化物および過塩素酸塩(有機過酸化物および有機過塩素酸塩が挙げられる)が挙げられる。
【0177】
(5.皮膚保護剤)
皮膚保護剤が、局所投与のために処方される組成物中に含まれ得る。このような剤は、皮膚を滑らかにするのみでなく、皮膚の一体性を維持して損傷を防止することもまた補助し得る。適切な皮膚保護剤としては、アラントイン;カカオ脂;ジメチコーン;カオリン;サメ肝油;ワセリン;ラノリン;植物油;エトキシ化された油および脂質;ポリマー(例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリレート、エチルビニルアセテート、ポリアルキレングリコール);多糖類および修飾多糖類(例えば、ヒアルロン酸、セルロースエーテル、セルロースエステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロース,およびデンプン);天然ゴムおよび樹脂(ゲル化してもゲル化しなくてもよく、例えば、アルギネート、カラゲナン、寒天、ペクチン、グルコマンナン(グアー、イナゴマメなど)、ガラクトマンナン(例えば、コンニャク)、アラビアゴム、トラガカントゴム(gum traganth)、キサンタン、スクレログルカン(schleroglucan)およびシェラック);ならびにコロイド状不溶性物質(例えば、酸化亜鉛および他の不溶性亜鉛塩、滑石粉末および他の微細天然鉱物);ならびにコロイド状シリカ、アルミナおよび他の金属酸化物が挙げられる。さらなる保護剤としては、フェノール系または非フェノール系の植物化学物質が挙げられ、リコペン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、非カルチノイド、テルペノイド(erpeniods)、ペリリルアルコール(perillyl alcohol)、サポニン、テルペノール、テルペンリモノイド、アントシアニン、カテキン、イソフラボン、ヘスペリジン(hesperetin)、ナリンギン、ルチン、ケルセチン、シリマリン(silymarin)、タンゲレチン(tangeretin)、タンニン、フェノール酸、エラグ酸、クロロゲン酸、p−クマリン酸(パラ−クマリン酸(para−coumeric acid))、フィチン酸、フェルラ酸、バニリン、ケイ皮酸、ヒドロキシケイ皮酸、クルクミン、レスベラトロール(resveratrol)、リグニン(lignan)、グルコシノレーツ、イソチオシアネート、フェネチル、イソチオシアネート(sothiocyanate)、イソチオシアン酸ベンジル、スルフォラファン(sulforaphane)、インドール、インドール−3−カルビノール、チオスルホネート、フィトステロール、β−シトステロール、アントラキノン、センナ、バルバロイン、ヒペリシン(hypericin)、カプサイシン、ピペリン、クロロフィル、ベタイン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
広範な種々の遮光活性剤が適切である。使用される遮光剤の正確な量および型は、望まれる光保護のレベルに依存する。一般に、紫外放射線を吸収、散乱または反射することによって、紫外放射線に対する保護を与える任意の剤が、本明細書中で使用され得る。本明細書中で使用される遮光剤は、日光放射線の以下の形態のうちの1つ以上に対する保護を与え得る:UVA、UVB、UVC、可視光および赤外放射線。一般に、最終処方物における日光阻止因子(SPF)は、2〜30で変化するが、100までのSPFを有する製品が処方され得る。本明細書中で使用される遮光剤は、化学的光保護または物理的光保護を与え得る。
【0179】
適切な遮光剤としては、アミノ安息香酸および誘導体(例えば、パラ−アミノ安息香酸(PABA)、グリセリル−PABA(Lisadimate)、パジマートO、Roxadimate);アントラニレート(anthrinalate)(メチルアントラニレート(methylanthrynilate)が挙げられる);ベンゾフェノン(ジオキシベンゾン、オキシベンゾンおよびスルイソベンゾン、3−ベンゾフェノン(Uvinul M40)、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとの4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エステルが挙げられる);ショウノウ誘導体(3−(4−メチルベンジリデン)ショウノウ、3−ベンジリデンショウノウが挙げられる);シンナメート(DEA−p−メトキシシンナメート、p−メトキシケイ皮酸エチル−ヘキシル、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチルが挙げられる);ジベンゾイルメタン(ブチルメトキシジベンゾイルメタンが挙げられる)、サリチレート(サリチル酸ホモメチル、サリチル酸オクチル、トロラミンメチルサリチレートが挙げられる);金属酸化物(二酸化チタン、酸化亜鉛および酸化鉄が挙げられる);2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸;4,4−メトキシ−t−ブチルジベンゾイルメタン;ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択されるものが挙げられる。
【0180】
本発明に従って有用な遮光剤のさらなる非限定的な例は、Haffeyらに対する米国特許第5,087,445号、Turnerらに対する米国特許第5,073,372号、およびSabatelliらに対する米国特許第5,160,731号に記載されており、これらの全ては、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0181】
(6.局所麻酔薬)
局所麻酔薬もまた、局所感染により引き起こされる疼痛およびかゆみを低減させる目的で、局所処方物において使用され得る。適切な局所麻酔薬としては、ベンゾカイン、リドカイン、ジブカイン、エチドカイン、ベンジルアルコール、ショウノウ、レゾルシノール、およびメタノールが挙げられる。
【0182】
(7.抗ヒスタミン薬)
本開示の組成物に含まれ得る適切な抗ヒスタミン薬としては、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジメンヒドリネート、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
(8.酸化防止剤)
本開示の組成物はまた、1種以上の酸化防止剤を含有し得る。適切な酸化防止剤としては、亜鉛、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、α−カロチン、β−カロチン、クリプトキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン(zeaxathin)、カテキン、レスベラトロール(reserveratrol)、プロアントシアニジン、補酵素Q10、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
特定の実施形態において、これらの組成物は、塩化ベンザルコニウム、コルチコステロイド、またはこれらの組み合わせを含有する。
【0185】
(D.処方物)
式I、式II、またはこれらの両方による脂溶性緑茶ポリフェノールを含む、本明細書中に開示される化合物の処方物は、安全かつ有効であると考えられる材料からなる薬学的に受容可能な賦形剤を使用して調製され得、そして望ましくない生物学的副作用も望まれない相互作用も引き起こさずに、個体に投与され得る。これらの賦形剤は、本明細書中に開示される1種以上の脂溶性緑茶ポリフェノール化合物以外の、薬学的処方物中に存在する全ての成分である。本明細書中で一般的に使用される場合、「賦形剤」としては、界面活性剤、乳化剤、エマルジョン安定剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、溶媒および防腐剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
(1.賦形剤)
好ましい賦形剤としては、界面活性剤(特に、非イオン性界面活性剤);乳化剤(特に、乳化蝋);および液体の不揮発性非水性材料(特に、プロピレングリコールなどのグリコール)が挙げられる。油相は、薬学的に認可されている他の油性賦形剤を含有し得る。例えば、ヒドロキシ化されたヒマシ油またはゴマ油などの材料が、油相において、界面活性剤または乳化剤として使用され得る。
【0187】
(a.皮膚軟化剤)
適切な皮膚軟化剤としては、当該分野において一般的に公知であり、そして「Handbook of Pharmaceutical Excipients」,第4版,Pharmaceutical Press,2003などの概説書に列挙されているものが挙げられる。これらとしては、扁桃油、ヒマシ油、セラトニア(ceratonia)抽出物、セトステアロイルアルコール(cetostearoyl alcohol)、セチルアルコール、セチルエステル蝋、コレステロール、綿実油、シクロメチコーン(cyclomethicone)、パルミトステアリン酸エチレングリコール、グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、レシチン、軽鉱物油、中鎖トリグリセリド、鉱油およびラノリンアルコール、ワセリン、ワセリンおよびラノリンアルコール、ダイズ油、デンプン、ステアリルアルコール、ヒマワリ油、キシリトールおよびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、皮膚軟化剤は、エチルヘキシルステアレートおよびパルミチン酸エチルヘキシルである。
【0188】
(b.界面活性剤)
適切な界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、硫酸アルキル、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアミドエーテルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルフェート、硫酸モノグリセリド;スルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルアミド、スルホン酸アルキルアリール、スルホン酸オレフィン、スルホン酸パラフィン;スルホコハク酸アルキル、アルキルエーテルスルホスクシネート、スルホコハク酸アルキルアミド;スルホスクシンアミド酸アルキル;スルホ酢酸アルキル;リン酸アルキル、アルキルエーテルホスフェート;サルコシン酸アシル、イセチオン酸アシルおよびN−アシルタウレート(N−acyl taurate)の、アルカリ性塩、アンモニウム塩、アミン塩、アミノアルコール塩およびマグネシウム塩が挙げられる。これらの種々の化合物中のアルキル基またはアシル基は、一般に、8個〜30個の炭素原子を含む炭素ベースの鎖からなる。
【0189】
適切な陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えば、オレイン酸塩、リシノール酸塩、パルミチン酸塩およびステアリン酸塩);ヤシ油酸または硬化ヤシ油酸;ラクチル酸アシル(ここでアシル基は、8個〜30個の炭素原子を含む)が挙げられる。
【0190】
弱陰イオン性であると考えられる界面活性剤(例えば、ポリオキシアルキレン化カルボキシル基を含むアルキルエーテル酸もしくはアルキルアリールエーテル酸またはその塩、ポリオキシアルキレン化カルボキシル基を含むアルキルアミドエーテル酸またはその塩、およびアルキルD−ガラクトシドウロン酸またはその塩)もまた使用され得る。
【0191】
適切な両性界面活性剤は、第二級または第三級の脂肪族アミン誘導体(ここでその脂肪族基は、8個〜22個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖であり、そして少なくとも1つのカルボキシレート基、スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基またはホスホネート水溶性化陰イオン性基を含む);(C8〜C20)アルキルベタイン、スルホベタイン、(C8〜C20)アルキル−アミド(C1〜C6)アルキルベタインまたは(C8〜C20)アルキル−アミド(C1〜C6)アルキルスルホベタインである。
【0192】
これらの非イオン性界面活性剤は、より特定すると、ポリエトキシ化、ポリプロポキシ化、またはポリグリセロール化された、脂肪酸またはアルキルフェノールまたはアルコール(8個〜30個の炭素原子を含む脂肪鎖を有し、エチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基の数は、2個〜50個であり、そしてグリセロール基の数は、2個〜30個である)から選択される。
【0193】
ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホ−二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、カプロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、カプリロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸、およびココアンホ二プロピオン酸もまた使用され得る。
【0194】
代表的な陽イオン性界面活性剤は、特に、必要に応じてポリオキシアルキレン化された第一級、第二級または第三級の脂肪アミン塩;第四級アンモニウム塩;イミダゾリン誘導体;あるいは陽イオン性のアミンオキシドから選択される。
【0195】
適切な第四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物(例えば、塩化物)(例えば、ジアルキルジメチルアンモニウムまたはアルキルトリメチルアンモニウムクロリドであり、ここでこのアルキル基は、約12個〜22個の炭素原子を含む)であり、特に、ベヘニルトリメチルアンモニウム、ジステアリル−ジメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムまたはベンジル−ジメチルステアリルアンモニウムクロリド、あるいはステアルアミドプロピルジメチル(酢酸ミリスチル)アンモニウムクロリドである。
【0196】
ジアシルオキシエチルジメチルアンモニウム塩、ジアシルオキシエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウム塩、モノアシルオキシエチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム塩、トリアシルオキシエチルメチルアンモニウム塩およびモノアシルオキシエチルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム塩(特に、塩化物または硫酸メチル)、ならびにこれらの組み合わせもまた使用され得る。これらのアシル基は、好ましくは、14個〜18個の炭素原子を含み、そしてより特定すると、植物油(例えば、パーム油またはヒマワリ油)から得られる。
【0197】
使用され得るさらなる界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ラウリルジメチルアミン−オキシド(LDAO)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、およびビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
さらなる非イオン性界面活性剤としては、乳化蝋、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン、モノステアリン酸グリセリン、ポロキサマー、ポビドンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ステアリルアルコールである。
【0199】
代表的な洗剤としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
(c.乳化剤)
適切な乳化剤としては、アカシア、陰イオン性乳化蝋、ステアリン酸カルシウム、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ハイプロメロース(hypromellose)、ラノリン、含水物質(hydrous)、ラノリンアルコール、レシチン、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱油およびラノリンアルコール、一塩基性リン酸ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化蝋、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、アルギン酸プロピレングリコール、自己乳化性モノステアリン酸グリセリル、クエン酸ナトリウム脱水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカント、トリエタノールアミン、キサンタンゴムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、乳化剤は、ステアリン酸グリセロールである。
【0201】
(d.緩衝剤)
緩衝剤は、好ましくは、組成物を約4のpH〜約7.5のpH、より好ましくは、約4のpH〜約7のpH、そして最も好ましくは、約5のpH〜約7のpHに緩衝する。
【0202】
本開示の組成物はまた、化粧品において通常使用されるアジュバント(例えば、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、湿潤剤、糖、両性ポリマー、メントール、ニコチネート誘導体、毛の損失を防止するための剤、泡安定剤、噴射剤、色素、ビタミンもしくはプロビタミン、酸性化剤もしくは塩基性化剤、または他の周知の化粧用アジュバント)から選択される、少なくとも1種のアジュバントを含有し得る。
【0203】
(2.カプセル化)
別の実施形態において、緑茶ポリフェノールは、マイクロカプセルへのカプセル化によって、ポリマー成分に組み込まれ得る。マイクロカプセルは、キャリア、コーティング、またはマトリックスの大部分の材料とは異なる材料から製造され得る。適切なマイクロカプセルは、宿主において腐食する材料から製造されるもの、または緑茶ポリフェノールがマイクロカプセルから拡散することを可能にするように製造されるものである。このようなマイクロカプセルは、カプセル化された緑茶ポリフェノールの、マイクロカプセルからの制御された放出を提供するために使用され得る。
【0204】
任意の特定のサイズ範囲の微粒子を調製するための、多数の方法が公知である。本発明の種々の送達ビヒクルのうちで、微粒子のサイズは、約0.2μmから約100μmまでの範囲であり得る。ゲル粒子微粒子、または融解材料製の微粒子についての合成方法は、公知であり、そしてエマルジョン中、スプレーされた液滴中、および分離した相中での重合が挙げられる。固体材料または予備形成されたゲルについて、公知の方法としては、湿式ミリングまたは乾式ミリング、粉砕、微粉砕、エアジェットによるサイズ分離、およびふるい分けなどが挙げられる。
【0205】
微粒子は、当業者に公知である種々の異なる方法を使用して、様々なポリマーから製造され得る。例示的な方法としては、ポリ乳酸および他の微粒子の調製を詳述する以下に記載される方法が挙げられる。ポリ乳酸微粒子は、好ましくは、以下の3つの方法のうちの1つを使用して製造される。すなわち、溶媒エバポレーション(Mathiowitzら,(1990)J.Scanning Microscopy 4:329;Beckら,(1979)Fertil.Steril.31:545;およびBenitaら,(1984)J.Pharm.Sci.73:1721に記載されるような);ホットメルトマイクロカプセル化(Mathiowitzら,Reactive Polymers 6:275(1987)に記載されるような);ならびに噴霧乾燥。マイクロカプセル化された生物活性物質を調製するための例示的な方法が、以下に記載される。
【0206】
溶媒エバポレーション法において、マイクロカプセルポリマーが、揮発性有機溶媒(例えば、塩化メチレン)に溶解される。緑茶ポリフェノール(可溶であるか、または微細な粒子として分散可能であるかのいずれか)がこの溶液に添加され、そしてこの混合物が、表面活性剤(例えば、ポリ(ビニルアルコール))を含有する水溶液中に懸濁される。得られたエマルジョンは、ほとんどの有機溶媒が蒸発して固体の微粒子を残すまで、撹拌される。この溶液は、緑茶ポリフェノールを入れられ、そして激しく撹拌されている、ポリ(ビニルアルコール)(Sigma)を含有する蒸留水中に懸濁される。撹拌時間後、有機溶媒をポリマーから蒸発させ、そして得られた微粒子が水で洗浄され、そして凍結乾燥機で一晩乾燥させられる。様々なサイズ(1μm〜1000μm)および形態を有する微粒子が、この方法により得られ得る。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンなどの、比較的安定なポリマーについて有用である。ポリ酸無水物などの不安定なポリマーは、水の存在に起因して、この製造プロセス中に分解し得る。これらのポリマーについては、以下の2つの方法(完全に無水の有機溶媒中で実施される)が、好ましくは使用される。
【0207】
ホットメルトカプセル化法において、ポリマーが最初に融解され、次いで生物学的に活性な材料の固体粒子(これは好ましくは、50ミクロン未満にふるい分けされている)と混合される。この混合物が非混和性溶媒(シリコーン油など)に懸濁され、そして撹拌を続けながら、このポリマーの融点より約5℃高い温度に加熱される。一旦、このエマルジョンが安定化したら、ポリマー粒子が固化するまで冷却する。得られた微粒子は、石油エーテルなどの溶媒でのデカンテーションにより洗浄されて、自由に流動する粉末を与える。約1ミクロン〜約1000ミクロンの範囲のサイズを有する微粒子が、この方法を用いて得られる。この技術を用いて調製されたカプセルの外側表面は、通常、滑らかかつ濃密である。この手順は、好ましくは、ポリエステルおよびポリ酸無水物から作製される微粒子を調製するために使用される。
【0208】
溶媒除去技術は、ポリ酸無水物について好ましい。この方法において、緑茶ポリフェノールは、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒中の、選択されたポリマーの溶液に、分散または溶解される。この混合物は、撹拌により、有機油(例えば、シリコーン油)中に懸濁されて、エマルジョンを形成する。溶媒エバポレーションとは異なり、この方法は、融点が高く、分子量が異なるポリマーから、微粒子を作製するために使用され得る。約1μm〜約300μmの範囲の微粒子が、この手順により得られ得る。この技術を用いて製造される球の外部の形態は、ポリマーの型に非常に依存する。噴霧乾燥において、ポリマーは、塩化メチレンに溶解される。既知の量の緑茶ポリフェノールが、このポリマー溶液に懸濁または共溶解される。次いで、この溶液または分散物が、噴霧乾燥される。約1μm〜約10μmの範囲の微粒子が得られ、その形態は、使用されるポリマーの型に依存する。
【0209】
1つの実施形態において、緑茶ポリフェノールは、アルギン酸ナトリウムエンベロープを有するマイクロカプセルにカプセル化される。ゲル型ポリマー(例えば、アルギネート)から作製された微粒子は、従来のイオンゲル化技術によって生成される。ポリマーは最初に、水溶液に溶解され、硫酸バリウムまたは何らかの生物活性剤と混合され、次いで、微小液滴形成デバイス(このデバイスは、いくつかの例において、液滴を破壊するために窒素ガスの流れを使用する)を通して押し出される。ゆっくりと撹拌されている(約100RPM〜170RPM)イオン硬化浴を、この押出しデバイスの下方に配置して、形成する微細液滴を捕捉する。これらの微粒子は、ゲル化が起こるために充分な時間を許容する目的で、約20分〜30分間、この浴内でインキュベートされたままにされる。微粒子のサイズは、種々のサイズの押し出し機を使用すること、または窒素ガスもしくはポリマー溶液のいずれかの流量を変更することによって、制御される。
【0210】
リポソームは、緑茶ポリフェノールを特定の組織に送達することを補助し得、そしてまた、緑茶ポリフェノールの半減期を増加させ得る。リポソームは、種々の供給者から市販されている。あるいは、リポソームは、当業者に公知である方法(例えば、Eppsteinら,米国特許第4,522,811号に記載されるような方法)によって、調製され得る。一般に、リポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成され、これらの脂質は一般に、中性または負に荷電したリン脂質、およびコレステロールなどのステロールを含む。脂質の選択は一般に、望ましいリポソームサイズ、および血流中でのリポソームの半減期などの要因を考慮することによって、支配される。リポソームを調製するための種々の方法が公知であり、例えば、Szokaら,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980);ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号に記載されるものである。1つの実施形態において、緑茶ポリフェノールをカプセル化するリポソームは、リポソームの標的を、HSV感染またはその近くの特定の細胞または組織に定め得る、リガンド分子を含む。
【0211】
1つの実施形態において、本開示の緑茶ポリフェノールをカプセル化するリポソームは、単核性のマクロファージおよび細網内皮系によるクリアランスを回避するように、例えば、その構造の表面に結合したオプソニン作用阻害部分を有することによって、改変される。1つの実施形態において、リポソームは、オプソニン作用阻害部分とリガンドとの両方を含む。リポソームを調製する際に使用するための、オプソニン作用阻害部分は、1つの実施形態において、リポソーム膜に結合した、大きい親水性ポリマーである。本明細書中で使用される場合、オプソニン作用阻害部分は、リポソーム膜に化学的または物理的に付着する場合(例えば、リポソーム膜自体への脂溶性アンカーの挿入により、または膜脂質の活性基に直接結合することにより)、このリポソーム膜に「結合」している。これらのオプソニン作用阻害性の親水性ポリマーは、保護表面層を形成し、この層は、マクロファージ−単球系(「MMS」)および細網内皮系(「RES」)によるこれらのリポソームの取り込みを、有意に減少させる(例えば、米国特許第4,920,016号に記載されるように)。従って、オプソニン作用阻害部分で改変されたリポソームは、改変されていないリポソームよりもかなり長期間、循環中に残る。この理由により、このようなリポソームはときどき、「ステルス」リポソームと呼ばれる。ステルスリポソームは、多孔性または「漏れやすい」微小血管により供給される組織に蓄積することが公知である。さらに、RESによる取り込みが低下することにより、肝臓および脾臓への有意な蓄積が防止されることによって、ステルスリポソームの毒性が低下する。
【0212】
リポソームを改変するために適切なオプソニン作用阻害部分は、好ましくは、約500ダルトン〜約40,000ダルトン、そしてより好ましくは約2,000ダルトン〜約20,000ダルトンの分子量を有する、水溶性ポリマーである。このようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えば、メトキシPEGもしくはメトキシPPG、およびステアリン酸PEGもしくはステアリン酸PPG;合成ポリマー(例えば、ポリアクリルアミドまたはポリN−ビニルピロリドン);線状、分岐状、または樹状のポリアミドアミン;ポリアクリル酸;カルボキシル基またはアミノ基が化学結合しているポリアルコール(例えば、ポリビニルアルコールおよびポリキシリトール)、ならびにガングリオシド(例えば、ガングリオシドGM1)が挙げられる。PEG、メトキシPEG、またはメトキシPPG、あるいはこれらの誘導体のコポリマーもまた、適切である。さらに、オプソニン作用阻害ポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖類、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、またはポリヌクレオチドのいずれかとの、ブロックコポリマーであり得る。オプソニン作用阻害ポリマーはまた、アミノ酸またはカルボン酸を含む天然多糖類(例えば、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナン);層状の多糖類またはオリゴ糖(線状もしくは分岐状);あるいはカルボキシル化された多糖類またはオリゴ糖(例えば、カルボン酸の誘導体と反応してカルボン酸基の結合を生じたもの)であり得る。好ましくは、オプソニン作用阻害部分は、PEG、PPG、またはその誘導体である。PEGまたはPEG誘導体で改変されたリポソームは、ときどき「PEG化リポソーム」と呼ばれる。オプソニン作用阻害部分は、多数の周知の技術のうちのいずれか1つによって、リポソーム膜に結合し得る。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが、ホスファチジル−エタノールアミン脂溶性アンカーに結合し得、次いで、膜に結合し得る。同様に、デキストランポリマーが、Na(CN)BH3および溶媒混合物(例えば、30:12の比のテトラヒドロフランおよび水)を使用する60℃での還元的アミノ化によって、ステアリルアミン脂溶性アンカーで誘導体化され得る。
【0213】
本開示の微粒子およびリポソーム、ならびに微粒子およびリポソームを調製する方法は、例として与えられたのであり、本開示において役立つ微粒子またはリポソームの範囲を限定することは意図されない。様々な方法により製造された微粒子またはリポソームのアレイが、本発明において役立つことは、当業者に明らかである。
【0214】
(E.薬学的組成物)
別の実施形態は、1種以上の緑茶ポリフェノール、修飾緑茶ポリフェノール、特に、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートの、薬学的に受容可能な塩、あるいはその薬学的に受容可能な多型、溶媒和物、水和物、脱水和物、共晶、無水物、非晶質形態、およびこれらの組み合わせを含有する、薬学的組成物および剤形を提供する。本開示の化合物の特定の塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、およびこれらの水和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
緑茶ポリフェノールの薬学的単位剤形は、患者への経口投与、粘膜(例えば、鼻腔、舌下、膣、頬、または直腸)投与、非経口(例えば、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、またはボーラス注射)、局所投与、あるいは経皮投与のために適切である。剤形の例としては、錠剤;カプレット;カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセルおよび軟らかい弾性ゼラチンカプセル);カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ;分散物;坐剤;軟膏剤(ointment);ハップ剤(湿布);ペースト;散剤;包帯剤;クリーム;硬膏剤;液剤;パッチ;エアロゾル(例えば、鼻用スプレーまたは吸入器);ゲル;患者への経口投与または経粘膜投与に適した液体剤形(懸濁物(例えば、水性または非水性の液体懸濁物、水中油エマルジョン、または油中水型の液体エマルジョン)、溶液およびエリキシル剤が挙げられる);患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに患者への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構成され得る滅菌固体(例えば、結晶性固体または非晶質固体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
本開示の緑茶ポリフェノールの剤形の組成、形状、および型は、代表的に、それらの用途に依存して変わる。非経口剤形は、同じ疾患または障害を処置するために使用される経口剤形よりも少ない量の活性成分を含有し得る。本開示により包含される特定の剤形が互いから変わる、これらおよび他の方法は、当業者に容易に明らかになる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990)を参照のこと。
【0217】
本開示の薬学的組成物および単位剤形は代表的に、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤または希釈剤もまた含有する。本開示の特定の化合物により提供される利点(例えば、増加した溶解度および/または増強された流動、純度、もしくは安定性(例えば、吸湿性)の特性であるが、これらに限定されない)は、本開示の化合物を、薬学的処方物のため、および/または患者への投与のために、先行技術よりもよく適したものにし得る。適切な賦形剤は、薬剤学または薬学の当業者に周知であり、そして適切な賦形剤の非限定的な例は、本明細書中に提供される。特定の賦形剤が薬学的組成物または剤形への組み込みに適しているか否かは、当該分野において周知である種々の要因(剤形が患者に投与される方法が挙げられるが、これに限定されない)に依存する。例えば、経口剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)は、非経口剤形における使用に適さない賦形剤を含有するかもしれない。特定の賦形剤の適切さもまた、剤形中の特定の活性成分に依存し得る。例えば、いくらかの活性成分の分解は、いくらかの賦形剤(例えば、ラクトース)によって、または水に曝露される際に、加速され得る。第一級アミンまたは第二級アミンを含む活性成分は、このような加速された分解を特に受けやすい。
【0218】
本開示は、活性成分(例えば、緑茶ポリフェノール)が分解する速度を低下させる1種以上の化合物を含有する、薬学的組成物および剤形をさらに包含する。このような化合物(本明細書中で「安定剤」と称される)としては、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤、または塩緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本開示の薬学的組成物または剤形は、1種以上の溶解度モジュレーター(例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または有機酸)を含有し得る。特定の溶解度モジュレーターは、酒石酸である。
【0219】
賦形剤の量および型と同様に、剤形中の緑茶ポリフェノールの量および特定の型は、患者に投与される経路が挙げられるがそれに限定されない要因に依存して、異なり得る。しかし、本開示の緑茶ポリフェノール化合物の代表的な剤形は、薬学的に受容可能な塩、またはその薬学的に受容可能な多型、溶媒和物、水和物、脱水和物、共晶、無水物、もしくは非晶質形態を、約10mg〜約1000mgの量、好ましくは約25mg〜約750mgの量、より好ましくは50mg〜500mgの量、なおより好ましくは約30mg〜約100mgの量で、含有する。
【0220】
さらに、これらの化合物および/または組成物は、脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子を使用して送達され得る。例えば、これらのナノ粒子は、非経口投与される薬物の薬理学的特性および治療特性を改善するように設計され得る(Allen,T.M.,Cullis,P.R.Drug delivery systems:entering the mainstream.Science.303(5665):1818−22(2004))。
