説明

印刷用塗工シートの製造方法

【課題】汎用的な塗工方式において、少ない材料で被覆性に優れた印刷用塗工シートを提供する塗工液並びに被覆性に優れた印刷用塗工シートを提供する。
【解決手段】印刷用塗工シートの製造過程において、塗工液を連続式発泡装置により体積率で10%以上が気体成分となるように調製したのちに該塗工液を1〜300秒以内にシート状基材に塗工することを特徴とする印刷用塗工シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用塗工シートの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、汎用的な塗工方式において、少ない材料で被覆性に優れかつ多孔性に優れた塗工層を有する印刷用塗工シートの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷用塗工シートは、様々な分野で用いられている。シート状基材に塗工液を塗工することによって、シートは白紙光沢、白色度、不透明度などが向上し、見た目の美しさが増すと共に、インキの着肉、トナーの定着、水性インクの吸収など、印刷適性が増す。もちろん印刷適性は各印刷方式によってそれぞれに適した塗工液配合があり、それに最適化する必要がある。
【0003】
シート状基材に用いられる材料は多数あるが、紙に代用されるように繊維状の材料を抄いたり、編んだりしてシート状にした物を使用することが大多数である。これらの基材には繊維と繊維の隙間に多数の空隙が存在する。そのため、塗工液を塗布する際にかなりの量が空隙間へと入り込んでしまう。この結果、シート状基材に目的の物性を持たす為には空隙に落ち込んで失われる量を上回る塗工量を塗布する必要がある。
【0004】
加えて、印刷用塗工シートを製造する際の代表的な塗工方法である、ブレード、エアナイフ、ロール、ロッドなどの塗工方式は塗工液に大きい圧力を加えるためシート状基材への塗工液の押し込み圧力が強い。そのため、空隙に落ち込む塗工量は相当大きかった。
【0005】
当然、シート状基材を厚く覆ったほうが、印刷適性は高い物になる。被覆性を高くするためには塗工量を多くしてしまうのが最も単純であるが、塗工量を多くすると、材料の浪費、乾燥負荷の増大などのディメリットがあった。
【0006】
これらの問題を解決するための方法の1つにカーテン塗工方式の活用がある(例えば特許文献1参照)。この塗工方式はカーテン状にした塗工液をシート状基材に乗せる方法であり、前述の押し込み圧力が低い。そのため、被覆性を向上させるには優れた方法ではある。しかし塗工量の調整が塗工速度に依存する上に、粘度が低くないといけないため、塗工濃度を低くしなければならない。塗工濃度を低くすると当然品質が落ちる。加えて、同伴空気で塗工ムラが発生しやすいなどの理由により、現在の所、特殊な用途を除いて、印刷用塗工シートの製造にはほとんど利用されていない。
【0007】
その他にもスプレー塗工方式の活用という手段がある(例えば特許文献2参照)。この塗工方式も前述の塗工液のシート状基材への押し込み圧力が低い。しかしながら、スプレー塗工方式も濃度や粘度に対するキャパシティーはカーテン塗布方式以上に低く、加えてノズルの消耗などの問題から、現在の所、日本国内において実用例はなく、世界的にも使用はごく一部に限られている。
【0008】
本発明においては、被覆性を上げるために塗工液に泡を加えるという技術を用いる。従来までは印刷用塗工液における泡は操業性や紙の品質を悪くする要因として、非常に嫌われており、真空脱泡機などを駆使して、いかに泡を除くかということに労力が注がれてきた(例えば特許文献3参照)。
【0009】
印刷用塗工シート以外においては塗工液に泡を含ませるという方法は考え出されている(例えば特許文献4参照)。この方式ではポリウレタンのような特殊な材料を用い、印刷用塗工シートに応用できる技術ではない。また形成された塗工層に空隙構造を得るため、塗液中の泡をいかに残すかということに主眼がおかれており、本発明とは明らかに目的を異としている。
【0010】
例えば、感熱紙用途においては断熱層としての目的から種々の発泡塗布技術が考え出されている(例えば特許文献5参照)。これらの技術はいかにして断熱性を出すかということに主眼がおかれており、断熱効果を高くするために空気を含んだ層をいかにして残すかということを目的としている。さらに断熱層の上には感熱層や保護層を設けている。よってこれらも本発明とは明らかに異なる。
【0011】
