説明

印刷装置、印刷制御方法および印刷制御プログラム

【課題】同色系のインクであって複数のインクを使用可能な印刷装置において、当該同色系の複数のインクの中の一部のインクについて偏減が発生していた。
【解決手段】同色系のインクであって特性が異なる第1インクおよび第2インクを印刷に使用可能な印刷装置であって、印刷装置における第1インクの残量と第2インクの残量との比を取得する残量比取得部と、上記取得された比に応じて、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるインク量置換部と、上記置き換え後の第1インクのインク量および第2インクのインク量に従って第1インクおよび第2インクを用いた印刷を実行する印刷実行制御部と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法および印刷制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、同色系のインクであって特性が異なる複数のインクをそれぞれ使用可能な製品が存在する。同色系のインクであって特性が異なる複数のインクとしては、マット紙系の媒体に付着させたときに良好な発色を実現するブラックインク(マットブラックインク或いはMKインクと呼ぶ。)および光沢紙系の媒体に付着させたときに良好な発色を実現するブラックインク(フォトブラックインク或いはPKインクと呼ぶ。)が該当する。このような印刷装置として、MKインクおよびPKインクを用いてマット紙に着色する際に、黒色の階調値における所定範囲でMKインクとPKインクとを利用して印刷するものが知られている(特許文献1参照。)。
【0003】
また、複数の印刷材を使って印刷する印刷装置であって、複数の印刷材の各残量に応じて、少なくとも1つの印刷材の消費量を低減するように制御する装置が知られている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐36479号公報
【特許文献2】特開2004‐93817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような同色系の複数のインクを搭載した印刷装置においては、ユーザーによる任意の印刷処理を繰り返していく中で、これら同色系の複数のインクのうち、一部のインクが他のインクよりも大量に消費されることがある。このような一部のインクについての偏った消費(偏減と呼ぶ。)は、当該一部のインクについてのインクカートリッジの頻繁な交換をユーザーに強いることになり、これは印刷処理の効率性やユーザーの快適性の阻害要因となり得る。なお上記文献1は、上述したような偏減の防止に貢献しようとするものではなかった。また上記文献2は、一部の印刷材の消費量を低減するものであるが、かかる印刷材の消費低減に対する画質補償を伴うものではないため、印刷結果の質の低下を招く。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、一部のインクについての偏減を防止することで印刷処理の効率性向上やユーザーの煩雑さ低減を実現するとともに、印刷結果の質低下も防止することが可能な印刷装置、印刷制御方法および印刷制御プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、同色系のインクであって特性が異なる第1インクおよび第2インクを印刷に使用可能な印刷装置であって、印刷装置における第1インクの残量と第2インクの残量との比を取得する残量比取得部と、上記取得された比に応じて、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるインク量置換部と、上記置き換え後の第1インクのインク量および第2インクのインク量に従って第1インクおよび第2インクを用いた印刷を実行する印刷実行制御部と、を備える構成としてある。
【0008】
本発明によれば、印刷装置における第1インクの残量と第2インクの残量との比に応じて、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるため、第1インクについての偏減を防止できる。また、第1インクの消費を減らした分を、第2インクで補うようにしているため、印刷結果の質低下を抑えることができる。
【0009】
本発明の態様の一つとして、第1インクは第1媒体に付着して所定の発色をするインクであり、第2インクは第1媒体とは異なる第2媒体に付着して所定の発色をするインクであり、印刷に使用する媒体として第1媒体の指定を受け付けたことを条件として、残量比取得部は上記比を取得し、インク量置換部は上記置き換えを実行し、印刷実行制御部は上記置き換え後のインク量に従った印刷を実行するとしてもよい。
当該構成によれば、第1媒体への印刷に通常使用される第1インクについて、その偏減を防止することができる。
【0010】
本発明の態様の一つとして、印刷装置における第1インクの残量よりも第2インクの残量が多いことを条件として、残量比取得部は上記比を取得し、インク量置換部は上記置き換えを実行し、印刷実行制御部は上記置き換え後のインク量に従った印刷を実行するとしてもよい。
当該構成によれば、第1インクの偏減が実際に生じている場合に、当該偏減を的確に解消することができる。
【0011】
本発明の態様の一つとして、印刷モードとして第1インクを節約するための特定のモードの指定を受け付けたことを条件として、残量比取得部は上記比を取得し、インク量置換部は上記置き換えを実行し、印刷実行制御部は上記置き換え後のインク量に従った印刷を実行するとしてもよい。
当該構成によれば、ユーザーが第1インクの節約を望んでいる場合に、第1インクの偏減を防止することができる。
【0012】
本発明の態様の一つとして、上記インク量置換部は、上記置き換え後の第2インクのインク量を第1インクと第2インクとの発色特性の差異に応じて補正し、印刷実行制御部は、当該補正後の第2インクのインク量に従った印刷を実行するとしてもよい。
当該構成によれば、上記置き換え後の第2インクのインク量が、更に第1インクと第2インクとの発色特性の差異に応じて補正されるため、第1インクの一部を第2インクで置き換えて印刷する際に生じ得る発色の差を確実に解消し、質の高い印刷結果を得ることができる。
