印刷方法および印刷装置
【課題】重ね印刷においてバンディングムラが発生することを抑制する。
【解決手段】基材上に設定される描画位置配列80は、行方向に連続する描画位置81の集合である複数の描画ブロック82に分割されており、行方向に複数の吐出口311が配列されたヘッドを基材に対して列方向に主走査しつつ、ヘッドが通過する各描画ブロック82内の1つの描画位置81に対するインクの吐出制御を1回行う処理を基本処理として、当該基本処理を繰り返しつつヘッドを行方向に副走査することにより、列方向に並ぶ描画ブロック82にて吐出制御の順序を同一に保ちつつ描画位置配列80の各描画位置81にインクの吐出制御が1回だけ行われる(1回目の全体塗布動作)。2回目の全体塗布動作では各描画ブロック82における吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものから変更されることにより、吐出制御の順序に起因するバンディングムラが抑制される。
【解決手段】基材上に設定される描画位置配列80は、行方向に連続する描画位置81の集合である複数の描画ブロック82に分割されており、行方向に複数の吐出口311が配列されたヘッドを基材に対して列方向に主走査しつつ、ヘッドが通過する各描画ブロック82内の1つの描画位置81に対するインクの吐出制御を1回行う処理を基本処理として、当該基本処理を繰り返しつつヘッドを行方向に副走査することにより、列方向に並ぶ描画ブロック82にて吐出制御の順序を同一に保ちつつ描画位置配列80の各描画位置81にインクの吐出制御が1回だけ行われる(1回目の全体塗布動作)。2回目の全体塗布動作では各描画ブロック82における吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものから変更されることにより、吐出制御の順序に起因するバンディングムラが抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式にて印刷を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクの微小な液滴を吐出する複数の吐出口が配列されたヘッドを印刷用紙に沿って走査することにより、印刷用紙上に印刷を行うインクジェット方式の印刷装置が用いられている。このような印刷装置では、ヘッドの各吐出口の一度の吐出動作にて吐出可能なインク量に一定の限界があるため、例えば、特許文献1では、カラーの印刷装置において、ヘッドを走査しつつ印刷用紙上に複数色のインクを吐出して印刷動作を行った後、他の色に比べて濃度の低い特定色のインクを印刷用紙上に再度重ねて吐出することにより、印刷画像において当該色の濃度を高くする手法が開示されている。また、特許文献2では、インクと希釈液との混合比を変更しつつ希釈されたインクを印刷用紙上に重複して吐出することにより、記録画像において中間階調を再現する手法が開示されている。
【0003】
一方、近年、様々な印刷媒体に印刷を行う要求があり、プラスチック(例えば、ポリカーボネートやPET(ポリエチレンテレフタレート))等の撥液性を有する印刷媒体に印刷を行う場合には、紫外線硬化性を有するインクが利用され、光照射部から照射される紫外線により、印刷媒体上に吐出された直後のインクが硬化される。
【特許文献1】特開平9−183238号公報
【特許文献2】特開2000−355111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紫外線硬化性を有するインクを利用する印刷装置において、光透過性の印刷媒体に印刷を行って透過性の印刷物を作成する際に、高い印刷濃度が求められることがあり、この場合に、ヘッドを走査しつつ印刷媒体の全体(または、一部)にインクを吐出する動作を複数回繰り返す(すなわち、重ね印刷を行う)ことにより、印刷媒体上の同じ位置に対して複数回インクを吐出して印刷濃度を高くする手法が考えられる。このような印刷装置では、最初に吐出されて印刷媒体上に付着したインクの微小液滴が、同位置に対する次のインクの吐出までに硬化されるため、印刷媒体上に硬化したインクが積み重なり、印刷濃度を容易に高くすることが可能となる。なお、紫外線硬化性のインクを利用する印刷装置では、仮に、一度の吐出動作にて多量のインクを印刷媒体上に吐出すると、印刷媒体上のインクの硬化に要する時間が長くなったり、インクの内部まで紫外線を到達させることができなくなる(すなわち、インクを確実に硬化させて定着させることができなくなる)場合があるため、重ね印刷を行って印刷濃度を高くすることが好ましいという側面もある。
【0005】
一方で、印刷媒体において、ヘッドの一の主走査により互いに隣接する吐出口からのインクの吐出制御が行われる2つの近接したライン間の位置に対して、ヘッドの副走査後の後続の主走査にてインクの吐出制御を行って(すなわち、インタレース処理を行って)印刷の解像度を向上する場合に、全ての位置に対してインクの吐出が行われると仮定すると、先の主走査における2つのライン上の硬化したインクが壁となって、後続の主走査におけるライン上のインク(すなわち、当該2つのラインを補間するライン上のインク)が当該2つのライン上のインクよりも印刷媒体から盛り上がった状態で硬化する。実際には、ヘッドの一の主走査によりインクの吐出制御が行われる2つのライン間を複数のラインにて補間することが多く行われており、副走査方向に並ぶ複数のラインにて(硬化した)インクの高低差が生じてしまう。この場合に、重ね印刷を行って印刷濃度を高くしようとすると、複数のラインにおけるインクの高低差が増大し、印刷画像においてバンディングムラが目立ち易くなってしまう。
【0006】
また、ヘッドの品質によっては、複数の吐出口においてインクの吐出方向にばらつきが生じることがあり、このようなヘッドを有する印刷装置にて、インタレース処理を伴う印刷動作を行うと、印刷媒体上の複数のラインにおいて互いに隣接するライン間の間隔がばらついてしまう。この場合に、重ね印刷を行って印刷濃度を高くしようとすると、ライン間の間隔が密な位置、または、ライン間の間隔が疎な位置における濃度が変化してしまい、印刷画像においてバンディングムラが目立ち易くなってしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、重ね印刷においてバンディングムラが発生することを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部とを備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷方法であって、前記c)工程において前記a)工程および前記b)工程が繰り返される際に、先行する前記a)工程および前記b)工程にて前記各描画位置に対してインクが吐出されたと想定した場合に、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて前記印刷媒体から最も前記インクが盛り上がる描画位置に対して最初のインクの吐出制御が行われる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の印刷方法であって、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて互いに隣接する2つの描画位置の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、先行する前記a)工程および前記b)工程と、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程とで異なる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷方法であって、先行する前記a)工程および前記b)工程、並びに、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて連続する3つの描画位置の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置に隣接する他の2つの描画位置に対する吐出制御の順序が連続し、前記c)工程にて前記a)工程および前記b)工程を繰り返す際に、前記中央の描画位置と前記他の2つの描画位置との間の吐出制御の前後関係が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから反転される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、前記複数の描画ブロックのそれぞれが、前記行方向に連続する描画位置の集合であり、先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記吐出制御を1回行う動作が前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対して行われ、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから変更される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部とを備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の印刷方法であって、先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドが前記印刷媒体に対して相対的に前記列方向に主走査し、前記主走査が完了する毎に前記行方向に間欠的に副走査し、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置と異なる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の印刷方法であって、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置から、前記複数の吐出口の個数に前記複数の吐出口のピッチを乗じた距離の1/4倍以上かつ3/4倍以下だけ相違する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、インクジェット方式の印刷装置であって、互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部とを備え、前記制御部が、a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを実行する。
【0017】
請求項10に記載の発明は、インクジェット方式の印刷装置であって、互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部とを備え、前記制御部が、a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを実行する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1ないし5、並びに、請求項9の発明では、重ね印刷において、描画ブロック内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0019】
また、請求項2ないし4の発明では、画像を適切に印刷することができる。
【0020】
請求項5ないし8、並びに、請求項10の発明では、重ね印刷において、吐出口の吐出方向等のばらつきに起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0021】
また、請求項7の発明では、重ね印刷において各描画位置に対してインクの吐出制御の対象とされる吐出口を容易に変更することができ、請求項8の発明では、万一、複数の吐出口の配列方向が行方向に対して傾斜する場合であっても、印刷画像の品質に対する吐出口の傾斜の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る印刷装置1の外観を示す斜視図である。印刷装置1は、例えばポリカーボネートやPET(ポリエチレン テレフタレート)等の撥液性を有するプラスチックにて形成される板状またはシート状の基材9上にインクジェット方式にてカラー印刷を行うものである。
【0023】
図1の印刷装置1は本体11および制御部4を備え、本体11は基材9を図1中の(+Z)側の面上に保持するステージ21、および、基台20上に設けられるステージ移動機構22を備える。ステージ21の基材9とは反対側の面には、ステージ移動機構22が有するボールネジ機構のナットが固定され、ボールネジ機構に接続されたモータが回転することにより、ステージ21が図1中のY方向(主走査方向)に滑らかに移動する。基台20上には、基台20に対するステージ21の位置を検出する位置検出モジュール23がさらに設けられる。
【0024】
ステージ21の上方には基材9に向けてインクの微小液滴を吐出するヘッド3が配置され、ヘッド3は、ボールネジ機構およびモータを有するヘッド移動機構24により主走査方向に垂直かつ基材9の主面に沿う副走査方向(図1中のX方向)に移動可能に支持される。また、基台20には、ステージ21を跨ぐようにしてフレーム25が設けられ、ヘッド移動機構24はフレーム25に固定される。フレーム25上には紫外線を出射する光源39が設けられ、複数の光ファイバ(実際には、複数の光ファイバは束状となっており、図1では符号391を付して1本の太線にて示している。)を介して光源39からの光がヘッド3の内部へと導入される。
【0025】
図2はヘッド3を示す底面図である。図2に示すように、ヘッド3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数の(図2では、4個の)ノズルユニット31を備え、複数のノズルユニット31はY方向に配列されてヘッド3の本体30に固定される。図2中の最も(+Y)側のノズルユニット31はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(−Y)側のノズルユニット31はY(イエロー)の色のインクを吐出する。各ノズルユニット31では、図2中のX方向に複数の(例えば、300個の)吐出口311が一定のピッチV(例えば、150dpi(dot per inch)に相当する169マイクロメートル(μm)のピッチであり、以下、「吐出口ピッチV」という。)にて配列されており、複数のノズルユニット31において、互いに対応する吐出口311はX方向の同じ位置に配置される。また、各色のインクは紫外線硬化剤を含んでおり、紫外線硬化性を有している。なお、ヘッド3には、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色用のノズルユニットが設けられてもよい。
【0026】
また、ヘッド3には、光源39に接続される光照射部38が複数のノズルユニット31の(−Y)側に設けられる。光照射部38では、複数の光ファイバがX方向に沿って配列されており、基材9上においてX方向に伸びる線状の領域に光照射部38により紫外線が照射される。
【0027】
図3は制御部4の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように制御部4は、ヘッド3の複数のノズルユニット31からのインクの吐出に係る制御を行う吐出制御部41、ステージ移動機構22およびヘッド移動機構24に対する移動制御を行う移動制御部42、並びに、基材9に印刷すべき画像データから吐出制御部41における吐出制御に用いられる描画データを生成する描画データ生成部43を備える。印刷装置1では、移動制御部42による移動制御に同期して吐出制御部41がヘッド3からのインクの吐出を制御することにより、基材9上に画像が印刷される。
【0028】
次に、印刷装置1が基材9上に画像を印刷する動作について図4を参照しつつ説明を行う。以下の説明では、CMYKのうち一の色のノズルユニット31にのみ着目するが、他の色についても同様の動作が行われる。
【0029】
印刷装置1では、まず、印刷対象となる基材9が印刷装置1内に搬送され、ステージ21上に載置されて保持される(ステップS11)。続いて、移動制御部42がステージ移動機構22およびヘッド移動機構24を制御することによりヘッド3が基材9の(−Y)側の所定の初期位置(主走査方向および副走査方向の双方の初期位置)に配置される(すなわち、ヘッド3が原点復帰する。)(ステップS12)。なお、最初のステップS13の処理はスキップされる。そして、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し、ヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査する(ステップS14)。
【0030】
図5は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図である。図5では、ヘッド3の複数の主走査における一の色のノズルユニット(ただし、それぞれ符号31A〜31Dを付している。)も二点鎖線にて図示している。
【0031】
描画位置配列80は、基材9の主面上において副走査方向に平行な行方向(図5中のX方向)および主走査方向に平行な列方向(図5中のY方向)に配列された複数の描画位置の集合であり、図5では各描画位置を符号81を付す矩形にて示している。本実施の形態では、描画位置81の行方向のピッチおよび列方向のピッチの双方(以下、「描画ピッチ」とも呼ぶ。)が、吐出口ピッチVの1/4倍とされ、既述のように吐出口ピッチVが150dpiに相当する場合には、描画ピッチは600dpiに相当する42μmとなる。なお、描画位置81の行方向のピッチおよび列方向のピッチは吐出口ピッチVの1/6倍や1/8倍等とされてもよく、また、行方向のピッチと列方向のピッチとが異なっていてもよい。
【0032】
印刷装置1では、ヘッド3が基材9に対して主走査方向に相対的に移動する(主走査する)ことにより、ヘッド3の複数の吐出口311のそれぞれが列方向に並ぶ描画位置81(以下、「描画位置の列」とも呼ぶ。)を通過しつつ、吐出制御部41の制御に基づいて各吐出口311により対応する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。このとき、ヘッド3の光照射部38から基材9上に照射される紫外線により基材9上に吐出された直後のインク(の微小液滴)が硬化することにより、当該インクが後述するヘッド3の他の主走査時に近傍の位置(同位置を含む。)に吐出される他のインクと混ざることはない。図5では、1回目の主走査の際のノズルユニットを符号31Aを付して示しており、各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「1」と記す丸にて示している。図5では、描画データに合わせてインクの吐出が行われない場合も、ドットが仮想的に形成されるものとしている。
【0033】
図6.Aないし図6.Dは、基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図6.Aないし図6.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。また、図6.Aないし図6.Dのそれぞれでは、上段にヘッド3の吐出口311から吐出されて硬化するインクの断面を示し、下段にヘッド3側から基材9を見た場合におけるインクを示している(後述の図9.Aないし図9.Dにおいて同様)。さらに、図6.Aないし図6.Dでは各吐出口311が通過する基材9上の描画位置81に対して必ずインクが吐出されるものとしている(後述の図9.Aないし図9.D、図12.Aないし図12.D、図15.Aないし図15.D、図16.Aないし図16.D、図19.Aないし図19.D、図21.Aないし図21.D、並びに、図22.Aないし図22.Dにおいて同様)。
【0034】
図6.Aの上段(並びに、図6.Bないし図6.Cのそれぞれの上段)にて符号A1を付す矢印にて示すように、実際のノズルユニット31では、複数の吐出口311においてインクの吐出方向等にばらつきがあるため、基材9上にてインクが付着する複数の位置は、必ずしもX方向に等間隔とはならない。また、基材9上に最初に付着するインクは基材9に沿って広がり、硬化したインクの基材9に対する高さは比較的低くなる。なお、図6.Aないし図6.Dでは、吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきを強調している(後述の図9.Aないし図9.Dにおいて同様)。
【0035】
印刷装置1では、各吐出口311が通過する基材9上の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われ、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとステージ21の移動(ヘッド3の主走査)が停止される(ステップS16)。続いて、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻され(ステップS17)、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、ヘッド3がX方向に移動(副走査)し、行方向に関して、ノズルユニット31の各吐出口311が1回目の主走査にていずれかの吐出口311が通過した描画位置の列の(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に配置される(図5中の符号31Bを付すノズルユニット参照)(ステップS19)。後述するように、ステップS19におけるヘッド3の行方向の移動量は、吐出口ピッチVよりも大きくされるため、実際には、ノズルユニット31の全ての吐出口311が1回目の主走査にて吐出制御が行われた描画位置の列の(+X)側に隣接した位置に配置される訳ではない(以下、同様)。
【0036】
ヘッド3の副走査が完了すると、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。図5では、ヘッド3の2回目の主走査にて各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「2」と記す丸にて示している。このとき、2回目の主走査時に吐出されるインク(の微小液滴)は、図6.Bの上段および下段に示すように、原則として基材9上において1回目の主走査時に付着したインクの(+X)側に隣接する位置に付着するが、ノズルユニット31の複数の吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきにより、基材9上において1回目の主走査時に吐出されて硬化したインクと、2回目の主走査時に吐出されて硬化したインクとの間のX方向の間隔は必ずしも均一とはならない。また、基材9上に付着したインクは1回目の主走査時に付着したインクほどは基材9に沿って広がらず、(硬化後の)インクの基材9に垂直な方向に関する厚さは比較的大きくなる。なお、後述する3回目の主走査時に吐出されるインクおよび4回目の主走査時に吐出されるインクにおいても同様の傾向となる。
【0037】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻される(ステップS17)。続いて、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、ヘッド3が副走査し、行方向に関して、ノズルユニット31の各吐出口311が2回目の主走査にていずれかの吐出口311が通過した描画位置の列の(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に配置される(図5中の符号31Cを付すノズルユニット参照)(ステップS19)。そして、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。図5では、ヘッド3の3回目の主走査にて各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「3」と記す丸にて示している。また、図6.Cの上段および下段に示すように、3回目の主走査時に吐出されるインクは、基材9上において2回目の主走査時に付着したインクの(+X)側に隣接する位置に付着する。
【0038】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へ移動するとともに(ステップS17)、ヘッド3が副走査し、行方向に関して各吐出口311が3回目の主走査にていずれかの吐出口311が通過した描画位置の列の(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に配置される(図5中の符号31Dを付すノズルユニット参照)(ステップS18,S19)。その後、ヘッド3の主走査に同期して、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS14,S15)。図5では、ヘッド3の4回目の主走査にて各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「4」と記す丸にて示している。また、図6.Dの上段および下段に示すように、4回目の主走査時に吐出されるインクは、原則として基材9上において3回目の主走査時に付着したインクの(+X)側に隣接する位置に付着し、1回目の主走査時に付着したインクと3回目の主走査時に付着したインクとの間に挟まれ、通常、他のインクよりも基材9から盛り上がる。ここでは、図6.Dの下段にて符号B1を付す矢印にて示すように、吐出口311の吐出方向のばらつきに起因して基材9上にインクがほとんど付着せず濃度が低い部位が発生しているものとする。ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻される(ステップS17)。