印刷用塗工シートの主力塗工方式であるブレード、エアナイフ、ロール、ロッドなどの塗工方式において、現行の技術では被覆性を良くするために塗工量を増やすしかなく、シート状基材の空隙を塞ぐためだけの目的で貴重な材料を消費するしかなかった。
【特許文献1】実開平5−22065号公報
【特許文献2】特開平11−333341号公報
【特許文献3】特開平4−361696号公報
【特許文献4】特開平8−282137号公報
【特許文献5】特開平5−32052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、汎用的な塗工方式において、少ない材料で被覆性に優れた塗工シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、以下のような印刷用塗工シートの製造方法を発明するに至った。
【0014】
すなわち、印刷用塗工シートの製造過程において、塗工液を連続式発泡装置により体積率で10%以上が気体成分となるように調製したのち、該塗工液を1〜300秒以内にシート状基材に塗工することを特徴とする印刷用塗工シートの製造方法である。
【0015】
本発明において、塗工液を連続式発泡装置により体積率で10%以上が気体成分となるように調製したのち該塗工液を5〜30秒以内にシート状基材に塗工することが好ましい。
【0016】
また、本発明において塗工液が平均径1000μm〜10μmの泡を含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明はシート状基材の片面または両面に上記の塗工液を塗布する方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の印刷用塗工シートの製造方法は、汎用的な塗工方式において、少ない材料で被覆性に優れた印刷用塗工シートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の印刷用塗工シートの製造方法について、詳細に説明する。
【0020】
本発明者は、印刷用塗工シートにおける塗工液について鋭意研究を重ねた結果、泡を含ませた塗工液を用い、その製造方法を工夫することで、材料を無駄に浪費することなく被覆性に優れた印刷用塗工シートが得られることを見いだした。
【0021】
印刷用塗工シートに使用されるシート状基材には紙に代表されるように親水的な繊維状の化合物が用いられることが多い。そのためシート状基材は親水的でかつ水分を吸収するための空隙や毛細管を多数持ち、吸水性が高い。そのため、塗工液がシート状基材に接した瞬間から塗工液の脱水がはじまる。脱水はシート方向に向かって起こる。加えて、印刷用塗工シートの製造方法の主力である、ブレード、エアナイフ、ロール、ロッドなどの塗工方式では塗工液に高い圧力が加わり、シート状基材への押し込み圧力となる。これらの脱水、圧力による効果によって塗工液はシート状基材への空隙に入り込む。原紙の空隙のほとんどが塗工液の固体成分によって塞がれるか、塗工液の脱水によって分散成分の凝集すなわち不動化現象が起こるまで塗工液のシート状基材への落ち込みは継続する。こういった機構であるので、塗工液の元々の濃度を上げることや、塗工液の保水性を高くすること、さらにはシート状基材の空隙を減らしたりすることで、ある程度落ち込みを防ぐことができる。しかしこれらの手段を駆使してもシート状基材の表面がすべて塗工層で覆われるようになるまでには、代表的な炭酸カルシウムなどの無機顔料を主体とする塗工液で、片面6g/m2以上の塗工量が必要であった。
【0022】
塗工液の不動化現象が起こるまでの間、塗工液がシート状基材の空隙に入り込むことを防ぐことができれば被覆性を格段に上げることができる。そこで、本発明者は塗工液に泡を含ませることを検討した。
【0023】
塗工層に体積率10%以上の気体を加えると、気体は気泡となって塗工液中に存在することとなる。塗布する際は圧力によって気体がシート状基材方向に押しやられる。このためシート状基材の空隙の圧力が上がり、塗工液の空隙への進入を防ぐ。塗工液とシート状基材の接触点では脱水現象が起こるが、気体によって高まった圧力のため、脱水につられて塗工液が空隙に落ち込むことはやはり防止される。この間に塗工液の不動化が起こり、結局、少ない塗工量で高い被覆性が実現されることになる。
【0024】
ここで、塗工液に含ませる気体が体積率で10%未満であると原紙の空隙の圧力を高めることが出来ず、十分な落ち込み防止効果が得られないので好ましくない。また、90%を越えてしまうと十分な塗工量が得られないので好ましくない。
【0025】
