説明

印刷情報読取装置

【課題】手ぶれ等の影響を受けることなく高精度の読取処理を可能とし、かつ光透過部材だけであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させることを可能とする。
【解決手段】筐体17の上面及び下面にそれぞれ開口窓を設けてこれらの窓間に非中空のプリズム30を配置すると共に、このプリズム30の下面に密接するように白濁半透明の光拡散シート31を貼付している。そして、筐体17上面の開口窓から入射して上記プリズム30を透過した照明光を、上記光拡散シート31により多方向に拡散したのち印刷シート20の二次元コード21に照射し、当該照射光の二次元コード21による反射光を上記光拡散シート31により多方向へ拡散したのち上記プリズム30を介して上記筐体17内へ導出しカメラ10に結像させるようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カメラを使用して二次元コード等の印刷情報を読み取る印刷情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次元コードを利用した情報の検索サービスや提供サービスが普及している。この種のサービスは、例えば新聞や雑誌等の印刷物に表示された、QRコードに代表される二次元コードをカメラにより撮像し、その画像データから上記二次元コードに含まれるURL(Uniform Resource Locator)を認識する。そして、このURLをもとにインターネットに対しアクセスすることにより、対応するWebサーバから検索情報や商業情報を取得するものである。この種のサービスを利用すると、ユーザはURLをキー操作により入力する必要がなくなり、また誤ったアクセスを減らすことができるので大変便利である。
【0003】
しかしながら、二次元コードを読み取る際、一般にユーザはカメラが内蔵された読取装置を手で把持して二次元コードを撮像する。このため、二次元コードの全体がカメラの撮像範囲(フレーム)内に収まらず、その結果二次元コードを正しく読み取ることができない場合がある。
【0004】
そこで従来では、例えば携帯電話機等のようにディスプレイを備えた装置を使用し、読み取りに先立ちカメラで撮像した二次元コードの画像をディスプレイに表示させて、読取対象の二次元コードが撮像範囲内に収まっているか否かを確認できるようにしている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−277445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このような従来の読取装置では、ユーザが装置を手で把持した状態で二次元コードを撮像するため、手ぶれ等の影響により二次元コードの読取精度の低下を生じやすい。また、二次元コードの読取位置を確認するために、ディスプレイとその表示駆動回路を備えることが必要となる。このため、例えばテレビジョン受信機やビデオ記録再生装置等のリモートコントローラを読取装置として使用する場合には、リモートコントローラにカメラばかりでなくディスプレイとその表示駆動回路を設けなければならず、装置の大型化とコストアップを招く。
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度の読取処理を可能とし、かつ光透過部材だけであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させることができる印刷情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためにこの発明の1つの観点は、媒体に印刷された印刷情報を読み取る印刷情報読取装置にあって、筐体の上面部及び下面部にそれぞれ第1及び第2の窓を設け、筐体内の上記第1の窓と第2の窓との間に非中空の光透過部材を配置すると共に、この光透過部材の下面に密接するように光拡散部材を配置する。そして、上記第1の窓を介して入射しかつ上記光透過部材を透過した照明光を上記光拡散部材により多方向に拡散したのち上記第2の窓を介して上記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射により生成される上記印刷情報の光学像を上記第2の窓を介して導入して上記光拡散部材により多方向へ拡散したのち、上記光透過部材を介して上記筐体内へ導出してカメラに結像させるように構成したものである。
【0008】
したがってこの発明の1つの観点によれば、筐体の下面部を、その第2の窓が上記媒体上の印刷情報が印刷された範囲を含むように配置すると、筐体上面部の第1の窓から入射された照明光が光学系を通して印刷媒体に照射されて印刷情報が照明され、この印刷情報の光学像が光学系を介して筐体内のカメラに結像される。このため、筐体の下面部を印刷媒体上に載置した状態で印刷情報が撮像されるので、手ぶれ等の影響を受けることなく高精度の読取処理が可能となる。
【0009】
しかも、光透過部材の下面に密接するように光拡散部材を配置したことにより、光透過部材のみであればその下面で全反射してしまい印刷情報に照射されない照明光が、光透過部材から光拡散部材に入射したのち多方向に拡散されて印刷媒体の印刷情報に照射される。そして、その反射光である印刷情報の光学像が、上記光拡散部材に入射したのち多方向に拡散され、その一部が光透過部材を介して筐体内へ導出されてカメラに結像される。すなわち、光透過部材のみであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させることができる。
