説明

印刷システム及びその印刷制御方法

【課題】 ユーザが面倒な設定を行うことなく、印刷待ち時間を大幅に短縮する。
【解決手段】 情報処理装置110は、ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報を関連付けて履歴情報として操作履歴記憶手段(印刷発生確率記憶部11)に記憶し、復帰条件記憶手段(復帰条件制御部12、復帰条件記憶部13)により上記履歴情報を基にスリープ解除条件を作成して記憶し、スリープ解除判定手段(スリープ制御部6)により、上記スリープ解除条件と、直近の操作履歴及び現在の状態情報とを比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定し、その判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを印刷装置120に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置と印刷装置からなる印刷システム及びその印刷制御方法に関し、特に、動作状態をスタンバイ状態から消費電力量が少ないスリープ状態へと移行するスリープモード機能を有する印刷システム及びその印刷制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、全世界的に地球環境問題への意識が高まってきている。そのため、電子機器の消費電力に関しても削減の要求が日増しに強くなってきている。
【0003】
従来から、印刷システムを構成する印刷装置(プリンタ)の中には、所定時間の間印刷命令を受信しない場合、動作状態をスタンバイ状態から消費電力の少ないスリープ状態へと移行するスリープ機能が搭載されているものがある。このスリープ機能を搭載することにより待機時電力の削減を行い、プリンタの省エネ化を図ることができる。
【0004】
しかしながら、従来のプリンタは、スリープ状態の際に印刷命令を受信した場合、動作状態をスリープ状態からスタンバイ状態へと戻す復帰処理を行った後に、印刷処理を開始する構成になっている。このため、ユーザが印刷命令をプリンタに指示してから印刷が完了するまでの待ち時間は印刷処理時間に加えて復帰処理時間となる。
【0005】
この復帰時間は、プリンタの印刷方式や、メカ的なイニシャル動作が必要かどうかによって大きく異なる。特に復帰時間が長くなる印刷方式は、電子写真方式とインクジェット方式である。
【0006】
電子写真方式のプリンタでは、印刷をする前にヒートローラを温める必要があるため、復帰時間が長くなる。
【0007】
また、インクジェット方式のプリンタでは、長時間放置することにより、ヘッド流路内の気泡滞留や、ノズル先端部のインクの水分の蒸発、インク粘度が上昇するといった現象が発生し、不吐の原因となる。そのため、ノズル内のポンプ吸引や予備吐といったリフレッシュ動作のための時間を必要とする。
【0008】
最も復帰時間が長くなり易い電子写真方式のプリンタでは、復帰に2、3分程度かかるものもある。これに対して印刷処理時間は数秒程度である。従ってユーザは、プリンタがスリープ状態の時に印刷を行おうとする場合、通常の10倍以上の時間待たされることになり、大変使い勝手が悪くなる。
【0009】
なお、このような問題を解決するために、ネットワークに接続され消費電力を節減するパワーセーブ機能を有しているプリンタ装置に、当該ネットワークに接続された情報処理装置から印刷要求を行うに際して、情報処理装置で、印刷設定モードが起動されると、プリンタ装置をパワーセーブ機能によるパワーセーブモードから印刷処理が可能なノーマルモードに移行させる制御コマンドを送出するようにした印刷システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
この印刷システムでは、プリンタ装置がパワーセーブモードであったとしても、印刷要求を行う前に、制御コマンドでノーマルモードに移行させて、記録出力開始までの待ち時間を少なくすることができる。これにより、印刷データの送出から記録出力までの時間を短縮することができる。このような技術によれば、印刷処理の実行を指示されてから復帰処理を行う場合と比較して、ユーザの待ち時間を短縮することができる。
【0011】
また、情報処理装置の操作イベントの発生を識別し、その操作イベントがスリープ解除条件テーブルに設定されたスリープ解除条件イベントと識別した場合、アプリケーションに関連付けられた全てのプリンタにスリープ解除コマンドを送信し、スリープ状態のプリンタをスタンバイ状態に移行させるようにした印刷システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