ここで言う塗工液中の気体の体積率は、一定の体積における空気を入れる前後の重さをそれぞれ測定し、それらの値から簡単に計算できる。
【0026】
従来の技術で述べたとおり、泡は塗工面を乱す物として懸念されてきたため、これを除くことに重点が置かれてきた。本発明ではそれをあえて入れるのであり、塗工面の乱れが懸念される。しかし、実際には泡を本発明のレベルで塗工液に含ませたとしても、汎用方式であるブレード、エアナイフ、ロール、ロッドなどの塗工方式では、塗工量が片面20g/m2以下であれば塗工面は実使用に十分耐えられる程度に美しく保たれる。そのため塗工量は20g/m2以下であることが好ましい。しかし、塗工液内の泡が大きい場合は塗工層に泡の形が残ることがある。この場合は泡の形が発生した部分を取り除く必要が生じる。そこで泡の平均径を1000μm以下とするとよい。1000μmという大きさは目視で泡を判断できるレベルではあるが、これ以下の泡の径だと、塗布する際に塗工液にかかる圧力によって泡は塗工液からシート状基材側にほとんどが追い出されてしまうので塗工層に形がほとんど生じず、好ましい。ただし泡の平均粒子径が10μmより小さいと、泡が塗工液内で必要以上に安定化してしまい、圧力によって追い出されにくくなる。結果、塗工時に塗工液から追い出されずに残った泡が脱水過程で成長し、塗工層をきれいにする効果がきちんと発現されない。
【0027】
さらに、塗工液がこれらの径の泡を含んでいる場合、塗工液とシート状基材の接触点が増え、そのため脱水、不動化が速くなり、塗工液の落ち込み防止効果は高いものとなる。というのは、塗工時にシート状基材の端と泡の端の2点が接触点となるため、泡の径が小さいほど泡の数が多くなり接触面積が大きくなるからである。
【0028】
塗工液に泡を含ませる装置としては、愛工舎(株)製連続高圧発泡ミキサー、MONDOMIX社製続高圧発泡機などがある。
【0029】
しかし、塗工の過程において、該塗工液を塗工するタイミングを誤ってしまうと上に示した効果が発揮できなくなってしまう。
【0030】
形成した泡は単に静置しておくだけならば数時間経っても泡同士の成長が起こりにくいいことはあるが、実際は塗工機の配管の中を移動しているので、泡同士または泡と配管との接触があるために泡の成長が急速に進む。よって、発泡直後に平均粒子径10〜1000μmに形成された泡は、塗工までに300秒より経ってしまうと泡同士の成長が大きく進むため、平均粒子径は1000μmを越えてしまう。一方、発泡後1秒未満で塗工されても良好な泡が得られず十分な被覆性が得られない。なぜなら、連続高圧発泡において安定に発泡液を吐出するため攪拌部に一定圧力がかかっており、この圧力下から突然大気圧にさらされると泡が壊れてしまうからである。つまり、徐々に大気圧に戻されることが良い泡を得るための条件でもある。このように二つの条件を揃えることが肝要である。
【0031】
ここで言う1〜300秒後というのは、連続発泡機の吐出口から液が出てきた瞬間を起点として計測した時間である。
【0032】
塗工液に気体を含ませた後5〜30秒以内で塗工すると、上記の二つの条件をバランスよく満たし、材料を無駄に浪費することなく被覆性に優れた印刷用塗工シートが得られると言える。
【0033】
ここで、塗工液に含まれている泡の径の測定方法を述べる。塗工液の溶媒成分と親和性のない均一なフィルム状の基材に塗工液を乗せ凍結乾燥する。これを電子顕微鏡で観察し、ランダムに泡の径を100個分測定し、その平均値を算出する。
【0034】
平均径は80μm以下となると、万一、塗工層に穴が生じたとしても人間の目が泡の跡を穴として認識できなくなるので、欠点問題が無くなり好ましい。
【0035】
本発明における印刷用塗工シートは、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷、孔版印刷、湿式および乾式電子写真印刷、としての使用に留まらず、熱転写用シート、インクジェット用シートなどの他の印刷方式にも使用することもできる。
【0036】
本発明に用いられるシート状基材の素材としては、木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたものが使用される。
【0037】
各繊維をシート状にする製法としては、一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維などの各工程から一つ以上が適宜選ばれる。
【0038】