【0039】
ここで、図5中の描画位置配列80において行方向に一列に連続する4個の描画位置81の集合(図5中にて符号82を付す太線の矩形にて囲む描画位置81の集合であり、以下、「描画ブロック82」という。)に着目すると、各描画ブロック82では、ヘッド3(のいずれかの吐出口311)が通過する毎にいずれかの描画位置81に対して吐出口311からのインクの吐出制御が1回行われ、描画ブロック82内の描画位置81の個数に対応する回数だけヘッド3が通過することにより、描画ブロック82内の各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了している。したがって、描画位置配列80は、行方向に連続するとともに互いに異なる主走査時にインクの吐出制御が1回行われる描画位置81の集合である複数の描画ブロック82に分割されていると捉えることができる。なお、描画ブロック82のX方向の幅は吐出口ピッチVに等しい。
【0040】
後述するように、上記ステップS19,S14〜S17は、描画位置配列80の全ての描画位置81のそれぞれに対して1回の吐出制御が行われるまで繰り返され(ステップS18)、基材9の全体に画像が印刷される。
【0041】
なお、既述のように、印刷装置1では複数のノズルユニット31において、互いに対応する吐出口311はX方向の同じ位置に配置されるため(図2参照)、実際には、ヘッド3の一の主走査により描画ブロック82において同じ描画位置81に対してCMYKのインクが吐出され、その後、光照射部38により同時に硬化される。この場合でも、CMYKのインクは硬化前に完全に混ざり合うことはないため、各色のインクにおいて、吐出口311のばらつきに起因する吐出位置のばらつきはある程度維持される。
【0042】
ここで、ステップS19におけるヘッド3の行方向への移動量について説明する。図7はヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図7の上段では、ノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、ヘッド3の1〜5回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形331〜335にて表している。また、図7の下段はこのノズルユニット31から吐出されるインクの色と同じ色成分の画像を示している。
【0043】
既述のように、印刷装置1の各ノズルユニット31では300個の吐出口311が形成されており、ヘッド3の1回目の主走査では、基材9上において行方向に並ぶ300個の描画ブロック82に相当する範囲において、各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われる。また、一の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、インクの吐出制御が行われる描画位置81を対象描画位置81と呼ぶとすると、ヘッド3の1回目の主走査では、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。
【0044】
ヘッド3の1回目の主走査後の副走査では、ヘッド3は(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図7中の矩形331と矩形332との間のX方向の距離)だけ移動する。このとき、ノズルユニット31の吐出口311の位置が吐出口ピッチVの整数倍に吐出口ピッチVの1/4倍を加えた距離だけ行方向に移動するため、X方向のみに着目すると、1回目の主走査にてノズルユニット31の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の描画位置81から(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に、このノズルユニット31のいずれかの吐出口311が配置される(ただし、1回目の主走査にて(−X)側の74個の吐出口311が通過した描画ブロック82を除く。)。したがって、2回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(正確には、1回目および2回目の主走査においてノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(以下同様))に対して、図5中の「1」が記された描画位置81から「2」が記された描画位置81に対象描画位置81が切り替えられる。また、ヘッド3の副走査時の行方向への移動量が描画ブロック82の行方向の幅である描画ピッチの4倍(吐出口ピッチV)よりも大きいため、各描画ブロック82に対して1回目の主走査にて通過した吐出口311とは異なる吐出口311が2回目の主走査にて通過することとなる。
【0045】
同様に、2回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(すなわち、図7中の矩形332と矩形333との間のX方向の距離)だけ移動することにより、3回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図5中の「2」が記された描画位置81から「3」が記された描画位置81に対象描画位置81が切り換えられ、3回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(すなわち、図7中の矩形333と矩形334との間のX方向の距離)だけ移動することにより、4回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図5中の「3」が記された描画位置81から「4」が記された描画位置81に対象描画位置81が切り替えられる。
【0046】
ここで、1〜3回目の主走査の終了後における移動量の総和は、吐出口ピッチVの(222+3/4)倍となるため、4回目の主走査の際におけるノズルユニット31の複数の吐出口311(矩形334)のうち最も(−X)側の吐出口311により、1回目の主走査において(+X)側から(−X)方向に向かって78番目の吐出口311が通過した各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われることとなる。したがって、1回目の主走査にてノズルユニット31の(+X)側の78個の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対してインクの吐出制御が1回実行されたこととなる。4回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82のみに着目すると、最も(−X)側の描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われ、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81に2番目のインクの吐出制御が行われ、(−X)側から3個目の描画位置81に3番目のインクの吐出制御が行われ、最も(+X)側の描画位置81に4番目のインクの吐出制御が行われる。
【0047】
後述するように、4回目の主走査以降においても、ヘッド3は(+X)方向へと間欠的に移動するため、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の222個の吐出口311が通過した各描画ブロック82においては、インクの吐出制御が行われない描画位置81が存在する。よって、図3の描画データ生成部43では、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の222個の吐出口311が通過する各描画ブロック82の描画位置81に対してインクの吐出が行われないように、ダミーデータ(余白)を元の画像データに予め挿入した後に、描画データが生成される。なお、図7の下段では、矩形K1,K2によりダミーデータに対応する画像と元の画像とをそれぞれ抽象的に示している。
【0048】
続いて、4回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(77+(1/4))倍(すなわち、図7中の矩形334と矩形335との間のX方向の距離)だけ移動することにより、5回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して図5中の「1」が記された描画位置81を対象描画位置81とすることが可能となる。このとき、矩形335にて示す複数の吐出口311の(−X)側の74個の吐出口311が通過する各描画ブロック82では、2〜4回目の主走査により、図5中の「2」〜「4」が記された描画位置81に対してインクの吐出制御が既に完了しており、5回目の主走査によりこの描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対する1回のインクの吐出制御が完了することとなる。換言すれば、5回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82のみに着目すると、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われ、(−X)側から3個目の描画位置81に2番目のインクの吐出制御が行われ、最も(+X)側の描画位置81に3番目のインクの吐出制御が行われ、最も(−X)側の描画位置81に4番目のインクの吐出制御が行われる。
【0049】
なお、5回目の主走査時のヘッド3の位置(矩形335)は、1回目の主走査時のヘッド3の位置(矩形331)から吐出口ピッチVの300倍だけX方向に離れており、1回目の主走査時にノズルユニット31の最も(+X)側の吐出口311が通過した描画ブロック82の(+X)側に隣接する描画ブロック82を、5回目の主走査におけるノズルユニット31の最も(−X)側の吐出口311が通過することとなる。
【0050】
ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更される。すなわち、αを0以上の整数として、(1+4α)回目の主走査、(2+4α)回目の主走査、(3+4α)回目の主走査、および、(4+4α)回目の主走査の終了後における副走査時の移動量がそれぞれ上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものと等しくされる。以下、(1+4α)回目の主走査、(2+4α)回目の主走査、(3+4α)回目の主走査、および、(4+4α)回目の主走査の終了後における副走査時の移動量を示す情報をインタレース情報という。
【0051】
このとき、(1+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82、(2+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82、(3+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82、および、(4+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82のそれぞれでは、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対する吐出制御の順序は同一となるが(以下、吐出制御の順序が同一となる描画ブロック82の集合を「同一順序の描画ブロック群」という。)、これらの同一順序の描画ブロック群の間では当該吐出制御の順序は異なる。
【0052】
印刷装置1では、インタレース情報に基づいてヘッド3を副走査しつつ、各吐出口311が通過する描画位置81に対してインクの吐出制御を行うことにより、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81(ただし、ダミーデータに基づくインクの吐出制御が行われるものを除く。)に対して、ノズルユニット31におけるインクの吐出制御が1回行われる。以下の説明では、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対してインクの吐出制御を1回行う動作を、全体塗布動作と呼ぶ。既述のように、インクの吐出制御では必ずしもインクが吐出されるとは限らないないため、1回の全体塗布動作にて基材9上の描画位置配列80の全体にインクが付着する訳ではない。
【0053】
以上のようにして1回目の全体塗布動作が完了すると(図4:ステップS18)、印刷装置1では、2回目の全体塗布動作が行われることが確認され(ステップS20)、ヘッド3が基材9に対して主走査方向および副走査方向の双方の初期位置に配置される(ステップS12)。そして、ヘッド3が行方向(副走査方向)に所定距離だけシフトする(ステップS13)。
【0054】
図8は、2回目の全体塗布動作時におけるヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図7と同様に、図8の上段では、ノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、2回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1〜5回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形341〜345にて表している。また、図8では、1回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1回目の主走査時における複数の吐出口311を、符号331を付す破線の矩形にて示している。図8に示すように、ステップS13の処理により、ヘッド3は副走査方向の初期位置から吐出口ピッチVのN倍(ただし、Nは1以上300未満の整数)だけ(−X)側にシフトされる。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、Nは1に近い値であるものとする。
【0055】
続いて、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。このとき、ヘッド3が1回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査時における位置(矩形331)から吐出口ピッチVの整数倍だけシフトしていることにより、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。
【0056】
図9.Aないし図9.Dは、2回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図9.Aないし図9.Dでは、ヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。
【0057】
既述のように、2回目の全体塗布動作における1回目の主走査時においても、1回目の全体塗布動作における1回目の主走査時と同様に、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされるが、ヘッド3が初期位置から行方向に所定の距離だけシフトされていることにより、対象描画位置81に対する吐出制御の対象とされる吐出口311は1回目の全体塗布動作時のものとは異なっている。したがって、図9.Aの上段および下段に示すように、各吐出口311から吐出されるインクが基材9上に付着する位置が、1回目の全体塗布動作の1回目の主走査時におけるインクの付着位置から僅かに異なる。
【0058】
なお、印刷装置1では、図10の上段に示す1回目の全体塗布動作における1回目の主走査時のノズルユニット31に対する描画データが、図10の上側のノズルユニット31の下に抽象的に示すように準備される場合、2回目の全体塗布動作における1回目の主走査時のノズルユニット31は、図10中の下側のノズルユニット31にて示すように、1回目の全体塗布動作時の位置から(−X)方向に吐出口ピッチVのN倍だけシフトされているため、描画データ生成部43では、図10の最も下に示すように、概念的には画像をシフトさせて(図10の最も下においてシフト前後の画像をそれぞれ破線および実線にて示す。)描画データが生成される。図8の下段では、1回目の全体塗布動作時における描画データに対応する画像(矩形K1,K2)に、追加のダミーデータ(余白)に対応する画像を矩形K3にて追加して、2回目の全体塗布動作時における描画データに対応する画像を抽象的に示している(後述の図13において同様)。
【0059】
このようにして、対象描画位置81に対してインクの吐出制御が行われ、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとステージ21の移動が停止される(ステップS16)。続いて、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻され(ステップS17)、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、1回目の全体塗布動作と同じインタレース情報に基づいてヘッド3が(+X)方向に副走査する。具体的には、図8に示すように、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図8中の矩形341と矩形342との間のX方向の距離)だけ移動する(ステップS19)。そして、ヘッド3の主走査が開始され(ステップS14)、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81を対象描画位置81としてインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。2回目の全体塗布動作における2回目の主走査時においても、図9.Bの上段および下段に示すように、各吐出口311から吐出されるインクが基材9上に付着する位置が、1回目の全体塗布動作の2回目の主走査時におけるインクの付着位置から僅かにずれる。
【0060】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へと移動する(ステップS17)。その後、上記ステップS19,S14〜S17が繰り返されることにより(ステップS18)、ヘッド3が副走査しつつ、ヘッド3の3回目の主走査および4回目の主走査が行われる。このとき、1回目の全体塗布動作と同じインタレース情報に基づいてヘッド3が副走査することにより、3回目の主走査の直前におけるヘッド3の副走査距離は、図8に示すように吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図8中の矩形342と矩形343との間のX方向の距離)とされ、3回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において(−X)側から3個目の描画位置81が対象描画位置81となり、4回目の主走査の直前におけるヘッド3の副走査距離も、吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図8中の矩形343と矩形344との間のX方向の距離)とされ、4回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81となる。したがって、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了し、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する各描画ブロック82では、2回目の全体塗布動作において、1回目の全体塗布動作と同じ吐出制御の順序にて4個の描画位置81にそれぞれ1回だけインクの吐出制御が行われる。また、2回目の全体塗布動作における3回目の主走査および4回目の主走査時においても、図9.Cの上段および下段、並びに、図9.Dの上段および下段にそれぞれ示すように、各吐出口311から吐出されるインクが基材9上に付着する位置が、1回目の全体塗布動作における対応するインクの付着位置から僅かにずれる。
【0061】
印刷装置1では、4回目の主走査の終了後には、1回目の全体塗布動作と同様にヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(77+(1/4))倍(すなわち、図8中の矩形344と矩形345との間のX方向の距離)だけ移動することにより、5回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされ、対象描画位置81に対するインクの吐出制御が行われる(ステップS18,S19,S14〜S17)。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対して、吐出制御の対象とされる吐出口311を1回目の全体塗布動作におけるものから変更しつつ2回目の全体塗布動作に係るインクの吐出制御が1回行われ(ステップS18,S19,S14〜S17)、印刷装置1における印刷動作が完了する(ステップS20)。なお、2回目の全体塗布動作においても、複数の同一順序の描画ブロック群が存在する。
【0062】
ここで、仮に、図4のステップS13が省略されて、2回目の全体塗布動作においてヘッド3の副走査方向への初期のシフトが行われない場合には、描画位置配列80の各描画位置81に対する吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作におけるものと同一となり、2回目の全体塗布動作によって図6.Dの上段に示すインクの重なり状態が繰り返されてしまい、重ね印刷において基材9上に印刷された画像(印刷画像)に濃淡ムラが発生する。実際には、インクの重なり状態は列方向に連続するため、印刷画像において列方向に伸びるバンディングムラが発生してしまう。これに対し、図1の印刷装置1では、2回目の全体塗布動作において各描画位置81に対する吐出制御の対象とされるヘッド3の吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更されることにより、吐出口311のばらつきに起因する濃淡ムラが分散され、重ね印刷において、印刷画像に吐出口の吐出方向等のばらつきに起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る印刷装置1の動作例について説明する。図11は印刷装置1が基材9上に画像を印刷する動作の流れを示す図であり、図4のステップS12とステップS13との間に行われる処理を示している。本動作例では、ヘッド3が初期位置に配置された後(図4:ステップS12)、第1の実施の形態と同様に、上記のステップS14〜S17,S19におけるヘッド3の主走査および副走査を繰り返すことにより(ステップS18)、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対してインクの吐出制御が1回行われる(すなわち、1回目の全体塗布動作が行われる。)。なお、最初のステップS13の処理、および、図11の最初のステップS21の処理はスキップされる。
【0064】
このとき、インタレース情報も上記の場合と同様とされるため、ヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置はそれぞれ図12.Aないし図12.Dに示すようになる。図12.Aないし図12.Dは、図6.Aないし図6.Dにそれぞれ対応するが、図12.Aないし図12.Dでは吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきを強調して表していないため、図6.Aないし図6.Dに示すものとは僅かに異なっている。図12.Aないし図12.Dに示すように、基材9上に後から吐出されたインクほど基材9から高く盛り上がる傾向があり、4回目の主走査にて基材9上に吐出されたインクは最も高く盛り上がる。なお、図12.Aないし図12.Dでは、ヘッド3側から基材9を見た場合におけるインクについては図示していない。
【0065】
また、既述のように、印刷装置1では複数のノズルユニット31において、互いに対応する吐出口311はX方向の同じ位置に配置される(図2参照)。したがって、ヘッド3の一の主走査により描画ブロック82において同じ描画位置81に対してCMYKのインクが吐出され、その後、光照射部38により同時に硬化されるため、CMYKのインクが各描画位置81に吐出されている状態も、一の色のインクのみが各描画位置81に吐出されるものとして描いている図12.Aないし図12.Dとほぼ同様となる。
【0066】
1回目の全体塗布動作が完了すると(ステップS18)、印刷装置1では、2回目の全体塗布動作が行われることが確認され(ステップS20)、ヘッド3が基材9に対して主走査方向および副走査方向の双方の初期位置に配置される(ステップS12)。続いて、2回目の全体塗布動作におけるインタレース情報が更新された後(図11:ステップS21)、ヘッド3が行方向(副走査方向)に所定距離だけシフトする(図4:ステップS13)。なお、更新後のインタレース情報の内容については後述する。
【0067】
