説明

印刷データの処理方法、印刷データ処理装置及び印刷データ処理システム

【課題】レシートの一方の面に印刷されたバーコードが他方の面に印刷されたロゴマークなどの印刷によって読取精度が低下することの無いように両面印刷を行うための印刷データを生成可能な印刷データの処理方法を提案すること。
【解決手段】レシートの両面に印刷を行うための印刷データを生成するために、レシートの表面に印刷される表面印刷データD1に一次元バーコード等のコードデータBが含まれているか否かを分析し(ステップST3)、レシートの他方の面に印刷される裏面印刷データD2にグラフィックスデータGが含まれているか否かを分析し(ステップST5)、グラフィックスデータGが含まれている場合に、レシート表裏においてコードデータBにグラフィックスデータGが重なった位置に印刷されないように、裏面印刷データD2を調整する(ステップST8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、POSシステム等においてレシート等の記録媒体に適切な状態で両面印刷を行うための印刷データの処理方法、印刷データ処理装置及び印刷データ処理システムに関する。
【0002】
店舗等に設置されているPOSシステムにおいては、そのPOS端末に接続されたレシート発行用のプリンターによって両面印刷されたレシートを発行するものが知られている。例えば、レシートの表面には、店舗名、取引内容、取引を特定するためのIDを表すバーコード等が印刷され、裏面にはクーポン、広告などが印刷される。
【0003】
特許文献1には両面印刷用のレシートプリンターを備えたPOSシステムが提案されている。このPOSシステムのレシートプリンターは、レシート用紙の一方の面に印刷を行う第1ヘッドと他方の面に印刷を行う第2ヘッドを備えており、レシート用紙における予め印刷位置が決められている広告、店舗ロゴ等の固定情報の印刷領域を除いた領域に、レシートの長さが最も短くなるように取引情報を両面に配分して印刷して、レシートの無駄を無くすようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−123028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、両面印刷されたレシートを発行すると、例えば裏面に印刷された裏面情報が表面から透けて見えることや、裏面側の印刷が表面側に滲み出ることがある。このように他方の面の印刷が重なった状態に見えてしまうと、表面印刷情報の視認性が悪化してしまうので好ましくない。
【0006】
例えば、インクジェットヘッドを用いた印刷では一方の面に印刷したインクが他方の面の側に滲み出ることがあり、両面にサーマルヘッドを用いて印刷を行う場合には一方の面の印刷時に他方の面の側の感熱面が発色して「裏写り」と呼ばれる滲みが発生することがある。また、印刷密度あるいは濃度の濃いグラフィックスが裏面に印刷されている場合には表面側の印刷を見たときに裏面側の印刷が透けて見えてしまうことがある。このような滲み、透けは用紙が薄い場合に発生しやすい。
【0007】
特に、光学的に読み取ることを前提として印刷される読取対象データ、例えば、一次元バーコードや二次元コードなどのようなコードデータが印刷されている部分に、反対側の面の印刷の滲み、透けが発生すると、このようなデータの読取精度が低下するという問題が発生しやすい。
【0008】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、記録媒体の一方の面に印刷されたバーコードなどの読取対象データの印刷が、他方の面に印刷されたロゴマークなどの印刷によって、読取精度の低下、視認性の低下などの悪影響が及ぶことの無いように、両面印刷を行うための印刷データを生成可能な印刷データの処理方法、印刷データ処理装置及び印刷データ処理システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、記録媒体の両面に印刷を行うための印刷データの処理方法であって、
前記記録媒体の一方の側の第1面に印刷される第1面印刷データに第1印刷データが含まれているか否かを分析する第1分析工程と、
前記記録媒体の他方の側の第2面に印刷される第2面印刷データに第2印刷データが含まれているか否かを分析する第2分析工程と、
前記第2印刷データが含まれている場合に、前記第1印刷データと前記第2印刷データが前記記録媒体の前記第1面および前記第2面において重なった位置に印刷されないように、前記第1面印刷データおよび前記第2面印刷データの少なくとも一方を調整するデータ調整工程とを含み、
前記第1印刷データおよび前記第2印刷データのそれぞれは、光学的に読み取ることを前提に印刷される読取対象データ、および、当該読取対象データ以外のグラフィックスデータのうちの少なくとも一方であることを特徴としている。
【0010】