この印刷システムでは、情報処理装置の操作イベントを識別して、操作イベントがユーザが予め設定したスリープ解除イベントである場合は印刷装置にスリープ解除コマンドを送信する。そして、印刷装置はプリントコマンドを受信しなくても、その動作状態がスリープ状態の場合スタンバイ状態に移行するので、ユーザの待ち時間を印刷処理時間に短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−178604号公報
【特許文献2】特開2006−99489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記特許文献1の開示技術においては、スリープ解除コマンドは、ユーザが印刷設定画面を開くのに応じて、つまり印刷の意志を示して初めて送信されるようになっているので、多くの場合、ユーザの待ち時間は、印刷処理時間に加えて、復帰処理時間の大半を必要とし、大幅に短縮することはできない。
【0015】
また、上記特許文献2の開示技術では、ユーザが印刷を行う可能性が高い状態にある場合には、ユーザが印刷意志を表示する前に、スリープ解除命令をプリンタに送ることができるため、実際にユーザが印刷を行うときには復帰処理が完了しており、ユーザの待ち時間を大幅に短縮することができるのであるが、どのようなイベントが発生した場合にスリープ解除命令をプリンタに送るのかを、ユーザが事前に設定する必要があり、ユーザにとって面倒な作業が増えるという問題がある。また、殆どのユーザは、自分がどのイベント実行後に印刷をする可能性が高いのか、について意識して操作していない。そのため、ユーザが最適な設定を行うことは困難である。
【0016】
そこで、本発明は、上述の如き従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、ユーザが面倒な設定を行うことなく、印刷待ち時間を大幅に短縮することが可能な印刷システム及び印刷制御方法を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、待機時に大部分の機能をOFFし消費電力を下げるスリープモード機能を有する印刷システムにおいて、過去の傾向からユーザの印刷要求を自動的に予測し、印刷命令に先立ってスリープモードから印刷可能状態に復帰しておくことで、ユーザの印刷待ち時間を短縮する。
【0019】
すなわち、本発明に係る印刷システムは、通信インターフェース部と印刷処理を実行するプリントエンジンを備え、待機時に上記プリントエンジンを電源OFFとして消費電力を下げるスリープモード機能と、スリープ解除コマンドに応答してスリープモードからスタンバイモードへと移行するスリープ解除機能を有し、上記通信インターフェース部を介して印刷データを取り込んで上記プリントエンジンにより印刷する印刷装置と、印刷データを上記印刷装置に送る情報処理装置とを少なくとも1つ有し、上記情報処理装置は、ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報とを関連付けて履歴情報として記憶する操作履歴記憶手段と、上記操作履歴記憶手段の内容を基に作成したスリープ解除条件を記憶する復帰条件記憶手段と、直近の操作履歴を記憶する操作情報記憶手段と、現在の状態情報を記憶する状態情報記憶手段と、発生イベントを監視し、発生イベントが予め定義された印刷関連イベントの場合に、上記復帰条件記憶手段の内容と、上記操作情報記憶手段と上記状態情報記憶手段の内容を比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定するスリープ解除判定手段を有し、上記スリープ解除判定手段による判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを上記印刷装置に送ることを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、通信インターフェース部と印刷処理を実行するプリントエンジンを備え、待機時に上記プリントエンジンを電源OFFとして消費電力を下げるスリープモード機能と、スリープ解除コマンドに応答してスリープモードからスタンバイモードへと移行するスリープ解除機能を有し、上記通信インターフェース部を介して印刷データを取り込んで上記プリントエンジンにより印刷する印刷装置と、印刷データを上記印刷装置に送る情報処理装置とを少なくとも1つ有する印刷システムにおける上記情報処理装置による印刷制御方法であって、ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