【0010】
また、この発明の1つの観点は以下のような態様を備えることを特徴とする。
第1の態様は、上記光学系により、上記光拡散部材により多方向に拡散した上記印刷情報の光学像の一部を上記光透過部材を介して上記筐体内へ導出して上記カメラに結像させ、かつ上記光拡散部材により多方向に拡散した上記印刷情報の光学像の他の一部を上記光透過部材を介して上記第1の窓から筐体外へ導出してユーザに視認させるようにするものである。
このようにすると、ユーザは第1の窓を介して印刷情報の位置合わせを行うことが可能となる。このため、印刷情報の画像を表示させるためのディスプレイとその表示駆動回路が不要となり、これにより装置の小型化と低価格化が可能となる。
【0011】
第2の態様は、上記光透過部材の側面に密接するように配置される光偏向部材をさらに設け、この光偏向部材により、上記光透過部材の側面から導出された上記印刷情報の光学像を斜視像から平面像に変換して上記カメラに結像させるものである。
このようにすると、印刷情報の光学像をカメラに結像される前に平面像に変換することができ、これによりカメラによる受像後にその画像データを斜視像から平面像に変換するための画像処理を行う必要がなくなり、情報読取部の処理負荷を大幅に軽減することができる。
【0012】
第3の態様は、上記光拡散部材の下面の面位置を上記筐体底面の面位置と一致するように配置するようにしたものである。
このようにすると、印刷情報を読み取る際に、媒体上の印刷情報が印刷された部位を光拡散部材の下面により平坦化することができる。このため、印刷媒体に皺や反り等があっても、これらを矯正して平坦な状態で印刷情報を読取処理することが可能となり、これによりさらに高精度の読取りが可能となる。
【0013】
第4の態様は、光透過部材を非中空のプリズムにより構成し、光拡散部材を上記プリズムと同等の屈折率を有しかつ白濁した半透明の樹脂シートにより構成するようにしたものである。
このようにすると、光拡散部材として安価な樹脂シートを使用することができ、装置の価格を安価にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
すなわちこの発明によれば、手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度の読取処理を行えるようにし、かつ光透過部材だけであれば全反射するはずの印刷情報の光学像をカメラに結像させることができる印刷情報読取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明に係わる印刷情報読取装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示した印刷情報読取装置の縦断面図である。
【図3】図2に示した印刷情報読取装置の要部である光学系の構成とその動作を拡大して示した図である。
【図4】プリズムの基本動作を示す図である。
【図5】この発明の一実施形態に係わる印刷情報読取装置の回路構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
図1はこの発明に係わる印刷情報読取装置の一実施形態を示す斜視図、図2はその縦断面図、図3はその要部を拡大して示した図である。
この実施形態に係わる印刷情報読取装置は、印刷情報として二次元コード(QRコード)を読み取るもので、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置で使用されるリモートコントローラに設けられる。
【0017】
リモートコントローラ1は、長方形状をなすスティック型の筐体17を有し、この筐体17の上面にはテンキーボタン9や複数の機能キーボタンが配設されている。機能キーボタンの中には、二次元コードの読取指示を入力するための読取ボタン11と、読み取った二次元コードの解読データの送信指示を入力するための送信ボタン12が含まれる。
【0018】
一方、筐体17内にはカメラ10と、リモートコントローラ1を動作させるために必要な回路ユニット(図示せず)が内蔵されている。カメラ10は、撮像素子として例えばCCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を使用したものである。
【0019】
また、筐体17の先端部には通信用の窓(図示せず)が設けられ、この通信用の窓には通信部13が取着されている。この通信部13は、例えば赤外線を用いた信号送信器とその送信制御回路とからなり、図示しないテレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置に向けて、遠隔操作信号や、読み取った二次元コードの解読データを送信するために使用される。
【0020】
ところで、筐体17の先端側の上面部及び下面部にはそれぞれ開口窓が設けられており、これらの開口窓により形成される筐体17内の空間部には、読取光学系が収容されている。この読取光学系は、光透過部材としての読取用のプリズム30と、光拡散部材としての光拡散シート31と、光偏向部材としての偏向プリズム32とから構成される。プリズム30は、アクリル樹脂を縦断面が台形状又は平行四辺形状となるように成形した非中空の光透過部材からなり、その上面の面位置が筐体17の上面の面位置と一致するように配置されている。
【0021】
