説明

印刷制御プログラム、印刷制御装置および印刷制御方法

【課題】過度に記録媒体の容量を必要としていた。
【解決手段】印刷媒体の指定と画像データに基づく印刷実行指示とを受け付け、印刷媒体に記録する着色剤の量を前記画像データに基づいて特定する際に参照される印刷媒体に対応づけられた色変換データであって、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが記録媒体に記録されているか否かを判定し、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが前記記録媒体に記録されていない場合、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データを取得するとともに、取得された前記色変換データを参照して前記画像データの印刷処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は色変換を行って印刷を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機器に依存する色空間で表現された色を統一的に扱うカラーマネジメント技術が知られている。例えば、スキャナーやプリンターに対応するRGB色空間で表現された色をLab色空間やXYZ色空間等の機器非依存色空間で表現された色に変換するためのプロファイルを予め定義することにより、機器間での色の差異を抑制する技術が知られている。
【0003】
また、機器に依存する色空間で表現された色に基づいて印刷を行う際に、色変換データを参照して着色剤の記録量を特定して印刷する技術が知られている。例えば、プリンターに対応するRGB色空間で表現された階調値を色変換データに基づいてCMYK各色のインク量に変換して印刷を実行する技術が知られている。
【0004】
プリンターを制御するプリンタードライバーをインストールする際には、プリンターの機種および印刷媒体毎に定義されたプロファイルと色変換データをコンピュータの記録媒体に記録する。従来のプリンタードライバーにおいては、インストールの際に全ての印刷媒体に対応したプロファイルと色変換データを記録媒体に記録する。例えば、特許文献1においては、プリンター制御用ソフトウェアをアップデートする際にダウンロードすることが望ましいファイルを全て特定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−269021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術においては、過度に記録媒体の容量を必要としていた。
すなわち、従来のプリンタードライバーのインストールにおいては、上述のように、プリンターで使用可能な全ての印刷媒体に対応したプロファイルと色変換データを記録媒体に記録する。また、一台のコンピュータにおいて複数の機種のプリンターのプリンタードライバーをインストールすることも可能であり、複数の機種のプリンターのプリンタードライバーをインストールする際には各機種で印刷対象として指定可能な全印刷媒体についてプロファイルと色変換データを記録媒体に記録する。
【0007】
しかし、一般的なユーザーがプリンターで印刷対象として指定可能な印刷媒体の全てを使用することはまれである。従って、一般的なユーザーにとっては、自身が使用しない印刷媒体のプロファイルと色変換データが記録媒体に記録されることになる。特に、大判の印刷媒体に印刷可能なプリンターにおいては印刷対象として指定可能な印刷媒体の数が多いため、従来のプリンタードライバーのインストールによれば、使用されることのない極めて多量のデータが記録媒体に記録される。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、必要とされる記録媒体の容量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、印刷媒体の指定とともに印刷実行指示を受け付け、指定された印刷媒体に対応する色変換データが記録媒体に記録されているか否かを判定する。そして、指定された印刷媒体に対応する色変換データが記録媒体に記録されていない場合には、指定された印刷媒体に対応する色変換データを取得するとともに、取得された色変換データを参照して画像データの印刷処理を実行する。
【0009】
すなわち、印刷媒体の指定を伴う印刷実行指示を受け付けた場合、当該印刷媒体に対応する色変換データが記録媒体に記録済でなければ当該印刷媒体に対応する色変換データを取得するように構成されている。従って、少なくとも任意の印刷媒体に対する印刷の実行を開始する前には色変換データを入手することができる。このため、印刷制御プログラムのインストール時やアップデート時に全ての印刷媒体について予め色変換データを取得しておく必要はない。また、一度も印刷対象とならない印刷媒体に対応する色変換データは取得されない。この結果、必要とされる記録媒体の容量を抑制することができる。