報を関連付けて履歴情報として記憶し、上記履歴情報を基にスリープ解除条件を作成し、上記スリープ解除条件と、直近の操作履歴及び現在の状態情報とを比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定し、その判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを上記印刷装置に送ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報を関連付けて履歴情報として記憶し、上記履歴情報を基にスリープ解除条件を作成し、上記スリープ解除条件と、直近の操作履歴及び現在の状態情報とを比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定し、その判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを上記印刷装置に送るので、ユーザに最適なスリープ解除条件を自動的に設定することができる。従って、ユーザはスリープ解除条件の面倒な設定をしなくても良い。
【0022】
また、スリープ解除条件に、情報処理装置上の操作イベントだけではなく、ユーザIDや時間帯や曜日を加えることによって、より正確な条件にすることができる。そのため、実際にはユーザは印刷要求がないのにスリープ解除してしまい電力を無駄に消費してしまったり、ユーザは印刷要求があるのに前もってスリープ解除することができず、印刷待ち時間が増加してしまったりすることを減らすことができる。
【0023】
したがって、本発明によれば、ユーザが面倒な設定を行うことなく、印刷待ち時間を大幅に短縮することが可能な印刷システム及び印刷制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を適用した印刷システムにおける情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】上記印刷システムにおける印刷装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】上記印刷システムの動作を示すフローチャートである。
【図4】上記印刷システムにおける印刷関連イベント表の一例を示す図である。
【図5】上記印刷システムにおける復帰条件テーブルの一例を示す図である。
【図6】上記印刷システムにおける印刷発生確率データベースに含まれる印刷発生確率情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら、以下の順序で詳細に説明する。
1.印刷システム全体の説明(図1、図2)
[情報処理装置の構成](図1)
[印刷装置の構成](図2)
[通信の構成]
2.印刷システムの動作の説明(図3〜図6)
【0026】
1.印刷システム全体の説明
【0027】
図1及び図2は、本発明の実施形態となる印刷システム100の構成を示している。
【0028】
この印刷システム100は、USB(Universal Serial Bus)等の通信インターフェースに準拠した通信ケーブル130を介して接続された情報処理装置110と印刷装置(プリンタ)120を備える。
【0029】
印刷装置120は、通信インターフェースを介して情報処理装置110から送られた印刷データを印刷可能なように構成されている。
【0030】
[情報処理装置の構成]
情報処理装置110は、一般的なパーソナルコンピュータ(PC)等によって構成される。この情報処理装置110は、PC上で印刷に関連するイベントが発生した際に、過去の傾向から印刷が実行される可能性が高い場合には、ユーザの印刷要求を予測して自動的に印刷装置120にスリープ解除命令を送信する機能を有する。
【0031】
この情報処理装置110は、図1に示すように、通信インターフェース(I/F)1、印刷指示部2、スリープ開始/解除指示部3、印刷制御部4、発生イベント監視部5、スリープ制御部6、ユーザID記憶部7、時間帯記憶部8、曜日記憶部9、タイマ10、印刷発生確率記憶部11、復帰条件制御部12、復帰条件記憶部13などからなる。
【0032】
通信インターフェース1は、印刷指示部2、スリープ開始/解除指示部3から受信したコマンドを通信ケーブル130を介して印刷装置120に送信する。
【0033】
印刷指示部2は、印刷制御部4の制御のもと、通信インターフェース1に印刷コマンドを送信する。
【0034】
スリープ開始/解除指示部3は、スリープ制御部6の制御のもと、通信インターフェース1にスリープ開始コマンドまたはスリープ解除コマンドを送信する。
【0035】