【0013】
本発明の態様の一つとして、印刷装置は、上記インク量置換部が第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるときの置き換え比率を、外部からの指示に応じて変更する置換比率変更部と、上記変更された置き換え比率に応じた第1インクの残量および第2インクの残量の減少態様を所定の表示部に表示させる表示制御部とを備え、上記印刷実行制御部は、上記変更された置き換え比率による置き換え後のインク量に従った印刷を実行するとしてもよい。
当該構成によれば、ユーザーが上記置き換え比率を任意に変更可能であり、変更後の置き換え比率による第1インクの偏減解消の効果(第1インクの残量および第2インクの残量の減少態様)を表示部により確認できるため、最適な置き換え比率を決定することができる。
【0014】
本発明にかかる印刷装置は、単体の装置(プリンター)によって実現されてもよいし、複数の装置(プリンターとプリンターを制御するPC等)からなるシステムとして実現されてもよい。また本発明の技術的思想は、物の発明以外によっても実現可能である。例えば、上述した印刷装置の各部が実行する各処理工程を備える方法(印刷制御方法)や、当該各部に対応する機能を所定のハードウェア(プリンターやPC)に実現させるプログラム(印刷制御プログラム)の発明も把握可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の装置構成を概略的に示す図である。
【図2】印刷制御処理を示すフローチャートである。
【図3】色変換LUTが書き換えられる様子を例示する図である。
【図4】第1インクを残量比に応じ第2インクに置き換える様子を例示する図である。
【図5】第1インクおよび第2インクの発色特性を例示する図である。
【図6】置き換え比率の変更処理にかかるフローチャートである。
【図7】UI画面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.装置の概略
図1は、本実施形態にかかる装置構成を概略的に示している。図1では、PCとしてのコンピューター10と、プリンター50とを示している。コンピューター10及び又はプリンター50は、印刷制御方法の実行主体となる。コンピューター10においては、CPU11が、ハードディスクドライブ(HDD)20等に記憶されたプログラムデータ21をRAM12に展開してOSの下でプログラムデータ21に従った演算を行なうことにより、プリンター50を制御するためのプリンタードライバー13が実行される。プリンタードライバー13は、画像データ取得部13a、色変換処理部13b、ハーフトーン(HT)処理部13c、ラスタライズ処理部13d、ユーザーインターフェイス(UI)制御部13e、残量比取得部13f、インク量置換部13g等の各機能をCPU11に実行させるためのプログラムである。これら各機能については後述する。
【0017】
コンピューター10には、表示部としてのディスプレー30が接続されており、ディスプレー30にはUI制御部13eが各処理に必要なUI画面を表示させる。また、コンピューター10には、例えばキーボードやマウス等の操作部40が接続されており、各処理に必要な指示がユーザーにより操作部40を介して入力される。また、コンピューター10には、プリンター50が接続されている。後述するように(図2)、コンピューター10においては、プリンタードライバー13の機能により、印刷対象画像を表現した画像ファイルに基づいて駆動データが生成され、該駆動データがプリンター50に対して送信される。
【0018】
プリンター50においては、CPU51が、ROM53等のメモリーに記憶されたプログラムデータ54をRAM52に展開してOSの下でプログラムデータ54に従った演算を行なうことにより、自機を制御するためのファームウェアFWが実行される。ファームウェアFWは、コンピューター10から送信された駆動データをASIC56に送ることにより、駆動データに基づいた印刷を実行させることができる。
またファームウェアFWは、印刷対象画像を表現した画像ファイルを、図示しない外部接続用のコネクタに装着されたメモリーカードや、外部装置(例えばコンピューター10)等から取得し、取得した画像ファイルに基づいて駆動データを生成することもできる。このようにファームウェアFWの機能により駆動データを生成した場合も、駆動データはASIC56に送られる。
【0019】
ASIC56は駆動データを取得し、駆動データに基づいて、紙送り機構57やキャリッジモーター58や印刷ヘッド62を駆動するための駆動信号を生成する。プリンター50はキャリッジ60を備えており、キャリッジ60は複数種類のインク毎のインクカートリッジ61を搭載している。プリンター50は、少なくとも同色系のインクであって特性が異なる複数のインクを含む、複数のインクを搭載する。図1の例では、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、マットブラック(MK)、フォトブラック(PK)の各種インクに対応したインクカートリッジ61a,61b,61c,61d,61eが搭載されている。キャリッジ60は、各インクカートリッジ61から供給されるインクを多数のノズルから吐出する印刷ヘッド62を備える。プリンター50が搭載するインクの具体的な種類や数は上述したものに限られず、例えば、ライトシアン(LC)、ライトマゼンダ(LM)、オレンジ(OR)、グリーン(G)、グレー(LK)、ライトグレー(LLK)…等、種々のインクを搭載可能である。またインクカートリッジ61は、キャリッジ60に搭載されずに、プリンター50内の所定位置に設置されるとしてもよい。
【0020】
紙送り機構57は、ASIC56に駆動制御されることにより印刷媒体の搬送や紙送りを実行する。また、ASIC56にキャリッジモーター58の駆動が制御されることにより、キャリッジ60が印刷の主走査方向へ移動(主走査)し、かつASIC56は当該主走査に伴って印刷ヘッド62に所定タイミングで各ノズルからインクを吐出させる。これにより、印刷媒体にインク滴(ドット)が付着し、駆動データに対応する画像(印刷対象画像)が印刷媒体上に再現される。プリンター50は、さらに操作パネル59を備える。操作パネル59は、表示部(例えば液晶パネル)や、表示部内に形成されるタッチパネルや、各種ボタンやキーを含み、ユーザーからの入力を受け付けたり、必要なUI画面を表示部に表示したりする。
