説明

印刷装置およびプログラム

【課題】印刷が停止した場合であっても印刷停止状態のまま放置されてしまう事態を回避し、印刷の信頼性を上げることができる印刷装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】印刷権を保有する印刷装置31aにおいて印刷不可状態が発生したと判断して他の印刷装置31bに対して印刷権の譲渡が発生する度に、印刷装置31aが印刷権を譲渡した他の印刷装置31bに対し印刷設定などを含む全印刷データと、予め管理されているすでに削除したページの情報とを送信する。これにより、印刷権を譲渡された他の印刷装置31bは印刷権を譲渡した印刷装置31aが印刷できなかった残りのページから印刷を開始することができるので、印刷が停止した場合であっても印刷停止状態のまま放置されてしまう事態を回避し、印刷の信頼性を上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年においては、インターネット網を経由して印刷を行うインターネットプリントシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年においては、図10に示すように、複数の企業や事業所のイントラネット200,300を、インターネット網400を介して相互接続したエクストラネットも利用されつつある。図10に示すようなエクストラネットによれば、一方のイントラネット200上のサーバなどのホストコンピュータから他方のイントラネット300上のプリンタに対して印刷処理を実行することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなインターネットプリントシステムや図10に示すようなエクストラネットにおいては、印刷の途中でプリンタにオペレータ操作が必要な印刷不可状態(紙なし、紙ジャム、トナーエンド、その他障害)が生じて印刷が停止した場合であっても、ホストコンピュータ側ではプリンタ側の状況を把握することができず、印刷停止状態のまま放置されてしまう事態が生じるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、印刷が停止した場合であっても印刷停止状態のまま放置されてしまう事態を回避し、印刷の信頼性を上げることができる印刷装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の印刷装置は、他の印刷装置とともにホスト装置にネットワーク接続され、前記ホスト装置から送信された印刷データおよび一連の処理命令で構成される印刷ジョブにかかる印刷処理および排紙処理を実行する印刷権を有する印刷装置において、ネットワーク接続されている前記他の印刷装置の機種情報をマージして構成情報として記憶する構成情報マージ手段と、当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置における前記排紙処理の排紙毎に通知される削除ページ情報を更新管理するページ情報更新手段と、当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置について、印刷可能かどうかの判定に用いられるステイタス情報を更新するステイタス情報更新手段と、前記ステイタス情報更新手段による更新により前記ステイタス情報が印刷不可状態になった場合、前記ステイタス情報が印刷不可状態になった装置の前記印刷権を、前記他の印刷装置に委譲するために印刷を抑制する印刷抑制手段と、前記構成情報マージ手段により記憶された前記他の印刷装置のいずれか一つに対し、印刷抑制の解除指示を送信することによって前記印刷権を譲渡する印刷抑制解除手段と、前記印刷権を譲渡された前記他の印刷装置に対し、前記印刷データを送信するとともに、前記ページ情報更新手段によって更新された最新の削除ページ情報を送信するデータ送信手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のプログラムは、他の印刷装置とともにホスト装置にネットワーク接続され、前記ホスト装置から送信された印刷データおよび一連の処理命令で構成される印刷ジョブにかかる印刷処理および排紙処理を実行する印刷権を有する印刷装置を制御するコンピュータを、ネットワーク接続されている前記他の印刷装置の機種情報をマージして構成情報として記憶する構成情報マージ手段と、当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置における前記排紙処理の排紙毎に通知される削除ページ情報を更新管理するページ情報更新手段と、当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置について、印刷可能かどうかの判定に用いられるステイタス情報を更新するステイタス情報更新手段と、前記ステイタス情報更新手段による更新により前記ステイタス情報が印刷不可状態になった場合、前記ステイタス情報が印刷不可状態になった装置の前記印刷権を、前記他の印刷装置に委譲するために