説明

印刷物の製造方法

【課題】画像層の表面の凹凸による色ムラを抑制する印刷物の製造方法を提供する。
【解決手段】透光性を有する記録媒体上に画像層の材料を含む第1機能液を塗布し、塗布された前記第1機能液を固化して、前記記録媒体上に前記画像層を形成する画像層形成工程と、前記画像層上に光反射性を有する白色層の材料を含む第2機能液を塗布して、前記画像層上に前記白色層を形成する白色層形成工程と、を含み、前記白色層形成工程では、前記画像層上に前記第2機能液を塗布してから所定時間を経過した後に塗布された前記第2機能液を固化させるレベリング工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体上に画像層の材料を含む機能液を塗布し、これを固化して画像層を形成する場合、機能液の塗布状態等に起因して画像層の表面に凹凸が形成され、色ムラの原因となっていた。そこで、色ムラを抑制するため、画像層上に白色層を形成する方法が知られている。具体的には、例えば、画像層の材料となる色インクと白色層の材料となる白インクとの吐出量を調整しながら各インクを吐出させる方法である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−153314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、色インク量に応じて白色インクの吐出量を調整する制御構成が複雑化してしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる印刷物の製造方法は、透光性を有する記録媒体上に画像層の材料を含む第1機能液を塗布し、塗布された前記第1機能液を固化して、前記記録媒体上に前記画像層を形成する画像層形成工程と、前記画像層上に光反射性を有する白色層の材料を含む第2機能液を塗布して、前記画像層上に前記白色層を形成する白色層形成工程と、を含み、前記白色層形成工程では、前記画像層上に前記第2機能液を塗布してから所定時間を経過した後に塗布された前記第2機能液を固化させるレベリング工程を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、記録媒体上に画像層が形成され、画像層上に白色層が形成される。画像層が形成される際、第1機能液の塗布条件等に起因して画像層の表面に凹凸が形成され、色ムラの原因となる。そこで、画像層上に白色層の材料を含む第2機能液を塗布した後、塗布した第2機能液を所定時間保持する。そうすると、塗布された第2機能液が画像層の凹凸に応じて濡れ広がる。すなわち、画像層が厚い箇所(凸部)には第2機能液が薄く塗布され、画像が薄い箇所(凹部)には第2機能液が厚く塗布される。こうして、白色層の表面を容易に平坦化させることができる。これにより、画像層の表面の凹凸による色ムラを抑制し、高精細な画像を有する印刷物を提供することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる印刷物の製造方法の前記レベリング工程では、前記所定時間として0.5秒以上経過した後に前記第2機能液を固化させることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、確実に塗布された第2機能液が画像層の凹凸に応じて濡れ広がるので、白色層を平坦化させることができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる印刷物の製造方法の前記白色層形成工程では、前記画像層上に前記第2機能液としての光硬化性インクを塗布し、塗布された前記光硬化性インクに向けて光を照射して、前記光硬化性インクを固化させることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、画像層に光硬化性インクを用いることにより、光硬化性インクを塗布してから固化させるまでの時間を容易に管理することができるとともに、白色層の表面を容易に平坦化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】本実施形態に係るキャリッジを図1中のA視方向に見たときの正面図。
【図3】本実施形態に係るヘッドユニットの底面図。
【図4】吐出ヘッドの構成を示す断面図。
【図5】本実施形態に係る液滴吐出装置の制御部の構成を示すブロック図。
【図6】本実施形態に係る印刷物の製造方法を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
【0014】
印刷物の製造方法の説明に先立ち、まず、印刷物の製造方法に用いられる液滴吐出装置の構成について説明する。なお、本実施形態では、機能液としての紫外線硬化性インクを吐出する装置構成について説明する。
【0015】
