説明

印刷用塗工紙およびその製造方法

【課題】本発明の目的は、印刷ムラがなく、また操業性も良好な、凹凸感のある風合いを持つ印刷用塗工紙を提供することにある。
【解決手段】本発明は、基紙上に少なくとも、下塗り塗工層と上塗り塗工層を設ける印刷用塗工紙において、顔料として平均粒子径4μm以上30μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料固形分100質量部中40質量部以上、且つ、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料を全顔料固形分100質量部中40質量部以上含む下塗り塗工層を設け、該下塗り塗工層の上に、顔料が平均粒子径1.5μm以下の粒子のみで構成される上塗り塗工層を設けることを特徴とする印刷用塗工紙およびその製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸感のある風合いを持つ印刷用塗工紙に関するものであり、さらに詳しくは、下塗り塗工層に用いる顔料の種類と、上塗り塗工層を設ける方法を制御することにより、従来にない凹凸感の風合いと印刷面感を両立することのできる印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷用塗工紙は、人の目を引き付けることが商品としての重要な要素となる。この人の目を引き付ける因子として、印刷用塗工紙の色や白紙光沢などの白紙物性、印刷光沢や印刷ムラなどの印刷適性、紙の風合いなどが挙げられる。ここで紙の風合いとは、紙表面の微妙な凹凸やパルプ繊維の与える自然な感覚をいう。一般に、この風合いと印刷適性は相反する物性であり、紙の風合いのある印刷用紙では、表面の微妙な凹凸により用紙表面の場所毎のインキの付着量分布が変化し、ムラの多い印刷物になる。ただし様々な工夫をこらすことによって、表面の凹凸に起因する風合いを有しながら、高い印刷適性を有する印刷用紙が開発されてきている。
【0003】
工夫としては、粗さを規定した基紙に塗工層を設ける方法(例えば、特許文献1参照)、その塗工層に有機顔料を活用する方法(例えば、特許文献2参照)などが挙げられる。
【0004】
しかしながら、基紙の凹凸に依存し凹凸感のある風合いを発現させた印刷用塗工紙は、一般に基紙上の塗工量が少ないほど、凹凸感の風合いが大きくなるが、それと同時に、基紙上の塗工量が少ないと、基紙の凹凸の不均一性に起因した塗工ムラ、あるいは塗工層中の内部構造のムラが生じ、これに伴い印刷ムラが生じる。
【0005】
また、塗工層中に有機顔料を活用して塗工層構造起因の凹凸に依存し凹凸感のある風合いを発現させた印刷用塗工紙は、有機顔料の配合量が多いほど、凹凸感の風合いが大きくなるが、それと同時に、有機顔料の配合量が多いと、操業中の各所のロール汚れや、紙のブロッキングなどのトラブルが頻繁に起こるといった問題がある。
【0006】
ガラス転移温度を制御した有機顔料を使用し、凹凸感のある風合いと操業性の両立を図った方法もある(例えば、特許文献3参照)が、操業性の課題に対して十分に効果的であるとはいえず、ロールの汚れは完全にはなくならないというのが現状である。また操業時、紙をロール状に巻き取る際、巻き癖のカールが生じやすいというトラブルも発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−12986号公報
【特許文献2】特開平7−166492号公報
【特許文献3】特開2008−208474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、印刷ムラがなく、また操業性も良好な、凹凸感のある風合いを持つ印刷用塗工紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究した結果、以下のような印刷用塗工紙およびその製造方法を発明するに至った。すなわち、基紙上に少なくとも下塗り塗工層と上塗り塗工層を設ける印刷用塗工紙において、顔料として平均粒子径4μm以上30μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料固形分100質量部中40質量部以上、且つ、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料を全顔料固形分100質量部中40質量部以上含む下塗り塗工層を設け、該下塗り塗工層の上に、顔料が平均粒子径1.5μm以下の粒子のみで構成される上塗り塗工層を設けることを特徴とする印刷用塗工紙である。
【0010】
さらには、該基紙が、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)6.0μm以上であることが好ましい。
【0011】
下塗り塗工層として基紙上に直接、片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設けると好ましい。上塗り塗工層を、片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設けると好ましい。
