説明

印刷座標補正方式と印刷装置

【課題】プリンターの高速化または高速化のニーズに伴って、紙送りのさらなる安定化が望まれる。印刷紙面の座標が安定しないことは直接印刷座標の精度に影響を与える。
【解決手段】印刷紙面の拡大画像が、紙の材料である繊維の配列模様を含んでいて、繊維の配列がランダムであることに着目し、異なる近傍の時刻の画像相互間の座標差を求め、期待座標との乖離を算出し、乖離を補正すべく、その結果を印刷の座標制御に反映させる。

【発明の詳細な説明】
【用語の定義】
【0001】
請求項を含む全文に冠し、{}内部の内容は{}の外の内容に優先して意味を持つものとする。
【技術分野】
【0002】
プリンターが{精密であるほど、また高速であるほど}印刷座標の揺らぎが問題になり、{印刷面の座標に関する精密な情報}を必要とする。{プリンターの印刷座標精度の向上}という課題は、印刷の{高速化の必要性}に伴い、大きな課題である。印刷速度に対する要望はとどまるところがないが高速になればなるほど、一般的に{印刷精度が悪くなる}ことから、何らかの方法で精度を高めなければならない。{印刷しようとする場所情報の精度を上げる手法}は印刷精度の向上に決定的に貢献する。そのため、{高速で送られる紙}の{座標を安定させる機構}には様々な工夫がなされている。
【背景技術】
【0003】
プリンター印字位置制御、顕微鏡、顕微鏡撮像、高速撮像、慣性制御、運動予測制御、ストロボ、レーザ光スキャニング、学習アルゴリズム、画像基準位置割り出しアルゴリズム、紙送り機構、座標変換、2次元相互相関。
【課題を解決するための手段】
【0004】
紙の表面の{印字しようとする部分またはその近傍}の拡大画像から、その画像の{主として繊維の配列の特徴}の違いを分析し、対時間変化を検出することにより、期待位置との乖離を割り出す。通常、紙と印字機構の双方とも動いているが、当然ながら{近接する特定時間}における印刷座標の期待値は明らかである。画像の特徴から近接する時間の二つの画像から、双方共通する画像の特徴の一致点を見いだすことによって、二つの画像の座標差を算出することが可能である。その結果、期待座標と実際の座標との乖離を割り出すことが可能になる。
【0005】
本案の本質は、
紙の表面のある点の付近の{繊維や傷やあらかじめ人為的に設けた模様}の特徴が、他の点の付近の特徴と独立していることに着目し、少し離れた点の近傍の複数の画像の特徴が一致する条件によって複数の点の間のベクトル距離を算出できる、というところにある。
ここで記述する{ベクトル距離算出の意味}はいくつかのパラメータで構成される座標差のことである。
局部的な画像は鮮明でなくても、画像の範囲を広げることによって、特定の面積の部分を共有する二つの画像の距離差の計算精度を向上させることができる。
プリンターによって印字される紙は一般的に細かい繊維が複雑に絡み合っていて、繊維の配列は極めてランダムであり、基準位置の算出に適している。
【0006】
〔図1〕は本案の対象となる紙の表面の顕微鏡写真である。紙質は最も標準的に使われている安価なプリンター用紙である。
縦横それぞれ2本の直線の間隔は100マイクロメータである。
【0007】
プリンターが動作している状態では、紙と印字ヘッドは共に動いている。従って{近傍の異なる時刻の紙の表面の2枚の撮影画像}もしくは{近傍の異なる印刷位置の紙表面の2枚の撮影画像}は一般的に、位置が変化している。少なくとも画像の横軸と縦軸の位置が変化する。加えて、一様でない紙送り状態もあって、回転やひずみが加わる。説明を簡単にするために2枚の画像の縦軸と横軸が変化しているとする。その変化の実測値は、{縦がa}と{横がb}とする。さらに、理想的には{縦がA}で{横がB}でなければならないとすると、現実と期待値との間に、縦{a−A}、横{b−B}の乖離があることになる。
【0008】
本案の手法では、紙の絶対座標を測定することはできないが、時々刻々の紙の揺らぎを測定できることから、印刷座標の期待値からの乖離を補正することができる。
実際のプリンターでは、印字装置には慣性もあり、時間遅れもあることから、印字座標の補正量の決定方法は簡単ではないが、少なくとも、{縦{a−A}、横{b−B}の乖離に対応するところの}補正がなさることによって印刷精度は向上する。さらに{縦の伸縮係数c}{横の伸縮係数d}{座標の回転e}というふうに座標変換のパラメータを増やすことで、より正確な座標変換を表現することができる。どのような座標変換方法を使うか、また、どのような座標変換パタメータを使うかについては本案の本質とするところではない。
【0009】
本案の本質は上記の{実測と期待値の間の乖離}を参考にして印刷の座標補正を作用させるところにある。印刷の座標の補正量を算出する手法については本案の本質とするところではない。
また、実測による乖離を印刷座標の補正量に換算する手法として、理論的にそのメカニズムを解明して解き明かす手法もあるが、一方では、実測の座標差と補正量との関係を統計的に分析し、実測乖離を表現するパラメータと補正量を表現するパラメータを関連づける手法も存在する。
いずれにしても、座標の実測と期待値の乖離を補正する手法については本案の本質とするところではない。
【0010】
極めておおざっぱにではあるが、{図1の画像の4本の線で囲まれた100マイクロメータの正方形を共有する二つの画像を重ねる}ことにより目視でも2〜3マイクロメータの精度で座標差を測定できることは実際の双方の図形を重ね合わせる作業で確認できる。さらに、この正方形を共有する二つの画像の正方形付近の2次元相互相関を計算し、最も相関度の高い座標差を計算することで、座標差の実測精度をこの目視で得られた値から、さらに1桁を上げることは一般的に難しくない。このような手法はパターンマッチングの技術では公知である。すなわち、公知の計算技術を使って、2枚の画像の座標差を0.2〜0.3マイクロメータの精度で実測することができる。結果、印刷制御に、この実測座標差を反映させることができ、さらなる印刷精度の向上を可能ならしめる。