図1は、液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図である。図1に示すように、液滴吐出装置1は、ワーク搬送装置3と、キャリッジ7と、キャリッジ搬送装置9と、メンテナンス装置11等を有している。キャリッジ7には、ヘッドユニット13と、2個の照射装置15と、が設けられている。液滴吐出装置1では、ヘッドユニット13と基板などのワークWとを相対的に移動させながらヘッドユニット13から機能液を液滴として吐出させる。これによって、ワークW上に液滴が着弾され、所望のパターンを描画することができる。なお、図中のY方向はワークWの移動方向を示し、X方向は平面視でY方向とは直交する方向を示している。また、X方向及びY方向によって規定されるXY平面と直交する方向は、Z方向として規定される。
【0016】
ワーク搬送装置3は、図1に示すように、定盤21と、ガイドレール23aと、ガイドレール23bと、ワークテーブル25と、テーブル位置検出装置27と、を有している。定盤21は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、Y方向に沿って延びるように据えられている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、定盤21の上面21a上に配設されている。ガイドレール23a及びガイドレール23bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール23aとガイドレール23bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。
【0017】
ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bを挟んで定盤21の上面21aに対向した状態で設けられている。ワークテーブル25は、定盤21から浮いた状態でガイドレール23a及びガイドレール23b上に載置されている。ワークテーブル25は、ワークWが載置される面である載置面25aを有している。載置面25aは、定盤21側とは反対側(上側)に向けられている。ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bによってY方向に沿って案内され、定盤21上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。テーブル位置検出装置27は、定盤21の上面21aに設けられており、Y方向に延在している。テーブル位置検出装置27は、ガイドレール23aとガイドレール23bとの間に設けられている。テーブル位置検出装置27は、ワークテーブル25のY方向における位置を検出する。
【0018】
ワークテーブル25は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、ワークテーブル25をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するワーク搬送モーターが採用されている。ワーク搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。ワーク搬送モーターからの動力は、移動機構を介してワークテーブル25に伝達される。これにより、ワークテーブル25は、ガイドレール23a及びガイドレール23bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、ワーク搬送装置3は、ワークテーブル25の載置面25aに載置されたワークWを、Y方向に沿って往復移動させることができる。
【0019】
キャリッジ搬送装置9は、図1に示すように、架台61と、ガイドレール63と、キャリッジ位置検出装置65と、を有している。架台61は、X方向に延在しており、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11をX方向にまたいでいる。架台61は、ワークテーブル25の定盤21側とは反対側で、ワーク搬送装置3及びメンテナンス装置11のそれぞれに対向している。架台61は、支柱67aと支柱67bとによって支持されている。支柱67a及び支柱67bは、定盤21を挟んでX方向に互いに対峙する位置に設けられている。支柱67a及び支柱67bは、それぞれ、ワークテーブル25よりもZ方向の上方に突出している。これにより、架台61とワークテーブル25との間、及び架台61とメンテナンス装置11との間には、それぞれ隙間が保たれている。
【0020】
ガイドレール63は、架台61の定盤21側に設けられている。ガイドレール63は、X方向に沿って延在しており、架台61のX方向における幅にわたって設けられている。前述したキャリッジ7は、ガイドレール63に支持されている。キャリッジ7がガイドレール63に支持された状態において、吐出ヘッド33のノズル面35(図2参照)は、Z方向においてワークテーブル25側に向いている。キャリッジ7は、ガイドレール63によってX方向に沿って案内され、X方向に往復動可能な状態でガイドレール63に支持されている。なお、平面視で、キャリッジ7がワークテーブル25に重なっている状態において、ノズル面35とワークテーブル25の載置面25aとは、互いに隙間を保った状態で対向する。キャリッジ位置検出装置65は、架台61とキャリッジ7との間に設けられており、X方向に延在している。キャリッジ位置検出装置65は、キャリッジ7のX方向における位置を検出する。