【0012】
本発明の印刷用塗工紙の製造方法では、該上塗り塗工層がエアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーターのいずれかによって設けられると好ましい。また、下塗り塗工層として基紙上に直接設け、該下塗り塗工層を乾燥させた後、該下塗り塗工層の上に、該上塗り塗工層を設けるとさらに好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の印刷用塗工紙は、印刷ムラがなく、また操業性も良好な、凹凸感のある風合いを持つという特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の印刷用塗工紙について詳細に説明する。本発明の印刷用塗工紙は基紙上に下塗り塗工層を設けた、その上に上塗り塗工層を設けたものである。ここでいう上塗り塗工層とは、本発明の印刷用塗工紙の最表層にあたる層のことであり、下塗り塗工層とは、基紙と上塗り塗工層の中間に位置し、基紙の上に直接設けられたものである。塗工層を複数層設ける場合には、下塗り塗工層と上塗り塗工層の間に中間層を設けても構わない。中間層には、本願発明の操業性、風合いに影響しない限り、印刷用塗工紙用途で使用される顔料、バインダー等の通常薬品を使用することができる。
【0015】
<下塗り塗工層>
本発明の印刷用塗工紙は、下塗り塗工層の顔料として平均粒子径4μm以上30μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料固形分100質量部中40質量部以上、且つ、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料を全顔料固形分100質量部中40質量部以上含むことを特徴とする。本発明における平均粒子径の値は、粒子の凝集が最もほぐれるような最適の条件で水分散スラリーにしたものをMICROTRAC 3000II(商品名、日機装社製、レーザー式粒度分布測定計)を用いて測定したものである。ただし、カオリンクレーの場合はデラミネーテッドカオリンクレーであると好ましい。
【0016】
平均粒子径が4μm以上の重質炭酸カルシウムを含むことで、下塗り塗工層表面に凹凸感のある風合いが生じる。平均粒子径4μm未満の重質炭酸カルシウムでは凹凸感が不十分である。平均粒子径が30μmより大きい場合で、凹凸感は極めて良好になるが、しかし下塗り塗工層を設けるための塗液にした際、顔料の沈降が著しく速く、また塗液の保水性にも劣るため、基紙上に塗工層を均一に設けることが難しくなるという欠点が生じてしまう。
【0017】
本発明の下塗り塗工層には、重質炭酸カルシウムに加え、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料(ただし、カオリンクレーの場合はデラミネーテッドカオリンクレーである)を全顔料固形分100質量部中40質量部以上、併用することを特徴とする。ここでいうアスペクト比は、電子顕微鏡(日本電子製JSM−6390LA)で10000倍に拡大して粒子を観察し、任意の粒子10個の実測から求めたものである。下塗り塗工層の塗工量は少ない方がより凹凸感のある風合いが発現するが、この場合、基紙の被覆が不十分で、印刷ムラが発生しやすいという短所を伴う。前記の平板状無機顔料は、基紙の被覆性に優れ、印刷ムラが生じ難いため、凹凸感のある風合いと印刷適性とを両立する上で欠くことのできないものである。また下塗り塗工層を設けるための塗液にした際、塗液の保水性が向上する。さらに、操業時、紙をロール状に巻き取る際、巻き癖のカールを抑制する効果が確認された。アスペクト比が10より小さい場合、塗液の保水性向上効果も、巻き癖のカール抑制効果も不十分である。アスペクト比が120より大きい場合、下塗り塗工層を設けるための塗液にした際、塗液の粘度が上昇し過ぎて、基紙上に塗工層を均一に設けることが難しくなるという欠点が生じる。また平均粒子径が3μm未満の場合、併用する重質炭酸カルシウムの粒子間の空隙を埋めるような働きをし、凹凸感が小さくなる。平均粒子径が20μmより大きい場合、下塗り塗工層を設けるための塗液にした際、顔料の沈降が速く、また塗液の粘度が高くなりすぎるため、基紙上に塗工層を均一に設けることが難しくなるという欠点が生じる。
【0018】
アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料がカオリンクレーの場合はデラミネーテッドカオリンクレーであることを特徴とする。六角板状が積層した通常のカオリンクレーを単純に剥がすことにより(デラミネーション)得られるデラミネーテッドカオリンクレーは、通常のものと比較して、厚みは同じでも粒子径は大きいことが特徴である。デラミネーテッドカオリンクレーを使用することにより、他のカオリンクレーの場合よりも遙かに少ない塗工量で、良好な基紙被覆性を示す。また通常のカオリンだと小さすぎて、重質炭酸カルシウム粒子の形成した凹凸の隙間に入り込み凹凸感を軽減してしまうが、デラミネーテッドカオリンクレーの場合はそれがなく、その結果、凹凸感のある風合いと印刷適性とを両立することが可能になる。