【0021】
2.インクの偏減抑制を伴う印刷制御処理
図2は、本実施形態の印刷制御処理をフローチャートにより示している。ここでは、プリンタードライバー13(印刷制御プログラム)によりCPU11が当該フローチャートを実行するものとして説明をする。当該フローチャートを立ち上げる前提として、プリンタードライバー13は、操作部40を介してユーザーによる任意の印刷対象画像の選択を受け付けているものとする。
【0022】
ステップS100では、CPU11は、印刷に使用する媒体の種類が、特定の媒体(以下、第1媒体と呼ぶ。)であるか否か判定する。印刷に使用する媒体の種類は、ユーザーが操作部40を操作することにより、ディスプレー30に表示されたUI画面を介して任意に指定することができる。そこでCPU11は、UI画面を介してユーザーに指定された媒体(以下、指定媒体と呼ぶ。)が第1媒体であるか否か判定し、第1媒体である場合に、ステップS110へ進む。
【0023】
プリンタードライバー13は、印刷対象画像を表現した画像ファイルに基づいて駆動データを生成する過程で、画像の表色系を変換する色変換処理を実行する(後述のステップS170)。色変換処理には、入力表色系(例えばRGB表色系)と出力表色系(インク量空間)との対応関係を複数の入力格子点について規定した色変換ルックアップテーブル(色変換LUT)22を用いる。本実施形態では、プリンター50で使用され得る印刷媒体の種類毎に対応した複数の色変換LUT22がHDD20に予め格納されており、基本的には、指定媒体の種類に応じた色変換LUT22を用いて色変換処理が実行される。従って、指定媒体としてマット紙系の媒体が選択された場合には、基本的には、マット紙系に対応する色変換LUT22が用いられる。一方、指定媒体として光沢紙系の媒体が選択された場合には、基本的には、光沢紙系に対応する色変換LUT22が用いられる。マット紙系に対応する色変換LUT22においては、各入力格子点に対応付けられた出力値として、C,M,Y,MKの各インクについてのインク量(階調値)が規定されている。すなわち、マット紙系の媒体が選択された場合には、ブラックインクとしてMKインクが印刷に使用される。一方、光沢紙系に対応する色変換LUT22においては、各入力格子点に対応付けられた出力値として、C,M,Y,PKの各インクについてのインク量(階調値)が規定されている。すなわち、光沢紙系の媒体が選択された場合には、ブラックインクとしてPKインクが印刷に使用される。
【0024】
ここで、ユーザーがプリンター50を用いて任意に印刷処理を繰り返していく中で、プリンター50に搭載された各種インクの消費スピードがそれぞれ同程度であれば印刷効率やユーザーの煩わしさ回避の観点から理想的であるが、一部のインクの消費が他のインクよりもかなり多くなってしまうこともある。このような一部のインクの偏減の例として、MKインクがPKインクと比較して大量に消費される事態が見られる。そこで当該フローチャートでは、一例として、MKインクについての偏減を抑制するための処理を必要に応じて実行する。以下では特に断らない限り、第1媒体はマット紙系の媒体であるとする。また、第1媒体がマット紙系の媒体である場合は、第1インクはMKインクであり、第2インクはPKインクであるとする。
【0025】
ステップS110では、CPU11は、プリンター50における第2インクの残量が第1インクの残量より多いか否か判定する。この場合、CPU11は、第1インクの残量と第2インクの残量とを示す情報を要求するコマンド(残量要求コマンド)をプリンター50に対して送信し、プリンター50側では、当該コマンドに応答して第1インクの残量と第2インクの残量とを(直接的あるいは間接的に)示す情報をコンピューター10側へ送信する。プリンター50は、各インクカートリッジ61におけるインクの残量を、公知の手法を含めた種々の手法により把握可能である。
【0026】
本実施形態では、ファームウェアFWは、一つの印刷ジョブに対応する駆動データが表す画像を形成するドット数をインク種類別にカウントするドットカウント機能や、ドットカウント機能によりカウントされたドット数に応じてインク種類別のインク消費量を推定する消費量推定機能などを有する。消費量推定機能では、当該インク種類別にカウントされたドット数に1ドット当たりのインク量を掛けた値を、インク種類が対応するインクカートリッジ61に設けられている不図示の消費量メモリーに記憶されている「現在のインク消費量」に加えることにより、当該「現在のインク消費量」を更新する(例えば、特開2007‐223060号公報参照。)。さらにファームウェアFWは、あるインク種類についての残量要求コマンドを受け付けたときには、当該インク種類について予め決められているインク量の初期値(未使用状態のインクカートジッリに充填されているインク量)から、当該インク種類の消費量メモリーにその時点で記憶されている「現在のインク消費量」を差し引くことにより、当該インク種類についての現在のインク残量を算出可能である。このようにしてファームウェアFWは、上記残量要求コマンドに応じて第1インクの残量と第2インクの残量とを算出し、当該算出した残量を示す情報をコンピューター10側へ送信する。
【0027】
従ってステップS110では、このようにプリンター50から取得した情報に基づいて、第2インクの残量が第1インクの残量より多いか否か判定する。CPU11は、第2インクの残量が第1インクの残量より多い場合(ステップS110において“Yes”)にステップS120へ進み、そうでない場合(ステップS110において“No”)にステップS150へ進む。
【0028】