【0021】
キャリッジ7は、図示しない移動機構及び動力源によって、X方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、キャリッジ7をX方向に沿って移動させるための動力源として、後述するキャリッジ搬送モーターが採用されている。キャリッジ搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。キャリッジ搬送モーターからの動力は、移動機構を介してキャリッジ7に伝達される。これにより、キャリッジ7は、ガイドレール63に沿って、すなわちX方向に沿って往復移動することができる。つまり、キャリッジ搬送装置9は、キャリッジ7に支持されたヘッドユニット13を、X方向に沿って往復移動させることができる。
【0022】
メンテナンス装置11は、図1に示すように、定盤71と、ガイドレール73aと、ガイドレール73bと、保守テーブル75と、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を有している。定盤71は、例えば石などの熱膨張係数が小さい材料で構成されており、X方向に支柱67aを挟んで定盤21と対峙する位置に設けられている。ガイドレール73a及びガイドレール73bは、定盤71の上面71a上に配設されている。ガイドレール73a及びガイドレール73bは、それぞれ、Y方向に沿って延在している。ガイドレール73aとガイドレール73bとは、互いにX方向に隙間をあけた状態で並んでいる。保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bを挟んで定盤71の上面71aに対向した状態で設けられている。保守テーブル75は、定盤71から浮いた状態でガイドレール73a及びガイドレール73b上に載置されている。
【0023】
保守テーブル75には、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットが載置される。本実施形態では、保守ユニットは、キャッピングユニット76と、フラッシングユニット77と、ワイピングユニット79と、を含んでいる。保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bによってY方向に沿って案内され、定盤71上をY方向に沿って往復移動可能に構成されている。フラッシングユニット77は、保守テーブル75の定盤71側とは反対側に設けられている。ここで、ワークWへのパターンの描画とは無関係に、吐出ヘッド33から機能液を吐出させる動作は、フラッシング動作と呼ばれる。フラッシング動作には、例えば、ノズル37(図3参照)内に滞留する機能液がノズル37内で固化してしまうことを予防する効果がある。フラッシングユニット77は、フラッシング動作のときに、吐出ヘッド33から吐出される機能液を受ける装置である。
【0024】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をする装置である。吐出ヘッド33から吐出される機能液では、液体成分が蒸発することがある。一般的に、機能液における液体成分が蒸発すると、機能液の粘度が高くなる。吐出ヘッド33内の機能液の粘度が高くなると、ノズル37における液滴55(図4参照)を吐出する性能(以下、吐出性能と呼ぶ)が低下することがある。吐出性能の低下としては、例えば、ノズル37から吐出された液滴55の進行方向が曲がってしまったり(飛行曲がり)、ノズル37から液滴55が吐出されなかったり(不吐出)することなどが挙げられる。なお、キャッピングユニット76で吐出ヘッド33に蓋をする動作は、キャッピング動作と呼ばれる。
【0025】
キャッピングユニット76は、吐出ヘッド33に蓋をすることで、機能液における液体成分がノズルから蒸発することを低く抑える。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。ワイピングユニット79は、吐出ヘッド33のノズル面35を拭く装置である。液滴吐出装置1では、ノズル面35に機能液が付着することがある。ノズル面35に機能液が付着すると、吐出ヘッド33における吐出性能が低下することがある。ワイピングユニット79は、ノズル面35を拭くことによって、ノズル面35に付着している機能液を払拭する。これにより、吐出ヘッド33における吐出性能を維持しやすくすることができる。なお、ワイピングユニット79でノズル面35を拭く動作は、ワイピング動作と呼ばれる。
【0026】
