説明

印刷方法、版下シート材料および印刷版材料の装着方法

【課題】 本発明の目的は、印刷位置安定性に優れ、かつ初期インキ着肉性、耐刷性および画質に優れる印刷を与える印刷方法、版下シート材料及び印刷版材料の装着方法を提供することにある。
【解決手段】 プラスチック支持体上の一方の面に親水性層および画像形成機能層を有し、他方の面に裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴との間に版下シート材料を介在させて印刷する印刷方法において、該印刷版材料の裏塗り層側の表面比抵抗が1×109Ω〜2×1013Ωであり、且つ該版下シート材料の印刷版材料と接触する面の表面比抵抗が1×108Ω〜2×1015Ωであることを特徴とする印刷方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラスチックを支持体とする印刷版材料の印刷方法、それに用いられる版下シート材料および印刷版材料の印刷機への装着方法に関し、特に特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料の印刷方法、それに用いられる版下シート材料および印刷版材料の印刷機への装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷データのデジタル化に伴い、画像データを直接印刷版に記録するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)が普及してきた。CTPに使用される印刷版材料としては、支持体上に銀塩拡散転写方式の感光性層を設けたもの(例えば特許文献1参照)や、支持体上に親水性層と熱溶融性画像形成層を設け、レーザー露光により画像様に発熱させることで画像になる部分を親水性基材上に溶融固着させるもの(例えば特許文献2参照)等がある。
【0003】
一般に、CTPに使用される印刷版材料は、従来のPS版と同様にアルミ支持体を使用するタイプとフィルム基材上に印刷版としての各種機能層を設けたフレキシブルタイプがあるが、最近、ハンドリングや印刷版の持ち運びに便利なようにプラスチックフィルム支持体を用いたフレキシブルタイプ印刷版の技術が知られている(例えば特許文献3、4、5参照。)。
【0004】
その中でもハロゲン化銀乳剤層及び物理現像核層を有する銀塩拡散転写法を利用した平版印刷版材料を使う印刷方法は簡便にCTPとして利用できるため普及している。
【0005】
これらのポリエステルフィルム支持体を用いた印刷版では、印刷機への装着時の伸びによる歪みを有するという問題があり、これらを改善するために印刷版と印刷機版胴の間に印刷版を固定するシートを介在させる方法が知られている(例えば特許文献6参照。)。
【0006】
しかしながらこれらの従来の技術では、依然として印刷開始から印刷機の版胴上で印刷版が移動して印刷画像が変動する、いわゆる印刷位置安定性が不十分であるという問題があった。
【0007】
また、刷り出し時のインク着肉性や耐刷性等の印刷性能も不十分であるといった問題もあり、特に上記のような銀塩拡散転写方式を用いた印刷方法では、画質が劣化するなどの問題もあり、これらの課題を改善した印刷方法が強く求められていた。
【特許文献1】特開平5−66564号公報
【特許文献2】特開2001−96710号公報
【特許文献3】特開平5−257287号公報
【特許文献4】特開2000−258899号公報
【特許文献5】特開2002−79773号公報
【特許文献6】特開平10−193828号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、印刷位置安定性に優れ、かつ初期インキ着肉性、耐刷性および画質に優れる印刷を与える印刷方法、版下シート材料及び印刷版材料の装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の手段により達成される。
【0010】
(請求項1)
プラスチック支持体上の一方の面に親水性層および画像形成機能層を有し、他方の面に裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴との間に版下シート材料を介在させて印刷する印刷方法において、該印刷版材料の裏塗り層側の表面比抵抗が1×109Ω〜2×1013Ωであり、且つ該版下シート材料の印刷版材料と接触する面の表面比抵抗が1×108Ω〜2×1015Ωであることを特徴とする印刷方法。
【0011】
(請求項2)
前記版下シート材料の膜厚が30〜250μmであることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【0012】
(請求項3)
前記プラスチック支持体がポリエステルフィルムを含有し、該プラスチック支持体の膜厚が120〜300μmで厚み分布が0〜10%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷方法。
【0013】
(請求項4)
前記印刷版材料の親水性層を有する側に、ハロゲン化銀乳剤を含有する層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷方法。
【0014】
(請求項5)
請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷方法に用いられることを特徴とする版下シート材料。
【0015】
(請求項6)
印刷版材料を印刷機の版胴に、版下シート材料を介して装着する印刷版材料の装着方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷方法に用いられることを特徴とする印刷版材料の装着方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記構成により、印刷位置安定性に優れ、かつ初期インキ着肉性、耐刷性および画質に優れる印刷を与える印刷方法、版下シート材料及び印刷版材料の装着方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、プラスチック支持体上の一方の面に親水性層および画像形成機能層を有し、他方の面に裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴との間に版下シート材料を介在させて印刷する印刷方法において、該印刷版材料の裏塗り層側の表面比抵抗が1×109Ω〜2×1013Ωであり、且つ該版下シート材料の印刷版材料と接触する面の表面比抵抗が1×108Ω〜2×1015Ωであることを特徴とする。
【0018】
本発明では、特に印刷版材料の裏塗り層側の表面比抵抗を1×109Ω〜2×1013Ωとし、且つ版下シート材料の印刷版材料側の表面比抵抗を1×108Ω〜2×1015Ωとすることにより、印刷位置安定性に優れ、かつ初期インキ着肉性、耐刷性および画質に優れる印刷を与える印刷方法を得ることができる。
【0019】
(版下シート材料)
本発明に係る版下シート材料は、印刷版材料に接触する面の表面比抵抗が1×108Ω〜2×1015Ωである版下シート材料である。
【0020】
上記印刷版材料に接触する面とは、版下シート材料を印刷機の版胴と印刷版材料との間に介在させたときの版胴に接触する面とは反対側の面であり、印刷版材料の裏塗り層と接触する面である。
【0021】
版下シート材料としては、基材上に表面層を設けたものが好ましく使用される。
【0022】
基材としては、例えば金属板、樹脂シート、金属−樹脂複合シート等が用いられ、より好ましくはアルミニウム板、亜鉛板、チタン板、ステンレス等の金属板、銅−アルミニウム板、銅−ステンレス板、クロム−銅板等のパイメタル板、クロム−銅−アルミニウム、クロム−鉛−鉄板、クロム−銅−ステンレス板等のトライメタル板、PETシート、PEシート、PPシート、ポリエステルシート、ポリイミドシート、ポリアミドシート、アクリル樹脂シート等の樹脂シート、アルミニウム−PETシート、アルミニウム−PEシート、アルミニウム−ポリエステルシート、チタン−PETシート、チタン−PEシート等の金属−樹脂複合シートで、更に好ましくはPETシート、PEシート等の樹脂シートが挙げられる。
【0023】
基材は3400N/mm2以上の初期弾性率を有するシート状のものであることが好ましい。これにより、版下シート材料の凹凸が印圧で凹むことなく有効に機能することができる。
【0024】
基材の厚さは30〜250μm程度が適当である。初期弾性率の測定は、JISK7127に従って行うことができる。
【0025】
本発明において、版下シート材料に用いられる基材は、その厚み分布が0%〜10%であるもの好ましく、0%〜10%であるプラスチックフィルムである場合が特に好ましい。
【0026】
即ち、前記請求項1記載の版下シート材料が、厚み分布が0%〜10%である基材を有することを特徴とする版下シート材料、である場合が好ましい態様である。
【0027】
ここで、基材の厚み分布の測定方法は、一辺が60cmの正方形に切り出した支持体を縦、横それぞれ10cm間隔で碁盤目状に線を引き、この25点の厚みを測定し平均値と最大値、最小値を求め、この最大値と最小値の差を平均値で割り、百分率で表した値である。
【0028】
本発明においては、版下シート材料の印刷版材料に接触する面の表面比抵抗が1×108Ω〜2×1015Ω(23℃相対湿度20%における)であることが必要であり、好ましくは1×108Ω〜1×1013Ω、より好ましくは1×108Ω〜1×1011Ωである。
【0029】
ここで、23℃相対湿度20%におけるとは、23℃相対湿度20%で24時間放置した直後の測定値である。
【0030】
23℃、相対湿度20%で24時間放置した直後とは、例えば、印刷版材料を、23℃相対湿度20%に調湿された部屋に24時間放置し、直後にこれをその部屋にて、表面比抵抗を計る装置(例えば、川口電機(株)社製テラオームメーターモデルVE−30)にて測定することである。
【0031】
本発明において、表面比抵抗値を上記の範囲にするためには、下記の技術手段を適宜組み合わせることにより達成できる。
【0032】
(1)基材上に表面層として導電性層を有すること
導電性層としては、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩など)、蒸着金属層、または米国特許第3,428,451号に記載のような不溶性無機塩及び下記する導電性金属酸化物または米国特許第2,861,056号および同第3,206,312号に記載のようなイオン性ポリマーを含む導電性高分子化合物などの導電性物質を含有する層であるが、下記の導電性金属酸化物、導電性ポリマーあるいは導電性カーボンブラックを含有する場合が好ましい。
【0033】
導電性ポリマーとしては、好ましくは水溶性導電性ポリマーであり、疎水性ポリマー粒子および硬化剤等とともに用いることができる。
【0034】
水溶性導電性ポリマーとしては、スルホン酸基、硫酸エステル基、4級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、カルボキシル基から選ばれる少なくとも1つの導電性基を有するポリマーが挙げられる。導電性基はポリマー1分子当たり5質量%以上存在するものが好ましい。
【0035】
水溶性導電性ポリマー中には、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基、アジリジン基、活性メチレン基、スルフィン酸基、アルデヒド基、ビニルスルホン基を含んでいてもよい。ポリマーの重量平均分子量は3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは3,500〜70,000である。水溶性導電性ポリマーの具体例としては、特開平7−20596号の段落番号0033〜0046に記載の化合物が挙げられる。
