説明

印刷制御装置および印刷装置

【課題】使用者の選択に応じて廃インクを利用することによって、廃インクを有効に利用するとともに、使用者が要求する品質で画像の印刷を行うことができる印刷制御装置および印刷装置を提供する。
【解決手段】対象画像の印刷に先んじて廃インクの利用の有無を含む利用方法についての選択を促す選択画像を表示手段32に表示させる表示制御部42と、選択画像に応じて入力手段31から入力されたデータに基づいて、廃インクの利用方法を判定する判定部43と、判定部の判定結果に基づいて、基本インクのみを利用するか、廃インクのみを利用するか、基本インクと廃インクとの両方を利用するか、のいずれかによって対象画像の印刷を行うように制御する印刷制御部41と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置および印刷装置に関し、特に廃インクを利用する印刷技術に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体(例えば用紙)に、インク噴射手段(例えば印刷ヘッド)に設けられたノズルから、インク噴射手段に供給されたインクを噴射して付着させ、媒体に画像(文字や図形などを含む)を形成することによって印刷する印刷装置が知られている。このような印刷装置には、ノズルからインクを吸引したり強制的に排出したりすることで、ノズルからインクが確実に噴射するように噴射機能を維持する維持処理が行われる。そして、この維持処理によって排出したインク(これを「廃インク」と称す)を所定のタンクに導入して蓄え、その後、蓄えた廃インクを印刷ヘッドに再び供給してノズルから噴射して利用する技術が、例えば特許文献1に提案されている。
【0003】
特許文献1は、孔径の大きいノズルから廃インクを吐出させることで増粘した廃インクを利用する技術であり、画品質を問わないドラフト印刷(印字)などの印刷モードの場合に廃インクを選択して利用することが言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−326229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に提案された技術は、廃インクの貯留量が、該廃インクを用いて対象画像を印刷するのに充分存在する場合において、ドラフト印刷モードで印刷するようにしたものである。従って、廃インクの貯留量が充分存在する場合は、ドラフト印刷モードにおいて廃インクの利用をプリンターの使用者が要求しない場合であっても、廃インクを用いてモノクロ(白黒)印刷が行われてしまうことになっていた。従って、特許文献1は、ドラフト印刷モードとしてモノクロ印刷が行われるときに廃インクを利用する構成であった。このため、カラー画像のドラフト印刷モードについては、廃インクを利用しないので、例えば、カラー画像をドラフト印刷モードでカラー印刷することを使用者が要求する場合において、廃インクの利用を選択することができなかった。このため、使用者が要求する品質でない画像で、対象画像が印刷されてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためなされたものであり、使用者の選択に応じて廃インクを利用することによって、廃インクを有効に利用するとともに、使用者が要求する品質で画像の印刷を行うことができる印刷制御装置および印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の印刷制御装置は、インク噴射手段から排出された基本インクの廃インクを前記インク噴射手段から媒体に噴射することによって利用し、前記媒体に対して行う対象画像の印刷を制御する印刷制御装置であって、前記対象画像の印刷に先んじて前記廃インクの利用の有無を含む利用方法についての選択を促す選択画像を表示手段に表示させる表示制御部と、前記選択画像に応じて入力手段から入力された選択データに基づいて、前記廃インクの利用方法を判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて、前記基本インクのみを利用するか、前記廃インクのみを利用するか、前記基本インクと前記廃インクとの両方を利用するか、のいずれかによって前記対象画像の印刷を行うように制御する印刷制御部と、を備えた。
【0008】
この構成によれば、対象画像の印刷において、印刷制御装置の使用者の選択に応じて、廃インクを利用することができる。また、印刷される対象画像は、使用者の要求する品質に応じた画像とすることができる。
【0009】
本発明の印刷制御装置において、前記印刷制御部は、前記入力手段から入力された選択データに応じて解像度が異なる画像で印刷する2つの印刷モードによって前記対象画像の印刷を行うように制御し、前記表示制御部は、前記印刷制御部が前記2つの印刷モードのうち低い方の解像度で前記対象画像の印刷を行うように制御する場合、前記選択画像を表示させる。
【0010】
この構成によれば、対象画像を解像度の低い画像で印刷する場合において、廃インクの利用を選択することができる。従って、廃インクを有効に利用するとともに、印刷制御装置の使用者が要求する品質に応じた画像品質で印刷することができる。
【0011】
本発明の印刷制御装置において、前記表示制御部は、前記対象画像を、カラー画像で印刷するか白黒画像で印刷するかの選択を促す画像を前記選択画像として表示させ、前記判定部は、表示された前記選択画像に応じて前記入力手段から入力された選択データに基づいて、前記対象画像をカラー画像で印刷するか白黒画像で印刷するかを判定し、前記印刷制御部は、前記判定部の判定結果がカラー画像で印刷する場合は、前記基本インクと前記廃インクとの両方を利用して前記対象画像の印刷を行うように制御する。
【0012】
この構成によれば、印刷制御装置の使用者の選択によって、対象画像をカラー画像で印刷する場合においても廃インクを利用することができる。従って、廃インクを有効に利用するとともに、印刷される対象画像は、使用者の許容する品質に応じた画像とすることができる。
【0013】
本発明の印刷制御装置において、前記廃インクの貯留量を取得する貯留量取得部を備え、前記表示制御部は、前記貯留量取得部が取得した前記廃インクの貯留量に応じて、異なる前記廃インクの利用方法の選択を促す画像を、前記選択画像として前記表示手段に表示させる。
【0014】