保守テーブル75は、図示しない移動機構及び動力源によって、Y方向に往復動可能に構成されている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などが採用され得る。また、本実施形態では、保守テーブル75をY方向に沿って移動させるための動力源として、後述するテーブル搬送モーターが採用されている。テーブル搬送モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターが採用され得る。テーブル搬送モーターからの動力は、移動機構を介して保守テーブル75に伝達される。これにより、保守テーブル75は、ガイドレール73a及びガイドレール73bに沿って、すなわちY方向に沿って往復移動することができる。つまり、メンテナンス装置11は、キャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットを、Y方向に沿って往復移動させることができる。これにより、平面視で吐出ヘッド33がメンテナンス装置11に重なっている状態において、吐出ヘッド33をキャッピングユニット76、フラッシングユニット77及びワイピングユニット79のそれぞれに対向させることができる。
【0027】
図2は、キャリッジ7を図1中のA視方向に見たときの正面図である。また、図3は、ヘッドユニットの底図である。ヘッドユニット13は、図2に示すように、ヘッドプレート31と、2個の吐出ヘッド33と、を有している。2個の吐出ヘッド33は、X方向に並んでいる。なお、吐出ヘッド33の個数は、2個に限定されず、1個以上の任意の個数が採用され得る。また、以下においては、2つの吐出ヘッド33のそれぞれを識別する場合に、吐出ヘッド33a及び吐出ヘッド33bという表記が用いられる。また、図3に示すように、吐出ヘッド33は、ノズル面35を有している。ノズル面35には、複数のノズル37が形成されている。なお、図3では、ノズル37をわかりやすく示すため、ノズル37が誇張され、且つノズル37の個数が減じられている。
【0028】
各吐出ヘッド33において、複数のノズル37は、Y方向に沿って配列する2本のノズル列39を構成している。2本のノズル列39は、X方向に互いに隙間をあけた状態で並んでいる。各ノズル列39において、複数のノズル37は、Y方向に沿って所定のノズル間隔Pで形成されている。各吐出ヘッド33において、2本のノズル列39は、互いにY方向にP/2の距離だけずれている。ヘッドユニット13では、2個の吐出ヘッド33のうちの一方におけるノズル列39と、他方の吐出ヘッド33におけるノズル列39とが、互いにY方向にP/4の距離だけずれている。これにより、本実施形態では、Y方向におけるノズル37の密度が高められている。
【0029】
図4は、吐出ヘッドの構成を示す断面図である。図4に示すように、吐出ヘッド33は、ノズルプレート46と、キャビティープレート47と、振動板48と、複数の圧電素子49と、を有している。ノズルプレート46は、ノズル面35を有している。複数のノズル37は、ノズルプレート46に設けられている。キャビティープレート47は、ノズルプレート46のノズル面35とは反対側の面に設けられている。キャビティープレート47には、複数のキャビティー51が形成されている。各キャビティー51は、各ノズル37に対応して設けられており、対応する各ノズル37に連通している。各キャビティー51には、図示しないタンクから機能液53が供給される。
【0030】
振動板48は、キャビティープレート47のノズルプレート46側とは反対側の面に設けられている。振動板48は、Z方向に振動(縦振動)することによって、キャビティー51内の容積を拡大したり、縮小したりする。複数の圧電素子49は、それぞれ、振動板48のキャビティープレート47側とは反対側の面に設けられている。各圧電素子49は、各キャビティー51に対応して設けられており、振動板48を挟んで各キャビティー51に対向している。各圧電素子49は、駆動信号に基づいて、伸張する。これにより、振動板48がキャビティー51内の容積を縮小する。このとき、キャビティー51内の機能液53に圧力が付与される。その結果、ノズル37から、機能液53が液滴55として吐出される。吐出ヘッド33による液滴55の吐出法は、インクジェット法の1つである。インクジェット法は、塗布法の1つである。
【0031】
上記の構成を有する吐出ヘッド33は、図2に示すように、ノズル面35がヘッドプレート31から突出した状態で、ヘッドプレート31に支持されている。キャリッジ7は、図2に示すように、ヘッドユニット13を支持している。ここで、ヘッドユニット13は、ノズル面35がZ方向の下方に向けられた状態でキャリッジ7に支持されている。なお、本実施形態では、縦振動型の圧電素子49が採用されているが、機能液53に圧力を付与するための加圧手段は、これに限定されず、例えば、下電極と圧電体層と上電極とを積層形成した撓み変形型の圧電素子も採用され得る。また、加圧手段としては、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなども採用され得る。さらに、発熱体を用いてノズル内に泡を発生させ、その泡によって機能液に圧力を付与する構成も採用され得る。
【0032】