【0036】
これらのポリマーは市販又は常法によって得られるモノマーを重合することによって合成することができる。これらの化合物の添加量は0.01g/m2〜10g/m2が好ましく、特に好ましくは0.1g/m2〜5g/m2である。
【0037】
これらの化合物は単独或いは種々の親水性バインダー又は疎水性バインダーと混合させて層を形成させることができる。
【0038】
親水性バインダーとして特に有利に用いられるものはゼラチンン又はポリアクリルアミドであるが、他のものとしては、コロイド状アルブミン、セルロースアセテート、セルロースニトレート、ポリビニルアルコール、加水分解されポリビニルアセテート、フタル化ゼラチンが挙げられる。
【0039】
疎水性バインダーとしては分子量2万〜100万以上のポリマーが含まれ、スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸3元共重合ポリマー、ブチルアクリレート−アクリルニトリル−アクリル酸3元共重合ポリマー、メチルメタクリレート−エチルアクリレート−アクリル酸3元共重合ポリマーが挙げられる。
【0040】
導電性層は疎水性ポリマー粒子を含んでもよい。導電性層に含有できる疎水性ポリマー粒子は、実質的に水に溶解しない所謂ラテックス粒子で構成され、この疎水性ポリマーは、特に限定されずスチレン、スチレン誘導体、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、オレフィン誘導体、ハロゲン化エチレン誘導体、ビニルステル誘導体、アクリロニトリル等の中から任意の組み合わせで選ばれるモノマーを重合して得られる。特にスチレン誘導体、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートが少なくとも30モル%含有されているのが好ましく、特に50モル%以上が好ましい。
【0041】
導電性層に用いることができる硬化剤としてはヒドロキシ含有エポキシ硬化剤が好ましいがポリグリシドールとエピハロヒドリンの反応生成物〔CA〕がより好ましい。これは合成法上、混合物であると考えられるが、ヒドロキシ基の数とエポキシ基の数をおさえることにより本発明の効果を得ることができるため、混合物であるか否かは重要ではなく、従って単離体でも混合物でもよい。具体例として特開平7−20596号公報段落番号0062〜0073の化合物が挙げられる。
【0042】
次に導電性化合物としての金属酸化物を説明する。金属酸化物として好ましいのは、結晶性の金属酸化粒子であるが、酸素欠陥を含むもの及び用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むもの等は一般的に言って導電性が高いので特に好ましく、特に後者の用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むものは、性能変動を与えないので特に好ましい。
【0043】
金属酸化の例としては、ZnO2、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V25等或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO2、TiO2、SnO2が好ましい。
【0044】
異種原子を含む例としては例えばSnOに対してSb等の添加あるいはTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は0.01〜30モル%の範囲が好ましいが、0.1〜10モル%の範囲であれば特に好ましい。
【0045】
本発明に用いられる金属酸化物の粒子は、導電性を有するものであり、その体積抵抗率は107Ωcm以下、特に105Ωcm以下であることが好ましい。この酸化物については特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号等に記載されている。
【0046】
金属酸化物の粒子はバインダー中に分散又は溶解させて用いられる。使用できるバインダーはフィルム形成能を有するものであれば特に限定されない。
【0047】
金属酸化物をより効果的に使用して導電性層の抵抗を下げるために、導電性層中における金属酸化物の体積含有率は高い方が好ましいが、層としての強度を十分に持たせるために最低5%程度のバインダーが必要であるので、金属酸化物の体積百分率は5〜95%の範囲が好ましい。
【0048】
金属酸化物の使用量は0.005g/m2〜3g/m2が好ましく、より好ましくは0.01g/m2〜2g/m2である。これにより帯電防止性が得られる。
【0049】
カーボンブラックとしては、予め加熱した反応炉中にアセチレンガスを通じ、熱分解を起こさせると、炉温が上昇しその後は自動的に分解反応が進む連続熱分解法等により製造されるアセチレンブラック、油、タール、樹脂等を邪魔しない焔で不完全燃焼した煤であるランプブラック、その他ハイストラクチャーファーネスブラック等の導電性カーボンブラックが挙げられ、1種単独又は2種以上の複合も可能であり、粒径が100μm以下が好ましく、特に0.01〜2μmが好ましい。
【0050】
導電性層の厚さは、0.1μm〜5μmが好ましく、0.2μm〜3μmが特に好ましい。
【0051】
(2)版下シート材料の印刷版材料と接触する面の中心線平均粗さRaが0.25μm以上であること
本発明において中心線平均粗さRaとは、測定する試料を23℃相対湿度48%の条件下で24時間放置した後に、23℃相対湿度48%の条件下で測定した三次元粗さ測定での中心線平均粗さRaを言い、JIS表面粗さのJIS−B−0601により定義される。
【0052】
三次元デジタル測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)は、特定のサンプリング長で、X方向にM点、Y方向にN点、合計でMN点の高さ測定を行って、粗さ中心面の高さを0とした粗さ曲面を求め、X方向がk点目で、Y方向がj点目の測定点における高さZをf(Zjk)として、下式に従って求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0053】
【数1】

【0054】
三次元デジタル測定による中心線(中心面)平均粗さ(Ra)を測定することのできる測定装置としては、例えば、WYKO社製RSTPLUS非接触三次元微小表面形状測定システム等を挙げることができる。
【0055】
本発明において、版下シート材料の印刷版材料の裏塗り層側と接触する面の中心線平均粗さRaは0.25μm以上であり、好ましくは0.25〜3.0μmである。Raをこの範囲にするには、版下シート材料の基材を機械的に凹凸を付けたり、版下シートの構成層中にマット剤を含有することで達成できる。
【0056】
版下シート材料の基材に凹凸を付ける機械的方法としては、粒子を吹き付けて表面を祖面化する方法などが知られている。また、版下シートの構成層中に含有できるマット剤としては平均粒径1μm以上、20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。好ましく用いられるマット剤としては、新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤が挙げられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば、金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えば、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号明細書等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートが挙げられる。これらマット剤の添加量は1m2当たり0.1g以上、10g未満であることが好ましい。
【0057】
本発明の版下シート材料を版胴に装着(固定)するには、従来公知の方法が用いられる。例えば、版下シート材料の支持体の裏面に、スプレー糊、両面テープ等の接着剤若しくは粘着剤を付与する方法、あるいは、版下シート材料の先端及び後端を版胴に設けた爪部によって係止する方法等が挙げられる。また、これらを組み合わせた方法を用いることもできる。
【0058】
本発明に係る版下シート材料の膜厚としては、特に30〜250μmであることが好ましい。膜厚の定義は上記と同様である。
【0059】
本発明に係る印刷版材料の支持体はプラスチック支持体であり、特に好ましくは厚み分布が10%以下であるポリエステルフィルム支持体を用いることが好ましい。以下に、ポリエステルフィルム支持体について説明する。
【0060】
〔ポリエステルフィルム支持体〕
プラスチック支持体として用いられるポリエステルフィルム支持体は厚み分布が10%以下のものが好ましく、さらに8%以下が好ましく、特に6%以下が好ましい。なお、0%が最も好ましい。
【0061】
本発明において厚み分布とは、一辺が60cmの正方形に切り出した支持体を縦、横それぞれ10cm間隔で碁盤目状に線を引き、この36点の厚みを測定し平均値と最大値、最小値を求め、この最大値と最小値の差を平均値で割り、百分率で表した値である。
【0062】
ポリエステルフィルム支持体に使用されるポリエステルは、特に限定されるものではないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を主要な構成成分とするもので、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以降、略してPETという場合がある)、ポリエチレンナフタレート(以降、PENと略すことがある)等のポリエステルである。好ましくはPET、またはPETからなる部分を主要な構成成分として、ポリエステル全体に占める構成要素の質量比率が50質量%以上を有する共重合体またはブレンドされたポリエステルである。
【0063】
PETはテレフタル酸とエチレングリコール、またPENはナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを構成成分として重合されたものである。PETまたはPENを構成するジカルボン酸またはジオールを他の適当な1種、または2種以上の第3成分を混合して重合したものでもよく、適当な第3成分としては、2価のエステル形成官能基を有する化合物で、例えば、ジカルボン酸の例として次のようなものを挙げることができる。テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルチオエーテルジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを挙げることができる。また、グリコールの例としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビスフェノールフルオレンジヒドロキシエチルエーテル、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、シクロヘキサンジオールなどを挙げることができる。第3成分としては多官能性カルボン酸や多価アルコールも混合することができるが、これらは全ポリエステル構成成分に対して0.001〜5質量%程度混合することができる。
【0064】
ポリエステルの固有粘度は0.5〜0.8であることが好ましい。また、固有粘度の異なるものを混合して使用してもよい。
【0065】
ポリエステルの重合方法は特に限定があるわけではなく、従来公知のポリエステルの重合方法に従って製造できる。例えば、ジカルボン酸成分をジオール成分と直接エステル化反応させ、ジオールの片方の水酸基をジカルボン酸にジエステル化し、更に一方のジオールを減圧下加熱して余剰のジオールを留去することにより重合させる直接エステル化法、またジカルボン酸成分としてジアルキルエステル(例えば、ジメチルエステル)を用いて、これとジオール成分とでエステル交換反応させてアルキルアルコール(例えば、メタノール)を留出させてジオールの片方の水酸基をジカルボン酸にエステル化し、更に余剰のジオール成分を減圧下で加熱して留去することにより重合させるエステル交換法を用いることができる。