【0221】
本開示の局所剤形としては、クリーム、ローション、軟膏剤(ointment)、ゲル、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョン、および当業者に公知である他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms,第4版,Lea & Febiger,Philadelphia,Pa.(1985)を参照のこと。噴霧不可能な局所剤形については、局所用途に適合性であり、そして好ましくは水より大きい動粘性率を有する、キャリアまたは1種以上の賦形剤を含有する、粘性から半固体または固体の形態が、代表的に使用される。適切な処方物としては、溶液、懸濁物、エマルジョン、クリーム、軟膏剤(ointment)、粉末、リニメント剤、および軟膏(salve)などが挙げられるが、これらに限定されず、これらは所望であれば、滅菌されるか、または種々の特性(例えば、浸透圧)に影響を与えるための補助剤(例えば、防腐剤、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、または塩)と混合される。他の適切な局所剤形としては、噴霧可能なエアロゾル調製物が挙げられ、ここで活性成分は、好ましくは固体または液体の不活性キャリアと組み合わせられて、加圧された揮発性物質(例えば、フレオンなどの気体噴射剤)との混合物中で包装されるか、またはスクイーズボトルに包装される。加湿剤または湿潤剤もまた、所望であれば、薬学的組成物および剤形に添加され得る。このようなさらなる成分の例は、当該分野において周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990)を参照のこと。
【0222】
本開示の組成物の経皮剤形および経粘膜剤形としては、点眼剤、パッチ、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、坐剤、軟膏剤(ointment)、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁物、または当業者に公知である他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms,第4版,Lea & Febiger,Philadelphia,Pa.(1985)を参照のこと。口腔内の粘膜組織を処置するために適切な剤形は、うがい薬、口腔ゲル、または頬パッチとして処方され得る。さらなる経皮剤形としては、「レザバ型」または「マトリックス型」のパッチが挙げられ、これらは、皮膚に付けられ得、そして所望の量の活性成分の浸透を許容するための特定の期間にわたって、装着され得る。
【0223】
本開示の緑茶ポリフェノールを投与するために使用され得る、経皮剤形およびこれらを投与する方法の例としては、米国特許第4,624,665号;同第4,655,767号;同第4,687,481号;同第4,797,284号;同第4,810,499号;同第4,834,978号;同第4,877,618号;同第4,880,633号;同第4,917,895号;同第4,927,687号;同第4,956,171号;同第5,035,894号;同第5,091,186号;同第5,163,899号;同第5,232,702号;同第5,234,690号;同第5,273,755号;同第5,273,756号;同第5,308,625号;同第5,356,632号;同第5,358,715号;同第5,372,579号;同第5,421,816号;同第5,466;465号;同第5,494,680号;同第5,505,958号;同第5,554,381号;同第5,560,922号;同第5,585,111号;同第5,656,285号;同第5,667,798号;同第5,698,217号;同第5,741,511号;同第5,747,783号;同第5,770,219号;同第5,814,599号;同第5,817,332号;同第5,833,647号;同第5,879,322号;および同第5,906,830号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
本開示により包含される経皮剤形および経粘膜剤形を提供するために使用され得る、適切な賦形剤(例えば、キャリアおよび希釈剤)ならびに他の材料は、薬学分野の当業者に周知であり、そして所定の薬学的組成物または剤形が塗布される特定の組織または器官に依存する。この事実を考慮して、非毒性であり薬学的に受容可能である剤形を形成するための代表的な賦形剤としては、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
処置されるべき特定の組織に依存して、さらなる成分が、本開示の緑茶ポリフェノールの薬学的に受容可能な塩での処置前、処置と同時、または処置後に、使用され得る。例えば、浸透増強剤が、組織へ、または組織を横切って、活性成分を送達することを補助するために使用され得る。適切な浸透増強剤としては、アセトン;種々のアルコール(例えば、エタノール、オレイルアルコール、およびテトラヒドロフリルアルコール);アルキルスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド);ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ピロリドン(例えば、ポリビニルピロリドン);Kollidon等級(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびに種々の水溶性または水不溶性の糖エステル(例えば、TWEEN 80(ポリソルベート80)およびSPAN 60(モノステアリン酸ソルビタン))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0226】
薬学的組成物もしくは剤形のpH、またはこの薬学的組成物もしくは剤形が塗布される組織のpHもまた、活性成分(単数または複数)の送達を改善するために調整され得る。同様に、溶媒キャリアの極性、そのイオン強度、または張度が、送達を改善するために調整され得る。ステアレートなどの化合物もまた、薬学的組成物または剤形に添加されて、送達を改善するために、その活性成分(単数または複数)の親水性または親油性を有利に変更し得る。この点に関して、ステアレートは、この処方物のための脂質ビヒクルとして、乳化剤または界面活性剤として、および送達増強剤または浸透増強剤として、働き得る。接着結合モジュレーターの薬学的に受容可能な塩の、異なる水和物、脱水和物、共晶、溶媒和物、多型、無水物、または非晶質形態が、得られる組成物の特性をさらに調整するために使用され得る。
【0227】
本開示の緑茶ポリフェノール組成物はまた、延長放出処方物または遅延放出処方物として、処方され得る。種々の活性成分のための延長放出処方物および遅延放出処方物は、当該分野において公知であり、例えば、カプセル化による。
【0228】
なお別の実施形態は、緑茶ポリフェノール局所皮膚用スプレーを提供する。
【0229】
緑茶ポリフェノール化合物(特に、C1〜C30の炭化水素鎖でエステル化された緑茶ポリフェノール)は、約0.001%w/v〜約50%w/v、代表的には約0.25%w/v〜約20%w/v、より代表的には約1%w/v〜約15%w/vで存在する。特定の実施形態において、これらの緑茶ポリフェノールは、約10%w/vで存在する。
【0230】
(IV.使用の方法)
1種以上のGTP、修飾GTP、またはこれらの組み合わせを含有する、本開示の組成物は、ウイルス感染の1つ以上の症状を処置するために有用である。好ましくは、本開示の組成物は、ヒトまたは動物の身体の表面領域(皮膚、粘膜、毛、歯、爪および唇が挙げられる)への局所塗布のために、処方される。
【0231】
1つの実施形態は、本開示のGTPまたは修飾GTP(例えば、式Iまたは式IIによるもの)のうちの1種以上を含有する、HSVを処置するための組成物を提供する。このような処方物は、上記のように、皮膚への局所塗布のために処方される。これらの処方物は、ローション、クリーム、軟膏(salve)、軟膏剤(ointment)、流体、ヒドロゲル、泡沫、コロイド、懸濁物、または乾燥粉末の形態で、皮膚に直接塗布され得る。
【0232】
このGTP組成物は、ウイルス感染(例えば、HSV)の1つ以上の症状を処置するために有効な量で、ある量の1種以上の緑茶ポリフェノール、修飾GTP、その薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、または誘導体を含有する。
【0233】
これらの緑茶ポリフェノール組成物は、被験体(好ましくは、ヒト被験体)に、必要に応じて1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、局所投与され得る。この組成物は、必要に応じて、1日あたり1回、2、3回、またはより多い回数で、局所塗布され得る。
【0234】
(V.組成物を作製する方法)
(A.修飾緑茶ポリフェノール)
修飾緑茶ポリフェノール(好ましくは、非修飾緑茶ポリフェノールと比較して脂質溶解度が増加している修飾緑茶ポリフェノール)は、例えば、ChenおよびDu,(2003)Chinese J Chem,21:979−981(これは、許容される場合、その全体が本明細書中に参考として援用される)により記載された方法によって生成され得る。手短に言えば、緑茶ポリフェノールを、望ましい数の炭素を有する塩化アシルと酢酸エチル中で反応させる。この反応物を濾過し、そしてその反応溶液を脱イオン水で洗浄する。上層である有機層をエバポレートし、そして減圧下で乾燥させる。この脂溶性緑茶ポリフェノールは、例えばChenら(2002)J.Chromatography,982:163−165(これは、許容される場合、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるような高速向流クロマトグラフィーを使用して、単離され得る。次いで、この単離された脂溶性緑茶ポリフェノールは、組成物(例えば、局所処方物)に処方され得る。
【0235】
油中水型の局所組成物は、エマルジョン(例えば、クリーム、ローション、軟膏剤(ointment)、粉末、マイクロエマルジョン、リポソーム)の形態であっても、ゲル、液体、および泡沫の形態であってもよい。これらはまた、乾燥粉末処方物中に存在してもよい。
【0236】
(B.エマルジョン)
一般に、エマルジョンは、乳化と粘度と安定性と外観との望ましい釣り合いを達成する目的で、他の多数の物質の存在下で調製される。例えば、エマルジョンの処方は通常、少なくとも1種、そして頻繁には数種の組み合わせの乳化剤を必要とする。これらの剤は、一方の非混和性相の他方への分散を容易にし、そしてこのエマルジョンを安定化するのを補助する。乳化剤およびそれらの用途の包括的な概説は、Becher,P.Encyclopedia of Emulsion Technology,Dekker編,1983に見出され得る。
【0237】
1つの実施形態において、油相は、1種以上の界面活性剤、必要に応じて1種以上の乳化剤、および本開示の脂溶性緑茶ポリフェノールのうちの1種以上を一緒に混合し、必要であれば融解することにより調製される。水相は、必要に応じて加熱しながら、防腐剤を水に溶解することにより、別に調製される。この水相がこの油相に、例えば、連続高剪断混合を行いながら添加されて、白濁したエマルジョンを生成する。このエマルジョンが冷却され、そしてそのpHが、緩衝剤の添加により調整される。この処方物は、水の添加により、最終重量にされる。
【0238】
界面活性剤または洗剤は、組成物の総重量に対して0.01重量%〜50重量%の割合で、この組成物において必要に応じて使用される。この組成物がシャンプーの形態である場合、これらの界面活性剤または洗剤は一般に、この組成物の総重量に対して少なくとも1重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、そして特に、8%〜35%の割合で使用される。
【0239】
乳化剤(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約0.5重量%〜約50重量%である。緩衝剤(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約1重量%〜約25重量%であり、そして安定剤(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約1重量%〜約25重量%である。
【0240】
緑茶ポリフェノール化合物(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約0.001重量%〜約40重量%であり、特に、約0.001重量%〜約0.01重量%である。他の実施形態は、約1.0%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、または約35%の濃度の緑茶ポリフェノール化合物(単数または複数)を含有する。特定の実施形態において、1種以上の緑茶ポリフェノールは、投与される場合に、皮膚の炎症を減少させるため、またはふけを処置するために有効な量で存在する。別の実施形態において、1種以上の緑茶ポリフェノールは、被験体におけるウイルス複製を減少させるために有効な量で存在する。緑茶ポリフェノールの量は、処置されるべき障害に従って変わる。
【0241】
必要に応じての局所麻酔薬(topical anesthetics)の濃度は、約1重量%〜約10重量%であり、そして抗真菌剤および他の抗生物質の濃度は、約0.3重量%〜約5重量%である。
【実施例】
【0242】
(実施例1:Vero細胞におけるEGCGエステルの細胞生存率研究)
(材料および方法)
(緑茶ポリフェノール溶液)
2つの異なるポリフェノール、EGCGおよびEGCGエステル、すなわち、EGCGパルミテートを試験した。EGCGパルミテート(以下、EGCGエステルともいう)は、以下の構造:
【0243】
【化49】
を有する。
【0244】
本発明者らが使用した濃度範囲は12.5μM、25μM、50μM、75μM、および100μMであった。
【0245】
(細胞生存率アッセイ)
Vero細胞を6ウェルプレートで平板培養し、24時間後、様々な濃度のEGCGまたはEGCGエステル(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)を、それぞれ各ウェルに添加した。1時間後、ポリフェノールを吸引によって除去し、細胞をPBSで洗った。DMEM培地を各ウェルに入れ、細胞を24時間にわたってインキュベートした。その後、細胞を血球計およびトリパンブルー(これは、死細胞を青く染色するが、生細胞は白色のままにする)を用いて数えた。
【0246】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0247】
(結果)
Vero細胞を用いたHSVプラークアッセイを、エピガロカテキンガレート(EGCG)の添加を伴なって、およびこれを伴なわずに行った。無処理HSVプラークは結果として、1.03×107PFU/mlのウイルス力価であった。100μMのEGCGを加えた場合、ウイルスプラークは観察されなかった。これらの結果は、EGCGがHSV感染を阻害したことを示している。
【0248】
さらに、細胞生存率アッセイを、エピガロカテキンガレート(EGCG)および親油性茶ポリフェノール(LTP)の添加を伴なって、およびこれを伴なわずに行った。これらのアッセイの結果を表1に示す。
【0249】
【表1】
細胞傷害性研究は、12.5μM〜75μMの濃度でのEGCGおよびEGCGエステルは、細胞形態変化を誘導しないことを示した。細胞生存率を、トリパンブルーおよび血球計の直接細胞計数を用いて決定し、Vero細胞におけるEGCGエステルの影響を検出した。結果を図1および表2に示す。EGCGエステルの濃度が増大するにつれて、死細胞のパーセンテージが変化することはない。したがって、最大非毒性濃度である、75μMのEGCGエステルを使用してHSV1を処理し、その阻害効果を研究することが可能である。
【0250】
【表2】
細胞をEGCGエステルで処理したとき、細胞死のパーセンテージは、コントロールと比較してあまり変化がなかった。
【0251】
(実施例2:EGCGおよびEGCGエステルについての細胞傷害性研究)
(方法および材料)
(細胞傷害性アッセイ)
Vero細胞を、様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)のEGCGまたはEGCGエステルと共に6ウェルプレートで平板培養した。細胞を、カメラが取り付けられたACCU−Scope 3002顕微鏡を用いて、48時間後に形態および増殖の変化について研究した。
【0252】
あるいは、Vero細胞を6ウェルプレートで平板培養し、24時間後に様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)のEGCGまたはEGCGエステルを、それぞれ、各ウェルに添加した。1時間後、ポリフェノールを吸引によって除去し、細胞をPBSで洗った。細胞を、付属のカメラを伴なったACCU−Scope 3002顕微鏡を用いて、24時間後に形態および増殖の変化について研究した。
【0253】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0254】
(結果)
細胞は、より高濃度のEGCGおよびEGCGエステルを用いたことによって顕著な影響を受けることはなかった。
【0255】
HSV1処理のために使用するのに適当なEGCGおよびEGCGエステルの濃度を決定するために、細胞におけるポリフェノールの影響を研究した。様々な濃度のEGCGおよびEGCGエステル(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)を評価し、細胞の増殖および形態の両方について48時間で観察した。この実験において、ポリフェノールを、細胞をプレートに入れたのと同時に添加し、その後除去しなかった。
【0256】
培養真核生物細胞への緑茶ポリフェノールの細胞傷害性を評価するための実験は、細胞培養物におけるこれらのポリフェノールの中程度の毒性挙動を示す。結果は、EGCGをVero細胞に添加したとき、使用した濃度においては、形態変化は観察されないことを示す。EGCGエステルの存在下で、最大非毒性濃度を75μMと評価した。100μMの濃度において、細胞形態は、ある程度まで影響を受ける。
【0257】
さらに、様々な濃度のEGCGエステルのVero細胞への影響を、24時間で観察した。HSV1感染培養についての手順において、1時間の吸着の後、培地および吸着しなかったウイルスを吸引によって除去するので、類似の条件下でポリフェノールの影響を決定することが重要である。この研究において、Vero細胞を最初に24時間プレートで平板培養し、その後様々な濃度のEGCGエステル(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)を細胞に添加し、1時間吸着させた。その後、EGCGエステルを吸引によって除去し、細胞を24時間後に観察した。
【0258】
EGCGエステル濃度が増大するにつれて、細胞形態が大きく影響を受けるということはなかった。したがって、その後の実験に使用する方法はこれである。
【0259】
EGCGおよびEGCGエステルのHSV1およびVero細胞への影響について、様々なアプローチを用いて研究し、宿主細胞には影響がないが、ウイルスを効果的に阻害する濃度を確立した。初めに、細胞細胞傷害性アッセイにおいて、ポリフェノールの濃度が増大するにつれて、細胞形態は少し変化した。これは、細胞をプレートに入れたのと同時にポリフェノールを添加したときに観察した。一方で、細胞をあらかじめ24時間にわたってプレートに入れておいた後、ポリフェノールを1時間にわたって添加し、その後に除去したとき、細胞形態は影響を受けてはいないようだった。
【0260】
(実施例3:HSV感染におけるEGCGエステルの効果)
(方法および材料)
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0261】
(蛍光顕微鏡検査)
緑色蛍光HSV生合成を、蛍光顕微鏡検査および微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡検査を用いてコントロールVero細胞において観察した。細胞をガラスカバースリップ上で増殖させ、コンフルエンスまで到達させた。その後これらを、コントロールHSVまたは事前処理したHSVのいずれかに1時間感染させた。経時的研究を行い、その中で、ウイルスを1時間にわたって吸着させ、その後、吸引によって除去した。細胞をPBSで洗い、培地を各ウェルに添加した。8時間後、10時間後および12時間後、細胞を1:1アセトンおよびメタノール溶液を用いて固定し、微分干渉コントラスト設定を用いて、Zeiss Axiovision蛍光顕微鏡下で可視化した。
【0262】
HSV1/Vero細胞の溶解サイクルを、感染後8時間、10時間、12時間で観察し、感染細胞内での分子的変化を研究した。HSV1/Vero細胞をポジティブコントロールとして使用し、Vero細胞をネガティブコントロールとして使用した。75μMのEGCGエステル−HSV1/Vero細胞もまたモニターし、コントロールと比較した。GFP−HSV1、DAPI染色の核およびリソソーム染色を用いて、Vero細胞における細胞変性効果を同定した。一連の研究は3連で実施した。
【0263】
単一の細胞をHSV1感染およびEGCGエステル処理無しで処理した。この無処理細胞を参照として使用し、処理サンプルの全てと比較した。DAPI染色された核を有する細胞は、非常になめらかな縁を有し、核中に顆粒は無い。緑色蛍光画像において、明らかな緑色バックグラウンドがあるが、緑色蛍光粒子は無い。リソソーム染色において、赤色バックグラウンドがあるが、細胞内に明らかな蛍光赤色粒子は無い。
【0264】
次に、何ら処理を行っていない単層中の非感染Vero細胞を、400×の倍率下で観察した。位相差顕微鏡検査、DAPI、GFP、DAPI+GFP、DAPI+GFP+リソソーム染色および全染色オーバーレイの画像を取得した。全体として、この実験は、細胞形態および全ての蛍光染色についてのバックグラウンドの情報を提供する。
【0265】
(結果)
HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞を、感染後8時間で観察した。HSV1/Vero細胞についての位相差画像は、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞のものとは非常に異なる。HSV1/Vero細胞の細胞形態は、大きく変化しており、この細胞における溶解ウイルス感染を示していた。EGCGエステル−HSV1/Veroの細胞形態は、細胞単独の画像に非常に類似している。100μMのEGCGまたは100μMのEGCGエステルで処理したウイルスは、複製したり、さらなるビリオンを形成したりすることはできなかった。この結果は、EGCGエステルで処理された場合、HSV1は、その溶解サイクルを続けることができなかったことを意味している。HSV1/Vero細胞をDAPI染色で染色したとき、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞と比較して、細胞核において明らかな差異が存在する。顕著な顆粒化および縁の異常(demargination)はHSV1/Vero細胞においてのみ見られ、このことは、ウイルス感染の正常な発生を示している。
【0266】
EGCGエステル−HSV1/vero細胞は、自身の核の完全性をなお維持し、細胞のみの画像に類似した外見を示した。緑色蛍光画像は、明らかに、HSV1/Vero細胞において顕著な量のGFP発現を示すが、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞においては、ほとんど発現を示さない。さらに、リソソーム染色は、HSV1/vero細胞でのリソソーム活性化を示すが、EGCエステル−HSV1/vero細胞においては示さない。
【0267】
感染後10時間での画像において、細胞形態は、HSV1/Vero細胞において顕著に変化しており、感染8時間後よりもさらに変化している。EGCGエステル−HSV1/Vero細胞は、細胞のみの画像に非常に類似しているように見える。HSV1/Vero細胞のDAPI染色において、細胞核におけるなおさらなる顆粒化および縁の異常がある。さらに、緑色蛍光粒子を、HSV1/Vero細胞でのみ観察する。リソソーム染色は、感染の10時間後、HSV1/Vero細胞での顕著な活性化を示さなかった。対照的に、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞は、全ての蛍光画像において、感染の8時間後に類似の結果を示す。
【0268】
感染後12時間の実験において、細胞形態は、感染後8時間および10時間における細胞に類似したままであった。DAPIで染色した場合、より多くの顆粒化および縁の異常を、HSV1/Vero細胞のこの感染段階で観察する。緑色蛍光粒子も観察する。リソソーム活性化は観察されなかった。EGCGエステルHSV1/Vero細胞は、全ての蛍光画像において、感染後8時間および10時間の細胞と類似の結果を示し、細胞のみの画像とも類似する。
【0269】
要約すると、蛍光顕微鏡検査の結果を比較および対比させた場合、HSV1/Vero細胞と75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞との間の差異は、観察者にとって明らかである。HSV1感染細胞においては可視のウイルス粒子が存在するが、EGCGエステル−HSV1感染細胞では、ビリオンは、ほとんどない。
【0270】
細胞の核はまた、非常に異なっている。HSV1感染細胞においては、細胞の縁が損なわれ、染色体の顆粒化がおこる。EGCGエステル−HSV1感染細胞において、細胞の核は影響を受けなかった。
【0271】
緑色蛍光粒子を、HSV1/Vero細胞において、感染後8〜12時間に観察する。核の顆粒化および縁の異常の量は、HSV1/Vero細胞において、感染後8時間から10時間までに増大する。リソソーム活性化をHSV1/Vero細胞において、感染の8時間後に観察することができるが、10時間後には低減する。これらの結果はHSV1/Vero細胞溶解感染において報告されているイベントと良好な相関がある。EGCGエステルHSV1/Vero細胞において、これらのいずれも観察することは無く、このことは、75μMでのEGCGエステルはHSV1感染を阻害することができることを示す。
【0272】
蛍光計の実験において、GFP発現は、HSV1/Vero細胞と比較して、75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞において、大きく低下する。したがって、ウイルス生合成の一部としてのGFP発現は、HSV1をEGCGエステルで処理したときに、低減する。さらに、蛍光顕微鏡検査の分析は、GFPおよびDAPI染色の両方で注目すべき結果を示した。GFP発現は、HSV1/Vero細胞と比較して、75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞において低減した。さらに、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞に対してHSV1/Vero細胞の核の形態を評価すると、いくつかの差異が認められる。感染中、HSV1/Vero細胞の核では、その縁が損なわれ、染色体の多数の顆粒化がおこる。対照的に、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞の核は、感染を通じて、その完全性を保つ。
【0273】
(実施例4.EGCGエステルは細胞増殖を阻害しない)
(材料および方法)
(細胞増殖アッセイ)
細胞増殖キット(G5421,Promega Corp.)を使用した。これは、細胞増殖を決定するための比色定量の方法である。このキットは、テトラゾリウム化合物および電子カップリング試薬(フェナジンメトサルフェート)を含む。生細胞のみがテトラゾリウム化合物を可溶性ホルマザンに生物的に還元する(bioreduce)ことができる。したがって、形成され、490nmの吸光度で測定されたホルマザンの量は、生細胞数に正比例する。細胞を96ウェルプレートで平板培養し、24時間後、様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)のポリフェノールで処理して1時間吸着させた。その後、ポリフェノールを吸引によって除去し、100μLの新鮮なDMEMを各ウェルに添加した。24時間後、20μLのMTS試薬を培地中の細胞100μL毎に添加した。プレートを、37℃、5%CO2で4時間インキュベートし、その後、プレートリーダーを用いて吸光度を読み取った。
【0274】
(結果)
以前の結果は、EGCGエステルが、Vero細胞の細胞傷害および生存率に対して顕著な影響を示さないことを示した。本研究では、細胞増殖を以前に記載されたものと同じ条件下で調査した。各実験は3連でアッセイし、この比色定量アッセイの吸光度を、96ウェルELISAプレートリーダーを使用して、490nmで記録した。結果を表3および図2に示す。
【0275】
表3および図4の増殖アッセイ結果は、EGCGおよびEGCGエステルは両方とも、細胞増殖を大きくは阻害していないことを示す。コントロールと比較して、細胞は、490nmの吸光度レベルにおいて、ほんのわずかな低減を示した。これは、大部分の細胞が、MTSテトラゾリウムのホルマザンへの高い還元を誘導していること、したがって、高い細胞生存率を保っていることを示している。75μMまでのEGCGおよびEGCGエステル濃度の増大は、細胞増殖の顕著な低減を誘導しない。
【0276】
【表3】
(実施例5.HSV1粒子の生産に対するEGCGおよびEGCGエステルの効果)
(材料および方法)
(プラークアッセイを用いたウイルス力価研究)
Vero細胞を6ウェルプレートで平板培養し、コンフルエンスまで到達させた。HSVビリオンを細胞感染の前に、それぞれの濃度のポリフェノール(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)で1時間処理した。その後、細胞をHSVに感染させ、1時間吸着させた。その後、吸着しなかったウイルスを吸引によって除去した。その後、プレートを栄養培地含有寒天で覆った。50時間以内に、クリスタルバイオレットで細胞を染色してプラークを可視化し、観察して、数えた。
【0277】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0278】
(結果)
プラークアッセイを使用してウイルス力価を決定し、ウイルス粒子生産に対する50μMのEGCGおよびEGCGエステルの効果を研究した。ウイルス溶解物の連続希釈を10−1から10−7で実施し、その後、細胞をこの希釈物でそれぞれ感染させた。HSV1/Vero細胞の実験において、プラークを10−3から10−5ウイルス溶解物の希釈で観察し、ウイルス力価は、1.25×106PFU/mlであった。50μMのEGCG−HSV1/Vero細胞の実験において、プラークを、10−3から10−4でしか観察せず、ウイルス力価は、1×105PFU/mlであった。最後に、50μMのEGCGエステル−HSV1/Vero細胞の実験において、全てのウイルス溶解物の希釈において、プラーク形成を観察しなかった。この結果を、図3において要約する。この図は、HSV1/Vero力価とEGCG−HSV1/Vero力価とを比較したとき、1/10に低減することを示している。さらに、HSV1/Vero力価と比較したEGCGエステル−HSV1/Vero力価においては、さらなる大きな低減を示す。これは、EGCGエステルが、HSV1阻害において、EGCGと比較したときに、より強力であることを示す。
【0279】
HSV1に対するEGCGエステルの最小阻害濃度を得るために、様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM)のEGCGエステルを、より低い希釈のウイルス溶解物(10−1および10−2)で使用した。この結果は、EGCGエステル濃度が増大するにつれて、HSV1力価が低減することを示した。図6に示すように、50μM以上のEGCGエステル濃度において、HSV1のプラークを形成する能力は、>99%低減する。
【0280】
EGCGおよびEGCGエステルの両方についての最大非毒性濃度を、75μMと同定し、その後、これらの濃度を、HSV1ウイルス生産に対するEGCGおよびEGCGエステルの効果を研究するために使用した。プラークアッセイにおいて、ウイルスを事前に50μMのEGCGで処理したとき、結果は、1/10に低減したプラーク形成を示した。一方で、HSVを、50μM以上の濃度のEGCGエステルで処理するとき、プラークは観察されない。その後、様々な濃度のEGCGエステルを使用して、最小HSV1阻害濃度を決定した。この結果は、50μM以上の濃度において、EGCGエステルは完全にPFU形成を阻害することを示す。
【0281】
(実施例6.HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞における緑色蛍光タンパク質発現の研究)
(材料および方法)
(緑色蛍光タンパク質(GFP)を伴なったEsherichia coliアンピシリン耐性プラスミド)
Esherichia coliのアンピシリン耐性株を、アンピシリンおよびL−アラビノース(Larabinose)存在下のLuria Broth(LB)で当初増殖させた純粋なコロニーから単離した。コロニーを、コロニー移動の前に100μlのアンピシリンおよび100μlのL−アラビノースを補充した新たなLBに移動させた。使用したアンピシリンの濃度は100ng/mLであった。L−アラビノースの濃度を、連続希釈を用いて作り、5%パーセント溶液を作るためには1:10比と設定した。
【0282】
(蛍光計を用いたGFP発現研究)
GFP発現を、GFPプラスミドを含むEscherichia coli、およびGFPプラスミドを含まないEscherichia coliにおいて研究した。使用した蛍光計はTunerデジタル蛍光計−モデル450であった。サンプルを3mLのH2Oに入れ、連続希釈を各サンプルの最初の3mLから行った。標準希釈曲線をこの連続希釈物から得た。次に、Vero細胞をT−75フラスコで増殖させ、コンフルエンスに到達させた。HSV1ビリオンを、細胞感染の前に75μMのポリフェノールで3時間処理した。その後、細胞を、処理したHSV1−UL46および無処理のHSV1−UL46に感染させ、1時間吸着させた。その後、吸着しなかったウイルスを、PBSで細胞を2回洗うことで除去した。その後、細胞を37℃で12時間インキュベートした。その後、細胞をトリプシン処理し、ペレットにした。最後に、細胞を3mLのH2Oに再懸濁させ、蛍光計を用いてGFP発現について分析した。3mlの水をブランクサンプルとして使用した。より高い蛍光感度のためにGain knobを1000にセットした。
【0283】
(GHSV−UL46)
