説明

印刷機、印刷方法、及び印刷物の製造方法

【課題】製品の品質の低下を招く不要なインキを、凸版から、完全にかつ容易に異物、ゴミを発生させずに除去し、高精細かつ高品質な印刷物を提供すること。
【解決手段】
最表面がシリコーンゴムもしくはフッ素ゴムで構成される転写版と、転写版保持機構と、前記転写版に対向するように設置されたインキング機構と、画線部に相当する溝構造部と非画像部に相当する平坦部を有する凸版と、凸版保持機構と、被印刷基板を保持する基板保持機構と、前記被印刷基板のアライメントマークを観察する第一の光学式カメラと、前記被印刷基板のアライメント調整機構と、前記凸版のアライメントマークを観察する第二の光学式カメラと、凸版位置調整機構と、からなる印刷機構と、前記凸版を移動する凸版搬送機構と、前記凸版上のインキを除去する除去機構と、前記凸版を備蓄するストック機構と、からなる凸版初期化機構と、を有することを特徴とする印刷機としたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なパターンを印刷する必要がある分野、具体的には液晶表示装置、有機EL表示装置、電気泳動表示装置、電子分流体表示装置、マイクロカプセル式表示装置、エレクトロウェッティング式表示装置、エレクトロクロミック式表示装置等の表示装置やセンサ、RFID、ロジック回路、電力伝送シート、タッチパネル、電磁波シールド部材の製造においてパターンを形成する場合の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板、表示装置等の電子部品の形成にはフォトリソグラフィーと真空プロセスが用いられてきた。近年、電子技術の進歩に伴って、素子類のサイズは益々小さくなっており、それにつれて素子を形成するパターンも微細化する事が要求されている。一方で、マザー基板のサイズは大型化している。そこで、従来のフォトレジストを用いた製造方法に比べ、生産性、コスト、高精度、大面積化等の面や更なる微細化のため、フォトリソグラフィー法に代えて各種印刷方法を用いた微細パターンの製造方法が提案されている。
【0003】
印刷法には凸版印刷や凹版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、インキジェット印刷などの印刷方法がある。これらの方法は解像限界が30μm程度と半導体装置や表示装置を形成するには低解像である。
【0004】
反転オフセット印刷法はカラーフィルタ、配線パターン、電極パターン等の形成に使用される事がある。反転オフセット印刷法は、シリンダーに巻き付けたインキ剥離性の高いブランケットの全面にインキ膜を形成し、予備乾燥して予備乾燥インキ膜を形成し、つぎに、そのブランケットとインキ除去版に接触させて予備乾燥したインキ膜のうち不要な部分をインキ除去版の凸部へ転移する。すると、ブランケット上には、インキ除去版の凹部に相対する所望のパターンのインキが残る。さらにブランケットと被印刷基材を接触させて所望のインキパターンを被印刷基材上へ転写する方法である。
【0005】
反転オフセット印刷法は、インキ膜厚を調整する事が容易であり、また、インキ剥離性のブランケット上に画像パターンを形成するので、被印刷基材へのインキ転写性が良好である。さらに、薄膜での微細パターン形成が可能であるという特徴がある。
【0006】
しかし、品質の安定したエレクトロニクス関連製品を製造するためには、インキ除去版の上に残った不要なインキの除去が必要不可欠になる。そのため、版洗浄装置が必要となるが従来の版洗浄装置では版上の不要なインキを除去するため有機溶剤等を版上に散布してインキを溶解させ、それをゴム等のブレードまたはドクターで掻きとるといった手法をとっていた。
【0007】
しかし、この手法を用いた装置を使用した場合、一度有機溶剤に溶解したインキをブレード等で掻ききれず、有機溶剤の蒸発によって再乾燥し前記版面の一部または洗浄装置周囲に再付着し、除去残りになる事があった。さらにはブレードの一部が欠損して異物になる事もあった。
【0008】
さらに、インキ除去版は表面に凹凸があり、版上の不要なインキを布等でふき取るタイプの版洗浄装置を使用した場合、版の凹凸と布等の接触によって繊維ゴミが生じ、それによって異物が発生する場合がある。その場合は、その異物が製品へ移行し、画素内に残り品質の低下が引き起こされるといった問題があった。
【0009】
一方、製品であるエレクトロニクス関連製品では各パターンに必要十分なインキおよびそのインキの量、形状が決められていて、その画素内に不要なインキ以外の異物がある場合、求められる性能を出す事が出来ず、品質の低下につながると言う問題があった。また、配線パターンや電極では、抵抗値が高い部分や、断線した場所が発生するという問題があった。