本発明の印刷データの処理方法では、記録媒体の第1面に印刷される第1印刷データと、反対側の第2面に印刷される第2印刷データとが、相互に重ならない位置となるように、第1面印刷データおよび第2面印刷データの一方あるいは双方が調整あるいは加工される。したがって、調整後の第1面印刷データおよび第2面印刷データを用いて記録媒体に両面印刷を行えば、第1印刷データと第2印刷データは印刷位置が重ならないので、滲み、透けなどの悪影響が相互に及ぶことがない。
【0011】
視認性が要求されるロゴなどのグラフィックス、バーコードなどのように光学的に読み取る必要のある読取対象データを第1、第2印刷データとして予め設定しておけば、これらの視認性、読取精度の低下を回避できる。また、記録媒体の厚さが薄く、滲み、透けが発生しやすい記録媒体に両面印刷を行う場合には、例えば、記録媒体の両面に印刷密度の高いグラフィックスデータが重なった状態で印刷されないように、第1、第2印刷データとしてグラフィックスデータを設定しておけばよい。あるいは、第1印刷データとしてグラフィックスデータを設定し、第2印刷データとしてテキストデータを設定しておけば、印刷された取引情報などのテキストデータが反対側の広告宣伝用のグラフィックスデータの滲み、透けによって読みにくくなるという弊害を防止できる。
【0012】
特に、読取対象データである一次元バーコードあるいは二次元コードを印刷する場合には、その裏面側に印刷密度の高いグラフィックスが印刷されると、一次元バーコード、二次元コードの読取精度が低下してしまう。この弊害を防止するためには、前記第1印刷データとして一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータを設定し、前記第2印刷データとしてグラフィックスデータを設定しておけばよい。逆に、第1印刷データをグラフィックスデータとし、第2印刷データを一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータに設定しておいてもよい。なお、本発明において、読取対象データとは、印刷後に光学的に読み取られるデータであり、典型的な例は一次元バーコード、二次元コードであるが、これ以外の文字、図形、記号、模様からなるシンボルなどであっても、印刷後に光学的に読み取り対象とされる印刷データであれば、当該読取対象データに含まれる。
【0013】
ここで、第1印刷データと第2印刷データが記録媒体の表裏において重なった位置に印刷されないようにするためには、前記データ調整工程において、前記第1印刷データが印刷される第1面印刷位置に対応する第2面の印刷位置が、余白、あるいは、前記第2面印刷データに含まれているテキストデータの印刷位置となるように、前記第2面印刷データを調整すればよい。
【0014】
また、第1印刷データが印刷される第1面とは反対側の第2面に、連続してグラフィックスデータが印刷される場合には、これらのグラフィックスデータの間が、余白、あるいは、前記第2面印刷データに含まれているテキストデータの印刷位置となるように、前記第2面印刷データを調整し、前記余白あるいはテキストデータに対応する前記第1面に前記第1印刷データが印刷されるように、前記第1面印刷データを調整すればよい。
【0015】
さらに、前記記録媒体の前記第2面における前記第2面印刷データの印刷領域を予め定めた複数の区画に分けておき、前記データ調整工程では、前記第1印刷データが印刷される第1面印刷位置に対応する前記第2面の前記区画に、前記第2印刷データが印刷されないように前記第2面印刷データを調整することもできる。
【0016】
この代わりに、前記記録媒体の前記第1面における前記第1面印刷データの印刷領域の一部を予め前記第1印刷データの第1面印刷位置として定めておき、前記データ調整工程では、前記第1面印刷位置に対応する前記第2面の印刷位置に前記第2印刷データが印刷されないように前記第2面印刷データを調整することもできる。
【0017】
次に、本発明を、POSシステム等の両面印刷されたレシートを発行するシステムに適用する場合には、例えば、前記第1面印刷データは、取引の内容を表すテキストデータと、当該取引を特定するためのIDを表す前記一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータとを含むレシート発行用印刷データ、または、店舗データを表す前記一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータと取引の内容を表すテキストデータとを含むレシート発行用第1面印刷データである。また、前記第2面印刷データは、クーポン用あるいは広告用の前記グラフィックスデータを含むレシート発行用第2面印刷データである。
【0018】
または、前記第1面印刷データは、店舗のロゴを表す前記グラフィックスデータと取引の内容を表すテキストデータを含むレシート発行用第1面印刷データである。前記第2面印刷データは、クーポン用あるいは広告用の前記グラフィックスデータと、前記一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータとを含むレシート発行用第2面印刷データである。
【0019】