この構成によれば、廃インクの貯留量に応じて、廃インクの利用方法を選択することができる。従って、例えば途中で廃インクが切れて印刷が無駄になることが抑制できるなど、廃インクを有効に利用することが可能になる。
【0015】
本発明の印刷制御装置において、前記表示制御部は、前記基本インクに対して前記廃インクを利用する液量割合の選択を促す画像を、前記選択画像として前記表示手段に表示させ、前記判定部は、表示された前記選択画像に応じて前記入力手段から入力された前記選択データに基づいて、前記廃インクを利用する液量割合を判定し、前記印刷制御部は、前記判定部が判定した前記液量割合を最大として前記廃インクを利用することによって、前記対象画像の印刷を行うように制御する。
【0016】
この構成によれば、印刷制御装置の使用者の選択に応じて、廃インクの利用割合を選択することができる。従って、廃インクを有効に利用するとともに、印刷される対象画像は、使用者の要求する品質に応じた画像とすることができる。
【0017】
本発明の印刷装置は、表示手段と、入力手段と、インク噴射手段と、上記の印刷制御装置と、を備えた。
この構成によれば、廃インクの利用方法について選択が行えることから、廃インクを有効に利用するとともに、使用者の要求する品質に応じた画像の印刷を行える印刷装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の印刷装置の概略構成を示す模式図。
【図2】印刷装置を含む印刷システムのブロック図。
【図3】第1実施形態で行われる処理を説明するためのフローチャート。
【図4】第1実施形態における表示画面の例で、(a)は印刷モードの選択画面、(b)は廃インクの利用選択画面、(c)は警告および選択画面。
【図5】第2実施形態における表示画面の例で、廃インクの利用選択画面
【図6】第3実施形態における表示画面の例で、警告および選択画面。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を、媒体としての用紙に対してインクを噴射して対象画像を印刷する印刷装置を含む印刷システムにおいて具体化した実施形態について、以下、図を用いて説明する。なお、媒体は特に用紙(紙)に限られるものでなく、基板やガラス、あるいは木、金属、樹脂、布など他の素材で形成されたものであってもよい。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態における印刷装置100の概略構成を示す模式図である。図示するように、印刷装置100は、インク噴射機構10と制御装置20とを備えている。また制御装置20に対して所定のデータを入力する入力手段31と、制御装置20が出力する所定のデータ画像を表示する表示手段32とを備えている。
【0021】
インク噴射機構10は、インクを噴射するノズル列NLが設けられたインク噴射手段である印刷ヘッド15を備えたキャリッジ14と、駆動プーリー11と従動プーリー12とを有している。駆動プーリー11は、キャリッジモーターMTの回転軸に固定され、キャリッジモーターMTの回転軸と一体で回転するようになっている。駆動プーリー11と従動プーリー12との間には、駆動プーリー11の回転を伝達するベルト(無端状のベルト)13が、張架されている。
【0022】
キャリッジ14は、その一部に設けられた固定部不図示によってベルト13の一部に固定されている。そして、キャリッジ14は図示しないガイド軸などによって案内され、駆動プーリー11の回転に伴って移動するベルト13によって、所定方向(図面左右方向)に移動可能に構成されている。
【0023】
キャリッジ14には、互いに異なる色相液である基本インクとしての色インクC(シアン)、色インクM(マゼンタ)、色インクY(イエロー)、色インクK(ブラック)の各色インクが収容された各インクカートリッジ19が着脱可能に装填されている。さらに、キャリッジ14には、後述する廃インクHが供給される供給管18が連結されている。そして、キャリッジ14において、各インクカートリッジ19から供給された各色インクC,M,Y,K、および供給管18から供給された廃インクHは、それぞれキャリッジ14内に設けられた図示しない流路を流れて印刷ヘッド15に導かれるようになっている。なお、以降の説明において、各色インクC,M,Y,Kと廃インクHとを区別しない場合、単に「インク」あるいは「各インク」と呼ぶことにする。
【0024】
印刷ヘッド15には、インクを電歪素子などによって加圧するヘッド駆動部15aがそれぞれの流路の途中において形成されるとともに、加圧されたインクが噴射するノズル列NLがそれぞれのインクに対応して形成されている。従って、キャリッジ14が所定方向に移動中、このノズル列NLの形成面に対向して配置される用紙Pに対して、各ノズル列NLからインクを噴射して付着させるように構成されている。なお、用紙Pは、必要に応じてキャリッジ14の移動方向と交差する方向(図面表裏方向)に移動できるようになっている。
【0025】
ところで、印刷装置100では、インク内に存在する気泡や増粘したインクなどの原因によってノズル列NLからインクが正しく噴射しないことがある。このため、インク噴射機構10は、ノズル列NLからインクが確実に噴射するように維持する維持機構として、インクキャップ16、廃インクタンク17、ポンプP1,P2などを有している。制御装置20は、これらを用いて各ノズル列NLからインクを噴射するフラッシング動作や各ノズル列NLからインクを吸引する吸引動作によって噴射機能の維持を行う維持処理が行われるようになっている。
【0026】
具体的には、図示するように、ヘッド15の位置が、排出される各インクを受けるためのインクキャップ16と対峙する位置となるように、キャリッジ14を移動させる。なお、このとき、インクキャップ16は、キャリッジ14の移動に伴って機構的にヘッド15のノズル列NLの形成面に当接するようになっている。そして、維持処理が吸引動作の場合は、インクキャップ16がヘッド15のノズル列NLの形成面に当接することによって形成された略密封空間を、ポンプP1を作動させて負圧状態にする。こうすることでノズルからインクが負圧による吸引力によって排出され、気泡や増粘したインクが各インクの排出とともに除去されて噴射機能が維持される。また、維持処理がフラッシング動作の場合は、ヘッド駆動部15aによって各インクを加圧し、インクキャップ16に対して各ノズルからインクを噴射させて排出する。こうすることで各ノズルから気泡や増粘したインクが各インクの排出とともに除去されて噴射機能が維持される。