ステップS120では、CPU11は、印刷モードとして第1インクを節約するための特定のモード(MKインク節約モード)の指定を受け付けたか否か判定する。印刷モードは、ユーザーが操作部40を操作することにより、ディスプレー30に表示されたUI画面を介して任意に指定することができる。また本実施形態では、UI制御部13eは、UI画面上において、指定媒体として第1媒体(マット紙系の媒体)が選択された場合に限り「MKインク節約モード」を選択枝として有効化(表示)する。そのためユーザーは、UI画面上でマット紙系の媒体を指定した場合にのみ、「MKインク節約モード」を選択可能である。CPU11は、印刷モードとして上記特定のモードが指定されている場合(ステップS120において“Yes”)にステップS130へ進み、そうでない場合(ステップS120において“No”)にステップS150へ進む。
【0029】
上記特定のモードが指定されている場合、ステップS130,S140が実行される。ステップS130では、残量比取得部13fが、上記ステップS110で取得された第1インクおよび第2インクの残量の情報に基づいて両インクの残量比(第1インクの残量:第2インクの残量)を算出する。
【0030】
ステップS140では、インク量置換部13gが、上記残量比に応じて、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるための処理を実行する。具体的には、インク量置換部13gは、HDD20に格納されている色変換LUT22のうち、指定媒体に対応する色変換LUT22を読み出し、当該読み出した色変換LUT22が出力値として規定するインク種類毎のインク量のうち、第1インクのインク量について、上記残量比に応じて第1インクのインク量と第2インクのインク量とに振り分ける。インク量置換部13gは、一例として、残量比(第1インクの残量:第2インクの残量)が、a:bである場合、色変換LUT22が規定する第1インクのインク量のb/a+bを第2インクのインク量に置き換えることで、色変換LUT22の出力値を書き換える。
【0031】
図3は、ステップS140によって色変換LUT22が書き換えられる様子を例示している。図3に示した色変換LUT22は、指定媒体(マット紙系の媒体)に対応してHDD20に格納されている色変換LUT22であり、複数の入力格子点(R,G,Bの各階調値)に対してインク量(C,M,Y,MKの各階調値)を一義的に規定している。インク量としての階調値は、例えば0〜255の256階調(8ビット)で表される。以下では、指定媒体に対応してHDD20に格納されている色変換LUT22を、適宜、通常色変換LUT22とも呼ぶ。
【0032】
図4は、通常色変換LUT22に規定された第1インク(MKインク)のインク量を、残量比に応じて第2インク(PKインク)のインク量に置き換える様子を例示している。図4では、0〜255の階調値で表されるインク量を、説明の便宜上、濃度0〜100%に正規化した状態で記載している(階調値255=濃度100%)。むろん、ここに示した濃度(%)は、それに255を乗算することで階調値として表すことができる。図4に例示するように、残量比a:b=1:1.5である場合は、通常色変換LUT22に規定された第1インクのインク量の1.5/2.5を第2インクのインク量に置き換える。つまり、通常色変換LUT22において濃度100%と規定されていた第1インクのインク量は、第1インクのインク量としての濃度40%と第2インクのインク量としての濃度60%とに振り分けられ、また、通常色変換LUT22において濃度20%と規定されていた第1インクのインク量は、第1インクのインク量としての濃度8%と第2インクのインク量としての濃度12%とに振り分けられる。
【0033】
同様に、残量比a:b=1:2である場合は、通常色変換LUT22に規定された第1インクのインク量の2/3を、第2インクのインク量に置き換える。同様に、残量比a:b=1:4である場合は、通常色変換LUT22に規定された第1インクのインク量の4/5を、第2インクのインク量に置き換える。このように第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えることで残った第1インクのインク量と得られた第2インクのインク量とを、それまで登録されていた第1インクのインク量の替わりに色変換LUT22の出力値として登録することで、色変換LUT22(通常色変換LUT22)が、色変換LUT22´に書き換えられる(図3における鎖線で囲った領域を参照。)。当該ステップS140では、このような書き換え後の色変換LUT22´を、色変換処理に用いる色変換LUTとして設定する。
【0034】
一方、ステップS150では、通常色変換LUT22を、色変換処理に用いる色変換LUTとして設定する。すなわち、プリンター50において、第2インクの残量≦第1インクの残量である場合(ステップS110において“No”)や、そもそもユーザーが上記特定のモードを指定していない場合(ステップS120において“No”)は、指定媒体への印刷時に第2インクを使用する必要性が低い(無い)ため、通常色変換LUT22を使用する。
【0035】
ステップS160では、画像データ取得部13aが、印刷対象画像を表現した画像ファイルを、HDD20や図示しない外部接続用のコネクタに装着されたメモリーカード等、所定の格納領域から取得する。ここでは、当該画像ファイルは、画像を構成する各画素がR,G,B毎の階調値を有するビットマップデータ(RGBデータ)であるとする。また、当該画像ファイルがPDL等他の形式で記述されたファイルである場合には、画像データ取得部13aは、当該ファイルを解析してビットマップデータ(RGBデータ)に展開する。さらに画像データ取得部13aは、RGBデータに対して、プリンター50における印刷解像度に合わせるための画素数変換処理等を適宜実行することができる。
【0036】
ステップS170では、色変換処理部13bが、画像データ取得部13aにより取得されたRGBデータを、ステップS140又はステップS150のいずれか一方で設定された色変換LUTを用いて色変換する。色変換の際には、必要に応じて補間演算等が実行される。ステップS140で設定された色変換LUT22´を用いて色変換処理を実行した場合には、RGBデータが、画素毎にC,M,Y,MK,PK毎の階調値を有するインク量データ(CMYMKPKデータ)に変換される。一方、ステップS150で設定された通常色変換LUT22を用いて色変換処理を実行した場合には、RGBデータが、画素毎にC,M,Y,MK毎の階調値を有するインク量データ(CMYMKデータ)に変換される。
【0037】
