説明

印刷方法および印刷プログラム

【課題】ブックカバーなどの折線加工がされた用紙を印刷すること。
【解決手段】折線加工された用紙を印刷する際に、用紙の折線加工に関する情報を取得す
る取得工程(ステップS401、ステップS501)と、用紙に対して、印刷を開始する
とともに、前記取得工程によって取得された情報に基づいて、所定の折線加工された位置
(以下「第1の位置」という)で印刷を停止する印刷工程(ステップS404)と、用紙
を排紙する排紙工程(ステップS405)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折線加工された用紙を印刷する印刷方法および印刷プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷の多様化や印刷画質の向上などによって、オリジナルのブックカバーを製作
したいとの要望がある。通常、ブックカバーは、本などの印刷物を覆うため、強い耐久性
が要求され、そのため、その紙質は厚めでかつ折り曲げに対する反発力が強い、いわゆる
こしのあるものが好ましい。したがって、ブックカバー用の用紙は、印刷物の大きさや形
状に合わせてあらかじめ折曲加工を施すことで、簡易にかつ見た目にも美しく印刷物に装
着することができる。
【0003】
従来、プリンタは、副走査方向へ紙送りをしながら主走査方向にヘッドを移動させて印
刷するため、紙送り機構を備えているのが一般的である。紙送り機構は通常、複数のロー
ラなどの回転によって紙を副走査方向へ送り出すため、印刷の対象となる用紙は平らでか
つ折り目などがないものが望ましい。したがって、ブックカバーなどのあらかじめ折線加
工された用紙に印刷することは想定していなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなオリジナルのブックカバーを上記従来のプリンタで印刷す
る際に、通常の規定用紙に比べて、副走査方向に対する印刷領域が長くなりすぎるため、
プリンタによっては、印刷できない機種が存在するという問題点があった。すなわち、ロ
ール紙のように長尺ではあるが一端をロールで支えている場合は別として、ブックカバー
用紙のような長尺の用紙であって両端のいずれにおいても支えがないものでは、長尺ゆえ
に用紙後端部で印刷時にスキューが発生してしまう。そのため、印刷品質の劣化を防止す
ること、あるいは無用な紙詰まりを防止することを目的として、印刷を禁止している場合
がある。また、データ量が増大するため、メモリ容量の不足が生じてしまう場合もある。
このように、元々の規格として規定用紙をはるかに越える領域への印刷を禁止している機
種が存在すると考えられる。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、折線加工がされた用紙
を印刷する印刷方法および印刷プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明にかかる印刷方法は、折線加工された用紙を印
刷する際に、前記用紙の折線加工に関する情報を取得する取得工程と、前記用紙に対して
、印刷を開始するとともに、前記取得工程によって取得された情報に基づいて、所定の折
線加工された位置(以下「第1の位置」という)で前記印刷を停止する印刷工程と、前記
用紙を排紙する排紙工程と、を含んだことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、規格として規定用紙を越える領域への印刷を禁止している機種のプ
リンタにおいて、折線加工された用紙に印刷することができる。
【0008】
また、この発明にかかる印刷方法は、上記発明において、前記折線加工された用紙が、
左カバー見返し、左表紙、背表紙、右表紙および右カバー見返しからなる印刷物のカバー
であり、前記第1の位置が、前記用紙の前記右(または左)表紙と前記右(または左)カ
バー見返しとの境界であることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、一般のプリンタを用いて、印刷物のカバーの印刷をおこなうことが
でき、その際、少なくとも左表紙、背表紙、右表紙の印刷をすることができる。
【0010】
また、この発明にかかる印刷方法は、上記発明において、前記取得工程によって取得さ
れた情報に基づいて、所定の折線加工された位置(以下「第2の位置」という)まで紙送
りをする紙送り工程を含み、前記印刷工程が、前記紙送り工程による紙送り後に、印刷を
開始することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、紙送り方向後ろ側の非印刷領域にあわせて、紙送り方向前側の領域
の印刷をおこなわないようにすることができる。
【0012】