印刷を抑制する印刷抑制手段と、前記構成情報マージ手段により記憶された前記他の印刷装置のいずれか一つに対し、印刷抑制の解除指示を送信することによって前記印刷権を譲渡する印刷抑制解除手段と、前記印刷権を譲渡された前記他の印刷装置に対し、前記印刷データを送信するとともに、前記ページ情報更新手段によって更新された最新の削除ページ情報を送信するデータ送信手段と、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、印刷権を保有する印刷装置において印刷不可状態が発生したと判断して他の印刷装置に対して印刷権の譲渡が発生する度に、印刷装置が印刷権を譲渡した他の印刷装置に対し印刷設定などを含む全印刷データと、予め管理されているすでに削除したページの情報とを送信することにより、印刷権を譲渡された他の印刷装置は印刷権を譲渡した印刷装置が印刷できなかった残りのページから印刷を開始することができるので、印刷が停止した場合であっても印刷停止状態のまま放置されてしまう事態を回避し、印刷の信頼性を上げることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施の一形態にかかるネットプリントシステム100のシステム構築例を示す模式図である。
【図2】図2は、ネットプリントシステムのシステム構築例を示す模式図である。
【図3】図3は、印刷サーバの構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図4は、プリンタの構成の一例を示すブロック図である。
【図5】図5は、プリンタのプリンタ代替処理にかかる機能構成を概略的に示す模式図である。
【図6】図6は、プリンタ代替処理における装置獲得処理の処理手順を示すシーケンス図である。
【図7】図7は、装置獲得処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】図8は、印刷処理の処理手順を示すシーケンス図である。
【図9】図9は、メインプリンタにおける印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は、従来のエクストラネットのシステム構築例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる印刷装置およびプログラムの最良な実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
本発明の実施の一形態を図1ないし図9に基づいて説明する。本実施の形態は印刷装置としてレーザプリンタやMFP(Multi Function Peripheral)を適用した例である。
【0012】
[1.システムの全体構成]
図1は、本発明の実施の一形態にかかるネットプリントシステム100のシステム構築例を示す模式図である。図1に示すように、本実施の形態のネットプリントシステム100は、複数の企業や事業所のイントラネットA,B、すなわちインターネット技術をベースにした社内ネットワークであるイントラネットA,Bを、インターネット網150を介して相互接続したエクストラネットを想定する。
【0013】
図1に示すように、例えばコンビニエンスストア本社内のイントラネットAは、各種のサーバコンピュータ(以下、サーバという)1にLAN(Local Area Network)等のネットワーク2を介してコンピュータやプリンタなどのクライアント3が複数台接続されたサーバクライアントシステムを想定する。このようなイントラネットAにおいては、インターネット網150と、WWW(World Wide Web)サーバなどの公開サーバ4を除く社内ネットワーク5との境界にファイアウォール6が設けられている。このファイアウォール6は、社内ネットワーク5とインターネット網150との間で出入りするパケットを監視し、決められたルールに従って、その通過を許可したり、阻止(廃棄)したりすることにより、社内ネットワーク5内のセキュリティを確保する。
【0014】
一方、例えばフランチャイズ店舗内のイントラネットBも、各種のサーバ1にLAN等のネットワーク2を介してコンピュータやプリンタなどのクライアント3が複数台接続されたサーバクライアントシステムを想定する。このようなイントラネットBにおいても、インターネット網150と、公開サーバ4を除く社内ネットワーク5との境界にファイアウォール6が設けられている。
【0015】
なお、イントラネットA,Bのネットワーク接続としては、インターネット網150に限るものではなく、専用の通信回線を用いて各イントラネットA,Bを接続するようにしても良い。
【0016】
また、ネットワーク2は有線通信に限るものではなく、無線通信(赤外線や電波等)であっても良い。また、光ファイバを用いたものであっても良い。
【0017】