【0010】
ここで、印刷実行指示受付機能は、画像データが示す画像を印刷する対象となる印刷媒体の指定とともに印刷実行指示を受け付けることができればよい。すなわち、印刷実行時に参照される色変換データを特定するための情報として指定された印刷媒体を示す情報を取得することができればよい。
【0011】
色変換データ判定機能は、指定された印刷媒体に対応する色変換データが記録媒体に記録されているか否かを判定することができればよい。すなわち、色変換データが予め印刷媒体に対して対応づけて記録媒体に記録されており、当該記録媒体を参照して、指定された印刷媒体に対応する色変換データが記録されているか否かを判定すればよい。なお、ここでは、少なくとも指定された印刷媒体に対応する色変換データが記録媒体に記録されているか否かを判定すればよい。従って、印刷媒体が指定された後に指定された印刷媒体に対応する色変換データが存在するか否かを判定してもよいし、所定のタイミングで印刷対象として指定可能な印刷媒体についての色変換データが存在するか否かを判定しておき、印刷媒体が指定された後に当該判定結果を参照して指定された印刷媒体に対応する色変換データが存在するか否かを判定してもよい。
【0012】
また、色変換データは、印刷媒体に記録する着色剤の量を画像データに基づいて特定するためのデータであればよく、異なる色空間で表現された色を示す階調値同士を対応づけるテーブルデータであってもよいし、階調値同士の対応関係を示す関数であってもよい。すなわち、画像データの階調値を、着色剤の量を直接的あるいは間接的に規定する階調値に変換することができればよい。
【0013】
画像データは画像を示し、当該画像の色を特定の色空間で表現したデータであればよい。すなわち、色変換データによって当該特定の色空間で表現された色に対応する着色剤の量を特定することができればよい。なお、特定の色空間は機器依存色空間であってもよいし、機器非依存色空間であってもよい。すなわち、各色空間に対応して印刷媒体毎の色変換を行うためのデータとして色変換データが定義されていればよい。
【0014】
印刷実行機能において、指定された印刷媒体に対応する色変換データを取得する際には、上述の記録媒体(例えば、コンピュータのハードディスク)と異なる記録媒体から当該色変換データを取得することができればよい。従って、ネットワーク経由で他の装置から取得してもよいし、CD−ROMなどの可搬記録媒体から取得してもよい。また、色変換データを参照した印刷処理は、色変換データを参照した色変換処理を伴う印刷処理であればよい。すなわち、画像データが示す任意の色に対応する階調値を、色変換データを参照した補間処理等によって変換し、着色剤の量を直接的あるいは間接的に特定すればよい。その後、当該特定された量の着色剤を指定された印刷媒体に対して記録して画像を形成する。
【0015】
さらに、印刷実行に際して色変換データを取得する必要があるか否かをユーザーに対して明示する構成を採用してもよい。例えば、印刷対象として指定可能な印刷媒体に対応する最新の色変換データが記録媒体に記録されているか否かを示す色変換データの取得状態を特定する。そして、指定可能な印刷媒体を表示部に表示させるとともに、表示された印刷媒体に対応する最新の色変換データの取得状態を表示部に表示させる。この構成によれば、ユーザーは色変換データが取得済であるか否かを認識することが可能であり、印刷処理を実行する際に色変換データの取得がなされるか否かを認識しながら印刷実行指示を行うことができる。
【0016】
さらに、本発明においては、色変換データが記録媒体に記録されているか否かにかかわらず、指定可能な印刷媒体を選択肢としてユーザーに示し、当該指定可能な印刷媒体の中から印刷媒体の指定を受け付けることができるように構成することが好ましい。例えば、印刷制御プログラムの初期設定時と更新時とのいずれかまたは双方にて、指定可能な印刷媒体を表示させるための表示データを取得する構成とし、当該表示データに基づいて当該指定可能な印刷媒体を表示部に表示させる構成を採用可能である。
【0017】
すなわち、印刷実行指示を行う際に、表示部に表示された情報に基づいてユーザーが印刷媒体を指定するために、少なくとも印刷実行指示を行う前に指定可能な印刷媒体を表示させるための表示データが取得されている構成とする。具体的には、印刷制御プログラムの初期設定時(インストール時)や更新時(アップデート時)に表示データを取得すれば、印刷実行指示を行う前に指定可能な印刷媒体を表示可能な状態となる。なお、更新時に表示データを取得する構成は、プリンターの販売開始時に指定不可能であった印刷媒体が運用の過程で指定可能になった場合に好適な構成である。
【0018】