次に、本発明は上記の印刷データの処理方法により印刷データを処理する印刷データ処理装置であって、
記録媒体の一方の側の第1面に印刷される第1面印刷データに第1印刷データが含まれているか否かを分析する第1分析部と、
前記記録媒体の他方の側の第2面に印刷される第2面印刷データに、第2印刷データが含まれているか否かを分析する第2分析部と、
前記第2印刷データが含まれている場合に、前記第1印刷データと前記第2印刷データが前記記録媒体の前記第1面および前記第2面において重なった位置に印刷されないように、前記第1面印刷データおよび前記第2面印刷データの少なくとも一方を調整するデータ調整部とを含むことを特徴としている。
【0020】
また、本発明は、POSシステム等として用いることのできる印刷データ処理システムであって、上記構成の印刷データ処理装置と、前記データ調整部によって調整された後の前記第1面印刷データおよび前記第2面印刷データを前記記録媒体に印刷する印刷装置とを有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、記録媒体の両面印刷用の第1面印刷データおよび第2面印刷データを調整して、第1面に印刷されるバーコードデータ等の第1印刷データが、反対側の第2面に印刷されるグラフィックスデータなどの第2印刷データと重なった位置に印刷されないようにしている。したがって、印刷濃度の高いグラフィックス印刷による滲み、透けなどに起因して生ずる反対側の面に印刷されたバーコードなどの印刷の視認性の低下、読取精度の低下を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を適用したPOSシステムのシステム構成図である。
【図2】図1の印刷装置の制御ブロック図である。
【図3】図1のPOS端末の印刷データ処理動作を示す概略フローチャートである。
【図4】印刷位置の調整方法の一例を示す説明図である。
【図5】印刷位置の調整方法の一例を示す説明図である。
【図6】印刷位置の調整方法の一例を示す説明図である。
【図7】印刷位置の調整方法の一例を示す説明図である。
【図8】レシートの印刷例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して、本発明をスーパーやコンビニエンス・ストア等の店舗にて利用されるPOSシステムのPOS端末に適用した場合の実施の形態を説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係るPOSシステム1は、ホスト装置(POS端末コンピューター)2および印刷装置(レシートプリンター)3を備えたPOS端末4と、有線あるいは無線のネットワーク5を介して当該POS端末4の統括管理を行うPOSサーバー6とを有している。
【0025】
POSサーバー6は、CPU11と、ROM12、RAM13等のメモリとを有し、ROM12内に記憶された制御プログラムにしたがって、RAM13内のバッファー等に記憶された情報の処理を行う。RAM13内には、商品コードブロック15、商品名ブロック16、金額ブロック17、在庫ブロック18、広告データブロック19、クーポンデータブロック20、ポイントデータブロック21などの各記憶領域が含まれており、CPU11は、POS端末4の側から送信される入力情報に基づいて、商品コード、商品名、金額に関する情報を抽出し、レシートRへの決済情報の印刷およびPOS端末4のディスプレイの表示に用いる商品データを生成する。
【0026】
なお、「商品データ」とは、レシートR上に決済処理の内容を印刷するための決済情報印刷データの元となるデータを指すものである。また、商品コードブロック15、商品名ブロック16および金額ブロック17は、一般に商品マスターと呼ばれるルックアップテーブルにより構成されるものである。
【0027】
一方、POS端末4のホスト装置2は、POSサーバー6内の商品マスターを参照して商品データを取得して決済情報印刷データを生成する。POS端末4の印刷装置3は、当該決済情報印刷データに基づいて印刷を行って作成したレシートRを発行する。これらホスト装置2と印刷装置3は有線あるいは無線の通信回線を介して接続されている。両面印刷されたレシートRを発行する場合には、ホスト装置2は決済情報の印刷データDとしてレシートRの表面および裏面に印刷される表面印刷データD1および裏面印刷データD2を生成して印刷装置3に送信し、印刷装置3はこれらのデータD1、D2に基づき両面印刷されたレシートRを発行する。
【0028】
ホスト装置2は、オペレーターによるキーボード31を介しての入力またはバーコードリーダー32を用いた商品バーコードの読み取りによって、商品に関する情報(商品情報)を取得する。また、カードリーダー33によって顧客のクレジットカードや会員カードを読み取り、クレジット清算に関する情報や顧客に関する情報を取得し、これらを入力情報としてPOSサーバー6に供給し、POSサーバー6から表示、印刷用の商品データを取得する。さらに、ホスト装置2は、POSサーバー6から取得した商品データを元に生成した商品情報を表示するディスプレイ34を有しており、オペレーターおよび顧客が購入商品の金額等を確認できるように、これらを表示する。