また、上記プリズム30の下面には、当該下面との間に空気層が介在しないように密接した状態で光拡散シート31が貼付されている。この光拡散シート31は、白濁した半透明な樹脂素材からなり屈折率は上記プリズム30と同等に設定されている。例えば、プリズム30がアクリルからなる場合にはその屈折率が1.49であるため、光拡散シートも屈折率が1.49となる樹脂材料が用いられる。
【0022】
光拡散シート31は、上記プリズム30を透過してその下面から出射した照明光を、例えば図3に示すように多方向に拡散して印刷シート20の二次元コード21に照射する。またそれと共に、上記照射された照明光の二次元コード21による反射光、つまり二次元コード21の光学像を、図3に示すように多方向に拡散させてプリズム30に入射する。この入射光の一部は、プリズム30を透過したのちその上面からユーザが確認するための光学像OL2として筐体17外へ出射する。また、上記入射光の他の一部は、プリズム30を透過したのちその側面から筐体17内へ出射しカメラ10に結像される。
【0023】
なお、図3では説明の便宜上、光拡散シート31と印刷シート20との間が離間しているように図示しているが、実際には光拡散シート31の面位置は筐体17の底面の面位置と一致するように配置されるため、光拡散シート31と印刷シート20とは接触する。これは、光拡散シート31の底面を印刷シート20に押しつけることで印刷シート20を平坦化し、これにより印刷シート20の皺や反り等を矯正して平坦な状態で二次元コード21の読み取りを可能とするためである。
【0024】
さらに、前記プリズム30の側面には、空気層が介在しないように密接した状態で偏向用プリズム32が配置されている。この偏向用プリズム32は、上記プリズム30の側面から入射された二次元コード21の光学像を斜視像から平面像に変換して、カメラ10に結像させる機能を有する。なお、この偏向用プリズム32にも、上記プリズム30と同じアクリル樹脂が用いられる。
【0025】
なお、筐体17内の上記プリズム30が収容される部位の先端側内壁面は、上方に向かって開口するようにテーパ状に形成されている。この構造により、印刷シート20の二次元コード21上に、筐体17による照明光OL1の陰が発生し難いようにしている。
【0026】
また、リモートコントローラ1の回路ユニットは次のように構成される。図5はその機能構成を示すブロック図である。すなわち、回路ユニットは、通信部13と、情報読取部14と、データ記憶部15と、効果音出力部16と、バッテリを備える電源回路部(図示せず)とから構成される。
【0027】
情報読取部14は、読取ボタン11の操作を検出すると、カメラ10を起動して当該カメラ10から二次元コード21の画像信号を読み込み、この読み込んだ画像信号から二次元コード21を解読する。そして、解読が正しく行われたか否かを判定し、正しく行われた場合にはその旨の鳴音信号を効果音出力部16へ出力すると共に、上記解読結果を表すデータをデータ記憶部15へ出力する。なお、解読が正しく行われなかった場合にも、その旨の鳴音信号を効果音出力部16へ出力する。なお、この情報読取部14の機能は、中央処理ユニット(CPU:Central Processing Unit)にアプリケーション・プログラムを実行させることにより実現される。
【0028】
データ記憶部15は、記憶媒体として例えばEEPROM又はRAMを使用したもので、上記情報読取部14から出力される二次元コードの解読結果を表すデータを、予め決められた領域に記憶する。
効果音出力部16は、例えばサウンダ又はスピーカからなり、上記情報読取部14から供給された鳴音信号に応じた鳴音を発生する。
通信部13は、送信ボタン12が押下された場合に、送信制御回路により上記データ記憶部15から上記二次元コード21の解読結果を表すデータを読み出し、この読み出したデータを信号送信器から赤外線信号として送信する。なお、通信部13は赤外線を使用するものに限らず、Bluetooth(登録商標)等の特定小電力を使用する無線インタフェースを使用することも可能である。
【0029】
次に、以上のように構成された装置による二次元コード21の読取動作を説明する。
二次元コード21を読み取ろうとする場合、ユーザは先ずリモートコントローラ1の筐体17底面部を印刷シート20上の任意の位置に置く。この状態では、筐体17の上面開口窓から入射した照明光がプリズム30を透過してその下面に届く。このとき、プリズム30の下面には、先に述べたように当該プリズム30の屈折率が同等の光拡散シート31がプリズム30との間に空気層を介在しないように密接した状態で貼付されている。このため、上記照明光はその入射角によらずプリズム30から光拡散さんシート31に入射する。そして、この光拡散シート31において多方向に拡散されて上記印刷シート20上に照射される。
【0030】
次に、上記照射光の上記印刷シート20による反射光は、上記光拡散シート31に入射してこの光拡散シート31により多方向に拡散されたのち、プリズム30に入射される。そして、この入射光の一部がプリズム30を透過してその上面からユーザ確認光OL2として筐体17外へ出射される。したがって、ユーザは筐体17の上面開口窓を通して印刷シート20の光学像を視認することが可能となる。そして、光学像を視認しながらリモートコントローラ1を移動させることにより、図1に示すように印刷シート20上の二次元コード21の印刷位置にリモートコントローラ1を位置合わせすることができる。
【0031】