【0010】
また、上記の異物の問題を解決する版洗浄方法として、本発明者らは粘着剤を具備するフィルム状の粘着基材を使用する方法をすでに提案している(特許文献1参照)
【0011】
また、反転オフセット印刷法では、何かの折に版凹部や版の凸部の側面部に付着したインキやインキカス等がブランケットへ逆転移して、被印刷基材へ転写されてしまう事があった。そのような場合、前記の粘着基材を用いた版洗浄をするためには、粘着基材を版の凸部だけでなく凹部にも追従させ、圧着させる必要がある。
【0012】
そのためには版の凹部分の形状にあわせて変形が出来る程の柔軟性を具備した押し込みロールが必要であるが、そのようなロールは存在せず、結果前記基材を、前記版の凹部分に十分に圧着させる事は出来なかった。その結果、前記の版凹部や版凸部の側面部に付着した版を洗浄する事は非常に困難であった。
【0013】
さらに、インラインで版洗浄を行う場合、印刷機内のスペースの制約から簡易的な洗浄機の設置にとどまり不十分な洗浄になる問題や、タクトが長くなる問題、洗浄時に発塵して印刷物へ付着する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−255998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、反転オフセット印刷法において、製品の品質の低下を招く不要なインキを、凸版から、完全にかつ容易に異物、ゴミを発生させずに除去し、高精細かつ高品質な印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載の発明は、反転印刷法に用いられる印刷機であって、最表面がシリコーンゴムもしくはフッ素ゴムで構成される転写版と、転写版保持機構と、転写版に対向するように設置されたインキング機構と、画線部に相当する溝構造部と非画像部に相当する平坦部を有する凸版と、凸版保持機構と、被印刷基板を保持する基板保持機構と、被印刷基板のアライメントマークを観察する第一の光学式カメラと、被印刷基板のアライメント調整機構と、凸版のアライメントマークを観察する第二の光学式カメラと、凸版位置調整機構と、からなる印刷機構と、凸版初期化機構が、凸版を移動する凸版搬送機構と、凸版上のインキを除去する除去機構と、凸版を備蓄するストック機構と、からなる凸版初期化機構と、を有することを特徴とする印刷機である。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、前記除去機構がウェット洗浄機構であることを特徴とする請求項1に記載の印刷機である。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、前記ウェット洗浄機構は薬液を高圧スプレーで凸版に噴きつける機構と、純水によるリンス機構と、乾燥機構と、を具備する事を特徴とする請求項2に記載の印刷機である。
【0019】
また、請求項4に記載の発明は、前記除去機構がドライ洗浄機構であることを特徴とする請求項1に記載の印刷機である。
【0020】
また、請求項5に記載の発明は、ドライ洗浄機構は凸版の表面に粘着性フィルムを貼り付ける手段と、貼り付けたフィルムを剥がす手段とを、具備する事を特徴とする請求項3に記載の印刷機である。
【0021】
また、請求項6に記載の発明は、前記印刷機構は複数の凸版を有し、前記ストック機構は該複数の凸版を備蓄できることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の印刷機である。
【0022】
また、請求項7に記載の発明は、インキング機構で転写版上にインキ膜を形成する工程と、インキ膜の溶媒を揮発させて乾燥インキ膜を作製する工程と、乾燥インキ膜を凸版に押し当てて転写版上の非画像部の乾燥インキ膜を凸版の平坦部に転写する工程と、転写版と被印刷基材を接触させて画像部の乾燥インキ膜を被印刷基材へ転写する工程と、を順次行う印刷工程と、凸版保持機構の初期位置に保持されている凸版を凸版搬送機構で除去機構に移動する工程と、除去機構で凸版の平坦部に付着した乾燥インキ膜を凸版から除去する工程と、凸版をストック機構に備蓄する工程と、ストック機構の凸版を凸版搬送機構で移動し、第二の光学カメラと版位置調整機構で凸版を凸版保持機構の初期位置に保持する工程と、を順次行う初期化工程と、からなる印刷方法であって、前記印刷工程では前記初期化工程を経た凸版を用いることを特徴とする印刷方法である。
【0023】