【0019】
本発明の下塗り塗工層には、平均粒子径4μm以上30μm以下の重質炭酸カルシウムと、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料とを併用することを特徴とする。重質炭酸カルシウムだけでは、下塗り塗工層を設けるための塗液にした際、塗液の保水性が極めて悪く、基紙の吸水性のムラを反映した不均一な塗工層を形成し、印刷ムラが生じることに繋がる。加えて、重質炭酸カルシウムの沈降速度があまりに速すぎて、例えば塗工層を設けるための装置内の配管中で詰まりを生じさせたり、後計量型塗工方式のコーターの場合、塗液に剪断力がかかったところで、炭酸カルシウムが凝集した固形物が大量に発生するなどのトラブルが生じる。また平板状無機顔料だけでは、最終的に得られた印刷用塗工紙に、カレンダーなどの平滑化処理を施した場合、平滑になり過ぎ、凹凸感のある風合いが損なわれる。
【0020】
本発明の下塗り塗工層に用いられる顔料としては、平均粒子径4μm以上30μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料固形分100質量部中40質量部以上、且つ、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料を全顔料固形分100質量部中40質量部以上含む限りにおいては、他のものを併用することは何ら制限されるものではない。例えば前記以外の重質炭酸カルシウム、前記以外の平板状無機顔料(カオリンクレー、マイカ、タルク、板状硫酸バリウム、板状水酸化マグネシウムなど)を併用することもできるし、さらにこれら以外の顔料、各種軽質炭酸カルシウム、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、天然シリカ、乾式合成シリカ、湿式合成シリカ、有機顔料、またはこれらをカチオン変性したもの、あるいはこれら二種以上の複合体などを併用しても構わない。
【0021】
本発明の下塗り塗工層は、基紙上に直接、片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設けることを特徴とする。凹凸感のある風合いと印刷適性とを両立するには、この範囲で下塗り塗工層を設ける必要がある。下塗り塗工層の塗工量は少ない方がより凹凸感のある風合いが発現するが、片面当たり固形分質量2.0g/m未満の場合、基紙の被覆性が不十分で印刷ムラが生じる。片面当たり固形分質量が10.0g/mを超える場合、凹凸感のある風合いが損なわれる。なお、下塗り塗工層を設ける方式に関しては何ら制限されるものではない。例えば、ブレードコーター、ロッドコーター、カーテンコーター、エアナイフコーター、スプレーコーター、またはサイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーターなどが挙げられる。
【0022】
本発明の下塗り塗工層を設けるための塗液は、前記の顔料の他にバインダー、あるいは必要に応じて増粘剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、耐水化剤、着色剤等の通常使用されている各種助剤を含有することができる。バインダーとしては、スチレン−ブタジエン系ラテックス、アクリル系、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル等の各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミド、ユリアまたはメラミン等のホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン、エピクロルヒドリン等の水溶性合成物が挙げられる。さらには、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の天然多糖類およびそのオリゴマー、さらにはその変性体が挙げられる。また、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲン等の天然タンパク質およびその変性体、ポリ乳酸、ペプチド等の合成高分子やオリゴマーが挙げられる。これらは単独または組み合わせて使用することができる。また、バインダーはカチオン変性を施して使用することができる。
【0023】
バインダー含有量が少ない方が、凹凸感のある風合いに優れるが、塗液の顔料の沈降性は若干速くなる。逆にバインダー含有量が多いと、塗液の顔料の沈降は全く問題ないが、少ない場合と比較すると若干凹凸感のある風合いには劣る。このような特性はあるが、前記の顔料配合、塗工量の条件の範囲内であれば、バインダー含有量に関わらず、印刷ムラがなく、また操業性も良好な、凹凸感のある風合いを持つ印刷用塗工紙が提供されるための下塗り塗工層が得られる。
【0024】
<上塗り塗工層>