【0027】
インクキャップ16に排出された各インクは、その後、ポンプP1の動作によってインクキャップ16と一体形成または別部材で連結形成された流路管16aを流れて廃インクタンク17に廃インクHとして蓄えられる。つまり、この維持処理によって廃インクHが生成される。そして、廃インクタンク17に蓄えられた廃インクHは、キャリッジ14に連結された供給管18を介して、この供給管18の配管途中に設けられたポンプP2の動作によって、廃インクタンク17からキャリッジ14に廃インクHを供給する。このように、印刷装置100では廃インクHが再利用されるようになっている。
【0028】
従って、色インクC(シアン)、色インクM(マゼンタ)、色インクY(イエロー)、色インクK(ブラック)の各色インクは、廃インクHを生成する基本インクである。そして、廃インクHの生成量は、維持処理において排出される基本インクの総排出量である。従って、廃インクタンク17における廃インクHの貯留量は、凡そ、この総排出量から、印刷処理によって用紙Pに噴射されて使用された廃インクHの総噴射量を差し引いた差分量となる。本実施形態では、廃インクHの貯留量を、この差分量として扱う。
【0029】
なお、本実施形態では、各ノズルを同時に吸引する同時吸引を行う構成と、図中二点鎖線で示したように、各インクのそれぞれに対応するノズルを個別に密封して吸引する独立吸引を行う構成とを採用することが可能である。独立吸引の場合は、複数のインクキャップが色インク毎に独立してノズル列NLの形成面に当接し、独立した略密封空間を形成するように構成される。その後、ポンプP1の作動によって生ずる負圧状態を、図示しない弁の開閉によってそれぞれの略密封空間について選択形成して、維持処理の対象となるノズル列NLからインクを吸引する。こうして吸引された各インクは、それぞれのインクキャップから廃インクタンク17に導入されて貯えられる。このような場合は、廃インクHの色相は、吸引される各色インクC,M,Y,Kの液量割合に応じて変化することになる。なお、独立吸引では、色インクC,M,Yのカラーインクと、色インクKの黒インクとを区分して吸引する場合もある。
【0030】
制御装置20は、インク噴射機構10におけるキャリッジモーターMT、各ヘッド駆動部15a、ポンプP1,P2の動作を制御する。また、制御装置20は、入力手段31から出力されるデータを入力して記憶するとともに、所定の画像を、表示手段32に表示させるように構成されている。
【0031】
入力手段31は、例えば十字キーなどの操作ボタンや、デジタルカメラやメモリーカードなどの画像出力機器との接続端子などを備え、操作ボタンによって入力される選択データDsや、接続端子に入力される画像データDgあるいは印刷データDpなどを制御装置20に対して出力する。また表示手段32は液晶パネルやCRT、ELパネルなどが採用され、制御装置20から出力されるデータに基づいて画像を表示する。
【0032】
次に、本実施形態の印刷制御装置について、図2を参照して説明する。図2は、印刷装置100を含む印刷システムの機能構成を示したブロック図である。本実施形態の印刷制御装置は、上述した印刷装置100と、さらにこの印刷装置100との間でデータ交信を行うホストコンピューターHCとに備えられている。つまり、印刷すべき対象画像の画像データDgが、印刷装置100に入力される場合と、ホストコンピューター(例えばパーソナルコンピューター)HCに入力される場合とに対応するように構成されている。
【0033】
まず、印刷装置100の機能ブロックについて、上述した制御装置20を中心に説明する。制御装置20は、図示しない基板上に実装されたCPU(中央演算処理装置)21、RAM(ランダムアクセスメモリー)およびROM(リードオンリーメモリー)を含んで構成されるメモリー22、ASIC(特定用途集積回路)23などの電子部品で構成された電気回路である。また、制御装置20は、ポンプP1あるいはポンプP2を駆動するためのポンプ駆動回路24、キャリッジモーターMTを駆動するためのモーター駆動回路25、入力手段31から送られるデータを取り込むためのインターフェイス(「I/F」と記す)26、および、表示手段32に所定の画像を表示するための表示駆動回路27が他の電気回路として形成されている。
【0034】
制御装置20は、本実施形態ではCPU21がメモリー22に格納されたプログラムを実行することで印刷制御部41、表示制御部42、判定部43、貯留量取得部44、および画像処理部45として機能するように構成されている。すなわち、CPU21は印刷制御装置200として機能するようになっている。各部は各電気回路を介して動作することにより、主として以下の処理を司る。
【0035】
印刷制御部41は、印刷装置100における印刷動作を制御する。例えば、モーター駆動回路25を介してキャリッジモーターMTを回転動作させるとともに、ASIC23を介して各ヘッド駆動部15aを動作させ、後述する画像処理部45が生成した噴射データ(印字データ)Dfに基づいて、各ノズルから各インクを所定量噴射させる。このとき、必要に応じてポンプ駆動回路24を介してポンプP2の駆動を制御することによって、廃インクHがキャリッジ14に確実に供給されるようにする。
【0036】
また、印刷制御部41は、後述する判定部の判定結果に応じた印刷モードで印刷する。本実施形態の印刷装置100は、画像データDgに基づいて対象画像を印刷する場合、例えば、画像データDgが元々有する解像度で印刷する通常印刷モードと、これよりも低い解像度で印刷するドラフト印刷モードの2つの印刷モードを少なくとも備えている。そして、印刷制御部41は、2つの印刷モードのうちのいずれかの印刷モードにおいて、各色インクC,M,Y,K、あるいは廃インクHを使い分けながら、画像の印刷を行うように制御するようになっている。
【0037】
さらに印刷制御部41は、印刷処理の開始直前など定められたタイミングや、入力手段31から出力される命令データに基づいて、噴射機能の維持処理を行うようになっている。例えば、維持処理が吸引動作の場合は、モーター駆動回路25を介してキャリッジ14をインクキャップ16と対峙させるとともにポンプ駆動回路24を介してポンプP1を駆動して、ヘッド15に当接したインクキャップ16内へ各ノズルからインクを吸引して排出する。このとき、維持処理によって排出される各色インクの液量を示す排出データDcを、維持処理が行われる毎にメモリー22に記憶する。