図13は、2回目の全体塗布動作時におけるヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図13の上段では、ノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、2回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1〜5回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形351〜355にて表している。また、図13では、1回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1回目の主走査時における複数の吐出口311を、符号331を付す破線の矩形にて示している。図13に示すように、ステップS13の処理により、ヘッド3は副走査方向の初期位置から吐出口ピッチVの(N+(1/4))倍(ただし、Nは1以上300未満の整数)だけ(−X)側にシフトされる。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、Nは1に近い値であるものとする。
【0068】
続いて、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。
【0069】
図14は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図であり、図14では、ヘッド3の複数の主走査におけるノズルユニット(ただし、それぞれ符号31E〜31Hを付している。)も二点鎖線にて図示している。既述のように、ヘッド3が1回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査時における位置から吐出口ピッチVの(N+(1/4))倍だけ(−X)方向にシフトしていることにより、2回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査では、図14中に符号31Eを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(+X)側の描画位置81を対象描画位置81としてインクの吐出制御が行われる。
【0070】
図15.Aないし図15.Dは、2回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図15.Aないし図15.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。1回目の全体塗布動作の1ないし4回目の主走査にてヘッド3が通過するとともに、2回目の全体塗布動作の1回目の主走査にてヘッド3が通過する基材9上の位置では、基材9から最もインクが盛り上がる位置に対して最初のインクの吐出制御が行われ(図12.D参照)、図15.Aに示すように、基材9上にインク(図15.A中にて符号911を付すインク)が付着する。
【0071】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へと移動し(ステップS17)、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、1回目の全体塗布動作とは異なるインタレース情報に基づいてヘッド3が(+X)方向に副走査する(ステップS19)。具体的には、図13に示すように、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(3/4))倍(図13中の矩形351と矩形352との間のX方向の距離)だけ移動する。そして、ヘッド3の主走査が開始され(ステップS14)、図14中に符号31Fを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において(+X)側から(−X)方向に向かって2個目の描画位置81を対象描画位置81としてインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。2回目の全体塗布動作における2回目の主走査時には、図15.Bに示すように、基材9上において1回目の主走査時に付着したインク911の(−X)側に隣接する位置にインク(図15.B中にて符号912を付すインク)が付着する。このとき、インク911によりインク912が基材9におよそ沿う方向に広がることがある程度抑制される。
【0072】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へと移動する(ステップS17)。その後、上記ステップS19,S14〜S17が繰り返されることにより(ステップS18)、ヘッド3が副走査しつつ、ヘッド3の3回目の主走査および4回目の主走査が行われる。このとき、3回目の主走査の直前のヘッド3の副走査距離は、図13に示すように吐出口ピッチVの(74+(3/4))倍(図13中の矩形352と矩形353との間のX方向の距離)とされ、図14中に符号31Gを付すノズルユニットにて示すように、3回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において(+X)側から3個目の描画位置81が対象描画位置81となる。そして、図15.Cに示すように、基材9上において2回目の主走査時に付着したインク912の(−X)側に隣接する位置にインク(図15.C中にて符号913を付すインク)が付着する。このとき、インク912によりインク913が基材9におよそ沿う方向に広がることがある程度抑制される。
【0073】
また、4回目の主走査の直前のヘッド3の副走査距離も、吐出口ピッチVの(74+(3/4))倍(図13中の矩形353と矩形354との間のX方向の距離)とされ、図14中に符号31Hを付すノズルユニットにて示すように、4回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81となる。そして、図15.Dに示すように、基材9上において1回目の主走査時に付着したインク911と3回目の主走査時に付着したインク913との間にインク(図15.D中にて符号914を付すインク)が付着する。このとき、インク911およびインク913によりインク914が基材9におよそ沿う方向に広がることが抑制される。
【0074】
このように、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了し、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する各描画ブロック82では、2回目の全体塗布動作において、1回目の全体塗布動作とは反対の吐出制御の順序にて4個の描画位置81にそれぞれ1回だけインクの吐出制御が行われる。これにより、全体塗布動作が繰り返される際に、図12.Dのように、先行する全体塗布動作にて各描画位置81に対してインクが吐出されたと想定した場合に、基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われ、各描画ブロック82内にて互いに隣接する2つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序は、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なることとなる。
【0075】
印刷装置1では、4回目の主走査の終了後には、インタレース情報に従ってヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍(すなわち、図13中の矩形354と矩形355との間のX方向の距離)だけ移動することにより、5回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる(ステップS18,S19,S14〜S17)。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対して、2回目の全体塗布動作に係るインクの吐出制御が1回行われる。実際には、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれにおいて、複数の同一順序の描画ブロック群が存在するが、インタレース情報が更新されることにより、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対する吐出制御の順序は、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なっている。
【0076】
ここで、仮に図11のステップS21が省略されて、2回目の全体塗布動作にてインタレース情報が更新されない(すなわち、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作が同じインタレース情報に基づいて行われる)場合には、2回目の全体塗布動作においてヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置はそれぞれ図16.Aないし図16.Dに示すようになる。この場合、2回目の全体塗布動作では、描画ブロック82の描画位置81の集合に対するインクの吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものと同一となり、図12.Dに示すインクの重なり状態が繰り返されて、図16.Dに示すようにインクの堆積における高低差が増大されてしまい、印刷画像において吐出制御の順序に起因する濃淡ムラが強調されて目立ち易くなる。実際には、図16.Dに示すインクの重なり状態は列方向に連続するため、印刷画像において列方向に伸びるとともに周期的なバンディングムラが発生してしまう。なお、図16.Aないし図16.Dは、図9.Aないし図9.Dにそれぞれ対応するが、図16.Aないし図16.Dでは吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきを強調していないため、図9.Aないし図9.Dに示すものとは異なっている。
【0077】
これに対し、本動作例に係る印刷装置1では、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報が更新されることにより、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作から変更される。これにより、2回目の全体塗布動作によりインクの堆積における高低差が増大することが防止され、重ね印刷において、描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0078】
また、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれ、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれる各描画ブロック82では、1回目の全体塗布動作にて基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して2回目の全体塗布動作にて最初のインクの吐出制御が行われることにより、バンディングムラが発生することが容易に抑制されており、当該描画ブロック82内にて互いに隣接する2つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なることにより、バンディングムラが発生することがさらに抑制される。
【0079】
実際には、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれにおいて複数の同一順序の描画ブロック群が存在するため、描画位置配列80の全体に対してこのような効果が生じる訳ではないが、描画位置配列80の複数の描画ブロック82のうち少なくとも一部のそれぞれにおいて、1回目の全体塗布動作にて基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して2回目の全体塗布動作にて最初のインクの吐出制御が行われる、または、互いに隣接する2つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なることにより、好ましい画像を適切に印刷することができる。
【0080】
以上の説明では、説明の便宜上、ステップS13におけるヘッド3のシフト量が吐出口ピッチVに近い(すなわち、Nが1に近い値である)ものとしたが、仮に、図17に示すように、ヘッド3の組立精度の問題により、ヘッド3に設けられるノズルユニット31が行方向(X方向)に対して傾斜して吐出口311の配列方向が傾く場合、ヘッド3の1回目の主走査にてノズルユニット31の最も(+X)側の吐出口311aからインクが吐出される基材9上の位置と、5回目の主走査にてノズルユニット31(図17中にて二点鎖線にて示す。)の最も(−X)側の吐出口311bからインクが吐出される基材9上の位置との間のX方向の距離(図17中にて符号βを付す矢印にて示す距離)が、吐出口ピッチVよりも大きくなってしまう。なお、図17中では、吐出口311の配列方向がX方向に沿う場合のノズルユニット31を細い破線にて図示している。
【0081】
実際には、これらの位置の間にもヘッド3の他の主走査にてインクが吐出されるが、1回目の全体塗布動作の直後の印刷画像において、X方向に関してこれらの位置の間では他の部位に比べて濃度が低くなってしまう。この場合に、ステップS13におけるヘッド3のシフト量が吐出口ピッチVに近いものとされると、1回目の全体塗布動作の直後の印刷画像において濃度が低くなる部位の近傍に、2回目の全体塗布動作においても濃度が低く印刷されてしまうため、印刷画像の品質が低下してしまう。したがって、印刷装置1では、ヘッド3の組立精度によっては、ステップS13におけるヘッド3のシフト量をノズルユニット31の吐出口311の個数に吐出口ピッチVを乗じた値の1/4倍以上かつ3/4倍以下の距離として、2回目の全体塗布動作におけるヘッド3の各主走査時の行方向に関する位置が、1回目の全体塗布動作にて基材9上の同位置を通過する対応する主走査時の行方向に関する位置から当該距離だけ相違するようにすることが好ましい。これにより、万一、複数の吐出口311の配列方向が行方向に対して傾斜する場合であっても、傾斜の影響により1回目の全体塗布動作の直後の印刷画像において濃度が低くなる部位と、2回目の全体塗布動作において濃度が低く印刷されてしまう部位とをX方向に十分に離すことができ、印刷画像の品質に対する吐出口311の傾斜の影響を抑制することが可能となる。
【0082】
ところで、仮に、図4のステップS13を省略して上記動作を行った場合に、1回目および2回目の双方の全体塗布動作において4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する各描画ブロック82に着目すると、1回目の全体塗布動作では、上記動作例の1回目の全体塗布動作と同様に、4個の描画位置81において(−X)側から(+X)方向に向かって順に吐出制御が行われる。2回目の全体塗布動作では、1回目の主走査開始前のヘッド3のシフトが省略されることにより、1回目の主走査にて最も(−X)側の描画位置81にインクの吐出制御が行われ、その後、インタレース情報に従ってヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍だけ移動することにより、2回目の主走査にて(−X)側の描画位置81から吐出口ピッチVの(3/4)倍(すなわち、描画ピッチの3倍)だけ離れた最も(+X)側の描画位置81にインクの吐出制御が行われる。2回目の主走査の終了後、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍だけ移動することにより、3回目の主走査にて(−X)側から(+X)方向に向かって3個目の描画位置81に対してインクの吐出制御が行われ、続いて、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍だけ移動することにより、4回目の主走査にて(−X)側から2個目の描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる。このように、図4のステップS13を省略して上記動作を行った場合、1回目の全体塗布動作では、X方向に並ぶ4個の描画位置81における吐出制御の順序は(−X)側から順に1番目、2番目、3番目、4番目となり、2回目の全体塗布動作では、1番目、4番目、3番目、2番目となる。
【0083】
この場合であっても、インクの吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なるため、印刷画像において描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラの発生はある程度抑制される。しかしながら、(−X)側の描画位置81に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで同一となってしまうため、仮に、当該吐出口311に異常が生じている(他の吐出口311に比べてインクの吐出量や吐出方向が大きく異なる等)場合には、印刷画像においてバンディングムラが発生してしまう。実際には、このようなバンディングムラは、吐出口ピッチVにノズルユニット31における吐出口311の個数を乗じた周期にて発生する。したがって、印刷装置1では、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報を更新して、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序を1回目の全体塗布動作から変更するとともに、2回目の全体塗布動作の開始時にヘッド3を副走査方向にシフトして、印刷画像において描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラ、および、吐出口311の吐出方向等のばらつきに起因して生じるバンディングムラの双方が抑制されることが好ましい。
【0084】
次に、印刷装置1における他の好ましい動作例について説明する。本動作例では、上記の動作例と比較して、インタレース情報のみが相違している。
【0085】
図18は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図であり、図18では、ヘッド3の複数の主走査におけるノズルユニット(ただし、それぞれ符号31A〜31Dを付している。)も二点鎖線にて図示している。1回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査では、図18中に符号31Aを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされ、2回目の主走査では、図18中に符号31Bを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から(+X)方向に向かって3個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、3回目の主走査では、図18中に符号31Cを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から2個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、4回目の主走査では、図18中に符号31Dを付すノズルユニットにて示すように、最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。このように、1ないし4回目の主走査にてヘッド3が通過する描画ブロック82では、X方向に並ぶ4個の描画位置81において吐出制御の順序は(−X)側から(+X)方向に向かって順に1番目、3番目、2番目、4番目とされる。換言すれば、描画ブロック82では、連続する3つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続している。
【0086】
図19.Aないし図19.Dは、1回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図19.Aないし図19.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。
【0087】
図19.Aに示すように、ヘッド3の1回目の主走査にて基材9上に付着するインクは基材9に沿って広がり、基材9に垂直な方向に関する厚さは比較的小さくなる。ヘッド3の2回目の主走査では、図19.Bに示すように、1回目の主走査にて吐出されたインクのうち互いに隣接するインクの間の中央にインクが吐出され、1回目の主走査時におけるインクと同様に、基材9に沿って広がる。3および4回目の主走査のそれぞれでは、図19.Cおよび図19.Dに示すように、1および2回目の主走査にて吐出されたインクの間を埋めるようにして、インクが吐出される。したがって、3および4回目の主走査のそれぞれにて吐出されたインクは、X方向の両側の既存のインクの影響により基材9に沿う方向にあまり広がらず、他のインクよりもヘッド3側に盛り上がる。
【0088】
ヘッド3の4回目の主走査の終了後では、5回目の主走査にてノズルユニット31の各吐出口311が描画ブロック82の最も(−X)側の描画位置81を通過するようにヘッド3が副走査する。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対してインクの吐出制御が1回行われる。このとき、基材9上には複数の同一順序の描画ブロック群が存在する。
【0089】
また、2回目の全体塗布動作の際には、インタレース情報が更新されるとともにヘッド3が初期位置から行方向にシフトされる。そして、1回目の主走査では、図20中に符号31Eを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81とされ、2回目の主走査では、図20中に符号31Fを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、3回目の主走査では、図20中に符号31Gを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から3個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、4回目の主走査では、図20中に符号31Hを付すノズルユニットにて示すように、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。このように、2回目の全体塗布動作にて1ないし4回目の主走査にてヘッド3が通過する描画ブロック82では、X方向に並ぶ4個の描画位置81において吐出制御の順序は(−X)側から順に4番目、2番目、3番目、1番目とされる。換言すれば、描画ブロック82に含まれる連続する3つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続するとともに、中央の描画位置81と当該他の2つの描画位置81との間の吐出制御の前後関係が、1回目の全体塗布動作におけるものから反転される。
【0090】
図21.Aないし図21.Dは、2回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図21.Aないし図21.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。ヘッド3の1および2回目の主走査では、図21.Aおよび図21.Bに示すように、1回目の全体塗布動作において基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81であると想定される位置にインクが吐出され、インクは基材9におよそ沿う方向に広がることとなる。また、3および4回目の主走査では、図21.Cおよび図21.Dに示すように、1および2回目の主走査にて吐出されたインクの間を埋めるようにして、インクが吐出される。このとき、X方向の両側のインク(1および2回目の主走査時におけるインク)が壁としての役割を果たすことにより、3および4回目の主走査にて吐出されるインクが盛り上がり、2回目の全体塗布動作の1ないし4回目の主走査にて吐出されたインクのヘッド3側の表面が、全体的にほぼ同じ高さとなる。
【0091】
実際には、ヘッド3の4回目の主走査の終了後では、5回目の主走査にてノズルユニット31の各吐出口311が描画ブロック82の最も(+X)側の描画位置81を通過するようにヘッド3が副走査する。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対して2回目の全体塗布動作に係るインクの吐出制御が1回行われる。2回目の全体塗布動作においても、基材9上には複数の同一順序の描画ブロック群が存在することとなる。
【0092】
ここで、仮に図11のステップS21が省略されてインタレース情報が更新されない(すなわち、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作が同じインタレース情報に基づいて行われる)場合には、2回目の全体塗布動作にて、描画ブロック82の描画位置81の集合に対するインクの吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものと同一となり、1ないし4回目の主走査において基材9上に付着するインクの状態はそれぞれ図22.Aないし図22.Dに示すようになる。このように、インタレース情報が更新されない場合には、図22.Dに示すように、図19.Dに示すインクの重なり状態が繰り返されて濃淡ムラが強調されてしまい、印刷画像においてバンディングムラが発生してしまう。
【0093】