緑色蛍光タンパク質タグを有するHSVを用いて、HSVウイルスのライフサイクルを研究すること、およびインビトロHSV感染に対する親油性茶ポリフェノールの潜在的効果を研究することが可能である(Willard,M.Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。エステル修飾EGCGが、HSV感染に対して類似またはより良好な結果を有することを証明すれば、将来の動物およびヒト研究を、ヒトの単純ヘルペスウイルス感染を防ぐための、安定で、効果的な局所適用に向けて行うことができる。性的伝染HSVは、宿主細胞に非常に迅速に感染する。したがって、初期ウイルス感染の前にHSVを阻害するための有効な抗ウイルス薬物が作製されることが必要である(Isaacs CE,et al.Antimicrobial Agents and Chemotherapy.2008;52(3):962−970)。
【0284】
HSV1ウイルスモデルは、Washington University School of Medicineにおいて、研究者のチームによって改変された。緑色蛍光タンパク質を、テグメントタンパク質であるVP11/12をコードするウイルス遺伝子UL46に結合させた。概略図は図7で見ることができる。GFP配列を、相同組換えベクターおよび所望の配列を増幅するようにデザインされたプライマーを用いて、UL46遺伝子に加えた(Willard,M.Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。
【0285】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0286】
(HSV1−UL46ウイルスの維持)
HSV1−UL46ウイルスをATCC(Manassas,VA)から購入した。ウイルスの継代を、T−25フラスコ中で行い、細胞を完全細胞変性効果(CPE)に到達させた。その後、培地を15mLのトルネードチューブに収集し、1000rpmで10分間遠心分離して、細胞の残屑を除去した。その後、ウイルス含有上清を、必要なときまで−80℃未満に置いておいた。
【0287】
(結果)
本研究で使用したウイルスモデルシステムであるHSV−GFPUL46は、HSV1 UL46遺伝子に緑色蛍光タンパク質(GFP)タグを有する。本研究において、蛍光計を使用して、感染Vero細胞における緑色蛍光タンパク質発現を測定した。細胞中のGFP発現を定量的に決定するため、標準希釈曲線を、GFP挿入物を含むEscherichia coli(E.coli)を用いて生成した。さらに、GFP挿入物を有さないEscherichia coliを、ネガティブコントロールとして使用した。E.coli培養物の連続希釈物を材料および方法のセクションに記載したように調製した。結果を表4および図5に示す。結果で示されているように、線形の希釈曲線を、GFPを伴なったE.coliの連続希釈培養物を用いて首尾よく生成した。ネガティブコントロールは、非常に低い読み取り値を示す。この実験は、蛍光計の使用が、GFP発現の定量的測定を提供するのに適していることを示した。
【0288】
【表4】
この実験は、蛍光計を使用して、HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞の両方においてGFP発現を研究すること、および定量的に測定することができることを示している。本実験において、Vero細胞のみ、HSV1/Vero細胞、および75μMのEGCGエステル−HSV1/Vero細胞を使用して、GFP発現を定量的に測定した。結果を図6に示す。
【0289】
GFP発現は、HSV1/Vero細胞と比較して、75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞において大きく低下する。したがって、ウイルス生合成の一部としてのGFP発現は、HSV1がEGCGエステルで処理された場合に低減する。
【0290】
(実施例7.PCRベースアッセイを用いた、HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞における糖タンパク質D、GFP、およびVP11/12のアンプリコンの比較)
(方法および材料)
【0291】
【表5−1】
【0292】
【表5−2】
プライマーセットを使用して、HSV1/Vero細胞およびEGCGエステルHSV1/Vero細胞から単離したDNAを伸長開始させた(prime)。PCR産物を1%ゲル電気泳動を使用して分析した。全てのプライマーは、DNAサンプルを伸長開始させることができ、アンプリコンは、予想したサイズを有した。
【0293】
(PCR産物の配列決定)
各プライマーセット1〜9についてのPCR産物を配列決定し、NCBI相同性サーチを用いて分析した。その結果は、報告されたHSV1配列への高い相同性を示唆した。表6〜14は、各配列で行ったBlastサーチからの結果を示している。したがって、デザインしたプライマーを用いて、HSV1/Vero細胞に対するEGCGエステルの阻害の分子機構を首尾よく研究することができる。プライマーの配列は以下の通りである。
【0294】
【数1】
【0295】
【数2】
【0296】
【数3】
【0297】
【数4】
(ポリメラーゼ連鎖反応)
公表された配列に基づいて9つのセットのプライマーを、HSV1ゲノムの様々な領域を伸長開始させるようにデザインした。HSV1糖タンパク質Dを標的とするように、2つのセットのプライマーをデザインした。これらは、フォワードが5’−AGACGTCCGGAAACAACCCTACAA−3’(配列番号2)、リバースが5’−ACACAATTCCGCAAATGACCAGGG−3’(配列番号3)を含む。第2のセットは、フォワードが5’−TTGTTTGTCGTCATAGTGGGCCTC−3’(配列番号4)、リバースが5’TGGATCGACGGTATGTGCCAGTTT−3’(配列番号5)を含む。次に、HSV1糖タンパク質Bを標的とするように、2つのセットのプライマーをデザインした。プライマーは以下:フォワードが5’AGATTCTGCGGTACTGCGATCACT−3’(配列番号6)、リバースが5’−ACGGAACACAAACAAGCACGGATG−3’(配列番号7)である。第2のセットは、フォワードが5’−AGCTGATTATCGCCACCACACTCT−3’(配列番号8)、リバースが5’−TGGCGTTGATCTTGTCGATCACCT−3’(配列番号9)を含む。第3のセットのプライマーは、以前にデザインされており、S.Moira BrownおよびAlasdair R.MacLeanによって、書物、Herpes Simplex Virus Protocolsにおいて公表されている。このセットは、フォワードが5’ATTCTCCTCCGACGCCATATCCACCTT−3’(配列番号10)、リバースが5’−AGAAAGCCCCCATTGGCCAGGTAGT−3’(配列番号11)を含む。1セットのプライマーを、HSV1のUL46遺伝子に結合した緑色蛍光タンパク質を標的とするようにデザインした。これは、フォワードが5’−GACCCTGAAGTTCATCTGCACCA−3’(配列番号14)、リバースが5’−AACTCCAGCAGGACCATGTGAT−3’(配列番号15)を含む。GFPに対してデザインされた第2のセットのプライマーは、すでにデザインされている42。これは、フォワードが5’−GTCAAAGCTTAAGATGGTGAGCAAGG−3’(配列番号12)、リバースが5’−CTTGAAGCTTCTTGTACAGCTCGTCC−3’(配列番号13)を含む。最後に、UL46遺伝子に対応するHSV1テグメントタンパク質VP11/12を標的とするように2つのセットのプライマーをデザインした。プライマーは以下:フォワードが5’−ACCAAGCCTTGATGCTCAACTCCA−3’(配列番号16)、リバースが5’−ACAACACGGTTCCCGAGAGTTTGA−3’(配列番号17)である。第2のセットは、フォワードが5’−ACCAAGCCTTGATGCTCAACTCCA−3’(配列番号18)、リバースが5’ACACAACACGGTTCCCGAGAGTTT−3’(配列番号19)を含む。反応混合物は、1μLの抽出DNA、1μLのフォワードプライマーおよび1μLのリバースプライマー、12.5μLのMaster Mix、ならびに9.5μLのdiH2Oを含んだ。この混合物をPCRチューブに入れ、Labnet MultiGene IIサーマルサイクラー(Labnet International,Edison NJ)内に置いた。反応プロファイルは、95℃で2分間の初期変性、その後、95℃で30秒間の変性、60℃で1分間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長のサイクルであった。最後のステップは、72℃で10分間の最終伸長段階を含んだ。一旦、サイクルが終われば、サンプルを4度まで冷却し、その後、アガロースゲル電気泳動での将来の分析のために、−20℃のフリーザーに保管した。
【0298】
(PCR産物の分析)
ポリメラーゼ連鎖反応産物を、1%アガロースゲル上で分析し、可視化した。各ゲルは、0.5gのアガロース(USB Corporation,Cat No32802)を秤量し、それを50mLの1×TAE(Tris−酢酸−EDTA)緩衝液と合わせて、作製した。この混合物を、アガロースが完全に溶解するまで、電子レンジで1分間加熱した。その後、この混合物をゲル用具に注ぎ、凝固させた。ウェルを作るために、ゲルコームをゲルの一端で使用した。一旦、ゲルが凝固したら、サンプルを各ウェルにロードした(2μLの10×ローディング色素+10μLのPCR産物)。Hi−Lo DNAマーカーを第1のウェルにロードした。115Vで1時間ゲル泳動を行った(run)。その後、このゲルをエチジウムブロマイドで15分間染色し、さらに15分間水で洗った。その後、このゲルを、Kodak Image Station 440 CF(Perkin Elmer Life Sciences,Waltham,MA)を用いてUV光下で分析した。
【0299】
(リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応において用いるために、HSV1糖タンパク質Dを伸長開始する1セットのプライマーをデザインした。このセットは、フォワードが5”−CAACCCTACAACCTGACCATC−3’(配列番号20)、リバースが5’TTGTAGGAGCATTCGGTGTAC−3’(配列番号21)を含む。各チューブ(ネガティブコントロール−DNA無しを除く)は、10μLのFast SYBR緑色マスター混合物(ABI Fast SYBR Green Master Mix)、1μLのフォワードプライマー、1μLのリバースプライマー、1μLのゲノムDNAおよび6μLのDi H2Oを含んだ。サンプルにABI StepOnePlusリアルタイムPCRシステムを実行した(run)。この実行方法は、95℃で5分間の保持段階、その後、95℃で1分間の変性、60℃で1分間のアニーリングおよび72℃で30秒間の伸長を40サイクルであった。次に、融解曲線段階は、95℃で15秒間、その後、60℃で1分間、そして95℃で15秒間を含んだ。
【0300】
(HSV1感染細胞からのDNA抽出)
細胞を60mmプレートで増殖させ、コンフルエンシーまで到達させた。その後、細胞を、処理HSV1および無処理HSV1に、1時間、37℃および5%CO2で感染させた。吸収期間の後、細胞をPBSで洗い、培地をプレートに添加した。12時間後、細胞をトリプシン処理し、DNAを、DNeasy Blood and Tissue Handbook(Qiagen 2006)を用いて抽出した。その後、DNA濃度を、Nanodrop Specrophotometerを用いて測定した。
【0301】
【表6】
【0302】
【表7】
【0303】
【表8】
【0304】
【表9】
【0305】
【表10】
【0306】
【表11】
【0307】
【表12】
【0308】
【表13】
【0309】
【表14】
(結果)
HSV1/Vero細胞およびEGCGエステルHSV1/Vero細胞から抽出したDNAを精製および単離し、その量および純度をNanodrop分光光度計ND1000によって決定した。コントロールサンプルは、566.4ng/μLを含み、75μMのEGCGエステルサンプルは560.1ng/μLを含み、細胞のみのサンプルは、562.8ng/μLを含んだ。量における各サンプル中のDNA濃度が類似しているので、比較PCRベースアッセイを行うために、一定量の糖タンパク質Dのプライマーと共に、各サンプル由来の1μLを使用した。Kodak Image analyzer440CFを用いて、各実験のバンド強度を測定した。コントロールバンドの読み取りは、445.92、588.24、および541.73であり、平均は525.29であった。75μMのEGCGエステルのバンドの読み取りは353.87、438.47および407.82であり、平均は400.05であった。PCR産物の75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞の強度は、HSV1/vero細胞の強度より低かった。
【0310】
PCRベースアッセイを行うため、糖タンパク質D、GFPおよびVP11/12についてのプライマーを用いて、さらなる実験を行った。結果は、HSV1を75μMのEGCGで処理したときに、DNAバンド強度が低減することを示す。HSV1を75μMのEGCGエステルで処理したときに、DNAバンド強度はさらに低減する。これは、HSV1のみを感染させたVero細胞と比較して、EGCGで処理したとき、より少ないHSV1粒子しかVero細胞に感染できなかったこと、EGCGエステルで処理したときは、さらに少なくなったことを意味する。しかし、定量的測定を行うために、リアルタイムPCRを用いたさらなる分析を行うことが必要である。
【0311】
以前の実験は、糖タンパク質Dの増幅が、HSV1/Vero細胞と比較して、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞において低下することを示しており、したがって、リアルタイムPCRを用いた糖タンパク質の定量的研究を行うことが重要である。表15に示しているように、本研究のために特別なプライマーをデザインした。リアルタイムPCRのプロセスは、各反応サイクルの終わりに蛍光データを収集することで機能する。本実験で用いたSYBR緑色色素は、2本鎖PCR産物に結合し、これによってPCR産物が蛍光を発するようになる。反応が継続するにつれて、機器は、各サンプルについての閾値を呼び出す。閾値サイクル(Ct)は、蛍光の最初の顕著な増大が検出される決定的なサイクルである。一旦、PCRサイクルが終了したら、データを収集し、各サンプルのCt値を分析し、相対量(RQ)の蛍光を報告した。Ct値を比較するための基準は、以下である:Ctにおける1の差は、DNA量における2倍の差に相当する。100ng/μLのDNAを全てのサンプル;細胞のみ、HSV1/Vero、およびEGCGエステルHSV1/Veroにおいて使用した。結果は図8および図9に示す。
【0312】
【表15】
結果は、EGCGHSV1/Vero対HSV1/Veroで、糖タンパク質Dの量において32倍の差を示し、HSV1/veroからEGCGエステルHSV1/Veroでは256倍の差を示す。この結果は、EGCGは、HSV1を95%阻害し、EGCGエステルはHSV1を99.46%阻害することを示す(図10)。この作用モードは、ビリオンエンベロープの糖タンパク質に干渉すること、またはウイルス吸着および細胞侵入のためのウイルス化合物に干渉することによると考えられる(Song et al.Antivirus Response68:66−74,2005;Williamson et al.J.of Allergy Clinical Immunology 118:1369−1374,2006)。明らかに、阻害は、ウイルスの浸透後ではなく、吸着中に起きるようである(図11)。緑色蛍光タンパク質タグを用いることで、GFP発現が、コントロールウイルスと比較して、処理ウイルスにおいて大きく低減することを確認した。
【0313】
HSV1/Veroの糖タンパク質DのPCRベースDNAアッセイは、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞と比較して、より高いバンド強度を示した。これは、75μMのEGCGエステル−HSV1/Veroと比較して、HSV1/Vero感染細胞において、より多くのウイルスDNAが存在したことを示す。
【0314】
さらに、リアルタイムPCRベースアッセイは、EGCG−HSV1/Vero細胞の糖タンパク質DのDNA量が、HSV1/Vero細胞のDNAと比較して32倍異なること、HSV1/Vero細胞からEGCGエステルHSV1/Vero細胞では256倍異なることを示した。これらの結果は、EGCGエステルが、HSV1を大きく阻害すること、ならびに、EGCGのみと比較したとき、HSV1に対してより有効であることを示している。
【0315】
要約すると、EGCGおよびEGCGエステルは両方ともHSV1を阻害することができるが、EGCGエステルは、インビトロでのHSV1感染に対する阻害作用において、EGCGと比較してより強力であることを証明した。EGCGとは反対に、EGCGエステルは安定な化合物であり、膣のpHにおいても安定であり、局所適用のための理想的な候補である。HSV1およびおそらくHSV2に対するEGCGエステル局所適用は、毎年、何百万人ものヒトに有益である。さらに、疾患の広がりを止めることができることによって、ヒトが、HSVとHIVとの間のつながりをできる限り止めることを可能にする。ヒトにおけるEGCGエステルの作用モードを完全に理解するためには、さらなる研究を行うことが必要であるが、本研究から得られた結果は、非常に有望である。天然産物の使用は多くの生涯を改善し得、したがって、患者に、より良好でより健康な将来についての希望を与える。
【0316】
(実施例8.単純ヘルペス形成の発生段階におけるEGCGステアレートの適用)
図12A〜12Bは、1人のボランティア被験体の口の領域の写真である。この被験体は、単純ヘルペス発生を報告した。図12Aに示した単純ヘルペスの発生において(すなわち、10分以内から12時間まで、その間いつも、この被験体は、刺痛、かゆみ、炎症、紅斑、過敏症および/または苦痛を、病変がおそらく出現する領域において経験した)、本発明による組成物、すなわち、EGCGステアレートを含む組成物、すなわち、
【0317】
【化50】
(ここで、脂肪酸エステルは、ステアリン酸との(−)−エピガロカテキン−3−ガレートのエステルである)を適用した。毎回、適用量は50μl〜100μlであり、その間の各量およびあらゆる量であった。被験体に適用した組成物中のEGCGステアレートの濃度は、0.1〜20% wt/vol(重量/容積)であり、その間の各パーセンテージおよびあらゆるパーセンテージであった。EGCGステアレートを含む組成物を、さらに3回、規則的な間隔で、次の11時間にわたって適用した。図12Bは、11時間の処置後の被験体の口の領域を示している。領域は回復し、発生の徴候が無い。言い換えれば、単純ヘルペスが形成されず、HSV発生が阻害され、上皮組織が治癒した。図12Cは、別の単純ヘルペスのエピソードにおいて11時間の処置を行っていない、唇での発生の出現を示す。図12Cは、単純ヘルペスの出現を示している。
【0318】
(実施例9.単純ヘルペス形成の発生段階後のEGCGステアレートの適用)
図13A〜13Hは、ボランティア被験体の口の写真である。この被験体は、単純ヘルペス発生を報告した。単純ヘルペスの発生を図13Aに示す。単純ヘルペスの水疱段階において(すなわち、12時間後、単純ヘルペス形成の水疱段階の開始時)、本発明による組成物、すなわち、EGCGステアレートを含む組成物、すなわち、
【0319】
【化51】
(ここで、脂肪酸エステルは、ステアリン酸との(−)−エピガロカテキン−3−ガレートのエステルである)を適用した。毎回、適用量は50μl〜100μlであり、その間の各量およびあらゆる量であった。被験体に適用した組成物中のEGCGステアレートの濃度は、0.1〜20% wt/vol(重量/容積)であり、その間の各パーセンテージおよびあらゆるパーセンテージであった。図を参照し、図13Bの写真を撮った後すぐに、すなわち、水疱段階の開始時に、本組成物を適用した。EGCGステアレートを含む組成物を、さらに3回、次の2日間にわたって適用した。図13Bから図13Hまでの写真は、同じ口の領域を1日間隔で示している。図13Cは、痂皮段階を示す。図13Dは、さらなる痂皮段階を示す。図13Eは、さらなる痂皮段階を示す。図13Fは、治癒段階の開始を示し、これは、図13Aの写真を撮った5日後である。図13Gは、治癒段階を示し、これは、図13Fの写真を撮った1日後である。図13Hは、治癒した口の領域を示し、これは、図13Aの写真を撮った7日後である。図13Aから図13Hまでは、HSV発生後のEGCGステアレートを含む組成物の適用は、水疱段階を阻害し、潰瘍段階を排除することを示す。感染した領域は、7日以内に治癒する。言い換えれば、水疱段階の開始時(すなわち、単純ヘルペス発生後)における、本発明による組成物の適用は、水疱段階の長さを低減し、潰瘍段階を排除して、十分な治癒までの期間を3〜4日間短縮する。
【0320】
他の実施形態において、EGCG−ステアレートについて上に示された効果と類似の効果は、EGCG−ステアレートが代わりに、以下の構造:
【0321】
【化52】
による、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである場合に見られ、ここでこの脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸またはテトラコサン酸とのエステルである。好ましくは、この脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとヘキサデカン酸(パルミチン酸)とのエステルである。
【0322】
本発明による組成物は、少なくとも以下のウイルスを阻害および/または緩和する際に有効である:単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘−帯状ヘルペスウイルス(VZV)、ヒトヘルペスウイルス6(突発性発疹または小児バラ疹)およびヒトヘルペスウイルス8(カポージ肉腫関連ヘルペスウイルス)。
【0323】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中で引用される刊行物、およびこれらの刊行物が引用される目的となっている材料は、明示的に参考として引用される。
【0324】
本明細書中に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を、当業者は認識するか、または慣用的な実験に過ぎないものを使用して確認し得る。このような均等物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2010年7月6日に出願された米国仮出願番号61/361,752の利益を主張し、ならびに、本出願は、2008年2月7日に出願された米国特許出願番号12/063,139の一部継続出願であり、これは2006年8月6日に出願されたPCT/US2006/031120の国内段階であり、これは2005年8月11日に出願された米国仮特許出願番号60/707,234への優先権を主張し、上記出願の全ては、許容される場合に、本明細書によってその全容が参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(配列表への言及)
「MCG_2009_017_Sequence_Listing_Text_File.txt」という名称のテキストファイル(2011年に6月23日に作成され、14,471バイトのサイズを有する)として、本明細書と共に提出された配列表は、37C.F.R.§1.52(e)(5)に従って、本明細書によって参照により援用される。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、概して、ウイルス感染を処置するための組成物および方法、より詳しくは、緑茶ポリフェノール組成物および単純ヘルペスウイルスの処置または予防におけるその使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、2つの一般的なウイルス感染症で現れるウイルスであり、これらの2つの一般的なウイルス感染症は各々、皮膚または粘膜(例えば口または唇)における有痛の水様水疱または性器における有痛の水様水疱によって特徴付けられる。この疾患は接触感染性であり、HSVに対する療法またはワクチンは現在のところ存在しない。唇における感染は、「単純ヘルペス(cold sore)」または「熱性水疱」として一般に知られている。無症候性である場合、HSVは神経細胞体中で休止しており、アウトブレイク中、皮膚に向かう軸索内で複製する。アウトブレイクが過ぎたとき、ウイルスは、神経体にのみ存在するようになるまで、神経に沿って「死滅(die back)」する。神経体内でのウイルスの休止は処置の困難さの一因となっている。
【0005】
現在、利用可能な処置としては、抗ウイルス医薬、例えば、アシクロビル、ファムシクロビル(famciclovir)、ペンシクロビル(pancyclovir)、バラシクロビル(valacyclovir)等の経口投与が挙げられ、これらは、症状の持続期間を低減し、治癒を促進する。処置は、典型的には、アウトブレイクの最初の症状の時に開始する。別の選択肢は、連日抑制療法(daily suppressive therapy)の使用であり、これは、抗ウイルス薬を数年にわたって毎日服用する。抑制療法は、症状の出現頻度およびアウトブレイクの再発を低減し得る。さらに、抑制療法は、無症状の排出(shedding)を低減し、性的接触またはキスを通じた伝染のリスクを低下させる。
【0006】
単純ヘルペスに対する処方箋無しでの処置は、典型的には、短期間の間有効であり、しばしば毒性要因を含む。
【0007】
任意の抗ウイルス医薬を服用することに伴なう重大な問題は、副作用、例えば、錯乱、幻覚、渇きの増大、発赤(redness)、皮膚(口の内側を含む)の水疱形成、剥脱または弛緩、尿排泄量の低減、発作、皮膚発疹またはじんま疹、胃痛、振せん、異常な衰弱または疲労感、下痢、めまい感、頭痛、太陽への感受性の増大、食欲の減退、悪心または嘔吐であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、被験体においてウイルス感染の1つまたは複数の症状を処置するための、副作用の低減を伴なった、改善された組成物および方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、被験体においてHSV感染を処置するための方法および組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の概要)
ウイルス、特に、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を処置するための組成物および方法が提供される。1つの実施形態は、HSVによって引き起こされる病変を処置するための治療組成物を提供する。有用な組成物としては、1つまたは複数の緑茶ポリフェノール(GTP)またはその誘導体を含む組成物が挙げられる。コントロールと比較して、組成物は、前駆期に投与された場合、HSVによる病変の形成を阻害し、病変が現れた後に投与された場合、HSV感染による病変の持続期間を大いに低減する。例示的方法は、細胞を、1つまたは複数のGTPまたはその誘導体を含む組成物と接触させることによって、細胞におけるHSV複製を阻害することを含む。別の方法は、被験体に1つまたは複数のGTPまたはその誘導体を含む組成物を局所的に投与することによって、被験体におけるHSVの1つまたは複数の症状を処置することを含む。
【0011】
代表的緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、および(−)−エピカテキン−3−ガレートが挙げられるが、これに限定されない。プロアントシアニジン、これらGTPのエナンチオマー、異性体、薬学的に受容可能な塩、およびプロドラッグもまた挙げられる。好ましいGTPは、C1〜C30基を有する1つまたは複数の炭化水素鎖を含むように修飾されている。
【0012】
本発明はここで以下の項目を参照しながら記載される:
(項目1A)
少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有する組成物であって、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の少なくとも1つの症状を処置することによって、被験体におけるHSV感染を処置する際に使用するための、組成物。
(項目2A)
上記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目3A)
上記緑茶ポリフェノールが、以下の構造
【0013】
【化1】
による、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートであり、該脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、またはテトラコサン酸とのエステルである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目4A)
上記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとステアリン酸とのエステルである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目5A)
上記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとパルミチン酸とのエステルである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目6A)
上記被験体がヒトである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目7A)
上記組成物が麻酔薬をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目8A)
上記組成物が局所投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目9A)
上記組成物が経口投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目10A)
上記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目11A)
上記HSVがHSV−1である、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目12A)
上記組成物が、少なくとも2種の緑茶ポリフェノールを含有し、該緑茶ポリフェノールは独立して、C1〜C30の基でエステル化されており、該C1〜C30の基は、同じであるかまたは異なる、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目13A)
HSVが、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘−帯状ヘルペスウイルス(VZV)、ヒトヘルペスウイルス6(突発性発疹または小児バラ疹)およびヒトヘルペスウイルス8(カポージ肉腫関連ヘルペスウイルス)のうちのいずれかである、上記項目のうちのいずれかに記載の使用のための組成物。
(項目1B) 被験体において単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を処置するための方法であって、該方法は、HSV感染の少なくとも1つの症状を処置するために、少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有する組成物を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(項目2B) 上記緑茶ポリフェノールが、4’位でステアリン酸でエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである、上記項目に記載の方法。
(項目3B) 上記緑茶ポリフェノールが少なくとも2つの位置でエステル化されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目4B) 上記被験体がヒトである、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目5B) 上記組成物が麻酔薬をさらに含有する、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目6B) 上記組成物が局所投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目7B) 上記組成物が経口投与のために処方されている、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目8B) 上記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目9B) 上記HSVがHSV−1である、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目10B) 被験体において単純ヘルペスウイルス(HSV)を処置する方法であって、該方法は、少なくとも2種の緑茶ポリフェノールを含有する組成物を投与する工程を包含し、該緑茶ポリフェノールは独立して、C1〜C30の基でエステル化されており、該C1〜C30の基は、同じであるかまたは異なる、方法。
(項目11B) 上記2種以上の緑茶ポリフェノールは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
(項目12B) 上記被験体がヒトである、上記項目のうちのいずれかに記載の方法。
【0014】
(摘要)
緑茶ポリフェノール組成物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)を処置する際に使用するためのそれらの使用が提供される。代表的な緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、および1つ以上のエステル結合した脂肪酸を有する緑茶ポリフェノールが挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、EGCGエステル濃度(μM)に対するVero細胞/mlの線グラフである。上側の線は生細胞を表し、下側の線は死細胞を表す。
【図2】図2は、ポリフェノール濃度(μM)に対する490nmの吸光度の棒グラフである。各セットの左側の棒はEGCGを表す。各セットの右側の棒はEGCGエステルを表す。
【図3】図3は、ポリフェノール濃度(μM)に対するHSV−1ウイルス力価(PFU/ml)の棒グラフである。
【図4】図4は、EGCGエステル濃度(μM)に対するHSV1ウイルス力価(PFU/ml)のウイルス力価の棒グラフである。
【図5】図5は、希釈に対する蛍光の線グラフである。ひし形は、E.coli+GFPを表す。四角は、E.coli−GFPを表す。読み取りは蛍光計で行われた。
【図6】図6は、細胞のみ、HSV1/Veroまたは75μMのEGCGエステルHSV1/Veroに対する蛍光の棒グラフである。GFP発現が測定された。
【図7】図7は、GFPをHSV1の遺伝子UL46に導入するためのクローニングストラテジーの概略である。
【図8】図8は、コントロール、EGCGおよびEGCGエステルに対する閾値サイクルの棒グラフである。このグラフは、HSV1糖タンパク質DのリアルタイムPCRデータを提供する。