また、請求項8に記載の発明は、インキング機構で転写版上にインキ膜を形成する工程と、インキ膜の溶媒を揮発させて乾燥インキ膜を作製する工程と、乾燥インキ膜を凸版に押し当てて転写版上の非画像部の乾燥インキ膜を凸版の平坦部に転写する工程と、転写版と被印刷基材を接触させて画像部の乾燥インキ膜を被印刷基材へ転写する工程と、を順次行う印刷工程と、凸版保持機構の初期位置に保持されている凸版を凸版搬送機構で除去機構に移動する工程と、除去機構で凸版の平坦部に付着した乾燥インキ膜を凸版から除去する工程と、凸版をストック機構に備蓄する工程と、ストック機構の凸版を凸版搬送機構で移動し、第二の光学カメラと版位置調整機構で凸版を凸版保持機構の初期位置に保持する工程と、を順次行う初期化工程と、からなる印刷物の製造方法であって、前記印刷工程では前記初期化工程を経た凸版を用いることを特徴とする印刷物の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば反転オフセット印刷によって、エレクトロニクス用途の要求品質の厳しい印刷物を製造する際に、凸版に付着した不要なインキを除去する方法として、版洗浄方法と製造装置を提供出来る。この工程によって、版より完全に不要なインキを除去する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態による印刷機を示す側面図。
【図2】本発明の実施の形態による製造装置の平面模式図。
【図3】本発明の実施の形態によるパターン形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。
【0027】
図1は本発明の実施の形態による印刷機を示す側面模式図である。図1において、最表面がシリコーンゴムもしくはフッ素ゴムで構成され転写版が転写版保持機構取り付けられ、インキング機構が転写版に面して設置され、画線部に相当する溝構造部を有する凸版が版保持機構に保持され、基板を保持する基板保持機構と、基板のアライメントマークを観察する第一の光学式カメラと、光学式カメラで読み取ったアライメントマークの情報を元にアライメントを行う基板のアライメント調整機構と、凸版のアライメントマークを観察する第二の光学式カメラと、凸版位置調整機構が設置されている。転写版保持機構は円筒状に、凸版保持機構と被印刷基材保持機構は平板状に図示しているがこれに限定されない。
【0028】
本発明の転写版について説明する。転写版の最表面はPDMS(ポリジメチルシロキサン)を主体とするシリコーンゴムやフッ素ゴムを用いる事が出来る。これらは低表面エネルギーを特徴とする材料であり、インキなどの液体が濡れ広がりにくい。エラストマーの表面はUVやオゾン、アッシングなどで表面改質を適切強度で行ってもよいが、過剰に表面改質を行うと、転写性が悪化する。また、エラストマーは複数の層で構成されても良いが、インキの良好な転写性のために最表層はシリコーンゴムやフッ素ゴムである必要がある。
【0029】
転写版はシリコンウェハーや石英ガラス、フォトレジストパターン、エレクトロフォーミングなどで作製したモールドから平滑面を模りするする方法や、ナイフコートやロールコート、スピンコート、バーコート、リップコートなどで形成する事が出来るがこれらの方法に限定されない。
【0030】
本発明の版はシリコンウェハーや石英ガラス、無アルカリガラス、青板ガラス、SUSや銅、ニッケルなどの金属や樹脂により構成される。版の表面はクロムなどの金属をメッキしてもよく、シリカやダイヤモンドライクカーボンなどの気相製膜をしても良い。版の溝部の形成は、モールディングやエレクトロフォーミング、フォトリソによるウェットエッチング/ドライエッチング、サンドブラスト、レーザー描画などで形成する事が出来る。
【0031】
第一の光学式カメラは2台設置され、各カメラで基板のアライメントマークを撮像する事が出来る。第一の光学カメラは任意に移動可能であり、画線(マスク)の設計に柔軟に対応可能である。また、第二の光学式カメラも2台設置され、各カメラで凸版のアライメントマークを撮像する事が出来る。第二の光学カメラは任意に移動可能であり、画線(マスク)の設計に柔軟に対応可能である。
【0032】
被印刷基材保持機構は示したように、X方向、Y方向、θ方向に移動可能なアクチュエーターを備え、被印刷基材保持機構上に取り付けられた被印刷基材の位置を転写版に対して調整する事が出来る。なおθ方向とは水平回転動作を意味している。
【0033】
インキング機構は、例えば、スプレーコーティング、グラビアコーティング、リバースグラビアコーティング、ロールコーティング、フレキソプリンティング、インキジェットプリンティング、スロットダイコーティング、キャップコーティング、バーコーティングなどを用いる事が出来るが、本発明はこれらに限定されるわけでは無い。
【0034】
図2は印刷機と凸版初期化機構の配置を示した製造装置の平面模式図である。
印刷機の版保持機構と除去機構、ストック機構間は凸版搬送機構で接続されている。