これに対し、本動作例に係る印刷装置1では、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報が更新されることにより、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作から変更される。これにより、2回目の全体塗布動作によりインクの堆積における高低差が増大することが防止され、重ね印刷において、描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが印刷画像にて発生することを抑制することができる。
【0094】
また、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査において各描画位置81に対する1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれ、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81に対する1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれる各描画ブロック82では、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれにおいて、連続する3つの描画位置81の各組合せにて、中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続するとともに、中央の描画位置81と当該他の2つの描画位置81との間の吐出制御の前後関係が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで反転される。これにより、印刷画像において対応する部分ではバンディングムラが発生することが確実に抑制される。
【0095】
実際には、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれに関して複数の同一順序の描画ブロック群が存在するため、描画位置配列80の全体に対してバンディングムラの発生が完全に抑制される訳ではないが、描画位置配列80の複数の描画ブロック82のうち少なくとも一部のそれぞれにおいて、各全体塗布動作時に連続する3つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれにて中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続し、全体塗布動作を繰り返す際に、当該中央の描画位置81と当該他の2つの描画位置81との間の吐出制御の前後関係が先行する全体塗布動作時におけるものから反転されることにより、好ましい画像を適切に印刷することができる。なお、このような描画ブロック82においても、全体塗布動作が繰り返される際に、先行する全体塗布動作にて各描画位置81に対してインクが吐出されたと想定した場合に、基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われることが好ましい。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0097】
印刷装置1では、例えば、CMYKのノズルユニット31がX方向に描画ピッチずつ順にずらして配置されてもよい。このようなノズルユニット31の配置では、ヘッド3の一の主走査により描画ブロック82において行方向に並ぶ4個の描画位置81に互いに異なる色のインクが吐出され、その後、光照射部38により同時に硬化される。この場合でも、CMYKのインクは硬化前に完全に混ざり合うことはないため、各色のインクにおいて、吐出口311のばらつきに起因する吐出位置のばらつきはある程度維持されてしまう。また、実際の印刷では、必ずしも全ての描画位置81にCMYKのインクが吐出される訳ではないので、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報が更新されない場合には、吐出制御の順序に起因するバンディングムラが発生する場合がある。したがって、印刷装置1では、複数の色成分のノズルユニット31の配置に関係なく、2回目の全体塗布動作において、各描画位置81に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更される、または/および、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作から変更されることが重要となる。なお、図1の印刷装置1のヘッド3におけるCMYKのノズルユニット31の配列順序はいかなるものであってもよい。
【0098】
印刷装置1では、基材9上に設定される描画位置配列80が、それぞれが行方向に連続する描画位置81の集合である複数の描画ブロック82に分割されており、行方向に複数の吐出口311が配列されたヘッド3を基材9に対して列方向に相対的に主走査しつつ、ヘッド3が通過する各描画ブロック82に含まれる1つの描画位置81に対するインクの吐出制御を1回行う処理を基本処理として、当該基本処理を繰り返しつつヘッド3を基材9に対して行方向に相対的に副走査することにより、列方向に並ぶ描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ描画位置配列80の各描画位置81にインクの吐出制御が1回だけ行われる(すなわち、行方向に関するインタレース処理が行われる。)。そして、2回目の全体塗布動作にて各描画ブロックにおける吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものから変更されることにより、重ね印刷を高速に行いつつ、吐出制御の順序に起因するバンディングムラが抑制される。
【0099】
しかしながら、インタレース処理の対象とされる方向は、必ずしも行方向のみであるとは限らず、基本処理においてヘッド3が通過する描画ブロックのうち所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行うようにすることにより、行方向に加えて列方向に関してもインタレース処理が行われることも考えられる。この場合に、列方向に並ぶ描画ブロックにて描画位置の集合に対する吐出制御の順序が同一に保たれるときには、全体塗布動作毎に各描画ブロックにおける吐出制御の順序を変更する本手法が採用されることが必要となる。また、一の色成分に関して複数の吐出口が行方向に関して密に配列されている場合(例えば、図2のノズルユニット31を行方向に対して大きく傾けて配置する場合)等に、列方向に連続する描画位置の集合が描画ブロックとされて、列方向に関してのみインタレース処理が行われることも考えられ、この場合に、行方向に並ぶ描画ブロックにて描画位置の集合に対する吐出制御の順序が同一に保たれるときには、全体塗布動作毎に各描画ブロックにおける吐出制御の順序を変更する本手法が採用されることが必要となる。なお、列方向に関してインタレース処理が行われる場合には、列方向に互いに隣接する2つの描画位置に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口は、通常、異なることが前提とされるため、吐出口のばらつきに起因するバンディングムラは発生しない。
【0100】
以上のように、印刷装置1では、基材9上に設定される描画位置配列が、それぞれが行方向および列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割され、複数回の全体塗布動作(重ね印刷)が行われる際に、1回の全体塗布動作として、行方向に複数の吐出口が配列されたヘッドを基材9に対して列方向に相対的に主走査しつつ、ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う基本処理と、当該基本処理を繰り返しつつヘッドを基材9に対して行方向に相対的に副走査することにより、一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ描画位置配列の各描画位置にインクの吐出制御を1回だけ行う処理とが実行される場合に、全体塗布動作毎に各描画ブロックにおける吐出制御の順序を変更してこれらの処理が繰り返されることにより、重ね印刷において、描画ブロック内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0101】
上記第1および第2の実施の形態では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、ヘッド3が行方向の描画ブロック82の幅よりも十分に長い距離だけ副走査することにより、万一、吐出口311に損傷等が生じていても、当該吐出口311を用いたインクの吐出制御が行われる位置を行方向に分散させて、印刷画像において吐出口311の損傷に起因するバンディングムラが発生することが抑制されるが、印刷装置1では、ヘッド3を描画ブロック82の幅よりも短い距離だけ副走査させて同一の吐出口311を用いて各描画ブロック82内の全ての描画位置81に対して1回の吐出制御が行われてもよい。この場合、ヘッド3が通過する描画ブロック82内の全ての描画位置81に対して1回の吐出制御が行われると、ヘッド3はノズルユニット31の吐出口311の個数に吐出口ピッチVを乗じた距離だけ大きく副走査する。このような、インタレース情報に基づく印刷動作では、描画位置配列80における全ての描画ブロック82に対して同じ順序にてインクの吐出制御を行うことができる。
【0102】
印刷装置1では、2回目の全体塗布動作の際に、ヘッド3を副走査方向にシフトすることにより、2回目の全体塗布動作において各描画位置81に対してインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更されるが、例えば、2回目の全体塗布動作においてノズルユニット31の(+X)側のいくつかの吐出口311を不使用とし、実際に使用する吐出口311の個数に合わせてインタレース情報も修正することにより、ヘッド3の初期のシフトを行うことなく、2回目の全体塗布動作において各描画位置81(ただし、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81に対する1回の吐出制御が完了する描画ブロック82における最も(−X)側の描画位置81を除く。)に対してインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更されてもよい。ただし、各描画位置81に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口311の変更を容易に行うには、2回目の全体塗布動作の際に、ヘッド3を副走査方向にシフトして、ヘッド3の各主走査時の行方向に関する位置を、先行する1回目の全体塗布動作における対応する主走査時の行方向に関する位置から異ならせることが好ましい。
【0103】
図1のヘッド3では、1回のインクの吐出制御により実際にインクを吐出する場合に、吐出口311から必ずしも1つのインクの微小液滴が吐出される必要はなく、ヘッドの仕様によっては、微小時間にほぼ同量の複数のインクの微小液滴を連続して吐出する動作が、1回のインクの吐出制御と捉えられてもよい。このようなヘッドでは、複数のインクの微小液滴のうち最初に吐出されたものにおいて、空気抵抗の影響により後続の微小液滴よりも降下速度が低くなることを利用して、空気中にてこれらのインクの微小液滴を互いに衝突させ、基材9上に1つのインクの液滴として着弾させることが可能である。
【0104】
印刷装置1では、3回以上の全体塗布動作が行われてもよい。この場合に、描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じる印刷画像でのバンディングムラを抑制するには、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対して、少なくとも1回の全体塗布動作にて他の全体塗布動作と異なる順序にてインクの吐出制御が行われることが必要となり、より好ましくは、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対して、全ての全体塗布動作にて異なる順序にてインクの吐出制御が行われる。また、吐出口311のばらつきに起因して生じる印刷画像でのバンディングムラを抑制するには、各描画位置81に対して、吐出制御の対象とされる吐出口311が少なくとも1回の全体塗布動作にて他の全体塗布動作と異なるものとされることが必要となり、より好ましくは、例えば、ノズルユニット31の吐出口311の個数に吐出口ピッチVを乗じた値を全体塗布動作の回数で除した距離を1回のシフト量としたり、各シフト量を乱数に基づいて決定して、吐出制御の対象とされる吐出口311が全ての全体塗布動作にて異なるものとされる。
【0105】
印刷装置1にて用いられる光硬化性のインクは、紫外線以外の波長帯の光(例えば、活性光線等)に対する硬化性を有するものであってもよい。この場合、光照射部38から出射される光は当該波長帯を含むものとされる。
【0106】
印刷装置1において印刷媒体を保持する保持部は、ステージ21以外のものであってもよく、例えば、印刷媒体がシート状である場合等には、ヘッド3に対向して配置されるとともに印刷媒体の印刷対象の面とは反対の面に当接するローラであってもよい。
【0107】
上記実施の形態では、ステージ21を列方向に移動するステージ移動機構22、および、ヘッド3を行方向に移動するヘッド移動機構24により、ヘッド3がステージ21に対して列方向および行方向に相対的に移動するが、印刷装置1ではヘッド3を列方向に移動する機構やステージ21を行方向に移動する機構が設けられてもよい。また、前述のように、印刷媒体を保持する保持部がローラである場合には、当該ローラを回転するモータによりヘッド3が印刷媒体に対して列方向に相対的に移動する。このように、ヘッド3を印刷媒体に対して列方向および行方向に相対的に移動する走査機構はいかなる構成であってもよい。
【0108】
上記実施の形態では、各全体塗布動作においてヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査し、(+X)方向に副走査するが、例えば、ノズルユニット31の(+Y)側にも光照射部38が設けられ、一の主走査にてヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査した後、次の主走査にてヘッド3が(−Y)方向に相対的に主走査してもよい。また、一の全体塗布動作にてヘッド3が(+X)方向に副走査し、次の全体塗布動作にてヘッド3が(−X)方向に副走査してもよい。
【0109】
印刷装置1は、プラスチック以外に、例えば、所定の材料が塗布されて平滑化されたコート紙等のインクに対する撥液性(インクの非浸透性)を有する他の印刷媒体上への印刷に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】印刷装置の外観を示す斜視図である。
【図2】ヘッドを示す底面図である。
【図3】制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】印刷装置が基材上に画像を印刷する動作の流れを示す図である。
【図5】描画位置配列を示す図である。
【図6.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図6.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図6.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図6.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図7】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図8】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図9.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図9.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図9.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図9.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図10】描画データの生成を説明するための図である。
【図11】印刷装置が基材上に画像を印刷する動作の流れの一部を示す図である。
【図12.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図12.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図12.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図12.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図13】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図14】描画ブロックに対する吐出制御の順序を説明するための図である。
【図15.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図15.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図15.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図15.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.A】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.B】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.C】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.D】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図17】吐出口の配列方向が傾斜したノズルユニットを示す図である。
【図18】描画ブロックに対する吐出制御の順序を説明するための図である。
【図19.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図19.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図19.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図19.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図20】描画ブロックに対する吐出制御の順序を説明するための図である。
【図21.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図21.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図21.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図21.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.A】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.B】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.C】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.D】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0111】
1 印刷装置
3 ヘッド
4 制御部
9 基材
21 ステージ
22 ステージ移動機構
24 ヘッド移動機構
38 光照射部
80 描画位置配列
81 描画位置
82 描画ブロック
311,311a,311b 吐出口
911〜914 インク
S12〜S21 ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式にて印刷を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、インクの微小な液滴を吐出する複数の吐出口が配列されたヘッドを印刷用紙に沿って走査することにより、印刷用紙上に印刷を行うインクジェット方式の印刷装置が用いられている。このような印刷装置では、ヘッドの各吐出口の一度の吐出動作にて吐出可能なインク量に一定の限界があるため、例えば、特許文献1では、カラーの印刷装置において、ヘッドを走査しつつ印刷用紙上に複数色のインクを吐出して印刷動作を行った後、他の色に比べて濃度の低い特定色のインクを印刷用紙上に再度重ねて吐出することにより、印刷画像において当該色の濃度を高くする手法が開示されている。また、特許文献2では、インクと希釈液との混合比を変更しつつ希釈されたインクを印刷用紙上に重複して吐出することにより、記録画像において中間階調を再現する手法が開示されている。
【0003】
一方、近年、様々な印刷媒体に印刷を行う要求があり、プラスチック(例えば、ポリカーボネートやPET(ポリエチレンテレフタレート))等の撥液性を有する印刷媒体に印刷を行う場合には、紫外線硬化性を有するインクが利用され、光照射部から照射される紫外線により、印刷媒体上に吐出された直後のインクが硬化される。
【特許文献1】特開平9−183238号公報
【特許文献2】特開2000−355111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紫外線硬化性を有するインクを利用する印刷装置において、光透過性の印刷媒体に印刷を行って透過性の印刷物を作成する際に、高い印刷濃度が求められることがあり、この場合に、ヘッドを走査しつつ印刷媒体の全体(または、一部)にインクを吐出する動作を複数回繰り返す(すなわち、重ね印刷を行う)ことにより、印刷媒体上の同じ位置に対して複数回インクを吐出して印刷濃度を高くする手法が考えられる。このような印刷装置では、最初に吐出されて印刷媒体上に付着したインクの微小液滴が、同位置に対する次のインクの吐出までに硬化されるため、印刷媒体上に硬化したインクが積み重なり、印刷濃度を容易に高くすることが可能となる。なお、紫外線硬化性のインクを利用する印刷装置では、仮に、一度の吐出動作にて多量のインクを印刷媒体上に吐出すると、印刷媒体上のインクの硬化に要する時間が長くなったり、インクの内部まで紫外線を到達させることができなくなる(すなわち、インクを確実に硬化させて定着させることができなくなる)場合があるため、重ね印刷を行って印刷濃度を高くすることが好ましいという側面もある。
【0005】
一方で、印刷媒体において、ヘッドの一の主走査により互いに隣接する吐出口からのインクの吐出制御が行われる2つの近接したライン間の位置に対して、ヘッドの副走査後の後続の主走査にてインクの吐出制御を行って(すなわち、インタレース処理を行って)印刷の解像度を向上する場合に、全ての位置に対してインクの吐出が行われると仮定すると、先の主走査における2つのライン上の硬化したインクが壁となって、後続の主走査におけるライン上のインク(すなわち、当該2つのラインを補間するライン上のインク)が当該2つのライン上のインクよりも印刷媒体から盛り上がった状態で硬化する。実際には、ヘッドの一の主走査によりインクの吐出制御が行われる2つのライン間を複数のラインにて補間することが多く行われており、副走査方向に並ぶ複数のラインにて(硬化した)インクの高低差が生じてしまう。この場合に、重ね印刷を行って印刷濃度を高くしようとすると、複数のラインにおけるインクの高低差が増大し、印刷画像においてバンディングムラが目立ち易くなってしまう。
【0006】