【0066】
触媒としては、通常のポリエステルの合成に使用するエステル交換触媒、重合反応触媒及び耐熱安定剤を用いることができる。例えば、エステル交換触媒としてはCa(OAc)2・H2O、Zn(OAc)2・2H2O、Mn(OAc)2・4H2O、Mg(OAc)2・4H2O等を挙げることができ、重合反応触媒としてはSb23、GeO2を挙げることができる。また、耐熱安定剤としてはリン酸、亜リン酸、PO(OH)(CH33、PO(OC653、P(OC653等を挙げることができる。また、合成時の各過程で着色防止剤、結晶核剤、すべり剤、安定剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、粘度調節剤、透明化剤、帯電防止剤、pH調整剤、染料、顔料などを添加させてもよい。
【0067】
ポリエステルフィルム支持体の膜厚は、印刷適正、取り扱い性の面から120〜300μmの範囲であることが好ましい。
【0068】
即ち本発明においては、プラスチック支持体がポリエステルフィルムを含有し、このポリエステルの膜厚が120〜300μmで厚み分布が0〜10%である場合が特に好ましい態様である。
【0069】
(支持体の作製方法)
本発明に係る支持体の平均膜厚及び厚み分布を上記の範囲に調整するため、本発明では下記に記載のような製膜処理が施されることが好ましい。
【0070】
支持体の製膜手段としては、熱可塑性樹脂を融点(Tm)〜Tm+50℃の間で熔融後、焼結フィルタ等で濾過された後、T−ダイから押出し、ガラス転位温度(Tg)−50℃〜Tgに温調したキャスティングドラム上で未延伸シートを形成する。
【0071】
このとき、厚み分布を上記の範囲にするには、静電印加法等を用いるのが好ましい。未延伸シートをTg〜Tg+50℃の間で2〜4倍に縦延伸する。また、厚み分布を上記の範囲に調整するもう一つの方法としては、縦延伸を多段延伸するのが好ましい。このとき、前段延伸より後段延伸の温度を1〜30℃の範囲で高く調整することが好ましく、更に好ましくは2〜15℃の範囲で高く調整しながら延伸するのが好ましい。
【0072】
前段延伸の倍率は後段延伸の倍率の0.25〜0.7倍が好ましく、更に好ましくは0.3〜0.5倍である。この後、Tg−30℃〜Tgの温度範囲で、5〜60秒、より好ましくは10〜40秒間保持した後、横方向にTg〜Tg+50℃の間で2.5倍〜5倍に延伸することが好ましい。
【0073】
この後、(Tm−50℃)〜(Tm−5℃)で5〜120秒、チャックで把持した状態で熱固定を行なう。このとき、幅方向に0〜10%チャック間隔を狭めること(熱緩和)も好ましい。これを冷却後、端部に10〜100μmのナーリングを付けた(ナーリング高さを設けるともいう)後、巻取り、多軸延伸フィルムを得る等の方法が好ましい。
【0074】
(支持体の熱処理)
本発明においては、印刷時の寸法を安定化させカラー印刷時の色ズレを防ぐために、延伸及び熱固定後のポリエステルフィルムの熱処理をすることが好ましい。熱処理は熱固定終了後冷却して巻き取った後に、別工程で巻きほぐしてから、以下のような手段で達成するのがよい。熱処理する方法としては、テンターのようなフィルムの両端をピンやクリップで把持する搬送方法、複数のロール群によるロール搬送方法、空気をフィルムに吹き付けて浮揚させるエアー搬送などにより搬送させる方法(複数のスリットから加熱空気をフィルム面の片面あるいは両面に吹き付ける方法)、赤外線ヒーターなどによる輻射熱を利用する方法、加熱した複数のロールと接触させる方法などを単独または複数組み合わせて熱処理する方法、またフィルムを自重で垂れ下がらせ、下方で巻き等搬送方法等を単独あるいは複数組み合わせて用いることが好ましい。
【0075】
熱処理の張力調整は、巻き取りロール及び/または送り出しロールのトルクを調整すること、及び/または工程内にダンサーロールを設置し、これに加える荷重を調整することで達成できる。熱処理中及び/または熱処理後の冷却時に張力を変化させる場合、これらの工程前後及び/または工程内にダンサーロールを設置し、それらの荷重を調整することで所望の張力状態を設定してもよい。また、振動的に搬送張力を変化させるには、熱処理ロール間スパンを小さくすることにより有効に行うことができる。
【0076】
熱処理は熱収縮の進行を妨げずに、その後の熱処理(熱現像)時の寸法変化を小さくする上で、出来るだけ搬送張力を低くし、熱処理時間を長くすることが望ましい。処理温度としてはポリエステルフィルムのTg+50〜Tg+150℃の温度範囲が好ましく、その温度範囲で、搬送張力としては5Pa〜1MPaが好ましく、より好ましくは5Pa〜500kPa、更に好ましくは5Pa〜200kPaであり、処理時間としては30秒〜30分が好ましく、より好ましくは30秒〜15分である。上記の温度範囲、搬送張力範囲及び処理時間にすることにより、熱処理時に支持体の熱収縮の部分的な差により支持体の平面性が劣化することもなく、搬送ロールとの摩擦等により細かいキズ等の発生も押さえることができる。
【0077】
熱処理は所望の寸法変化率を得るために、少なくとも1回は行うことが好ましく、必要に応じて2回以上実施することも可能である。
【0078】
熱処理したポリエステルフィルムをTg付近の温度から常温まで冷却してから巻き取り、この時の冷却による平面性の劣化を防ぐために、Tgを跨いで常温まで下げるまでに、少なくとも−5℃/秒以上の速度で冷却するのが好ましい。
【0079】
熱処理は上述の下引層を塗設後に行うのがよい。例えば、押し出し〜熱固定〜冷却の間でインラインで下引層を塗設し、一旦巻き取ってから、別工程で熱処理するのが好ましい。また、熱固定後一旦巻き取った後、別工程で下引を塗布・乾燥した後に下引き済みポリエステルフィルム支持体を連続して平坦に保持したままの状態で熱処理を行ってもよい。更には、バック層、導電層、易滑性層、下引き層などの各種の機能性層を塗布・乾燥した後に上記と同様な熱処理を行ってもよい。
【0080】
(支持体の含水率)
露光装置などにおける搬送を良好に行うためには、支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましい。
【0081】
支持体の含水率とは、下記式で表されるD’である。
【0082】
D’(質量%)=(w’/W’)×100
式中、W’は25℃、60%相対湿度の雰囲気下で調湿平衡にある支持体の質量、w’は25℃、60%相対湿度の雰囲気下で調湿平衡にある支持体の水分含量を表す。
【0083】
支持体の含水率は0.5質量%以下であることが好ましく、0.01〜0.5質量%であることが更に好ましく、特に好ましくは0.01〜0.3質量%である。
【0084】
支持体の含水率を0.5質量%以下に制御する手段としては、(1)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する直前に支持体を100℃以上で熱処理する、(2)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する工程の相対湿度を制御する、(3)画像形成機能層及びその他の層の塗布液を塗布する前に支持体を100℃以上で熱処理し、防湿シートでカバーして保管し、開封後直ちに塗布する、等が挙げられる。これらを2以上組み合わせて行ってもよい。
【0085】
(支持体への易接着処理、下引き層塗布)
プラスチック支持体は、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下引き層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0086】
下引き層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等を支持体上に設けること等が好ましい。
【0087】
また、本発明のプラスチック支持体としては、ポリエステルフィルム支持体が用いられるが、ポリエステルフィルムと金属板(例えば、鉄、ステンレス、アルミニウムなど)やポリエチレンで被覆した紙などの材料(複合基材ともいう)を適宜貼り合わせた複合支持体を用いることもできる。これらの複合基材は、塗布層を形成する前に貼り合わせてもよく、また塗布層を形成した後に貼り合わせてもよく、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせてもよい。
【0088】
(微粒子)
また、上記の支持体中にはハンドリング性向上のため0.01〜10μmの微粒子を1〜1000ppm添加することが好ましい。
【0089】
ここで、微粒子としては、有機物及び無機物のいずれでもよい。例えば、無機物としては、スイス特許第330,158号明細書等に記載のシリカ、仏国特許第1,296,995号明細書等に記載のガラス粉、英国特許第1,173,181号明細書等に記載のアルカリ土類金属またはカドミウム、亜鉛等の炭酸塩、等を用いることができる。有機物としては、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号公報等に記載のポリスチレン或いはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号明細書等に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートの様な有機微粒子を用いることができる。微粒子の形状は、定形、不定形どちらでもよい。
【0090】
本発明においては、印刷版材料は支持体上に少なくとも親水性層、画像形成機能層及び裏塗り層を有する構成をとり、裏塗り層側の表面比抵抗が1×109Ω〜2×1013Ω(23℃相対湿度20%における)であることが特徴である。
【0091】
ここで、23℃相対湿度20%におけるとは、23℃相対湿度20%で24時間放置した直後の測定値である。
【0092】
23℃、相対湿度20%で24時間放置した直後とは、例えば、印刷版材料を、23℃相対湿度20%に調湿された部屋に24時間放置し、直後にこれをその部屋にて、表面比抵抗を計る装置(例えば、川口電機(株)社製テラオームメーターモデルVE−30)にて測定することである。
【0093】
本発明において、表面比抵抗値を上記の範囲にするためには、下記の技術手段を複数適時選択することで達成できる。
(1)支持体と画像形成機能層(ハロゲン化銀乳剤層はとりあえずとりました、1クレに対応)との間または裏塗り層側に導電性層を有すること
(2)裏塗り層側の乾燥膜厚の合計が1〜8μmであること
(3)裏塗り層側の少なくとも1層に有機マット剤を含有すること
以下、上記の各達成手段の詳細について説明する。
【0094】
(1)支持体と画像形成機能層との間または裏塗り層側に導電性層を有すること
導電性層としては、例えば、可溶性塩(例えば、塩化物、硝酸塩など)、蒸着金属層、米国特許第3,428,451号明細書に記載のような不溶性無機塩、下記に示す導電性金属酸化物、または米国特許第2,861,056号明細書および同3,206,312号明細書に記載のようなイオン性ポリマー技術を含む導電性高分子化合物などの導電性物質を含有する層を挙げることができるが、その中でも、下記に示す導電性金属酸化物あるいは導電性高分子化合物を含有する導電性層が好ましい。好ましい導電性物質は、下記に示す導電性金属酸化物である。
【0095】
導電性化合物としては、導電性ポリマー、金属酸化物または導電性カーボンブラック等を挙げることができる。
【0096】