本発明の印刷用塗工紙は、前記下塗り塗工層の上に、上塗り層を片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設けることを特徴とする。下塗り塗工層と同様に、上塗り塗工層の塗工量も少ない方がより凹凸感のある風合いが発現するが、片面当たり固形分質量2.0g/m未満の場合、印刷適性が不十分で印刷ムラが生じる。片面当たり固形分質量が10.0g/mを超える場合、凹凸感のある風合いが損なわれる。
【0025】
本発明の上塗り塗工層は1層であることを特徴とする。下塗り塗工層の上に2層以上の塗工層を設けてしまうと、凹凸感のある風合いが損なわれてしまう。また下塗り塗工層だけで上塗り層を設けない場合、下塗り塗工層に存在する粒子径の大きい顔料、特に重質炭酸カルシウムが直接露出しているため、印刷時にインキが乗らない白抜けのトラブルが発生することがあり、また、下塗り塗工層を構成する顔料は、比較的粒度分布が広いため、上塗り層を1層設けることで、凹凸感のある風合いを維持したまま、滑らかな印刷面が提供される。
【0026】
本発明の上塗り塗工層に用いられる顔料は、平均粒子径1.5μm以下の粒子のみで構成されることを特徴とする。本発明は、下塗り塗工層面の制御で凹凸感のある風合いを形成し、上塗り塗工層面で、凹凸感のある風合いを損なうことなく、印刷適性を付与するものである。上塗り塗工層が平均粒子径1.5μmより大きい場合、下塗り塗工層面よりも不均一な凹凸のある面が形成されることになり、印刷ムラが生じてしまう。
【0027】
本発明の上塗り塗工層を設けるための塗液は、前記の顔料の他にバインダー、あるいは必要に応じて、増粘剤、分散剤、消泡剤、界面活性剤、pH調整剤、耐水化剤、着色剤等の通常使用されている各種助剤を含有することができる。使用例として挙げられるバインダーは、本発明における下塗り塗工層を設けるための塗液に用いる例として挙げた前記のものと同様である。
【0028】
本発明は、下塗り塗工層を乾燥させた後、下塗り塗工層の上に、上塗り塗工層を設けることを特徴とする。下塗り塗工層表面に形成される凹凸感のある風合いは、乾燥工程を経ることで発現する。下塗り塗工層を設け、乾燥工程を経ずにすぐに上塗り塗工層を設ける、いわゆるWetOnWet塗工方式では、十分な凹凸感のある風合いが発現しないことがある。下塗り塗工層の乾燥の度合いに関しては特に制限されるものではない。
【0029】
本発明の上塗り塗工層は、エアナイフコーター、カーテンコーター(ダイレクトファウンテンコーター)、スプレーコーターのいずれかによって設けられることを特徴とする。エアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーターは他の方式よりも輪郭塗工の効果が大きく、これらの塗工方式を用いることで、下塗り塗工層表面に形成された凹凸感のある風合いを損なうことなく、良好な印刷適性を付与することが可能になる。本発明の上塗り塗工層を設けるための塗工方式として対象から外れるものとしては、例えば、ブレードコーター、ロッドコーター、またはサイズプレス、ゲートロール、シムサイザーなどの各種フィルムトランスファーコーターなどが挙げられる。
【0030】
<基紙>
本発明に用いられる基紙としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種木材パルプ、綿、麻、竹、サトウキビ、トウモロコシ、ケナフなどの植物繊維、羊毛、絹などの動物繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセルなどのセルロース再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリウレタン系繊維などの化学繊維、ガラス繊維、金属繊維、炭素繊維などの無機繊維をシート状にしたものが使用される。ただし表面に顔料を主体とする塗工層を設けたものは含まれない。また、これらの繊維には、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、アルミナ、有機顔料等の各種填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、紙力増強剤等の各種配合剤を各工程、各素材に合わせて好適に含有することができる。
【0031】
基紙を製造する際、より凹凸感の風合いを発現させるために、柔軟化剤を好適に含有させることができる。ここでいう柔軟化剤とは、疎水基と親水基とを持つ化合物であって、油脂系非イオン界面活性剤、糖アルコール系非イオン界面活性剤、糖系非イオン界面活性剤、多価アルコール型非イオン界面活性剤、高級アルコール、高級アルコールのエチレンおよび/またはプロピレンオキサイド付加物、高級脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物、脂肪酸ポリアミドアミンなどを使用することができる。
【0032】
基紙の製法としては、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、コンビネーション抄紙機、丸網抄紙機、ヤンキー抄紙機など製紙業界で公知の抄紙機を用いた一般的な抄紙工程、湿式法、乾式法、ケミカルボンド、サーマルボンド、スパンボンド、スパンレース、ウォータージェット、メルトブロー、ニードルパンチ、ステッチブロー、フラッシュ紡糸、トウ開維等の各工程から一つ以上が適宜選ばれる。酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0033】