【0029】
ホスト装置2の制御は、ウィンドウズ(登録商標)等のOS35上で稼働するプリンタードライバーOLE for Retail POS(以下、「OPOS」と呼ぶ。)により行われる。OPOSとは、OS35上で稼働するPOSアプリケーション36に対して、印刷装置3やバーコードリーダー32等の周辺デバイスとの機種依存性のないインターフェースを提供するものであり、デバイスのカテゴリー毎に対応したコントロールオブジェクト(CO)37と、デバイスの機種毎に対応したサービスオブジェクト(SO)38とによって構成されている。
【0030】
POSアプリケーション36は、POSサーバー6から送信される商品データや入力情報に基づいてレシートR上に印刷される決済情報印刷データを生成するが、この決済情報印刷データは、OS35を介して印刷装置用のCO37に引き渡され、さらにCO37から印刷装置3の機種に対応したSO38に引き渡される。SO38は、この決済情報印刷データを加工して、印刷装置3のコマンド仕様に応じた印刷コマンドを生成し、印刷装置3へ送信する。なお、上記したOPOSは、CO37とSO38とをコンバインした形態で、プリンタードライバー39としてユーザーに提供される。
【0031】
また、POSアプリケーション36は、決済処理の内容に応じて、レシートR上に印刷するためのバーコード、2次元コードなどの取引ID用のコードデータを生成する。また、予め記憶しているロゴなどのグラフィックスデータを読み出す。そして、これらのデータをテキストデータからなる決済情報印刷データに付加する。ここで、決済情報印刷データに、これらコードデータおよび/またはグラフィックスデータを付加したものが「印刷データD」である。
【0032】
ここで、POSアプリケーション36は、両面印刷用の印刷データDを生成する場合には、コードデータが印刷されるレシートRの面の反対側の面に、グラフィックスデータが印刷されることの無いように、これらコードデータおよびグラフィックスデータの印刷位置が調整された表面印刷データD1および裏面印刷データD2を生成し、これらを印刷装置3の側に送信する。
【0033】
すなわち、POSアプリケーション36は、レシートRの一方の面に印刷される印刷データにコードデータが含まれているか否かを分析する第1分析部、他方の面に印刷される印刷データにグラフィックスデータが含まれているか否かを分析する第2分析部、および、グラフィックスデータが含まれている場合に、コードデータとグラフィックスデータが、レシートRの両側の面において重なった位置に印刷されないように印刷データを調整するデータ調整部としての機能を備えている。
【0034】
なお、取引ID用のコードデータや、グラフィックスデータをPOSサーバー6内で生成し(または、POSサーバー6内に記憶しておき)、これをホスト装置2が取得して決済情報印刷データに付加するようにしても良い。また、グラフィックスデータをプリンタードライバー39内に格納しておき、プリンタードライバー39がこれを決済情報印刷データに付加するようにしても良い。
【0035】
次に、印刷装置3はサーマルヘッド方式のレシートプリンターであり、ホスト装置2から各種制御コマンドや印刷データを受信するデータ受信部41、搬送部42、印刷部43、切断部44、これらの各部42〜44を駆動する駆動部46、および印刷装置3の全体を制御する制御部47等を備えている。
【0036】
図2を参照して印刷装置3の制御構成を詳しく説明する。印刷装置3の搬送部42はレシート送りモーター51を有し、紙送りスイッチ(図示省略)の押下または印刷に伴って長尺状のレシート用紙52(例えばロール紙)の搬送を行う。印刷部43は、レシート用紙52の表面に印刷を行う第1印刷ヘッド(サーマルヘッド)53とレシート用紙52の裏面に印刷を行う第2印刷ヘッド(サーマルヘッド)54とを備え、レシート用紙52の搬送に同期して当該レシート用紙52に印刷を行って、両面印刷されたレシートRを発行可能である。切断部44は、レシートカッター55およびこれを駆動するカッターモーター56を有し、印刷済みのレシート用紙52の先端部分の後端が切断されて一定の長さのレシートRが得られる。駆動部46は、送りモータードライバー57、ヘッドドライバー58a、58b、カッターモータードライバー59を有し、各部を駆動する。
【0037】
制御部47は、CPU61、ROM62、RAM63および入出力制御装置(以下、「IOC」(Input Output Contrller)と称する)64を備え、互いに内部バス65により接続されている。ROM62は、CPU61が各種制御を行うための制御プログラムを記憶する制御プログラムブロック66と、テキスト文字印刷のための文字フォントデータなどの各種制御データ等を記憶する制御データブロック67とを有している。なお、文字フォントデータは、ROM62内に記憶するのではなく、CG−ROMを別個に備えても良い。
【0038】