印刷制御部4は、ユーザから印刷命令があると、印刷データを生成し、印刷指示部2に印刷データを送信する。このとき同時に、スリープ制御部6に印刷通知信号を送信し、印刷が実行されたことを知らせる。
【0036】
発生イベント監視部5は、OS上で発生するイベントを監視しており、印刷に関連する特定のイベントが発生した場合には、スリープ制御部6に発生イベント通知信号を送り、何のイベントが発生したのか知らせる。
【0037】
スリープ制御部6は、発生イベント監視部5から発生イベント通知信号を受信すると、ユーザID記憶部7,時間帯記憶部8,曜日記憶部9に現在の状態を問い合わせる。その後、復帰条件記憶部13を参照して、スリープ解除する必要があるかどうか調べる。スリープ解除する場合は、スリープ開始/解除指示部3にスリープ解除信号を送信する。また次に、スリープ解除した場合もしない場合も両方、タイマ10に10分タイマ起動信号を送り、計時を開始する。その後、10分以内に印刷制御部4から、印刷通知信号を受信するかどうかを調べる。そして、印刷発生確率記憶部11に印刷回数/確率更新信号を送ることで、データを更新する。
【0038】
ユーザID記憶部7,時間帯記憶部8,曜日記憶部9は、それぞれ、ログイン中のユーザID、現在の時間帯、現在の曜日を記憶している。
【0039】
タイマ10は、スリープ制御部6から、10分タイマ起動信号が送られると計時を開始する。10分が経過すると、10分タイマタイムアウト信号をスリープ制御部6に送信する。
【0040】
印刷発生確率記憶部11は、印刷発生確率データベースを記憶している。このデータベースはスリープ制御部6によって更新される。
【0041】
復帰条件制御部12は、所定の時間が経過すると(例えば、前回の変更から1週間経過すると)、印刷発生確率記憶部11に更新情報を問い合わせる。そして、復帰条件記憶部13に条件変更信号を送ることで、更新された印刷確率データベースに基づいて復帰条件テーブルを変更する。復帰条件をよりユーザに最適なものにすることができる。
【0042】
復帰条件記憶部13は、復帰条件テーブルを記憶している。このテーブルは復帰条件制御部12によって更新される。
【0043】
[印刷装置の構成]
印刷装置120は、図2に示すように、通信インターフェース(I/F)部20とプリントエンジン30とSub電源40とMain電源50とからなる。この印刷装置120は、情報処理装置110から通信ケーブル130を介してスリープ開始コマンドまたはスリープ解除コマンドを受信してその動作状態をスタンバイ状態からスリープ状態、及びスリープ状態からスタンバイ状態に移行させる機能を有する。
【0044】
通信インターフェース部20は、I/F制御バス21を介して互いに接続された通信インターフェース1(I/F)22、I/F制御部23、記憶部24、電源制御部25、データ/情報送受部26からなる。
【0045】
通信インターフェース22は、情報処理装置110からコマンドが送られると、その情報を受信して記憶部24に保存しておく。
【0046】
I/F制御部23は、記憶部24に保存された受信情報を読み出して解析する。そして、その情報が、スリープ解除コマンドなのか、スリープ開始コマンドなのか、印刷コマンドなのかを判別する。
【0047】
スリープ解除コマンドであれば、I/F制御部23は、電源制御部25にMain電源ON信号の送信を指示する。電源制御部25は、I/F制御部23による指示に基づき、Main電源50にMain電源ON信号を送る。これにより、Main電源50がONし、プリントエンジン30に電力が供給され、プリントエンジン30の復帰処理が始まる。
【0048】
また、スリープ開始コマンドであれば、I/F制御部23は、電源制御部25にMain電源OFF信号の送信を指示する。電源制御部25は、I/F制御部23による指示に基づき、Main電源50にMain電源OFF信号を送る。これにより、Main電源50がOFFし、プリントエンジンに電力が供給されなくなり、プリントエンジン30が停止する。
【0049】
さらに、印刷コマンドであれば、I/F制御部23は、まず、電源制御部25にMain電源50のON/OFF状態を問い合わせる。Main電源50がすでにONしている場合には、I/F制御部23は、データ/情報送受部26に印刷コマンドの転送を指示する。データ/情報送受部26は、I/F制御部23による指示に基づき、印刷コマンドをプリントエンジン30のデータ/情報送受部32に転送する。また、Main電源50がOFFの場合には、I/F制御部23は、電源制御部25にMain電源ON信号の送信を指示するとともに、データ/情報送受部26に印刷コマンドの転送を指示する。電源制御部25は、I/F制御部23による指示に基づき、Main電源50にMain電源ON信号を送る。そして、プリントエンジン30の復帰動作が終わってから、データ/情報送受部26が印刷コマンドをプリントエンジン30のデータ/情報送受部32に転送する。