【図9】図9は、コントロール、EGCGおよびEGCGエステルに対する相対量の棒グラフである。このデータは、HSV1/Vero細胞、EGCG−HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞におけるHSV1糖タンパク質Dの増幅を示す。
【図10】図10は、ポジティブコントロール、EGCGおよびEGCGエステルに対するパーセンテージの棒グラフである。
【図11】図11は、HSV1に対するEGCGエステルの、考えられる作用モードの概略図である。
【図12A】図12A〜図12Cは、1人の被験体の口の領域の写真である。図12A〜図12Cは、初期段階の単純ヘルペス形成(12A)、および図12Aに示したものと同じエピソードにおける11時間の処置後(12B)を示す。図12Cは、発生後の11時間の処置無しでの、別のエピソードにおける同じ被験体を示す。
【図12B】図12A〜図12Cは、1人の被験体の口の領域の写真である。図12A〜図12Cは、初期段階の単純ヘルペス形成(12A)、および図12Aに示したものと同じエピソードにおける11時間の処置後(12B)を示す。図12Cは、発生後の11時間の処置無しでの、別のエピソードにおける同じ被験体を示す。
【図12C】図12A〜図12Cは、1人の被験体の口の領域の写真である。図12A〜図12Cは、初期段階の単純ヘルペス形成(12A)、および図12Aに示したものと同じエピソードにおける11時間の処置後(12B)を示す。図12Cは、発生後の11時間の処置無しでの、別のエピソードにおける同じ被験体を示す。
【図13A】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13B】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13C】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13D】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13E】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13F】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13G】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【図13H】図13A〜図13Hは、単純ヘルペスの水疱段階における、EGCGステアレート適用後の、7日間の期間にわたる被験体の口の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
本開示の種々の実施形態を説明する前に、本発明は、その用途が以下の説明に記載される構成の細部および成分の配置に限定されないことが理解されるべきである。他の実施形態が、種々の方法で実施または実行され得る。また、本明細書中で使用される語句および専門用語は、説明の目的であり、限定であるとみなされるべきではないことが理解されるべきである。
【0017】
本開示全体にわたって、種々の刊行物、特許および公開特許明細書が参照される。許容される場合、これらの刊行物、特許および公開特許明細書の開示は、技術水準をより完全に記載するために、その全体が本開示に参考として援用される。
【0018】
本開示の理解を容易にするために、以下の定義が提供される:
本明細書中で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、その文脈がそうではないことを明示的に示さない限り、複数の対象物を含む。従って、例えば、「因子(a factor)」への言及は、1つの因子または因子の混合物をいい、そして「処置の方法(the method of treatment)」への言及は、当業者に公知である等価な工程および方法への言及を含む、などである。
【0019】
「アシルオキシ」とは、本明細書中で使用される場合、以下の化学式:
【0020】
【化2】
を有する置換基をいい、この式において、Rは、直鎖、分枝鎖、または環状の、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基である。
【0021】
「アルコキシカルボニル」とは、本明細書中で使用される場合、以下の化学式:
【0022】
【化3】
を有する置換基をいい、この式において、Rは、直鎖、分枝鎖、または環状のアルキル基である。
【0023】
用語「アルケニル」とは、1つ以上の二重結合を有する、一価の、非分枝または分枝の炭化水素鎖をいう。アルケニル基の二重結合は、共役していなくても、別の不飽和基と共役していてもよい。
【0024】
用語「アルキニル」とは、1つ以上の三重結合を有する、一価の、非分枝または分枝の炭化水素鎖をいう。アルキニル基の三重結合は、共役していなくても、別の不飽和基と共役していてもよい。
【0025】
用語「細胞」とは、複製または分裂が可能な、膜に囲まれた生物学的単位をいう。
【0026】
用語「エマルジョン」とは、互いに不溶性の成分から調製された混合物をいう。これらの成分から、混合条件の適切な選択および操作によって、均質な巨視的外見の混合物を生成することが可能である。エマルジョンの最も一般的な型は、水性成分と親油性成分とが使用されるものであり、これらは、当該分野において頻繁に、水中油エマルジョンおよび油中水エマルジョンと称される。水中油エマルジョンにおいては、親油性相が水相中に分散しており、一方で、油中水エマルジョンにおいては、水相が親油性相中に分散している。一般的に公知である、皮膚に塗布されるエマルジョンベースの処方物としては、化粧品(例えば、クリーム、ローション、洗剤、洗顔乳液、および乳剤など)、ならびに皮膚の状態、疾患または異常を処置するための成分を含有する皮膚用製品が挙げられる。
【0027】
用語「緑茶ポリフェノールまたはGTP」とは、Camellia sinensisの葉に存在するポリフェノール化合物をいう。緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECG)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)、プロアントシアニジン、これらのエナンチオマー、これらのエピマー、これらの異性体、これらの組み合わせ、およびこれらのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。修飾緑茶ポリフェノールとは、1つ以上の炭化水素鎖(例えば、C1〜C30)を有する緑茶ポリフェノール、ならびに本明細書中に開示される式Iおよび式IIによる化合物をいう。
【0028】
用語「宿主」とは、生存生物をいい、哺乳動物(例えば、霊長類であり、特にヒト)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「親水性」とは、本明細書中で使用される場合、水と容易に相互作用する強い極性基を有する物質をいう。
【0030】
「疎水性」とは、本明細書中で使用される場合、水に対する親和性を欠き、水をはじく傾向があり、水を吸収せず、そして水中に溶解せず、水と混合もしない、物質をいう。
【0031】
用語「単離された」とは、本明細書中に開示される種々の組成物を説明するために使用される場合、その天然環境の成分から同定され、そして分離および/または回収された、物質を意味する。例えば、単離されたポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、天然では会合する少なくとも1種の成分との会合がない。その天然環境の夾雑成分とは、そのポリペプチドまたはポリヌクレオチドについての診断用途または治療用途を代表的に妨害する物質であり、そしてそれらとしては、酵素、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質が挙げられ得る。単離された物質は、組換え細胞内にインサイチュでその物質を含む。しかし、単離された物質は、通常、少なくとも1回の精製工程により調製される。
【0032】
「脂溶性」とは、本明細書中で使用される場合、疎水性液体(例えば、ヒマシ油)中で5g/100ml以上の溶解度を有する物質をいう。
【0033】
用語「脂溶性緑茶ポリフェノール」とは、そのポリフェノールに結合した、例えばC1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖を有する緑茶ポリフェノールをいう。C1〜C30の基としては、例えば、コレステロールが挙げられる。代表的な脂溶性緑茶ポリフェノールとしては、本明細書中に開示される式Iおよび式IIによるものが挙げられる。この用語は、「修飾緑茶ポリフェノール」と交換可能に使用される。
【0034】
用語「作動可能に連結した」とは、成分がその通常の機能を実施するように構成された並置物をいう。例えば、コード配列に作動可能に連結したコントロール配列またはプロモーターは、このコード配列の発現を行うことが可能であり、そしてタンパク質に作動可能に連結した細胞小器官局在化配列は、この連結したタンパク質を特定の細胞小器官に局在させるように方向付ける。
【0035】
用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、生物に重大な刺激を引き起こさず、そして投与される化合物の生物学的活性および特性を阻止しない、キャリアまたは希釈剤をいう。
【0036】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、遊離塩基の生物学的有効性および特性を保持し、そして無機酸または有機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、およびクエン酸など)との反応により得られる塩をいう。
【0037】
「薬学的組成物」とは、本明細書中に記載される緑茶ポリフェノールまたはその薬学的に受容可能な塩のうちの1つ以上と、他の化学成分(例えば、生理学的に受容可能なキャリアおよび賦形剤)との混合物をいう。薬学的組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0038】
用語「プロドラッグ」とは、インビボで生物学的に活性な形態に転換する剤(核酸およびタンパク質が挙げられる)をいう。プロドラッグは、しばしば有用である。なぜなら、いくつかの状況において、プロドラッグは、親化合物より投与が容易であり得るからである。プロドラッグは、例えば、経口投与により生体利用可能であり得、一方で、その親化合物はそうではないかもしれない。プロドラッグはまた、薬学的組成物中で、親薬物より溶解度が改善しているかもしれない。プロドラッグは、種々の機構(酵素プロセスおよび代謝加水分解が挙げられる)によって、親薬物に転換され得る。Harper,N.J.(1962).Drug Latentiation in Jucker編,Progress in Drug Research,4:221−294;Morozowichら(1977).Application of Physical Organic Principles to Prodrug Design in E.B.Roche編.Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs,APhA;Acad.Pharm.Sci.;E.B.Roche編,(1977).Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design,Theory and Application,APhA;H.Bundgaard編,(1985)Design of Prodrugs,Elsevier;Wangら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drug,Curr.Pharm.Design.5(4):265−287;Paulettiら(1997).Improvement in peptide bioavailability:Peptidomimetics and Prodrug Strategies,Adv.Drug.Delivery Rev.27:235−256;Mizenら(1998).The Use of Esters as Prodrugs for Oral Delivery of β−Lactam antibiotics,Pharm.Biotech.11,:345−365;Gaignaultら(1996).Designing Prodrugs and Bioprecursors I.Carrier Prodrugs,Pract.Med.Chem.671−696;M.Asgharnejad(2000).Improving Oral Drug Transport Via Prodrugs,G.L.Amidon,P.I.LeeおよびE.M.Topp編,Transport Processes in Pharmaceutical Systems,Marcell Dekker,p.185−218;Balantら(1990)Prodrugs for the improvement of drug absorption via different routes of administration,Eur.J.Drug Metab.Pharmacokinet.,15(2):143−53;BalimaneおよびSinko(1999).Involvement of multiple transporters in the oral absorption of nucleoside analogues,Adv.Drug Delivery Rev.,39(1−3):183−209;Browne(1997).Fosphenytoin(Cerebyx)、Clin.Neuropharmacol.20(1):1−12;Bundgaard(1979).Bioreversible derivatization of drugs−−principle and applicability to improve the therapeutic effects of drugs,Arch.Pharm.Chemi.86(1):1−39;H.Bundgaard編,(1985)Design of Prodrugs,New York:Elsevier;Fleisherら(1996).Improved oral drug delivery:solubility limitations overcome by the use of prodrugs,Adv.Drug Delivery Rev.19(2):115−130;Fleisherら(1985).Design of prodrugs for improved gastrointestinal absorption by intestinal enzyme targeting,Methods Enzymol.112:360−81;Farquhar D,ら(1983).Biologically Reversible Phosphate−Protective Groups,J.Pharm.Sci.,72(3):324−325;Han,H.K.ら(2000).Targeted prodrug design to optimize drug delivery,AAPS PharmSci.,2(1):E6;Sadzuka Y.(2000).Effective prodrug liposome and conversion to active metabolite,Curr Drug Metab.,1(1):31−48;D.M.Lambert(2000)Rationale and applications of 脂質s as prodrug carriers,Eur.J.Pharm.Sci.,11補遺2:S15−27;Wang,W.ら(1999)Prodrug approaches to the improved delivery of peptide drugs.Curr.Pharm.Des.,5(4):265−87。
【0039】
用語「置換C1〜C30」とは、1個〜30個の炭素のアルキル鎖、アルケニル鎖、またはアルキニル鎖であって、1つ以上の炭素が独立して、1つ以上の基(ハロゲン、ヒドロキシ基、アリール基、複素環式基、またはアルキルエステルが挙げられるが、これらに限定されない)で置換されている、鎖をいう。C1〜C30の範囲は、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19などの、C30まで、およびC1〜C30に入る範囲(例えば、C1〜C29、C2〜C30、C3〜C28など)を含む。この範囲はまた、C30未満、C19未満などを含む。
【0040】
用語「処置する(treating)または処置(treatment)」とは、疾患、障害、症状または状態の1つ以上の症状または生理学的局面を、軽減すること、減少させること、または阻害することをいう。
【0041】
「水溶性」とは、本明細書中で使用される場合、5g/100ml以上の水への溶解度を有する物質をいう。
【0042】
用語「処置する(treating)または処置(treatment)」とは、疾患、障害、症状または状態の1つ以上の症状または生理学的局面を、軽減すること、減少させること、または阻害することをいう。
【0043】
本明細書中に提供される数値範囲は、間にある各整数を含むことが理解される。
【0044】
(II.単純ヘルペスウイルス)
単純ヘルペスウイルス(HSV)1型および2型は、Herpesviridaeファミリー、Alphaherpesviridaeサブファミリー、およびSimplexvirus属に属している。
【0045】
(A.HSV構造)
HSVウイルスは、直径約200nmの大きさを有する。HSV1および2は、エンベロープを有する約152Kb長の2本鎖DNAウイルスであり、ユニーク長(Ul)およびユニーク短(Us)領域として公知である2つのDNAセグメントを含む(Garner,Advanced Drug Delivery Reviews.2003;55:1497−1513)。ビリオンは、3つの主要な構造;エンベロープと呼ばれる外側部分(これは、11個の糖タンパク質(gB、gC、gD、gE、gG、gH、gI、gJ、gK、gL、gM)を含む)、15個のタンパク質からなるテグメント層、ならびにウイルスDNAおよび4個の構造タンパク質を封入する正二十面体のカプシドを有する(Foster,et al.,Journal of Virological Methods.1998;75:151−160;Garner,Advanced Drug Delivery Reviews.2003;55:1497−1513;Willard,Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。
【0046】
(B.HSVライフサイクル)
ヒトがHSVに曝露されるとすぐに、細胞、分子および免疫システム生物学における一連の重要なイベントが起こる。ウイルスエンベロープ上に位置するいくつかの糖タンパク質は、細胞認識、細胞融合、最終的には細胞侵入に関与する(Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24;Subramanian,et al.,PNAS.2006;104(8):2903−2908)。HSVとその宿主細胞との最初の接触は、細胞表面プロテオグリカンに含まれるヘパラン硫酸(heparin sulfate)鎖への結合による。ウイルス糖タンパク質BおよびCは、この結合反応を補助し、これにより、糖タンパク質Dは、宿主細胞受容体の1つにリクルートされて結合する。一旦、糖タンパク質Dが細胞受容体に結合すると、糖タンパク質B、HおよびLは、糖タンパク質Dおよび細胞受容体と共に融合複合体を形成する。この融合複合体は、ビリオンの形質膜が宿主細胞形質膜に融合することを可能にし、この後、ウイルスのヌクレオカプシドおよびテグメントが侵入する。結果として、糖タンパク質Dは、細胞認識および受容体結合に必須であるが、5個の糖タンパク質全てが、ウイルス吸着および融合が首尾よく行われるために必要である(Carfi,et al.Molecular Cell.2001;8:169−179;Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。
【0047】
HSV−1の糖タンパク質B内の短いリシンリッチ領域(KPKKNKKPK(配列番号1))が、Vero細胞を用いた実験において除去された場合、ヘパラン硫酸(heparin sulfate)が、受容体によって結合されないことがあった。糖タンパク質BおよびCは、ヘパラン硫酸鎖での最初の結合において必要とされないが、これらは、このプロセスをより効率的にする。したがって、gDだけでなく、gB内のこのリシンリッチ領域も、宿主細胞への十分なウイルス侵入になくてはならないようである(Carfi,et al.Molecular Cell.2001;8:169−179;Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。
【0048】
糖タンパク質Dは、いくつかの宿主受容体のうちの1つを認識し、結合し得る。これらとしては、HVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター)、TNF−受容体ファミリーのメンバー;ネクチン−1またはネクチン−2、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバー;ならびにヘパラン硫酸(heparin sulfate)および3−O−スルホトランスフェラーゼの反応によって生じた細胞表面上の場所が挙げられる(Shukla,et al.,Journal of Clinical Investigations.2001;108:503−510;Spear et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。HSV−1糖タンパク質Dの構造は、X線結晶学によって得られており、gD内のいくつかのアミノ酸残基は、受容体HVEMおよびネクチン−1の結合に重要であることが分かっている(Carfi,et al.,Molecular Cell.2001;8:169−179;Manoj et al.,PNAS.2004;101(34):12414−12421;Whitebeck,et al.,Journal of Virology.1997;71(8):6083−6093)。HSV−1糖タンパク質DとHSV−2糖タンパク質Dとは、82%のアミノ酸類似性を含んでいることが分かっている。
【0049】
一旦、細胞内に入ると、HSVは、内部細胞コンパートメントにアクセスするために細胞輸送機構を乗っ取る。ウイルス粒子は、ウイルス成分が、非常に効率的な方法でそれらの目的地に到達することを可能にしている極めて迅速な様式で、細胞質の様々な領域の至る所に移動する(Willard,M.,Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。ウイルス粒子は、ヌクレオポア(nucleopore)を介して核に送られ、そこでウイルスゲノムの侵入が起こり、ウイルス転写および複製が開始される。HSVは、微小管を使用し、ダイニンモーターシステムの助けを借りながら、逆方向の輸送によって核へ移動する(Bearer,et al.,Proceedings of the National Academy of Science.2000;97(14):8146−8150.Garner,Advanced Drug Delivery Reviews.2003;55:1497−1513.Stanberry,University Press of Mississipi.2nd Ed.2006)。核に侵入することができることは、ウイルス転写、翻訳、複製、および子孫ヌクレオカプシド中へのDNAのパッケージングに必須である。興味深いことに、扁平な細胞、例えば、Vero細胞において、微小管の使用を介したウイルス粒子の輸送プロセスは、首尾よく感染が達成されるために必ずしも必要というわけではないのかもしれない。Vero細胞は、ビリオンの核への輸送に拡散を使用することができる(Newcomb,et al.,Journal of Molecular Biology.2007;370:633−642.)。
【0050】
HSV−1およびHSV−2は溶解感染中に上皮細胞に感染し、潜伏感染においては感覚ニューロンに移動する。潜伏感染中、ウイルスは溶解サイクルへと誘発されるまで、神経細胞内で休止状態のままでいる(Kang,et al.,Virology.2003;312:233−244;Stanberry,University Press of Mississipi.2nd Ed.2006)。これは、HSV感染患者の生涯にわたってHSVが永続的に生き残り、複製することを可能にする(Kang,et al.,Virology.2003;312:233−244;Wysocka,et al.,Trends in Biochemical Sciences.2003;28(6):294−304.)。ウイルスが潜伏するためには、ウイルス粒子は、初めの感染部位での神経軸索から、感覚神経節(ganglia3)へと移動しなければならない。潜伏感染神経細胞は、HSVのDNAを複製しないが、これらの細胞は、潜伏関連転写物(LAT)として公知の、ゲノムの短い配列のmRNAを生じる。この配列を除去した研究が行われ、ウイルスが再発性感染を引き起こすことができなかったことが示された(Kang,et al.,Virology.2003;312:233−244.)。
【0051】
これらの潜伏感染細胞は、長期間にわたって非反応性であり得るが、その一生の間、いつでも再活性化し得る。ウイルス再活性化に関連し得るいくつかの因子としては、例えば、ストレス、熱、寒さ、紫外線光、情動応答、および下垂体ホルモンまたは副腎ホルモンがある。ウイルスが再活性化されると、ウイルスゲノムは、軸索内での順方向の輸送によって上皮に移動し、そこで、ウイルス複製が起こる(Fatahzadeh,et al.American Academy of Dermatology.2007;6(27):737−763;Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24)。
【0052】
HSV感染の天然宿主として唯一公知であるのはヒトであるが、種々の様々な動物由来の培養細胞、例えば、ミドリザル腎臓細胞由来のVero細胞も、実験室内でHSVを感染させることができる(Foster,et al.,Journal of Virological Methods.1998;75:151−160)。HSVビリオンを用いたインビトロ実験は、動物の免疫システムを伴なわないため、ウイルスが細胞に効率的に感染することを可能にする。したがって、いくつかの細胞は、HSVのエンベロープ糖タンパク質gDによるウイルス侵入に必要な受容体のうちの少なくとも1つを含む(Spear,et al.,Journal of Virology.2005;344:17−24.)。
【0053】
処置されない場合、単純ヘルペスには、初期発現から完全治癒まで5つの段階がある。最初の徴候は、前駆段階(本明細書では発生段階ともいう)であり、これは病変が出現するまさにその場所における、刺痛、かゆみ、炎症、紅斑、過敏症、および/またはうずきからなる。前駆(発生)は、通例、1〜2日間続き、水疱が現れたときに(これは水疱段階の開始のシグナルである)、終わる。水疱は透明な黄色の流体で満たされている。いくつかの別々の水疱が現れて合体し、さらなる水疱が介在スペース中に出現する場合もある。約2日後、水疱は破裂を開始して紅斑性開放創が露出し、色が灰色になる。これは湿潤段階である。高度に感染性の黄色流体が1日程度にわたって創傷から滲み出す。創傷は、痂皮段階において、黄色の痂皮で覆われ、これは、2〜3日間続く。痂皮の下の皮膚では、痛みとかゆみが続き、痂皮は破れて出血が開始する。この段階がゆっくりと消散するにつれて、患者は治癒段階に入る。2次的な痂皮は次第に小さくなっていき、ゆっくりと脱落してピンクの皮膚が現れ、周囲の影響を受けていない表皮の外観を徐々に呈する。発生から治癒までの上記状態の通常の持続期間は、7〜10日間であるが、2週間も長く続くことがあり得る。
【0054】
本発明の1つの局面は、HSV感染の1つまたは全ての段階、例えば、単純ヘルペス形成を緩和および/排除する組成物の供給である。
【0055】
(C.HSVの処置)
最も店頭販売されている単純ヘルペスの局所処置薬は、痛みを低減するための局所麻酔薬、皮膚保護剤(石油または酸化亜鉛)、または消毒剤である。これらの局所処置薬の大多数は、痛み、不快感および単純ヘルペスの出現を低減しようとするものであるが、通例、病変の持続期間にはほとんど効果がない。さらに、抗ウイルス医薬は、病変のアウトブレイクの発生を低減しようとする試み、および身体中のウイルス活性を損なわせようとする試みにおいて開発されてきた。これらの抗ウイルス医薬の多くは、経口投与される。抗ウイルス医薬はまた、病変内のウイルスの活性をスローダウンさせようとする試みにおいて局所処置薬として開発されてきており、通例、小疱形成の前に投与されたときに、最も有効である。
【0056】
口部または性器HSV感染の処置のための、現在の好ましい抗ウイルス薬物は、アシクロビル(Zovirax,Glaxo SmithKline,Research Triangle Park,NC)、バラシクロビル(Valtrex,Glaxo SmithKline,Research Triangle Park,NC)、パンシクロビル(penciclovir)(Denavir,Novaris Pharma GmbH,Wehr,Germany)、およびファムシクロビル(famiciclovir)(Famvir,Novartis Pharmaceuticals Corporation,East Hanover,NJ)である。これらの薬物は、しばしば、7〜10日間にわたって経口投与される。バラシクロビルおよびファムシクロビルは両方とも、身体中で、薬の活性形態(アシクロビルおよびパンシクロビル)へと分解される。ヌクレオシドの類似体であることから、これらの薬物は、ウイルス複製を停止させることができる(Brady,et al.Antiviral Research.2003;61:73−81;Fatahzadeh,et al.American Academy of Dermatology.2007;6(27):737−763;Morfin,et al,Journal of Clinical Virology.2002;26:29−37)。
【0057】
HSVチミンキナーゼは、アシクロビルをリン酸化し、宿主細胞は、それをさらにリン酸化して、結果として活性なアシクロビル三リン酸塩が生じる。活性アシクロビルは、その後、ウイルスDNAポリメラーゼを阻害し得、これにより、ウイルスDNAの延長を防ぐ。これらの薬物を使用することに伴なう1つの問題は、これらの薬物は、HSVがそのチミンキナーゼを変え始め、そしてアシクロビルおよびヌクレオシドの類似体として機能する他の薬物に対して抵抗性となるまでに限り有効であることである(Frobert,et al.,Antiviral Research.2008;7928-7936;Lebel,et al.,Journal of Clinical Virology.2006;37:34−37)。
【0058】
ファムシクロビルの作用モードはまた、アシクロビルと同様のプロセスにおいてウイルスDNAポリメラーゼを阻害することによるが、その効能はアシクロビルより弱い。ファムシクロビルは、細胞内で、より高い濃度を得ることができ、アシクロビルと比較して、より長い半減期を有する。ファムシクロビルはまた、アシクロビルよりも低頻度での投与を可能にする。最後に、非環式ヌクレオシド5’−一リン酸であるシドフォビル(cidofovir)は、宿主細胞キナーゼによってリン酸化され、上記様式でウイルスDNAポリメラーゼを阻害することができる。シドフォビルへのHSV抵抗性はまた、DNAポリメラーゼ遺伝子が変異したときに生じ得る(Brady,et al.Antiviral Research.2003;61:73−81;Stanberry,University Press of Mississipi.2nd Ed.2006)。これらの様々な薬物の服用から生じる強い抵抗性から、HSVの排出を防ぐために、新規かつより有効な医薬が開発されることが必要とされている(Morfin,et al,Journal of Clinical Virology.2002;26:29−37)。
【0059】
(III.緑茶ポリフェノール)
1つの実施形態は、1種以上の緑茶ポリフェノール、好ましくは、C1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖で修飾された1種以上の緑茶ポリフェノール、またはこれらの組み合わせを有する組成物を提供する。代表的な緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、および(−)−エピカテキン−3−ガレートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい修飾GTPとしては、修飾(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、その薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、または誘導体が挙げられ、コントロールと比較して、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染を処置するために有効な量である。実験用のコントロールまたはコントロール群は、当該分野において公知である。一般に、HSV複製の阻害に対する緑茶ポリフェノール組成物の効果は、HSVの阻害に対する、緑茶ポリフェノールを含まない組成物の効果と比較され得る。代表的な宿主としては、哺乳動物(例えば、ヒト)、または哺乳動物(例えば、ヒト)由来の細胞が挙げられる。
【0060】
修飾GTP(緑茶ポリフェノールの誘導体または改変物)としては、溶解度または宿主におけるバイオアベイラビリティを増加させるための化学修飾を有する緑茶ポリフェノールが挙げられる。特定の実施形態において、これらの化学修飾としては、生理学的条件下で電荷を有する化学基の付加が挙げられる。他の実施形態において、修飾としては、緑茶ポリフェノールと、他の生物学的部分(例えば、ポリペプチド、炭水化物、脂質、またはこれらの組み合わせ)との結合が挙げられる。好ましい修飾としては、C1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖での修飾が挙げられる。
【0061】
別の実施形態は、1種以上の緑茶ポリフェノール、修飾緑茶ポリフェノールを、必要に応じて薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含有する、薬学的組成物を提供する。これらの1種以上の緑茶ポリフェノールおよび/または修飾緑茶ポリフェノールは、宿主におけるウイルス感染の1つ以上の症状の処置(例えば、HSV複製の阻害)のために有効な量である。好ましい組成物は、抗ウイルス量の修飾緑茶ポリフェノールを含有する。他の実施形態において、この組成物中の活性成分は、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、C1〜C30の基を有する1つ以上の炭化水素鎖で修飾された(−)−エピガロカテキン−3−ガレート、またはこれらの組み合わせ、その薬学的に受容可能な塩もしくはプロドラッグから本質的になる。この活性成分は、単一の光学異性体の形態であり得る。代表的に、1つの光学異性体は、他の光学異性体と比較して、85重量%、90重量%、95重量%、または99重量%多く存在する。この組成物はまた、少なくとも1種のさらなる活性成分(例えば、第二の治療剤)を含有し得ることが理解される。本開示の薬学的組成物のさらなる説明が、以下に提供される。