【0038】
表示制御部42は、表示駆動回路(例えば、ビデオドライバー)27を介して、メモリー22に格納された表示画像データDhを表示手段32に表示させる。本実施形態では、予め定められた複数の選択画像が、表示画像データDhとしてメモリー22に記録されている。そして、後述する印刷処理(図3参照)において表示対象となる表示画像データDhを読み出し、表示駆動回路27に送信して表示手段32に表示可能な表示データに変換したのち、表示手段32に出力して選択画像を表示させる。
【0039】
判定部43は、入力手段31から出力され、I/F26を介して入力したデータ(例えば選択データDs)に基づいて、印刷に関する種々の動作について判定する。また、判定部43は、次に説明する貯留量取得部44が取得した廃インクHの貯留量に基づいて、印刷の対象となる画像を全て印刷するのに必要な液量の廃インクが貯留されているか否かを判定する。
【0040】
貯留量取得部44は、印刷装置100において利用可能な廃インクHの貯留量を取得する。本実施形態では、前述するように、基本インクの総排出量から、印刷処理によって用紙Pに噴射されて使用された廃インクHの総噴射量を差し引いて、廃インクHの貯留量を求めることとしている。
【0041】
画像処理部45は、入力された印刷すべき対象画像を表す画像データDgをメモリー22に記憶する。そして記憶した画像データDgに対して、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理を施して、キャリッジ14の移動に対応して各ノズルから噴射されるべき液量を示した噴射データDfに変換する。本実施形態では、画像データDgは、R(赤)、G(緑)、B(青)各8ビットで表された諧調データである。そして、画像処理部45では、色変換処理において、R,G,Bの画像データDgを、メモリー22に格納された変換テーブルLUTを用いて、色インクC,M,Y,Kおよび廃インクHのそれぞれの噴射量を示す噴射データDfに変換する。変換された噴射データDfはメモリー22に記憶される。なお、本実施形態では、画像処理部45は、画像データDgを通常印刷モードに対応する噴射データDfと通常印刷モードよりも低い解像度の画像を印刷するドラフト印刷モードに対応する噴射データDfとにそれぞれ変換する。
【0042】
次に、ホストコンピューター(以下、単に「コンピューター」と呼ぶ)HCについてのブロック構成を説明する。コンピューターHCは、周知のようにCPU(中央演算処理装置)21、RAM(ランダムアクセスメモリー)、ROM(リードオンリーメモリー)などのメモリーを含んで構成され、メモリーに格納された所定のプログラムやアプリケーションソフトによって、所定の機能部として動作するように構成されている。
【0043】
本実施形態では、印刷すべき対象画像の画像データDgを含む印刷データDpを印刷装置100に送信するプリンタードライバー200aにおいて、各機能部が構成されている。すなわち、プリンタードライバー200aは、表示制御部42a、判定部43a、貯留量取得部44a、および画像処理部45aとして機能する。この結果、プリンタードライバー200aは、印刷装置100に備える印刷制御部41を含めて、印刷制御装置200として機能するようになっている。各部は主として以下の処理を司る。
【0044】
表示制御部42aは、図示しない表示駆動回路(例えば、ビデオドライバー)を介して、メモリーに格納された表示画像データDhを、コンピューターHCが備える表示手段32aに表示させる。本実施形態では、印刷装置100において格納された画像と同一の表示内容を含む画像が、表示画像データDhとしてメモリーに格納されている。
【0045】
判定部43aは、印刷装置100が備える判定部43と同様な処理を司る。すなわち、コンピューターHCが備えるキーボードやマウスなどの入力手段31aから入力された選択データDsに基づいて、印刷に関する種々の動作について判定する。また、判定部43aは、次に説明する貯留量取得部44aが取得した廃インクHの貯留量に基づいて、印刷の対象となる対象画像を全て印刷するのに必要な液量の廃インクHが貯留されているか否かを判定する。
【0046】
貯留量取得部44aは印刷装置100において利用可能な廃インクHの貯留量を取得する。本実施形態では、印刷装置100が備える貯留量取得部44と同様に、印刷装置100において記憶された色インクC,M,Y,Kの総排出量から、印刷処理によって用紙Pに噴射されて使用された廃インクHの総噴射量を差し引いて、廃インクHの貯留量を求める。従って、印刷装置100に記憶された排出データDcを受信し、次に説明する画像処理部45aが生成する噴射データDfを用いて廃インクの貯留量を取得する。
【0047】
画像処理部45aは、画像データDgに対して、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理を施して噴射データ(印字データ)Dfに変換する。画像データDgは、R(赤)、G(緑)、B(青)各8ビットで表された諧調データである。そして、画像処理部45aでは、印刷装置100が備える画像処理部45と同様に、色変換処理において、R,G,Bの画像データDgを、変換テーブルLUTを用いて色インクC,M,Y,Kおよび廃インクHのそれぞれの噴射量を示す噴射データDfに変換する。変換された噴射データDfは印刷データDpとして印刷装置100に送信される。なお、画像処理部45aにおいても、通常印刷モードとドラフト印刷モードのそれぞれに対応する噴射データDfに変換する。
【0048】
次に、このように印刷システムが構成された本実施形態において、一例として、印刷装置100に対して画像データDgが入力された場合に行われる印刷処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。なお、以下に説明する処理は、ホストコンピューターHCにおいて画像データDgが外部から入力されたり、あるいはアプリケーションソフトによって画像データDgが生成されたりする場合において、同様に行われる。
【0049】