なお、印刷制御プログラムの初期設定時と更新時とのいずれかまたは双方にて取得される表示データは、指定可能な印刷媒体の全てであってもよいし、一部であってもよい。指定可能な印刷媒体の一部について表示データを取得する構成によれば、表示データを記録するために必要とされる記録媒体の容量を抑制することができる。なお、指定可能な印刷媒体の一部は、ユーザーの選択等に基づいて特定すればよい。
【0019】
さらに、印刷媒体に関連する情報であって印刷実行指示を行う時点よりも前に必要になるデータは印刷実行指示を行う時点よりも前に取得しておくことが好ましい。例えば、プロファイルに基づいて色が特定される画像データに基づいて印刷処理を実行する構成においては、印刷実行指示が行われる前に画像データを扱う時点でプロファイルデータが取得されていることが好ましい。そこで、印刷制御プログラムの初期設定時と更新時とのいずれかまたは双方にて当該プロファイルデータを取得する構成とし、予め取得されたプロファイルデータが示すプロファイルに基づいて正確な色が特定される画像データについて印刷処理を実行する構成とする。この構成によれば、印刷実行指示を行う前にアプリケーションプログラム等でレタッチ等の作業を行う段階でプロファイルに基づいて正確に色を特定しつつレタッチを行うことができる。また、レタッチ後の色を正確に特定した状態で印刷を行うことができる。
【0020】
なお、プロファイルデータは、画像データの階調値と機器非依存色空間で表現された色を示す階調値とを対応づけるプロファイルを示すデータであればよい。当該プロファイルデータは、画像データの階調値と機器非依存色空間の階調値とを対応づけるテーブルデータであってもよいし、階調値同士の対応関係を示す関数であってもよい。すなわち、画像データの階調値を機器に依存しない状態で正確に特定できればよい。むろん、印刷媒体毎に画像データの階調値が示す色が異なる場合、プロファイルデータを印刷媒体毎に定義することが好ましい。
【0021】
さらに、本発明のように、ある印刷媒体を対象とした印刷処理が初めて行われるときに色変換データを取得する手法は、装置や方法としても適用可能である。また、以上のようなプログラム、装置、方法は、単独の印刷装置として実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、コンピュータと印刷装置が協働することによって本発明にかかるプログラム、装置、方法を提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、印刷装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】印刷制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】初期設定/更新処理を示すフローチャートである。
【図3】印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図4】印刷実行指示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)印刷制御装置の構成:
(1−1)初期設定/更新処理:
(1−2)印刷制御処理:
(2)他の実施形態:
【0024】
(1)印刷制御装置の構成:
図1は、本発明にかかる印刷制御装置10の構成を示すブロック図である。印刷制御装置10は、RAM,ROM,CPU等を備える制御部20と記憶媒体30とを備えており、制御部20はROMや記憶媒体30に記録されたプログラムを実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとしての印刷制御プログラム21やインストールプログラム22、アプリケーションプログラム23等を実行可能である。印刷制御プログラム21は印刷実行指示とともに印刷媒体の指定を受け付け、指定された印刷媒体に対応する色変換データ30dが記録媒体30に記録されていない場合に当該色変換データ30dを取得する機能を備えている。
【0025】
また、印刷制御装置10は、図示しないインタフェースを備えており、印刷制御装置10には当該インタフェースを介して表示部50と入力部51とプリンター52とが接続される。表示部50は制御部20が出力する信号に応じて任意の画像を表示するディスプレイ等の装置である。入力部51はユーザーの入力内容に対応した信号を出力するマウスやキーボード等の装置であり、制御部20は当該信号に基づいてユーザーの入力内容を特定する。プリンター52は制御部20が出力する印刷データに基づいて印刷データが示す画像を印刷する装置である。
【0026】
さらに、印刷制御装置10は、図示しないインタフェースを介してインターネット等のネットワークに接続されており、制御部20は、通信部31を介して当該ネットワーク経由で情報の送受信を実行する。本実施形態において、制御部20は、通信部31を介して外部のサーバー53にアクセスし、サーバー53から色変換データ30dを取得することができる。
【0027】