2個の照射装置15は、図2に示すように、それぞれ、X方向にヘッドユニット13を挟んで互いに対峙する位置に設けられている。以下において、2個の照射装置15のそれぞれを識別する場合に、照射装置15a及び照射装置15bという表記が用いられる。照射装置15aは、X方向において、吐出ヘッド33aの吐出ヘッド33b側とは反対側に位置している。また、照射装置15bは、X方向において、吐出ヘッド33bの吐出ヘッド33a側とは反対側に位置している。照射装置15a及び照射装置15bは、それぞれ、紫外光41を発する光源43を有している。光源43からの紫外光41は、吐出ヘッド33から吐出された機能液45の硬化を促進させる。機能液45は、紫外光41の照射を受けると、硬化が促進する。光源43としては、例えば、LED、LD、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等の種々の光源43が採用され得る。
【0033】
本実施形態では、機能液53として、光の照射を受けることによって硬化が促進する機能液45が採用されている。本実施形態では、機能液45の硬化を促進させる光として紫外光41(図2)が採用されている。機能液45は、樹脂材料、光重合開始剤及び溶媒を、成分として含んでいる。これらの成分に、顔料や染料等の色素や、親液性や撥液性等の表面改質材料などの機能性材料を添加することによって固有の機能を有する機能液45を生成することができる。顔料や染料等の色素を含有する機能液45は、例えば、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53として採用され得る。以下において、ワークWに描画する画像を形成するための機能液53としての機能液45は、画像塗料と呼ばれる。
【0034】
また、機能液45の成分としての樹脂材料に、例えば、アクリル系の樹脂材料などの光透過性を有する樹脂材料を採用することによって、光透過性を有する機能液53を構成することができる。このような光透過性を有する機能液53は、例えば、クリアインクとしての用途が考えられる。以下において、光透過性を有する機能液53は、透光塗料と呼ばれる。クリアインクの用途としては、例えば、画像を被覆するオーバーコート層としての用途や、画像を形成する前の下地層としての用途などが考えられる。以下において、下地層として適用される機能液53は、下地塗料と呼ばれる。下地塗料としては、透光塗料だけでなく、透光塗料に種々の顔料を添加した機能液53を採用することもできる。機能液45における樹脂材料は、樹脂膜を形成する材料である。このような樹脂材料としては、常温で液状であり、重合させることによってポリマーとなる材料であれば特に限定されない。樹脂材料としては、粘性が小さいものが好ましく、オリゴマーの形態であるのが好ましい。さらに、樹脂材料としては、モノマーの形態であることが一層好ましい。光重合開始剤は、ポリマーの架橋性基に作用して架橋反応を進行させる添加剤である。光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが採用され得る。溶媒は、樹脂材料の粘度を調整するためのものである。
【0035】
次に、液滴吐出装置の制御部の構成について説明する。図5は、液滴吐出装置の制御部の構成を示すブロック図である。液滴吐出装置1は、図5に示すように、上記の各構成の動作を制御する制御部111を有している。制御部111は、CPU(Central Processing Unit)113と、駆動制御部115と、メモリー部117と、を有している。駆動制御部115及びメモリー部117は、バス119を介してCPU113に接続されている。また、液滴吐出装置1は、キャリッジ搬送モーター121と、ワーク搬送モーター123と、テーブル搬送モーター125と、入力装置129と、表示装置131と、を有している。キャリッジ搬送モーター121、ワーク搬送モーター123、及びテーブル搬送モーター125は、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、入力装置129及び表示装置131も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0036】
キャリッジ搬送モーター121は、キャリッジ7を駆動するための動力を発生させる。ワーク搬送モーター123は、ワークテーブル25を駆動するための動力を発生させる。テーブル搬送モーター125は、保守テーブル75を駆動するための動力を発生させる。入力装置129は、各種の加工条件を入力する装置である。表示装置131は、加工条件や、作業状況を表示する装置である。液滴吐出装置1を操作するオペレーターは、表示装置131に表示される情報を確認しながら、入力装置129を介して種々の情報を入力することができる。なお、キャリッジ位置検出装置65、テーブル位置検出装置27及び2個の吐出ヘッド33も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。また、2個の照射装置15、及びメンテナンス装置11も、それぞれ、入出力インターフェイス133とバス119とを介して制御部111に接続されている。