この処理がスタートすると、まず、ステップS210にて、印刷モード選択画面の表示処理を行う。表示制御部42は、メモリー22に格納された印刷モードの選択画面に対応する表示画像データDhを読み出して、表示手段32に印刷モードの選択画像を表示させる。この表示処理によって、印刷装置100の使用者に対して印刷モードの選択を促す。
【0050】
表示された選択画面DSP1の一例を図4(a)に示す。図示するように、印刷モードの選択を促す文言とともに、通常印刷モードかドラフト印刷モードかのいずれか一方が、ラジオボタン301またはラジオボタン302のいずれかによって選択されるようにレイアウトされた画面の表示が行われる。従って、使用者は、選択画面DSP1に応じて入力手段31を操作し、いずれかのラジオボタンを選択したのち、同じく表示された決定ボタン303を押すことによって印刷モードを決定する。この使用者の操作によって選択データDsが入力手段31から制御装置20に送られる。ちなみに図4(a)では、ドラフト印刷モードが選択された状態を示している。
【0051】
図3に戻り、次に、ステップS211にて、ドラフト印刷モードか否かを判定処理する。判定部43は、入力手段31から送られる選択データDsに基づいて、ドラフト印刷モードであるか否かを判定する。そして、判定の結果、使用者が選択した印刷モードがドラフト印刷モードでない場合は(NO)、ステップS212にて通常印刷モードで印刷を行い、印刷処理を終了する。この場合、使用者は高品質による印刷を要求していると推定されるので、印刷制御部41は、廃インクHを用いず、基本インクである色インクC,M,Y,Kのみを用いて印刷する。もとより、印刷される画像の解像度は元々の高解像度のまま維持される。
【0052】
一方、ステップS211での判定の結果、使用者が選択した印刷モードがドラフト印刷モードである場合は(YES)、続くステップS213にて、廃インク選択画面の表示処理を行う。表示制御部42は、メモリー22に格納された廃インクHの選択画面に対応する表示画像データDhを読み出して、表示手段32に廃インクHの選択画像を表示させる。この表示処理によって、印刷装置100の使用者に対して廃インクHの利用について選択を促す。
【0053】
表示された選択画面DSP2の一例を図4(b)に示す。図示するように、廃インクHの利用の選択を促す文言とともに、廃インクHを利用するか利用しないのかのいずれか一方が、ラジオボタン304またはラジオボタン305のいずれかによって選択されるようにレイアウトされた画面の表示が行われる。従って、使用者は、選択画面DSP2に応じて入力手段31を操作し、クリック動作などによって、いずれかのラジオボタンを選択したのち、同じく表示された決定ボタン306を押すことによって廃インクHを利用するか利用しないかを決定する。この使用者の操作によって選択データDsが入力手段31から制御装置20に送られる。ちなみに図4(b)では、廃インクHを利用することが選択された状態を示している。
【0054】
図3に戻り、次に、ステップS214にて、廃インク利用か否かを判定処理する。判定部43は、入力手段31から送られる選択データDsに基づいて、廃インクHを利用するか否かを判定する。そして、判定の結果、使用者が廃インクHの利用を選択しない場合は(NO)、ステップS215にて基本インクを用いてドラフト印刷モードで印刷を行い、印刷処理を終了する。この場合、使用者はドラフト印刷モードであっても色合いが確認できる品質での画像印刷を要求していることになるので、印刷制御部41は、廃インクHを用いず、基本インクである色インクC,M,Y,Kのみを用いて印刷する。もとより、対象画像は低解像度の画像で印刷される。
【0055】
一方、ステップS214での判定の結果、使用者が廃インク利用すると選択した場合は(YES)、続くステップS216にて、廃インクの貯留量の取得処理を行う。具体的には、貯留量取得部44は、メモリー22に格納された排出データDcと、メモリー22に記憶された噴射データDfのうち既に実際に噴射が実行された噴射データDfとを用いて、廃インクHの貯留量(つまり差分量)を算出することによって取得する。なお、本実施形態では、廃インクHの利用が選択された場合、画像処理部45は、前述するように、画像データDgをカラーまたは白黒の低解像度の画像に対応する噴射データDfに変換し、印刷制御部41は、変換された低解像度の画像をドラフト印刷モードで印刷するようになっている。
【0056】
次に、ステップS217にて、廃インクの貯留量は充分か否を判定処理する。判定部43は、取得された廃インクHの貯留量が、印刷の対象となる画像を全て印刷するために必要な液量以上であるか否かを判定する。具体的には、取得された廃インクHの貯留量が、ドラフト印刷モードによって印刷する対象画像(低解像度の画像)の全ての噴射データDfから求まる廃インクHの総噴射インク量以上であるか否かで判定する。そして、判定の結果、廃インクHの貯留量が充分である場合は(YES)、ステップS218にて廃インクHを用いてドラフト印刷モードで印刷を行い、印刷処理を終了する。
【0057】
一方、廃インクの貯留量が充分でない場合は(NO)、続くステップS219にて警告と選択画面の表示処理を行う。表示制御部42は、メモリー22に格納された警告と選択画面に対応する表示画像データDhを読み出して表示手段32に警告と選択の選択画像を表示させる。この表示処理によって、印刷装置100の使用者に対して、廃インクHの貯留量についての警告を行うとともに、さらに廃インクHの利用について選択を促す。本実施形態では、廃インクHの貯留量に応じて、このように警告文を含む選択画面を表示手段32に表示させるのである。
【0058】
表示された警告文を含む選択画面DSP3の一例を図4(c)に示す。図示するように、廃インクHが不足する旨の文言とともに、基本インクを利用するか、印刷を停止するかのいずれか一方が、ラジオボタン307またはラジオボタン308のいずれかによって選択されるようにレイアウトされた画面の表示が行われる。従って、使用者は、選択画面DSP3に応じて入力手段31を操作し、いずれかのラジオボタンを選択したのち同じく表示された決定ボタン309を押すことによって、廃インクHの利用をやめて基本インクを利用するか、あるいは印刷を停止するかの選択を決定する。この使用者の操作によって選択データDsが入力手段31から制御装置20に送られる。ちなみに図4(c)では、基本インクを利用して印刷することが選択された状態を示している。