上記位置合わせが終了した状態では、筐体17の上面開口窓から入射した照明光がプリズム30を透過したのち、光拡散シート31により多方向に拡散されて印刷シート20の二次元コード21に照射される。そして、上記照射光の上記二次元コード21による反射光、つまり二次元コード21の光学像は、上記光拡散シート31に入射してこの光拡散シート31により多方向に拡散されたのちプリズム30に入射される。そして、この入射光の一部がプリズム30を透過してその側面から偏向用プリズム32に入射され、この偏向用プリズム32により斜視像から平面像に変換されたのち筐体17内へ出射されて、カメラ10に結像される。
【0032】
そして、この状態でユーザがリモートコントローラ1の読取ボタン11を押下すると、情報読取部14によりカメラ10が起動される。この結果、上記カメラ10において上記結像された二次元コード21の光学像が撮像走査され、その画像信号が情報読取部14に取り込まれる。情報読取部14は、上記取り込んだ二次元コード21の画像信号に対し二次元コード21の解読処理を行い、解読が正しく行われたか否かを判定する。そして、解読が正しく行われた場合には、その旨の鳴音を効果音出力部16から出力させると共に、上記解読結果を表すデータを出力してデータ記憶部15内の予め決められた領域に記憶させる。なお、解読が正しく行われなかった場合には、その旨の鳴音を上記効果音出力部16から出力させる。
【0033】
ユーザが、解読が正しく行われたことを上記鳴音により確認し、送信ボタン12を押下したとする。そうすると通信部13内の送信制御回路は、上記データ記憶部15から上記二次元コード21の解読結果を表すデータを読み出し、この読み出したデータに対応する赤外線信号を送信器から図示しないテレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置に向けて送信させる。
【0034】
テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置は、上記二次元コード21の解読結果を表すデータを受信すると、この受信したデータに基づいて例えば番組の録画予約の登録処理を行う。また、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置がインターネット等の通信ネットワークに接続可能であれば、上記データをこの通信ネットワークを介してWebサーバへ送信し、Webサーバから配信される番組関連情報や商業サービス情報を受信して画面に表示させる。
【0035】
以上述べたようにこの実施形態では、筐体17の上面及び下面にそれぞれ開口窓を設けてこれらの窓間に非中空のプリズム30を配置すると共に、このプリズム30の下面に密接するように白濁半透明の光拡散シート31を貼付している。そして、筐体17上面の開口窓から入射して上記プリズム30を透過した照明光を、上記光拡散シート31により多方向に拡散したのち印刷シート20の二次元コード21に照射し、当該照射光の二次元コード21による反射光を上記光拡散シート31により多方向へ拡散したのち上記プリズム30を介して上記筐体17内へ導出しカメラ10に結像させるようにしている。
したがって、筐体17下面を印刷シート20上に載置した状態で二次元コード21を読み取ることが可能となるので、手ぶれ等の影響を受けることなく常に高精度の読取処理を行うことができる。
【0036】
しかも、プリズム30の下面に密接するように光拡散シート31を貼付したことにより、以下のような作用効果が奏せられる。図4は、この作用効果を説明するための図である。すなわち、プリズム30から出射される光学像を筐体17内のカメラ10に結像させるためには、例えば図4の(2)に示すようにプリズム30に対し水平に近い角度で照明光を入射させる必要がある。しかし、このようにすると照明光はプリズム30の下面において全反射してしまい、この結果二次元コード21の光学像をカメラ10に結像させることができない。照明光がプリズム30の下面において全反射するときの反射角度は、プリズム30がアクリル樹脂(屈折率=1.49)からなる場合、図4中の(1)に示すように42.2度以上であり、この条件では照明光はプリズム30内の下面と上面との間で全反射を繰り返してしまう。
【0037】
これに対し、照明光がプリズム30の下面で全反射しないようにするために、プリズム30の下面に対する照明光の反射角が上記42.2度未満となるように照明光をプリズム30に入射すると、このとき照明光は図4中の(3)に示すように二次元コード21に照射されるが、その反射光はプリズム30を透過してその上面から筐体17外へ出射してしまい、カメラ10に結像させることができない。
【0038】
そこで、この実施形態のようにプリズム30の下面に密接するように光拡散シート31を貼付すると、プリズム30に入射した照明光はプリズム30から光拡散シート31に入射したのち多方向に拡散されて印刷シート20上の二次元コード21に照射される。そして、その反射光である二次元コード21の光学像は、上記光拡散シート31に入射したのち多方向に拡散され、その一部がプリズム30を介して筐体17内へ導出されてカメラ10に結像される。すなわち、プリズム30だけであれば全反射するはずの二次元コード21の光学像をカメラ10に確実に結像させることができる。
【0039】