RAM63は、フラグ等として使用される各種ワークエリアブロック68、データ受信部41で受信した印刷データを一時的に記憶する受信バッファー69、印刷部43により印刷可能な状態に展開したデータを記憶するプリントバッファー70等を有し、制御処理のための作業領域として使用される。受信バッファー69は、行単位で受信した印刷データを、その受信順序に従って行データ毎に記憶しており、複数分の行データを保存し得る容量を有している。
【0039】
プリントバッファー70には、第1印刷ヘッド53によって印刷を行うための表面印刷データが展開される第1プリントバッファー70aと、第2印刷ヘッド54によって印刷を行うための裏面印刷データが展開される第2プリントバッファー70bが含まれている。これらのプリントバッファー70a、70bには、受信バッファー69に記憶保持された印刷データに基づいて、印刷イメージに展開した表面印刷データおよび裏面印刷データが展開される。また、RAM63は電源が切断されても記憶したデータを保持しておくように常にバックアップされている。なお、RAM63に代えて不揮発性メモリ(フラッシュROM,EEPROM等)内に、これらのデータを記憶しておくようにしても良い。
【0040】
IOC64は、CPU61の機能を補うと共に各種周辺回路とのインターフェース信号を取り扱うための論理回路が、ゲートアレイやカスタムLSI等により構成されて組み込まれている。これにより、IOC64は、ホスト装置2から受信した印刷データをそのまま或いは加工して内部バス65に取り込むと共に、CPU61と連動して、CPU61から内部バス65に出力されたデータや制御信号を、そのまま或いは加工して駆動部46に出力する。そして、CPU61は、上記の構成により、ROM62内の制御プログラムやRAM63内の設定値に従って、IOC64を介して印刷装置3内の各部から各種信号・データを入出力する。すなわち、入力した各種信号・データに基づいてRAM63内の各種データを処理し、IOC64を介して印刷装置3内の各部に各種信号・データを出力することにより、ホスト装置2から受信した印刷データの印刷制御を行う。
【0041】
(印刷データ生成方法)
図3はホスト装置2のPOSアプリケーション36によって実行される表面印刷データD1および裏面印刷データD2の生成手順を示す概略フローチャートである。図4はレシートRにおける印刷位置の調整方法の一例を示す説明図であり、(a)はその表面印刷データD1の配置例であり、(b)は裏面印刷データD2の配置例であり、(c)は位置調整後の裏面印刷データD2の配置例である。
【0042】
これらの図にしたがって説明すると、POSサーバー6の側から決済情報データを受信すると、ホスト装置2はプリンタードライバー39に設定される設定情報に基づき印刷データを生成する。両面印刷が設定されている場合には、印刷データDとして表面印刷データD1および裏面印刷データD2を生成する。
【0043】
まず、図3のステップST1において、予め設定されている表面フォーマットに、決済情報データの各データの割り付け(配分)を行い、これに基づき、ステップST2において表面印刷データD1を生成する。次に、ステップST3において、表面印刷データD1にコードデータBが含まれているか否かを分析し、含まれている場合には、YESの矢印の流れに沿ってステップST4に移行して、その位置を認識しておく。
【0044】
例えば、図4(a)に示すように、レシート表面に、グラフィックスデータGからなるロゴデータ、テキストデータTからなるお知らせデータ、取引データ、コードデータBからなる取引IDデータ、およびテキストデータTからなるポイントデータを配分する。
【0045】
次に、図3のステップST5において、決済情報の各データにおける裏面印刷データD2とされるデータの中に、グラフィックスデータGが含まれているか否かを分析する。裏面印刷データD2にグラフィックスデータGが含まれている場合には、図3のステップST5からYESの流れに沿ってステップST6に移行し、予め設定されている裏面フォーマットにしたがって裏面に印刷される各データの割り付けを行う。しかる後に、ステップST7において、裏面側に印刷されるグラフィックスデータGの印刷位置が、表面に印刷されるコードデータBの印刷位置に重なるか否かを判別する。
【0046】
ここで、図4(b)に示すように、レシート裏面に印刷されるグラフィックスデータGの位置が、表面のコードデータBの位置と重なる場合には、図3のステップST7からYESの流れに沿ってステップST8に進み、グラフィックスデータGの印刷位置がコードデータBの印刷位置に重ならないように位置調整を行う。次に、ステップST9において、調整後の位置に基づき、裏面印刷データD2を編集して印刷装置3に供給する裏面印刷データD2を生成する。
【0047】
例えば、図4(c)に示すように、裏面印刷データD2におけるグラフィックスデータGの印刷位置に余白Sを挿入して、グラフィックスデータGの印刷位置がコードデータBの印刷位置に対してレシート用紙の長さ方向にずれた位置となるように、当該グラフィックスデータGの位置調整を行い、余白Sを含む裏面印刷データD2を生成する。