【0059】
図3に戻り、次に、ステップS220にて、印刷するか否かを判定処理する。判定部43は、入力手段31から送られる選択データDsに基づいて、印刷するか否かを判定する。そして、判定の結果、使用者が基本インクを用いて印刷することを選択した場合は(YES)、ステップS221にて基本インクを用いてドラフト印刷モードで印刷を行い、印刷処理を終了する。一方、判定の結果、使用者が印刷停止を選択した場合は(NO)、ステップS222にて印刷を停止して印刷処理を終了する。
【0060】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)対象画像の印刷において、印刷制御装置200の使用者すなわち印刷装置100の使用者の選択に応じて、廃インクHを利用することができる。また、印刷される対象画像は、使用者の要求する品質に応じた画像とすることができる。
【0061】
(2)対象画像を解像度の低い画像で印刷するドラフト印刷モード場合において、廃インクHの利用をするか利用しないかを選択することができる。従って、廃インクHを有効に利用するとともに、印刷制御装置200の使用者、すなわち印刷装置100の使用者が要求する品質に応じた画像品質で、対象画像を印刷することができる。
【0062】
(3)廃インクHの貯留量に応じて、廃インクHの利用方法を選択することができる。従って、例えば途中で廃インクHが切れて印刷が無駄になることが抑制できるなど、廃インクHを有効に利用することが可能になる。
【0063】
(4)廃インクの利用方法について選択が行えることから、廃インクを有効に利用するとともに、使用者が要求する品質に応じた画像の印刷を行える印刷装置が実現できる。
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0064】
(第2実施形態)
上記実施形態において、カラー画像のまま印刷つまりカラー印刷するか、カラー画像をモノクロ画像(ここでは白黒画像)に変換して印刷つまりモノクロ印刷するかの選択を促す選択画像を表示させるようにしてもよい。例えば、ステップS213(図3参照)における廃インク選択画面の表示処理において、カラー印刷かモノクロ(白黒)印刷かを合わせて選択させるようにしてもよい。具体的には、表示制御部42は、メモリー22に格納された廃インクHの選択画面に対応する表示画像データDhを読み出して、表示手段32にカラー印刷かモノクロ(白黒)印刷かの選択を促す選択画像を、廃インクHの選択画像に含めて表示させる。なお、本実施形態では、印刷の対象画像が、R,G,Bの諧調値を有する通常のカラー画像である場合を想定しているが、印刷の対象画像がカラーのモノクロ画像である場合について行われることとしても差し支えない。
【0065】
本実施形態における表示画面の一例となる選択画面DSP4を、図5に示す。図示するように、選択画面DSP4は、廃インクHをカラー画像のまま利用するか、モノクロ(白黒)画像に変更して利用するか、あるいは廃インクを利用しないのかのいずれか一つが、ラジオボタン401,402,403のいずれかによって選択されるように表示が行われる。従って、使用者は、選択画面DSP4に応じて入力手段31を操作し、いずれかのラジオボタンを選択したのち、同じく表示された決定ボタン404を押すことによって廃インクHの利用方法を決定する。この使用者の操作によって、選択データDsが入力手段31から制御装置20に送られる。
【0066】
本実施形態において、使用者が、ラジオボタン401を選択して「廃インクHをカラー画像のまま利用する」を決定した場合は、印刷処理において、カラー画像を印刷するための基本インクに加えて廃インクHが併用されるようになっている。すなわち、前述するように、画像処理部45における色変換処理において、R,G,Bの画像データDgを、変換テーブルLUTを用いて、基本インクである色インクC,M,Y,Kに加えて廃インクHを変換対象の色として、それぞれの噴射量を示す噴射データDfに変換する。
【0067】
また、使用者が、ラジオボタン402を選択して「モノクロ画像に変更して利用する」を決定した場合は、白黒画像を印刷するための基本インクつまり色インクKを代用するように廃インクHが使用されるようになっている。すなわち、前述するように、画像処理部45における色変換処理において、R,G,Bの画像データDgを、廃インクHを黒色とみなして変換テーブルLUTを用いて変換し、廃インクHの噴射量を示す噴射データDfに変換する。ちなみに図5では、モノクロ画像(ここでは白黒画像)に変更して廃インクHを利用することが選択された状態を示している。
【0068】
本実施形態によれば、上記第1実施形態における効果(1)〜(4)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(5)対象画像をカラー画像で印刷する場合においても、印刷装置100の使用者の選択によって廃インクHを利用することができる。従って、特許文献1と異なり、例えば廃インクHを色インクKと併用することができるので、廃インクHを有効に利用するとともに、印刷される対象画像は、使用者の要求する品質に応じた画像とすることができる。
【0069】
なお、本実施形態は、ステップS214(図3参照)において廃インクの利用が選択された場合、ステップS216に移行する前に、カラー印刷かモノクロ(白黒)印刷かの選択を促す選択画像を表示させて、使用者にカラー印刷かモノクロ(白黒)印刷かを選択させるようにしてもよい。あるいは、ステップS210より先、または同時に、カラー印刷かモノクロ(白黒)印刷かを選択する選択画像を表示させて、使用者にカラー印刷かモノクロ(白黒)印刷かを選択させるようにしてもよい。
【0070】
(第3実施形態)
・上記実施形態において、廃インクHが充分でない場合、ステップS219(図3参照)における警告と選択画面の表示処理において、ステップS216において取得された廃インクHの貯留量に応じて、廃インクHを利用する割合を選択させるようにしてもよい。本実施形態では、ステップS217の判定処理において、判定部43は、取得した廃インクHの貯留量と、噴射データDfから求まる廃インクHの印刷に必要な液量との割合を算出して、色インクKに対する廃インクHの利用可能な上限割合を判定する。そして、表示制御部42は、判定された廃インクHの利用可能な割合を含む選択画像を、メモリー22に格納された表示画像データDhから読み出し、表示手段32に表示させる。