また、ヘッドの品質によっては、複数の吐出口においてインクの吐出方向にばらつきが生じることがあり、このようなヘッドを有する印刷装置にて、インタレース処理を伴う印刷動作を行うと、印刷媒体上の複数のラインにおいて互いに隣接するライン間の間隔がばらついてしまう。この場合に、重ね印刷を行って印刷濃度を高くしようとすると、ライン間の間隔が密な位置、または、ライン間の間隔が疎な位置における濃度が変化してしまい、印刷画像においてバンディングムラが目立ち易くなってしまう。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、重ね印刷においてバンディングムラが発生することを抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部とを備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の印刷方法であって、前記c)工程において前記a)工程および前記b)工程が繰り返される際に、先行する前記a)工程および前記b)工程にて前記各描画位置に対してインクが吐出されたと想定した場合に、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて前記印刷媒体から最も前記インクが盛り上がる描画位置に対して最初のインクの吐出制御が行われる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の印刷方法であって、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて互いに隣接する2つの描画位置の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、先行する前記a)工程および前記b)工程と、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程とで異なる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷方法であって、先行する前記a)工程および前記b)工程、並びに、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて連続する3つの描画位置の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置に隣接する他の2つの描画位置に対する吐出制御の順序が連続し、前記c)工程にて前記a)工程および前記b)工程を繰り返す際に、前記中央の描画位置と前記他の2つの描画位置との間の吐出制御の前後関係が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから反転される。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、前記複数の描画ブロックのそれぞれが、前記行方向に連続する描画位置の集合であり、先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記吐出制御を1回行う動作が前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対して行われ、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから変更される。
【0013】
請求項6に記載の発明は、光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部とを備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを備える。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の印刷方法であって、先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドが前記印刷媒体に対して相対的に前記列方向に主走査し、前記主走査が完了する毎に前記行方向に間欠的に副走査し、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置と異なる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の印刷方法であって、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置から、前記複数の吐出口の個数に前記複数の吐出口のピッチを乗じた距離の1/4倍以上かつ3/4倍以下だけ相違する。
【0016】
請求項9に記載の発明は、インクジェット方式の印刷装置であって、互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部とを備え、前記制御部が、a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを実行する。
【0017】
請求項10に記載の発明は、インクジェット方式の印刷装置であって、互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部とを備え、前記制御部が、a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程とを実行する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1ないし5、並びに、請求項9の発明では、重ね印刷において、描画ブロック内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0019】
また、請求項2ないし4の発明では、画像を適切に印刷することができる。
【0020】
請求項5ないし8、並びに、請求項10の発明では、重ね印刷において、吐出口の吐出方向等のばらつきに起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0021】
また、請求項7の発明では、重ね印刷において各描画位置に対してインクの吐出制御の対象とされる吐出口を容易に変更することができ、請求項8の発明では、万一、複数の吐出口の配列方向が行方向に対して傾斜する場合であっても、印刷画像の品質に対する吐出口の傾斜の影響を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る印刷装置1の外観を示す斜視図である。印刷装置1は、例えばポリカーボネートやPET(ポリエチレン テレフタレート)等の撥液性を有するプラスチックにて形成される板状またはシート状の基材9上にインクジェット方式にてカラー印刷を行うものである。
【0023】
図1の印刷装置1は本体11および制御部4を備え、本体11は基材9を図1中の(+Z)側の面上に保持するステージ21、および、基台20上に設けられるステージ移動機構22を備える。ステージ21の基材9とは反対側の面には、ステージ移動機構22が有するボールネジ機構のナットが固定され、ボールネジ機構に接続されたモータが回転することにより、ステージ21が図1中のY方向(主走査方向)に滑らかに移動する。基台20上には、基台20に対するステージ21の位置を検出する位置検出モジュール23がさらに設けられる。
【0024】
ステージ21の上方には基材9に向けてインクの微小液滴を吐出するヘッド3が配置され、ヘッド3は、ボールネジ機構およびモータを有するヘッド移動機構24により主走査方向に垂直かつ基材9の主面に沿う副走査方向(図1中のX方向)に移動可能に支持される。また、基台20には、ステージ21を跨ぐようにしてフレーム25が設けられ、ヘッド移動機構24はフレーム25に固定される。フレーム25上には紫外線を出射する光源39が設けられ、複数の光ファイバ(実際には、複数の光ファイバは束状となっており、図1では符号391を付して1本の太線にて示している。)を介して光源39からの光がヘッド3の内部へと導入される。
【0025】
図2はヘッド3を示す底面図である。図2に示すように、ヘッド3はそれぞれが互いに異なる色のインクを吐出する複数の(図2では、4個の)ノズルユニット31を備え、複数のノズルユニット31はY方向に配列されてヘッド3の本体30に固定される。図2中の最も(+Y)側のノズルユニット31はK(ブラック)の色のインクを吐出し、Kのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はC(シアン)の色のインクを吐出し、Cのノズルユニット31の(−Y)側のノズルユニット31はM(マゼンタ)の色のインクを吐出し、最も(−Y)側のノズルユニット31はY(イエロー)の色のインクを吐出する。各ノズルユニット31では、図2中のX方向に複数の(例えば、300個の)吐出口311が一定のピッチV(例えば、150dpi(dot per inch)に相当する169マイクロメートル(μm)のピッチであり、以下、「吐出口ピッチV」という。)にて配列されており、複数のノズルユニット31において、互いに対応する吐出口311はX方向の同じ位置に配置される。また、各色のインクは紫外線硬化剤を含んでおり、紫外線硬化性を有している。なお、ヘッド3には、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト等の他の色用のノズルユニットが設けられてもよい。
【0026】
また、ヘッド3には、光源39に接続される光照射部38が複数のノズルユニット31の(−Y)側に設けられる。光照射部38では、複数の光ファイバがX方向に沿って配列されており、基材9上においてX方向に伸びる線状の領域に光照射部38により紫外線が照射される。
【0027】
図3は制御部4の機能構成を示すブロック図である。図3に示すように制御部4は、ヘッド3の複数のノズルユニット31からのインクの吐出に係る制御を行う吐出制御部41、ステージ移動機構22およびヘッド移動機構24に対する移動制御を行う移動制御部42、並びに、基材9に印刷すべき画像データから吐出制御部41における吐出制御に用いられる描画データを生成する描画データ生成部43を備える。印刷装置1では、移動制御部42による移動制御に同期して吐出制御部41がヘッド3からのインクの吐出を制御することにより、基材9上に画像が印刷される。
【0028】
次に、印刷装置1が基材9上に画像を印刷する動作について図4を参照しつつ説明を行う。以下の説明では、CMYKのうち一の色のノズルユニット31にのみ着目するが、他の色についても同様の動作が行われる。
【0029】
印刷装置1では、まず、印刷対象となる基材9が印刷装置1内に搬送され、ステージ21上に載置されて保持される(ステップS11)。続いて、移動制御部42がステージ移動機構22およびヘッド移動機構24を制御することによりヘッド3が基材9の(−Y)側の所定の初期位置(主走査方向および副走査方向の双方の初期位置)に配置される(すなわち、ヘッド3が原点復帰する。)(ステップS12)。なお、最初のステップS13の処理はスキップされる。そして、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し、ヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査する(ステップS14)。
【0030】
図5は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図である。図5では、ヘッド3の複数の主走査における一の色のノズルユニット(ただし、それぞれ符号31A〜31Dを付している。)も二点鎖線にて図示している。
【0031】
描画位置配列80は、基材9の主面上において副走査方向に平行な行方向(図5中のX方向)および主走査方向に平行な列方向(図5中のY方向)に配列された複数の描画位置の集合であり、図5では各描画位置を符号81を付す矩形にて示している。本実施の形態では、描画位置81の行方向のピッチおよび列方向のピッチの双方(以下、「描画ピッチ」とも呼ぶ。)が、吐出口ピッチVの1/4倍とされ、既述のように吐出口ピッチVが150dpiに相当する場合には、描画ピッチは600dpiに相当する42μmとなる。なお、描画位置81の行方向のピッチおよび列方向のピッチは吐出口ピッチVの1/6倍や1/8倍等とされてもよく、また、行方向のピッチと列方向のピッチとが異なっていてもよい。
【0032】
印刷装置1では、ヘッド3が基材9に対して主走査方向に相対的に移動する(主走査する)ことにより、ヘッド3の複数の吐出口311のそれぞれが列方向に並ぶ描画位置81(以下、「描画位置の列」とも呼ぶ。)を通過しつつ、吐出制御部41の制御に基づいて各吐出口311により対応する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。このとき、ヘッド3の光照射部38から基材9上に照射される紫外線により基材9上に吐出された直後のインク(の微小液滴)が硬化することにより、当該インクが後述するヘッド3の他の主走査時に近傍の位置(同位置を含む。)に吐出される他のインクと混ざることはない。図5では、1回目の主走査の際のノズルユニットを符号31Aを付して示しており、各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「1」と記す丸にて示している。図5では、描画データに合わせてインクの吐出が行われない場合も、ドットが仮想的に形成されるものとしている。
【0033】
図6.Aないし図6.Dは、基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図6.Aないし図6.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。また、図6.Aないし図6.Dのそれぞれでは、上段にヘッド3の吐出口311から吐出されて硬化するインクの断面を示し、下段にヘッド3側から基材9を見た場合におけるインクを示している(後述の図9.Aないし図9.Dにおいて同様)。さらに、図6.Aないし図6.Dでは各吐出口311が通過する基材9上の描画位置81に対して必ずインクが吐出されるものとしている(後述の図9.Aないし図9.D、図12.Aないし図12.D、図15.Aないし図15.D、図16.Aないし図16.D、図19.Aないし図19.D、図21.Aないし図21.D、並びに、図22.Aないし図22.Dにおいて同様)。
【0034】
図6.Aの上段(並びに、図6.Bないし図6.Cのそれぞれの上段)にて符号A1を付す矢印にて示すように、実際のノズルユニット31では、複数の吐出口311においてインクの吐出方向等にばらつきがあるため、基材9上にてインクが付着する複数の位置は、必ずしもX方向に等間隔とはならない。また、基材9上に最初に付着するインクは基材9に沿って広がり、硬化したインクの基材9に対する高さは比較的低くなる。なお、図6.Aないし図6.Dでは、吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきを強調している(後述の図9.Aないし図9.Dにおいて同様)。
【0035】
印刷装置1では、各吐出口311が通過する基材9上の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われ、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとステージ21の移動(ヘッド3の主走査)が停止される(ステップS16)。続いて、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻され(ステップS17)、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、ヘッド3がX方向に移動(副走査)し、行方向に関して、ノズルユニット31の各吐出口311が1回目の主走査にていずれかの吐出口311が通過した描画位置の列の(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に配置される(図5中の符号31Bを付すノズルユニット参照)(ステップS19)。後述するように、ステップS19におけるヘッド3の行方向の移動量は、吐出口ピッチVよりも大きくされるため、実際には、ノズルユニット31の全ての吐出口311が1回目の主走査にて吐出制御が行われた描画位置の列の(+X)側に隣接した位置に配置される訳ではない(以下、同様)。
【0036】
ヘッド3の副走査が完了すると、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。図5では、ヘッド3の2回目の主走査にて各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「2」と記す丸にて示している。このとき、2回目の主走査時に吐出されるインク(の微小液滴)は、図6.Bの上段および下段に示すように、原則として基材9上において1回目の主走査時に付着したインクの(+X)側に隣接する位置に付着するが、ノズルユニット31の複数の吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきにより、基材9上において1回目の主走査時に吐出されて硬化したインクと、2回目の主走査時に吐出されて硬化したインクとの間のX方向の間隔は必ずしも均一とはならない。また、基材9上に付着したインクは1回目の主走査時に付着したインクほどは基材9に沿って広がらず、(硬化後の)インクの基材9に垂直な方向に関する厚さは比較的大きくなる。なお、後述する3回目の主走査時に吐出されるインクおよび4回目の主走査時に吐出されるインクにおいても同様の傾向となる。
【0037】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻される(ステップS17)。続いて、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、ヘッド3が副走査し、行方向に関して、ノズルユニット31の各吐出口311が2回目の主走査にていずれかの吐出口311が通過した描画位置の列の(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に配置される(図5中の符号31Cを付すノズルユニット参照)(ステップS19)。そして、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。図5では、ヘッド3の3回目の主走査にて各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「3」と記す丸にて示している。また、図6.Cの上段および下段に示すように、3回目の主走査時に吐出されるインクは、基材9上において2回目の主走査時に付着したインクの(+X)側に隣接する位置に付着する。
【0038】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へ移動するとともに(ステップS17)、ヘッド3が副走査し、行方向に関して各吐出口311が3回目の主走査にていずれかの吐出口311が通過した描画位置の列の(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に配置される(図5中の符号31Dを付すノズルユニット参照)(ステップS18,S19)。その後、ヘッド3の主走査に同期して、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS14,S15)。図5では、ヘッド3の4回目の主走査にて各吐出口311により基材9上に形成されるドットを内部に「4」と記す丸にて示している。また、図6.Dの上段および下段に示すように、4回目の主走査時に吐出されるインクは、原則として基材9上において3回目の主走査時に付着したインクの(+X)側に隣接する位置に付着し、1回目の主走査時に付着したインクと3回目の主走査時に付着したインクとの間に挟まれ、通常、他のインクよりも基材9から盛り上がる。ここでは、図6.Dの下段にて符号B1を付す矢印にて示すように、吐出口311の吐出方向のばらつきに起因して基材9上にインクがほとんど付着せず濃度が低い部位が発生しているものとする。ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻される(ステップS17)。
【0039】
ここで、図5中の描画位置配列80において行方向に一列に連続する4個の描画位置81の集合(図5中にて符号82を付す太線の矩形にて囲む描画位置81の集合であり、以下、「描画ブロック82」という。)に着目すると、各描画ブロック82では、ヘッド3(のいずれかの吐出口311)が通過する毎にいずれかの描画位置81に対して吐出口311からのインクの吐出制御が1回行われ、描画ブロック82内の描画位置81の個数に対応する回数だけヘッド3が通過することにより、描画ブロック82内の各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了している。したがって、描画位置配列80は、行方向に連続するとともに互いに異なる主走査時にインクの吐出制御が1回行われる描画位置81の集合である複数の描画ブロック82に分割されていると捉えることができる。なお、描画ブロック82のX方向の幅は吐出口ピッチVに等しい。
【0040】
後述するように、上記ステップS19,S14〜S17は、描画位置配列80の全ての描画位置81のそれぞれに対して1回の吐出制御が行われるまで繰り返され(ステップS18)、基材9の全体に画像が印刷される。
【0041】
なお、既述のように、印刷装置1では複数のノズルユニット31において、互いに対応する吐出口311はX方向の同じ位置に配置されるため(図2参照)、実際には、ヘッド3の一の主走査により描画ブロック82において同じ描画位置81に対してCMYKのインクが吐出され、その後、光照射部38により同時に硬化される。この場合でも、CMYKのインクは硬化前に完全に混ざり合うことはないため、各色のインクにおいて、吐出口311のばらつきに起因する吐出位置のばらつきはある程度維持される。
【0042】
ここで、ステップS19におけるヘッド3の行方向への移動量について説明する。図7はヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図7の上段では、ノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、ヘッド3の1〜5回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形331〜335にて表している。また、図7の下段はこのノズルユニット31から吐出されるインクの色と同じ色成分の画像を示している。
【0043】
既述のように、印刷装置1の各ノズルユニット31では300個の吐出口311が形成されており、ヘッド3の1回目の主走査では、基材9上において行方向に並ぶ300個の描画ブロック82に相当する範囲において、各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われる。また、一の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、インクの吐出制御が行われる描画位置81を対象描画位置81と呼ぶとすると、ヘッド3の1回目の主走査では、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。
【0044】
ヘッド3の1回目の主走査後の副走査では、ヘッド3は(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図7中の矩形331と矩形332との間のX方向の距離)だけ移動する。このとき、ノズルユニット31の吐出口311の位置が吐出口ピッチVの整数倍に吐出口ピッチVの1/4倍を加えた距離だけ行方向に移動するため、X方向のみに着目すると、1回目の主走査にてノズルユニット31の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の描画位置81から(+X)側に描画ピッチだけ離れた位置に、このノズルユニット31のいずれかの吐出口311が配置される(ただし、1回目の主走査にて(−X)側の74個の吐出口311が通過した描画ブロック82を除く。)。したがって、2回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(正確には、1回目および2回目の主走査においてノズルユニット31が通過する各描画ブロック82(以下同様))に対して、図5中の「1」が記された描画位置81から「2」が記された描画位置81に対象描画位置81が切り替えられる。また、ヘッド3の副走査時の行方向への移動量が描画ブロック82の行方向の幅である描画ピッチの4倍(吐出口ピッチV)よりも大きいため、各描画ブロック82に対して1回目の主走査にて通過した吐出口311とは異なる吐出口311が2回目の主走査にて通過することとなる。
【0045】
同様に、2回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(すなわち、図7中の矩形332と矩形333との間のX方向の距離)だけ移動することにより、3回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図5中の「2」が記された描画位置81から「3」が記された描画位置81に対象描画位置81が切り換えられ、3回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(すなわち、図7中の矩形333と矩形334との間のX方向の距離)だけ移動することにより、4回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して、図5中の「3」が記された描画位置81から「4」が記された描画位置81に対象描画位置81が切り替えられる。
【0046】
ここで、1〜3回目の主走査の終了後における移動量の総和は、吐出口ピッチVの(222+3/4)倍となるため、4回目の主走査の際におけるノズルユニット31の複数の吐出口311(矩形334)のうち最も(−X)側の吐出口311により、1回目の主走査において(+X)側から(−X)方向に向かって78番目の吐出口311が通過した各描画ブロック82に対するインクの吐出制御が行われることとなる。したがって、1回目の主走査にてノズルユニット31の(+X)側の78個の吐出口311が通過した各描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対してインクの吐出制御が1回実行されたこととなる。4回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82のみに着目すると、最も(−X)側の描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われ、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81に2番目のインクの吐出制御が行われ、(−X)側から3個目の描画位置81に3番目のインクの吐出制御が行われ、最も(+X)側の描画位置81に4番目のインクの吐出制御が行われる。
【0047】