記録媒体30には、上述の各プログラムの他、画像データ30a,プロファイルデータ30b,表示データ30c,色変換データ30dを記録することが可能である。画像データ30aはアプリケーションプログラム23によって作成される画像を示すデータであり、本実施形態においては機器依存色空間であるRGB色空間の階調値によって色が特定されたデータである。当該画像データ30aには、当該画像データ30aを作成する際に利用された入力機器に依存するRGB色空間の階調値(以下入力RGB値と呼ぶ)と機器非依存色空間の階調値とを対応づけるプロファイルを示す図示しない入力プロファイルデータが対応づけられている。アプリケーションプログラム23によって当該画像データ30aを扱う際には、当該入力プロファイルデータに基づいて機器非依存色空間の階調値を特定可能な状態で画像データ30aが示す画像の色の調整等を行う。
【0028】
プロファイルデータ30bは、プリンター52で使用可能な印刷媒体に依存するRGB色空間の階調値(以下出力RGB値と呼ぶ)と機器非依存色空間の階調値とを対応づけるプロファイルを示しており、アプリケーションプログラム23による処理の過程で、画像データ30aの印刷処理時の色変換処理に使用することが可能である。なお、プロファイルデータ30bは、プリンター52にて使用可能な印刷媒体毎に予め定義される。
【0029】
制御部20は、アプリケーションプログラム23の処理により画像データ30aが示す画像の色調整等を行うことが可能であるとともに、当該色調整等を行った後の画像をプリンター52にて印刷することが可能である。本実施形態においては、制御部20が、入力プロファイルおよびプロファイルデータ30bに基づいて、機器非依存色空間を介して画像データ30aが示す入力RGB値を出力RGB値に変換し、変換後の出力RGB値によって画像の色を表現した画像データを印刷制御プログラム21に受け渡すことで印刷を実行する。従って、本実施形態において、印刷制御プログラム21が処理対象とする画像データは出力RGB値によって画像の色を特定したデータである。
【0030】
色変換データ30dは、当該出力RGB値に基づいて印刷媒体に記録する着色剤の量を特定する際に参照されるデータである。本実施形態における印刷処理においては、処理の過程で出力RGB値を、一旦、プリンター52で使用するインク量に対応したRGB値に変換する。その後、ハーフトーン処理等を行ってインク色(例えば、CMYK)毎のインク量を示す階調値を取得する。色変換データ30dは、当該出力RGB値をインク量に対応したRGB値に変換するためのデータである。
【0031】
表示データ30cは、印刷実行指示とともに印刷対象となる印刷媒体の指定を受け付ける際に、表示部50に印刷対象として指定可能な印刷媒体を表示するためのデータである。例えば、既定の表示エリアに表示され得る印刷媒体の名称を示すデータや、印刷媒体を指定するためのユーザインタフェースを構成するための画像を示すデータ等によって構成することができる。
【0032】
以上のように、プロファイルデータ30bと表示データ30cと色変換データ30dとのいずれもが、プリンター52にて使用される印刷媒体毎に定義されるデータである。従って、特定の印刷媒体における印刷を完了するためにはプロファイルデータ30bと表示データ30cと色変換データ30dとが取得されている(記録媒体30に記録されている)ことが必要である。しかし、各データが必要とされるタイミングはそれぞれ異なるため、本実施形態においては、各データを取得するタイミングを適宜調整することによって記録媒体に不要なデータを記録しないように構成している。
【0033】
すなわち、本実施形態において、プロファイルデータ30bと表示データ30cについては印刷制御プログラム21の初期設定時と更新時とのいずれかまたは双方にて取得する構成とする。一方、色変換データ30dは、印刷媒体を指定した印刷実行指示がなされた後、印刷処理を開始する前に取得する構成とする。
【0034】
インストールプログラム22は、印刷制御プログラム21の初期設定を行うモジュールである。制御部20は、図示しない可搬記録媒体の読み取り装置やサーバー53からインストールプログラム22を取得して初期設定を実行することができる。印刷制御プログラム21の初期設定を実行後において当該印刷制御プログラム21を更新することも可能であり、制御部20は、図示しない可搬記録媒体の読み取り装置やサーバー53から図示しないアップデートプログラムを取得して更新を実行することができる。
【0035】
(1−1)初期設定/更新処理:
図2は、インストールプログラム22およびアップデートプログラムによる初期設定/更新処理を示すフローチャートである。インストールプログラム22が実行されると、制御部20は、表示部50に対して制御信号を出力し、印刷媒体を選択する環境設定画面を表示する(ステップS100)。当該環境設定画面は、ユーザーが使用し得る印刷媒体をユーザー自身で選択するための画面であり、当該環境設定画面を表示部50に表示した状態で制御部20は印刷媒体の選択を受け付ける(ステップS110)。すなわち、制御部20は、入力部51の出力信号に基づいてユーザー自身が選択した印刷媒体を特定する。