【0071】
本実施形態における表示画面の一例となる選択画面DSP5を、図6に示す。選択画面DSP5は、モノクロ(白黒)印刷する場合、上記実施形態での選択画面DSP3(図4(c)参照)に比較して、廃インクHの利用割合を選択するラジオボタン501,502,503,504が追加されている。なお、破線で示したラジオボタン501,502は、ここでは、廃インクHの貯蓄量が少ないために選択できない状態であることを示している。
【0072】
従って、選択画面DSP5は、廃インクHを50%利用するか、廃インクHを25%利用するか、基本インクを利用するか、印刷を停止するかのいずれか一つが、ラジオボタン503〜ラジオボタン506のいずれかによって選択されるように表示される。従って、使用者は、選択画面DSP5に応じて入力手段31を操作し、いずれかのラジオボタンを選択したのち、同じく表示された決定ボタン507を押すことによって廃インクHの利用方法を決定する。この決定によって選択データDsが入力手段31から制御装置20に送られる。
【0073】
ちなみに、図6では、廃インクHを色インクKに対して50%利用して印刷する利用方法が、使用者によって選択された状態を示している。従って、対象画像は、廃インクと色インクKとが半々で用いられて印刷されることになる。このとき、印刷処理における廃インクHと色インクKの具体的な利用方法としては、1画素あたりの噴射量割合が半々となるように利用する方法が採用される。なお、これ以外の利用方法として、例えば、印刷画像のそれぞれ半分の印刷に利用したり、キャリッジ14の一走査毎に交互に利用したり、所定の画素数毎に交互に利用したりする方法を採用することもできる。このように、本実施形態によれば、カラー印刷およびモノクロ(白黒)印刷のいずれにおいても、廃インクHと色インクKを併用して利用することが可能である。もとより、これらの利用方法は一例であって、限定するものではない。
【0074】
なお、廃インクHを利用してカラー印刷を行う場合は、本変形例の選択画面DSP5に表示される廃インクHの利用割合は、画像処理部45が変換テーブルLUTを用いて行った変換後の廃インクHの色インクKに対する噴射量割合を示すものである。また、前述するように、廃インクHに含まれる各色インクC,M,Y,Kの液量に応じて、廃インクHを、色インクK以外のカラーインクとして用いることができる場合は、色インクC,M,Y,Kのすべての噴射量に対する廃インクHの噴射量割合を示すものである。従って、画像処理部45は、変換テーブルLUTを用いて、廃インクHの噴射量が選択された割合を最大として、これを超えない範囲で色変換するようになっている。
【0075】
本実施形態によれば、上記第1実施形態における効果(1)〜(4)に加えて、以下の効果を得ることができる。
(6)印刷装置100の使用者の選択に応じて、廃インクHの利用割合を選択することができる。従って、廃インクHを有効に利用するとともに、印刷される対象画像は、使用者の要求する品質に応じた画像とすることができる。
【0076】
(その他の変形例)
・上記実施形態において、使用者に廃インクHの利用方法についての選択を促す画面において、ラジオボタンに替えてチェックボックスを表示することとしてもよい。
【0077】
・上記実施形態において、印刷制御装置200は、ハード的な回路構成によって動作することによって、各部の機能を実現するように構成されていてもよい。
・上記実施形態において、基本インクは、色相以外の異なる性質を有するインクでもよい。例えば、濃淡の異なるインクであってもよい。また染料インクと顔料インクであってもよい。
【0078】
・上記実施形態では、廃インクHの貯留量を、メモリー22に記憶された排出データDcと噴射データDfとを用いて取得することとしたが、特にこれに限らず、実際の廃インクHの貯留量を直接検出することによって判定することとしてもよい。例えば、廃インクタンク17において廃インクHの液面高さをセンサーによって検出して取得することとしてもよい。
【0079】
・上記実施形態において、カラー画像を印刷するときのみ廃インクHを利用するか利用しないかを選択できるようにしてもよい。この場合、モノクロ画像の印刷は、特許文献1と同様に、色インクを併用することなく廃インクHのみを利用して行われることになる。
【0080】
・上記実施形態において、印刷制御装置200が印刷装置100にのみ備えられていることとしてもよい。この場合は、ホストコンピューターHCからは画像データDgが印刷装置100に送信されるようにすればよい。あるいは、印刷制御装置200aがホストコンピューターHCにのみ備えられていることとしてもよい。この場合、ホストコンピューターHCは、印刷装置100に備えられた印刷制御部41の機能のうち、インク噴射機構10の制御に関する機能を除いた一部の機能を備えるとともに、印刷装置100から、排出データDcを受信する。
【0081】
・上記実施形態において、ステップS213(図3参照)以降の処理を、通常印刷モードで行うようにしてもよい。すなわち、図3に示した処理ステップのうちステップS210,S211,S212を省略し、ステップS215,S218,S221での処理を、ドラフト印刷モードでなく通常印刷モードに変更した処理ステップとしてもよい。こうすれば、通常印刷モードにおいても、各色インクC,M,Y,Kと廃インクHとを使用者が選択して使い分けて対象画像を印刷させることによって、廃インクHを有効に利用するとともに使用者の要求に応じた画像品質で印刷させることが可能になる。
【0082】
・上記実施形態において、ステップS217(図3参照)の判定処理結果で、廃インクHが充分であった場合においても、ステップS218の処理にて廃インクHを利用する割合を選択させるようにしてもよい。すなわち、表示制御部42は、貯留量取得部44が取得した廃インクHの貯留量が充分存在する場合、廃インクHの利用方法を含む選択画像を表示手段32に表示させるようにするのである。こうすれば、廃インクHの貯留量が充分存在する場合において、使用者は廃インクHの利用方法を選択して決定することができる。従って、例えばドラフト印刷モードにおいて、各色インクC,M,Y,Kと廃インクHとを併用して印刷することによって、廃インクHを有効に利用するとともに使用者の要求に応じた画像品質で印刷させることが可能になる。