また、これらの繊維には、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、ホワイトカーボン、ポリスチレン系樹脂、尿素ホルマリン樹脂、その他の有機填料などの各種填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に配合する。
【0039】
その他の基材としては、上質紙、中質紙、色上質、書籍用紙、キャスト用紙、微塗工紙、軽量コート紙、インディア紙、ノーコートアイボリー、ノーコートカード、特板、トレーシングペーパー、タイプ紙、PPC用紙、NIP用紙、連続伝票用紙、フォーム用紙、複写紙、ノーカーボン紙、熱転写用紙、合成紙などの紙や板紙、不織布、または各種樹脂繊維、プラスチック繊維、金属繊維をシート状に成形したものも含まれる。但し、本発明は水分を吸収する基材に対して効果を発揮する物であるので、フィルム、ビニールシートなどの全く吸水しない基材は含まない。
【0040】
塗工する前の基材は、必要とする密度、平滑度、透気度を得るために各種表面処理やカレンダー処理を施す場合がある。
【0041】
本発明において、塗工液に用いることのできる顔料は、特に限定されるものではなく、例えば、各種カオリン、タルク、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)、炭酸カルシウムと他の親水性有機化合物との複合合成顔料、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリン、プラスチック顔料などが挙げられる。
【0042】
塗工層に用いられるバインダーとしては、天然植物から精製した澱紛、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱紛、エーテル化澱紛、リン酸エステル化澱粉、酵素変性澱紛やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類およびそのオリゴマーさらにはその変性体が挙げられる。
【0043】
さらに、ガゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲン、などの天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子やオリゴマーが挙げられる。
【0044】
加えてスチレン−ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などがあげられる。これらは一種以上で使用することができる。この他、公知の天然、合成有機化合物を使用することは特に限定されない。
【0045】
また、塗工液に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ポリアクリル酸ソーダなどの水溶性高分子、ポリアクリル酸塩、スチレンマレイン酸無水共重合体などの合成重合体、珪酸塩などの無機重合体などが挙げられる。
【0046】
また、必要に応じて、分散剤、耐水化剤、着色剤、蛍光剤、潤滑剤、その他界面活性剤などの通常使用されている各種助剤が好適に用いられる。
【0047】
本発明において、塗工層を塗工する方法は、サイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーター、エアナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーターなどの塗工時に塗工液に押し込み圧力を加える各種方式が適宜使用できる。
【0048】
さらに、一連の操業で、塗工、乾燥された塗工シートは要求される、密度、平滑度、透気度、外観を得るために、必要に応じてカレンダー処理などの各種仕上げ処理が施される。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0050】
(実施例1)〜(実施例12)、(比較例1)〜(比較例5)
下記の内容に従って、実施例13〜24および比較例6〜10の印刷用塗工シートを作製するための塗工用原紙及び塗工液を作製した。
【0051】
<シート状基材>
LBKP(濾水度400mlcsf) 70部
NBKP(濾水度480mlcsf) 30部
軽質炭酸カルシウム(原紙中灰分で表示) 8部
カチオン化澱粉 1.0部
カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.03部
赤色染料 0.01部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し94.3g/m2の坪量で原紙を抄造した。