図2に示すように、上述したようなネットプリントシステム100は、例えばコンビニエンスストア本社のイントラネットAが備えるサーバ1の一つである印刷サーバ11から、フランチャイズ店舗のイントラネットBが備えるクライアント3の一つであるプリンタ31に対して販促資料等の印刷処理をダイレクトに実行することができる。なお、図2に示すように、イントラネットBにおいては、同機能を有する複数のプリンタ31を備えている。図2に示す例では、イントラネットBにおいてはメインプリンタおよびサブプリンタ1,2で構成される3台のプリンタ31が接続されている。
【0018】
[2.印刷サーバの構成]
まず、イントラネットAが備える印刷サーバ11(サーバ1)について説明する。図3は、印刷サーバ11の構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、印刷サーバ11は、この印刷サーバ11の動作制御を行うCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)41を備えている。このCPU41には、CPU41が起動時に実行するプログラムや必要なデータ等を記憶するためのROM(Read Only Memory)42と、CPU41のワークエリア等を構成するためのRAM(Random Access Memory)43とが内部バス56を介して接続されている。
【0019】
さらに、CPU41には、キャラクタジェネレータ44、時計回路45、ネットワーク伝送制御部47、磁気ディスク装置48、CD−ROM装置49、表示制御部52および入力制御部55が、内部バス56を介して接続されており、これらの各要素間のデータのやりとりは、主としてこの内部バス56を介して行われる。
【0020】
キャラクタジェネレータ44は、図形文字の表示データを発生するためのものである。時計回路45は、現在日時情報を出力するためのものである。
【0021】
ネットワークインタフェース回路46は、この印刷サーバ11をLANであるネットワーク2に接続するためのものであり、ネットワーク伝送制御部47は、ネットワーク2を介して、他のサーバ1やクライアント3との間で種々のデータをやりとりするための各種所定のプロトコルスイートの通信制御処理を実行するためのものである。例えば、ネットワークインタフェース回路46は、ネットワーク2およびインターネット網150を介して他のイントラネット(ここでは、イントラネットB)が備えるクライアント3の一つであるプリンタ31を接続し、プリンタ31へ印刷データ等を送信したり、プリンタ31より印刷処理状態等を受信したりする等の動作を行う。
【0022】
磁気ディスク装置48は、OS(Operating System)、OS上で走る種々のアプリケーションプログラム、ワークデータ、ファイルデータ、画情報データなどの種々のデータを記憶するためのものである。本実施の形態においては、アプリケーションプログラムとして、印刷データ送信プログラムなどが記憶されている。CD−ROM装置49は、交換可能な記録媒体であるCD−ROM50に記憶されているデータ(種々のアプリケーションプログラム、ワークデータ、ファイルデータ、画情報データなどの種々のデータ)を読み込むためのものである。
【0023】
このような印刷サーバ11では、ユーザが電源を投入するとCPU41がROM42内のローダーというプログラムを起動させ、磁気ディスク装置48よりOSをRAM43に読み込み、このOSを起動させる。このようなOSは、ユーザの操作に応じてアプリケーションプログラムを起動したり、情報を読み込んだり、保存を行ったりする。なお、記録媒体はCD−ROM50に限るものではなく、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、CD−RW、DVD、半導体メモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体であれば良い。この場合、CD−ROM装置49を記憶媒体のデータを読み込み可能なものに変更することはいうまでもない。また、アプリケーションプログラムは、所定のOS上で動作するものに限らず、後述の各種処理の一部の実行をOSに肩代わりさせるものであってもよいし、所定のアプリケーションソフトやOSなどを構成する一群のプログラムファイルの一部として含まれているものであってもよい。
【0024】
なお、一般的には、印刷サーバ11の磁気ディスク装置48にインストールされるアプリケーションプログラムは、CD−ROM50などの記憶媒体に記録され、この記憶媒体に記録されたアプリケーションプログラムが磁気ディスク装置48にインストールされる。このため、CD−ROM50等の可搬性を有する記憶媒体も、アプリケーションプログラムを記憶する記憶媒体となり得る。さらには、アプリケーションプログラムは、例えばネットワークインタフェース回路46を介して外部から取り込まれ、磁気ディスク装置48にインストールされても良い。
【0025】
CRTなどの表示装置51は、この印刷サーバ11を操作するための画面を表示するためのものであり、表示制御部52は、表示装置51の表示内容を制御するためのものである。
【0026】