【0048】
この結果、コードデータBの印刷位置の裏面に印刷密度の高いグラフィックスデータGが印刷されてコードデータBの読取精度が低下してしまうという弊害を回避できる。図4の例では、余白Sを挿入してグラフィックスデータGの位置をシフトさせているが、裏面に印刷されるデータにテキストデータTが含まれている場合には、余白Sの代わりにテキストデータTを配置することも可能である。一般的に、テキストデータTをコードデータBの裏面側に印刷しても当該コードデータBの読取精度が低下することはない。なお、厚さの薄いレシート用紙などを用いる場合において、テキストデータTがコードデータBの裏面に印刷された場合においてもコードデータBの読取精度が低下する恐れがある場合には、余白Sを挿入する必要があることは勿論である。
【0049】
これに対して、レシート裏面に印刷されるグラフィックスデータGの位置が表面のコードデータBの位置に重ならない場合には、図3において、ステップST7からNOの流れに沿ってステップST9に移行して、グラフィックスデータGの位置調整を行うことなく裏面印刷データD2を生成する。
【0050】
なお、表面印刷データD1にコードデータBが含まれていない場合には、図3のステップST3からNOの流れに沿ってステップST10に制御が移行し、裏面に印刷されるデータを裏面フォーマットにしたがって割り付け、これに基づきステップST9において裏面印刷データD2を生成する。同様に、裏面印刷データにグラフィックスデータGが含まれていない場合にも、図3のステップST5からNOの流れに沿ってステップST10に制御が移行して、裏面に印刷されるデータを裏面フォーマットにしたがって割り付け、これに基づきステップST9において裏面印刷データD2を生成する。
【0051】
(位置調整方法の別の例)
次に、コードデータBの印刷位置にグラフィックスデータGの印刷位置が重ならないようにするための位置調整方法の各例を以下に述べる。
【0052】
図5に示す例では、レシートRの裏面印刷データに複数のグラフィックスデータG1〜G4が含まれている場合に、図5(a)に示すように、例えば、一定幅の余白S1、S2、S3がこれらの間に挿入された状態となるように調整を行って裏面印刷データD2を生成する。そして、図5(b)に示すように、表面印刷データにおけるコードデータBの印刷位置が裏面側のグラフィックスデータG4の印刷位置に重なる場合には、表面印刷データにおけるコードデータBの印刷位置に余白S11を挿入して、コードデータBの印刷位置がグラフィックスデータG4に隣接する余白S4に対峙する位置となるように調整して表面印刷データD1を生成する。
【0053】
次に、図6(a)に示すように、レシート印刷では、一般に、レシートの表面フォーマットにおいて、レシート先頭に印刷される店舗ロゴなどのグラフィックスデータGの印刷領域A1、および、レシート後端に印刷される取引IDなどのコードデータBの印刷領域A4は固定長領域とされており、これらの間が、取引データ量に応じて長さが可変な印刷領域A2、A3とされている。この可変長領域には、テキストデータTからなる店舗からのお知らせ情報などが印刷される可変長領域A2およびテキストデータTからなる取引データが印刷される可変長領域A3が含まれている。
【0054】
この場合には、図6(b)に示すように、裏面印刷データ領域も表面印刷領域A1〜A4に対応するように印刷区画a1〜a4に分け、コードデータBが印刷される表面印刷領域に対応する印刷区画a4を、グラフィックスデータGの印刷禁止区画に設定し、a1〜a3のいずれかにグラフィックスデータGが印刷されるように印刷位置を調整して裏面印刷データD2を生成すればよい。また、裏面に印刷されるデータにコードデータBが含まれている場合には、表面側にグラフィックスデータGが印刷される印刷領域A1に対応する印刷区画a1にコードデータBが印刷されないように調整して裏面印刷データD2を生成すればよい。
【0055】
したがって、図6に示す例では、裏面の印刷区画a1はテキストデータTおよびグラフィックスデータGが印刷可能な領域となり、印刷区画a2、a3はいずれのデータT、G、Bでも印刷可能な領域となり、印刷区画a4はテキストデータTのみが印刷可能な領域となる。なお、表裏にグラフィックスデータGが印刷された場合に、例えば、表面側のグラフィックスデータGの視認性が低下するなどのおそれがある場合には、裏面の印刷区画a1を、テキストデータTのみが印刷可能な領域に設定しておけばよい。
【0056】
図6の例においては、裏面側の印刷区画a1〜a4に印刷されるデータの配分を調整することにより、グラフィックスデータGがコードデータBの裏面側に印刷されることを防止している。この代わりに、図7に示すように、裏面側の印刷区画a11〜a15において、表面側にコードデータBが印刷される領域A14に対応する印刷区画a14を制限領域として設定しておき、ここに印刷されるデータをNULLデータあるいは予め定めた内容のテキストデータT1に制限しておくことも可能である。同様に、表面側にグラフィックスデータGが印刷される領域A11に対応する印刷区画a11を制限領域として設定し、ここにはコードデータBを印刷しないように制限しておくことが可能である。