後述するように、4回目の主走査以降においても、ヘッド3は(+X)方向へと間欠的に移動するため、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の222個の吐出口311が通過した各描画ブロック82においては、インクの吐出制御が行われない描画位置81が存在する。よって、図3の描画データ生成部43では、1回目の主走査にてノズルユニット31の(−X)側の222個の吐出口311が通過する各描画ブロック82の描画位置81に対してインクの吐出が行われないように、ダミーデータ(余白)を元の画像データに予め挿入した後に、描画データが生成される。なお、図7の下段では、矩形K1,K2によりダミーデータに対応する画像と元の画像とをそれぞれ抽象的に示している。
【0048】
続いて、4回目の主走査の終了後には、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(77+(1/4))倍(すなわち、図7中の矩形334と矩形335との間のX方向の距離)だけ移動することにより、5回目の主走査において、ノズルユニット31が通過する各描画ブロック82に対して図5中の「1」が記された描画位置81を対象描画位置81とすることが可能となる。このとき、矩形335にて示す複数の吐出口311の(−X)側の74個の吐出口311が通過する各描画ブロック82では、2〜4回目の主走査により、図5中の「2」〜「4」が記された描画位置81に対してインクの吐出制御が既に完了しており、5回目の主走査によりこの描画ブロック82内の全ての描画位置81のそれぞれに対する1回のインクの吐出制御が完了することとなる。換言すれば、5回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82のみに着目すると、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われ、(−X)側から3個目の描画位置81に2番目のインクの吐出制御が行われ、最も(+X)側の描画位置81に3番目のインクの吐出制御が行われ、最も(−X)側の描画位置81に4番目のインクの吐出制御が行われる。
【0049】
なお、5回目の主走査時のヘッド3の位置(矩形335)は、1回目の主走査時のヘッド3の位置(矩形331)から吐出口ピッチVの300倍だけX方向に離れており、1回目の主走査時にノズルユニット31の最も(+X)側の吐出口311が通過した描画ブロック82の(+X)側に隣接する描画ブロック82を、5回目の主走査におけるノズルユニット31の最も(−X)側の吐出口311が通過することとなる。
【0050】
ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更される。すなわち、αを0以上の整数として、(1+4α)回目の主走査、(2+4α)回目の主走査、(3+4α)回目の主走査、および、(4+4α)回目の主走査の終了後における副走査時の移動量がそれぞれ上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものと等しくされる。以下、(1+4α)回目の主走査、(2+4α)回目の主走査、(3+4α)回目の主走査、および、(4+4α)回目の主走査の終了後における副走査時の移動量を示す情報をインタレース情報という。
【0051】
このとき、(1+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82、(2+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82、(3+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82、および、(4+4α)回目の主走査により各描画位置81に対する1回のインクの吐出制御が完了する描画ブロック82のそれぞれでは、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対する吐出制御の順序は同一となるが(以下、吐出制御の順序が同一となる描画ブロック82の集合を「同一順序の描画ブロック群」という。)、これらの同一順序の描画ブロック群の間では当該吐出制御の順序は異なる。
【0052】
印刷装置1では、インタレース情報に基づいてヘッド3を副走査しつつ、各吐出口311が通過する描画位置81に対してインクの吐出制御を行うことにより、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81(ただし、ダミーデータに基づくインクの吐出制御が行われるものを除く。)に対して、ノズルユニット31におけるインクの吐出制御が1回行われる。以下の説明では、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対してインクの吐出制御を1回行う動作を、全体塗布動作と呼ぶ。既述のように、インクの吐出制御では必ずしもインクが吐出されるとは限らないないため、1回の全体塗布動作にて基材9上の描画位置配列80の全体にインクが付着する訳ではない。
【0053】
以上のようにして1回目の全体塗布動作が完了すると(図4:ステップS18)、印刷装置1では、2回目の全体塗布動作が行われることが確認され(ステップS20)、ヘッド3が基材9に対して主走査方向および副走査方向の双方の初期位置に配置される(ステップS12)。そして、ヘッド3が行方向(副走査方向)に所定距離だけシフトする(ステップS13)。
【0054】
図8は、2回目の全体塗布動作時におけるヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図7と同様に、図8の上段では、ノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、2回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1〜5回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形341〜345にて表している。また、図8では、1回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1回目の主走査時における複数の吐出口311を、符号331を付す破線の矩形にて示している。図8に示すように、ステップS13の処理により、ヘッド3は副走査方向の初期位置から吐出口ピッチVのN倍(ただし、Nは1以上300未満の整数)だけ(−X)側にシフトされる。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、Nは1に近い値であるものとする。
【0055】
続いて、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。このとき、ヘッド3が1回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査時における位置(矩形331)から吐出口ピッチVの整数倍だけシフトしていることにより、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。
【0056】
図9.Aないし図9.Dは、2回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図9.Aないし図9.Dでは、ヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。
【0057】
既述のように、2回目の全体塗布動作における1回目の主走査時においても、1回目の全体塗布動作における1回目の主走査時と同様に、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされるが、ヘッド3が初期位置から行方向に所定の距離だけシフトされていることにより、対象描画位置81に対する吐出制御の対象とされる吐出口311は1回目の全体塗布動作時のものとは異なっている。したがって、図9.Aの上段および下段に示すように、各吐出口311から吐出されるインクが基材9上に付着する位置が、1回目の全体塗布動作の1回目の主走査時におけるインクの付着位置から僅かに異なる。
【0058】
なお、印刷装置1では、図10の上段に示す1回目の全体塗布動作における1回目の主走査時のノズルユニット31に対する描画データが、図10の上側のノズルユニット31の下に抽象的に示すように準備される場合、2回目の全体塗布動作における1回目の主走査時のノズルユニット31は、図10中の下側のノズルユニット31にて示すように、1回目の全体塗布動作時の位置から(−X)方向に吐出口ピッチVのN倍だけシフトされているため、描画データ生成部43では、図10の最も下に示すように、概念的には画像をシフトさせて(図10の最も下においてシフト前後の画像をそれぞれ破線および実線にて示す。)描画データが生成される。図8の下段では、1回目の全体塗布動作時における描画データに対応する画像(矩形K1,K2)に、追加のダミーデータ(余白)に対応する画像を矩形K3にて追加して、2回目の全体塗布動作時における描画データに対応する画像を抽象的に示している(後述の図13において同様)。
【0059】
このようにして、対象描画位置81に対してインクの吐出制御が行われ、ヘッド3が基材9の(+Y)側の端部まで到達するとステージ21の移動が停止される(ステップS16)。続いて、ステージ21が主走査方向の初期位置に戻され(ステップS17)、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、1回目の全体塗布動作と同じインタレース情報に基づいてヘッド3が(+X)方向に副走査する。具体的には、図8に示すように、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図8中の矩形341と矩形342との間のX方向の距離)だけ移動する(ステップS19)。そして、ヘッド3の主走査が開始され(ステップS14)、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81を対象描画位置81としてインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。2回目の全体塗布動作における2回目の主走査時においても、図9.Bの上段および下段に示すように、各吐出口311から吐出されるインクが基材9上に付着する位置が、1回目の全体塗布動作の2回目の主走査時におけるインクの付着位置から僅かにずれる。
【0060】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へと移動する(ステップS17)。その後、上記ステップS19,S14〜S17が繰り返されることにより(ステップS18)、ヘッド3が副走査しつつ、ヘッド3の3回目の主走査および4回目の主走査が行われる。このとき、1回目の全体塗布動作と同じインタレース情報に基づいてヘッド3が副走査することにより、3回目の主走査の直前におけるヘッド3の副走査距離は、図8に示すように吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図8中の矩形342と矩形343との間のX方向の距離)とされ、3回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において(−X)側から3個目の描画位置81が対象描画位置81となり、4回目の主走査の直前におけるヘッド3の副走査距離も、吐出口ピッチVの(74+(1/4))倍(図8中の矩形343と矩形344との間のX方向の距離)とされ、4回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81となる。したがって、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了し、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する各描画ブロック82では、2回目の全体塗布動作において、1回目の全体塗布動作と同じ吐出制御の順序にて4個の描画位置81にそれぞれ1回だけインクの吐出制御が行われる。また、2回目の全体塗布動作における3回目の主走査および4回目の主走査時においても、図9.Cの上段および下段、並びに、図9.Dの上段および下段にそれぞれ示すように、各吐出口311から吐出されるインクが基材9上に付着する位置が、1回目の全体塗布動作における対応するインクの付着位置から僅かにずれる。
【0061】
印刷装置1では、4回目の主走査の終了後には、1回目の全体塗布動作と同様にヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(77+(1/4))倍(すなわち、図8中の矩形344と矩形345との間のX方向の距離)だけ移動することにより、5回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされ、対象描画位置81に対するインクの吐出制御が行われる(ステップS18,S19,S14〜S17)。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対して、吐出制御の対象とされる吐出口311を1回目の全体塗布動作におけるものから変更しつつ2回目の全体塗布動作に係るインクの吐出制御が1回行われ(ステップS18,S19,S14〜S17)、印刷装置1における印刷動作が完了する(ステップS20)。なお、2回目の全体塗布動作においても、複数の同一順序の描画ブロック群が存在する。
【0062】
ここで、仮に、図4のステップS13が省略されて、2回目の全体塗布動作においてヘッド3の副走査方向への初期のシフトが行われない場合には、描画位置配列80の各描画位置81に対する吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作におけるものと同一となり、2回目の全体塗布動作によって図6.Dの上段に示すインクの重なり状態が繰り返されてしまい、重ね印刷において基材9上に印刷された画像(印刷画像)に濃淡ムラが発生する。実際には、インクの重なり状態は列方向に連続するため、印刷画像において列方向に伸びるバンディングムラが発生してしまう。これに対し、図1の印刷装置1では、2回目の全体塗布動作において各描画位置81に対する吐出制御の対象とされるヘッド3の吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更されることにより、吐出口311のばらつきに起因する濃淡ムラが分散され、重ね印刷において、印刷画像に吐出口の吐出方向等のばらつきに起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0063】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る印刷装置1の動作例について説明する。図11は印刷装置1が基材9上に画像を印刷する動作の流れを示す図であり、図4のステップS12とステップS13との間に行われる処理を示している。本動作例では、ヘッド3が初期位置に配置された後(図4:ステップS12)、第1の実施の形態と同様に、上記のステップS14〜S17,S19におけるヘッド3の主走査および副走査を繰り返すことにより(ステップS18)、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対してインクの吐出制御が1回行われる(すなわち、1回目の全体塗布動作が行われる。)。なお、最初のステップS13の処理、および、図11の最初のステップS21の処理はスキップされる。
【0064】
このとき、インタレース情報も上記の場合と同様とされるため、ヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置はそれぞれ図12.Aないし図12.Dに示すようになる。図12.Aないし図12.Dは、図6.Aないし図6.Dにそれぞれ対応するが、図12.Aないし図12.Dでは吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきを強調して表していないため、図6.Aないし図6.Dに示すものとは僅かに異なっている。図12.Aないし図12.Dに示すように、基材9上に後から吐出されたインクほど基材9から高く盛り上がる傾向があり、4回目の主走査にて基材9上に吐出されたインクは最も高く盛り上がる。なお、図12.Aないし図12.Dでは、ヘッド3側から基材9を見た場合におけるインクについては図示していない。
【0065】
また、既述のように、印刷装置1では複数のノズルユニット31において、互いに対応する吐出口311はX方向の同じ位置に配置される(図2参照)。したがって、ヘッド3の一の主走査により描画ブロック82において同じ描画位置81に対してCMYKのインクが吐出され、その後、光照射部38により同時に硬化されるため、CMYKのインクが各描画位置81に吐出されている状態も、一の色のインクのみが各描画位置81に吐出されるものとして描いている図12.Aないし図12.Dとほぼ同様となる。
【0066】
1回目の全体塗布動作が完了すると(ステップS18)、印刷装置1では、2回目の全体塗布動作が行われることが確認され(ステップS20)、ヘッド3が基材9に対して主走査方向および副走査方向の双方の初期位置に配置される(ステップS12)。続いて、2回目の全体塗布動作におけるインタレース情報が更新された後(図11:ステップS21)、ヘッド3が行方向(副走査方向)に所定距離だけシフトする(図4:ステップS13)。なお、更新後のインタレース情報の内容については後述する。
【0067】
図13は、2回目の全体塗布動作時におけるヘッド3の行方向への移動量を説明するための図である。図13の上段では、ノズルユニット31に配列形成される複数の吐出口311を1つの矩形として示し、2回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1〜5回目の主走査時における複数の吐出口311をそれぞれ矩形351〜355にて表している。また、図13では、1回目の全体塗布動作の際のヘッド3の1回目の主走査時における複数の吐出口311を、符号331を付す破線の矩形にて示している。図13に示すように、ステップS13の処理により、ヘッド3は副走査方向の初期位置から吐出口ピッチVの(N+(1/4))倍(ただし、Nは1以上300未満の整数)だけ(−X)側にシフトされる。なお、本実施の形態では、説明の便宜上、Nは1に近い値であるものとする。
【0068】
続いて、ステージ21が(−Y)方向に移動を開始し(ステップS14)、各吐出口311が通過する描画位置の列の各描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。
【0069】
図14は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図であり、図14では、ヘッド3の複数の主走査におけるノズルユニット(ただし、それぞれ符号31E〜31Hを付している。)も二点鎖線にて図示している。既述のように、ヘッド3が1回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査時における位置から吐出口ピッチVの(N+(1/4))倍だけ(−X)方向にシフトしていることにより、2回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査では、図14中に符号31Eを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(+X)側の描画位置81を対象描画位置81としてインクの吐出制御が行われる。
【0070】
図15.Aないし図15.Dは、2回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図15.Aないし図15.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。1回目の全体塗布動作の1ないし4回目の主走査にてヘッド3が通過するとともに、2回目の全体塗布動作の1回目の主走査にてヘッド3が通過する基材9上の位置では、基材9から最もインクが盛り上がる位置に対して最初のインクの吐出制御が行われ(図12.D参照)、図15.Aに示すように、基材9上にインク(図15.A中にて符号911を付すインク)が付着する。
【0071】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へと移動し(ステップS17)、ヘッド3の次の主走査が行われることが確認された後(ステップS18)、1回目の全体塗布動作とは異なるインタレース情報に基づいてヘッド3が(+X)方向に副走査する(ステップS19)。具体的には、図13に示すように、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(74+(3/4))倍(図13中の矩形351と矩形352との間のX方向の距離)だけ移動する。そして、ヘッド3の主走査が開始され(ステップS14)、図14中に符号31Fを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する各描画ブロック82において(+X)側から(−X)方向に向かって2個目の描画位置81を対象描画位置81としてインクの吐出制御が行われる(ステップS15)。2回目の全体塗布動作における2回目の主走査時には、図15.Bに示すように、基材9上において1回目の主走査時に付着したインク911の(−X)側に隣接する位置にインク(図15.B中にて符号912を付すインク)が付着する。このとき、インク911によりインク912が基材9におよそ沿う方向に広がることがある程度抑制される。
【0072】
ヘッド3の主走査が完了すると(ステップS16)、ステージ21が主走査方向の初期位置へと移動する(ステップS17)。その後、上記ステップS19,S14〜S17が繰り返されることにより(ステップS18)、ヘッド3が副走査しつつ、ヘッド3の3回目の主走査および4回目の主走査が行われる。このとき、3回目の主走査の直前のヘッド3の副走査距離は、図13に示すように吐出口ピッチVの(74+(3/4))倍(図13中の矩形352と矩形353との間のX方向の距離)とされ、図14中に符号31Gを付すノズルユニットにて示すように、3回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において(+X)側から3個目の描画位置81が対象描画位置81となる。そして、図15.Cに示すように、基材9上において2回目の主走査時に付着したインク912の(−X)側に隣接する位置にインク(図15.C中にて符号913を付すインク)が付着する。このとき、インク912によりインク913が基材9におよそ沿う方向に広がることがある程度抑制される。
【0073】
また、4回目の主走査の直前のヘッド3の副走査距離も、吐出口ピッチVの(74+(3/4))倍(図13中の矩形353と矩形354との間のX方向の距離)とされ、図14中に符号31Hを付すノズルユニットにて示すように、4回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81となる。そして、図15.Dに示すように、基材9上において1回目の主走査時に付着したインク911と3回目の主走査時に付着したインク913との間にインク(図15.D中にて符号914を付すインク)が付着する。このとき、インク911およびインク913によりインク914が基材9におよそ沿う方向に広がることが抑制される。
【0074】
このように、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了し、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する各描画ブロック82では、2回目の全体塗布動作において、1回目の全体塗布動作とは反対の吐出制御の順序にて4個の描画位置81にそれぞれ1回だけインクの吐出制御が行われる。これにより、全体塗布動作が繰り返される際に、図12.Dのように、先行する全体塗布動作にて各描画位置81に対してインクが吐出されたと想定した場合に、基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われ、各描画ブロック82内にて互いに隣接する2つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序は、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なることとなる。
【0075】
印刷装置1では、4回目の主走査の終了後には、インタレース情報に従ってヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍(すなわち、図13中の矩形354と矩形355との間のX方向の距離)だけ移動することにより、5回目の主走査にてヘッド3が通過する各描画ブロック82において、最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる(ステップS18,S19,S14〜S17)。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対して、2回目の全体塗布動作に係るインクの吐出制御が1回行われる。実際には、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれにおいて、複数の同一順序の描画ブロック群が存在するが、インタレース情報が更新されることにより、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対する吐出制御の順序は、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なっている。