【0035】
凸版輸送機構はローダー・アンローダーや、コンベア、AGVで構成され、横型搬送でも縦型搬送でもよく、接触式搬送でも静電チャックやフロートチャックなどの非接触式搬送でも良い。
【0036】
除去機構は粘着フィルムによるドライ洗浄やスプレー洗浄や二流体洗浄、超音波洗浄などによるウェット洗浄を持ちこれら単独でも組み合わせても良い。さらに、除去機構にウェット洗浄を具備する場合は、ウェット洗浄後に純水によるリンスとエアナイフによる乾燥機構が必要である。また、ドライ洗浄時には静電気による再汚染を防止するために、帯電防止装置が組み込まれていても良い。
【0037】
ストック機構は除去機構で洗浄した版を備蓄する機構であり、印刷機による印刷を滞り無く行うために用意される。
【0038】
被印刷基材は板状のガラスや、板状もしくはフィルム状のプラスチックである。プラスチックフィルムの樹脂材料として例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、シクロオレフィンポリマー、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、液晶ポリマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂などの材料を用いる事が出来、これらの樹脂を組み合わせたポリマーアロイや、1種または2種以上の上記樹脂材料を組み合わせて積層した多層構造の積層プラスチックフィルムとして構成される事もある。
【0039】
本発明の実施の形態の印刷機で印刷されるインキには導電インキや絶縁インキ、半導体インキ、光学インキなどを用いることができる。
【0040】
導電インキに金属ナノ粒子を用いる事が出来る。金属ナノ粒子は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム、マンガンの金属からなるナノ粒子、または、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、アルミニウム、マンガン、モリブデンの金属から選択される2種類以上の金属からなる合金のナノ粒子や、酸化インジウムスズ(ITO)や酸化銀などの金属酸化物のナノ粒子やその前駆体溶液、有機銀などの有機金属化合物も用いる事が出来る。用いる金属の平均粒径はインキへの分散性の点から50nm以下の平均粒径が好ましく、粒子の安定した製造の点から10から30nmの平均粒径が好ましいが、これに限定しない。PEDOTやPANIなどの導電性高分子の導電インキを用いる事も出来る。
【0041】
絶縁膜インキはポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリ弗化ビニリデン、シアノエチルプルラン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、フッ素樹脂、シリコーン樹脂やこれらの樹脂のポリマーアロイや共重合体を用いる事が出来る。また、ゲート絶縁膜と層間絶縁膜は有機無機のフィーラーなどを含むコンポジット材料で構成されても良い。これらを溶解又は分散したインキは配線や電極同士を絶縁する層間絶縁層、着色層や発光層からなる画素を区切るための隔壁を形成するために用いられる。
【0042】
半導体インキとしてはπ共役ポリマーが用いられ、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリアリルアミン類、フルオレン類、ポリカルバゾール類、ポリインドール類、ポリ(P−フェニレンビニレン)類などを用いる事が出来る。また、有機溶媒への溶解性を有する低分子物質、例えば、ペンタセンなどの多環芳香族の誘導体、チオフェン系オリゴマー、フタロシアニン誘導体、ペリレン誘導体、テトラチアフルバレン誘導体、テトラシアノキノジメタン誘導体などを用いる事が出来る。フラーレンやカーボンナノチューブ、グラフェンからなる炭素半導体を用いる事が出来る。無機系半導体インキとしてシリコンナノ粒子やIGZO前駆体を用いる事が出来る。これらのインキは有機EL素子の発光層やトランジスタの半導体層を形成するために用いられる。
【0043】
光学インキとしては顔料を分散したインキ、又は染料を溶解したインキを用いることができる。これらのインキはカラーフィルタのRGBサブピクセル又はブラックマトリクスの形成に用いられ、市販の赤色、緑色、青色の顔料又は染料やカーボンブラック等の遮光剤をインキに分散又は溶解したものを用いる事が出来る。
【0044】
本発明の機能性膜の形成方法を各工程順に以下に説明する。図3は本発明の実施の形態を表す機能性膜の形成方法の一例である。
【0045】
[工程1]
インキング機構で転写版上にインキ膜を形成する[図3(a)]。