導電性ポリマーとして、好ましくは水溶性導電性ポリマーであり、疎水性ポリマー粒子および硬膜剤等とともに用いることで帯電防止機能を有するポリマーである。水溶性導電性ポリマーとしては、スルホン酸基、硫酸エステル基、4級アンモニウム塩、3級アンモニウム塩、カルボキシル基から選ばれる少なくとも1つの導電性基を有するポリマーが挙げられる。この時、導電性基は、ポリマー1分子当たり5質量%以上を必要とする。水溶性導電性ポリマー中には、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、アジリジン基、活性メチレン基、スルフィン酸基、アルデヒド基、ビニルスルホン基を含んでいてもよい。ポリマーの分子量は3,000〜100,000が好ましく、より好ましくは3,500〜70,000である。水溶性導電性ポリマーの具体例としては、例えば、特開平7−20596号公報の段落番号〔0033〕〜同〔0046〕に記載の化合物を挙げることができる。
【0097】
これらの導電性ポリマーは、市販または常法によって得られるモノマーを重合することによって合成することができる。これらの導電性ポリマーの添加量は0.01〜10g/m2が好ましく、特に好ましくは0.1〜5.0g/m2である。これらの導電性ポリマーは、単独或いは公知の各種親水性バインダーまたは疎水性バインダーと混合させて導電性層を形成させることができる。親水性バインダーとして特に有利に用いられるものは、ゼラチンンまたはポリアクリルアミドであるが、他のものとしては、コロイド状アルブミン、セルロースアセテート、セルロースニトレート、ポリビニルアルコール、加水分解されポリビニルアセテート、フタル化ゼラチンが挙げられる。また、疎水性バインダーとしては、分子量2万〜100万以上のポリマーが含まれ、スチレン−ブチルアクリレート−アクリル酸3元共重合ポリマー、ブチルアクリレート−アクリルニトリル−アクリル酸3元共重合ポリマー、メチルメタクリレート−エチルアクリレート−アクリル酸3元共重合ポリマーが挙げられる。
【0098】
導電性層に用いられる疎水性ポリマー粒子は実質的に水に溶解しない、所謂ラテックス粒子で構成され、この疎水性ポリマーとしては特に制限はなく、例えば、スチレン、スチレン誘導体、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、オレフィン誘導体、ハロゲン化エチレン誘導体、ビニルステル誘導体、アクリロニトリル等の中から任意の組み合わせで選ばれるモノマーを重合して得られる。特に、スチレン誘導体、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレートが少なくとも30モル%含有されているのが好ましく、特に50モル%以上含有されているものが好ましい。
【0099】
疎水性ポリマーをラテックス状にするには、乳化重合法や、固体状のポリマーを低沸点溶媒に溶かして乳化分散した後、溶媒を溜去する分散法を挙げることができ、いずれの方法も用いることができるが、得られるラテックス粒子の粒径が細かく、且つ粒径の揃ったものが得られるという観点から乳化重合法が好ましい。この時、疎水性ポリマーの分子量は3000以上であればよい。疎水性ポリマーの具体例としては、例えば、特開平7−20596号公報の段落番号〔0052〕〜同〔0057〕に記載の各化合物が挙げられる。疎水性ポリマーの添加量は好ましくは0.01〜10g/m2であり、特に好ましくは0.1〜5.0g/m2である。
【0100】
上述の乳化重合法においては界面活性剤を用いることができ、また分散法において用いることができる分散剤としては、主にはノニオン系界面活性剤が用いられ、具体的にはポリアルキレンオキサイド化合物が好ましく用いられる。ポリアルキレンオキサイド化合物とは、分子中に少なくとも3以上、多くても500以下のポリアルキレンオキサイド鎖を含む化合物をいい、例えば、ポリアルキレンオキサイドと脂肪族アルコール、フェノール類、脂肪酸、脂肪族メルカプタン、有機アミンなどの活性水素原子を有する化合物との縮合反応により、またはポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレン重合体などのポリオールに脂肪族メルカプタン、有機アミン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどを縮合させて合成することができる。上記のポリアルキレンオキサイド化合物は、分子中のポリアルキレンオキサイド鎖が1個だけではなく2ヶ所以上に分割されたブロック共重合体であってもよい。この際、ポリアルキレンオキサイドの合計の重合度としては、3以上、100以下が好ましい。本発明において用いることのできる上記ポリアルキレンオキサイド化合物の具体例として、例えば、特許第2805012号公報に記載の化合物等が挙げられる。
【0101】
導電性層に用いることができる硬膜剤としては、ヒドロキシル基含有エポキシ硬膜剤が好ましく、ポリグリシドールとエピハロヒドリンの反応生成物〔CA〕がより好ましい。上記化合物は、合成法上、混合物であると考えられるが、ヒドロキシル基の数とエポキシ基の数を制御することにより、本発明の効果を得ることができるため、混合物であるか否かは重要ではなく、従って単離体でも混合物でもよい。具体例としては、特開平7−20596号公報の段落番号〔0062〕〜同〔0073〕に例示してある化合物が挙げられる。
【0102】
次に、導電性化合物としての金属酸化物について説明する。
【0103】
金属酸化物として好ましいのは結晶性の金属酸化粒子であるが、酸素欠陥を含むもの及び用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含むもの等は、一般的に導電性が高いので好ましく、用いられる金属酸化物に対してドナーを形成する異種原子を少量含む後者は、ハロゲン化銀乳剤に対しカブリ発生等の悪影響を与えないので、特に好ましい。
【0104】
金属酸化物としては、例えば、ZnO2、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、V25等やこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO2、TiO2、SnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えば、SnOに対してSb等の添加あるいはTiO2に対しては、Nb、Ta等の添加が効果的である。これら異種原子の添加量は、0.01〜30モル%の範囲が好ましく、0.1〜10モル%の範囲が特に好ましい。
【0105】
本発明に用いられる金属酸化物の粒子は、導電性を有するものであり、その体積抵抗率は1×107Ωcm以下、特に1×105Ωcm以下であることが好ましい。この金属酸化物の具体例については、例えば、特開昭56−143431号、同56−120519号、同58−62647号等の各公報に記載されている。金属酸化物の粒子は、バインダー中に分散または溶解させて用いられる。使用できるバインダーは、フィルム形成能を有するものであれば特に限定されない。
【0106】
金属酸化物をより効果的に使用して導電性層の表面比抵抗値を下げるため、導電性層中における金属酸化物の体積含有率は高い方が好ましいが、導電性層としての強度を十分に付与させるためには、最低でも5質量%程度のバインダーが必要であるため、金属酸化物の体積百分率としては5〜95%の範囲が好ましい。金属酸化物の添加量は0.05〜10g/m2が好ましく、より好ましくは0.01〜5.0g/m2である。上記で規定した添加量範囲とすることにより、所望の帯電防止性が得られる。
【0107】
本発明において用いることのできる導電性カーボンブラックは、予め加熱した反応炉中にアセチレンガスを通じて熱分解を起こさせると、炉温が上昇しその後は自動的に分解反応が進む連続熱分解法等により製造されるアセチレンブラック、油、タール、樹脂等を、邪魔しない焔で不完全燃焼した煤であるランプブラック、その他ハイストラクチャーファーネスブラック等の導電性カーボンブラックであり、1種または2種以上の複合も可能であり、粒径が100μm以下が好ましく、特に0.01〜2μmが好ましい。粒径が100μm以上では、材料の製造時に塗布物を汚したり、十分な分散度が達成できずに、均一にカーボンブラックを含有させることができないため、商品価値を失う。なお、本発明に係る導電性カーボンブラックは、黒色でありハレーション防止効果も兼ね備えている。
【0108】
上記説明した各化合物の中でも、本発明に係る導電性化合物としては、導電性ポリマーまたは金属酸化物が好ましい。
【0109】
導電性化合物を含有する層は、支持体と画像形成機能層との間または裏塗り層を有する面側に設けることが好ましいが、特に好ましくは裏塗り層を有する面側に導電性層を塗設することが好ましい。
【0110】
(2)裏塗り層面側の総乾燥膜厚を1〜8μmとすること
本発明においては、プラスチック支持体を挟んで、画像形成機能層を有する面とは反対側の面に、少なくとも1層の裏塗り層を有する。
【0111】
本発明に係る裏塗り層は反射防止機能を有する層であっても、前記の導電性化合物を含む導電性層であってもよく、また導電性層の上に更に1層以上の他の機能層を設けてもよい。
【0112】
本発明における好ましい態様としては、導電性層及び1層以上の保護層を有することであり、裏塗り層を有する面側全層の総乾燥膜厚としては、1〜8μmであることが好ましい。
【0113】
(3)裏塗り層面側の少なくとも1層中に有機マット剤を含有すること
本発明においては、裏塗り層側のいずれかの層に有機マット剤を含有することが好ましい。その中でも裏塗り層側の最外層に添加されることが特に好ましい。有機マット剤の例としては、有機ポリマーからなる有機ポリマーマット剤が好ましい。本発明に係る有機マット剤に用いられるポリマーは、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチロール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、アセタール樹脂、繊維素樹脂等から選ばれる。これらの樹脂が、水中あるいはゼラチンやポリアクリルアミドなどの水溶性ポリマー中に0.5〜20μm、好ましくは1〜10μmの平均粒子サイズに分散された状態で用いられるのが好ましい。
【0114】
以下に有機マット剤に用いられるポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0115】
1)アクリル樹脂:ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート
2)共重合アクリル樹脂:1)で挙げた樹脂のモノマーと塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、スチレン、アクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸との共重合樹脂
3)塩化ビニル樹脂:ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと酢酸ビニル、塩化ビニリデン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸エステル、アクリロニトリルとの共重合樹脂
4)ポリ酢酸ビニル及びその部分鹸化樹脂
5)スチロール樹脂:ポリスチレン、スチレンとアクリロニトリルの共重合樹脂
6)塩化ビニリデン樹脂:ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニリデンとアクリロニトリル共重合樹脂
7)アセタール樹脂:ポリビニルホルマール、ポリブチルブチラール
8)繊維素樹:酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース
9)メラミン樹脂:メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂
これらの有機マット剤の分散物はポリマーを有機溶媒に溶解し、激しく撹拌しながら水又はゼラチン水溶液と混合し分散する方法、あるいは乳化重合、沈殿重合、又はパール重合によってモノマーを重合しつつ粒子状に析出する方法、あるいはマット剤の微粒子粉末を、攪拌機、ホモジナイザー、コロイドミル、フロージェットミキサー、超音波分散機等を用いて水やゼラチン水溶液に分散することで得られる。
【0116】
有機マット剤の平均粒径は好ましくは0.5〜10μm、より好ましくは0.7〜7μm、更に好ましくは1〜5μmである。尚、本発明に係る有機マット剤の平均粒径は電子顕微鏡を用い、投影面積から円相当径を算出して求められる。有機マット剤の添加層に対する塗布量は、0.01〜1g/m2、特に0.05〜0.5g/m2が好ましい。
上記有機マット剤は親水性結合剤または疎水性結合剤に含有されて塗設される。本発明で用いられる親水性結合剤としては、親水性のものなら特に限定はされないが、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂であるポリビニルアルコール(PVA)、セルロース系樹脂(メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等)、キチン類、及びデンプン;エーテル結合を有する樹脂であるポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリビニルエーテル(PVE);アミド基又はアミド結合を有する樹脂であるポリアクリルアミド(PAAM)及びポリビニルピロリドン(PVP)等を挙げることができる。また、解離性基としてカルボキシル基を有するポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩及びゼラチン類;スルホン基を有するポリスチレンスルホン酸塩;アミノ基、イミノ基、第3アミン及び第4級アンモニウム塩を有するポリアリルアミン(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、エポキシ化ポリアミド(EPAm)、ポリビニルピリジン及びゼラチン類を挙げることができる。
【0117】
疎水性結合剤は、結合剤として疎水性のものなら特に限定されないが、例えばα,β−エチレン性不飽和化合物に由来するポリマー、例えばポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、塩化ビニルと塩化ビニリデンのコポリマー、塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマー、ポリ酢酸ビニル及び部分的に加水分解されたポリ酢酸ビニル、出発材料としてポリビニルアルコールから作られ、繰り返しビニルアルコール単位の一部のみがアルデヒドと反応していることができるポリビニルアセタール、好ましくはポリビニルブチラール、アクリロニトリルとアクリルアミドのコポリマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン及びポリエチレン又はそれらの混合物等が挙げられる。
【0118】
また疎水性結合剤は仕上がり印刷版材料表面が疎水性であれば、特開2002−258469号公報の段落0033〜0038に記載されている水分散系樹脂(ポリマーラテックス)から得られたものでもよい。
【0119】
また裏塗り層に有機マット剤を添加すると、印刷機の版胴への取り付けやすさが向上したり、印刷版材料の経時保存中での画像故障防止という効果も得られる。
【0120】
本発明における印刷版材料、プラスチック支持体上に露光後または露光現像処理後に印刷可能ならしめる画像形成機能層を有するものである。
【0121】
好ましくは、レーザー記録またはサーマルヘッド記録される特表平8−507727号公報や特開平6−186750号公報に記載のようなアブレーションタイプと特開平9−123387号公報や特開2002−361996号公報に記載のような熱融着画像層機上現像タイプ及び熱溶融転写タイプの印刷版材料、または特開平4−261539号公報に記載されているような銀塩拡散転写法を利用した印刷版である。
【0122】
その中でも、本発明の構成は、画像形成機能層側の少なくとも1層にハロゲン化銀乳剤を含有する銀塩拡散転写法を利用した平版印刷版が好ましい。
【0123】
即ち、本発明においては、本発明に係る印刷版材料が、画像形成機能層としてハロゲン化銀乳剤層を有する印刷版材料である場合に有効である。
【0124】
本発明に係るハロゲン化銀乳剤を有する層は、ハロゲン化銀を有する写真乳剤を有し、これに用いられるハロゲン化銀のハロゲン組成としては塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀の何れかが用いられるが、好ましくは塩化銀を50モル%以上含有する塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀が用いられる。
【0125】
写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Makingand Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。即ち、酸性法、中性法、アンモニア法等の何れでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形成としては、片側混合法、同時混合法、それらの組合せ等の何れを用いてもよい。
【0126】
ハロゲン化銀は、照度不軌改良や改良調整のために、元素周期律表の6族から10族に属する金属のイオン又は錯体イオンを含有することが好ましい。上記の金属としては、W,Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0127】
これらの金属は錯体の形でハロゲン化銀に導入できる。本発明においては、遷移金属錯体は、下記一般式で表される6配位錯体又は錯体イオンが好ましい。
【0128】
一般式 〔ML6〕m
式中、Mは元素周期表の6〜10族の元素から選ばれる遷移金属、Lは架橋配位子、mは0、−、3−又は2−を表す。
【0129】
Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲン化物(弗化物、塩化物、臭化物及び沃化物)、シアン化物、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つ又は二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。Mとして特に好ましい具体例は、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、イリジウム(Ir)及びオスミウム(Os)である。以下に遷移金属配位錯体の具体例を示す。
【0130】
1:〔RhCl63-
2:〔RuCl63-
3:〔ReCl63-
4:〔RuBr63-
5:〔OsCl63-
6:〔IrCl62-
7:〔Ru(NO)Cl52-
8:〔RuBr4(H2O)〕2-
9:〔Ru(NO)(H2O)Cl4-
10:〔RhCl5(H2O)〕2-
11:〔Re(NO)Cl52-
12:〔Re(NO)(CN)52-
13:〔Re(NO)Cl(CN)42-
14:〔Rh(NO)2Cl4-
15:〔Rh(NO)(H2O)Cl4-
16:〔Ru(NO)(CN)52-
17:〔Fe(CN)63-
18:〔Rh(NS)Cl52-
19:〔Os(NO)Cl52-
20:〔Cr(NO)Cl5〕2−
21:〔Re(NO)Cl5〕−
22:〔Os(NS)Cl4(TeCN)〕2-
23:〔Ru(NS)Cl52-
24:〔Re(NS)Cl4(SeCN)〕2-
25:〔Os(NS)Cl(SCN)4〕2-
26:〔Ir(NO)Cl5〕2-
27:〔Ir(NS)Cl5〕2-
これらの金属又は錯体イオンは一種類でもよいし、同種の金属及び異種の金属を二種以上併用してもよい。これらの金属のイオン又は錯体イオンの含有量としては、一般的にはハロゲン化銀1モル当たり1×10-9〜1×10-2モルが適当であり、好ましくは1×10-8〜1×10-4モルである。
【0131】
これらの金属のイオン又は錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に渡って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号の各公報等に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0132】
好ましくは粒子内部に分布をもたせることができる。これらの金属化合物は、水或いは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物の粉末の水溶液若しくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液又は水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、或いは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、或いはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオン又は錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。特に、金属化合物の粉末の水溶液若しくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後又は物理熟成時途中若しくは終了時又は化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0133】
感光性ハロゲン化銀粒子はヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法の水洗により脱塩することができる。
【0134】
感光性ハロゲン化銀粒子は化学増感されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては当業界でよく知られているように硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法を用いることができる。硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法に好ましく用いられる化合物としては公知の化合物を用いることができるが、特開平7−128768号公報等に記載の化合物を使用することができる。貴金属増感法に好ましく用いられる化合物としては例えば塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、金セレナイド、或いは米国特許第2,448,060号明細書、英国特許第618,061号明細書などに記載されている化合物を好ましく用いることができる。還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に、例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、乳剤のpHを7以上又はpAgを8.3以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。また、粒子形成中に銀イオンのシングルアディション部分を導入することにより還元増感することができる。
【0135】