【0057】
(両面印刷例)
次に、図8には具体的なレシートの表面印刷例および裏面印刷例を示してある。この図に示すように、レシート発行用の表面印刷データには、レシートR1の表面印刷領域A21〜A25にそれぞれ印刷されるデータが含まれている。表面印刷領域A21には、グラフィックスデータGである店舗ロゴ、「領収証」、およびテキストデータTである店舗情報が含まれている。表面印刷領域A22には、テキストデータTである営業案内情報が含まれている。表面印刷領域A23には、テキストデータTである取引データが含まれている。表面印刷領域A24にはテキストデータTであるレジデータが含まれており、表面印刷領域A25には一次元バーコードデータB1の形態の取引IDデータが含まれている。これらに加えて、レシートR1の表面に、広告データ、クーポンデータ、ポイントデータなどが印刷される場合もある。
【0058】
レシートR1の裏面印刷領域a21〜a25は、表面印刷領域A21〜A25にそれぞれ対応する位置の領域である。表面印刷領域A21に対応する裏面印刷領域a21にテキストデータTである会員募集案内メッセージが印刷され、テキストデータTが印刷されている表面印刷領域A22に対応する裏面印刷領域a22に二次元コードB2の形態で携帯サイトデータとテキストデータTが印刷されている。レシートR1の裏面に、広告データ、クーポンデータ、ポイントデータ等が一次元バーコード、二次元コードと共に印刷される場合もある。
【0059】
レシートR1では、表面に印刷された取引IDを表すバーコードB1の裏面にはグラフィックスデータGが印刷されておらず、裏面に印刷された携帯サイトを表す二次元コードB2の表面にもグラフィックスデータGが印刷されていない。したがって、これらのコードデータの読取精度が、反対の面に印刷されている印刷密度の高いグラフィックスデータの滲み、透けによって低下してしまうことがない。
【0060】
(その他の実施の形態)
上記の例は本発明をPOSシステムに適用した場合のものであるが、テキストデータに、グラフィックスデータやコードデータを付加した両面印刷用の印刷データを生成するホスト装置と、両面印刷用の印刷ヘッドを備えた印刷装置とを備えた印刷システムであれば、端末の種類を問わず本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 POSシステム、2 ホスト装置、3 印刷装置、4 POS端末、5 ネットワーク、6 POSサーバー、11 CPU、12 ROM、13 RAM、15 商品コードブロック、16 商品名ブロック、17 金額ブロック、18 在庫ブロック、19 広告データブロック、20 クーポンデータブロック、21 ポイントデータブロック、R,R1 レシート、D 印刷データ、D1 表面印刷データ、D2 裏面印刷データ、31 キーボード、32 バーコードリーダー、33 カードリーダー、34 ディスプレイ、35 OS 36 POSアプリケーション、37 CO、38 SO、39 プリンタードライバー、41 データ受信部、42 搬送部、43 印刷部、44 切断部、46 駆動部、47 制御部、51 レシート送りモーター、52 レシート用紙、53 第1印刷ヘッド、54 第2印刷ヘッド、55 レシートカッター、56 カッターモーター、57 送りモータードライバー、58a,58b ヘッドドライバー、59 カッターモータードライバー、61 CPU、62 ROM、63 RAM、64 IOC、65 内部バス、66 制御プログラムブロック、67 制御データブロック、68 ワークエリアブロック、69 受信バッファー、70 プリントバッファー、70a 第1プリントバッファー、70b 第2プリントバッファー、G,G1,G2,G3,G4 グラフィックスデータ、T テキストデータ、B コードデータ、S,S1〜S4,S11 余白、A1〜A4,A11〜A14 印刷領域、A21〜A25 表面印刷領域、a1〜a4,a11〜a15 印刷区画、a21〜a25 裏面印刷領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の両面に印刷を行うための印刷データの処理方法であって、
前記記録媒体の一方の側の第1面に印刷される第1面印刷データに第1印刷データが含まれているか否かを分析する第1分析工程と、
前記記録媒体の他方の側の第2面に印刷される第2面印刷データに第2印刷データが含まれているか否かを分析する第2分析工程と、
前記第2印刷データが含まれている場合に、前記第1印刷データと前記第2印刷データが前記記録媒体の前記第1面および前記第2面において重なった位置に印刷されないように、前記第1面印刷データおよび前記第2面印刷データの少なくとも一方を調整するデータ調整工程とを含み、