キーボード装置53は、この印刷サーバ11に対する各種の指示を種々のキー操作により行わせるためのものであり、画面指示装置54は、表示装置51の任意の点を指示する等の操作作業を行うためのもの(例えば、マウス等のポインティングデバイス)であり、入力制御部55は、キーボード装置53および画面指示装置54の入力情報を取り込む等するためのものである。
【0027】
また、印刷文書情報は、この印刷サーバ11で適宜なアプリケーションプログラムが起動され、当該アプリケーションプログラムにより作成されて磁気ディスク装置48に保存されたり、CD−ROM50に保存されているものがCD−ROM装置49により読み出されて、印刷サーバ11に取り込まれたり、ネットワーク2およびインターネット網150を介して電子メール等で受信した情報から再構築されて印刷サーバ11に取り込まれたりすることで、印刷サーバ11に保存される。
【0028】
[3.プリンタの構成]
次に、イントラネットBが備える印刷装置であるプリンタ31(クライアント3)について説明する。図4は、プリンタ31の構成の一例を示すブロック図である。図4に示すように、プリンタ31は、このプリンタ31の各部の制御処理および画像形成処理などの各種制御処理を行うプリンタコントローラ(マザーボード)61を備えている。このプリンタコントローラ61には、オペレーションパネル62、プリンタエンジン63および磁気ディスク装置64が接続されている。
【0029】
プリンタコントローラ61は、その時に設定されている制御モードおよび各イントラネットA,Bの各種サーバ1(例えば、イントラネットAの印刷サーバ11)からの制御コードに従って各イントラネットA,Bの各種サーバ1(例えば、イントラネットAの印刷サーバ11)からの印刷データを描画データに変換してプリンタエンジン63へ出力する制御機構の総称で次のようなモジュールで構成される。プリンタコントローラ61には、制御の主体となるCPU81、RAM82、このプリンタ31に固有な各種の情報を記憶するためのROM83、電源のON/OFFに関わらずデータを保持できる不揮発性メモリであるNV−RAM84、印刷の時に使用される数種の書体を保持しているメモリであるFont ROM85、エンジンI/F86、オペレーションパネル62を接続するパネルI/F87、磁気ディスク装置64を接続するディスクI/F88、ネットワークI/F89などで構成されている。
【0030】
RAM82は、CPU81のワーク領域、各イントラネットA,Bの各種サーバ1からのデータ受信バッファ、また処理後のイメージ展開領域に使用される。
【0031】
エンジンI/F86は、プリンタコントローラ61とプリンタエンジン63への制御信号とプリンタエンジン63からプリンタコントローラ61へのステイタス信号を送受信するI/Fである。
【0032】
ネットワークI/F89は、ネットワーク2を介して各イントラネットA,Bの各種サーバ1(例えば、印刷サーバ11)からプリンタ31への制御信号およびデータと、プリンタ31からのステイタス信号とを送受信するためのものである。
【0033】
オペレーションパネル62は、プリンタ31のステイタス表示およびモード、印刷条件を変更することができるスイッチ部である。
【0034】
プリンタエンジン63は、電子写真プロセス方式により画像を形成して記録用紙に記録出力するためのものである。より詳細には、プリンタコントローラ61からの描画データと制御情報に基づいて、感光体上に静電作像し給紙部より転写紙を給紙して画像を形成する。
【0035】
磁気ディスク装置64は、種々の印刷文書情報を格納したり、それ以外の適宜な情報ファイル等を保存したりするためのものである。加えて、磁気ディスク装置64には、OS(Operating System)、OS上で走る種々のアプリケーションプログラムが記憶されている。本実施の形態においては、アプリケーションプログラムとして、印刷処理プログラムなどが記憶されている。
【0036】
このような構成のプリンタ31は、サーバ1などと同様に、ユーザが電源を投入すると磁気ディスク装置64よりOSをRAM82に読み込み、このOSを起動させる。このようにして起動したOSは、ユーザの操作に応じてアプリケーションプログラムを起動したり、情報を読み込んだり、保存を行ったりする。また、アプリケーションプログラムは、所定のOS上で動作するものに限らず、後述の各種処理の一部の実行をOSに肩代わりさせるものであってもよいし、所定のアプリケーションプログラムやOSなどを構成する一群のプログラムファイルの一部として含まれているものであってもよい。
【0037】
なお、一般的には、プリンタ31の磁気ディスク装置64にインストールされるアプリケーションプログラムは、CD−ROM(図示せず)などの記憶媒体に記録され、この記憶媒体に記録されたアプリケーションプログラムが磁気ディスク装置64にインストールされる。このため、CD−ROM等の可搬性を有する記憶媒体も、アプリケーションプログラムを記憶する記憶媒体となり得る。さらには、アプリケーションプログラムは、例えばネットワークI/F89を介して外部から取り込まれ、磁気ディスク装置64にインストールされても良い。
【0038】