本発明における基紙には、表面サイズプレスを施しても構わない。表面サイズプレス液の成分としては、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、りん酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、アクリル、スチレン・アクリル、スチレン・マレイン酸、スチレン・オレフィン、アクリル・酢ビ等のアクリル系表面サイズ剤、オレフィン・マレイン酸、ジイソブチレン・マレイン酸等のオレフィン系表面サイズ剤等が挙げられる。
【0034】
本発明における基紙の表面粗さに関しては何ら制限されるものではなく、必要に応じて各種表面処理やカレンダー処理を施しても構わない。ただし、基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が6.0μm以上であることがより好ましい。基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が6.0μm以上であることで、より凹凸感のある風合いに優れる印刷用塗工紙が提供される。本発明においては、下塗り塗工層によって凹凸感のある風合いを発現させ、上塗り塗工層によって印刷適性を付与するという設計になっているが、基紙のJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)が6.0μm以上であることで、印刷用塗工紙全体に巨視的なうねりの要素が加わり、さらに凹凸感の風合いが増すことになる。
【0035】
<仕上げ>
本発明における印刷用塗工紙は、上塗り塗工層を設けた後に、カレンダー仕上げ処理を施さなくても十分な印刷適性を持つ。カレンダー仕上げ処理を施さない方が、より凹凸感のある風合いが得られるが、カレンダー仕上げ処理を施した方が、印刷適性や、紙をロール状に巻き取る際の巻き癖のカールの抑制効果は高くなる。勿論、本発明の範囲内であれば、カレンダー仕上げの有無に依らず、凹凸感のある風合いも、印刷適性も、紙をロール状に巻き取る際の巻き癖のカールの抑制効果も、いずれも十分に発現する。カレンダー仕上げ処理を施す場合、装置としては硬質ロール同士、弾性ロール同士、硬質ロールと弾性ロールの対の組み合わせからなるものが好適に使用され、マシンカレンダー、ソフトニップカレンダー、スーパーカレンダー、多段カレンダー、マルチニップカレンダー等と呼ばれており、意図的に加熱をする場合もある。加熱する際のロールの温度は40℃程の中低温から250℃程の高温に達する場合もある。また、ベルトとロールの組み合わせからなる装置も使用することができ、シューカレンダー、メタルベルトカレンダー等と呼ばれており、この場合も同様に加熱を伴う場合がある。
【実施例】
【0036】
以下に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例において示す「部」および「%」は、特に明示しない限り、質量部および質量%を示す。
【0037】
各実施例、比較例における印刷用塗工紙の物性評価は以下の方法で行った。
<評価方法>
1)凹凸感のある風合い
凹凸感のある風合いは目視で判断し、◎、○、△、×で評価した。ただし、本発明においては、◎と○を発明の対象とした。
◎:印刷用塗工紙表面に凹凸感が大きく、且つ表面に均一に凹凸が存在している
○:印刷用塗工紙表面の凹凸に多少の不均一性はあるが、凹凸感は大きい。
△:印刷用塗工紙表面の凹凸感が小さくて不十分である。
×:印刷用塗工紙表面に凹凸感の風合いをほとんど感じることができない。
【0038】
2)印刷適性
印刷適性は、枚葉オフセット印刷機(三菱重工業社製DAIYA3H)を用い、得られた印刷物の印刷面を目視判定し、印刷面感を1〜5点の範囲で評価した。ただし、本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:印刷用塗工紙表面に印刷されなかった部分(白抜け)がなく、印刷ムラもない。
4点:印刷用塗工紙表面に若干の印刷ムラはあるが、白抜けは見られない。
3点:印刷用塗工紙表面に印刷ムラが見られ、白抜けも確認できる。
2点:印刷用塗工紙表面に白抜けが多く、印刷された部分もムラになっている。
1点:印刷用塗工紙表面に印刷されなかった部分が非常に多い。
【0039】
3)操業性
操業性は実際に各実施例の通りに印刷用塗工紙を製造し、目視で判断し、1〜5点の範囲で評価した。ただし、本発明においては、4点と5点を発明の対象とした。
5点:各所のロール汚れ、紙のブロッキング、塗液の配管詰まり、凝集した固形物の発生等、操業上のトラブルが全く発生しない。
4点:上記に挙げるような操業上のトラブルに関して、一項目のみ若干劣る点があるが、製品品質に関して異状はなく、製造後の簡易的な清掃作業等で問題を解消できる。
3点:上記に挙げるような操業上のトラブルに関して、複数の項目で若干劣る点があり、製品品質に関して異状はなく、製造後の簡易的な清掃作業等で問題を解消できる。