ステップS180では、HT処理部13cが、色変換処理部13bにより変換されたインク量データに対してハーフトーン処理を実行することにより、インク種類毎かつ画素毎にドットの形成/非形成のいずれか一方を規定した2値のハーフトーンデータを生成する。ハーフトーン処理は、ディザ法や誤差拡散法等によって実行される。なお、ハーフトーンデータは2値に限定されず、例えば、インク種類毎かつ画素毎に大ドットの形成/中ドットの形成/小ドットの形成/非形成のいずれか一つを規定した4値のデータであってもよい。大ドット、中ドット、小ドットとは、印刷ヘッド62が吐出可能なトッド当りのインク量が相対的に異なる複数のドット種類についての呼び方である。ドット当りのインク量の大小関係は、大ドット>中ドット>小ドットである。
【0038】
ステップS190では、ラスタライズ処理部13dが、ハーフトーンデータのインク種類毎かつ画素毎の情報を印刷ヘッド62の各主走査および各インクノズルに割り当てた駆動データを生成し(ラスタライズ処理)、駆動データをプリンター50へ出力する。駆動データには、指定媒体の情報を始めとして印刷解像度や印刷枚数など、プリンター50が印刷処理を実行する上で必要な各情報も付随し、送信される。この結果、プリンター50は送信された駆動データに基づいた印刷を指定媒体に対して実行する。上記の例で言えば、色変換LUT22´が設定された場合(ステップS140)には、プリンター50ではC,M,Y,MK,PKの各インクのドットが駆動データに応じて指定媒体(マット紙系媒体)に吐出される。一方、通常色変換LUT22が設定された場合(ステップS150)には、プリンター50ではC,M,Y,MKの各インクのドットが駆動データに応じて指定媒体(マット紙系媒体)に吐出される。なお本発明のインク量置換部の概念には、インク量置換部13gだけでなく色変換処理部13bも含むこともできる。また、少なくともHT処理部13cおよびラスタライズ処理部13dは、印刷実行制御部に該当する。
【0039】
このように本実施形態によれば、同色系のインクであって特性が異なる第1インクおよび第2インクを使用可能なプリンター50を用いて印刷処理を行なう際、第1インクが通常使用される媒体(第1媒体)が指定媒体とされた場合には、プリンター50における第1インクと第2インクとの残量比を取得し、残量比に応じて第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換え、置き換え後の第1インクのインク量および第2インクのインク量を含んだインク量データ(CMYMKPKデータ)に従った印刷をプリンター50に実行させる。そのため、同色系の複数のインクのうちの一部のインク(第1インク)の偏減を抑制することができ、結果、印刷処理の効率やユーザーの快適性が向上する。また、第1インクの使用量を減らした分を第2インクの使用で補っているため、印刷結果の画質低下を抑制することができる。また、プリンター50における第1インクの残量が第2インクの残量より少ない場合や、ユーザーが第1インクを節約するための特定のモードを指定している場合に、上記置き換えが行なわれる。そのため、実際に第1インクの偏減解消が必要とされている場合に、的確に第1インクが節約される。
【0040】
なお図2のフローチャートでは、上記ステップS100において指定媒体が第1媒体以外の媒体であると判定された場合(ステップS100において“No”)の処理ついては特に記載していないが、その場合は通常の印刷制御処理が行なわれる。つまり、CPU11(プリンタードライバー13)は、指定媒体に対応してHDD20に格納されている色変換LUT22を用いて、印刷対象画像を表現したRGBデータを色変換し、色変換後のインク量データに基づいて上述したようなハーフトーン処理、ラスタライズ処理を実行し駆動データを生成し、生成した駆動データをプリンター50へ送信する。
【0041】
上記では印刷制御処理をコンピューター10が実行する場合を例に説明を行なったが、印刷制御処理(後述の各変形例を含む。)はプリンター50内で行なわれるとしてもよい。つまり、プリンター50のCPU51がファームウェアFW(印刷制御プログラム)を実行することにより、画像データ取得部13a、色変換処理部13b、HT処理部13c、ラスタライズ処理部13d、UI制御部13e、残量比取得部13f、インク量置換部13gといった上述の各機能がプリンター50において実現され、図2のフローチャートが実現されるとしてもよい。この場合、プリンター50内のROM53に媒体の種類毎に対応した色変換LUT55(通常色変換LUT)が予め格納されており、書き換えの対象となる。また、CPU51は、印刷対象画像(画像ファイル)についての印刷指示や、印刷に使用する媒体の指定や、印刷モードの指定など必要な各種情報や指示を、操作パネル59を介してユーザーから受け付ける。この結果、上述したようにファームウェアFWの機能により駆動データが生成される。或いは、図2のフローチャートを、プリンタードライバー13とファームウェアFWとで分担して実現するとしてもよい。
【0042】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば以下のような各変形例も可能である。上述の実施形態や各変形例を組み合わせた内容も、本発明の開示範囲である。
【0043】
変形例1:
ステップS140において、インク量置換部13gは、上記置き換え後の第2インクのインク量を第1インクと第2インクとの発色特性の差異に応じてさらに補正するとしてもよい。
【0044】
図5は、第1インク(MKインク)と第2インク(PKインク)との発色特性を例示している。図5では、横軸にインク量を上述の濃度(%)(媒体の単位面積に対するインクの被覆率)で記し、縦軸に明度L*を記している。これら発色特性は、第1媒体(マット紙)に第1インクにより印刷した所定のテストパターン(例えば、インク量を徐々に変化させたグラテーションパターン)を測色して得られた結果(明度L*)と、第1媒体(マット紙)に第2インクにより印刷した所定のテストパターン(例えば、インク量を徐々に変化させたグラテーションパターン)を測色して得られた結果(明度L*)とに基づく曲線である。図5から判るように、PKインクは同じインク量に対応する明度L*がMKインクよりも全体的に高いという特性を有している。言い換えると、ある明度L*をマット紙において実現するために必要なPKインクのインク量は、同じ明度L*をマット紙において実現するために必要なMKインクのインク量よりも多い。