【0062】
(A.没食子酸エピガロカテキン(EGCG))
緑茶は、植物Camellia sinensisから製造される。Camellia sinensisは、カテキンポリフェノール、特に、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)に富む。EGCGは、他のいずれの植物においても見出されておらず、チャにおいて見出される主要なカテキンである(Sharangi,Food Research International 2009;42:5−6)。EGCGは、FDAのリストに、安全な消費製品として載っている(Patersonら,Science 2005;310:451−453)。科学者らは、EGCGが、エンベロープ糖タンパク質(gp120)のその受容体(CD4)への結合を阻害することによって、HIVを阻害し得ることを示した(Williamsonら,Journal of Allergy Clinical Immunology.2006;118:1369−1374)。インフルエンザもまた、EGCGによって、赤血球凝集素エンベロープ糖タンパク質との相互作用(これは、エンベロープ構造の変化をもたらし得る)を介して阻害される(Songら,Antivirus Response.2005;68:66−74)。さらに、EGCGはまた、ウイルスDNA合成を妨害し、これによりウイルス複製を止めることによって、B型肝炎を阻害する(Heら,World Journal of Gastroenterology.2011;17(11):1507−1514)。
【0063】
緑茶はまた、他の数種の研究の主題であるが、ウイルス学者らは、緑茶が様々なウイルス感染を阻害する能力を有するか否かに焦点を当てることを試みている。ベロ細胞、およびHSV−1とHSV−2との両方を用いて実施された研究において、研究者らは、EGCGがHSV感染を濃度依存様式で首尾よく阻害すると結論付けた。他の緑茶カテキンもまた試験されたが、EGCGのみが阻害効果を生じた。結果はまた、HSV−1の吸着および侵入後にEGCGで処理したベロ細胞の処理が、ウイルス産生を阻害しないことを示した。EGCGは、効果が見られるために、ウイルスが吸着される前に適用される必要がある。また、EGCGでのベロ細胞の処理後、HSVビリオンのエンベロープが損傷された。その結果として、EGCGは、HSVの阻害に対して直接的影響を有するようであった(Isaacsら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy.2008;52(3):962−970)。
【0064】
EGCGで処理したHSV−1および処理していないHSV−1を、gB、gD、およびキャプシドタンパク質に対する抗体でImmunogold標識すると、処理していないビリオンと比較して、処理したビリオンにおいて30%および40%の低下があった。従って、一旦、ウイルスをEGCGで処理すると、そのエンベロープ糖タンパク質は、モノクローナル抗体に結合する能力が低下する(Isaacsら,Antimicrobial Agents and Chemotherapy.2008;52(3):962−970)。
【0065】
緑茶中のEGCG化合物がHSVを阻害することはもはや疑いがないが、EGCGを含む局所外用薬を調製する際に直面する問題は、EGCGが非常に不安定であり、非常に急速に酸化され、適用し得るかなり前にその抗ウイルス活性を失うことである。EGCGを用いてなされた研究のほとんどは、新たに調製したEGCGを用いて行われる必要がある。そうでなければ、EGCGは、その強力な抗ウイルス活性を失う(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718;Chenら,Handbook of Green Tea and Health Research.ISBN 978−1−60741−045−4,編者:H.McKinleyおよびM.Jamieson,pp.(C)2009 Nova Science Publishers,Inc.)。また、EGCGは水溶性であるので、局所外用薬として利益を得ることができない。
【0066】
(B.修飾緑茶ポリフェノール組成物)
緑茶ポリフェノールは、脂質媒体への溶解度が乏しい。従って、親油性茶ポリフェノールはまた、脂溶性媒体中での使用について開示される。親油性茶ポリフェノール(LTPまたは修飾緑茶ポリフェノール)は、緑茶ポリフェノール(GTP)の触媒エステル化により調製され得る。
【0067】
従って、非修飾緑茶ポリフェノールに対して、皮膚および細胞膜への緑茶ポリフェノールの透過性を増加させるため、または疎水性媒体中での溶解度を増加させるために修飾された緑茶ポリフェノールを含有する組成物が、提供される。修飾され得る緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECG)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)、プロアントシアニジン、これらのエナンチオマー、これらのエピマー、これらの異性体、これらの組み合わせ、およびこれらのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態は、エステル結合したC1〜C30の炭化水素鎖(例えば、脂肪酸)を1つ以上の位置に有する、緑茶ポリフェノールを提供する。別の実施形態は、ポリフェノールに結合した1つ以上のコレステロール基を有する、緑茶ポリフェノールを提供する。このコレステロール基は、例えば、エーテル結合によってこのポリフェノールに直接結合し得るか、またはC1〜C10のリンカーが、このコレステロール基をこのポリフェノールに接続し得る。
【0068】
別の実施形態は、1つ以上のアシルオキシ基を有する緑茶ポリフェノール化合物を提供し、このアシル基は、C1〜C30である。アルキル鎖、アルケニル鎖、またはアルキニル鎖の、例えば脂肪酸エステル化を介する緑茶ポリフェノールへの付加は、非修飾緑茶ポリフェノールと比較して、緑茶ポリフェノールの安定性を増加させ、そして疎水性媒体(脂質、脂肪、石鹸、洗剤、界面活性剤または油が挙げられる)への緑茶ポリフェノールの溶解度を増加させると考えられる。1つ以上の炭化水素鎖(例えば、エステル結合したC1〜C30の基またはC1〜C30のアシルオキシ基)を有する緑茶ポリフェノールは、非修飾緑茶ポリフェノールと比較して、皮膚または細胞膜により透過しやすく、これによって、エステル結合した炭化水素鎖を含む緑茶ポリフェノールまたはアシルオキシを含む緑茶ポリフェノールが、細胞に容易に侵入できるようにし、そして細胞に対する生物学的効果(例えば、遺伝子発現の調節)を有するようにすると考えられる。1つ以上の炭化水素鎖は、エステル結合以外の結合(例えば、チオ結合)を使用して、緑茶ポリフェノールに結合してもよいことが理解される。エステル化緑茶ポリフェノールは、皮膚をきれいにして緑茶ポリフェノールを皮膚に送達する組成物を製造するために、油、洗剤、界面活性剤、またはこれらの組み合わせと合わせられ得る。これらの油、洗剤、または界面活性剤は、有利なことに、緑茶ポリフェノールと水性媒体との接触を減少させることによって、緑茶ポリフェノールの安定性を増大させる。特定の実施形態は、本開示の修飾緑茶ポリフェノールの単一の光学異性体、エナンチオマー、またはエピマーを提供する。他の実施形態は、本開示の修飾緑茶ポリフェノールの単一の光学異性体、エナンチオマー、またはエピマーを含有する組成物を提供する。
【0069】
1つの実施形態は、式I:
【0070】
【化4】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供し、式Iにおいて、R1、R2、R3、R4、R5、およびR7は各々独立して、H、OH、
【0071】
【化5】
であり;
ここでR8は、直鎖、分枝鎖または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR8が環状である場合、R8はC3〜C30の基であり;そして
R6は、O、−NR9R10、またはSであり、ここでR9およびR10は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR9および/またはR10が環状である場合、R9および/またはR10はC3〜C30の基であり;
ここでR1、R2、R3、R4、R5、R7、R9、またはR10のうちの少なくとも1つは、
【0072】
【化6】
であり;
この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0073】
式Iの好ましい実施形態において、R8は、直鎖または分枝鎖のアルキル鎖である。式Iのより好ましい実施形態において、R8は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基である。式Iの特に好ましい実施形態において、R8はC17H35基である。
【0074】
1つの実施形態は、上記のとおりであるが、R1、R2、R3、R5、およびR7がOHである場合はR4が
【0075】
【化7】
ではない、式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0076】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも2つが独立して
【0077】
【化8】
であり;
ただし、R1、R2、R3、R5がOHであり、そしてR7が
【0078】
【化9】
である場合、R4が
【0079】
【化10】
ではない、上記のような式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0080】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも3つが独立して
【0081】
【化11】
である、上記のような式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0082】
なお別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも4つが独立して
【0083】
【化12】
である、上記のような式Iによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0084】
別の実施形態は、式II:
【0085】
【化13】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供し、式IIにおいて、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10は各々独立して、H、OH、
【0086】
【化14】
であり;
R11は、直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR11が環状である場合、R11はC3〜C30の基であり;
R5およびR6は独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して
【0087】
【化15】
であり;
この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0088】
式IIの好ましい実施形態において、R11は、直鎖または分枝鎖のアルキル鎖である。式IIのより好ましい実施形態において、R11は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基である。式IIの特に好ましい実施形態において、R11はC17H35基である。
【0089】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0090】
【化16】
である、式IIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0091】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0092】
【化17】
である、上記のような式IIによる化合物を提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0093】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0094】
【化18】
である、上記のような式IIによる化合物を提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0095】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が各々独立して、H、OH、
【0096】
【化19】
であり;
R11が、直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR11が環状である場合、R11はC3〜C30の基であり;
R5およびR6が独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して、
【0097】
【化20】
であり;
そしてR1、R2、R3、R7、R8、R9、およびR10がOHである場合、R4は
【0098】
【化21】
ではない、式IIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0099】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0100】
【化22】
である、式IIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0101】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0102】
【化23】
である、上記のような式IIによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0103】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0104】
【化24】
である、上記のような式IIによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0105】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10が各々独立して、H、OH、
【0106】
【化25】
であり;
R11が、直鎖、分枝鎖、または環状の、飽和または不飽和の、置換または非置換のC1〜C30の基であり、ここでR11が環状である場合、R11はC3〜C30の基であり;
R5およびR6が独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して
【0107】
【化26】
であり;
そしてR1、R2、R3、R7、R8、R9、およびR10がOHである場合、R4は
【0108】
【化27】
ではない、式IIによる化合物あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0109】
1つの実施形態は、式III:
【0110】
【化28】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供し、式IIIにおいて、R1、R2、R3、R4、R5、およびR7は各々独立して、H、OH、
【0111】
【化29】
であり;
ここでR8は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基であり、
R6は、O、−NR9R10、またはSであり、ここでR9およびR10は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR9および/またはR10が環状である場合、R9および/またはR10はC3〜C30の基であり;
ここでR1、R2、R3、R4、R5、R7、R9、またはR10のうちの少なくとも1つは、
【0112】
【化30】
であり、この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0113】
式IIIの特に好ましい実施形態において、R8はC17H35基である。
【0114】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの1つ以上が
【0115】
【化31】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0116】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも2つが独立して
【0117】
【化32】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0118】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも3つが独立して
【0119】
【化33】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0120】
なお別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7のうちの少なくとも4つが独立して
【0121】
【化34】
である、上記のような式IIIによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0122】
別の実施形態は、式IV:
【0123】
【化35】
による化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。式IVにおいて、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10は各々独立して、H、OH、
【0124】
【化36】
であり;
R11は、直鎖または分枝鎖のC16〜C25アルキル基であり;
R5およびR6は独立して、O、−NR12R13またはSであり、ここでR12およびR13は独立して、水素であるか、または直鎖、分枝鎖、もしくは環状の、飽和もしくは不飽和の、置換もしくは非置換のC1〜C30の基であり、ここでR12および/またはR13が環状である場合、R12および/またはR13はC3〜C30の基であり;そして
ここでR1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つは独立して
【0125】
【化37】
である。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0126】
式IVの特に好ましい実施形態において、R11はC17H35基である。
【0127】
1つの実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの1つ以上が
【0128】
【化38】
である、上記のような式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0129】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0130】
【化39】
である、式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを提供する。この化合物は、必要に応じて賦形剤と組み合わせられる。
【0131】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0132】
【化40】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて提供する。
【0133】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0134】
【化41】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて提供する。
【0135】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも1つが独立して
【0136】
【化42】
である、式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0137】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも2つが独立して
【0138】
【化43】
である、式IVによる化合物、あるいはその薬学的に受容可能な塩またはプロドラッグを、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0139】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも3つが独立して
【0140】
【化44】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0141】
別の実施形態は、R1、R2、R3、R4、R7、R8、R9、およびR10のうちの少なくとも4つが独立して
【0142】
【化45】
である、上記のような式IVによる化合物を、必要に応じて賦形剤と組み合わせて含有する、組成物を提供する。
【0143】
1つの実施形態において、1つの脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールが提供される。別の実施形態は、少なくとも2つの脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。特定の実施形態は、16炭素より大きい炭化水素鎖を有する1つ以上の脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。好ましい実施形態は、17〜25炭素長の炭化水素鎖を有する1つ以上の脂肪酸でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。特に好ましい実施形態は、1つ以上のステアリン酸鎖でエステル化された緑茶ポリフェノールを提供する。
【0144】
代表的な緑茶ポリフェノールとしては、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキン−3−ガレート(ECG)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)が挙げられるが、これらに限定されない。代表的な脂肪酸としては、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、およびテトラコサン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
(EGCGのエステル化)
HSV1とHSV2との両方が、世界中のヒト集団にとって重大な脅威をもたらし、そして毎年この疾患に感染するヒトの数は、増加していることが示されている。EGCGの治療用途は、以前から提唱されているが、その元の形態のEGCGは、急激な酸化および抗ウイルス活性の損失なしに、局所塗布において実行するのに適切ではない。他方で、EGCGエステルは、この目的のために理想的な候補である。EGCGの脂質エステルは、酵素的にかまたは化学的にかのいずれかで、形成され得る(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718)。
【0146】
EGCGエステルは、以前に中国のChenらにより精製された。これは、緑茶ポリフェノールとC16−脂肪酸との間での触媒エステル化から達成された。このエステル化は、4グラムの緑茶ポリフェノールと6.5グラムのヘキサデカノイルクロリドとを混合することによりもたらされた。次に、50mLの酢酸エチルおよび触媒を40℃でこの混合物に添加した。3時間の撹拌後、この溶液を30mLの脱イオン水で3回洗浄した。次いで、その有機層をエバポレートし、そして減圧を使用して40℃でさらに乾燥させた。これにより、8.7gの粉末生成物が得られた。GTPとヘキサデカノイルクロリドとの間での類似のエステル化の合成の機構を、以下に示す(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718)。
【0147】
【化46】
次に、高速(high current)クロマトグラフィー分離を使用して、このEGCGエステル生成物を精製した。n−ヘキサン−酢酸エチル−メタノール−水からなる2相(1:1)溶媒を、この分離カラムにおいて使用した。5グラムのEGCGエステルを50mLの上相溶液に溶解した。精製およびHPLC分析の後に、EGCGエステルが首尾よく精製されたようであった。EGCGアシル誘導体の構造を以下に示す(この誘導体は、本明細書中でEGCG−パルミテートとも称される)。(Chenら,Journal of Zhejiang University Science.2003;6:714−718)。
【0148】
【化47】
好ましい実施形態において、EGCGは、上記構造による4’位でステアリン酸でエステル化される。
【0149】
特定の好ましい実施形態において、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(EGCG)は、以下の構造により、4’位で脂肪酸エステルでエステル化される:
【0150】
【化48】
ここでこの脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸 (パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸またはテトラコサン酸とのエステルである。
【0151】
好ましい実施形態において、この脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとステアリン酸とのエステルである。この好ましい実施形態におけるエステル化EGCGの構造は、本明細書中で、EGCG−ステアレートと称される。
【0152】
好ましい実施形態において、この脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとパルミチン酸とのエステルである。
【0153】
(C.生物活性成分および併用療法)
本開示の緑茶ポリフェノールを含有する組成物は、必要に応じて、もう1種の生物活性剤またはさらなる治療剤を含有する。特定の実施形態において、1種以上の生物活性剤は、緑茶ポリフェノールと結合体化し得る。生物活性剤としては、治療剤、予防剤および診断剤が挙げられる。これらは、有機分子または無機分子、タンパク質、ペプチド、糖類、多糖類、茶サポニン、ビタミン類、コレステロール、または核酸分子であり得る。代表的なビタミンとしては、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンD、ビタミンE、またはこれらの組み合わせ)が挙げられるが、これらに限定されない。治療剤の例としては、タンパク質(例えば、ホルモン、抗原、および増殖エフェクター分子);核酸(例えば、アンチセンス分子);ならびに有機低分子または無機低分子(例えば、抗菌剤、抗ヒスタミン薬、免疫調節剤、うっ血除去薬、神経活性剤、麻酔薬、アミノ酸、および鎮静剤)が挙げられる。診断剤の例としては、放射性同位体および放射線不透過剤が挙げられる。
【0154】
(1.抗乾癬剤)
修飾緑茶ポリフェノールに加えて、適切な抗乾癬剤としては、サリチル酸;フランカルボン酸モメタゾン;ステロイド(コルチゾンなどのコルチコステロイドおよびプロピオン酸オルクスクロベタゾール(oluxclobetasol propionate)が挙げられる);5−フルオロウラシル;エピネフリン;アントラリン;ビタミンD3アナログ(例えば、カルシポトリエン(calcipotriene));メトトレキサート;マソプロコール(masprocol);グルコン酸トリメタキセート(trimethaxate gluconate);レチノイド;シクロスポリン;パクリタキセル;5−アミノレブリン酸;ベルガソール(bergasol);スズ−エチルエチオプルプリン(tin−ethyl etio purpurin);ベンゾポルフィリン誘導体;抗体(例えば、ABX−IL8抗体、CD11aモノクローナル抗体およびICM3モノクローナル抗体);酵素インヒビター(トリプターゼインヒビターおよびホスホリパーゼA−2インヒビターが挙げられる);新脈管形成遮断剤;T細胞遮断剤、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
(2.抗真菌剤)
種々の公知の抗真菌剤が、記載される組成物を調製するために使用され得る。潜在的な抗真菌剤のリストは、「Martindale-The Complete Drug Reference」,第32版,Kathleen Parfitt,(1999)の367−389頁に見出され得る。適切な抗真菌薬としては、アンホテリシン、アモロルフィン、ビフォナゾール、ブロモクロロサリチルアニリド(bromochlorosalicyanilide)、ブクロサミド、ブテナフィン、ブトコナゾール、カンジシジン、クロルダントイン、クロルミダゾール、クロルフェネシン、クロロキシレノール(chlorxylenol)、シクロピロックスオラミン、シロフンギン、クロトリマゾール、クロコナゾール、エベルコナゾール(eberconazole)、エコナゾール、エニルコナゾール、フェンチクロール、フェンチコナゾール、フルコナゾール、フルシトシン、グリセオフルビン、ハチマイシン、ハロプロジン、ヒドロキシスチルバミン、イセチオネート、ヨードクロロヒドロキシキノン、イソコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ラノコナゾール、ルフルカルバン(luflucarban)、メパルトリシン、ミコナゾール、ナフチフィン、ナタマイシン、ネチコナゾール、ニフロキシム、ナイスタチン、オモコナゾール、オキシコナゾール、ペンタマイシン、プロピオン酸、プロチオファート、ピロールニトリン、ラブコナゾール(ravuconazole)、サペルコナゾール、硫化セレン、セルタコナゾール、スルベンチン、スルコナゾール、テルビナフィン、テルコナゾール(terconazole)、チオコナゾール、トルシクラート、トルナフテート、トリアセチン、チミダゾール(timidazole)、ウンデセン酸、ボリコナゾール、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。これらの剤のうちのいくつかは、抗菌活性もまた有することが公知である。
【0156】
1つの実施形態において、抗真菌剤(単数または複数)は、アゾールである。適切なイミダゾール抗真菌剤およびトリアゾール抗真菌剤は、フルコナゾール、チミダゾール、セクニダゾール、硝酸ミコナゾール、エコナゾール、ハロプロジン、メトロニダゾール、イトラコナゾール、テルコナゾール、ポサコナゾール(posaconazole)、ラブコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、サピルコナゾール(sapirconazole)およびこれらの組み合わせである。
【0157】
代替の実施形態において、抗真菌剤(単数または複数)は、クロロキシレノール、ウンデシレン酸、硫化セレン、ヨードクロロヒドロキシキノン、ブロモクロロサリチルアニリド、トリアセチン、またはこれらの組み合わせである。
【0158】
他の抗真菌剤としては、ベンスルダジン酸、安息香酸、ビフェナミン、クロコナゾール(cloconazole)、クロキシキン、デルモスタチン(dermostatin)、ハレタゾール、モネンシン、オキシコナゾール、ニトレート、ペチロシン、ピリチオン(pyrithione)、ルビジェルビン(rubijervine)、テルビナフィン、チオコナゾール(ticonazole)、およびウンデシレン酸(undecylinic acid)が挙げられる。
【0159】
(3.抗菌剤)
種々の公知の抗菌剤が、記載される組成物を調製するために使用され得る。潜在的な抗菌剤の列挙は、「Martindale-The Complete Drug Reference」,第32版,Kathleen Parfitt,(1999)の112−270頁に見出され得る。有用な抗菌剤のクラスとしては、アミノ配糖体、抗マイコバクテリア薬、セファロスポリンおよびβ−ラクタム、クロラムフェニコール、グリコペプチド、リンコサミド(lincosamide)、マクロライド、ペニシリン、キノロン、スルホンアミドおよびジアミノピリジン、テトラサイクリン、および多様なものが挙げられる。好ましい実施形態において、抗菌剤は、メトロニダゾール、チミダゾール、セクニダゾール、エリスロマイシン、バクトバン(bactoban)、ムピロシン、ネオマイシン、バシトラシン、シクロピロクス(cicloprox)、フルオロキノロン、オフロキサシン、セファレキシン、ジクロキサシリン、ミノサイクリン、リファンピン、ファムシクロビル、クリンダマイシン、テトラサイクリンおよびゲンタマイシンからなる群より選択される。
【0160】
適切なアミノ配糖体としては、Streptomycesおよび他の放線菌目由来の抗生物質が挙げられ、ストレプトマイシン、フラマイセチン、カナマイシン、ネオマイシン、パロモマイシン(paramomycin)、およびトブラマイシン、ならびにゲンタマイシン、シソマイシン(sissomycin)、ネチルマイシン、イセパマイシン、およびミクロノマイシン(micronomycin)が挙げられる。
【0161】
適切な抗マイコバクテリア薬としては、リファマイシン、リファキシミン、リファンピシン、リファブチニソニアジド(rifabutinisoniazid)、ピラジンアミド、エタンブトール、ストレプトマイシン、チオアセタゾン、アミノサリチル酸、カプレオマイシン、シクロセリン、ダプソン、クロファジミン、エチオナミド、プロチオナミド、オフロキサシン、およびミノサイクリンが挙げられる。
【0162】
セファロスポリンおよびβ−ラクタムは一般に、グラム陽性菌に対する活性を有し、そしてより新しい世代の化合物は、グラム陰性菌に対する活性もまた有する。適切なセファロスポリンおよびβ−ラクタムとしては、以下が挙げられる:
第一世代;セファロチン、セファゾリン(cephazolin)、セファラジン、セファロリジン、セフロキサジン、セファドロキシル(cephadroxil)、セファトリジン、セファレキシン、ピブセファレキシン(pivcephalexin)、セファクロール、およびセフプロジル。
【0163】
第二世代;セファマンドール(cephamandole)、セフロキシムアキセチル、セフォニシド、セフォラニド、セフォチアム、およびセファマイシン。
【0164】
第三世代;セフォタキシム、セフメノキシム、セフォジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフィキシム、セフジニル、セフェタメト、セフポドキシム、セフチブテン、ラタモキセフ、セフタジジム、セフォペラゾン、セフピラミド、およびセフスロジン。
【0165】
第四世代:セフェピムおよびセフピローム。
【0166】
他のセファロスポリンとしては、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォテタン、セフブペラゾン、セフミノクス、イミペネム、メロペネム、アズトレオナム、カルモナム、およびロラカルベフ(loracarbef)が挙げられる。
【0167】
クロラムフェニコールは、グラム陽性菌およびグラム陰性菌を阻害する。適切なクロラムフェニコールとしては、クロラムフェニコール、そのコハク酸ナトリウム誘導体、チアンフェニコール、およびアジドアムフェニコールが挙げられる。