また、ハロゲン化銀乳剤は増感色素によって所望の波長に分光増感されることが好ましい。特に本発明の平版印刷版材料をCTPに用いる版材として利用する場合は、レーザーを搭載した装置で露光されるため、ヘリウム−ネオンレーザー用分光増感、アルゴンレーザー用分光増感、LED用分光増感および/または半導体レーザー用分光増感されていることが好ましい。本発明に用いられる好ましい増感色素は、ヘリウム−ネオンレーザー用、赤色LED用および赤半導体レーザーとしては特開2000−122297号公報段落番号〔0011〕〜同〔0204〕に記載されている化合物、赤外半導体レーザー用としては特開平6−230577号公報段落番号〔0014〕〜同〔0059〕に記載されている化合物、および青色半導体レーザー用分光増感色素としては特開2001−350267号公報段落番号〔0012〕〜同〔0023〕に記載されている化合物である。
【0136】
ハロゲン化銀乳剤層のバインダーは、主としてゼラチンによって構成されるが前記の親水性層構成で記述したような親水性コロイドとその一部を置換できる。ハロゲン化銀乳剤層のゼラチン量は、0.3〜2g/m2程度が適当であり、好ましくは0.5〜1.5g/m2の範囲である。ハロゲン化銀乳剤層は硬膜剤で硬化することが好ましい。ゼラチン硬膜剤としては、通常の写真乳剤層の硬化剤として使用されている化合物が使用できるが、好ましくはビニルスルホン化合物である。またビニルスルホン化合物とその他の硬膜剤、例えば、尿素−ホルマリン縮合物、メラニン−ホルマリン縮合物、エポキシ系、アジリジン系化合物、活性オレフィン類、イソシアネート系化合物などの有機硬化剤、クロム、アルミニウム、ジルコニウムなどの無機多価金属塩類など、写真乳剤の硬化剤として公知の化合物を併用してもよい。
【0137】
本発明に係る印刷版材料の製造において、他の重要な要素は感光性ハロゲン化銀乳剤層の硬膜にある。少なくとも印刷前の段階で、十分に硬化されていることが好ましい。
【0138】
硬化剤を通常の写真乳剤層の硬膜法と同様に写真乳剤塗液中に添加してもよいし、また現像、製版処理の前若しくは後の段階で、例えば熱処理などの方法で硬化されてもよい。安定した硬膜特性を得るためには硬化剤を含むハロゲン化銀乳剤を塗布乾燥後、適度に加温処理されることが好ましい。この加温処理は、良好な硬化度を得るための処理であり、それは、例えば、80〜150℃で数分若しくは数十分間、或いは30〜50℃で数日間(1〜20日間位)の処理であってもよい。
【0139】
また、ハロゲン化銀写真乳剤層は印刷中のコロイドの磨耗を防ぐために、粒子の大きさで約2〜10μmの径を有する微粒子を含有させるのがよく、シリカ、クレー、タルク、シークライト、米でんぷんなどが使用できるが、特にシリカが好ましい。シリカは1m2当たり0.01〜1gとなるようにハロゲン化銀乳剤中に添加される。シリカ粒子濃度が過度に高くなると、印刷中にインキ濃度が上がりにくくなったりスカミング現象を起こしたりする。
【0140】
写真鮮鋭度、最終的には印刷物の解像度及び鮮鋭度を改良する目的で、いわゆる反射防止染料又は顔料を適用することが好ましい。これらはハロゲン化銀乳剤層中、或いは支持体とハロゲン化銀乳剤層との間のいわゆる親水性層中、或いは裏塗り層中に適用することによって目的は達成される。
【0141】
ハロゲン化銀乳剤層の外表面上に、銀錯塩拡散転写法において受像層を構成するための物理現像核層を被覆する。物理現像核としては銀、アンチモン、ビスマス、カドミウム、コバルト、鉛、ニッケル、パラジウム、ロジウム、金、白金等の金属コロイド微粒子や、これらの金属の硫化物、多硫化物、セレン化物、又はそれらの混合物、混晶であってもよい。更に物理現像核層には、親水性バインダーを0.5〜50mg/m2程度含有させるのが好ましい。当該バインダーとしては澱粉、ジアルデヒド澱粉、カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、特開昭53−21602号公報記載のビニルイミダゾールとアクリルアミドの共重合体、特開平8−211614号公報記載のアクリルアミドとグアニルチオ尿素類で置換されたメチルスルホンの共重合体などが挙げられる。更にハイドロキノン、メチルハイドロキノン、カテコール等の現像主薬や前記例示の硬膜剤を含んでいてもよい。当該塗布液のpHは弱酸性から酸性領域に設定される。具体的にはpH1.6〜4.0の範囲が妥当である。好ましくは1.6〜3.5の範囲である。
【0142】
本発明において、ハロゲン化銀乳剤を含有する層を有する場合、支持体とハロゲン化銀乳剤層との間に親水性層を有することが好ましい。
【0143】
ここで親水性層について説明する。親水性層とは、本発明の平版印刷版材料を印刷版として用いる際に、インクに対する親和性が低く、且つ水に対する親和性の高い層として定義される。
【0144】
本発明においては、親水性層にはバインダーとしてゼラチンを含有するのが好ましい。ゼラチン量は一般に0.5〜5g/m2、より好ましくは1〜4g/m2である。好ましいゼラチンは不活性の脱イオンゼラチンである。必要に応じてゼラチンは、その一部を、水溶性ゼラチン、澱粉、デキストリン、アルブミン、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルメチルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の親水性高分子の一種又は二種以上で置換することも出来る。更にビニル重合体水性分散物(ラテックス)をゼラチン層に添加することも出来る。これらのバインダーは硬膜剤で硬膜されているのが好ましい。用いられる硬膜剤としては前記のビニルスルホン化合物が好ましい。親水性層は、通常ハレーション防止の目的でカーボンブラック等の顔料や染料等を含むことが好ましい。
【0145】
本発明においては、印刷適性を向上させるために親水性層に平均粒径1〜10ミクロンの固形粉末(例えば、シリカ粒子)を含み得る。更に現像主薬等の写真用添加物も含むことができる。また、下塗り層は特開昭48−5503号、同48−100203号、同49−16507号の各公報に記載のようなものであってもよい。
【0146】
親水性層、ハロゲン化銀乳剤を含む層、物理現像核層等の各塗布層には、塗布助剤として陰イオン、陽イオンもしくは中性界面活性剤のいくつかを含んでいてもよいし、カブリ防止剤、マット剤、増粘剤、帯電防止剤等を含むことができる。
【0147】
上記のように製造された印刷版材料は、所望のサイズに断裁した後に、後述する露光を行うまで保管するためにロール状に巻かれて包装される。直径が4〜10cmのコア部材にロール状に巻くことが好ましい。
【0148】
その際に長期の保管に耐えるためには、包装材料として、特開2000−206653号公報に記載の酸素透過度5×10-6ml/Pa・m2・30℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。
【0149】
また、もう一つの好ましい形態として、特開2000−206653号公報に記載の水分透過度10-6g/Pa・m2・25℃・day以下の包装材料で包装されることが好ましい。
【0150】
ハロゲン化銀乳剤を含む層を有する印刷版材料に用いられる現像処理液には、アルカリ性物質、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム等、保恒剤としての亜硫酸塩、ハロゲン化銀溶剤、例えば、チオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、2−メルカプト安息香酸、アミン等、粘稠剤、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等、カブリ防止剤、例えば、臭化カリウム、特開昭47−26201号公報に記載の化合物等、現像剤、例えば、ハイドロキノン類、カテコール、1−フェニル−3−ピラゾリドン等、現像変性剤、例えば、ポリオキシアルキレン化合物、オニウム化合物等を含むことが出来る。更に現像処理液には、米国特許第3,776,728号明細書に記載の如き表面銀層のインキ乗りを良くする化合物等を使用することができる。
【0151】
印刷版材料の現像後の表面銀層は、任意の公知の表面処理剤でインキ受容性に変換ないしは受容性を増強せしめ得る。
【0152】
このような処理液としては、例えば、特公昭48−29723号公報、米国特許第3,721,559号明細書等に記載されている。
【0153】
本発明の印刷方法には一般に用いられている、平版印刷機、不感脂化液、給湿液などを用いることができる。
【0154】
本発明においてカラー印刷をする場合は、印刷版は予め位置決め用の細孔、所謂ピン穴を空けておき、このピン穴を基準にして印刷機に装着することが好ましい。そうすることにより、カラー印刷、例えば、4色印刷の際の印刷版の位置が一定になり、色ズレが起こりにくくなる。ピン穴は印刷機の種類によって様々な形があるが、代表的な位置決め用ピン穴の形の例としては、U字状のピン穴と長方形状ピン穴の2種からなる印刷用のピン穴がある。
【実施例】
【0155】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、実施例中「部」は特に断りのないかぎり「質量部」を表す。
【0156】
実施例1
《支持体の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0157】
これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し、熱固定後の平均膜厚が190μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。
【0158】
これを、前段延伸は102℃で1.3倍に後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。
【0159】
次いで、テンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後、4.8kg/mで巻き取った。
【0160】
このようにして得たポリエチレンテレフタレートフィルムの幅(製膜幅)は2.5mであった。得られた支持体の厚み分布は3%であった。
【0161】
《下引き済み支持体の作製》
上記で得られた支持体のフィルムの両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後に、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。
【0162】
また、反対側の面に下記下引き塗布液c−1、c−2、c−3またはc−4を表1に記載のように乾燥膜厚0.8μmになるように塗設後に、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下記下引き塗布液d−1、d−2、d−3またはd−4を表1に記載のように、乾燥膜厚1.0μmになるように塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。
【0163】
次いで、各々の下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施し、更に下記の熱処理を施した。
【0164】
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系
共重合ラテックス(Tg=75℃) (固形分基準)6.3部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元
系共重合ラテックス 1.6部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 92.0部
《下引き塗布液b》
ゼラチン 1部
アニオン系界面活性剤S−1 0.05部
硬膜剤H−1 0.02部
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02部
防黴剤F−1 0.01部
水 98.9部
【0165】