【0050】
Sub電源40は、通信インターフェース部20に電力を供給する。このSub電源40の消費電力は、Main電源50の消費電力に比べて極めて小さい。
【0051】
Main電源50は、プリントエンジン30に電力を供給する。このMain電源50は、通信インターフェース部20の電源制御部25によってON/OFF制御される。
【0052】
プリントエンジン30は、プリントエンジン制御バス31を介して互いに接続されたデータ/情報送受部32、記憶部33、制御部34、印刷処理部35からなる。
【0053】
データ/情報送受部32は、通信インターフェース部20から印刷コマンドが送られると、その情報を受信し、記憶部33に保存しておく。
【0054】
制御部34は、記憶部33に保存された印刷コマンドに従って、印刷処理部35を制御することで、印刷処理を実行する。
【0055】
[通信の構成]
情報処理装置110と印刷装置120との接続は、USBインターフェースを用いるものが普及しているが、他のインターフェースでも良い。ネットワークプリンターの場合は、Ethernetインターフェースが普及している。この印刷システム100の説明では、USBインターフェースを使用するものとする。
【0056】
ここで、USB(Universal Serial Bus)は、シリアルポート(RS−232C)やパラレルポートなどのレガシーポートに代替される、プラグアンドプレイに対応した汎用バス・インターフェース規格である。USBは、当初米インテル社を始めとする4社で仕様が策定されたが、現在はNPOであるUSB Implementers Forum,Inc.(USB−IF)によって仕様の策定や管理が行なわれている。規格上IEEE1394(最大400Mbps)を越える速度で高速転送できるHigh Speedモード(最大480Mbps)を実現したUSB2.0が広く普及している。
【0057】
このような構成を有する印刷システム100では、情報処理装置110は復帰条件テーブルに設定された状態になると、ユーザが印刷要求を示す以前に印刷装置120にスリープ解除コマンドを送信し、印刷装置120をスタンバイ状態に移行させることができる。従って、ユーザの待ち時間を復帰処理時間分、短縮することができる。また、ユーザの操作を必要とすることなく、ユーザの利用状況に合わせて、最適な復帰条件テーブルを自動的に作成することができる。
【0058】
2.印刷システムの動作の説明
以下、上記印刷システム100の動作について、図3に示すフローチャートを参照して、詳細に説明する。
【0059】
図3は、上記印刷システム100において、ユーザの印刷要求を予測して印刷装置120にスリープ解除コマンドを送信する機能と、スリープ解除条件を過去の傾向からユーザに最適なものに自動的に調整する機能を実現するための情報処理装置110の動作を示すフローチャートである。
【0060】
この印刷システム100では、上記情報処理装置(PC)110が起動されるのに応じて図2に示すフローチャートの動作を開始する。
ステップS1において、発生イベント監視部5は、OS上で発生したイベントを監視しており、予め印刷関連イベント表に定義されたイベントと一致するイベントであるかどうかを判別する。このステップS1における判定結果がYES、すなわち、OS上で発生したイベントが印刷関連イベント表に定義されているイベントと一致するイベントである場合には、ステップS2の処理へ移行する。また、このステップS1における判定結果がNO、すなわち、一致しない場合は、イベント監視を続ける。
【0061】
ここで、印刷関連イベント表には、例えば図4に示すように、イベント番号[1]のイベント内容として印刷設定画面表示が定義され、イベント番号[2]のイベント内容としてアプリケーション1の起動が定義され、イベント番号[3]のイベント内容としてアプリケーション2の起動が定義され、イベント番号[4]のイベント内容としてファイルの保存が定義され、イベント番号[5]のイベント内容としてファイルの起動が定義され、イベント番号[6]のイベント内容として情報処理装置の電源ONが定義されている。
【0062】
ステップS2において、発生イベント監視部5は、発生イベント通知信号をスリープ制御部6に送信することで、発生した印刷関連イベントのイベント番号を通知する。
【0063】
ステップS3において、スリープ制御部6は、ユーザID記憶部7、時間帯記憶部8、曜日記憶部9に現在の状態情報を問い合わせて取得する。