また、この発明にかかる印刷方法は、上記発明において、前記折線加工された用紙が、
左カバー見返し、左表紙、背表紙、右表紙および右カバー見返しからなる印刷物のカバー
であり、前記第2の位置は、前記用紙の左(または右)カバー見返しと左(または右)表
紙との境界であることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、一般のプリンタを用いて、印刷物のカバーの印刷をおこなうことが
でき、その際、少なくとも左表紙、背表紙、右表紙の印刷をすることができる。
【0014】
また、この発明にかかる印刷プログラムは、上記に記載の印刷方法をコンピュータに実
行させることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる印刷方法および印刷プログラムの好適な
実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(折線加工された用紙の内容)
図1および図2は、この発明の実施の形態にかかる折線加工された用紙の内容を示す説
明図である。図1において、折線加工された用紙(以下単に「用紙」という)100は、
左カバー見返し101、左表紙102、背表紙103、右表紙104および右カバー見返
し105からなる。そして、左カバー見返し101と左表紙102との境界A、左表紙1
02と背表紙103の境界B、背表紙103と右表紙104の境界C、右表紙104と右
カバー見返し105との境界Dには、あらかじめ折線加工が施されている。
【0017】
図1は、上記境界A〜Dを平らに伸ばした状態を示しており、一方図2は、上記境界A
〜Dを折線加工に基づき、用紙100が折れ曲がった状態を示している。上記境界A〜D
に折線加工を施すのは、以下の理由である。すなわち、ブックカバーなどは厚めの紙を用
いることが一般的であり、あらかじめ折線加工が施されている方が、容易かつ見た目にも
美しく本体(本などの印刷物)に装着することができるからである。
【0018】
(ハードウエア構成)
図3は、この発明の実施の形態にかかる印刷方法を実現するハードウエア構成の一例を
示す説明図である。図3において、300はパーソナルコンピュータなどの情報処理装置
であり、350は、情報処理装置300に接続されるプリンタである。
【0019】
情報処理装置300は、CPU301と、ROM302と、RAM303と、メモリ3
04と、インタフェース(I/F)305と、ディスプレイ306と、を含む構成となっ
ている。これらの構成部301〜306は、それぞれバス310によって接続される。プ
リンタ350も、たとえばUSBなどによってバス310を介して上記構成部301〜3
06と接続される。
【0020】
ここで、CPU301は、ROM302、RAM303、メモリ304などに記憶され
たプログラムを実行することによって、プリンタ350の印刷制御をするとともに、警告
情報の出力(表示)制御等を含む情報処理装置300全体を制御する。ROM302は、
情報処理装置300の基本処理プログラムを記憶している。RAM303は、CPU30
1のワークエリアとして使用される。メモリ304は、各種情報を記憶する。具体的には
、たとえば、ハードディスク(HD)であり、そのかわりにあるいはHDに加えて、DV
D、コンパクトディスク(CD)などの着脱可能な記録媒体であってもよい。
【0021】
また、I/F305は、ネットワークを介して他の情報処理装置とのデータの送受信を
司る。また、ネットワークを介して他のプリンタに接続されるようになっていてもよい。
ディスプレイ306は、文字、画像などを表示する。ディスプレイ306は、具体的には
、たとえばCRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどである。
【0022】
また、プリンタ350は、インクジェットプリンタ、レーザービームプリンタ、インパ
クトプリンタなどの各種プリンタを含む。また、プリンタ350は、たとえばUSB(U
niversal Serial Bus)などのインタフェースの規格を用いて情報処
理装置300と接続することができる。
【0023】
(処理の手順)
図4は、この発明の実施の形態にかかる印刷方法の処理の手順を示すフローチャートで
ある。図4のフローチャートにおいて、まず、セットされた用紙100の用紙情報を取得
する(ステップS401)。ここで、用紙情報には、折線加工がなされたそれぞれの位置
(用紙端からの距離)、具体的には、図1に示した境界A〜Dの位置に関する情報を含む
。用紙情報は、たとえばユーザからの用紙種類などの情報の入力によって取得することが
できる。
【0024】
その後、印刷を開始する(ステップS402)。用紙100の長手方向に印刷を進めて