2点:上記に挙げるような操業上のトラブルに関して、製品品質に関しては異状をもたらすものが一項目でも存在する。
1点:上記に挙げるような操業上のトラブルに関して、製品品質に関しては異状をもたらすものが一項目でも存在し、且つ製造後のトラブルの解消も大きな負担になる。
【0040】
<基紙A>
以下のような配合で調製し、坪量89.0g/mの塗工用基紙を抄造した。ここでの質量部は、全パルプ固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。抄造後、基紙にJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)6.12μmになるようにマシンカレンダー処理し、これを基紙Aとした。
<基紙配合>
ECF漂白されたLBKP(濾水度440mlcsf) 85質量部
ECF漂白されたNBKP(濾水度490mlcsf) 15質量部
<内添薬品>
軽質炭酸カルシウム(原紙中灰分で表示) 6.0質量部
市販カチオン化澱粉 1.0質量部
市販カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.030質量部
市販柔軟剤(多価アルコールと脂肪酸のエステル化合物) 0.3質量部
【0041】
<基紙B>
基紙Aと同様の方法で抄造し、基紙にJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)7.29μmになるようにマシンカレンダー処理し、これを基紙Bとした。
【0042】
<基紙C>
基紙Aと同様の方法で抄造し、基紙にJIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)5.61μmになるようにマシンカレンダー処理し、これを基紙Cとした。
【0043】
(実施例1)
基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液は以下のようにして調製した。ここでの質量部は、塗工液中全顔料固形分100質量部に対する各材料の固形分質量比率である。市販粗粒重質炭酸カルシウムのSFT−2000(三共精粉株式会社製、平均粒子径25.4μm)50質量部、市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのNUSURF(BASF社製、平均粒子径7.6μm、アスペクト比93)50質量部に市販ポリアクリル酸系分散剤0.50質量部添加して、分散機で固形分濃度62質量%で分散し顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを10質量部、市販りん酸エステル化澱粉2.0質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを0.50質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度52質量%にし、下塗り塗工層を設けるための塗液を得た。このようにして調整した塗液を、基紙Aの上に直接、ブレードコーターを用いて、操業速度200m/min、片面当たりの塗工固形分質量6g/m、両面で12g/mの条件で塗工し、乾燥後、下塗り塗工紙を得た。上塗り塗工層を設けるための塗液は以下のようにして調整した。市販高白1級カオリンのハイドラグロス90(ヒューバー社製、平均粒子径0.4μm)100質量部に、市販ポリアクリル酸系分散剤0.10質量部添加して、分散機で固形分濃度70質量%で分散し顔料スラリーを得た。この顔料スラリーに、接着剤として市販スチレン−ブタジエン共重合ラテックスを13質量部、市販ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製NM−11)10%水溶液を2.0質量部添加し、さらに市販ステアリン酸カルシウムを0.70質量部添加し、水酸化ナトリウムでpH9.6に調整し、さらに調整水で固形分濃度48質量%にし、上塗り塗工層を設けるための塗液を得た。このようにして調整した塗液を、上記の下塗り塗工層の上に、エアナイフコーターを用いて、操業速度200m/min、片面当たりの塗工固形分質量6g/m、両面で12g/mの条件で塗工し、乾燥して、印刷用塗工紙を得た。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0044】
(実施例2)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販粗粒重質炭酸カルシウムSFT−2000を、市販重質炭酸カルシウムの重質炭酸カルシウム特級(三共精粉株式会社製、平均粒子径17.1μm)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0045】
(実施例3)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販粗粒重質炭酸カルシウムSFT−2000を、市販重質炭酸カルシウムのエスカロン#100S(三共精粉株式会社製、平均粒子径4.9μm)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0046】