【0064】
ステップS4において、スリープ制御部6は、復帰条件記憶部13に保存された復帰条件テーブルを参照する。
【0065】
ここで、復帰条件テーブルには、例えば図5に示すように、ユーザ毎の復帰条件[ユーザID、曜日、時間帯、動作イベント(イベント番号)]が定義されている。
【0066】
ステップS5において、スリープ制御部6は、ステップS2で取得した発生イベント番号とステップS3で取得した状態情報の組み合わせの場合が、ステップS4で参照した復帰条件テーブルに存在するかどうか調べることで、スリープ解除条件かどうかを判定する。このステップS5における判定結果がYES、すなわち、取得した状態情報の組み合わせの場合が復帰条件テーブルに存在する場合には、ステップS6の処理へ移行する。また、このステップS5における判定結果がNO、すなわち、取得した状態情報の組み合わせの場合が復帰条件テーブルに存在しない場合には、ステップS7の処理へ移行する。すなわち、取得した状態情報の組み合わせが復帰条件に一致するスリープ解除条件であればステップS6の処理へ移行し、スリープ解除条件でなければステップS7の処理へ移行する。
【0067】
ステップS6において、スリープ制御部6はスリープ解除信号をスリープ開始/解除指示部3に送信する。そして、スリープ開始/解除指示部3が通信インターフェース1にスリープ解除コマンドを送信することで、スリープ解除コマンドが印刷装置120の通信インターフェース部20に送られる。
【0068】
印刷装置120では、通信インターフェース部20に備えられた通信インターフェース22がスリープ解除コマンドを受信し、受信したスリープ解除コマンドを記憶部24に保存する。そして、I/F制御部23は、この情報を解析することで、スリープ解除コマンドであると分かると、電源制御部25にMain電源ON信号の送信を指示する。I/F制御部23の指示に基づき、電源制御部25がMain電源50にMain電源ON信号を送信することにより、Main電源50がONしてプリントエンジン30に電力が供給される。これにより、プリントエンジン30の復帰動作が始まり、印刷装置120は、スリープ状態からスタンバイ状態になる。
【0069】
ステップS7において、スリープ制御部6は、タイマ10に10分タイマ起動信号を送信する。これによりタイマ10が計時を開始する。この印刷システム100では、10分としたが、この時間は変更しても良い。またユーザが任意に設定可能としても良い。
【0070】
ステップS8において、スリープ制御部6は、印刷制御部4から印刷通知信号を受信したか否かを判定する。このステップS8における判定結果がYES、すなわち、印刷制御部4から印刷通知信号を受信した場合には、ステップS10の処理へ移行する。また、このステップS8における判定結果がNO、すなわち、受信しない場合は、ステップS9の処理へ移行する。
【0071】
ステップS9において、スリープ制御部6は、タイマ10から10分タイマタイムアウト信号を受信したか否かを判定する。このステップS9における判定結果がYES、すなわち、タイマ10から10分タイマタイムアウト信号を受信した場合はステップS12の処理へ移行する。また、このステップS9における判定結果がNO、すなわち、10分タイマタイムアウト信号を受信していない場合はステップS8の処理へ戻る。
【0072】
ステップS10において、印刷指示部2は、印刷制御部4による制御に基づいて、通信インターフェース1に印刷コマンドを送信する。そして、スリープ制御部6は、ステップS11の処理へ移行する。
【0073】
つまり、スリープ制御部6は、計時開始から10分以内に印刷が行われた場合にはステップS11の処理に進み、印刷が行われなかった場合にはステップS12の処理に進む。
【0074】
ステップS11において、スリープ制御部6は、印刷発生確率記憶部11に保存された印刷発生確率データベースを更新する。該当する条件の、条件発生回数を1増やし、印刷回数を1増やし、印刷確率(印刷回数/条件発生回数)を変更する。
【0075】
ここで、印刷発生確率データベースは、ユーザ毎の印刷発生確率を示す情報を含むものであって、例えば図6に示すような印刷発生確率情報[ユーザID、曜日、時間帯、動作イベント(イベント番号)、条件発生回数、印刷回数、印刷確率]を含んでいる。条件発生回数は、過去に該当する条件が発生した回数である。印刷回数は、過去にその条件が発生してから10分以内に印刷が行われた回数である。印刷確率は、過去にその条件が発生した場合に10分以内に印刷が行われた確率である。
【0076】