ゆき、境界A、B、Cを通過し、境界Dに達したか否かを判断する(ステップS403)
。境界Dに達したか否かは、ステップS401において取得した用紙情報のうちの境界D
の位置に関する情報(用紙端(左カバー見返し101の端部)から境界Dまでの距離に関
する情報)に基づいて判断する。
【0025】
ここで、境界Dに達するのを待って、境界Dに達した場合(ステップS403:Yes
)は、印刷を停止する(ステップS404)。たとえ、印刷データが残っていても、すな
わち、右カバー見返し105の領域の印刷データがあったとしても、印刷を停止するよう
にしてもよい。図示を省略する紙送り機構を用いて用紙100を排紙し(ステップS40
5)、一連の処理を終了する。
【0026】
図5は、この発明の実施の形態にかかる印刷方法の処理の別の手順を示すフローチャー
トである。図4にあっては、左カバー見返し101の領域を印刷したが、図5は、右カバ
ー見返し105の領域を印刷しなかったのにあわせて、左カバー見返し101の領域も印
刷しないようにする手順である。
【0027】
図5のフローチャートにて、まず、図4のステップS401と同様に、セットされた用
紙100の用紙情報を取得する(ステップS501)。ここで、用紙情報には、折線加工
がなされたそれぞれの位置(用紙端からの距離)、具体的には、図1に示した境界A〜D
の位置に関する情報を含む。
【0028】
その後、紙送りを開始する(ステップS502)。そして、用紙100の長手方向に紙
送りを進めてゆき、境界Aに達したか否かを判断する(ステップS503)。境界Aに達
したか否かは、ステップS501において取得した用紙情報のうちの境界Aの位置に関す
る情報(用紙端(左カバー見返し101の端部)から境界Aまでの距離に関する情報)に
基づいて判断する。
【0029】
ここで、境界Aに達するのを待って、境界Aに達した場合(ステップS503:Yes
)は、図4に示した、ステップS402へ移行する。それ以降は、図4で説明したとおり
である。
【0030】
図6は、用紙に対する印刷の一例を示す説明図である。図6において、右カバー見返し
105の領域には印刷がなされていないのがわかる。また同様に、左カバー見返し101
の領域にも印刷がなされていない。ただし、左カバー見返し101、右カバー見返し10
5は、製本された印刷物に装着された場合に、隠れてしまう部分であるので、印刷がされ
ていなくても支障がない。
【0031】
以上説明したように、この発明の本実施の形態によれば、折線加工された用紙を印刷す
る際に、用紙の折線加工に関する情報を取得する取得工程(ステップS401、ステップ
S501)と、用紙に対して、印刷を開始するとともに、前記取得工程によって取得され
た情報に基づいて、所定の折線加工された位置(以下「第1の位置」という)で印刷を停
止する印刷工程(ステップS404)と、用紙を排紙する排紙工程(ステップS405)
と、を含むため、規格として規定用紙を越える領域への印刷を禁止している機種のプリン
タにおいて、折線加工された用紙に印刷することができる。
【0032】
また、この発明の本実施の形態によれば、折線加工された用紙が、左カバー見返し10
1、左表紙102、背表紙103、右表紙104および右カバー見返し105からなる印
刷物のカバーであり、前記第1の位置が、前記用紙100の右表紙104と右カバー見返
し105との境界Dであるため、一般のプリンタを用いて、印刷物のカバーの印刷をおこ
なうことができ、その際、少なくとも左表紙102、背表紙103、右表紙104の印刷
をすることができる。
【0033】
また、この発明の本実施の形態によれば、取得工程によって取得された情報に基づいて
、所定の折線加工された位置(以下「第2の位置」という)まで紙送りをする紙送り工程
(ステップS502)を含み、印刷工程(ステップS404)が、前記紙送り工程による
紙送り後に、印刷を開始するため、紙送り方向後ろ側(たとえば右カバー見返し105)
の非印刷領域にあわせて、紙送り方向前側(たとえば左カバー見返し101)の領域の印
刷をおこなわないようにすることができる。
【0034】
また、この発明の本実施の形態によれば、上記発明において、前記折線加工された用紙
が、左カバー見返し101、左表紙102、背表紙103、右表紙104および右カバー
見返し105からなる印刷物のカバーであり、第2の位置は、用紙100の左カバー見返
し101と左表紙102との境界Aであるため、一般のプリンタを用いて、印刷物のカバ
ーの印刷をおこなうことができ、その際、少なくとも左表紙102、背表紙103、右表
紙104の印刷をすることができる。これらの折線加工がされた用紙としては、厚めの用
紙でできているブックカバーなどの印刷物のカバーに適している。
【0035】
また、本実施の形態では、折線部分で印刷を停止するようにしたが、用紙の編集の際に