【0011】
さらに座標差は、分析するサンプル画像の数を増やすことで、紙の揺らぎをより正確に測定することができ、印刷タイミングに合わせた予測制御により、より精度の向上を図ることもできる。分析する画像のサンプル数については本案の本質とするところではない。
【0012】
〔図2〕は図1が顕微鏡写真であり、本案の説明書類がコピーや再印刷によって不鮮明になる可能性を考慮して、図1の繊維の配列をアブストラクト的に線画で表したものである。図1と同等と見なす。
【発明の効果】
【0013】
同一印刷精度であればより高速の、同一印刷速度であればより高精度、のプリンターを作ることができる。また、紙送り機構への制約条件も緩和される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
プリンターに、紙の表面状態を撮影するに必要な{レンズやストロボなどの照明や撮像素子}を設け、印字制御補正用の{画像処理プロセッサ、印刷座標の期待値と実際の座標との乖離を計算予測するアルゴリズム、印字制御の補正量量を算出するアルゴリズムなど}を組み込む。
【実施例】
【0015】
プリンターの印字ヘッドに(ストロボと顕微鏡と撮像機能)もしくは(レーザ発光素子とレーザスキャナと受光素子)を取り付ける。
上記{撮像素子または受光素子}か得られる画像を記憶させる。
複数のサンプル画像から2次元相互相関を求め相互相関の最も強度の高い座標差を計算するアルゴリズムを、それを計算するプロセッサの資源に組み込む。
複数のサンプル画像から得られる、{実測座標差と期待座標との乖離}を計算するアルゴリズムを、それを計算するプロセッサの資源に組み込む。
{実測座標差と期待座標}との{乖離の軌跡}をもとに印刷しようとする座標の補正を行うアルゴリズムを、それを計算するプロセッサの資源に組み込む。
【産業上の利用可能性】
【0016】
2007年現在では、特に業務用のプリンターは尚一層の高速化が求められている。印刷精度を犠牲にすることなく、高速度であるほど、そのプリンターの商品価値は高く、市場では競争力がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】紙の表面の拡大写真
【図2】図1の紙の表面の繊維の配列の補足説明図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷しようとする対象が{少なくとも紙(以下、紙と称す)}であることを第1の特徴とし、
{紙の表面の反射光}の配列パターンが紙の表面の{繊維または傷または人為的な模様(以下、表面模様と称す)}の情報を含んでいることから、{{異なる、時刻または印刷座標}相互間の{この反射光の配列パターン}の相違から{紙の局部的な相対位置を特定する}手法を有することを第2の特徴とし、
印刷しようとする{2次元座標の{座標軸Xと座標軸Y}}の交差点を点(x,y)とし、
{表面模様を反射する光の強度}によって生まれるところの{不規則な表面模様に対応する配列パターン}を{離散的に表現する離散座標}を配列座標Pxy(x=1,2,,,,,m)(y=1,2,,,,n)とし、
上記、mは複数で任意の値とし、
上記、nは複数で任意の値とし、
上記、離散座標上の測定強度をPxy(x=1,2,,,,,m)(y=1,2,,,,n)とし、
Pxyの各座標につき、{光の強度を検出するセンサ}を有することを第3の特徴とし、
センサから得られるところの光の強度分布に対応する配列座標Pxy上の配列強度をZxyとし、
ある時刻tにおけるPxy上の配列強度をZxytとし、
以下、{時刻または印刷の進行段階}を総称して時刻と称し、
現在時刻を1とし、配列強度Zxytを計測する離散サンプリング時刻を過去の方向へ1,2,,jとし、
上記、jは2以上の任意の値とし、
{配列強度Zxytを記憶する機能}を有することを第4の特徴とし、
aを{ZxyjをZxy1 へ近似写像する座標変換}のパラメータの一つとし
bを{ZxyjをZxy1 へ近似写像する座標変換}のパラメータの一つとし
cを{ZxyjをZxy1 へ近似写像する座標変換}のパラメータの一つとし
dを{Zxyjをzxy1 へ近似写像する座標変換}のパラメータの一つとし
eを{ZxyjをZxy1 へ近似写像する座標変換}のパラメータの一つとし
時刻jから始まって時刻1への座標変換の期待値を{A、B、C、D、E}とし、
{実測座標変換パラメータと期待座標変換パラメータの乖離}の度合いを評価するところの任意の{誤差評価関数}をE(a,b,c,d,e、A,B,C,D,E,1,j)とし、
誤差評価関数E(a,b,c,d,e,A,B,C,D,E,1,j)が少なくとも2種類以上の座標変換パラメータで評価されるものとし、
誤差評価関数を印刷位置制御に反映させる機能を有することを第5の特徴とし、
上記第1と第2の特徴を有する印刷座標補正方式
【請求項2】
上記{第1、2、3、4、5}の特徴を有する印刷座標補正方式
【請求項3】
上記{請求項1または請求項2}を有する印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−213444(P2008−213444A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96830(P2007−96830)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(392004015)
【Fターム(参考)】