【0037】
CPU113は、プロセッサーとして各種の演算処理を行う。駆動制御部115は、各構成の駆動を制御する。メモリー部117は、RAM(Random Access Memory)や、ROM(Read-Only Memory)などを含んでいる。メモリー部117には、液滴吐出装置1における動作の制御手順が記述されたプログラムソフト135を記憶する領域や、各種のデータを一時的に展開する領域であるデータ展開部137などが設定されている。データ展開部137に展開されるデータとしては、例えば、描画すべきパターンが示される描画データや、描画処理等のプログラムデータなどが挙げられる。駆動制御部115は、モーター制御部141と、位置検出制御部143と、吐出制御部145と、照射制御部147と、保守制御部149と、表示制御部151と、を有している。
【0038】
モーター制御部141は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ搬送モーター121の駆動と、ワーク搬送モーター123の駆動と、テーブル搬送モーター125の駆動とを、個別に制御する。位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65と、テーブル位置検出装置27とを、個別に制御する。位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、キャリッジ位置検出装置65にキャリッジ7のX方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。また、位置検出制御部143は、CPU113からの指令に基づいて、テーブル位置検出装置27にワークテーブル25のY方向における位置を検出させ、且つ検出結果をCPU113に出力する。
【0039】
吐出制御部145は、CPU113からの指令に基づいて、2個の吐出ヘッド33の駆動を個別に制御する。照射制御部147は、CPU113からの指令に基づいて、照射装置15a及び照射装置15bのそれぞれにおける光源43の発光状態を個別に制御する。保守制御部149は、CPU113からの指令に基づいて、メンテナンス装置11におけるキャッピングユニット76や、フラッシングユニット77、ワイピングユニット79などの保守ユニットの駆動を個別に制御する。表示制御部151は、CPU113からの指令に基づいて、表示装置131の駆動を制御する。
【0040】
次に、印刷物の製造方法について説明する。印刷物の製造方法は、透光性を有する記録媒体上に画像層の材料を含む第1機能液を塗布し、塗布された第1機能液を固化して、記録媒体上に画像層を形成する画像層形成工程と、画像層上に光反射性を有する白色層の材料を含む第2機能液を塗布して、画像層上に白色層を形成する白色層形成工程と、を含み、白色層形成工程では、画像層上に第2機能液を塗布してから所定時間を経過した後に塗布された第2機能液を固化させるレベリング工程を有するものである。以下、具体的に説明する。
【0041】
図6は、印刷物の製造方法を示す工程図である。
【0042】
画像層形成工程では、図6(a)に示すように、まず、透光性を有する記録媒体160上に、画像層の材料を含む第1機能液を塗布する。本実施形態では、第1機能液として画像層の材料を含む紫外線硬化性インクを塗布する。第1機能液の塗布方法としては、液滴吐出装置1を用いて、吐出ヘッド33から第1機能液を液滴55として吐出し、第1機能液を記録媒体160上に付着させる。
【0043】
次に、第1機能液を固化する。本実施形態では、塗布された紫外線硬化性インク161aに対して紫外線を照射し、紫外線硬化性インク161aを固化させる。具体的には、照射装置15を駆動させ、塗布された紫外線硬化性インク161aに対して紫外線を照射する。紫外線の照射によって、紫外線硬化性インク161aが固化され、図6(b)に示すように、画像層161が形成される。
【0044】
ところで、本実施形態では、第1機能液を吐出させながら、照射装置15から紫外線を照射させている。従って、記録媒体160に第1機能液161aが塗布された直後に、塗布された第1機能液161aに紫外線が照射される。このため、紫外線を照射された第1機能液161aは、液滴55のドット形状の一部が残存し、図6(b)に示すように、画像層161の表面に凸凹が形成される。当該凸凹は、外観視において色ムラの原因となり、画像品質が低下してしまう。そこで、色ムラを目立たなくするため、画像層161上に白色層を形成する。以下、白色層を形成する白色層形成工程について説明する。
【0045】
まず、画像層161上に光反射性を有する白色層の材料を含む第2機能液を塗布する。本実施形態では、第2機能液として白色層の材料を含む紫外線硬化性インクを塗布する。第2機能液の塗布方法としては、液滴吐出装置1を用いて、吐出ヘッド33から第2機能液を液滴55として吐出し、第2機能液としての紫外線硬化性インク165aを画像層161上に付着させる。