【0036】
次に、制御部20は、選択された印刷媒体に対応するプロファイルデータ30bおよび表示データ30cが記録媒体30に記録済であるか否かを判別する(ステップS120)。ステップS120にて、選択された印刷媒体に対応するプロファイルデータ30bおよび表示データ30cが記録媒体30に記録済であると判別されないとき、制御部20は、選択された印刷媒体に対応するプロファイルデータ30bおよび表示データ30cを取得して記録媒体30に記録する(ステップS130)。
【0037】
以上の処理により、環境設定画面を視認するユーザーが自身で選択した印刷媒体に対応するプロファイルデータ30bと表示データ30cとが記録媒体30に記録される。この結果、制御部20は、アプリケーションプログラム23による処理の過程において、記録媒体30に記録されたプロファイルデータ30bを画像データ30aに対応づけて保存することが可能になる。
【0038】
以上のようにプロファイルデータ30bと表示データ30cが記録媒体30に記録された時点においては、印刷媒体に対応する色変換データ30dは記録媒体30に記録されない。従って、使用し得ない色変換データ30dによって記録媒体30の容量が無駄に消費されることはない。また、本実施形態においては、ユーザー自身が使用する意志を示していない印刷媒体に対応するプロファイルデータ30bと表示データ30cは記録媒体に30に記録されない。従って、記録媒体30の容量を無駄に消費することはない。なお、色変換データ30dが必要とされるまで色変換データ30dの取得を行わないことによって記録媒体30の容量消費が充分に抑制されるのであれば、全印刷媒体に対応するプロファイルデータ30bや表示データ30cを取得するように構成してもよい。さらに、アプリケーションプログラム23による処理の過程でユーザーによって印刷媒体に対応するプロファイルが指定されるまでプロファイルデータ30bを取得しない構成としてもよい。
【0039】
(1−2)印刷制御処理:
次に、印刷制御プログラム21による処理を詳細に説明する。印刷制御プログラム21は、色変換データ取得状態特定部21aと印刷実行指示受付部21bと色変換データ判定部21cと印刷実行部21dとの各モジュールを備えている。制御部20は、アプリケーションプログラム23の処理に過程において、ユーザーが印刷実行指示のためのユーザインタフェースを呼び出すと、制御部20は当該印刷制御プログラム21を実行する。
【0040】
図3は、印刷制御プログラム21によって制御部20が実行する印刷制御処理を示している。当該印刷制御処理において、制御部20は、色変換データ取得状態特定部21aの処理により、最新の色変換データ30dの取得状態を特定する(ステップS200)。すなわち、上述のステップS110にて選択された印刷媒体はプリンター52による印刷対象として指定可能な印刷媒体となり、制御部20は、これらの指定可能な印刷媒体のそれぞれに対応する色変換データ30dが記録媒体30に記録されているか否かを判別する。また、色変換データ30dが記録媒体30に記録されている場合には、当該記録された色変換データ30dが最新であるか否かを判別する。なお、最新の色変換データ30dは図示しない可搬記録媒体やサーバー53によって特定される。例えば、図示しない可搬記録媒体やサーバー53によって制御部20に対して最新の色変換データ30dのバージョン情報を提供する構成等によって実現可能である。
【0041】
次に、制御部20は、印刷実行指示受付部21bの処理により、印刷媒体の指定を受け付ける(ステップS210)。すなわち、制御部20は、表示部50に対して制御信号を出力し、印刷媒体の指定および印刷実行指示を行うための印刷実行指示画面を表示部50に表示する。このとき、制御部20は、表示データ30cを参照し、当該表示データ30cが示す印刷媒体を指定可能な印刷媒体とする。さらに、制御部20は、入力部51の出力信号に基づいてユーザーが指定した印刷媒体を特定する。
【0042】
次に、制御部20は、印刷実行指示受付部21bの処理により、指定された印刷媒体に対応する色変換データ30dの取得状態を案内する(ステップS220)。すなわち、制御部20は、表示部50に対して制御信号を出力し、指定された印刷媒体に対応する最新の色変換データ30dが取得されているか否かをユーザーに認識させるための案内を行う。
【0043】