【化1】

【0166】
《下引き塗布液c−1》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元
系共重合ラテックス (固形分基準)0.4部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチル
メタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス 7.6部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 91.9部
《下引き塗布液d−1》
成分d−11/成分d−12/成分d−13=66/31/1の導電性組成物
6.4部
硬膜剤H−2 0.7部
アニオン系界面活性剤S−1 0.07部
マット剤(シリカ、平均粒径3.5μm) 0.03部
水 93.4部
成分d−11;スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12;スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13;スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0167】
【化2】

【0168】
《下引き塗布液c−2》
ジュリマーET−410(日本純薬(株)製、Tg=52℃) 21部
SnO2/Sb(9/1質量比、平均粒子径0.25μm) 65部
カーボンブラック(大日本インキ化学工業(株)社製のSD−10M、平均粒径0.2μm) 4部
マット剤(ポリメチルメタクリレート、平均粒子径5μm) 4部
デナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製) 6部
《下引き塗布液d−2》
PVdCポリマーラテックス:コア部90質量%、シェル部10質量%(コアシェルタイプのラテックス)コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)(重量平均分子量38000)
3000部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 23部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径2.4μm) 1.5部
《下引き塗布液c−3》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系
共重合ラテックス(Tg=75℃) (固形分基準)6.2部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 1.7部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 92.0部
《下引き塗布液d−3》
ゼラチン 1部
アニオン系界面活性剤S−1 0.05部
防黴剤F−1 0.01部
水 98.9部
《下引き塗布液c−4》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元
系共重合ラテックス (固形分基準)0.4部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチル
メタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス 7.6部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 91.9部
《下引き塗布液d−4》
成分d−11/成分d−12/成分d−13=66/31/1の導電性組成物
3.2部
硬膜剤H−2 0.7部
アニオン系界面活性剤S−1 0.06部
マット剤(シリカ、平均粒径5μm) 0.04部
水 96.0部
成分d−11;スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12;スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13;スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%及び5%で、プラズマ処理を行った。
【0169】
《熱処理条件》
1.25m幅にスリットした後の上記下引き済み支持体に対し、張力2hPaで180℃、1分間の低張力熱処理を実施した。
【0170】
《印刷版材料の作製》
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
同時混合法を用いて、塩化銀含有率が70モル%で残りは臭化銀からなる平均直径0.09μmの塩臭化銀コア粒子を調製した。コア粒子混合時に、K3Rh(NO)4(H2O)2をコア粒子形成終了時の銀1モルに対して7×10-8モル、K3OsCl6を8×10-6モル添加の存在下に、40℃でpH3.0、銀電位(EAg)を165mVに保ちながら硝酸銀水溶液と水溶性ハライド溶液を同時混合した。
【0171】
このコア粒子に、EAgを食塩で125mVに下げて同時混合法を用いてシェルを付けた。その際、ハライド液にK2IrCl6を銀1モル当たり3×10-7モル、K3RhCl6を9×10-8モル添加した。更に沃化銀微粒子を用いてKIコンバージョンを行なった。
【0172】
得られたハロゲン化銀乳剤Aは、平均直径0.2μmのコア/シェル型単分散(変動係数10%)の塩沃臭化銀(塩化銀含有率85モル%、沃臭化銀含有率0.1モル%、残りは臭化銀からなる)〔100〕面比率87%の立方晶の乳剤であった。
【0173】
次いで、特開平2−280139号公報287(3)頁に記載の変性ゼラチンの例示化合物(G−8)を使い脱塩した。脱塩後のEAgは50℃で190mVであった。
【0174】
更に塩化金酸、無機硫黄、二酸化チオ尿素及び2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルフォスフィンセレニドで化学増感を行った後、増感色素Aで分光増感を施した。
【0175】
【化3】

【0176】
(塗布液の調製)
〈親水性層塗布液〉
ゼラチン 21部
シリカ微粒子(粒径3μm) 9部
カーボンブラック分散液(固形分32質量%) 8部
スチレン−ブタジエンラテックス(日本エーアンドエル株式会社製POL752A)
2部
界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.2部
ビニルスルホン化合物HD−2 2部
水で全量を400部にし、pHを5にした。湿分塗布量は40g/m2である。
【0177】
HD−2:CH2CHSO2CH2CH2SO2CHCH2
〈ハロゲン化銀乳剤層塗布液〉
ハロゲン化銀乳剤A(硝酸銀/ゼラチンに質量比=2/1) 硝酸銀換算で14部
1−フェニル−3−ピラゾリドン 1部
界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.2部
全量を120部に合し、pHを4.5にした。湿分塗布量は12g/m2である。
【0178】
(硫化パラジウムゾルの調製)
A液
塩化パラジウム 5g
12M塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液
硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0179】
〈物理現像核層塗布液〉
上記硫化パラジウムゾル 10部
ハイドロキノン 6部
1−フェニル−3−ピラゾリドン 0.4部
ポリマー(アクリルアミド(97)とビニルイミダゾール(3)共重合体;平均分子量10万) 0.05部
界面活性剤;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 0.02部
ビニルスルホン化合物HD−2 2部
全量を100部に調製し、pHを2.8にした。湿分塗布量は10g/m2である。
【0180】
〈裏塗り層塗布液〉
チタンホワイト 0.5g/m2
ポリメチルメタクリレート粒子(球形、平均粒子サイズ5μm) 0.2g/m2
ゼラチン 2g/m2
ビニルスルホン化合物HD−3 0.1g/m2
HD−3:CH2CHSO2CH2CH2CH2SO2CHCH2
〔平版印刷版材料の作製〕
下引き済み支持体のB面上に、上記裏塗り層塗布液をスライドホッパーコーティング法により塗布し下記条件Aで乾燥させた。
【0181】
なお、乾燥は5ゾーンに分割されており、それぞれ温度湿度および滞留時間の調節が可能である。第1のゾーンは0℃に設定し冷却、セットの為に使用した。第2、第3のゾーンは恒率乾燥部として利用し、その部位ではウエブの温度(乳剤層の表面温度)は最高14℃で乾燥された。
【0182】
条件A:恒率乾燥後、第4のゾーンではウエブの温度を50℃まで上昇させ、第5のゾーンでは55℃まで上昇させた。恒率乾燥後の滞留時間は15秒間滞留させ乾燥した。
【0183】
次に下引き済み支持体の各々のA面上に、上記親水性層塗布液とハロゲン化銀乳剤層塗布液をスライドホッパーコーティング法により同時重層塗布し、乾燥した。乾燥は5ゾーンに分割されており、それぞれ温度湿度の調節が可能である。第1のゾーンは0℃に設定し冷却、セットの為に使用した。第2、第3のゾーンは大略恒率乾燥部として利用し、その部位ではウエブの温度(ハロゲン化銀乳剤層の表面温度)は最高14℃で乾燥された。第4のゾーンではウエブの温度を30℃まで上昇させ、第5のゾーンでは40℃まで上昇させた。第5ゾーンでのウエブ滞留時間は10秒間であった。続いてディップ/ワイヤ−バースクイーズ法で物理現像核層塗布液を塗布し、30℃の温風で乾燥し、平版印刷版材料101〜104作製した。
【0184】
〔各特性値の測定〕
上記作製した各平版印刷版材料の裏塗り層を有する面側の各特性値を、下記の方法に従って測定した。
【0185】
《表面比抵抗の測定》
機器:川口電気株製テラオームメーターモデルVE−30
方法:23℃、20%RHの環境下に試料を24時間放置した後、同様の環境下で上記で作製した平版印刷版材料の裏塗り層側の表面比抵抗の測定を行った。
【0186】
〔赤半導体レーザー方式による画像形成及び印刷版試料の作製〕
上記の平版印刷版材料を露光サイズに合わせて切断してDolev800V3(サイテックス社製)を用いて露光を行った。露光には波長650nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、2540dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成し、更にCP−286S(三菱製紙(株)/大日本スクリーン製造(株)社製)自動現像機で現像38℃、15秒、中和処理38℃15秒処理した後、45℃で乾燥して、印刷版試料を作製した。
【0187】
なお、現像液A、B及び中和および感脂化液は下記のように調製したものを用いた。
【0188】
〈現像液A〉
EDTA・2Na 1g
水酸化カリウム 20g
無水亜硫酸ナトリウム 50g
2−メルカプト安息香酸 1.5g
2−アミノエチル−アミノエタノール 15g
親油化剤:2−メルカプト−5−n−ヘプチルオキサジアゾール 0.25g
ヒドロキシフェニルステアリン酸(日本油脂(株)製、商標ノバアシッドP) 1g
水を加えて1Lとする。
【0189】
〈中和および感脂化液〉
リン酸 1.2g
第一リン酸ナトリウム 25g
無水亜硫酸ナトリウム 2.5g
エチレングリコール 5g
親油化剤:2−メルカプト−5−n−ヘプチルオキサジアゾール 0.1g
ジエタノールアミン 5g
水で1Lとする。pHは6に調整。
【0190】
上記の印刷版試料を、73cm幅で32mの長さに切断して直径7.5cmのボール紙でできたコアに巻き付けロール形状の印刷版試料とした。更に、印刷版試料をAl23PET(12μm)/Ny(15μm)/CPP(70μm)の材料でできた150cm×2mの包装材料で巻いた。