(実施例4)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのNUSURFを、市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのBARRISURF(株式会社イメリスミネラルズジャパン社製、平均粒子径8.2μm、アスペクト比100)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0047】
(実施例5)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのNUSURFを、市販非膨潤性雲母のMK200(コープケミカル株式会社製、平均粒子径6.5μm、アスペクト比44)した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0048】
(実施例6)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販粗粒重質炭酸カルシウムSFT−2000を50質量部から45質量部に、市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのNUSURFを50質量部から45質量部に変更し、さらに市販軽質炭酸カルシウムTP−123(奥多摩工業株式会社製、平均粒子径0.6μm)を10質量部併用(分散条件の変更はなし)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0049】
(実施例7)
実施例1において、下塗り塗工層の上に上塗り塗工層を設けるための塗液中の市販高白1級カオリンのハイドラグロス90を、市販重質炭酸カルシウムのFMT−97(株式会社ファイマテック製、平均粒子径0.8μm)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0050】
(実施例8)
実施例1において、下塗り塗工層の上に上塗り塗工層を設けるための塗工方式をエアナイフコーターからカーテンコーターに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例9)
実施例1において、下塗り塗工層の上に上塗り塗工層を設けるための塗工方式をエアナイフコーターからスプレーコーターに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例10)
実施例1において、基紙Aを基紙Bに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0053】
(実施例11)
実施例1において、基紙Aを基紙Cに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販粗粒重質炭酸カルシウムSFT−2000を、市販重質炭酸カルシウムのFMT−97(株式会社ファイマテック製、平均粒子径0.8μm)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販粗粒重質炭酸カルシウムSFT−2000を50質量部から30質量部に、市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのNUSURFを50質量部から70質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのNUSURFを、市販高白1級カオリンのハイドラグロス90(ヒューバー社製、平均粒子径0.4μm、アスペクト比4.4)に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0057】
(比較例4)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けるための塗液中の市販粗粒重質炭酸カルシウムSFT−2000を50質量部から70質量部に、市販大粒径デラミネーテッドカオリンクレーのNUSURFを50質量部から30質量部に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0058】
(比較例5)
実施例1において、基紙に直接設ける下塗り塗工層の塗工量を、片面当たりの塗工固形分質量6g/m、両面で12g/mから、片面当たりの塗工固形分質量1.8g/m、両面で3.6g/mに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0059】
(比較例6)
実施例1において、基紙に直接設ける下塗り塗工層の塗工量を、片面当たりの塗工固形分質量6g/m、両面で12g/mから、片面当たりの塗工固形分質量15g/m、両面で30g/mに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0060】
(比較例7)