【0168】
適切なグリコペプチドとしては、バンコマイシン、テイコプラニン、およびラモプラニンが挙げられる。適切なリンコサミドとしては、リンコマイシンおよびクリンダマイシンが挙げられ、これらは、主として好気性の感染を処置するために使用される。
【0169】
マクロライドは、ラクタム環を有し、このラクタム環に、糖が結合している。適切なマクロライドとしては、エリスロマイシン、ならびにスピラマイシン(spiromycin)、オレアンドマイシン、ジョサマイシン、キタマイシン(kitamycin)、ミデカマイシン、ロキタマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマイシン、ロキシスロマイシン、フルリスロマイシン(flurithromycin)、タイロシン;およびストレプトグラミン(streptgramin)(またはシネルギスチン(synergistin))(プリスチナマイシン、およびバージニアマイシンが挙げられる);ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0170】
適切なペニシリンとしては、天然ペニシリンならびに半合成ペニシリンF、G、X、K、およびVが挙げられる。より新しいペニシリンとしては、フェネチシリン、プロピシリン、メチシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、ナフシリン、アンピシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、ヘタシリン、メタンピシリン、ピバンピシリン、カルベニシリン(carbenecillin)、カルフェシリン、カリンダシリン、スルベニシリン(sulbenecillin)、チカルシリン、アズロシリン、メズロシリン、ピペラシリン、テモシリン、メシリナム、およびピブメシリナム(pivemecillinam)が挙げられる。ラクタマーゼインヒビター(例えば、クラブラン酸、スルバクタム、およびタゾバクタム(tazobacytam))が、しばしば同時に投与される。
【0171】
適切なキノロンとしては、ナリジクス酸、オキソリン酸、シノキサシン、アクロソキサシン(acrosoxacin)、ピペミド酸(pipemedic acid)、ならびにフルオロキノロンであるフルメキン、シプロフロキサシン、エノキサシン、フレロキサシン、グレパフロキサシン(grepafloxacin)、レボフロキサシン、ロメフロキサシン、ナジフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、ペフロキサシン、ルフロキサシン、スパルフロキサシン、トロバフロキサシン(trovafloxacin)、ダノフロキサシン、エンロフロキサシン、およびマルボフロキサシン(marbofloxacin)が挙げられる。
【0172】
スルホンアミドおよびジアミノピリジンとしては、「サルファ」剤の元であるスルファニルアミド、ならびに多数の誘導体(スルファピリジン、スルファジアジン、スルファフラゾール、スルファメトキサゾール、スルファジメトキシン、スルファジメトキシジアジン、スルファドキシン、スルファメトピラジン(sulfametopyrazine)、スルファジアジン銀、酢酸マフェナイド、およびスルファサラジン(sulfasalizine)が挙げられる)、ならびに関連化合物(トリメトプリム、バキロプリム、ブロジモプリム、オルメトプリム、テトロキソプリムが挙げられる)が挙げられ、コ・トリモキサゾールなどの他の薬物と組み合わせられる。
【0173】
テトラサイクリンは代表的に、スペクトルが広く、そして天然産物であるクロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、デメクロサイクリン、ならびに半合成のメタサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリンが挙げられる。
【0174】
上記カテゴリーのいずれにも当てはまらない適切な抗菌剤としては、スペクチノマイシン、ムピロシン、ニューマイシン、ホスホマイシン、フシジン酸、ポリミキシン、コリスチン、バシトラシン、グラミシジン、チロスリシン、クリオキノール,クロルキナルドール(chloroquinaldol)、ハロキナール(haloquinal)、ニトロフラントニン(nitrofurantonin)、ニトロイミダゾール(メトロニダゾール(metronizole)、チミダゾールおよびセクニダゾールが挙げられる)、ならびにヘキサミンが挙げられる。
【0175】
抗生物質および抗真菌剤は、イオン交換樹脂と錯化してレジネートを生成するために適切な、遊離酸もしくは遊離塩基、薬学的に受容可能な塩、またはエステルもしくは他の容易に加水分解可能な基との不安定な結合体として、存在し得る。
【0176】
(4.防腐剤)
防腐剤が、局所投与のために処方される組成物中に含まれ得る。適切な防腐剤としては、ヨウ素、ヨードフォア(カデキソマーヨードが挙げられる)、クロルヘキシジン、グルコネート、チメロサール、過酸化水素、ならびに過酸化物および過塩素酸塩(有機過酸化物および有機過塩素酸塩が挙げられる)が挙げられる。
【0177】
(5.皮膚保護剤)
皮膚保護剤が、局所投与のために処方される組成物中に含まれ得る。このような剤は、皮膚を滑らかにするのみでなく、皮膚の一体性を維持して損傷を防止することもまた補助し得る。適切な皮膚保護剤としては、アラントイン;カカオ脂;ジメチコーン;カオリン;サメ肝油;ワセリン;ラノリン;植物油;エトキシ化された油および脂質;ポリマー(例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリレート、エチルビニルアセテート、ポリアルキレングリコール);多糖類および修飾多糖類(例えば、ヒアルロン酸、セルロースエーテル、セルロースエステル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロース,およびデンプン);天然ゴムおよび樹脂(ゲル化してもゲル化しなくてもよく、例えば、アルギネート、カラゲナン、寒天、ペクチン、グルコマンナン(グアー、イナゴマメなど)、ガラクトマンナン(例えば、コンニャク)、アラビアゴム、トラガカントゴム(gum traganth)、キサンタン、スクレログルカン(schleroglucan)およびシェラック);ならびにコロイド状不溶性物質(例えば、酸化亜鉛および他の不溶性亜鉛塩、滑石粉末および他の微細天然鉱物);ならびにコロイド状シリカ、アルミナおよび他の金属酸化物が挙げられる。さらなる保護剤としては、フェノール系または非フェノール系の植物化学物質が挙げられ、リコペン、β−カロチン、α−カロチン、ルテイン、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、非カルチノイド、テルペノイド(erpeniods)、ペリリルアルコール(perillyl alcohol)、サポニン、テルペノール、テルペンリモノイド、アントシアニン、カテキン、イソフラボン、ヘスペリジン(hesperetin)、ナリンギン、ルチン、ケルセチン、シリマリン(silymarin)、タンゲレチン(tangeretin)、タンニン、フェノール酸、エラグ酸、クロロゲン酸、p−クマリン酸(パラ−クマリン酸(para−coumeric acid))、フィチン酸、フェルラ酸、バニリン、ケイ皮酸、ヒドロキシケイ皮酸、クルクミン、レスベラトロール(resveratrol)、リグニン(lignan)、グルコシノレーツ、イソチオシアネート、フェネチル、イソチオシアネート(sothiocyanate)、イソチオシアン酸ベンジル、スルフォラファン(sulforaphane)、インドール、インドール−3−カルビノール、チオスルホネート、フィトステロール、β−シトステロール、アントラキノン、センナ、バルバロイン、ヒペリシン(hypericin)、カプサイシン、ピペリン、クロロフィル、ベタイン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
広範な種々の遮光活性剤が適切である。使用される遮光剤の正確な量および型は、望まれる光保護のレベルに依存する。一般に、紫外放射線を吸収、散乱または反射することによって、紫外放射線に対する保護を与える任意の剤が、本明細書中で使用され得る。本明細書中で使用される遮光剤は、日光放射線の以下の形態のうちの1つ以上に対する保護を与え得る:UVA、UVB、UVC、可視光および赤外放射線。一般に、最終処方物における日光阻止因子(SPF)は、2〜30で変化するが、100までのSPFを有する製品が処方され得る。本明細書中で使用される遮光剤は、化学的光保護または物理的光保護を与え得る。
【0179】
適切な遮光剤としては、アミノ安息香酸および誘導体(例えば、パラ−アミノ安息香酸(PABA)、グリセリル−PABA(Lisadimate)、パジマートO、Roxadimate);アントラニレート(anthrinalate)(メチルアントラニレート(methylanthrynilate)が挙げられる);ベンゾフェノン(ジオキシベンゾン、オキシベンゾンおよびスルイソベンゾン、3−ベンゾフェノン(Uvinul M40)、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノンとの4−N,N−ジメチルアミノ安息香酸エステルが挙げられる);ショウノウ誘導体(3−(4−メチルベンジリデン)ショウノウ、3−ベンジリデンショウノウが挙げられる);シンナメート(DEA−p−メトキシシンナメート、p−メトキシケイ皮酸エチル−ヘキシル、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸オクチルが挙げられる);ジベンゾイルメタン(ブチルメトキシジベンゾイルメタンが挙げられる)、サリチレート(サリチル酸ホモメチル、サリチル酸オクチル、トロラミンメチルサリチレートが挙げられる);金属酸化物(二酸化チタン、酸化亜鉛および酸化鉄が挙げられる);2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸;4,4−メトキシ−t−ブチルジベンゾイルメタン;ならびにこれらの組み合わせからなる群より選択されるものが挙げられる。
【0180】
本発明に従って有用な遮光剤のさらなる非限定的な例は、Haffeyらに対する米国特許第5,087,445号、Turnerらに対する米国特許第5,073,372号、およびSabatelliらに対する米国特許第5,160,731号に記載されており、これらの全ては、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0181】
(6.局所麻酔薬)
局所麻酔薬もまた、局所感染により引き起こされる疼痛およびかゆみを低減させる目的で、局所処方物において使用され得る。適切な局所麻酔薬としては、ベンゾカイン、リドカイン、ジブカイン、エチドカイン、ベンジルアルコール、ショウノウ、レゾルシノール、およびメタノールが挙げられる。
【0182】
(7.抗ヒスタミン薬)
本開示の組成物に含まれ得る適切な抗ヒスタミン薬としては、塩酸ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジメンヒドリネート、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0183】
(8.酸化防止剤)
本開示の組成物はまた、1種以上の酸化防止剤を含有し得る。適切な酸化防止剤としては、亜鉛、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、α−カロチン、β−カロチン、クリプトキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン(zeaxathin)、カテキン、レスベラトロール(reserveratrol)、プロアントシアニジン、補酵素Q10、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0184】
特定の実施形態において、これらの組成物は、塩化ベンザルコニウム、コルチコステロイド、またはこれらの組み合わせを含有する。
【0185】
(D.処方物)
式I、式II、またはこれらの両方による脂溶性緑茶ポリフェノールを含む、本明細書中に開示される化合物の処方物は、安全かつ有効であると考えられる材料からなる薬学的に受容可能な賦形剤を使用して調製され得、そして望ましくない生物学的副作用も望まれない相互作用も引き起こさずに、個体に投与され得る。これらの賦形剤は、本明細書中に開示される1種以上の脂溶性緑茶ポリフェノール化合物以外の、薬学的処方物中に存在する全ての成分である。本明細書中で一般的に使用される場合、「賦形剤」としては、界面活性剤、乳化剤、エマルジョン安定剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、溶媒および防腐剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
(1.賦形剤)
好ましい賦形剤としては、界面活性剤(特に、非イオン性界面活性剤);乳化剤(特に、乳化蝋);および液体の不揮発性非水性材料(特に、プロピレングリコールなどのグリコール)が挙げられる。油相は、薬学的に認可されている他の油性賦形剤を含有し得る。例えば、ヒドロキシ化されたヒマシ油またはゴマ油などの材料が、油相において、界面活性剤または乳化剤として使用され得る。
【0187】
(a.皮膚軟化剤)
適切な皮膚軟化剤としては、当該分野において一般的に公知であり、そして「Handbook of Pharmaceutical Excipients」,第4版,Pharmaceutical Press,2003などの概説書に列挙されているものが挙げられる。これらとしては、扁桃油、ヒマシ油、セラトニア(ceratonia)抽出物、セトステアロイルアルコール(cetostearoyl alcohol)、セチルアルコール、セチルエステル蝋、コレステロール、綿実油、シクロメチコーン(cyclomethicone)、パルミトステアリン酸エチレングリコール、グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラノリン、レシチン、軽鉱物油、中鎖トリグリセリド、鉱油およびラノリンアルコール、ワセリン、ワセリンおよびラノリンアルコール、ダイズ油、デンプン、ステアリルアルコール、ヒマワリ油、キシリトールおよびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。1つの実施形態において、皮膚軟化剤は、エチルヘキシルステアレートおよびパルミチン酸エチルヘキシルである。
【0188】
(b.界面活性剤)
適切な界面活性剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤および両性界面活性剤が挙げられる。陰イオン性界面活性剤としては、硫酸アルキル、アルキルエーテルスルフェート、アルキルアミドエーテルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルフェート、硫酸モノグリセリド;スルホン酸アルキル、スルホン酸アルキルアミド、スルホン酸アルキルアリール、スルホン酸オレフィン、スルホン酸パラフィン;スルホコハク酸アルキル、アルキルエーテルスルホスクシネート、スルホコハク酸アルキルアミド;スルホスクシンアミド酸アルキル;スルホ酢酸アルキル;リン酸アルキル、アルキルエーテルホスフェート;サルコシン酸アシル、イセチオン酸アシルおよびN−アシルタウレート(N−acyl taurate)の、アルカリ性塩、アンモニウム塩、アミン塩、アミノアルコール塩およびマグネシウム塩が挙げられる。これらの種々の化合物中のアルキル基またはアシル基は、一般に、8個〜30個の炭素原子を含む炭素ベースの鎖からなる。
【0189】
適切な陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩(例えば、オレイン酸塩、リシノール酸塩、パルミチン酸塩およびステアリン酸塩);ヤシ油酸または硬化ヤシ油酸;ラクチル酸アシル(ここでアシル基は、8個〜30個の炭素原子を含む)が挙げられる。
【0190】
弱陰イオン性であると考えられる界面活性剤(例えば、ポリオキシアルキレン化カルボキシル基を含むアルキルエーテル酸もしくはアルキルアリールエーテル酸またはその塩、ポリオキシアルキレン化カルボキシル基を含むアルキルアミドエーテル酸またはその塩、およびアルキルD−ガラクトシドウロン酸またはその塩)もまた使用され得る。
【0191】
適切な両性界面活性剤は、第二級または第三級の脂肪族アミン誘導体(ここでその脂肪族基は、8個〜22個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖であり、そして少なくとも1つのカルボキシレート基、スルホネート基、スルフェート基、ホスフェート基またはホスホネート水溶性化陰イオン性基を含む);(C8〜C20)アルキルベタイン、スルホベタイン、(C8〜C20)アルキル−アミド(C1〜C6)アルキルベタインまたは(C8〜C20)アルキル−アミド(C1〜C6)アルキルスルホベタインである。
【0192】
これらの非イオン性界面活性剤は、より特定すると、ポリエトキシ化、ポリプロポキシ化、またはポリグリセロール化された、脂肪酸またはアルキルフェノールまたはアルコール(8個〜30個の炭素原子を含む脂肪鎖を有し、エチレンオキシド基またはプロピレンオキシド基の数は、2個〜50個であり、そしてグリセロール基の数は、2個〜30個である)から選択される。
【0193】
ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプロアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホ−二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、カプロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、カプリロアンホ二プロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二プロピオン酸、およびココアンホ二プロピオン酸もまた使用され得る。
【0194】
代表的な陽イオン性界面活性剤は、特に、必要に応じてポリオキシアルキレン化された第一級、第二級または第三級の脂肪アミン塩;第四級アンモニウム塩;イミダゾリン誘導体;あるいは陽イオン性のアミンオキシドから選択される。
【0195】
適切な第四級アンモニウム塩は、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物(例えば、塩化物)(例えば、ジアルキルジメチルアンモニウムまたはアルキルトリメチルアンモニウムクロリドであり、ここでこのアルキル基は、約12個〜22個の炭素原子を含む)であり、特に、ベヘニルトリメチルアンモニウム、ジステアリル−ジメチルアンモニウム、セチルトリメチルアンモニウムまたはベンジル−ジメチルステアリルアンモニウムクロリド、あるいはステアルアミドプロピルジメチル(酢酸ミリスチル)アンモニウムクロリドである。
【0196】
ジアシルオキシエチルジメチルアンモニウム塩、ジアシルオキシエチルヒドロキシエチルメチルアンモニウム塩、モノアシルオキシエチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム塩、トリアシルオキシエチルメチルアンモニウム塩およびモノアシルオキシエチルヒドロキシエチルジメチルアンモニウム塩(特に、塩化物または硫酸メチル)、ならびにこれらの組み合わせもまた使用され得る。これらのアシル基は、好ましくは、14個〜18個の炭素原子を含み、そしてより特定すると、植物油(例えば、パーム油またはヒマワリ油)から得られる。
【0197】
使用され得るさらなる界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム(DOC)、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ラウリルジメチルアミン−オキシド(LDAO)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、およびビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
さらなる非イオン性界面活性剤としては、乳化蝋、モノオレイン酸グリセリル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン、モノステアリン酸グリセリン、ポロキサマー、ポビドンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ステアリルアルコールである。
【0199】
代表的な洗剤としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム塩、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0200】
(c.乳化剤)
適切な乳化剤としては、アカシア、陰イオン性乳化蝋、ステアリン酸カルシウム、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、パルミトステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ハイプロメロース(hypromellose)、ラノリン、含水物質(hydrous)、ラノリンアルコール、レシチン、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、鉱油およびラノリンアルコール、一塩基性リン酸ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化蝋、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン、アルギン酸プロピレングリコール、自己乳化性モノステアリン酸グリセリル、クエン酸ナトリウム脱水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ヒマワリ油、トラガカント、トリエタノールアミン、キサンタンゴムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。1つの実施形態において、乳化剤は、ステアリン酸グリセロールである。
【0201】
(d.緩衝剤)
緩衝剤は、好ましくは、組成物を約4のpH〜約7.5のpH、より好ましくは、約4のpH〜約7のpH、そして最も好ましくは、約5のpH〜約7のpHに緩衝する。
【0202】
本開示の組成物はまた、化粧品において通常使用されるアジュバント(例えば、香料、防腐剤、金属イオン封鎖剤、湿潤剤、糖、両性ポリマー、メントール、ニコチネート誘導体、毛の損失を防止するための剤、泡安定剤、噴射剤、色素、ビタミンもしくはプロビタミン、酸性化剤もしくは塩基性化剤、または他の周知の化粧用アジュバント)から選択される、少なくとも1種のアジュバントを含有し得る。
【0203】
(2.カプセル化)
別の実施形態において、緑茶ポリフェノールは、マイクロカプセルへのカプセル化によって、ポリマー成分に組み込まれ得る。マイクロカプセルは、キャリア、コーティング、またはマトリックスの大部分の材料とは異なる材料から製造され得る。適切なマイクロカプセルは、宿主において腐食する材料から製造されるもの、または緑茶ポリフェノールがマイクロカプセルから拡散することを可能にするように製造されるものである。このようなマイクロカプセルは、カプセル化された緑茶ポリフェノールの、マイクロカプセルからの制御された放出を提供するために使用され得る。
【0204】
任意の特定のサイズ範囲の微粒子を調製するための、多数の方法が公知である。本発明の種々の送達ビヒクルのうちで、微粒子のサイズは、約0.2μmから約100μmまでの範囲であり得る。ゲル粒子微粒子、または融解材料製の微粒子についての合成方法は、公知であり、そしてエマルジョン中、スプレーされた液滴中、および分離した相中での重合が挙げられる。固体材料または予備形成されたゲルについて、公知の方法としては、湿式ミリングまたは乾式ミリング、粉砕、微粉砕、エアジェットによるサイズ分離、およびふるい分けなどが挙げられる。
【0205】
微粒子は、当業者に公知である種々の異なる方法を使用して、様々なポリマーから製造され得る。例示的な方法としては、ポリ乳酸および他の微粒子の調製を詳述する以下に記載される方法が挙げられる。ポリ乳酸微粒子は、好ましくは、以下の3つの方法のうちの1つを使用して製造される。すなわち、溶媒エバポレーション(Mathiowitzら,(1990)J.Scanning Microscopy 4:329;Beckら,(1979)Fertil.Steril.31:545;およびBenitaら,(1984)J.Pharm.Sci.73:1721に記載されるような);ホットメルトマイクロカプセル化(Mathiowitzら,Reactive Polymers 6:275(1987)に記載されるような);ならびに噴霧乾燥。マイクロカプセル化された生物活性物質を調製するための例示的な方法が、以下に記載される。
【0206】
溶媒エバポレーション法において、マイクロカプセルポリマーが、揮発性有機溶媒(例えば、塩化メチレン)に溶解される。緑茶ポリフェノール(可溶であるか、または微細な粒子として分散可能であるかのいずれか)がこの溶液に添加され、そしてこの混合物が、表面活性剤(例えば、ポリ(ビニルアルコール))を含有する水溶液中に懸濁される。得られたエマルジョンは、ほとんどの有機溶媒が蒸発して固体の微粒子を残すまで、撹拌される。この溶液は、緑茶ポリフェノールを入れられ、そして激しく撹拌されている、ポリ(ビニルアルコール)(Sigma)を含有する蒸留水中に懸濁される。撹拌時間後、有機溶媒をポリマーから蒸発させ、そして得られた微粒子が水で洗浄され、そして凍結乾燥機で一晩乾燥させられる。様々なサイズ(1μm〜1000μm)および形態を有する微粒子が、この方法により得られ得る。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンなどの、比較的安定なポリマーについて有用である。ポリ酸無水物などの不安定なポリマーは、水の存在に起因して、この製造プロセス中に分解し得る。これらのポリマーについては、以下の2つの方法(完全に無水の有機溶媒中で実施される)が、好ましくは使用される。
【0207】
ホットメルトカプセル化法において、ポリマーが最初に融解され、次いで生物学的に活性な材料の固体粒子(これは好ましくは、50ミクロン未満にふるい分けされている)と混合される。この混合物が非混和性溶媒(シリコーン油など)に懸濁され、そして撹拌を続けながら、このポリマーの融点より約5℃高い温度に加熱される。一旦、このエマルジョンが安定化したら、ポリマー粒子が固化するまで冷却する。得られた微粒子は、石油エーテルなどの溶媒でのデカンテーションにより洗浄されて、自由に流動する粉末を与える。約1ミクロン〜約1000ミクロンの範囲のサイズを有する微粒子が、この方法を用いて得られる。この技術を用いて調製されたカプセルの外側表面は、通常、滑らかかつ濃密である。この手順は、好ましくは、ポリエステルおよびポリ酸無水物から作製される微粒子を調製するために使用される。
【0208】
溶媒除去技術は、ポリ酸無水物について好ましい。この方法において、緑茶ポリフェノールは、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒中の、選択されたポリマーの溶液に、分散または溶解される。この混合物は、撹拌により、有機油(例えば、シリコーン油)中に懸濁されて、エマルジョンを形成する。溶媒エバポレーションとは異なり、この方法は、融点が高く、分子量が異なるポリマーから、微粒子を作製するために使用され得る。約1μm〜約300μmの範囲の微粒子が、この手順により得られ得る。この技術を用いて製造される球の外部の形態は、ポリマーの型に非常に依存する。噴霧乾燥において、ポリマーは、塩化メチレンに溶解される。既知の量の緑茶ポリフェノールが、このポリマー溶液に懸濁または共溶解される。次いで、この溶液または分散物が、噴霧乾燥される。約1μm〜約10μmの範囲の微粒子が得られ、その形態は、使用されるポリマーの型に依存する。
【0209】
1つの実施形態において、緑茶ポリフェノールは、アルギン酸ナトリウムエンベロープを有するマイクロカプセルにカプセル化される。ゲル型ポリマー(例えば、アルギネート)から作製された微粒子は、従来のイオンゲル化技術によって生成される。ポリマーは最初に、水溶液に溶解され、硫酸バリウムまたは何らかの生物活性剤と混合され、次いで、微小液滴形成デバイス(このデバイスは、いくつかの例において、液滴を破壊するために窒素ガスの流れを使用する)を通して押し出される。ゆっくりと撹拌されている(約100RPM〜170RPM)イオン硬化浴を、この押出しデバイスの下方に配置して、形成する微細液滴を捕捉する。これらの微粒子は、ゲル化が起こるために充分な時間を許容する目的で、約20分〜30分間、この浴内でインキュベートされたままにされる。微粒子のサイズは、種々のサイズの押し出し機を使用すること、または窒素ガスもしくはポリマー溶液のいずれかの流量を変更することによって、制御される。
【0210】
リポソームは、緑茶ポリフェノールを特定の組織に送達することを補助し得、そしてまた、緑茶ポリフェノールの半減期を増加させ得る。リポソームは、種々の供給者から市販されている。あるいは、リポソームは、当業者に公知である方法(例えば、Eppsteinら,米国特許第4,522,811号に記載されるような方法)によって、調製され得る。一般に、リポソームは、標準的な小胞形成脂質から形成され、これらの脂質は一般に、中性または負に荷電したリン脂質、およびコレステロールなどのステロールを含む。脂質の選択は一般に、望ましいリポソームサイズ、および血流中でのリポソームの半減期などの要因を考慮することによって、支配される。リポソームを調製するための種々の方法が公知であり、例えば、Szokaら,Ann.Rev.Biophys.Bioeng.9:467(1980);ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号に記載されるものである。1つの実施形態において、緑茶ポリフェノールをカプセル化するリポソームは、リポソームの標的を、HSV感染またはその近くの特定の細胞または組織に定め得る、リガンド分子を含む。
【0211】
1つの実施形態において、本開示の緑茶ポリフェノールをカプセル化するリポソームは、単核性のマクロファージおよび細網内皮系によるクリアランスを回避するように、例えば、その構造の表面に結合したオプソニン作用阻害部分を有することによって、改変される。1つの実施形態において、リポソームは、オプソニン作用阻害部分とリガンドとの両方を含む。リポソームを調製する際に使用するための、オプソニン作用阻害部分は、1つの実施形態において、リポソーム膜に結合した、大きい親水性ポリマーである。本明細書中で使用される場合、オプソニン作用阻害部分は、リポソーム膜に化学的または物理的に付着する場合(例えば、リポソーム膜自体への脂溶性アンカーの挿入により、または膜脂質の活性基に直接結合することにより)、このリポソーム膜に「結合」している。これらのオプソニン作用阻害性の親水性ポリマーは、保護表面層を形成し、この層は、マクロファージ−単球系(「MMS」)および細網内皮系(「RES」)によるこれらのリポソームの取り込みを、有意に減少させる(例えば、米国特許第4,920,016号に記載されるように)。従って、オプソニン作用阻害部分で改変されたリポソームは、改変されていないリポソームよりもかなり長期間、循環中に残る。この理由により、このようなリポソームはときどき、「ステルス」リポソームと呼ばれる。ステルスリポソームは、多孔性または「漏れやすい」微小血管により供給される組織に蓄積することが公知である。さらに、RESによる取り込みが低下することにより、肝臓および脾臓への有意な蓄積が防止されることによって、ステルスリポソームの毒性が低下する。
【0212】
リポソームを改変するために適切なオプソニン作用阻害部分は、好ましくは、約500ダルトン〜約40,000ダルトン、そしてより好ましくは約2,000ダルトン〜約20,000ダルトンの分子量を有する、水溶性ポリマーである。このようなポリマーとしては、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体またはポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えば、メトキシPEGもしくはメトキシPPG、およびステアリン酸PEGもしくはステアリン酸PPG;合成ポリマー(例えば、ポリアクリルアミドまたはポリN−ビニルピロリドン);線状、分岐状、または樹状のポリアミドアミン;ポリアクリル酸;カルボキシル基またはアミノ基が化学結合しているポリアルコール(例えば、ポリビニルアルコールおよびポリキシリトール)、ならびにガングリオシド(例えば、ガングリオシドGM1)が挙げられる。PEG、メトキシPEG、またはメトキシPPG、あるいはこれらの誘導体のコポリマーもまた、適切である。さらに、オプソニン作用阻害ポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖類、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン、またはポリヌクレオチドのいずれかとの、ブロックコポリマーであり得る。オプソニン作用阻害ポリマーはまた、アミノ酸またはカルボン酸を含む天然多糖類(例えば、ガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラゲナン);層状の多糖類またはオリゴ糖(線状もしくは分岐状);あるいはカルボキシル化された多糖類またはオリゴ糖(例えば、カルボン酸の誘導体と反応してカルボン酸基の結合を生じたもの)であり得る。好ましくは、オプソニン作用阻害部分は、PEG、PPG、またはその誘導体である。PEGまたはPEG誘導体で改変されたリポソームは、ときどき「PEG化リポソーム」と呼ばれる。オプソニン作用阻害部分は、多数の周知の技術のうちのいずれか1つによって、リポソーム膜に結合し得る。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルが、ホスファチジル−エタノールアミン脂溶性アンカーに結合し得、次いで、膜に結合し得る。同様に、デキストランポリマーが、Na(CN)BH3および溶媒混合物(例えば、30:12の比のテトラヒドロフランおよび水)を使用する60℃での還元的アミノ化によって、ステアリルアミン脂溶性アンカーで誘導体化され得る。
【0213】
本開示の微粒子およびリポソーム、ならびに微粒子およびリポソームを調製する方法は、例として与えられたのであり、本開示において役立つ微粒子またはリポソームの範囲を限定することは意図されない。様々な方法により製造された微粒子またはリポソームのアレイが、本発明において役立つことは、当業者に明らかである。
【0214】
(E.薬学的組成物)
別の実施形態は、1種以上の緑茶ポリフェノール、修飾緑茶ポリフェノール、特に、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートの、薬学的に受容可能な塩、あるいはその薬学的に受容可能な多型、溶媒和物、水和物、脱水和物、共晶、無水物、非晶質形態、およびこれらの組み合わせを含有する、薬学的組成物および剤形を提供する。本開示の化合物の特定の塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、およびこれらの水和物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0215】