ステップS12において、スリープ制御部6は、印刷発生確率記憶部11に保存された、印刷発生確率データベースを更新する。該当する条件の、条件発生回数を1増やし、印刷回数は変更せず、印刷確率(印刷回数/条件発生回数)を変更する。
【0077】
ステップS13において、復帰条件制御部12は、前回の復帰条件変更時から1週間以上経過したかどうか判定する。このステップS13における判定結果がYES、すなわち、前回の復帰条件変更時から1週間以上経過している場合には、ステップS14の処理へ移行する。また、このステップS13における判定結果がNO、すなわち、前回の復帰条件変更時から1週間以上経過していない場合には、処理を終了する。
【0078】
ステップS14において、復帰条件制御部12は、印刷発生確率記憶部11に保存されている印刷発生確率データベースを参照し、これに基づいて、復帰条件記憶部13に保存されている復帰条件テーブルを変更する。変更方法は例えば、印刷発生確率データベースにおいて、印刷回数が30回以上で、かつ、印刷確率が50%以上の条件を、復帰条件とする。この変更方法は、別のものでも良い。またはユーザが任意に設定できるようにしても良い。
【0079】
すなわち、この印刷システム100において、印刷装置120は、通信インターフェース部20と印刷処理を実行するプリントエンジン30を備え、待機時に上記プリントエンジン30を電源OFFとして消費電力を下げるスリープモード機能と、スリープ解除コマンドに応答してスリープモードからスタンバイモードへと移行するスリープ解除機能を有し、上記通信インターフェース部20を介して印刷データを取り込んで上記プリントエンジン30により印刷する。
【0080】
また、情報処理装置110は、ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報とを関連付けて履歴情報として記憶する操作履歴記憶手段(印刷発生確率記憶部11)と、上記操作履歴記憶手段(印刷発生確率記憶部11)の内容を基に作成したスリープ解除条件を記憶する復帰条件記憶手段(復帰条件制御部12、復帰条件記憶部13)と、直近の操作履歴を記憶する操作情報記憶手段(発生イベント監視部5)と、現在の状態情報を記憶する状態情報記憶手段(ユーザID記憶部7、時間帯記憶部8、曜日記憶部9)と、発生イベントを監視し、発生イベントが予め定義された印刷関連イベントの場合に、上記復帰条件記憶手段(復帰条件制御部12、復帰条件記憶部13)の内容と、上記操作情報記憶手段(発生イベント監視部5)および上記状態情報記憶手段(ユーザID記憶部7、時間帯記憶部8、曜日記憶部9)の内容とを比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定するスリープ解除判定手段(スリープ制御部6)を有し、上記スリープ解除判定手段(スリープ制御部6)による判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを上記印刷装置120に送る。
【0081】
このように、ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報を関連付けて履歴情報として操作履歴記憶手段(印刷発生確率記憶部11)に記憶し、復帰条件記憶手段(復帰条件制御部12、復帰条件記憶部13)により上記履歴情報を基にスリープ解除条件を作成して記憶し、スリープ解除判定手段(スリープ制御部6)により上記スリープ解除条件と、直近の操作履歴及び現在の状態情報とを比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定し、その判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを上記印刷装置120に送るので、ユーザに最適なスリープ解除条件を自動的に設定することができる。従って、ユーザはスリープ解除条件の面倒な設定をしなくても良い。
【0082】
また、スリープ解除条件に、情報処理装置110上の操作イベントだけではなく、ユーザIDや時間帯や曜日を加えることによって、より正確な条件にすることができる。そのため、実際にはユーザは印刷要求がないのにスリープ解除してしまい電力を無駄に消費してしまったり、ユーザは印刷要求があるのに前もってスリープ解除することができず、印刷待ち時間が増加してしまったりすることを減らすことができる。
【0083】
なお、図1、図2に示した印刷システム100では、印刷装置120は一台のみであるが、二台以上を情報処理装置110に接続しても良い。この場合には、印刷発生確率データベースと復帰条件テーブルを、各印刷装置について用意しておく。スリープ制御部6は、各印刷装置の復帰条件テーブルを参照して、条件に合う印刷装置だけをスリープから復帰させるようにする。また、印刷制御部4はスリープ制御部6に対して、印刷通知信号と共に印刷装置識別番号を通知する。