[工程2]
インキ膜の溶媒を揮発させて乾燥インキ膜を作製し、乾燥インキ膜を凸版に押し当てて転写版上の非画像部の乾燥インキ膜を凸版の平坦部に転写する[図3(b)]。
[工程3]
転写版と被印刷基材を接触させて画像部の乾燥インキ膜を被印刷基材へ転写する[図3(c)]。
【0046】
次に、本発明の版の初期化工程を各工程順に以下に説明する。初期化工程とは、転写工程後の版を印刷前の正常な状態に戻すとともに、版を初期位置に戻す工程である。
【0047】
[工程1]
凸版保持機構の初期位置に保持されている転写工程後の凸版を凸版搬送機構で除去機構に移動する。初期位置とは、印刷を行った際に、適切なアライメントが再現出来る位置のことである。
[工程2]
除去機構で凸版の平坦部に付着した乾燥インキ膜を凸版から除去する。
[工程3]
凸版をストック機構に備蓄する。
[工程4]
ストック機構の凸版を凸版搬送機構で移動し凸版保持機構の初期位置に保持する。アライメント精度確保のために、凸版は凸版保持機構に突き当てなどで大まかな位置あわせを行った後に、第二の光学式カメラで凸版の位置を精密に読み取り、版位置調整機構で凸版を初期位置に戻す。
【0048】
本発明の初期化工程では、複数の版を用いて印刷と共に連続して版を交換するために版洗浄を行ってもタクトが長くなる問題が生じない。また、印刷機から版を取り外して洗浄を行うため、異物を除去するのに十分な洗浄が行え、洗浄時に発塵して印刷物へ付着する問題も発生しない。
さらに、印刷工程と洗浄を並行して進めることが出来るために、タクトを犠牲にすることなく清浄な版で連続的に印刷物を製造することが出来る。
【実施例】
【0049】
以下、具体的な実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は説明を目的としたもので、本発明はこれに限定されるものでは無い。
【0050】
印刷パターンとして、5インチ、電気泳動表示素子用の薄膜トランジスタ(TFT)アレイ、2×2面付け、各層の周囲にアライメントマークを配置したものを使用した。本実施例では基材上にゲート電極とキャパシタ、バスラインで構成されるゲート層が形成され、ゲート層上に絶縁膜が形成された被印刷基板上にソース・ドレイン電極とバスラインで構成されるソース・ドレイン層をパターニングする。
【0051】
転写版として約120μm厚のPET基材に500μm厚のシリコーンゴムを積層したものを用いた。インキとしては銀ナノ粒子分散液を用いた。また、パターンの除去版としては、350×350mm上に、5インチTFTアレイパターンを2×2面配置した硝子製凸版を使用した。更に、被印刷基材としてフィルム厚120μmの光透過性PEN基材を使用した。上記基材を使用して下記手順に従い、被印刷基材上に印刷パターンを形成した。
【0052】
1)転写版上に280mm幅のヘッドを用いたダイコーターにより、塗工長さ290mmでインキを塗工した。
2)インキ塗工膜を乾燥させた後、凸版を設置した凸版支持機構まで搬送を行った。
3)凸版にインキ塗工膜を接触させ、非画線部を除去版に転写した後、転写版上のパターン部が被印刷基材を固定した被印刷基材支持機構に来るように各ユニットを移動させた。
4)転写版と被印刷基板を適度な間隔をもって保持し、各々のアライメントマークを重ね合わせ2台のアライメント用カメラでアライメントマークを確認し、位置合わせを行った。
5)転写版上の画線パターンを被印刷基材へ転写し、被印刷基材上に印刷パターンを形成して印刷を完了した。
【0053】
印刷した後に、凸版保持機構の初期位置に保持されているガラス製凸版を凸版搬送機構で除去機構に移動した。除去機構にて先ず、粘着ロールで凸版の平坦部に付着した乾燥インキ膜を凸版から除去した後に、除去残りのインキ膜をスプレー洗浄で洗浄し、純水でリンスし、エアナイフで乾燥した後に、凸版をストック機構に備蓄した。洗浄・備蓄中に平行して行っていた印刷が終了し、凸版を除去機構に移動した後に、ストック機構に備蓄している凸版を凸版搬送機構で移動し凸版保持機構の初期位置に保持した。
【0054】
印刷パターンが形成された被印刷基材を加熱装置でアニールし、TFTアレイのソース・ドレイン層を形成した。本発明の印刷方法を用いる事で、面内のゲート層とソース・ドレイン層のアライメントマークの位置精度を±2μmで制御する事が出来、高詳細で位置精度の良好なTFTアレイが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、液晶表示素子のカラーフィルタやTFTアレイ、有機EL素子、電子ペーパー等の画像表示体部材や、メモリ、RFID、ロジック回路、電力伝送シート、タッチパネル、電磁波シールド部材、光もしくは熱、応力、磁気などの物理センサ、生物センサ、化学センサ等のうち印刷版を用いて製造されるものに利用される。