緑茶ポリフェノールの薬学的単位剤形は、患者への経口投与、粘膜(例えば、鼻腔、舌下、膣、頬、または直腸)投与、非経口(例えば、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、またはボーラス注射)、局所投与、あるいは経皮投与のために適切である。剤形の例としては、錠剤;カプレット;カプセル剤(例えば、硬ゼラチンカプセルおよび軟らかい弾性ゼラチンカプセル);カシェ剤;トローチ剤;ロゼンジ;分散物;坐剤;軟膏剤(ointment);ハップ剤(湿布);ペースト;散剤;包帯剤;クリーム;硬膏剤;液剤;パッチ;エアロゾル(例えば、鼻用スプレーまたは吸入器);ゲル;患者への経口投与または経粘膜投与に適した液体剤形(懸濁物(例えば、水性または非水性の液体懸濁物、水中油エマルジョン、または油中水型の液体エマルジョン)、溶液およびエリキシル剤が挙げられる);患者への非経口投与に適した液体剤形;ならびに患者への非経口投与に適した液体剤形を提供するために再構成され得る滅菌固体(例えば、結晶性固体または非晶質固体)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0216】
本開示の緑茶ポリフェノールの剤形の組成、形状、および型は、代表的に、それらの用途に依存して変わる。非経口剤形は、同じ疾患または障害を処置するために使用される経口剤形よりも少ない量の活性成分を含有し得る。本開示により包含される特定の剤形が互いから変わる、これらおよび他の方法は、当業者に容易に明らかになる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990)を参照のこと。
【0217】
本開示の薬学的組成物および単位剤形は代表的に、1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤または希釈剤もまた含有する。本開示の特定の化合物により提供される利点(例えば、増加した溶解度および/または増強された流動、純度、もしくは安定性(例えば、吸湿性)の特性であるが、これらに限定されない)は、本開示の化合物を、薬学的処方物のため、および/または患者への投与のために、先行技術よりもよく適したものにし得る。適切な賦形剤は、薬剤学または薬学の当業者に周知であり、そして適切な賦形剤の非限定的な例は、本明細書中に提供される。特定の賦形剤が薬学的組成物または剤形への組み込みに適しているか否かは、当該分野において周知である種々の要因(剤形が患者に投与される方法が挙げられるが、これに限定されない)に依存する。例えば、経口剤形(例えば、錠剤またはカプセル剤)は、非経口剤形における使用に適さない賦形剤を含有するかもしれない。特定の賦形剤の適切さもまた、剤形中の特定の活性成分に依存し得る。例えば、いくらかの活性成分の分解は、いくらかの賦形剤(例えば、ラクトース)によって、または水に曝露される際に、加速され得る。第一級アミンまたは第二級アミンを含む活性成分は、このような加速された分解を特に受けやすい。
【0218】
本開示は、活性成分(例えば、緑茶ポリフェノール)が分解する速度を低下させる1種以上の化合物を含有する、薬学的組成物および剤形をさらに包含する。このような化合物(本明細書中で「安定剤」と称される)としては、アスコルビン酸などの酸化防止剤、pH緩衝剤、または塩緩衝剤が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本開示の薬学的組成物または剤形は、1種以上の溶解度モジュレーター(例えば、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウムもしくはリン酸カリウム、または有機酸)を含有し得る。特定の溶解度モジュレーターは、酒石酸である。
【0219】
賦形剤の量および型と同様に、剤形中の緑茶ポリフェノールの量および特定の型は、患者に投与される経路が挙げられるがそれに限定されない要因に依存して、異なり得る。しかし、本開示の緑茶ポリフェノール化合物の代表的な剤形は、薬学的に受容可能な塩、またはその薬学的に受容可能な多型、溶媒和物、水和物、脱水和物、共晶、無水物、もしくは非晶質形態を、約10mg〜約1000mgの量、好ましくは約25mg〜約750mgの量、より好ましくは50mg〜500mgの量、なおより好ましくは約30mg〜約100mgの量で、含有する。
【0220】
さらに、これらの化合物および/または組成物は、脂質ベースまたはポリマーベースのナノ粒子を使用して送達され得る。例えば、これらのナノ粒子は、非経口投与される薬物の薬理学的特性および治療特性を改善するように設計され得る(Allen,T.M.,Cullis,P.R.Drug delivery systems:entering the mainstream.Science.303(5665):1818−22(2004))。
【0221】
本開示の局所剤形としては、クリーム、ローション、軟膏剤(ointment)、ゲル、スプレー、エアロゾル、溶液、エマルジョン、および当業者に公知である他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms,第4版,Lea & Febiger,Philadelphia,Pa.(1985)を参照のこと。噴霧不可能な局所剤形については、局所用途に適合性であり、そして好ましくは水より大きい動粘性率を有する、キャリアまたは1種以上の賦形剤を含有する、粘性から半固体または固体の形態が、代表的に使用される。適切な処方物としては、溶液、懸濁物、エマルジョン、クリーム、軟膏剤(ointment)、粉末、リニメント剤、および軟膏(salve)などが挙げられるが、これらに限定されず、これらは所望であれば、滅菌されるか、または種々の特性(例えば、浸透圧)に影響を与えるための補助剤(例えば、防腐剤、安定剤、湿潤剤、緩衝剤、または塩)と混合される。他の適切な局所剤形としては、噴霧可能なエアロゾル調製物が挙げられ、ここで活性成分は、好ましくは固体または液体の不活性キャリアと組み合わせられて、加圧された揮発性物質(例えば、フレオンなどの気体噴射剤)との混合物中で包装されるか、またはスクイーズボトルに包装される。加湿剤または湿潤剤もまた、所望であれば、薬学的組成物および剤形に添加され得る。このようなさらなる成分の例は、当該分野において周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990)を参照のこと。
【0222】
本開示の組成物の経皮剤形および経粘膜剤形としては、点眼剤、パッチ、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、坐剤、軟膏剤(ointment)、ゲル、溶液、エマルジョン、懸濁物、または当業者に公知である他の形態が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing,Easton,Pa.(1990);およびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms,第4版,Lea & Febiger,Philadelphia,Pa.(1985)を参照のこと。口腔内の粘膜組織を処置するために適切な剤形は、うがい薬、口腔ゲル、または頬パッチとして処方され得る。さらなる経皮剤形としては、「レザバ型」または「マトリックス型」のパッチが挙げられ、これらは、皮膚に付けられ得、そして所望の量の活性成分の浸透を許容するための特定の期間にわたって、装着され得る。
【0223】
本開示の緑茶ポリフェノールを投与するために使用され得る、経皮剤形およびこれらを投与する方法の例としては、米国特許第4,624,665号;同第4,655,767号;同第4,687,481号;同第4,797,284号;同第4,810,499号;同第4,834,978号;同第4,877,618号;同第4,880,633号;同第4,917,895号;同第4,927,687号;同第4,956,171号;同第5,035,894号;同第5,091,186号;同第5,163,899号;同第5,232,702号;同第5,234,690号;同第5,273,755号;同第5,273,756号;同第5,308,625号;同第5,356,632号;同第5,358,715号;同第5,372,579号;同第5,421,816号;同第5,466;465号;同第5,494,680号;同第5,505,958号;同第5,554,381号;同第5,560,922号;同第5,585,111号;同第5,656,285号;同第5,667,798号;同第5,698,217号;同第5,741,511号;同第5,747,783号;同第5,770,219号;同第5,814,599号;同第5,817,332号;同第5,833,647号;同第5,879,322号;および同第5,906,830号(これらの各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)に開示されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0224】
本開示により包含される経皮剤形および経粘膜剤形を提供するために使用され得る、適切な賦形剤(例えば、キャリアおよび希釈剤)ならびに他の材料は、薬学分野の当業者に周知であり、そして所定の薬学的組成物または剤形が塗布される特定の組織または器官に依存する。この事実を考慮して、非毒性であり薬学的に受容可能である剤形を形成するための代表的な賦形剤としては、水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0225】
処置されるべき特定の組織に依存して、さらなる成分が、本開示の緑茶ポリフェノールの薬学的に受容可能な塩での処置前、処置と同時、または処置後に、使用され得る。例えば、浸透増強剤が、組織へ、または組織を横切って、活性成分を送達することを補助するために使用され得る。適切な浸透増強剤としては、アセトン;種々のアルコール(例えば、エタノール、オレイルアルコール、およびテトラヒドロフリルアルコール);アルキルスルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド);ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ピロリドン(例えば、ポリビニルピロリドン);Kollidon等級(ポビドン、ポリビドン);尿素;ならびに種々の水溶性または水不溶性の糖エステル(例えば、TWEEN 80(ポリソルベート80)およびSPAN 60(モノステアリン酸ソルビタン))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0226】
薬学的組成物もしくは剤形のpH、またはこの薬学的組成物もしくは剤形が塗布される組織のpHもまた、活性成分(単数または複数)の送達を改善するために調整され得る。同様に、溶媒キャリアの極性、そのイオン強度、または張度が、送達を改善するために調整され得る。ステアレートなどの化合物もまた、薬学的組成物または剤形に添加されて、送達を改善するために、その活性成分(単数または複数)の親水性または親油性を有利に変更し得る。この点に関して、ステアレートは、この処方物のための脂質ビヒクルとして、乳化剤または界面活性剤として、および送達増強剤または浸透増強剤として、働き得る。接着結合モジュレーターの薬学的に受容可能な塩の、異なる水和物、脱水和物、共晶、溶媒和物、多型、無水物、または非晶質形態が、得られる組成物の特性をさらに調整するために使用され得る。
【0227】
本開示の緑茶ポリフェノール組成物はまた、延長放出処方物または遅延放出処方物として、処方され得る。種々の活性成分のための延長放出処方物および遅延放出処方物は、当該分野において公知であり、例えば、カプセル化による。
【0228】
なお別の実施形態は、緑茶ポリフェノール局所皮膚用スプレーを提供する。
【0229】
緑茶ポリフェノール化合物(特に、C1〜C30の炭化水素鎖でエステル化された緑茶ポリフェノール)は、約0.001%w/v〜約50%w/v、代表的には約0.25%w/v〜約20%w/v、より代表的には約1%w/v〜約15%w/vで存在する。特定の実施形態において、これらの緑茶ポリフェノールは、約10%w/vで存在する。
【0230】
(IV.使用の方法)
1種以上のGTP、修飾GTP、またはこれらの組み合わせを含有する、本開示の組成物は、ウイルス感染の1つ以上の症状を処置するために有用である。好ましくは、本開示の組成物は、ヒトまたは動物の身体の表面領域(皮膚、粘膜、毛、歯、爪および唇が挙げられる)への局所塗布のために、処方される。
【0231】
1つの実施形態は、本開示のGTPまたは修飾GTP(例えば、式Iまたは式IIによるもの)のうちの1種以上を含有する、HSVを処置するための組成物を提供する。このような処方物は、上記のように、皮膚への局所塗布のために処方される。これらの処方物は、ローション、クリーム、軟膏(salve)、軟膏剤(ointment)、流体、ヒドロゲル、泡沫、コロイド、懸濁物、または乾燥粉末の形態で、皮膚に直接塗布され得る。
【0232】
このGTP組成物は、ウイルス感染(例えば、HSV)の1つ以上の症状を処置するために有効な量で、ある量の1種以上の緑茶ポリフェノール、修飾GTP、その薬学的に受容可能な塩、プロドラッグ、または誘導体を含有する。
【0233】
これらの緑茶ポリフェノール組成物は、被験体(好ましくは、ヒト被験体)に、必要に応じて1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、局所投与され得る。この組成物は、必要に応じて、1日あたり1回、2、3回、またはより多い回数で、局所塗布され得る。
【0234】
(V.組成物を作製する方法)
(A.修飾緑茶ポリフェノール)
修飾緑茶ポリフェノール(好ましくは、非修飾緑茶ポリフェノールと比較して脂質溶解度が増加している修飾緑茶ポリフェノール)は、例えば、ChenおよびDu,(2003)Chinese J Chem,21:979−981(これは、許容される場合、その全体が本明細書中に参考として援用される)により記載された方法によって生成され得る。手短に言えば、緑茶ポリフェノールを、望ましい数の炭素を有する塩化アシルと酢酸エチル中で反応させる。この反応物を濾過し、そしてその反応溶液を脱イオン水で洗浄する。上層である有機層をエバポレートし、そして減圧下で乾燥させる。この脂溶性緑茶ポリフェノールは、例えばChenら(2002)J.Chromatography,982:163−165(これは、許容される場合、その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるような高速向流クロマトグラフィーを使用して、単離され得る。次いで、この単離された脂溶性緑茶ポリフェノールは、組成物(例えば、局所処方物)に処方され得る。
【0235】
油中水型の局所組成物は、エマルジョン(例えば、クリーム、ローション、軟膏剤(ointment)、粉末、マイクロエマルジョン、リポソーム)の形態であっても、ゲル、液体、および泡沫の形態であってもよい。これらはまた、乾燥粉末処方物中に存在してもよい。
【0236】
(B.エマルジョン)
一般に、エマルジョンは、乳化と粘度と安定性と外観との望ましい釣り合いを達成する目的で、他の多数の物質の存在下で調製される。例えば、エマルジョンの処方は通常、少なくとも1種、そして頻繁には数種の組み合わせの乳化剤を必要とする。これらの剤は、一方の非混和性相の他方への分散を容易にし、そしてこのエマルジョンを安定化するのを補助する。乳化剤およびそれらの用途の包括的な概説は、Becher,P.Encyclopedia of Emulsion Technology,Dekker編,1983に見出され得る。
【0237】
1つの実施形態において、油相は、1種以上の界面活性剤、必要に応じて1種以上の乳化剤、および本開示の脂溶性緑茶ポリフェノールのうちの1種以上を一緒に混合し、必要であれば融解することにより調製される。水相は、必要に応じて加熱しながら、防腐剤を水に溶解することにより、別に調製される。この水相がこの油相に、例えば、連続高剪断混合を行いながら添加されて、白濁したエマルジョンを生成する。このエマルジョンが冷却され、そしてそのpHが、緩衝剤の添加により調整される。この処方物は、水の添加により、最終重量にされる。
【0238】
界面活性剤または洗剤は、組成物の総重量に対して0.01重量%〜50重量%の割合で、この組成物において必要に応じて使用される。この組成物がシャンプーの形態である場合、これらの界面活性剤または洗剤は一般に、この組成物の総重量に対して少なくとも1重量%、好ましくは5重量%〜50重量%、そして特に、8%〜35%の割合で使用される。
【0239】
乳化剤(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約0.5重量%〜約50重量%である。緩衝剤(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約1重量%〜約25重量%であり、そして安定剤(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約1重量%〜約25重量%である。
【0240】
緑茶ポリフェノール化合物(単数または複数)の濃度は、最終組成物の約0.001重量%〜約40重量%であり、特に、約0.001重量%〜約0.01重量%である。他の実施形態は、約1.0%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、または約35%の濃度の緑茶ポリフェノール化合物(単数または複数)を含有する。特定の実施形態において、1種以上の緑茶ポリフェノールは、投与される場合に、皮膚の炎症を減少させるため、またはふけを処置するために有効な量で存在する。別の実施形態において、1種以上の緑茶ポリフェノールは、被験体におけるウイルス複製を減少させるために有効な量で存在する。緑茶ポリフェノールの量は、処置されるべき障害に従って変わる。
【0241】
必要に応じての局所麻酔薬(topical anesthetics)の濃度は、約1重量%〜約10重量%であり、そして抗真菌剤および他の抗生物質の濃度は、約0.3重量%〜約5重量%である。
【実施例】
【0242】
(実施例1:Vero細胞におけるEGCGエステルの細胞生存率研究)
(材料および方法)
(緑茶ポリフェノール溶液)
2つの異なるポリフェノール、EGCGおよびEGCGエステル、すなわち、EGCGパルミテートを試験した。EGCGパルミテート(以下、EGCGエステルともいう)は、以下の構造:
【0243】
【化49】
を有する。
【0244】
本発明者らが使用した濃度範囲は12.5μM、25μM、50μM、75μM、および100μMであった。
【0245】
(細胞生存率アッセイ)
Vero細胞を6ウェルプレートで平板培養し、24時間後、様々な濃度のEGCGまたはEGCGエステル(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)を、それぞれ各ウェルに添加した。1時間後、ポリフェノールを吸引によって除去し、細胞をPBSで洗った。DMEM培地を各ウェルに入れ、細胞を24時間にわたってインキュベートした。その後、細胞を血球計およびトリパンブルー(これは、死細胞を青く染色するが、生細胞は白色のままにする)を用いて数えた。
【0246】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0247】
(結果)
Vero細胞を用いたHSVプラークアッセイを、エピガロカテキンガレート(EGCG)の添加を伴なって、およびこれを伴なわずに行った。無処理HSVプラークは結果として、1.03×107PFU/mlのウイルス力価であった。100μMのEGCGを加えた場合、ウイルスプラークは観察されなかった。これらの結果は、EGCGがHSV感染を阻害したことを示している。
【0248】
さらに、細胞生存率アッセイを、エピガロカテキンガレート(EGCG)および親油性茶ポリフェノール(LTP)の添加を伴なって、およびこれを伴なわずに行った。これらのアッセイの結果を表1に示す。
【0249】
【表1】
細胞傷害性研究は、12.5μM〜75μMの濃度でのEGCGおよびEGCGエステルは、細胞形態変化を誘導しないことを示した。細胞生存率を、トリパンブルーおよび血球計の直接細胞計数を用いて決定し、Vero細胞におけるEGCGエステルの影響を検出した。結果を図1および表2に示す。EGCGエステルの濃度が増大するにつれて、死細胞のパーセンテージが変化することはない。したがって、最大非毒性濃度である、75μMのEGCGエステルを使用してHSV1を処理し、その阻害効果を研究することが可能である。
【0250】
【表2】
細胞をEGCGエステルで処理したとき、細胞死のパーセンテージは、コントロールと比較してあまり変化がなかった。
【0251】
(実施例2:EGCGおよびEGCGエステルについての細胞傷害性研究)
(方法および材料)
(細胞傷害性アッセイ)
Vero細胞を、様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)のEGCGまたはEGCGエステルと共に6ウェルプレートで平板培養した。細胞を、カメラが取り付けられたACCU−Scope 3002顕微鏡を用いて、48時間後に形態および増殖の変化について研究した。
【0252】
あるいは、Vero細胞を6ウェルプレートで平板培養し、24時間後に様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)のEGCGまたはEGCGエステルを、それぞれ、各ウェルに添加した。1時間後、ポリフェノールを吸引によって除去し、細胞をPBSで洗った。細胞を、付属のカメラを伴なったACCU−Scope 3002顕微鏡を用いて、24時間後に形態および増殖の変化について研究した。
【0253】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0254】
(結果)
細胞は、より高濃度のEGCGおよびEGCGエステルを用いたことによって顕著な影響を受けることはなかった。
【0255】
HSV1処理のために使用するのに適当なEGCGおよびEGCGエステルの濃度を決定するために、細胞におけるポリフェノールの影響を研究した。様々な濃度のEGCGおよびEGCGエステル(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)を評価し、細胞の増殖および形態の両方について48時間で観察した。この実験において、ポリフェノールを、細胞をプレートに入れたのと同時に添加し、その後除去しなかった。
【0256】
培養真核生物細胞への緑茶ポリフェノールの細胞傷害性を評価するための実験は、細胞培養物におけるこれらのポリフェノールの中程度の毒性挙動を示す。結果は、EGCGをVero細胞に添加したとき、使用した濃度においては、形態変化は観察されないことを示す。EGCGエステルの存在下で、最大非毒性濃度を75μMと評価した。100μMの濃度において、細胞形態は、ある程度まで影響を受ける。
【0257】
さらに、様々な濃度のEGCGエステルのVero細胞への影響を、24時間で観察した。HSV1感染培養についての手順において、1時間の吸着の後、培地および吸着しなかったウイルスを吸引によって除去するので、類似の条件下でポリフェノールの影響を決定することが重要である。この研究において、Vero細胞を最初に24時間プレートで平板培養し、その後様々な濃度のEGCGエステル(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)を細胞に添加し、1時間吸着させた。その後、EGCGエステルを吸引によって除去し、細胞を24時間後に観察した。
【0258】
EGCGエステル濃度が増大するにつれて、細胞形態が大きく影響を受けるということはなかった。したがって、その後の実験に使用する方法はこれである。
【0259】
EGCGおよびEGCGエステルのHSV1およびVero細胞への影響について、様々なアプローチを用いて研究し、宿主細胞には影響がないが、ウイルスを効果的に阻害する濃度を確立した。初めに、細胞細胞傷害性アッセイにおいて、ポリフェノールの濃度が増大するにつれて、細胞形態は少し変化した。これは、細胞をプレートに入れたのと同時にポリフェノールを添加したときに観察した。一方で、細胞をあらかじめ24時間にわたってプレートに入れておいた後、ポリフェノールを1時間にわたって添加し、その後に除去したとき、細胞形態は影響を受けてはいないようだった。
【0260】
(実施例3:HSV感染におけるEGCGエステルの効果)
(方法および材料)
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0261】
(蛍光顕微鏡検査)
緑色蛍光HSV生合成を、蛍光顕微鏡検査および微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡検査を用いてコントロールVero細胞において観察した。細胞をガラスカバースリップ上で増殖させ、コンフルエンスまで到達させた。その後これらを、コントロールHSVまたは事前処理したHSVのいずれかに1時間感染させた。経時的研究を行い、その中で、ウイルスを1時間にわたって吸着させ、その後、吸引によって除去した。細胞をPBSで洗い、培地を各ウェルに添加した。8時間後、10時間後および12時間後、細胞を1:1アセトンおよびメタノール溶液を用いて固定し、微分干渉コントラスト設定を用いて、Zeiss Axiovision蛍光顕微鏡下で可視化した。
【0262】
HSV1/Vero細胞の溶解サイクルを、感染後8時間、10時間、12時間で観察し、感染細胞内での分子的変化を研究した。HSV1/Vero細胞をポジティブコントロールとして使用し、Vero細胞をネガティブコントロールとして使用した。75μMのEGCGエステル−HSV1/Vero細胞もまたモニターし、コントロールと比較した。GFP−HSV1、DAPI染色の核およびリソソーム染色を用いて、Vero細胞における細胞変性効果を同定した。一連の研究は3連で実施した。
【0263】
単一の細胞をHSV1感染およびEGCGエステル処理無しで処理した。この無処理細胞を参照として使用し、処理サンプルの全てと比較した。DAPI染色された核を有する細胞は、非常になめらかな縁を有し、核中に顆粒は無い。緑色蛍光画像において、明らかな緑色バックグラウンドがあるが、緑色蛍光粒子は無い。リソソーム染色において、赤色バックグラウンドがあるが、細胞内に明らかな蛍光赤色粒子は無い。
【0264】
次に、何ら処理を行っていない単層中の非感染Vero細胞を、400×の倍率下で観察した。位相差顕微鏡検査、DAPI、GFP、DAPI+GFP、DAPI+GFP+リソソーム染色および全染色オーバーレイの画像を取得した。全体として、この実験は、細胞形態および全ての蛍光染色についてのバックグラウンドの情報を提供する。
【0265】
(結果)
HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞を、感染後8時間で観察した。HSV1/Vero細胞についての位相差画像は、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞のものとは非常に異なる。HSV1/Vero細胞の細胞形態は、大きく変化しており、この細胞における溶解ウイルス感染を示していた。EGCGエステル−HSV1/Veroの細胞形態は、細胞単独の画像に非常に類似している。100μMのEGCGまたは100μMのEGCGエステルで処理したウイルスは、複製したり、さらなるビリオンを形成したりすることはできなかった。この結果は、EGCGエステルで処理された場合、HSV1は、その溶解サイクルを続けることができなかったことを意味している。HSV1/Vero細胞をDAPI染色で染色したとき、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞と比較して、細胞核において明らかな差異が存在する。顕著な顆粒化および縁の異常(demargination)はHSV1/Vero細胞においてのみ見られ、このことは、ウイルス感染の正常な発生を示している。
【0266】
EGCGエステル−HSV1/vero細胞は、自身の核の完全性をなお維持し、細胞のみの画像に類似した外見を示した。緑色蛍光画像は、明らかに、HSV1/Vero細胞において顕著な量のGFP発現を示すが、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞においては、ほとんど発現を示さない。さらに、リソソーム染色は、HSV1/vero細胞でのリソソーム活性化を示すが、EGCエステル−HSV1/vero細胞においては示さない。
【0267】
感染後10時間での画像において、細胞形態は、HSV1/Vero細胞において顕著に変化しており、感染8時間後よりもさらに変化している。EGCGエステル−HSV1/Vero細胞は、細胞のみの画像に非常に類似しているように見える。HSV1/Vero細胞のDAPI染色において、細胞核におけるなおさらなる顆粒化および縁の異常がある。さらに、緑色蛍光粒子を、HSV1/Vero細胞でのみ観察する。リソソーム染色は、感染の10時間後、HSV1/Vero細胞での顕著な活性化を示さなかった。対照的に、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞は、全ての蛍光画像において、感染の8時間後に類似の結果を示す。
【0268】
感染後12時間の実験において、細胞形態は、感染後8時間および10時間における細胞に類似したままであった。DAPIで染色した場合、より多くの顆粒化および縁の異常を、HSV1/Vero細胞のこの感染段階で観察する。緑色蛍光粒子も観察する。リソソーム活性化は観察されなかった。EGCGエステルHSV1/Vero細胞は、全ての蛍光画像において、感染後8時間および10時間の細胞と類似の結果を示し、細胞のみの画像とも類似する。
【0269】
要約すると、蛍光顕微鏡検査の結果を比較および対比させた場合、HSV1/Vero細胞と75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞との間の差異は、観察者にとって明らかである。HSV1感染細胞においては可視のウイルス粒子が存在するが、EGCGエステル−HSV1感染細胞では、ビリオンは、ほとんどない。
【0270】
細胞の核はまた、非常に異なっている。HSV1感染細胞においては、細胞の縁が損なわれ、染色体の顆粒化がおこる。EGCGエステル−HSV1感染細胞において、細胞の核は影響を受けなかった。
【0271】
緑色蛍光粒子を、HSV1/Vero細胞において、感染後8〜12時間に観察する。核の顆粒化および縁の異常の量は、HSV1/Vero細胞において、感染後8時間から10時間までに増大する。リソソーム活性化をHSV1/Vero細胞において、感染の8時間後に観察することができるが、10時間後には低減する。これらの結果はHSV1/Vero細胞溶解感染において報告されているイベントと良好な相関がある。EGCGエステルHSV1/Vero細胞において、これらのいずれも観察することは無く、このことは、75μMでのEGCGエステルはHSV1感染を阻害することができることを示す。
【0272】
蛍光計の実験において、GFP発現は、HSV1/Vero細胞と比較して、75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞において、大きく低下する。したがって、ウイルス生合成の一部としてのGFP発現は、HSV1をEGCGエステルで処理したときに、低減する。さらに、蛍光顕微鏡検査の分析は、GFPおよびDAPI染色の両方で注目すべき結果を示した。GFP発現は、HSV1/Vero細胞と比較して、75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞において低減した。さらに、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞に対してHSV1/Vero細胞の核の形態を評価すると、いくつかの差異が認められる。感染中、HSV1/Vero細胞の核では、その縁が損なわれ、染色体の多数の顆粒化がおこる。対照的に、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞の核は、感染を通じて、その完全性を保つ。
【0273】
(実施例4.EGCGエステルは細胞増殖を阻害しない)
(材料および方法)
(細胞増殖アッセイ)
細胞増殖キット(G5421,Promega Corp.)を使用した。これは、細胞増殖を決定するための比色定量の方法である。このキットは、テトラゾリウム化合物および電子カップリング試薬(フェナジンメトサルフェート)を含む。生細胞のみがテトラゾリウム化合物を可溶性ホルマザンに生物的に還元する(bioreduce)ことができる。したがって、形成され、490nmの吸光度で測定されたホルマザンの量は、生細胞数に正比例する。細胞を96ウェルプレートで平板培養し、24時間後、様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)のポリフェノールで処理して1時間吸着させた。その後、ポリフェノールを吸引によって除去し、100μLの新鮮なDMEMを各ウェルに添加した。24時間後、20μLのMTS試薬を培地中の細胞100μL毎に添加した。プレートを、37℃、5%CO2で4時間インキュベートし、その後、プレートリーダーを用いて吸光度を読み取った。
【0274】
(結果)
以前の結果は、EGCGエステルが、Vero細胞の細胞傷害および生存率に対して顕著な影響を示さないことを示した。本研究では、細胞増殖を以前に記載されたものと同じ条件下で調査した。各実験は3連でアッセイし、この比色定量アッセイの吸光度を、96ウェルELISAプレートリーダーを使用して、490nmで記録した。結果を表3および図2に示す。
【0275】
表3および図4の増殖アッセイ結果は、EGCGおよびEGCGエステルは両方とも、細胞増殖を大きくは阻害していないことを示す。コントロールと比較して、細胞は、490nmの吸光度レベルにおいて、ほんのわずかな低減を示した。これは、大部分の細胞が、MTSテトラゾリウムのホルマザンへの高い還元を誘導していること、したがって、高い細胞生存率を保っていることを示している。75μMまでのEGCGおよびEGCGエステル濃度の増大は、細胞増殖の顕著な低減を誘導しない。
【0276】
【表3】
(実施例5.HSV1粒子の生産に対するEGCGおよびEGCGエステルの効果)
(材料および方法)
(プラークアッセイを用いたウイルス力価研究)
Vero細胞を6ウェルプレートで平板培養し、コンフルエンスまで到達させた。HSVビリオンを細胞感染の前に、それぞれの濃度のポリフェノール(12.5μM、25μM、50μM、75μM、100μM)で1時間処理した。その後、細胞をHSVに感染させ、1時間吸着させた。その後、吸着しなかったウイルスを吸引によって除去した。その後、プレートを栄養培地含有寒天で覆った。50時間以内に、クリスタルバイオレットで細胞を染色してプラークを可視化し、観察して、数えた。
【0277】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0278】
(結果)