なお、本実施の形態のプリンタ31は、磁気ディスク装置64を備えるものとしたが、これに限るものではなく、半導体メモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体にアプリケーションプログラムやOSなどを格納するようにしても良い。
【0039】
[4.プリンタ代替処理]
次に、印刷サーバ11のCPU41およびプリンタ31のCPU81が実行する各種の演算処理のうち、本実施の形態のネットプリントシステム100が発揮する特徴的な処理であるプリンタ代替処理について以下に説明する。
【0040】
ネットプリントシステム100においては、インターネット網150を介してイントラネットAのホスト装置である印刷サーバ11からイントラネットBのプリンタ31に印刷データが入力されると、イントラネットBのプリンタ31側で、入力された印刷データについての描画データがプリンタコントローラ61の制御情報に基づいて生成され、生成された描画データがプリンタコントローラ61からプリンタエンジン63に渡され、プリンタスタート命令がかかり印刷が開始されることになる。ここで、イントラネットBのプリンタ31において、印刷の途中にもかかわらず、印刷処理が実行されているプリンタ31にオペレータ操作が必要な印刷不可状態(紙なし、紙ジャム、トナーエンド、その他障害)が発生することがある。そこで、本実施の形態のネットプリントシステム100においては、印刷処理が実行されているプリンタ31にオペレータ操作が必要な印刷不可状態が発生した場合には、印刷処理の対象を他のプリンタ31に切り替えることによって、印刷されていないデータをネットワーク接続された他のプリンタ31で継続して印刷することを可能にし、イントラネットBにおいて印刷停止状態にならないようにする、というプリンタ代替処理を実行するようにしたものである。
【0041】
印刷サーバ11は、アプリケーションプログラムとして、印刷データ送信プログラムを磁気ディスク装置48に記憶している。すなわち、印刷サーバ11は、OS上で動作する印刷データ送信プログラムが起動すると、この印刷データ送信プログラムに従い、CPU41が各部を制御してプリンタ代替処理の一部となる印刷データ送信処理を実行する。
【0042】
プリンタ31は、アプリケーションプログラムとして、印刷処理プログラムを磁気ディスク装置64に記憶している。すなわち、プリンタ31は、OS上で動作する印刷処理プログラムが起動すると、この印刷データ送信プログラムに従い、CPU81が各部を制御してプリンタ代替処理の一部となる印刷処理を実行する。
【0043】
ここで、図5はプリンタ31のプリンタ代替処理にかかる機能構成を概略的に示す模式図である。図5に示すように、プリンタ31は、プリンタ31にネットワーク接続される印刷サーバ11および他のプリンタ31から送られる種々の要求を受信、および要求の送信を行う送受信処理部101と、プリンタエンジン63からの印刷イベントならびにステイタス変化イベントの受信、およびプリンタエンジン63への印刷指示を行うエンジン処理部102と、送受信処理部101およびエンジン処理部102からの情報を元に印刷制御処理を行う印刷制御部103と、を備えている。
【0044】
送受信処理部101は、印刷サーバ11およびネットワーク接続された他のプリンタ31との間でセッションを成立させる(接続を確立させる)セッション成立手段として機能する。
【0045】
ここで、印刷制御部103について詳述する。図5に示すように、印刷制御部103は、通信処理部104と、装置獲得処理部105と、ステイタス管理処理部106と、印刷処理部107と、ページ削除処理部108と、を備えている。
【0046】
通信処理部104は、要求送信手段および要求受信手段として機能するものであって、送受信処理部101およびエンジン処理部102からのデータや要求の受信、印刷制御部103の内部からのデータや要求の送信を行う。
【0047】
装置獲得処理部105は、構成情報マージ手段として機能するものであって、ネットワーク接続されている機種情報(例えば、IPアドレス)を獲得するとともに、獲得した機種情報をマージする。マージされた接続機種情報は、例えば磁気ディスク装置64に形成される構成情報テーブルに構成情報として記憶される。
【0048】
ステイタス管理処理部106は、ステイタス情報更新手段として機能するものであって、エンジン処理部102から送られるステイタス情報を元に機器としての最新ステイタス情報を保持する。この最新ステイタス情報は、外部または自身からの問い合わせに対し、印刷可能かどうかの判定に用いられる。
【0049】
印刷処理部107は、印刷抑制手段および印刷抑制解除手段として機能するものであって、印刷権を他のプリンタ31に委譲するために印刷を抑制する印刷抑制処理や、印刷権を取得した際の印刷抑制の解除指示を送信することによって印刷権を譲渡する処理となる印刷抑制解除処理を行う。
【0050】