【0076】
ここで、仮に図11のステップS21が省略されて、2回目の全体塗布動作にてインタレース情報が更新されない(すなわち、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作が同じインタレース情報に基づいて行われる)場合には、2回目の全体塗布動作においてヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置はそれぞれ図16.Aないし図16.Dに示すようになる。この場合、2回目の全体塗布動作では、描画ブロック82の描画位置81の集合に対するインクの吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものと同一となり、図12.Dに示すインクの重なり状態が繰り返されて、図16.Dに示すようにインクの堆積における高低差が増大されてしまい、印刷画像において吐出制御の順序に起因する濃淡ムラが強調されて目立ち易くなる。実際には、図16.Dに示すインクの重なり状態は列方向に連続するため、印刷画像において列方向に伸びるとともに周期的なバンディングムラが発生してしまう。なお、図16.Aないし図16.Dは、図9.Aないし図9.Dにそれぞれ対応するが、図16.Aないし図16.Dでは吐出口311におけるインクの吐出方向のばらつきを強調していないため、図9.Aないし図9.Dに示すものとは異なっている。
【0077】
これに対し、本動作例に係る印刷装置1では、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報が更新されることにより、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作から変更される。これにより、2回目の全体塗布動作によりインクの堆積における高低差が増大することが防止され、重ね印刷において、描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0078】
また、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれ、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれる各描画ブロック82では、1回目の全体塗布動作にて基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して2回目の全体塗布動作にて最初のインクの吐出制御が行われることにより、バンディングムラが発生することが容易に抑制されており、当該描画ブロック82内にて互いに隣接する2つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なることにより、バンディングムラが発生することがさらに抑制される。
【0079】
実際には、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれにおいて複数の同一順序の描画ブロック群が存在するため、描画位置配列80の全体に対してこのような効果が生じる訳ではないが、描画位置配列80の複数の描画ブロック82のうち少なくとも一部のそれぞれにおいて、1回目の全体塗布動作にて基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して2回目の全体塗布動作にて最初のインクの吐出制御が行われる、または、互いに隣接する2つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なることにより、好ましい画像を適切に印刷することができる。
【0080】
以上の説明では、説明の便宜上、ステップS13におけるヘッド3のシフト量が吐出口ピッチVに近い(すなわち、Nが1に近い値である)ものとしたが、仮に、図17に示すように、ヘッド3の組立精度の問題により、ヘッド3に設けられるノズルユニット31が行方向(X方向)に対して傾斜して吐出口311の配列方向が傾く場合、ヘッド3の1回目の主走査にてノズルユニット31の最も(+X)側の吐出口311aからインクが吐出される基材9上の位置と、5回目の主走査にてノズルユニット31(図17中にて二点鎖線にて示す。)の最も(−X)側の吐出口311bからインクが吐出される基材9上の位置との間のX方向の距離(図17中にて符号βを付す矢印にて示す距離)が、吐出口ピッチVよりも大きくなってしまう。なお、図17中では、吐出口311の配列方向がX方向に沿う場合のノズルユニット31を細い破線にて図示している。
【0081】
実際には、これらの位置の間にもヘッド3の他の主走査にてインクが吐出されるが、1回目の全体塗布動作の直後の印刷画像において、X方向に関してこれらの位置の間では他の部位に比べて濃度が低くなってしまう。この場合に、ステップS13におけるヘッド3のシフト量が吐出口ピッチVに近いものとされると、1回目の全体塗布動作の直後の印刷画像において濃度が低くなる部位の近傍に、2回目の全体塗布動作においても濃度が低く印刷されてしまうため、印刷画像の品質が低下してしまう。したがって、印刷装置1では、ヘッド3の組立精度によっては、ステップS13におけるヘッド3のシフト量をノズルユニット31の吐出口311の個数に吐出口ピッチVを乗じた値の1/4倍以上かつ3/4倍以下の距離として、2回目の全体塗布動作におけるヘッド3の各主走査時の行方向に関する位置が、1回目の全体塗布動作にて基材9上の同位置を通過する対応する主走査時の行方向に関する位置から当該距離だけ相違するようにすることが好ましい。これにより、万一、複数の吐出口311の配列方向が行方向に対して傾斜する場合であっても、傾斜の影響により1回目の全体塗布動作の直後の印刷画像において濃度が低くなる部位と、2回目の全体塗布動作において濃度が低く印刷されてしまう部位とをX方向に十分に離すことができ、印刷画像の品質に対する吐出口311の傾斜の影響を抑制することが可能となる。
【0082】
ところで、仮に、図4のステップS13を省略して上記動作を行った場合に、1回目および2回目の双方の全体塗布動作において4回目の主走査にて各描画位置81への1回の吐出制御が完了する各描画ブロック82に着目すると、1回目の全体塗布動作では、上記動作例の1回目の全体塗布動作と同様に、4個の描画位置81において(−X)側から(+X)方向に向かって順に吐出制御が行われる。2回目の全体塗布動作では、1回目の主走査開始前のヘッド3のシフトが省略されることにより、1回目の主走査にて最も(−X)側の描画位置81にインクの吐出制御が行われ、その後、インタレース情報に従ってヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍だけ移動することにより、2回目の主走査にて(−X)側の描画位置81から吐出口ピッチVの(3/4)倍(すなわち、描画ピッチの3倍)だけ離れた最も(+X)側の描画位置81にインクの吐出制御が行われる。2回目の主走査の終了後、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍だけ移動することにより、3回目の主走査にて(−X)側から(+X)方向に向かって3個目の描画位置81に対してインクの吐出制御が行われ、続いて、ヘッド3が(+X)方向に吐出口ピッチVの(75+(3/4))倍だけ移動することにより、4回目の主走査にて(−X)側から2個目の描画位置81に対してインクの吐出制御が行われる。このように、図4のステップS13を省略して上記動作を行った場合、1回目の全体塗布動作では、X方向に並ぶ4個の描画位置81における吐出制御の順序は(−X)側から順に1番目、2番目、3番目、4番目となり、2回目の全体塗布動作では、1番目、4番目、3番目、2番目となる。
【0083】
この場合であっても、インクの吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで異なるため、印刷画像において描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラの発生はある程度抑制される。しかしながら、(−X)側の描画位置81に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで同一となってしまうため、仮に、当該吐出口311に異常が生じている(他の吐出口311に比べてインクの吐出量や吐出方向が大きく異なる等)場合には、印刷画像においてバンディングムラが発生してしまう。実際には、このようなバンディングムラは、吐出口ピッチVにノズルユニット31における吐出口311の個数を乗じた周期にて発生する。したがって、印刷装置1では、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報を更新して、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序を1回目の全体塗布動作から変更するとともに、2回目の全体塗布動作の開始時にヘッド3を副走査方向にシフトして、印刷画像において描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラ、および、吐出口311の吐出方向等のばらつきに起因して生じるバンディングムラの双方が抑制されることが好ましい。
【0084】
次に、印刷装置1における他の好ましい動作例について説明する。本動作例では、上記の動作例と比較して、インタレース情報のみが相違している。
【0085】
図18は基材9の主面上に設定される描画位置配列80を示す図であり、図18では、ヘッド3の複数の主走査におけるノズルユニット(ただし、それぞれ符号31A〜31Dを付している。)も二点鎖線にて図示している。1回目の全体塗布動作の際の1回目の主走査では、図18中に符号31Aを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされ、2回目の主走査では、図18中に符号31Bを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から(+X)方向に向かって3個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、3回目の主走査では、図18中に符号31Cを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から2個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、4回目の主走査では、図18中に符号31Dを付すノズルユニットにて示すように、最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。このように、1ないし4回目の主走査にてヘッド3が通過する描画ブロック82では、X方向に並ぶ4個の描画位置81において吐出制御の順序は(−X)側から(+X)方向に向かって順に1番目、3番目、2番目、4番目とされる。換言すれば、描画ブロック82では、連続する3つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続している。
【0086】
図19.Aないし図19.Dは、1回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図19.Aないし図19.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。
【0087】
図19.Aに示すように、ヘッド3の1回目の主走査にて基材9上に付着するインクは基材9に沿って広がり、基材9に垂直な方向に関する厚さは比較的小さくなる。ヘッド3の2回目の主走査では、図19.Bに示すように、1回目の主走査にて吐出されたインクのうち互いに隣接するインクの間の中央にインクが吐出され、1回目の主走査時におけるインクと同様に、基材9に沿って広がる。3および4回目の主走査のそれぞれでは、図19.Cおよび図19.Dに示すように、1および2回目の主走査にて吐出されたインクの間を埋めるようにして、インクが吐出される。したがって、3および4回目の主走査のそれぞれにて吐出されたインクは、X方向の両側の既存のインクの影響により基材9に沿う方向にあまり広がらず、他のインクよりもヘッド3側に盛り上がる。
【0088】
ヘッド3の4回目の主走査の終了後では、5回目の主走査にてノズルユニット31の各吐出口311が描画ブロック82の最も(−X)側の描画位置81を通過するようにヘッド3が副走査する。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対してインクの吐出制御が1回行われる。このとき、基材9上には複数の同一順序の描画ブロック群が存在する。
【0089】
また、2回目の全体塗布動作の際には、インタレース情報が更新されるとともにヘッド3が初期位置から行方向にシフトされる。そして、1回目の主走査では、図20中に符号31Eを付すノズルユニットにて示すように、ヘッド3が通過する描画ブロック82において、最も(+X)側の描画位置81が対象描画位置81とされ、2回目の主走査では、図20中に符号31Fを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から(+X)方向に向かって2個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、3回目の主走査では、図20中に符号31Gを付すノズルユニットにて示すように、(−X)側から3個目の描画位置81が対象描画位置81とされ、4回目の主走査では、図20中に符号31Hを付すノズルユニットにて示すように、最も(−X)側の描画位置81が対象描画位置81とされる。このように、2回目の全体塗布動作にて1ないし4回目の主走査にてヘッド3が通過する描画ブロック82では、X方向に並ぶ4個の描画位置81において吐出制御の順序は(−X)側から順に4番目、2番目、3番目、1番目とされる。換言すれば、描画ブロック82に含まれる連続する3つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続するとともに、中央の描画位置81と当該他の2つの描画位置81との間の吐出制御の前後関係が、1回目の全体塗布動作におけるものから反転される。
【0090】
図21.Aないし図21.Dは、2回目の全体塗布動作における基材9上のインクの吐出位置を説明するための図であり、図21.Aないし図21.Dではヘッド3の1ないし4回目の主走査におけるインクの吐出位置をそれぞれ示している。ヘッド3の1および2回目の主走査では、図21.Aおよび図21.Bに示すように、1回目の全体塗布動作において基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81であると想定される位置にインクが吐出され、インクは基材9におよそ沿う方向に広がることとなる。また、3および4回目の主走査では、図21.Cおよび図21.Dに示すように、1および2回目の主走査にて吐出されたインクの間を埋めるようにして、インクが吐出される。このとき、X方向の両側のインク(1および2回目の主走査時におけるインク)が壁としての役割を果たすことにより、3および4回目の主走査にて吐出されるインクが盛り上がり、2回目の全体塗布動作の1ないし4回目の主走査にて吐出されたインクのヘッド3側の表面が、全体的にほぼ同じ高さとなる。
【0091】
実際には、ヘッド3の4回目の主走査の終了後では、5回目の主走査にてノズルユニット31の各吐出口311が描画ブロック82の最も(+X)側の描画位置81を通過するようにヘッド3が副走査する。ヘッド3の5回目以降の主走査および副走査の繰り返しでは、副走査時の移動量が上記1〜4回目の主走査の終了後における副走査時のものに順に変更され、基材9上の描画位置配列80の各描画位置81に対して2回目の全体塗布動作に係るインクの吐出制御が1回行われる。2回目の全体塗布動作においても、基材9上には複数の同一順序の描画ブロック群が存在することとなる。
【0092】
ここで、仮に図11のステップS21が省略されてインタレース情報が更新されない(すなわち、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作が同じインタレース情報に基づいて行われる)場合には、2回目の全体塗布動作にて、描画ブロック82の描画位置81の集合に対するインクの吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものと同一となり、1ないし4回目の主走査において基材9上に付着するインクの状態はそれぞれ図22.Aないし図22.Dに示すようになる。このように、インタレース情報が更新されない場合には、図22.Dに示すように、図19.Dに示すインクの重なり状態が繰り返されて濃淡ムラが強調されてしまい、印刷画像においてバンディングムラが発生してしまう。
【0093】
これに対し、本動作例に係る印刷装置1では、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報が更新されることにより、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序が、1回目の全体塗布動作から変更される。これにより、2回目の全体塗布動作によりインクの堆積における高低差が増大することが防止され、重ね印刷において、描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが印刷画像にて発生することを抑制することができる。
【0094】
また、1回目の全体塗布動作の4回目の主走査において各描画位置81に対する1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれ、かつ、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81に対する1回の吐出制御が完了する描画ブロック82と同じ同一順序の描画ブロック群に含まれる各描画ブロック82では、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれにおいて、連続する3つの描画位置81の各組合せにて、中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続するとともに、中央の描画位置81と当該他の2つの描画位置81との間の吐出制御の前後関係が、1回目の全体塗布動作と2回目の全体塗布動作とで反転される。これにより、印刷画像において対応する部分ではバンディングムラが発生することが確実に抑制される。
【0095】
実際には、1回目の全体塗布動作および2回目の全体塗布動作のそれぞれに関して複数の同一順序の描画ブロック群が存在するため、描画位置配列80の全体に対してバンディングムラの発生が完全に抑制される訳ではないが、描画位置配列80の複数の描画ブロック82のうち少なくとも一部のそれぞれにおいて、各全体塗布動作時に連続する3つの描画位置81の全ての組合せのそれぞれにて中央の描画位置81に隣接する他の2つの描画位置81に対する吐出制御の順序が連続し、全体塗布動作を繰り返す際に、当該中央の描画位置81と当該他の2つの描画位置81との間の吐出制御の前後関係が先行する全体塗布動作時におけるものから反転されることにより、好ましい画像を適切に印刷することができる。なお、このような描画ブロック82においても、全体塗布動作が繰り返される際に、先行する全体塗布動作にて各描画位置81に対してインクが吐出されたと想定した場合に、基材9から最もインクが盛り上がる描画位置81に対して最初のインクの吐出制御が行われることが好ましい。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0097】
印刷装置1では、例えば、CMYKのノズルユニット31がX方向に描画ピッチずつ順にずらして配置されてもよい。このようなノズルユニット31の配置では、ヘッド3の一の主走査により描画ブロック82において行方向に並ぶ4個の描画位置81に互いに異なる色のインクが吐出され、その後、光照射部38により同時に硬化される。この場合でも、CMYKのインクは硬化前に完全に混ざり合うことはないため、各色のインクにおいて、吐出口311のばらつきに起因する吐出位置のばらつきはある程度維持されてしまう。また、実際の印刷では、必ずしも全ての描画位置81にCMYKのインクが吐出される訳ではないので、2回目の全体塗布動作においてインタレース情報が更新されない場合には、吐出制御の順序に起因するバンディングムラが発生する場合がある。したがって、印刷装置1では、複数の色成分のノズルユニット31の配置に関係なく、2回目の全体塗布動作において、各描画位置81に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更される、または/および、各描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作から変更されることが重要となる。なお、図1の印刷装置1のヘッド3におけるCMYKのノズルユニット31の配列順序はいかなるものであってもよい。
【0098】
印刷装置1では、基材9上に設定される描画位置配列80が、それぞれが行方向に連続する描画位置81の集合である複数の描画ブロック82に分割されており、行方向に複数の吐出口311が配列されたヘッド3を基材9に対して列方向に相対的に主走査しつつ、ヘッド3が通過する各描画ブロック82に含まれる1つの描画位置81に対するインクの吐出制御を1回行う処理を基本処理として、当該基本処理を繰り返しつつヘッド3を基材9に対して行方向に相対的に副走査することにより、列方向に並ぶ描画ブロック82にて描画位置81の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ描画位置配列80の各描画位置81にインクの吐出制御が1回だけ行われる(すなわち、行方向に関するインタレース処理が行われる。)。そして、2回目の全体塗布動作にて各描画ブロックにおける吐出制御の順序が1回目の全体塗布動作におけるものから変更されることにより、重ね印刷を高速に行いつつ、吐出制御の順序に起因するバンディングムラが抑制される。
【0099】
しかしながら、インタレース処理の対象とされる方向は、必ずしも行方向のみであるとは限らず、基本処理においてヘッド3が通過する描画ブロックのうち所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行うようにすることにより、行方向に加えて列方向に関してもインタレース処理が行われることも考えられる。この場合に、列方向に並ぶ描画ブロックにて描画位置の集合に対する吐出制御の順序が同一に保たれるときには、全体塗布動作毎に各描画ブロックにおける吐出制御の順序を変更する本手法が採用されることが必要となる。また、一の色成分に関して複数の吐出口が行方向に関して密に配列されている場合(例えば、図2のノズルユニット31を行方向に対して大きく傾けて配置する場合)等に、列方向に連続する描画位置の集合が描画ブロックとされて、列方向に関してのみインタレース処理が行われることも考えられ、この場合に、行方向に並ぶ描画ブロックにて描画位置の集合に対する吐出制御の順序が同一に保たれるときには、全体塗布動作毎に各描画ブロックにおける吐出制御の順序を変更する本手法が採用されることが必要となる。なお、列方向に関してインタレース処理が行われる場合には、列方向に互いに隣接する2つの描画位置に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口は、通常、異なることが前提とされるため、吐出口のばらつきに起因するバンディングムラは発生しない。
【0100】
以上のように、印刷装置1では、基材9上に設定される描画位置配列が、それぞれが行方向および列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割され、複数回の全体塗布動作(重ね印刷)が行われる際に、1回の全体塗布動作として、行方向に複数の吐出口が配列されたヘッドを基材9に対して列方向に相対的に主走査しつつ、ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う基本処理と、当該基本処理を繰り返しつつヘッドを基材9に対して行方向に相対的に副走査することにより、一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ描画位置配列の各描画位置にインクの吐出制御を1回だけ行う処理とが実行される場合に、全体塗布動作毎に各描画ブロックにおける吐出制御の順序を変更してこれらの処理が繰り返されることにより、重ね印刷において、描画ブロック内での吐出制御の順序に起因して生じるバンディングムラが発生することを抑制することができる。
【0101】
上記第1および第2の実施の形態では、ヘッド3の主走査が繰り返される毎に、ヘッド3が行方向の描画ブロック82の幅よりも十分に長い距離だけ副走査することにより、万一、吐出口311に損傷等が生じていても、当該吐出口311を用いたインクの吐出制御が行われる位置を行方向に分散させて、印刷画像において吐出口311の損傷に起因するバンディングムラが発生することが抑制されるが、印刷装置1では、ヘッド3を描画ブロック82の幅よりも短い距離だけ副走査させて同一の吐出口311を用いて各描画ブロック82内の全ての描画位置81に対して1回の吐出制御が行われてもよい。この場合、ヘッド3が通過する描画ブロック82内の全ての描画位置81に対して1回の吐出制御が行われると、ヘッド3はノズルユニット31の吐出口311の個数に吐出口ピッチVを乗じた距離だけ大きく副走査する。このような、インタレース情報に基づく印刷動作では、描画位置配列80における全ての描画ブロック82に対して同じ順序にてインクの吐出制御を行うことができる。