図4は、印刷実行指示画面の例を示す図である。同図4に示す例においては、画面の上部にて矩形の枠内にユーザーによって指定された印刷媒体を表示しており、ドロップダウンリストによって他の印刷媒体を指定可能に構成されている。図4においてはタイプAという印刷媒体が指定されている状態を示している。また、図4に示す例では、画面の中央部の矩形の枠において、指定された印刷媒体に対応する色変換データ30dの取得状態を案内している。この例においては、指定された印刷媒体に対応する最新の色変換データ30dが記録媒体30に記録されていない場合に、印刷実行前に最新の色変換データ30dが取得されることを文字にて案内する。図4においては、タイプAに対応する色変換データ30dが記録媒体30に記録されていない場合の案内を示している。
【0044】
次に、制御部20は、印刷実行指示受付部21bの処理により、印刷実行指示画面にてユーザーが印刷実行指示を行ったか否かを判別する(ステップS230)。図4に示す例においては、印刷実行指示画面の下部にて矩形の印刷実行指示ボタンが表示されており、制御部20は、入力部51の出力信号に基づいて当該印刷実行指示ボタンによる印刷実行指示が行われたか否かを判別する。
【0045】
次に、制御部20は、色変換データ判定部21cの処理により、指定された印刷媒体の色変換データ30dが最新であったか否かを判別する(ステップS240)。すなわち、制御部20は、印刷実行指示がなされたときに指定されていた印刷媒体を印刷対象として指定された印刷媒体であるとみなす。そして、上述の色変換データ30dの取得状態に基づいて、当該指定された印刷媒体に対応する色変換データ30dが記録媒体30に記録されているか否かを判別する。また、色変換データ30dが記録媒体30に記録されている場合には、当該記録された色変換データ30dが最新であるか否かを判別する。
【0046】
ステップS240にて、指定された印刷媒体の色変換データ30dが最新であったと判別されない場合、制御部20は、印刷実行部21dの処理により、当該指定された印刷媒体に対応する色変換データ30dを取得する(ステップS250)。すなわち、制御部20は、図示しない可搬記録媒体やサーバー53から最新の色変換データ30dを取得して記録媒体30に記録する。そして、ステップS250の後、またはステップS240にて指定された印刷媒体の色変換データ30dが最新であったと判別されなかった場合、制御部20は、印刷実行部21dの処理により、色変換データ30dに基づく色変換処理を行って印刷を行う(ステップS260)。すなわち、制御部20は、指定された印刷媒体に対応した色変換データ30dに基づいて、当該印刷媒体に対応した出力RGB値をインク量に対応したRGB値に変換し、ハーフトーン処理等を実行して印刷データを生成する。そして、当該印刷データをプリンター52に対して出力することによって印刷を実行する。
【0047】
以上の処理によれば、印刷実行指示とともに指定された印刷媒体に対応する色変換データ30dが記録媒体30に記録され、印刷実行指示とともに指定されていない印刷媒体に対応する色変換データ30dは記録媒体30に記録されない。従って、実際に指定された印刷媒体に対応した色変換データ30dは、印刷処理を開始する前に記録媒体30に記録される。また、指定されたことのない印刷媒体に対応した色変換データ30dは記録媒体30に記録されない。このため、記録媒体30の容量を無駄に消費することはない。
【0048】
(2)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、ある印刷媒体を対象とした印刷処理が初めて行われるときに色変換データを取得することができる限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、上述の実施形態においては、入力プロファイルおよびプロファイルデータ30bに基づいて、機器非依存色空間を介して画像データ30aが示す入力RGB値を出力RGB値に変換する構成を採用していたが、他の構成を採用してもよい。すなわち、色変換データ30dを参照することによって画像データに基づいて着色剤の量を特定する構成であればよく、アプリケーションプログラム23によって画像データ30aを保存する際にプロファイルデータ30bに基づいて出力RGB値を特定し、当該出力RGB値によって画像の色を規定した画像データ30aを保存する構成としてもよい。
【0049】
また、印刷制御処理が実行された場合に、印刷媒体に対応した色変換データ30dの取得状態を特定する構成の他、定期的に色変換データ30dが最新であるか否かを判定し色変換データの取得状態を特定しておく構成としてもよい。この構成によれば、印刷媒体の指定を受け付ける際に当該取得状態を参照して当該取得状態をユーザーに案内することができる。また、当該取得状態を参照して、指定された印刷媒体の色変換データ30dが最新であるか否かを判定することができる。
【0050】
さらに、一旦、色変換データ30dが作成された後、当該作成された色変換データ30dを更新することがない構成であれば、色変換データ判定部21cの処理において、制御部20は色変換データ30dが最新であるか否かを判別する必要はない。すなわち、指定された印刷媒体に対応する色変換データ30dが記録媒体30に記録済であるか否かを判定すればよい。