【0191】
包装された印刷版試料を、強制劣化条件として50℃、60%相対湿度で7日間加温した。
【0192】
包装材料の酸素透過度は1.7×10-5ml/Pa・m2・30℃・day、水分透過度は1.8×10-5g/Pa・m2・25℃・dayであった。
【0193】
《版下シート材料U−1の作製》
テレフタル酸とエチレングリコールを用い、常法に従いIV(固有粘度)=0.66(フェノール/テトラクロルエタン=6/4(質量比)中25℃で測定)のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0194】
これをペレット化した後、130℃で4時間乾燥し、300℃で溶融後T型ダイから押し出し、50℃の冷却ドラム上で急冷し、熱固定後の平均膜厚が50μmになるような厚みの未延伸フィルムを作製した。これを、前段延伸は102℃で1.3倍に後段延伸は110℃で2.6倍に縦延伸した。
【0195】
次いで、テンターで120℃で4.5倍に横延伸した。この後、240℃で20秒間熱固定後、これと同じ温度で横方向に4%緩和した。この後テンターのチャック部をスリットした後、両端にナーリング加工を行い、40℃に冷却後、4.8kg/mで巻き取った。このようにしてポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。得られた支持体の厚み分布は7%であった。
【0196】
上記で得られた支持体のフィルムの両側に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで一方の面(A面)に下記塗布液c−11を乾燥膜厚0.7μmになるように塗設後に、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下記塗布液d−11を、乾燥膜厚0.6μmになるように塗布し、それぞれ180℃、4分間乾燥させて版下シートU−1を作製した。
【0197】
[塗布液c−11]
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系
共重合ラテックス(Tg=75℃) (固形分基準)6.2部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 1.7部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 92.0部
[塗布液d−11]
ゼラチン 1部
アニオン系界面活性剤S−1 0.05部
防黴剤F−1 0.01部
水 98.9部
《版下シート材料U−2の作製》
塗布液c−11の代わりにc−12、塗布液d−11の代わりにd−12を用い、版下シート材料U−1と同様にして作製した。
【0198】
《塗布液c−12》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元
系共重合ラテックス (固形分基準)0.4部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチル
メタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス 7.6部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 91.9部
《塗布液d−12》
成分d−11/成分d−12/成分d−13=66/31/1の導電性組成物
6.4部
硬膜剤H−2 0.7部
アニオン系界面活性剤S−1 0.07部
マット剤(シリカ、平均粒径8μm) 0.13部
水 92.7部
成分d−11;スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12;スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13;スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
《版下シート材料U−3の作製》
塗布液c−11の代わりにc−13、塗布液d−11に代わりにd−13を用い、版下シート材料U−1と同様にして作製した。
【0199】
《塗布液c−13》
ジュリマーET−410(日本純薬(株)製、Tg=52℃) 21部
SnO2/Sb(9/1質量比、平均粒子径0.25μm) 67部
マット剤(ポリメチルメタクリレート、平均粒子径5μm) 4部
デナコールEX−614B(ナガセ化成工業(株)製) 7部
《塗布液d−13》
PVdCポリマーラテックス:コア部90質量%、シェル部10質量%(コアシェルタイプのラテックス)コア部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=93/3/3/0.9/0.1(質量%)シェル部:塩化ビニリデン/メチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリロニトリル/アクリル酸=88/3/3/3/3(質量%)(重量平均分子量38000)
3000部
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 23部
マット剤(ポリスチレン、平均粒径4.5μm) 2部
塗布後の表面比抵抗を下記の方法で測定した。
【0200】
《版下シート材料U−4の作製》
塗布液c−11の代わりにc−14、塗布液d−11に代わりにd−14を用い、版下シート材料U−1と同様にして作製した。
【0201】
《塗布液c−14》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元
系共重合ラテックス (固形分基準)0.4部
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチル
メタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス 7.6部
アニオン系界面活性剤S−1 0.1部
水 91.9部
《塗布液d−14》
成分d−11/成分d−12/成分d−13=66/31/1の導電性組成物
1.2部
硬膜剤H−2 0.7部
アニオン系界面活性剤S−1 0.05部
マット剤(シリカ、平均粒径4μm) 0.08部
水 98.0部
成分d−11;スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12;スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13;スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
なお前記版下シート材料U−1〜U−4の印刷版材料と接触する面の中心線平均粗さRaは、U−1は0.07μm、U−2は2.02μm、U−3は1.01μm、U−4は0.32μmであった。
【0202】
《表面比抵抗の測定》
機器:川口電気株製テラオームメーターモデルVE−30
方法:23℃、20%相対湿度の環境下に試料を24時間放置した後、同様の環境下で上記で作製した版下シート材料のA面の反対側の表面比抵抗を測定した。
【0203】
(印刷版としての諸特性の評価)
上記のように作製した印刷版試料について、下記の印刷方法で、表1に記載の版下シート材料との組み合わせで印刷を行い、印刷版としての諸特性を評価した。
【0204】
《印刷方法》
印刷装置として、小森コーポレーション社製のLithrone26(4色機)を用いて、得られた版下シートを所定の大きさにカットして版下シートのA面側を印刷機の版胴側になるよう版胴に接着した。コート紙と、湿し水としてアストロマーク3(日研化学研究所製)の2質量%溶液、インクとして大日本インキ化学(株)製New ChampionナチュラリスSP8 紅N(大豆油インキ)を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行った。
【0205】
《初期インキ着肉性の評価》
前記で作製した印刷版を前記印刷機にかけて、前記湿し水および前記インキを用いてコート紙に印刷した。印刷開始のシークエンスをPS版の印刷シークエンスで行い、何枚目で非画線部のインキ汚れがなくなるかを評価した。枚数が少ないほどインク着肉性が優れている。
【0206】
《耐刷性の評価》
露光した印刷版試料を前記印刷機にかけて、前記湿し水および前記インキを用いて、パウダーとしてニッカリコ−AS−160(平均粒径20〜30μm;ニッカ株式会社製)を噴霧しながら表面を印刷した上質紙の裏面に印刷した。
【0207】
3万枚まで印刷した。3%網点画像の点が半分以上欠落する印刷枚数を耐刷枚数として求めた。印刷枚数の多いほど優れている。
【0208】
《画質の評価》
5000枚印刷後に、2%網点画像の品質を100倍ルーペで目視観察し品質を5段階に分けランク評価した。ランク5はフリンジのない高品質な網点であり、品質が劣るにつれてランクを落としていった。ランク3未満は使用に耐えない画質である。
【0209】
《印刷位置安定性の評価》
印刷前に版面に50μm幅のキズを2カ所50cm離して付けた。それを4枚用意した後に印刷を行った。ただし、インクは大日本インキ化学(株)製New ChampionナチュラリスSP8 黄N、紅N、藍N、墨Nの4色のインクを使用して印刷を行った。
【0210】
100枚目の紙面で十文字の画像の4色がずれていないのを確認した後に、引き続き2,000枚印刷した。2,000枚印刷終了時の印刷紙面で十文字の各色のズレがどの位発生しているかをルーペで測定した。値が少ないほど優れている。
【0211】
以上により得られた結果を表1に示す。
【0212】
表1から、本発明の印刷方法は、印刷位置安定性に優れ、かつ初期インキ着肉性、耐刷性、画質に優れていることが分かる。
【0213】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック支持体上の一方の面に親水性層および画像形成機能層を有し、他方の面に裏塗り層を有する印刷版材料と、印刷機の版胴との間に版下シート材料を介在させて印刷する印刷方法において、該印刷版材料の裏塗り層側の表面比抵抗が1×109Ω〜2×1013Ωであり、且つ該版下シート材料の印刷版材料と接触する面の表面比抵抗が1×108Ω〜2×1015Ωであることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記版下シート材料の膜厚が30〜250μmであることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記プラスチック支持体がポリエステルフィルムを含有し、該プラスチック支持体の膜厚が120〜300μmで厚み分布が0〜10%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記印刷版材料の親水性層を有する側に、ハロゲン化銀乳剤を含有する層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷方法に用いられることを特徴とする版下シート材料。
【請求項6】
印刷版材料を印刷機の版胴に、版下シート材料を介して装着する印刷版材料の装着方法であって、請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷方法に用いられることを特徴とする印刷版材料の装着方法。

【公開番号】特開2006−247858(P2006−247858A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63520(P2005−63520)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】