また、上記照射光の上記印刷シート20による反射光は、上記光拡散シート31により多方向に拡散されたのちプリズム30に入射され、その一部がプリズム30を透過してその上面からユーザ確認光OL2として筐体17外へ出射される。したがって、この場合もプリズム30だけであれば全反射するはずの二次元コード21の光学像を、ユーザの確認光OL2としてプリズム30から筐体17外へ出射させることができ、これによりユーザが二次元コード21の位置を確認する際の視野角を拡大することができる。
【0040】
さらに、この実施形態では、プリズム30の側面に偏向用プリズム32を密着配置し、上記プリズム30の側面から出射した二次元コード21の光学像を上記偏向用プリズム32により斜視像から平面像に変換してカメラ10に結像させるようにしている。したがって、二次元コード21の光学像をカメラ10に結像される前に斜視像から平面像に変換することができ、これによりカメラ10による受像後にその画像データを斜視像から平面像に変換する処理を行う必要がなくなって、情報読取部14の処理負荷を軽減することができる。
【0041】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態ではプリズム30の下面に光拡散シート31を貼付する場合を例にとって説明したが、プリズム30の下面に例えば細かい凹凸を形成したり、また当該下面の表層部に微粒子を添加することにより、光拡散シート31と同等の作用を持つ層を形成するようにしてもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、テレビジョン受信機又はビデオ記録再生装置のリモートコントローラに印刷情報読取装置を設けた場合を例にとって説明したが、パーソナル・コンピュータや調理機器、カーナビゲーション機器等で使用するリモートコントローラにも、この発明は適用可能である。
【0043】
その他、光透過部材や光拡散部材の材質や形状、厚さ、設置位置、筐体内におけるカメラの設置位置、筐体の形状、印刷情報の種類などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0044】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…印刷情報読取装置(リモートコントローラ)、9…テンキーボタン、10…カメラ、11…読取ボタン、12…送信ボタン、13…通信部、14…情報読取部、15…データ記憶部、16…効果音出力部、30…プリズム、31…光拡散シート、32…偏向用プリズム、17…筐体、20…印刷シート、21…二次元コード(QRコード)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に印刷された印刷情報を読み取る印刷情報読取装置において、
上面部に第1の窓を備えると共に下面部に第2の窓を備え、読み取り時に当該第2の窓が前記媒体上の印刷情報が印刷された範囲を含むように配置される筐体と、
前記筐体内の前記第1の窓と第2の窓との間に配置される非中空の光透過部材と、この光透過部材の下面に密接するように配置された光拡散部材とを有し、前記第1の窓を介して入射しかつ前記光透過部材を透過した照明光を前記光拡散部材により多方向に拡散したのち前記第2の窓を介して前記媒体の印刷情報に照射すると共に、当該照射により生成される前記印刷情報の光学像を前記第2の窓を介して導入して前記光拡散部材により多方向へ拡散したのち前記光透過部材を介して前記筐体内へ導出する光学系と、
前記筐体内に設けられ、前記光学系により筐体内に導出された前記印刷情報の光学像を受光して画像信号に変換し出力するカメラと
を具備することを特徴とする印刷情報読取装置。
【請求項2】
前記光学系は、前記光拡散部材により多方向に拡散した前記印刷情報の光学像の一部を前記光透過部材を介して前記筐体内へ導出して前記カメラに結像させる機能と、前記光拡散部材により多方向に拡散した前記印刷情報の光学像の他の一部を前記光透過部材を介して前記第1の窓から筐体外へ導出してユーザに視認させる機能とを有することを特徴とする請求項1記載の印刷情報読取装置。
【請求項3】
前記光学系は、前記光透過部材の側面に密接するように配置される光偏向部材をさらに備え、この光偏向部材により、前記光透過部材の側面から導出された前記印刷情報の光学像を斜視像から平面像に変換して前記カメラに結像させることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷情報読取装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記光拡散部材の下面の面位置が前記筐体下面の面位置と一致するように配置され、これにより前記光拡散部材の下面が前記媒体上の前記印刷情報が印刷された範囲に当接して当該範囲を平坦化する機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷情報読取装置。
【請求項5】
前記光透過部材は、非中空のプリズムにより構成され、
前記光拡散部材は、前記プリズムと同等の屈折率を有しかつ白濁した半透明の樹脂シートにより構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の印刷情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−113210(P2011−113210A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267823(P2009−267823)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】