【符号の説明】
【0056】
100 基板
201 転写版
202 転写版保持機構
301 凸版
302 凸版保持機構
400 インキング機構
501 インキ膜
502 乾燥インキ膜の画像部
600 基板保持機構
711 第一の光学式カメラ
712 アライメント調整機構
721 第二の光学式カメラ
722 版位置調整機構
800 印刷機
900 凸版初期化機構
901 凸版搬送機構
902 除去機構
903 ストック機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反転印刷法に用いられる印刷機であって、
最表面がシリコーンゴムもしくはフッ素ゴムで構成される転写版と、転写版保持機構と、前記転写版に対向するように設置されたインキング機構と、画線部に相当する溝構造部と非画像部に相当する平坦部を有する凸版と、凸版保持機構と、被印刷基板を保持する基板保持機構と、前記被印刷基板のアライメントマークを観察する第一の光学式カメラと、前記被印刷基板のアライメント調整機構と、前記凸版のアライメントマークを観察する第二の光学式カメラと、凸版位置調整機構と、からなる印刷機構と、
前記凸版を移動する凸版搬送機構と、前記凸版上のインキを除去する除去機構と、前記凸版を備蓄するストック機構と、からなる凸版初期化機構と、
を有することを特徴とする印刷機。
【請求項2】
前記除去機構がウェット洗浄機構であることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記ウェット洗浄機構は薬液を高圧スプレーで凸版に噴きつける機構と、純水によるリンス機構と、乾燥機構と、を具備する事を特徴とする請求項2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記除去機構がドライ洗浄機構であることを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項5】
ドライ洗浄機構は凸版の表面に粘着性フィルムを貼り付ける手段と、貼り付けたフィルムを剥がす手段とを、具備する事を特徴とする請求項3に記載の印刷機。
【請求項6】
前記印刷機構は複数の凸版を有し、前記ストック機構は該複数の凸版を備蓄できることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の印刷機。
【請求項7】
インキング機構で転写版上にインキ膜を形成する工程と、インキ膜の溶媒を揮発させて乾燥インキ膜を作製する工程と、乾燥インキ膜を凸版に押し当てて転写版上の非画像部の乾燥インキ膜を凸版の平坦部に転写する工程と、転写版と被印刷基材を接触させて画像部の乾燥インキ膜を被印刷基材へ転写する工程と、を順次行う印刷工程と、
凸版保持機構の初期位置に保持されている凸版を凸版搬送機構で除去機構に移動する工程と、除去機構で凸版の平坦部に付着した乾燥インキ膜を凸版から除去する工程と、凸版をストック機構に備蓄する工程と、ストック機構の凸版を凸版搬送機構で移動し、第二の光学カメラと版位置調整機構で凸版を凸版保持機構の初期位置に保持する工程と、を順次行う初期化工程と、
からなる印刷方法であって、
前記印刷工程では前記初期化工程を経た凸版を用いることを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
インキング機構で転写版上にインキ膜を形成する工程と、インキ膜の溶媒を揮発させて乾燥インキ膜を作製する工程と、乾燥インキ膜を凸版に押し当てて転写版上の非画像部の乾燥インキ膜を凸版の平坦部に転写する工程と、転写版と被印刷基材を接触させて画像部の乾燥インキ膜を被印刷基材へ転写する工程と、を順次行う印刷工程と、
凸版保持機構の初期位置に保持されている凸版を凸版搬送機構で除去機構に移動する工程と、除去機構で凸版の平坦部に付着した乾燥インキ膜を凸版から除去する工程と、凸版をストック機構に備蓄する工程と、ストック機構の凸版を凸版搬送機構で移動し、第二の光学カメラと版位置調整機構で凸版を凸版保持機構の初期位置に保持する工程と、を順次行う初期化工程と、
からなる印刷物の製造方法であって、
前記印刷工程では前記初期化工程を経た凸版を用いることを特徴とする印刷物の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−206432(P2012−206432A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74809(P2011−74809)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】