【0045】
そのため、コンピューター10は、同じ明度L*を実現するMKインクのインク量とPKインクのインク量との対応関係(例えば、明度L*1を実現するMKインクのインク量ImとPKインクのインク量Ipとの対応関係。図5参照。)を上記発色特性のグラフから求め、そのような対応するインク量間の変換(例えばインク量Imからインク量Ipへの変換)を実現するための変換関数あるいは変換テーブルを予め生成しておく。このように予め生成した変換関数あるいは変換テーブルは、インク量補正データ23として、第1インクと第2インクの組合せに対応付けられてHDD20に格納される。
【0046】
そしてステップS140では、インク量置換部13gは、上記置き換え後の第2インクのインク量を、第1インクと第2インクの組合せに対応付けられてHDD20に格納されているインク量補正データ23によって補正する(変換する)。上述したインク量の置き換えでは、第1インクのインク量と第2インクのインク量は等価交換されている。例えば図4に例示したように、残量比a:b=1:1.5の場合、通常色変換LUT22において濃度20%として規定されていた第1インクのインク量は、そのうちの1.5/2.5がそのまま第2インクのインク量に置き換わっている(第1インクのインク量としての濃度12%が第2インクのインク量としての濃度12%へ置き換えられている)。そのため、インク量補正データ23によって補正した後の第2インクのインク量は、上記置き換え前の第1インクのインク量(濃度20%)のうち第2インクへの置き換えに使用された分の第1インクのインク量(濃度12%)によって第1媒体で再現される発色(明度L*)と同等の発色(明度L*)を第1媒体で再現可能なインク量であると言える。
【0047】
インク量置換部13gは、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えることで残った第1インクのインク量と、当該置き換えで得られた第2インクのインク量を更に上記のようにインク量補正データ23で補正して得られた補正後の第2インクのインク量とを、それまで登録されていた第1インクのインク量の替わりに色変換LUT22の出力値として登録することで、色変換LUT22(通常色変換LUT22)を色変換LUT22´に書き換える。このような変形例1によれば、色変換LUT22´を用いた色変換により得られるインク量データ(CMYMKPKデータ)に基づいた印刷をプリンター50で第1媒体に対して実行した場合、第1インクと第2インクとを併用したにもかかわらず、第1インクの第2インクへの置き換えをしなかった場合と同等の発色を印刷結果において得ることができる。
【0048】
変形例2:
上記では、残量比a:bにより、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるときの置き換え比率(第1インクのインク量のうち、第2インクに置き換えられる比率)は、b/a+bとなる旨説明した。ただし、この置き換え比率を外部からの指示に応じて変更できるとしてもよい。
【0049】
図6は、このような置き換え比率の変更処理にかかるフローチャートを示している。当該処理はステップS140の中で実行される。インク量置換部13gが上記残量比a:bに応じて置き換え比率b/a+bを算出する(ステップS200)と、UI制御部13eは、置き換え比率を判り易い態様で示すUI画面を表示部に表示させる(ステップS210)。
【0050】
図7は、ステップS210で表示されるUI画面210aを例示している。UI画面210aにおいては、横棒等で仮想的に示された置き換え比率の範囲(0〜100%)の表示R上を移動可能なスライダーバーSBが表示される。ステップS200後、最初にUI画面210aが表示される時点でのスライダーバーSBの位置(初期位置)は、ステップS200で算出された置き換え比率b/a+bに対応する位置となっている。例えば、置き換え比率b/a+bが2/3という値である場合、スライダーバーSBは、表示Rにおける100%の位置に対して2/3の位置、すなわち表示Rにおける約67%に相当する位置に表示される。さらにUI画面210aには、第1インク(MKインク)、第2インク(PKインク)それぞれのインクカートリッジ内におけるインクの残量(グレー表示部分)を模したインク残量表示がなされる。インク残量表示としては、「印刷前」に対応するものと「印刷後」に対応するものとが表示される。
【0051】
「印刷前」のインク残量表示は、現在の第1インク(MKインク)の残量および現在の第2インク(PKインク)の残量を示すとともに、第1インクの残量の所定位置に、仮想線VL1が引かれている。ここで表示する現在の第1インクの残量および現在の第2インクの残量は、ステップS110で取得した情報に基づく量である。仮想線VL1は、第1インクから第2インクへのインク量の置き換えをすることなく(すなわち置き換え比率=0)印刷を実行した場合に、その位置まで第1インクが消費されるという予測をユーザーに対して示すための線である。ただし、実際に第1インクから第2インクへのインク量の置き換えをすることなく印刷を実行した場合にどれだけ第1インクが減るかは、印刷対象画像の内容やサイズや印刷枚数など数多くの要素に左右されるため、仮想線VL1の位置はあくまで仮定的なものであり、その位置に厳密な意味はない。仮想線VL1はあくまで、ユーザーが「印刷前」のインク残量表示と「印刷後」のインク残量表示とを比較して見たときに効果を発揮する(ユーザーの理解を助ける)ものである。
【0052】