、プリンタの種類に応じて、左カバー見返し101、右カバー見返し105のそれぞれの
領域の編集を禁止するようにしてもよい。その場合は、左カバー見返し101、右カバー
見返し105には印刷データが存在しないので、折線部分(境界)を認識するまでもなく
、当該境界位置で印刷は停止する。
【0036】
また、本実施の形態にあっては、左カバー見返し101側から右カバー見返し105側
へ印刷する例について説明したが、それとは逆に、右カバー見返し105側から左カバー
見返し101側へ印刷するようにしてもよい。その場合は、印刷を開始する位置および印
刷を停止する位置はそれに伴って反対となる。
【0037】
また、本願発明の印刷方法および印刷プログラムは、プリンタで印刷した写真画像など
を編集・製本してオリジナルのアルバムなどを作成する製本キッドにおいて、その製本さ
れたアルバムを包むために当該製本キッドに同包されるブックカバーの印刷にも適してい
る。
【0038】
なお、本実施の形態における印刷方法は、あらかじめ用意されたコンピュータ読み取り
可能なプログラムであってもよく、またそのプログラムをサーバーを含むパーソナルコン
ピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現される。
このプログラムは、HD、FD、CD−ROM、MO、DVDなどのコンピュータで読み
取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることに
よって実行される。また、このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介し
て配布することが可能な伝送媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態にかかる折線加工された用紙の内容を示す説明図。
【図2】実施の形態にかかる折線加工された用紙の内容を示す説明図。
【図3】実施の形態の印刷方法を実現するハードウエア構成の一例を示す説明図。
【図4】実施の形態の印刷方法の処理の手順を示すフローチャート。
【図5】実施の形態の印刷方法の処理の別の手順を示すフローチャート。
【図6】用紙に対する印刷の一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0040】
100 折線加工された用紙、101 左カバー見返し、105 右カバー見返し、3
00 情報処理装置、350 プリンタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
折線加工された用紙を印刷する際に、
前記用紙の折線加工に関する情報を取得する取得工程と、
前記用紙に対して、印刷を開始するとともに、前記取得工程によって取得された情報に
基づいて、所定の折線加工された位置(以下「第1の位置」という)で前記印刷を停止す
る印刷工程と、
前記用紙を排紙する排紙工程と、
を含んだことを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
前記折線加工された用紙は、左カバー見返し、左表紙、背表紙、右表紙および右カバー
見返しからなる印刷物のカバーであり、
前記第1の位置は、前記用紙の前記右(または左)表紙と前記右(または左)カバー見
返しとの境界であることを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記取得工程によって取得された情報に基づいて、所定の折線加工された位置(以下「
第2の位置」という)まで紙送りをする紙送り工程を含み、
前記印刷工程は、前記紙送り工程による紙送り後に、印刷を開始することを特徴とする
請求項1または2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記折線加工された用紙は、左カバー見返し、左表紙、背表紙、右表紙および右カバー
見返しからなる印刷物のカバーであり、
前記第2の位置は、前記用紙の左(または右)カバー見返しと左(または右)表紙との
境界であることを特徴とする請求項3に記載の印刷方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の印刷方法をコンピュータに実行させることを特徴
とする印刷プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−227968(P2006−227968A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41750(P2005−41750)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】