実施例1において、基紙に下塗り塗工層を設けた後、乾燥工程を経ずにすぐに上塗り塗工層を設ける方法に変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0061】
(比較例8)
実施例1において、下塗り塗工層の上に上塗り塗工層を設けるための塗工方式をエアナイフコーターからブレードコーターに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0062】
(比較例9)
実施例1において、下塗り塗工層の上に上塗り塗工層を設けるための塗工方式をエアナイフコーターからシムサイザーに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0063】
(比較例10)
実施例1において、下塗り塗工層の上に設ける上塗り塗工層の塗工量を、片面当たりの塗工固形分質量6g/m、両面で12g/mから、片面当たりの塗工固形分質量1.8g/m、両面で3.6g/mに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例11)
実施例1において、下塗り塗工層の上に設ける上塗り塗工層の塗工量を、片面当たりの塗工固形分質量6g/m、両面で12g/mから、片面当たりの塗工固形分質量12g/m、両面で24g/mに変更した以外は全て実施例1と同様にして行った。得られた印刷用塗工紙の評価結果を表1に示す。
【0065】
実施例1〜11、比較例1〜11の条件、評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
表1の結果から明らかなように、顔料として平均粒子径4μm以上30μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料固形分100質量部中40質量部以上、且つ、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料(ただし、カオリンクレーの場合はデラミネーテッドカオリンクレーである)を全顔料固形分100質量部中40質量部以上含むことを特徴とする塗工層を、下塗り塗工層として基紙上に直接、片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設け、下塗り塗工層を乾燥させた後、該下塗り塗工層の上に、顔料が平均粒子径1.5μm以下の粒子のみで構成される上塗り塗工層を、片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設け、該上塗り塗工層がエアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーターのいずれかによって設けられることで、印刷ムラがなく、また操業性も良好な、凹凸感のある風合いを持つ印刷用塗工紙が提供された。好ましくは該基紙が、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)6.0μm以上であることを特徴とすることで、より凹凸感のある風合いを持ち、印刷ムラがなく、また操業性も良好印刷用塗工紙が提供された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基紙上に、少なくとも、下塗り塗工層と上塗り塗工層を設ける印刷用塗工紙において、顔料として平均粒子径4μm以上30μm以下の重質炭酸カルシウムを全顔料固形分100質量部中40質量部以上、且つ、アスペクト比(平均粒子径/厚さの比)が10〜120で平均粒子径3μm以上20μm以下である平板状無機顔料を全顔料固形分100質量部中40質量部以上含む下塗り塗工層を設け、該下塗り塗工層の上に、顔料が平均粒子径1.5μm以下の粒子のみで構成される上塗り塗工層を設けられることを特徴とする印刷用塗工紙。
【請求項2】
請求項1における該基紙が、JIS B 0601に規定される算術平均粗さ(Ra)6.0μm以上である請求項1記載の印刷用塗工紙。
【請求項3】
下塗り塗工層として基紙上に直接、片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設ける請求項1記載の印刷用塗工紙。
【請求項4】
上塗り塗工層を、片面当たり固形分質量2.0g/m以上10.0g/m以下設ける請求項1記載の印刷用塗工紙。
【請求項5】
該上塗り塗工層がエアナイフコーター、カーテンコーター、スプレーコーターのいずれかによって設けられる請求項1記載の印刷用塗工紙の製造方法。
【請求項6】
下塗り塗工層として基紙上に直接設け、該下塗り塗工層を乾燥させた後、該下塗り塗工層の上に、該上塗り塗工層を設ける請求項5記載の印刷用塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2011−47082(P2011−47082A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197007(P2009−197007)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】