一方、「印刷後」のインク残量表示では、第1インクについての現在の残量と仮想線VL1が示す残量との差に相当するインク量を対象として、スライダーバーSBの位置が示す置き換え比率によって第2インクのインク量に置き換えた場合を想定して第1インクおよび第2インクの減少態様を予測して示している。例えば、スライダーバーSBが示す置き換え比率が2/3(約67%)である場合、第1インクについての現在の残量と仮想線VL1が示す残量との差(「印刷前」のインク残量表示における、仮想線VL1より上のグレー表示部分)のうち2/3に相当するインク量が第2インクの現在の残量から差し引かれて表示がなされ、かつ、第1インクについての現在の残量と仮想線VL1が示す残量との差のうち1/3に相当するインク量が第1インクの現在の残量から差し引かれて表示がなされる。つまりユーザーは、これらインク残量表示を見ることで、第1インクを仮想線VL1まで消費する通常の印刷と比べて、スライダーバーSBが示す置き換え比率で第1インクを第2インクに置き換えて印刷するときに第1インクの消費をどれ程抑制でき且つ第2インクがどれ程消費されるかを、直感的に把握することができる。なお、図7の例では、「印刷後」のインク残量表示においても「印刷前」のインク残量表示と同じ位置に仮想線VL1を示している。また、「印刷後」のインク残量表示における仮想線VL2は、第1インクの現在の残量位置を示し、「印刷後」のインク残量表示における仮想線VL3は、第2インクの現在の残量位置を示している。
【0053】
ステップS220では、インク量置換部13gは、置き換え比率が変更されたか否か判定する。ユーザーは、操作部40を操作することによりスライダーバーSBの位置を任意に変更可能である。そのため、インク量置換部13gは、操作部40を介してのスライダーバーSBの移動があったときには、移動後のスライダーバーSBの位置に対応する置き換え比率へ変更されたものと判定しステップS230へ進む。ステップS230では、UI制御部13eは、移動後のスライダーバーSBの位置に対応する置き換え比率に応じて、UI画面210aにおける「印刷後」のインク残量表示を更新する。例えば、置き換え比率が4/5(80%)に変更された場合は、第1インクについての現在の残量と仮想線VL1が示す残量との差のうち4/5に相当するインク量が第2インクの現在の残量から差し引かれ、かつ、第1インクについての現在の残量と仮想線VL1が示す残量との差のうち1/4に相当するインク量が第1インクの現在の残量から差し引かれた表示内容へ、「印刷後」のインク残量表示を更新する。これにより、位置が変更されたスライダーバーSBおよび更新された「印刷後」のインク残量表示を含むUI画面210aが表示される(ステップS210)。
【0054】
すなわち、ユーザーによるスライダーバーSBの移動に連動して、自動的に「印刷後」のインク残量表示におけるグレー表示部分の高さが更新される。上記ステップS220を実行可能な点で、インク量置換部13gは、置換比率変更部にも該当すると言える。また、上記ステップS230を実行可能な点で、UI制御部13eは表示制御部にも該当すると言える。ステップS210の後、ステップS220において置き換え比率が変更されなかったと判定した場合、インク量置換部13gはステップS240において置き換え比率の決定が指示されたか否か判定する。ユーザーは、操作部40を操作することにより決定ボタンDB(図7)を操作することができる。そのため、インク量置換部13gは、決定ボタンDBの操作があったときには、置き換え比率の決定の指示と認識し、ステップS250へ進む。一方、置き換え比率の決定が指示されるまでは、ステップS210〜S240を繰り返す。
【0055】
ステップS250では、インク量置換部13gは、ステップS240で決定の指示を受け付けた時点でスライダーバーSBが示していた位置に相当する置き換え比率で、通常色変換LUT22に規定された第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換える。これにより、上述したように色変換LUT22´が設定される。ステップS250の後は、ステップS160(図2)へ進む。このような変形例2によれば、ユーザーはUI画面210aを見ることで、プリンター50に実際に印刷させる前に、第1インクを第2インクに置き換えることによる第1インクの偏減解消の効果を確認できるとともに、所望する程度の偏減解消効果が得られる最適な置き換え比率を決定することができる。
【0056】
変形例3:
さらに、第1インクから第2インクへの上記置き換え比率は種々の要因に応じて変更することができる。一例として、インク量置換部13gは、印刷対象画像についてユーザーにより設定された印刷枚数が所定枚数以上である場合には、上記残量比に基づく置き換え比率よりもさらに第2インクの消費量が増加するように置き換え比率を変更するとしてもよい。このように印刷枚数が比較的多い場合に、置き換え比率を第2インクの消費量がより増加するように変更することで、第1インクの消費を効果的に抑えることができる。
また、インク量置換部13gは、プリンター50における第1インクの残量が所定の基準量以下である場合に、上記残量比に基づく置き換え比率よりもさらに第2インクの消費量が増加するように置き換え比率を変更するとしてもよい。このように第1インクの残量が少なくなっている場合に、置き換え比率を第2インクの消費量がより増加するように変更することで、残り少ない第1インクの消費を効果的に抑えることができる。
【0057】
変形例4:
これまでは、同色系のインクであって特性が異なる第1インクおよび第2インクの具体例として、第1インクをMKインクとし、第2インクをPKインクとしてきた。しかしながら、第1インクと第2インクとの組合せは種々考えられる。
例えば、第1インクをPKインクとし、第2インクをMKインクとしてもよい。かかる構成とすれば、PKインクとMKインクとの残量比に応じてPKインクの偏減を抑制し、且つPKインクの消費を減らした分をMKインクの使用により補うことができる。
また、ブラックインク(MKインクまたはPKインク)の他にLKインクやLLKインクを使用可能なプリンター50を用いる場合には、ブラックインク、LKインク、LLKインクのうち一種類のインクを第1インクとし他のインクを第2インクとするとしてもよい。かかる構成ことで、第1インクと第2インクとの残量比に応じて、ブラックインクの偏減を抑制し且つブラックインクの消費を減らした分をLKインクやLLKインクの使用により補うことができたり、LKインク(またはLLKインク)の偏減を抑制し且つLKインク(またはLLKインク)の消費を減らした分をブラックインク等の使用により補うことができたりする。
【0058】