ページ削除処理部108は、ページ情報更新手段として機能するものであって、自身もしくは連結されるサブプリンタから送られてくるページ削除通知をインクリメントする形で蓄積した削除ページ情報を、メインプリンタにおいて更新管理する。削除ページ情報は、例えば磁気ディスク装置64に形成されるページ情報テーブルに記憶される。
【0051】
また、通信処理部104は、データ送信手段としても機能するものであって、印刷権を譲渡されたサブプリンタに対し、印刷サーバ11からメインプリンタに送られた印刷データを送信するとともに、ページ情報更新手段によって更新された最新の削除ページ情報を送信する。
【0052】
次いで、印刷制御部103により実現されるプリンタ代替処理の主要な処理について、シーン毎に具体的に説明する。
【0053】
ここで、図6はプリンタ代替処理における装置獲得処理の処理手順を示すシーケンス図、図7は装置獲得処理の流れを示すフローチャートである。なお、図6においては、「メインプリンタ」となるプリンタ31a、「サブプリンタ1」となるプリンタ31b、「サブプリンタ2」となるプリンタ31cの3台がネットワーク接続されているイントラネットBを想定している。
【0054】
なお、「メインプリンタ」、「サブプリンタ1」、「サブプリンタ2」は便宜上設定されたものであって、プリンタ31aとプリンタ31bとプリンタ31cとは、同じ実装のプリンタである。上位ホストである印刷サーバ11から印刷データがネットワークを通じて最初に入力されるプリンタ31であって初期状態で印刷権を保有しているプリンタ31をメインプリンタと呼び、メインプリンタよりも下位に位置するプリンタ31をサブプリンタと呼ぶ。
【0055】
また、「メインプリンタ」はホスト装置から一意に決定されるが、「サブプリンタ1」、「サブプリンタ2」については固定的に決められるものであっても良いし、その順序が処理毎に変わるものであっても良い。例えば、「サブプリンタ1」、「サブプリンタ2」のような順序については、プリンタの記憶部(ROM83、NV−RAM84、磁気ディスク装置64など)に、次にデータを送るプリンタのIPアドレスを記憶しておき、データ転送の際に記憶されたIPアドレスを参照することで実現可能である。
【0056】
プリンタ31は、印刷サーバ11およびネットワーク接続された他のプリンタ31との間でのセッション成立の後(連結形成の後)に、装置獲得処理を実行する。
【0057】
印刷サーバ11から装置獲得要求通知を受信したプリンタがメインプリンタであるプリンタ31aである場合には(ステップS1,ステップS2のYes,ステップS3のYes)、サブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)に対し、装置獲得要求を送信する(ステップS4)。一方、印刷サーバ11から装置獲得要求通知を受信したサブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)は(ステップS1,ステップS2のYes,ステップS3のNo)、要求元であるメインプリンタ(プリンタ31a)に対し、プリンタの情報(例えば、IPアドレス)を装置獲得応答として返信する(ステップS10)。なお、自身がメインプリンタか否かの判定は、装置獲得要求通知の送信元が印刷サーバ11か否かで判断することができる。また、サブプリンタについての構成情報テーブルを有しているか否かによっても、自身がメインプリンタか否かを判断することができる。
【0058】
サブプリンタに対する装置獲得要求の送信後(ステップS4)、サブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)が獲得できた場合には(ステップS5のYes)、メインプリンタ(プリンタ31a)は、サブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)を構成情報テーブルに構成情報として設定するとともに(ステップS6)、サブプリンタに対して印刷抑制要求を送信する(ステップS7)。なお、サブプリンタが獲得できない場合には(ステップS5のNo)、ステップS6およびステップS7の処理は行なわない。
【0059】
以上のようなステップS4〜S7の処理は、全てのサブプリンタについて処理するまで(ステップS8のYes)、繰り返される。
【0060】
全てのサブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)についてステップS4〜S7の処理が実行されると(ステップS8のYes)、メインプリンタ(プリンタ31a)は、要求元である印刷サーバ11に対し、プリンタの情報(例えば、IPアドレス)を装置獲得応答として返信する(ステップS9)。
【0061】
また、サブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)は、メインプリンタ(プリンタ31a)から印刷抑制要求通知を受信すると(ステップS1,ステップS2のNo)、自身の印刷処理の抑制設定を行う(ステップS11)。
【0062】
以上のようにして装置獲得処理が終了すると、印刷権を保有しているメインプリンタ(プリンタ31a)において印刷処理が実行される。図8の印刷処理の処理手順を示すシーケンス図、および図9のメインプリンタにおける印刷処理の流れを示すフローチャートを参照して、印刷処理を説明する。