プラークアッセイを使用してウイルス力価を決定し、ウイルス粒子生産に対する50μMのEGCGおよびEGCGエステルの効果を研究した。ウイルス溶解物の連続希釈を10−1から10−7で実施し、その後、細胞をこの希釈物でそれぞれ感染させた。HSV1/Vero細胞の実験において、プラークを10−3から10−5ウイルス溶解物の希釈で観察し、ウイルス力価は、1.25×106PFU/mlであった。50μMのEGCG−HSV1/Vero細胞の実験において、プラークを、10−3から10−4でしか観察せず、ウイルス力価は、1×105PFU/mlであった。最後に、50μMのEGCGエステル−HSV1/Vero細胞の実験において、全てのウイルス溶解物の希釈において、プラーク形成を観察しなかった。この結果を、図3において要約する。この図は、HSV1/Vero力価とEGCG−HSV1/Vero力価とを比較したとき、1/10に低減することを示している。さらに、HSV1/Vero力価と比較したEGCGエステル−HSV1/Vero力価においては、さらなる大きな低減を示す。これは、EGCGエステルが、HSV1阻害において、EGCGと比較したときに、より強力であることを示す。
【0279】
HSV1に対するEGCGエステルの最小阻害濃度を得るために、様々な濃度(12.5μM、25μM、50μM、75μM)のEGCGエステルを、より低い希釈のウイルス溶解物(10−1および10−2)で使用した。この結果は、EGCGエステル濃度が増大するにつれて、HSV1力価が低減することを示した。図6に示すように、50μM以上のEGCGエステル濃度において、HSV1のプラークを形成する能力は、>99%低減する。
【0280】
EGCGおよびEGCGエステルの両方についての最大非毒性濃度を、75μMと同定し、その後、これらの濃度を、HSV1ウイルス生産に対するEGCGおよびEGCGエステルの効果を研究するために使用した。プラークアッセイにおいて、ウイルスを事前に50μMのEGCGで処理したとき、結果は、1/10に低減したプラーク形成を示した。一方で、HSVを、50μM以上の濃度のEGCGエステルで処理するとき、プラークは観察されない。その後、様々な濃度のEGCGエステルを使用して、最小HSV1阻害濃度を決定した。この結果は、50μM以上の濃度において、EGCGエステルは完全にPFU形成を阻害することを示す。
【0281】
(実施例6.HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞における緑色蛍光タンパク質発現の研究)
(材料および方法)
(緑色蛍光タンパク質(GFP)を伴なったEsherichia coliアンピシリン耐性プラスミド)
Esherichia coliのアンピシリン耐性株を、アンピシリンおよびL−アラビノース(Larabinose)存在下のLuria Broth(LB)で当初増殖させた純粋なコロニーから単離した。コロニーを、コロニー移動の前に100μlのアンピシリンおよび100μlのL−アラビノースを補充した新たなLBに移動させた。使用したアンピシリンの濃度は100ng/mLであった。L−アラビノースの濃度を、連続希釈を用いて作り、5%パーセント溶液を作るためには1:10比と設定した。
【0282】
(蛍光計を用いたGFP発現研究)
GFP発現を、GFPプラスミドを含むEscherichia coli、およびGFPプラスミドを含まないEscherichia coliにおいて研究した。使用した蛍光計はTunerデジタル蛍光計−モデル450であった。サンプルを3mLのH2Oに入れ、連続希釈を各サンプルの最初の3mLから行った。標準希釈曲線をこの連続希釈物から得た。次に、Vero細胞をT−75フラスコで増殖させ、コンフルエンスに到達させた。HSV1ビリオンを、細胞感染の前に75μMのポリフェノールで3時間処理した。その後、細胞を、処理したHSV1−UL46および無処理のHSV1−UL46に感染させ、1時間吸着させた。その後、吸着しなかったウイルスを、PBSで細胞を2回洗うことで除去した。その後、細胞を37℃で12時間インキュベートした。その後、細胞をトリプシン処理し、ペレットにした。最後に、細胞を3mLのH2Oに再懸濁させ、蛍光計を用いてGFP発現について分析した。3mlの水をブランクサンプルとして使用した。より高い蛍光感度のためにGain knobを1000にセットした。
【0283】
(GHSV−UL46)
緑色蛍光タンパク質タグを有するHSVを用いて、HSVウイルスのライフサイクルを研究すること、およびインビトロHSV感染に対する親油性茶ポリフェノールの潜在的効果を研究することが可能である(Willard,M.Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。エステル修飾EGCGが、HSV感染に対して類似またはより良好な結果を有することを証明すれば、将来の動物およびヒト研究を、ヒトの単純ヘルペスウイルス感染を防ぐための、安定で、効果的な局所適用に向けて行うことができる。性的伝染HSVは、宿主細胞に非常に迅速に感染する。したがって、初期ウイルス感染の前にHSVを阻害するための有効な抗ウイルス薬物が作製されることが必要である(Isaacs CE,et al.Antimicrobial Agents and Chemotherapy.2008;52(3):962−970)。
【0284】
HSV1ウイルスモデルは、Washington University School of Medicineにおいて、研究者のチームによって改変された。緑色蛍光タンパク質を、テグメントタンパク質であるVP11/12をコードするウイルス遺伝子UL46に結合させた。概略図は図7で見ることができる。GFP配列を、相同組換えベクターおよび所望の配列を増幅するようにデザインされたプライマーを用いて、UL46遺伝子に加えた(Willard,M.Journal of Virology.2002;10:5220−5232)。
【0285】
(細胞培養の維持)
Vero細胞をATCC(Manassas,VA)から購入し、5%胎仔ウシ血清(FBS)および1ug/mLゲンタマイシンを補充したダルベッコ最小必須培地(DMEM)を含むT25フラスコ中で、37℃および5%CO2においてコンフルエントまで培養した。細胞増殖を、Micrometricsデジタルカメラが取り付けられたACCU−SCOPE位相差顕微鏡およびMicrometric SE Premiumソフトウェアを用いて注意深くモニターした。この培養を維持するために、Vero細胞のコンフルエントな単層を、500μLのトリプシン/EDTAを用いて5分間トリプシン処理した。その後、4.5mLの培地をT−25フラスコに添加し、細胞を6ウェルプレートまたは他のT−25フラスコ中で二次培養し、コンフルエントまでインキュベートした。
【0286】
(HSV1−UL46ウイルスの維持)
HSV1−UL46ウイルスをATCC(Manassas,VA)から購入した。ウイルスの継代を、T−25フラスコ中で行い、細胞を完全細胞変性効果(CPE)に到達させた。その後、培地を15mLのトルネードチューブに収集し、1000rpmで10分間遠心分離して、細胞の残屑を除去した。その後、ウイルス含有上清を、必要なときまで−80℃未満に置いておいた。
【0287】
(結果)
本研究で使用したウイルスモデルシステムであるHSV−GFPUL46は、HSV1 UL46遺伝子に緑色蛍光タンパク質(GFP)タグを有する。本研究において、蛍光計を使用して、感染Vero細胞における緑色蛍光タンパク質発現を測定した。細胞中のGFP発現を定量的に決定するため、標準希釈曲線を、GFP挿入物を含むEscherichia coli(E.coli)を用いて生成した。さらに、GFP挿入物を有さないEscherichia coliを、ネガティブコントロールとして使用した。E.coli培養物の連続希釈物を材料および方法のセクションに記載したように調製した。結果を表4および図5に示す。結果で示されているように、線形の希釈曲線を、GFPを伴なったE.coliの連続希釈培養物を用いて首尾よく生成した。ネガティブコントロールは、非常に低い読み取り値を示す。この実験は、蛍光計の使用が、GFP発現の定量的測定を提供するのに適していることを示した。
【0288】
【表4】
この実験は、蛍光計を使用して、HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞の両方においてGFP発現を研究すること、および定量的に測定することができることを示している。本実験において、Vero細胞のみ、HSV1/Vero細胞、および75μMのEGCGエステル−HSV1/Vero細胞を使用して、GFP発現を定量的に測定した。結果を図6に示す。
【0289】
GFP発現は、HSV1/Vero細胞と比較して、75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞において大きく低下する。したがって、ウイルス生合成の一部としてのGFP発現は、HSV1がEGCGエステルで処理された場合に低減する。
【0290】
(実施例7.PCRベースアッセイを用いた、HSV1/Vero細胞およびEGCGエステル−HSV1/Vero細胞における糖タンパク質D、GFP、およびVP11/12のアンプリコンの比較)
(方法および材料)
【0291】
【表5−1】
【0292】
【表5−2】
プライマーセットを使用して、HSV1/Vero細胞およびEGCGエステルHSV1/Vero細胞から単離したDNAを伸長開始させた(prime)。PCR産物を1%ゲル電気泳動を使用して分析した。全てのプライマーは、DNAサンプルを伸長開始させることができ、アンプリコンは、予想したサイズを有した。
【0293】
(PCR産物の配列決定)
各プライマーセット1〜9についてのPCR産物を配列決定し、NCBI相同性サーチを用いて分析した。その結果は、報告されたHSV1配列への高い相同性を示唆した。表6〜14は、各配列で行ったBlastサーチからの結果を示している。したがって、デザインしたプライマーを用いて、HSV1/Vero細胞に対するEGCGエステルの阻害の分子機構を首尾よく研究することができる。プライマーの配列は以下の通りである。
【0294】
【数1】
【0295】
【数2】
【0296】
【数3】
【0297】
【数4】
(ポリメラーゼ連鎖反応)
公表された配列に基づいて9つのセットのプライマーを、HSV1ゲノムの様々な領域を伸長開始させるようにデザインした。HSV1糖タンパク質Dを標的とするように、2つのセットのプライマーをデザインした。これらは、フォワードが5’−AGACGTCCGGAAACAACCCTACAA−3’(配列番号2)、リバースが5’−ACACAATTCCGCAAATGACCAGGG−3’(配列番号3)を含む。第2のセットは、フォワードが5’−TTGTTTGTCGTCATAGTGGGCCTC−3’(配列番号4)、リバースが5’TGGATCGACGGTATGTGCCAGTTT−3’(配列番号5)を含む。次に、HSV1糖タンパク質Bを標的とするように、2つのセットのプライマーをデザインした。プライマーは以下:フォワードが5’AGATTCTGCGGTACTGCGATCACT−3’(配列番号6)、リバースが5’−ACGGAACACAAACAAGCACGGATG−3’(配列番号7)である。第2のセットは、フォワードが5’−AGCTGATTATCGCCACCACACTCT−3’(配列番号8)、リバースが5’−TGGCGTTGATCTTGTCGATCACCT−3’(配列番号9)を含む。第3のセットのプライマーは、以前にデザインされており、S.Moira BrownおよびAlasdair R.MacLeanによって、書物、Herpes Simplex Virus Protocolsにおいて公表されている。このセットは、フォワードが5’ATTCTCCTCCGACGCCATATCCACCTT−3’(配列番号10)、リバースが5’−AGAAAGCCCCCATTGGCCAGGTAGT−3’(配列番号11)を含む。1セットのプライマーを、HSV1のUL46遺伝子に結合した緑色蛍光タンパク質を標的とするようにデザインした。これは、フォワードが5’−GACCCTGAAGTTCATCTGCACCA−3’(配列番号14)、リバースが5’−AACTCCAGCAGGACCATGTGAT−3’(配列番号15)を含む。GFPに対してデザインされた第2のセットのプライマーは、すでにデザインされている42。これは、フォワードが5’−GTCAAAGCTTAAGATGGTGAGCAAGG−3’(配列番号12)、リバースが5’−CTTGAAGCTTCTTGTACAGCTCGTCC−3’(配列番号13)を含む。最後に、UL46遺伝子に対応するHSV1テグメントタンパク質VP11/12を標的とするように2つのセットのプライマーをデザインした。プライマーは以下:フォワードが5’−ACCAAGCCTTGATGCTCAACTCCA−3’(配列番号16)、リバースが5’−ACAACACGGTTCCCGAGAGTTTGA−3’(配列番号17)である。第2のセットは、フォワードが5’−ACCAAGCCTTGATGCTCAACTCCA−3’(配列番号18)、リバースが5’ACACAACACGGTTCCCGAGAGTTT−3’(配列番号19)を含む。反応混合物は、1μLの抽出DNA、1μLのフォワードプライマーおよび1μLのリバースプライマー、12.5μLのMaster Mix、ならびに9.5μLのdiH2Oを含んだ。この混合物をPCRチューブに入れ、Labnet MultiGene IIサーマルサイクラー(Labnet International,Edison NJ)内に置いた。反応プロファイルは、95℃で2分間の初期変性、その後、95℃で30秒間の変性、60℃で1分間のアニーリング、および72℃で30秒間の伸長のサイクルであった。最後のステップは、72℃で10分間の最終伸長段階を含んだ。一旦、サイクルが終われば、サンプルを4度まで冷却し、その後、アガロースゲル電気泳動での将来の分析のために、−20℃のフリーザーに保管した。
【0298】
(PCR産物の分析)
ポリメラーゼ連鎖反応産物を、1%アガロースゲル上で分析し、可視化した。各ゲルは、0.5gのアガロース(USB Corporation,Cat No32802)を秤量し、それを50mLの1×TAE(Tris−酢酸−EDTA)緩衝液と合わせて、作製した。この混合物を、アガロースが完全に溶解するまで、電子レンジで1分間加熱した。その後、この混合物をゲル用具に注ぎ、凝固させた。ウェルを作るために、ゲルコームをゲルの一端で使用した。一旦、ゲルが凝固したら、サンプルを各ウェルにロードした(2μLの10×ローディング色素+10μLのPCR産物)。Hi−Lo DNAマーカーを第1のウェルにロードした。115Vで1時間ゲル泳動を行った(run)。その後、このゲルをエチジウムブロマイドで15分間染色し、さらに15分間水で洗った。その後、このゲルを、Kodak Image Station 440 CF(Perkin Elmer Life Sciences,Waltham,MA)を用いてUV光下で分析した。
【0299】
(リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応において用いるために、HSV1糖タンパク質Dを伸長開始する1セットのプライマーをデザインした。このセットは、フォワードが5”−CAACCCTACAACCTGACCATC−3’(配列番号20)、リバースが5’TTGTAGGAGCATTCGGTGTAC−3’(配列番号21)を含む。各チューブ(ネガティブコントロール−DNA無しを除く)は、10μLのFast SYBR緑色マスター混合物(ABI Fast SYBR Green Master Mix)、1μLのフォワードプライマー、1μLのリバースプライマー、1μLのゲノムDNAおよび6μLのDi H2Oを含んだ。サンプルにABI StepOnePlusリアルタイムPCRシステムを実行した(run)。この実行方法は、95℃で5分間の保持段階、その後、95℃で1分間の変性、60℃で1分間のアニーリングおよび72℃で30秒間の伸長を40サイクルであった。次に、融解曲線段階は、95℃で15秒間、その後、60℃で1分間、そして95℃で15秒間を含んだ。
【0300】
(HSV1感染細胞からのDNA抽出)
細胞を60mmプレートで増殖させ、コンフルエンシーまで到達させた。その後、細胞を、処理HSV1および無処理HSV1に、1時間、37℃および5%CO2で感染させた。吸収期間の後、細胞をPBSで洗い、培地をプレートに添加した。12時間後、細胞をトリプシン処理し、DNAを、DNeasy Blood and Tissue Handbook(Qiagen 2006)を用いて抽出した。その後、DNA濃度を、Nanodrop Specrophotometerを用いて測定した。
【0301】
【表6】
【0302】
【表7】
【0303】
【表8】
【0304】
【表9】
【0305】
【表10】
【0306】
【表11】
【0307】
【表12】
【0308】
【表13】
【0309】
【表14】
(結果)
HSV1/Vero細胞およびEGCGエステルHSV1/Vero細胞から抽出したDNAを精製および単離し、その量および純度をNanodrop分光光度計ND1000によって決定した。コントロールサンプルは、566.4ng/μLを含み、75μMのEGCGエステルサンプルは560.1ng/μLを含み、細胞のみのサンプルは、562.8ng/μLを含んだ。量における各サンプル中のDNA濃度が類似しているので、比較PCRベースアッセイを行うために、一定量の糖タンパク質Dのプライマーと共に、各サンプル由来の1μLを使用した。Kodak Image analyzer440CFを用いて、各実験のバンド強度を測定した。コントロールバンドの読み取りは、445.92、588.24、および541.73であり、平均は525.29であった。75μMのEGCGエステルのバンドの読み取りは353.87、438.47および407.82であり、平均は400.05であった。PCR産物の75μMのEGCGエステルHSV1/Vero細胞の強度は、HSV1/vero細胞の強度より低かった。
【0310】
PCRベースアッセイを行うため、糖タンパク質D、GFPおよびVP11/12についてのプライマーを用いて、さらなる実験を行った。結果は、HSV1を75μMのEGCGで処理したときに、DNAバンド強度が低減することを示す。HSV1を75μMのEGCGエステルで処理したときに、DNAバンド強度はさらに低減する。これは、HSV1のみを感染させたVero細胞と比較して、EGCGで処理したとき、より少ないHSV1粒子しかVero細胞に感染できなかったこと、EGCGエステルで処理したときは、さらに少なくなったことを意味する。しかし、定量的測定を行うために、リアルタイムPCRを用いたさらなる分析を行うことが必要である。
【0311】
以前の実験は、糖タンパク質Dの増幅が、HSV1/Vero細胞と比較して、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞において低下することを示しており、したがって、リアルタイムPCRを用いた糖タンパク質の定量的研究を行うことが重要である。表15に示しているように、本研究のために特別なプライマーをデザインした。リアルタイムPCRのプロセスは、各反応サイクルの終わりに蛍光データを収集することで機能する。本実験で用いたSYBR緑色色素は、2本鎖PCR産物に結合し、これによってPCR産物が蛍光を発するようになる。反応が継続するにつれて、機器は、各サンプルについての閾値を呼び出す。閾値サイクル(Ct)は、蛍光の最初の顕著な増大が検出される決定的なサイクルである。一旦、PCRサイクルが終了したら、データを収集し、各サンプルのCt値を分析し、相対量(RQ)の蛍光を報告した。Ct値を比較するための基準は、以下である:Ctにおける1の差は、DNA量における2倍の差に相当する。100ng/μLのDNAを全てのサンプル;細胞のみ、HSV1/Vero、およびEGCGエステルHSV1/Veroにおいて使用した。結果は図8および図9に示す。
【0312】
【表15】
結果は、EGCGHSV1/Vero対HSV1/Veroで、糖タンパク質Dの量において32倍の差を示し、HSV1/veroからEGCGエステルHSV1/Veroでは256倍の差を示す。この結果は、EGCGは、HSV1を95%阻害し、EGCGエステルはHSV1を99.46%阻害することを示す(図10)。この作用モードは、ビリオンエンベロープの糖タンパク質に干渉すること、またはウイルス吸着および細胞侵入のためのウイルス化合物に干渉することによると考えられる(Song et al.Antivirus Response68:66−74,2005;Williamson et al.J.of Allergy Clinical Immunology 118:1369−1374,2006)。明らかに、阻害は、ウイルスの浸透後ではなく、吸着中に起きるようである(図11)。緑色蛍光タンパク質タグを用いることで、GFP発現が、コントロールウイルスと比較して、処理ウイルスにおいて大きく低減することを確認した。
【0313】
HSV1/Veroの糖タンパク質DのPCRベースDNAアッセイは、EGCGエステル−HSV1/Vero細胞と比較して、より高いバンド強度を示した。これは、75μMのEGCGエステル−HSV1/Veroと比較して、HSV1/Vero感染細胞において、より多くのウイルスDNAが存在したことを示す。
【0314】
さらに、リアルタイムPCRベースアッセイは、EGCG−HSV1/Vero細胞の糖タンパク質DのDNA量が、HSV1/Vero細胞のDNAと比較して32倍異なること、HSV1/Vero細胞からEGCGエステルHSV1/Vero細胞では256倍異なることを示した。これらの結果は、EGCGエステルが、HSV1を大きく阻害すること、ならびに、EGCGのみと比較したとき、HSV1に対してより有効であることを示している。
【0315】
要約すると、EGCGおよびEGCGエステルは両方ともHSV1を阻害することができるが、EGCGエステルは、インビトロでのHSV1感染に対する阻害作用において、EGCGと比較してより強力であることを証明した。EGCGとは反対に、EGCGエステルは安定な化合物であり、膣のpHにおいても安定であり、局所適用のための理想的な候補である。HSV1およびおそらくHSV2に対するEGCGエステル局所適用は、毎年、何百万人ものヒトに有益である。さらに、疾患の広がりを止めることができることによって、ヒトが、HSVとHIVとの間のつながりをできる限り止めることを可能にする。ヒトにおけるEGCGエステルの作用モードを完全に理解するためには、さらなる研究を行うことが必要であるが、本研究から得られた結果は、非常に有望である。天然産物の使用は多くの生涯を改善し得、したがって、患者に、より良好でより健康な将来についての希望を与える。
【0316】
(実施例8.単純ヘルペス形成の発生段階におけるEGCGステアレートの適用)
図12A〜12Bは、1人のボランティア被験体の口の領域の写真である。この被験体は、単純ヘルペス発生を報告した。図12Aに示した単純ヘルペスの発生において(すなわち、10分以内から12時間まで、その間いつも、この被験体は、刺痛、かゆみ、炎症、紅斑、過敏症および/または苦痛を、病変がおそらく出現する領域において経験した)、本発明による組成物、すなわち、EGCGステアレートを含む組成物、すなわち、
【0317】
【化50】
(ここで、脂肪酸エステルは、ステアリン酸との(−)−エピガロカテキン−3−ガレートのエステルである)を適用した。毎回、適用量は50μl〜100μlであり、その間の各量およびあらゆる量であった。被験体に適用した組成物中のEGCGステアレートの濃度は、0.1〜20% wt/vol(重量/容積)であり、その間の各パーセンテージおよびあらゆるパーセンテージであった。EGCGステアレートを含む組成物を、さらに3回、規則的な間隔で、次の11時間にわたって適用した。図12Bは、11時間の処置後の被験体の口の領域を示している。領域は回復し、発生の徴候が無い。言い換えれば、単純ヘルペスが形成されず、HSV発生が阻害され、上皮組織が治癒した。図12Cは、別の単純ヘルペスのエピソードにおいて11時間の処置を行っていない、唇での発生の出現を示す。図12Cは、単純ヘルペスの出現を示している。
【0318】
(実施例9.単純ヘルペス形成の発生段階後のEGCGステアレートの適用)
図13A〜13Hは、ボランティア被験体の口の写真である。この被験体は、単純ヘルペス発生を報告した。単純ヘルペスの発生を図13Aに示す。単純ヘルペスの水疱段階において(すなわち、12時間後、単純ヘルペス形成の水疱段階の開始時)、本発明による組成物、すなわち、EGCGステアレートを含む組成物、すなわち、
【0319】
【化51】
(ここで、脂肪酸エステルは、ステアリン酸との(−)−エピガロカテキン−3−ガレートのエステルである)を適用した。毎回、適用量は50μl〜100μlであり、その間の各量およびあらゆる量であった。被験体に適用した組成物中のEGCGステアレートの濃度は、0.1〜20% wt/vol(重量/容積)であり、その間の各パーセンテージおよびあらゆるパーセンテージであった。図を参照し、図13Bの写真を撮った後すぐに、すなわち、水疱段階の開始時に、本組成物を適用した。EGCGステアレートを含む組成物を、さらに3回、次の2日間にわたって適用した。図13Bから図13Hまでの写真は、同じ口の領域を1日間隔で示している。図13Cは、痂皮段階を示す。図13Dは、さらなる痂皮段階を示す。図13Eは、さらなる痂皮段階を示す。図13Fは、治癒段階の開始を示し、これは、図13Aの写真を撮った5日後である。図13Gは、治癒段階を示し、これは、図13Fの写真を撮った1日後である。図13Hは、治癒した口の領域を示し、これは、図13Aの写真を撮った7日後である。図13Aから図13Hまでは、HSV発生後のEGCGステアレートを含む組成物の適用は、水疱段階を阻害し、潰瘍段階を排除することを示す。感染した領域は、7日以内に治癒する。言い換えれば、水疱段階の開始時(すなわち、単純ヘルペス発生後)における、本発明による組成物の適用は、水疱段階の長さを低減し、潰瘍段階を排除して、十分な治癒までの期間を3〜4日間短縮する。
【0320】
他の実施形態において、EGCG−ステアレートについて上に示された効果と類似の効果は、EGCG−ステアレートが代わりに、以下の構造:
【0321】
【化52】
による、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである場合に見られ、ここでこの脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸またはテトラコサン酸とのエステルである。好ましくは、この脂肪酸エステルは、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとヘキサデカン酸(パルミチン酸)とのエステルである。
【0322】
本発明による組成物は、少なくとも以下のウイルスを阻害および/または緩和する際に有効である:単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘−帯状ヘルペスウイルス(VZV)、ヒトヘルペスウイルス6(突発性発疹または小児バラ疹)およびヒトヘルペスウイルス8(カポージ肉腫関連ヘルペスウイルス)。
【0323】
他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中で引用される刊行物、およびこれらの刊行物が引用される目的となっている材料は、明示的に参考として引用される。
【0324】
本明細書中に記載される本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を、当業者は認識するか、または慣用的な実験に過ぎないものを使用して確認し得る。このような均等物は、添付の特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有する組成物であって、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の少なくとも1つの症状を処置することによって、被験体におけるHSV感染を処置する際に使用するための、組成物。
【請求項2】
前記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記緑茶ポリフェノールが、以下の構造
【化53】
による、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートであり、該脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、またはテトラコサン酸とのエステルである、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとステアリン酸とのエステルである、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとパルミチン酸とのエステルである、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記被験体がヒトである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が麻酔薬をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記組成物が局所投与のために処方されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記組成物が経口投与のために処方されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記HSVがHSV−1である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、少なくとも2種の緑茶ポリフェノールを含有し、該緑茶ポリフェノールは独立して、C1〜C30の基でエステル化されており、該C1〜C30の基は、同じであるかまたは異なる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
HSVが、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘−帯状ヘルペスウイルス(VZV)、ヒトヘルペスウイルス6(突発性発疹または小児バラ疹)およびヒトヘルペスウイルス8(カポージ肉腫関連ヘルペスウイルス)のうちのいずれかである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項1】
少なくとも1つの位置でC1〜C30の基でエステル化された緑茶ポリフェノールを有効量で含有する組成物であって、単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の少なくとも1つの症状を処置することによって、被験体におけるHSV感染を処置する際に使用するための、組成物。
【請求項2】
前記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートである、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記緑茶ポリフェノールが、以下の構造
【化53】
による、4’位で脂肪酸エステルでエステル化された(−)−エピガロカテキン−3−ガレートであり、該脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートと、ブタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、9−ヘキサデセン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、9−オクタデセン酸、11−オクタデセン酸、9,12−オクタデカジエン酸、9,12,15−オクタデカトリエン酸、6,9,12−オクタデカトリエン酸、エイコサン酸、9−エイコセン酸、5,8,11,14−エイコサテトラエン酸、5,8,11,14,17−エイコサペンタエン酸、ドコサン酸、13−ドコセン酸、4,7,10,13,16,19−ドコサヘキサエン酸、またはテトラコサン酸とのエステルである、請求項1または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとステアリン酸とのエステルである、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸エステルが、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートとパルミチン酸とのエステルである、請求項3に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記被験体がヒトである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記組成物が麻酔薬をさらに含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記組成物が局所投与のために処方されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記組成物が経口投与のために処方されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記緑茶ポリフェノールが、(−)−エピカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキン−3−ガレート、これらのエナンチオマー、これらの異性体、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記HSVがHSV−1である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、少なくとも2種の緑茶ポリフェノールを含有し、該緑茶ポリフェノールは独立して、C1〜C30の基でエステル化されており、該C1〜C30の基は、同じであるかまたは異なる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
HSVが、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV−2)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、水痘−帯状ヘルペスウイルス(VZV)、ヒトヘルペスウイルス6(突発性発疹または小児バラ疹)およびヒトヘルペスウイルス8(カポージ肉腫関連ヘルペスウイルス)のうちのいずれかである、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図13D】
【図13E】
【図13F】
【図13G】
【図13H】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
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【図13D】
【図13E】
【図13F】
【図13G】
【図13H】
【公開番号】特開2013−14568(P2013−14568A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−277686(P2011−277686)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(511308668)ジョージア ヘルス サイエンシーズ ユニバーシティ リサーチ インスティテュート, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【出願人】(511308668)ジョージア ヘルス サイエンシーズ ユニバーシティ リサーチ インスティテュート, インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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