【0046】
次いで、画像層161上に紫外線硬化性インク165aを塗布してから所定時間を経過した後に塗布された紫外線硬化性インク165aを固化させる(レベリング工程)。本実施形態では、所定時間として0.5秒以上経過した後に紫外線硬化性インク165aを固化させる。具体的には、塗布された紫外線硬化性インク165aに対して、0.5秒以上経過した後に照射装置15から紫外線が照射されるように、キャリッジ7の走査速度を設定する。
【0047】
当該レベリング工程において、画像層161上に紫外線硬化性インク165aを塗布してから所定時間を経過させることにより、塗布された紫外線硬化性インク165aは、画像層161上において濡れ広がる。さらに、詳細には、表面が凸凹状態の画像層161において、表面凹部に紫外線硬化性インク165aが流れ込み、塗布された紫外線硬化性インク165aの表面が平坦化(レベリング)される。
【0048】
次いで、塗布された紫外線硬化性インク165aを固化して白色層を形成する。本実施形態では、塗布された紫外線硬化性インク165aに対して紫外線を照射し、紫外線硬化性インク165aを固化させる。具体的には、照射装置15を駆動させ、塗布された紫外線硬化性インク165aに対して紫外線を照射する。紫外線の照射によって、紫外線硬化性インク165aが固化され、図6(d)に示すように、白色層165が形成される。なお、レベリング工程において、塗布された紫外線硬化性インク165aの表面が平坦化されているため、これが固化して形成された白色層165の表面も平坦化される。すなわち、画像層161における層厚が厚い凸部領域に対して、白色層165は層厚が薄く形成され、画像層161における層厚が薄い凹部領域に対して、白色層165は層厚が厚く形成される。
【0049】
以上の工程を経ることにより、印刷物150が形成される。
【0050】
以上述べたように、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0051】
画像層161上に白色層の材料を含む紫外線硬化性インク165aを塗布し、塗布してから0.5秒以上間隔を空ける。これにより、塗布された紫外線硬化性インク165aが画像層161上に濡れ広がり、紫外線硬化性インク165aがレベリングされる。その後、固化させることにより、白色層165の表面を平坦化させることができる。従って、表面に凹凸を有する画像層161に対して、白色層165の膜厚を調整することができるとともに、画像層161の膜厚ムラに起因する色ムラを目立たなくすることができる。
【0052】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
【0053】
(変形例)上記実施形態では、第1及び第2機能液として紫外線硬化性インクを用いたが、これに限定されない。例えば、熱硬化型インクであってもよい。このようにしても、熱硬化型インクを塗布してから所定時間後に固化させることにより、上記同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…液滴吐出装置、7…キャリッジ、13…ヘッドユニット、15、15a,15b…照射装置、33,33a,33b…吐出ヘッド、41…紫外光、53…機能液、55…液滴、150…印刷物、160…記録媒体、161…画像層、165…白色層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する記録媒体上に画像層の材料を含む第1機能液を塗布し、塗布された前記第1機能液を固化して、前記記録媒体上に前記画像層を形成する画像層形成工程と、
前記画像層上に光反射性を有する白色層の材料を含む第2機能液を塗布して、前記画像層上に前記白色層を形成する白色層形成工程と、を含み、
前記白色層形成工程では、
前記画像層上に前記第2機能液を塗布してから所定時間を経過した後に塗布された前記第2機能液を固化させるレベリング工程を有することを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷物の製造方法において、
前記レベリング工程では、
前記所定時間として0.5秒以上経過した後に前記第2機能液を固化させることを特徴とする印刷物の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷物の製造方法において、
前記白色層形成工程では、
前記画像層上に前記第2機能液としての光硬化性インクを塗布し、塗布された前記光硬化性インクに向けて光を照射して、前記光硬化性インクを固化させることを特徴とする印刷物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43110(P2013−43110A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181286(P2011−181286)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】