【0063】
印刷権を保有しているメインプリンタ(プリンタ31a)は、印刷サーバ11からデータ送信通知を受信すると、印刷処理および排紙処理を行う。メインプリンタ(プリンタ31a)は、印刷後の排紙処理を行うと、自身に対してページ削除通知を送信し、通知された削除ページでページ情報テーブルのページ情報を更新する。
【0064】
ここで、印刷処理中のメインプリンタ(プリンタ31a)において、オペレータ操作が必要な印刷不可状態(紙なし、紙ジャム、トナーエンド、その他障害)が発生した場合における代替印刷機能について説明する。
【0065】
自身もしくはサブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)におけるステイタス通知によるステイタス情報の更新の結果、メインプリンタ(プリンタ31a)もしくはサブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)において印刷不可状態(例えば、紙なし)が発生したと判断した場合(ステップS21のYes,ステップS22,ステップS23のNo)、メインプリンタ(プリンタ31a)は、自身もしくはサブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)に対して印刷抑制通知を送信して印刷処理の抑制設定を行って印刷権を保有しないものとして自身もしくはサブプリンタ(プリンタ31bおよびプリンタ31c)を印刷停止とする(ステップS24)。また、メインプリンタ(プリンタ31a)は、構成情報テーブルに構成情報として印刷待ちのサブプリンタが記憶されている場合には(ステップS25のYes)、対象とした印刷待ちサブプリンタ(プリンタ31b)に対し、全ての印刷データを送信し(ステップS26)、ページ情報テーブルに記憶された全ての削除ページ情報を送信し(ステップS27)、印刷抑制解除指示を送信して印刷権を譲渡する(ステップS28)。
【0066】
なお、構成情報テーブルに構成情報として印刷待ちのサブプリンタが記憶されていない場合には(ステップS25のNo)、メインプリンタ(プリンタ31a)は、印刷結果を印刷サーバ11に送信する(ステップS29)。
【0067】
上述した処理により、印刷権を譲渡されたサブプリンタ(プリンタ31b)は、メインプリンタ(プリンタ31a)が印刷できなかった残りのページ(印刷データから削除ページを除いたページ)から印刷を開始することとなる。すなわち、メインプリンタは、印刷権が譲渡されたサブプリンタに対し、オペレータ操作が必要な印刷不可状態が発生する度に印刷データを送信することになる。このとき、メインプリンタがサブプリンタに対して印刷されていないページの印刷データのみを送信するのではなく、全ての印刷データと全ての削除ページ情報を送信するのは、全印刷データ内に印刷に必要な情報(主にジョブの先頭に含まれるエミュレーション切り替え指定やユーザによるプリンタドライバの設定)が含まれるためである。これらの情報を、印刷を実行するプリンタが正確に認識することによってはじめて、プリンタはユーザが意図した印刷を実行することが可能となる。
【0068】
このようにして印刷権を譲渡されたサブプリンタ(プリンタ31b)において、印刷後の排紙処理が行われると、サブプリンタ(プリンタ31b)からメインプリンタ(プリンタ31a)に対してページ削除通知が送信される。メインプリンタ(プリンタ31a)は、ページ削除通知を受信すると(ステップS21のNo)、通知された削除ページでページ情報テーブルの削除ページ情報を更新し(ステップS30)、印刷終了判定を行う(ステップS31)。印刷終了の判定手法として、メインプリンタ(プリンタ31a)は、全印刷ページ数と全削除ページ数が等しい場合には印刷が終了したと判断し(ステップS31のYes)、印刷サーバ11に対して印刷結果を通知する(ステップS29)。また、メインプリンタ(プリンタ31a)は、全印刷ページ数と全削除ページ数が異なる場合には(ステップS31のNo)、印刷未終了と判断する。
【0069】
なお、印刷権を譲渡されたサブプリンタ(プリンタ31b)において印刷不可状態(例えば、紙なし)が発生したと判断した場合(ステップS21のYes,ステップS22,ステップS23のNo)、メインプリンタ(プリンタ31a)は、サブプリンタ(プリンタ31b)に対して印刷抑制通知を送信して印刷処理の抑制設定を行って印刷権を保有しないものとして自身もしくはサブプリンタ(プリンタ31b)を印刷停止とする(ステップS24)。その後、メインプリンタ(プリンタ31a)は、印刷待ちサブプリンタ(プリンタ31c)に対し、全ての印刷データを送信し(ステップS26)、ページ情報テーブルに記憶された全ての削除ページ情報を送信し(ステップS27)、印刷抑制解除指示を送信して印刷権を譲渡する(ステップS28)。
【0070】