【0083】
なお、この場合、表示制御部42は、廃インクHの利用可能な割合が100%を含む選択画面を、表示手段32に表示させるようにすればよい。表示させる選択画面として、例えば、図6に示した選択画面において、警告文「廃インクが充分でありません。」の文言を消すとともに、廃インクHを「100%利用する」ことを選択できるラジオボタンを追加した画面としてもよい。このように、廃インクHの貯留量が充分でない場合に限らず廃インクHが充分存在する場合においても、廃インクHの貯留量に応じた廃インクHの利用方法を選択させることができる。
【0084】
・上記実施形態では、印刷装置100はインクを噴射することとしたが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする印刷装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる印刷ヘッド等を備える各種の印刷装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記印刷装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、印刷装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクが挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。印刷装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する印刷装置がある。あるいは、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の印刷装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10…インク噴射機構、15…印刷ヘッド、16…インクキャップ、17…廃インクタンク、19…インクカートリッジ、20…制御装置、31,31a…入力手段、32,32a…表示手段、41…印刷制御部、42,42a…表示制御部、43,43a…判定部、44,44a…貯留量取得部、45,45a…画像処理部、100…印刷装置、200…印刷制御装置、200a…印刷制御装置としてのプリンタードライバー、C,M,Y,K…色インク、H…廃インク、P…用紙、Dg…画像データ、Dh…表示画像データ、Ds…選択データ、HC…ホストコンピューター、NL…ノズル列、DSP1〜DSP5…選択画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク噴射手段から排出された基本インクの廃インクを前記インク噴射手段から媒体に噴射することによって利用し、前記媒体に対して行う対象画像の印刷を制御する印刷制御装置であって、
前記対象画像の印刷に先んじて前記廃インクの利用の有無を含む利用方法についての選択を促す選択画像を表示手段に表示させる表示制御部と、
前記選択画像に応じて入力手段から入力された選択データに基づいて、前記廃インクの利用方法を判定する判定部と、
前記判定部の判定結果に基づいて、前記基本インクのみを利用するか、前記廃インクのみを利用するか、前記基本インクと前記廃インクとの両方を利用するか、のいずれかによって前記対象画像の印刷を行うように制御する印刷制御部と、
を備えたことを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷制御装置において、
前記印刷制御部は、前記入力手段から入力された選択データに応じて解像度が異なる画像で印刷する2つの印刷モードによって前記対象画像の印刷を行うように制御し、
前記表示制御部は、前記印刷制御部が前記2つの印刷モードのうち低い方の解像度で前記対象画像の印刷を行うように制御する場合、前記選択画像を表示させることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷制御装置において、
前記表示制御部は、前記対象画像を、カラー画像で印刷するか白黒画像で印刷するかの選択を促す画像を前記選択画像として表示させ、
前記判定部は、表示された前記選択画像に応じて前記入力手段から入力された選択データに基づいて、前記対象画像をカラー画像で印刷するか白黒画像で印刷するかを判定し、
前記印刷制御部は、前記判定部の判定結果がカラー画像で印刷する場合は、前記基本インクと前記廃インクとの両方を利用して前記対象画像の印刷を行うように制御することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷制御装置において、
前記廃インクの貯留量を取得する貯留量取得部を備え、
前記表示制御部は、前記貯留量取得部が取得した前記廃インクの貯留量に応じて、異なる前記廃インクの利用方法の選択を促す画像を、前記選択画像として前記表示手段に表示させることを特徴とする印刷制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置において、
前記表示制御部は、前記基本インクに対して前記廃インクを利用する液量割合の選択を促す画像を、前記選択画像として前記表示手段に表示させ、
前記判定部は、表示された前記選択画像に応じて前記入力手段から入力された前記選択データに基づいて、前記廃インクを利用する液量割合を判定し、
前記印刷制御部は、前記判定部が判定した前記液量割合を最大として前記廃インクを利用することによって、前記対象画像の印刷を行うように制御することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項6】
表示手段と、
入力手段と、
インク噴射手段と、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の印刷制御装置と、
を備えたことを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224842(P2011−224842A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95710(P2010−95710)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】