【符号の説明】
【0084】
1 通信インターフェース(I/F)、2 印刷指示部、3 スリープ開始/解除指示部、4 印刷制御部、5 発生イベント監視部、6 スリープ制御部、7 ユーザID記憶部、8 時間帯記憶部、9 曜日記憶部、10 タイマ、11 印刷発生確率記憶部、12 復帰条件制御部、13 復帰条件記憶部、13 復帰条件記憶部、20 通信インターフェース部(I/F)部、21 I/F制御バス、22 通信インターフェース1(I/F)22、23 I/F制御部、24 記憶部、25 電源制御部、26 データ/情報送受部、30 プリントエンジン、31 プリントエンジン制御バス、32 データ/情報送受部、33 記憶部、34 制御部、35 印刷処理部、40 Sub電源、50 Main電源、100 印刷システム、110 情報処理装置、120 印刷装置、130 通信ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信インターフェース部と印刷処理を実行するプリントエンジンを備え、待機時に上記プリントエンジンを電源OFFとして消費電力を下げるスリープモード機能と、スリープ解除コマンドに応答してスリープモードからスタンバイモードへと移行するスリープ解除機能を有し、上記通信インターフェース部を介して印刷データを取り込んで上記プリントエンジンにより印刷する印刷装置と、
印刷データを上記印刷装置に送る情報処理装置と
を少なくとも1つ有し、
上記情報処理装置は、
ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報とを関連付けて履歴情報として記憶する操作履歴記憶手段と、
上記操作履歴記憶手段の内容を基に作成したスリープ解除条件を記憶する復帰条件記憶手段と、
直近の操作履歴を記憶する操作情報記憶手段と、
現在の状態情報を記憶する状態情報記憶手段と、
発生イベントを監視し、発生イベントが予め定義された印刷関連イベントの場合に、上記復帰条件記憶手段の内容と、上記操作情報記憶手段と上記状態情報記憶手段の内容を比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定するスリープ解除判定手段を有し、
上記スリープ解除判定手段による判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを上記印刷装置に送る印刷システム。
【請求項2】
上記状態情報記憶手段と上記操作履歴記憶手段に記憶する状態情報として、上記情報処理装置のログインユーザID、曜日情報及び時間帯情報を用いる請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
上記操作履歴記憶手段に記憶する履歴情報は、予め定義された印刷関連イベント毎の所定時間内に印刷が行われる印刷発生確率を示す情報を含む請求項2記載の印刷システム。
【請求項4】
上記操作履歴記憶手段に記憶する履歴情報に含まれる印刷発生確率は、印刷関連イベントが発生される毎に更新される請求項3記載の印刷システム。
【請求項5】
通信インターフェース部と印刷処理を実行するプリントエンジンを備え、待機時に上記プリントエンジンを電源OFFとして消費電力を下げるスリープモード機能と、スリープ解除コマンドに応答してスリープモードからスタンバイモードへと移行するスリープ解除機能を有し、上記通信インターフェース部を介して印刷データを取り込んで上記プリントエンジンにより印刷する印刷装置と、印刷データを上記印刷装置に送る情報処理装置とを少なくとも1つ有する印刷システムにおける上記情報処理装置による印刷制御方法であって、
ユーザによる操作と、印刷実行指示の有無と、状態情報を関連付けて履歴情報として記憶し、
上記履歴情報を基にスリープ解除条件を作成し、
上記スリープ解除条件と、直近の操作履歴及び現在の状態情報とを比較して、スリープ解除コマンドを送信するかどうか判定し、
その判定結果に基づき、印刷コマンドを送信するに先立って、印刷関連イベントとして予め定義された所定の処理を行うときに、スリープ解除コマンドを上記印刷装置に送る印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−134223(P2011−134223A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294808(P2009−294808)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】