【0052】
この原紙に対して、サイズプレスにより両面0.80g/m2の酸化澱粉を付着させ、塗工用原紙を得た。
【0053】
<塗工液>
微粒重質炭酸カルシウム(2μm以下が99%) 50部
高白1級カオリン 50部
スチレン−ブタジエン系ラテックスバインダ
(平均粒子径100nm、ゲル含有量40%、Tg5℃) 10部
リン酸エステル化澱粉 5部
ステアリン酸カルシウム 0.6部
カルボキシメチルセルロース系増粘剤 0.1部
水酸化ナトリウムにてpH9.6に調製
【0054】
上記の塗工液を濃度62%で調整し、これに愛工舎製連続発泡ミキサーを用いて泡を混入させた。その際、それぞれのサンプルに応じて気体の送付量を変更した。このとき、連続発泡機の攪拌回転数は1000rpm、攪拌部圧力を1.5MPaと一定にした。
【0055】
上記の泡を含んだ塗工液に関して、発泡機から吐出されて配管を通り基材に塗布されるまでの時間を変えたときの気体の体積率及び泡の平均粒子径を調べ、実施例1〜12及び比較例1〜5として表1に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
(実施例13)〜(実施例24)、(比較例6)〜(比較例10)
上記の塗工液を、操業速度20m/minでブレードコーターを用いて片面6g/m2、両面で12g/m2の塗工量で塗工、乾燥した。塗工後、スーパーカレンダー処理を表裏各4ニップずつ、線圧200kN/cm、温度60℃で施して、印刷用塗工シートを得た。
【0058】
上記の方法により得られた印刷用塗工シートについて、下記の測定方法により被覆性、面質を評価しその結果を表2に示した。
【0059】
1.被覆性
得られた印刷用塗工シートをA4サイズに切り、脱イオン水/エタノール/塩化アンモニウム=50/45/5(質量比)の溶液に1時間浸した。その後、溶液から取り出し、濾紙で挟み余分な溶液を拭き取った。更に150℃のオーブンに3時間入れた後、取り出した。これにより有機物でできているシート状基材部分が茶色く焦げ、塗工層部分は白いまま残った。サンプルが白く見えるほどシート状基材部分が良く被覆されていることになる。この具合を目視で判断し、以下の基準に従い、3段階で評価した。
○: 茶色い部分はうっすらと見える程度で、ほとんどが白い部分で被覆されている。
△: 茶色い部分が見えるが、白く被覆されている部分の方が多い。
×: 茶色い部分が目立ち、白く被覆されている部分の方が少ない。
【0060】
2.面質
得られた印刷用塗工シートの白紙サンプルをA4に切り、これに泡の跡があるかどうかを目視で数え、以下の基準に従い4段階で評価した。評価はn=10で行い泡の数は平均値とした。
◎: 直径1mm以上の泡の跡が0.1個未満。
○: 直径1mm以上の泡の跡が0.1個以上0.3個未満。
△: 直径1mm以上の泡の跡が0.3個以上〜0.5個未満。
×: 直径1mm以上の泡の跡が0.5個以上。
【0061】
【表2】

【0062】
<評価結果>
表1より、泡の平均粒子径は泡を含ませてから塗工するまでの時間に大きく依存することがわかる。本発明で規定する時間内であると、粒子径は10〜1000μmの範囲に入る。しかし、比較例のように規定より早いまたは遅い時間で塗工すると泡の平均粒子径は1000μmを超えてしまう。結果として、被覆性と面質は本発明で規定する時間内で良好になることが表2からわかる。特に、5〜30秒の間で面質と被覆性が非常に良好になると言える。
【産業上の利用可能性】
【0063】
印刷領域における印刷用塗工シートの製造が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用塗工シートの製造過程において、塗工液を連続式発泡装置により体積率で10%以上が気体成分となるように調製して、該塗工液を1〜300秒以内にシート状基材に塗工することを特徴とする印刷用塗工シートの製造方法。
【請求項2】
該塗工液を5〜30秒以内にシート状基材に塗工することを特徴とする請求項1記載の印刷用塗工シートの製造方法。
【請求項3】
平均径1000μm〜10μmの泡を塗工液に含むことを特徴とする請求項1または請求項2記載の印刷用塗工シートの製造方法。

【公開番号】特開2006−37292(P2006−37292A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221133(P2004−221133)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】