前記第1印刷データおよび前記第2印刷データは、それぞれ、光学的に読み取ることを前提に印刷される読取対象データ、および、当該読取対象データ以外のグラフィックスデータのいずれか一方であることを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記読取対象データは、一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータであることを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記データ調整工程では、前記第1印刷データが印刷される第1面印刷位置に対応する第2面の印刷位置が、余白、あるいは、前記第2面印刷データに含まれているテキストデータの印刷位置となるように、前記第2面印刷データを調整することを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記データ調整工程では、
前記第2面印刷データに複数の前記第2印刷データが含まれている場合に、これらの間の余白が挿入されるように、前記第2面印刷データを調整し、
前記余白に対応する前記第1面の位置に前記第1印刷データが印刷されるように、前記第1面印刷データを調整することを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項5】
請求項1または2において、
前記記録媒体の前記第2面における前記第2面印刷データの印刷領域を予め定めた複数の区画に分けておき、
前記データ調整工程では、前記第1印刷データが印刷される第1面印刷位置に対応する前記第2面の前記区画に、前記第2印刷データが印刷されないように前記第2面印刷データを調整することを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項6】
請求項1または2において、
前記記録媒体の前記第1面における前記第1面印刷データの印刷領域の一部を予め前記第1印刷データの第1面印刷位置として定めておき、
前記データ調整工程では、前記第1面印刷位置に対応する前記第2面の印刷位置に前記第2印刷データが印刷されないように前記第2面印刷データを調整することを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記第1面印刷データは、
取引の内容を表すテキストデータと、当該取引を特定するためのIDを表す一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータとを含むレシート発行用第1面印刷データ、または、店舗データを表す一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータと、取引の内容を表すテキストデータとを含むレシート発行用第1面印刷データであり、
前記第2面印刷データは、クーポン用あるいは広告用の前記グラフィックスデータを含むレシート発行用第2面印刷データであることを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項8】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記第1面印刷データは、店舗のロゴを表す前記グラフィックスデータと取引の内容を表すテキストデータを含むレシート発行用第1面印刷データであり、
前記第2面印刷データは、クーポン用あるいは広告用の前記グラフィックスデータと、一次元バーコードデータあるいは二次元コードデータとを含むレシート発行用第2面印刷データであることを特徴とする印刷データの処理方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項に記載の印刷データの処理方法により印刷データを処理する印刷データ処理装置であって、
記録媒体の一方の側の第1面に印刷される第1面印刷データに第1印刷データが含まれているか否かを分析する第1分析部と、
前記記録媒体の他方の側の第2面に印刷される第2面印刷データに、第2印刷データが含まれているか否かを分析する第2分析部と、
前記第2印刷データが含まれている場合に、前記第1印刷データと前記第2印刷データが前記記録媒体の前記第1面および前記第2面において重なった位置に印刷されないように、前記第1面印刷データおよび前記第2面印刷データの少なくとも一方を調整するデータ調整部とを含むことを特徴とする印刷データ処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の印刷データ処理装置と、
前記データ調整部によって調整された後の前記第1面印刷データおよび前記第2面印刷データを前記記録媒体に印刷する印刷装置とを有していることを特徴とする印刷データ処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−113392(P2012−113392A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−259839(P2010−259839)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】