【符号の説明】
【0051】
10…印刷制御装置、20…制御部、21…印刷制御プログラム、21a…色変換データ取得状態特定部、21b…印刷実行指示受付部、21c…色変換データ判定部、21d…印刷実行部、22…インストールプログラム、23…アプリケーションプログラム、30…記憶媒体、30a…画像データ、30b…プロファイルデータ、30c…表示データ、30d…色変換データ、31…通信部、50…表示部、51…入力部、52…プリンター、53…サーバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の指定と画像データに基づく印刷実行指示とを受け付ける印刷実行指示受付機能と、
印刷媒体に記録する着色剤の量を前記画像データに基づいて特定する際に参照される印刷媒体に対応づけられた色変換データであって、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが記録媒体に記録されているか否かを判定する色変換データ判定機能と、
指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが前記記録媒体に記録されていない場合、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データを取得するとともに、取得された前記色変換データを参照して前記画像データの印刷処理を実行する印刷実行機能と、
をコンピュータに実現させる印刷制御プログラム。
【請求項2】
指定可能な前記印刷媒体に対応する最新の前記色変換データが前記記録媒体に記録されているか否かを示す色変換データの取得状態を特定する色変換データ取得状態特定機能を備え、
前記印刷実行指示受付機能は、指定可能な前記印刷媒体を表示部に表示させるとともに、表示された前記印刷媒体に対応する前記色変換データの取得状態を表示部に表示させて前記印刷媒体の指定を受け付ける、
請求項1に記載の印刷制御プログラム。
【請求項3】
前記印刷実行指示受付機能は、前記印刷制御プログラムの初期設定時と更新時とのいずれかまたは双方にて取得された、指定可能な前記印刷媒体を表示させるための表示データに基づいて指定可能な前記印刷媒体を前記表示部に表示させる、
請求項2に記載の印刷制御プログラム。
【請求項4】
前記印刷実行機能は、前記画像データの階調値と機器非依存色空間で表現された色を示す階調値とを対応づけるプロファイルデータであって、前記印刷制御プログラムの初期設定時と更新時とのいずれかまたは双方にて取得されたプロファイルデータに基づいて色が特定される前記画像データに基づいて前記印刷処理を実行する、
請求項3に記載の印刷制御プログラム。
【請求項5】
印刷媒体の指定と画像データに基づく印刷実行指示とを受け付ける印刷実行指示受付手段と、
印刷媒体に記録する着色剤の量を前記画像データに基づいて特定する際に参照される印刷媒体に対応づけられた色変換データであって、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが記録媒体に記録されているか否かを判定する色変換データ判定手段と、
指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが前記記録媒体に記録されていない場合、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データを取得するとともに、取得された前記色変換データを参照して前記画像データの印刷処理を実行する印刷実行手段と、
を備える印刷制御装置。
【請求項6】
印刷媒体の指定と画像データに基づく印刷実行指示とを受け付ける印刷実行指示受付工程と、
印刷媒体に記録する着色剤の量を前記画像データに基づいて特定する際に参照される印刷媒体に対応づけられた色変換データであって、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが記録媒体に記録されているか否かを判定する色変換データ判定工程と、
指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データが前記記録媒体に記録されていない場合、指定された前記印刷媒体に対応する前記色変換データを取得するとともに、取得された前記色変換データを参照して前記画像データの印刷処理を実行する印刷実行工程と、
を含む印刷制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−211564(P2010−211564A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57511(P2009−57511)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】