【0102】
印刷装置1では、2回目の全体塗布動作の際に、ヘッド3を副走査方向にシフトすることにより、2回目の全体塗布動作において各描画位置81に対してインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更されるが、例えば、2回目の全体塗布動作においてノズルユニット31の(+X)側のいくつかの吐出口311を不使用とし、実際に使用する吐出口311の個数に合わせてインタレース情報も修正することにより、ヘッド3の初期のシフトを行うことなく、2回目の全体塗布動作において各描画位置81(ただし、2回目の全体塗布動作の4回目の主走査にて各描画位置81に対する1回の吐出制御が完了する描画ブロック82における最も(−X)側の描画位置81を除く。)に対してインクの吐出制御の対象とされる吐出口311が1回目の全体塗布動作から変更されてもよい。ただし、各描画位置81に対するインクの吐出制御の対象とされる吐出口311の変更を容易に行うには、2回目の全体塗布動作の際に、ヘッド3を副走査方向にシフトして、ヘッド3の各主走査時の行方向に関する位置を、先行する1回目の全体塗布動作における対応する主走査時の行方向に関する位置から異ならせることが好ましい。
【0103】
図1のヘッド3では、1回のインクの吐出制御により実際にインクを吐出する場合に、吐出口311から必ずしも1つのインクの微小液滴が吐出される必要はなく、ヘッドの仕様によっては、微小時間にほぼ同量の複数のインクの微小液滴を連続して吐出する動作が、1回のインクの吐出制御と捉えられてもよい。このようなヘッドでは、複数のインクの微小液滴のうち最初に吐出されたものにおいて、空気抵抗の影響により後続の微小液滴よりも降下速度が低くなることを利用して、空気中にてこれらのインクの微小液滴を互いに衝突させ、基材9上に1つのインクの液滴として着弾させることが可能である。
【0104】
印刷装置1では、3回以上の全体塗布動作が行われてもよい。この場合に、描画ブロック82内での吐出制御の順序に起因して生じる印刷画像でのバンディングムラを抑制するには、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対して、少なくとも1回の全体塗布動作にて他の全体塗布動作と異なる順序にてインクの吐出制御が行われることが必要となり、より好ましくは、各描画ブロック82の描画位置81の集合に対して、全ての全体塗布動作にて異なる順序にてインクの吐出制御が行われる。また、吐出口311のばらつきに起因して生じる印刷画像でのバンディングムラを抑制するには、各描画位置81に対して、吐出制御の対象とされる吐出口311が少なくとも1回の全体塗布動作にて他の全体塗布動作と異なるものとされることが必要となり、より好ましくは、例えば、ノズルユニット31の吐出口311の個数に吐出口ピッチVを乗じた値を全体塗布動作の回数で除した距離を1回のシフト量としたり、各シフト量を乱数に基づいて決定して、吐出制御の対象とされる吐出口311が全ての全体塗布動作にて異なるものとされる。
【0105】
印刷装置1にて用いられる光硬化性のインクは、紫外線以外の波長帯の光(例えば、活性光線等)に対する硬化性を有するものであってもよい。この場合、光照射部38から出射される光は当該波長帯を含むものとされる。
【0106】
印刷装置1において印刷媒体を保持する保持部は、ステージ21以外のものであってもよく、例えば、印刷媒体がシート状である場合等には、ヘッド3に対向して配置されるとともに印刷媒体の印刷対象の面とは反対の面に当接するローラであってもよい。
【0107】
上記実施の形態では、ステージ21を列方向に移動するステージ移動機構22、および、ヘッド3を行方向に移動するヘッド移動機構24により、ヘッド3がステージ21に対して列方向および行方向に相対的に移動するが、印刷装置1ではヘッド3を列方向に移動する機構やステージ21を行方向に移動する機構が設けられてもよい。また、前述のように、印刷媒体を保持する保持部がローラである場合には、当該ローラを回転するモータによりヘッド3が印刷媒体に対して列方向に相対的に移動する。このように、ヘッド3を印刷媒体に対して列方向および行方向に相対的に移動する走査機構はいかなる構成であってもよい。
【0108】
上記実施の形態では、各全体塗布動作においてヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査し、(+X)方向に副走査するが、例えば、ノズルユニット31の(+Y)側にも光照射部38が設けられ、一の主走査にてヘッド3が基材9に対して(+Y)方向に相対的に主走査した後、次の主走査にてヘッド3が(−Y)方向に相対的に主走査してもよい。また、一の全体塗布動作にてヘッド3が(+X)方向に副走査し、次の全体塗布動作にてヘッド3が(−X)方向に副走査してもよい。
【0109】
印刷装置1は、プラスチック以外に、例えば、所定の材料が塗布されて平滑化されたコート紙等のインクに対する撥液性(インクの非浸透性)を有する他の印刷媒体上への印刷に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】印刷装置の外観を示す斜視図である。
【図2】ヘッドを示す底面図である。
【図3】制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】印刷装置が基材上に画像を印刷する動作の流れを示す図である。
【図5】描画位置配列を示す図である。
【図6.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図6.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図6.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図6.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図7】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図8】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図9.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図9.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図9.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図9.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図10】描画データの生成を説明するための図である。
【図11】印刷装置が基材上に画像を印刷する動作の流れの一部を示す図である。
【図12.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図12.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図12.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図12.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図13】ヘッドの行方向への移動量を説明するための図である。
【図14】描画ブロックに対する吐出制御の順序を説明するための図である。
【図15.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図15.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図15.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図15.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.A】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.B】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.C】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図16.D】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図17】吐出口の配列方向が傾斜したノズルユニットを示す図である。
【図18】描画ブロックに対する吐出制御の順序を説明するための図である。
【図19.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図19.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図19.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図19.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図20】描画ブロックに対する吐出制御の順序を説明するための図である。
【図21.A】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図21.B】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図21.C】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図21.D】基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.A】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.B】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.C】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【図22.D】比較例における基材上のインクの吐出位置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0111】
1 印刷装置
3 ヘッド
4 制御部
9 基材
21 ステージ
22 ステージ移動機構
24 ヘッド移動機構
38 光照射部
80 描画位置配列
81 描画位置
82 描画ブロック
311,311a,311b 吐出口
911〜914 インク
S12〜S21 ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、を備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、
a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷方法であって、
前記c)工程において前記a)工程および前記b)工程が繰り返される際に、先行する前記a)工程および前記b)工程にて前記各描画位置に対してインクが吐出されたと想定した場合に、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて前記印刷媒体から最も前記インクが盛り上がる描画位置に対して最初のインクの吐出制御が行われることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷方法であって、
前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて互いに隣接する2つの描画位置の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、先行する前記a)工程および前記b)工程と、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程とで異なることを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷方法であって、
先行する前記a)工程および前記b)工程、並びに、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて連続する3つの描画位置の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置に隣接する他の2つの描画位置に対する吐出制御の順序が連続し、
前記c)工程にて前記a)工程および前記b)工程を繰り返す際に、前記中央の描画位置と前記他の2つの描画位置との間の吐出制御の前後関係が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから反転されることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記複数の描画ブロックのそれぞれが、前記行方向に連続する描画位置の集合であり、
先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記吐出制御を1回行う動作が前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対して行われ、
前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、を備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、
a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷方法であって、
先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドが前記印刷媒体に対して相対的に前記列方向に主走査し、前記主走査が完了する毎に前記行方向に間欠的に副走査し、
前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置と異なることを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷方法であって、
前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置から、前記複数の吐出口の個数に前記複数の吐出口のピッチを乗じた距離の1/4倍以上かつ3/4倍以下だけ相違することを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
インクジェット方式の印刷装置であって、
互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、
前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、
前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、
前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
インクジェット方式の印刷装置であって、
互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、
前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、
前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、
前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、を備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、
a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷方法であって、
前記c)工程において前記a)工程および前記b)工程が繰り返される際に、先行する前記a)工程および前記b)工程にて前記各描画位置に対してインクが吐出されたと想定した場合に、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて前記印刷媒体から最も前記インクが盛り上がる描画位置に対して最初のインクの吐出制御が行われることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷方法であって、
前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて互いに隣接する2つの描画位置の全ての組合せのそれぞれに対する吐出制御の順序が、先行する前記a)工程および前記b)工程と、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程とで異なることを特徴とする印刷方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷方法であって、
先行する前記a)工程および前記b)工程、並びに、前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記複数の描画ブロックの少なくとも一部のそれぞれにて連続する3つの描画位置の全ての組合せのそれぞれにおいて、中央の描画位置に隣接する他の2つの描画位置に対する吐出制御の順序が連続し、
前記c)工程にて前記a)工程および前記b)工程を繰り返す際に、前記中央の描画位置と前記他の2つの描画位置との間の吐出制御の前後関係が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから反転されることを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷方法であって、
前記複数の描画ブロックのそれぞれが、前記行方向に連続する描画位置の集合であり、
先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記吐出制御を1回行う動作が前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対して行われ、
前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口が、先行する前記a)工程および前記b)工程におけるものから変更されることを特徴とする印刷方法。
【請求項6】
光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する印刷媒体に向けて複数の吐出口から吐出するヘッドと、前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、を備えるインクジェット方式の印刷装置において、前記印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、
a)前記印刷媒体上において互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されており、前記行方向に前記複数の吐出口が配列された前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を備えることを特徴とする印刷方法。
【請求項7】
請求項6に記載の印刷方法であって、
先行する前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドが前記印刷媒体に対して相対的に前記列方向に主走査し、前記主走査が完了する毎に前記行方向に間欠的に副走査し、
前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置と異なることを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷方法であって、
前記c)工程にて繰り返される前記a)工程および前記b)工程において、前記ヘッドの各主走査時の前記行方向に関する位置が、先行する前記a)工程および前記b)工程における対応する主走査時の前記行方向に関する位置から、前記複数の吐出口の個数に前記複数の吐出口のピッチを乗じた距離の1/4倍以上かつ3/4倍以下だけ相違することを特徴とする印刷方法。
【請求項9】
インクジェット方式の印刷装置であって、
互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向および前記列方向のいずれか一方の方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、
前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、
前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、
前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する描画ブロックのうち、全ての描画ブロック、または、前記列方向に所定個数置きに存在する描画ブロックのそれぞれに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記一方の方向とは異なる他方の方向に並ぶ描画ブロックにて前記描画位置の集合に対する吐出制御の順序を同一に保ちつつ前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記吐出制御の順序を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
インクジェット方式の印刷装置であって、
互いに直交する行方向および列方向に配列された描画位置である描画位置配列が設定されており、かつ、前記描画位置配列が、それぞれが前記行方向に連続する描画位置の集合である複数の描画ブロックに分割されている印刷媒体を保持する保持部と、
前記行方向に配列された複数の吐出口から光硬化性のインクの微小液滴を前記インクに対して撥液性を有する前記印刷媒体に向けて吐出するヘッドと、
前記印刷媒体上に吐出されたインクに光を照射する光照射部と、
前記ヘッドを前記印刷媒体に対して相対的に移動する走査機構と、
前記走査機構による前記ヘッドの相対移動と前記ヘッドからのインクの吐出とを同期させつつ制御する制御部と、
を備え、
前記制御部が、
a)前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記列方向に相対的に主走査しつつ、前記ヘッドが通過する各描画ブロックに含まれる1つの描画位置に対するインクの吐出制御を1回行う工程と、
b)前記a)工程を繰り返しつつ前記ヘッドを前記印刷媒体に対して前記行方向に相対的に副走査することにより、前記描画位置配列の各描画位置に前記吐出制御を1回だけ行う工程と、
c)前記各描画位置に対する吐出制御の対象とされる前記ヘッドの吐出口を変更しつつ、前記a)工程および前記b)工程を繰り返す工程と、
を実行することを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6.A】
【図6.B】
【図6.C】
【図6.D】
【図7】
【図8】
【図9.A】
【図9.B】
【図9.C】
【図9.D】
【図10】
【図11】
【図12.A】
【図12.B】
【図12.C】
【図12.D】
【図13】
【図14】
【図15.A】
【図15.B】
【図15.C】
【図15.D】
【図16.A】
【図16.B】
【図16.C】
【図16.D】
【図17】
【図18】
【図19.A】
【図19.B】
【図19.C】
【図19.D】
【図20】
【図21.A】
【図21.B】
【図21.C】
【図21.D】
【図22.A】
【図22.B】
【図22.C】
【図22.D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6.A】
【図6.B】
【図6.C】
【図6.D】
【図7】
【図8】
【図9.A】
【図9.B】
【図9.C】
【図9.D】
【図10】
【図11】
【図12.A】
【図12.B】
【図12.C】
【図12.D】
【図13】
【図14】
【図15.A】
【図15.B】
【図15.C】
【図15.D】
【図16.A】
【図16.B】
【図16.C】
【図16.D】
【図17】
【図18】
【図19.A】
【図19.B】
【図19.C】
【図19.D】
【図20】
【図21.A】
【図21.B】
【図21.C】
【図21.D】
【図22.A】
【図22.B】
【図22.C】
【図22.D】
【公開番号】特開2008−80709(P2008−80709A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−264782(P2006−264782)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】
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