このように本実施の形態によれば、メインプリンタで削除ページを管理しておき、印刷権を保有するプリンタにおいて印刷不可状態が発生したと判断して他のプリンタに対して印刷権の譲渡が発生する度に、メインプリンタが印刷権を譲渡したサブプリンタに対し印刷設定などを含む全印刷データとすでに削除したページの情報を送信することにより、サブプリンタはメインプリンタが印刷できなかった残りのページから印刷を開始することが可能となるので、印刷が停止した場合であっても印刷停止状態のまま放置されてしまう事態を回避し、印刷の信頼性を上げることができる。
【0071】
なお、メインプリンタとサブプリンタ間の回線が何らかの理由で切断されるといった場合などを想定し、メインプリンタは一定時間以上サブプリンタからのステイタス通知あるいはページ削除通知が無い場合は対処としているサブプリンタをエラー発生機とみなし、印刷権の譲渡処理を行うといったことも考えられる。
【符号の説明】
【0072】
31 印刷装置
104 データ送信手段
105 構成情報マージ手段
106 ステイタス情報更新手段
107 印刷抑制手段、印刷抑制解除手段
108 ページ情報更新手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開2003−271347号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の印刷装置とともにホスト装置にネットワーク接続され、前記ホスト装置から送信された印刷データおよび一連の処理命令で構成される印刷ジョブにかかる印刷処理および排紙処理を実行する印刷権を有する印刷装置において、
ネットワーク接続されている前記他の印刷装置の機種情報をマージして構成情報として記憶する構成情報マージ手段と、
当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置における前記排紙処理の排紙毎に通知される削除ページ情報を更新管理するページ情報更新手段と、
当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置について、印刷可能かどうかの判定に用いられるステイタス情報を更新するステイタス情報更新手段と、
前記ステイタス情報更新手段による更新により前記ステイタス情報が印刷不可状態になった場合、前記ステイタス情報が印刷不可状態になった装置の前記印刷権を、前記他の印刷装置に委譲するために印刷を抑制する印刷抑制手段と、
前記構成情報マージ手段により記憶された前記他の印刷装置のいずれか一つに対し、印刷抑制の解除指示を送信することによって前記印刷権を譲渡する印刷抑制解除手段と、
前記印刷権を譲渡された前記他の印刷装置に対し、前記印刷データを送信するとともに、前記ページ情報更新手段によって更新された最新の削除ページ情報を送信するデータ送信手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ステイタス情報更新手段は、一定時間以上前記他の印刷装置からの前記ステイタス情報の通知あるいは前記削除ページ情報の通知が無い場合も、前記ステイタス情報を印刷不可状態に更新する、
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
他の印刷装置とともにホスト装置にネットワーク接続され、前記ホスト装置から送信された印刷データおよび一連の処理命令で構成される印刷ジョブにかかる印刷処理および排紙処理を実行する印刷権を有する印刷装置を制御するコンピュータを、
ネットワーク接続されている前記他の印刷装置の機種情報をマージして構成情報として記憶する構成情報マージ手段と、
当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置における前記排紙処理の排紙毎に通知される削除ページ情報を更新管理するページ情報更新手段と、
当該装置もしくはネットワーク接続されている前記他の印刷装置について、印刷可能かどうかの判定に用いられるステイタス情報を更新するステイタス情報更新手段と、
前記ステイタス情報更新手段による更新により前記ステイタス情報が印刷不可状態になった場合、前記ステイタス情報が印刷不可状態になった装置の前記印刷権を、前記他の印刷装置に委譲するために印刷を抑制する印刷抑制手段と、
前記構成情報マージ手段により記憶された前記他の印刷装置のいずれか一つに対し、印刷抑制の解除指示を送信することによって前記印刷権を譲渡する印刷抑制解除手段と、
前記印刷権を譲渡された前記他の印刷装置に対し、前記印刷データを送信するとともに、前記ページ情報更新手段によって更新された最新の削除ページ情報を送信するデータ送信手段と、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−194890(P2010−194890A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42931(P2009−42931)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】