さらには、プリンター50が、ある色(例えばブラック)について顔料系インクと染料系のインクとを同時使用可能である場合、このような同色系の顔料系のインクと染料系のインクとの一方を第1インクとし、他方を第2インクとしてもよい。かかる構成とすれば、同色系の顔料インクと染料インクとの残量比に応じて、一方のインクの偏減を抑制し、且つ一方のインクの消費を減らした分を他方のインクの使用により補うことができる。
さらには、第1インクと第2インクとの関係性を、同色系の有彩色のインク同士、例えばCインクとLCインクや、MインクとLMインク等に適用するとしてもよい。
さらに本発明は、インクジェットプリンターだけでなくレーザープリンター等、種々の印刷方式のプリンターに適用できる。また本明細書において「インク」とは、液状のインクに限らず、レーザープリンターに用いられるトナーも含む広い意味で使用されている。このような「インク」の広い意味を有する他の用語としては「色材」や「着色材」、「着色剤」等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…コンピューター、11…CPU、12…RAM、13…プリンタードライバー、13a…画像データ取得部、13b…色変換処理部、13c…HT処理部、13d…ラスタライズ処理部、13e…UI制御部、13f…残量比取得部、13g…インク量置換部、20…HDD、22,55…色変換LUT、23…インク量補正データ、30…ディスプレー、40…操作部、50…プリンター、51…CPU、52…RAM、53…ROM、59…操作パネル、61,61a,61b,61c,61d,61e…インクカートリッジ、210a…UI画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同色系のインクであって特性が異なる第1インクおよび第2インクを印刷に使用可能な印刷装置であって、
印刷装置における第1インクの残量と第2インクの残量との比を取得する残量比取得部と、
上記取得された比に応じて、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるインク量置換部と、
上記置き換え後の第1インクのインク量および第2インクのインク量に従って第1インクおよび第2インクを用いた印刷を実行する印刷実行制御部と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
第1インクは第1媒体に付着して所定の発色をするインクであり、第2インクは第1媒体とは異なる第2媒体に付着して所定の発色をするインクであり、
印刷に使用する媒体として第1媒体の指定を受け付けたことを条件として、残量比取得部は上記比を取得し、インク量置換部は上記置き換えを実行し、印刷実行制御部は上記置き換え後のインク量に従った印刷を実行することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
印刷装置における第1インクの残量よりも第2インクの残量が多いことを条件として、残量比取得部は上記比を取得し、インク量置換部は上記置き換えを実行し、印刷実行制御部は上記置き換え後のインク量に従った印刷を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
印刷モードとして第1インクを節約するための特定のモードの指定を受け付けたことを条件として、残量比取得部は上記比を取得し、インク量置換部は上記置き換えを実行し、印刷実行制御部は上記置き換え後のインク量に従った印刷を実行することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
上記インク量置換部は、上記置き換え後の第2インクのインク量を第1インクと第2インクとの発色特性の差異に応じて補正し、印刷実行制御部は、当該補正後の第2インクのインク量に従った印刷を実行することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
上記インク量置換部が第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるときの置き換え比率を、外部からの指示に応じて変更する置換比率変更部と、
上記変更された置き換え比率に応じた第1インクの残量および第2インクの残量の減少態様を所定の表示部に表示させる表示制御部とを備え、
上記印刷実行制御部は、上記変更された置き換え比率による置き換え後のインク量に従った印刷を実行することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
同色系のインクであって特性が異なる第1インクおよび第2インクを印刷に使用可能な印刷装置を制御する印刷制御方法であって、
印刷装置における第1インクの残量と第2インクの残量との比を取得する残量比取得工程と、
上記取得された比に応じて、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるインク量置換工程と、
上記置き換え後の第1インクのインク量および第2インクのインク量に従った第1インクおよび第2インクを用いた印刷を印刷装置に実行させる印刷実行制御工程と、を備えることを特徴とする印刷制御方法。
【請求項8】
同色系のインクであって特性が異なる第1インクおよび第2インクを印刷に使用可能な印刷装置を制御する印刷制御プログラムであって、
印刷装置における第1インクの残量と第2インクの残量との比を取得する残量比取得機能と、
上記取得された比に応じて、第1インクのインク量を第2インクのインク量に置き換えるインク量置換機能と、
上記置き換え後の第1インクのインク量および第2インクのインク量に従った第1インクおよび第2インクを用いた印刷を印刷装置に実行させる印刷実行制御機能と、を備えることを特徴とする印刷制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196812(P2012−196812A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61309(P2011−61309)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】