説明

印刷装置および印刷方法

【課題】記録媒体における同一領域に複数回の走査を行う記録方式にあっても印刷中断前後の画像に不整合が生じることがなく、しかも印刷を再開するために必要とされる画像データ量を抑えることが可能な印刷装置および印刷方法を提供する。
【解決手段】印刷装置3には、記録ヘッドにより印刷を実行させるための画像データを保持する画像データ保持手段34と、保持手段34における画像の保持・開放を制御する制御手段5と、を備える。制御手段5は、印刷動作が中断してから印刷動作が再開されるまで、中断前に完成されていない画像の画像データを保持させてその画像データを記録動作の再開時に使用させる。また、再開された印刷動作によって完成された画像に対応する画像データは開放させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に対して記録ヘッドを走査させることによって画像を印刷する印刷装置および印刷方法に関し、詳しくは、中断した印刷を再開させるための制御機能を備えた印刷装置および印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
記録媒体を走査する記録ヘッドによって、記録媒体に順次ドットを形成して画像を形成する記録装置にあっては、用紙切れなどを始めとする不測の事態による印刷の中断が生じることがある。この場合、中断した後の印刷再開動作として、従来は、印刷が中断された要因を解消した後、ジョブのページ先頭や中断した印刷ページの先頭を指定して印刷を行う方法がある。この印刷再開方法によれば、画像の1ページ内に切り貼りによる繋ぎ目を作ることなく、見栄えの良い画像を得ることができる。但し、上記の印刷再開方法にあっては、ジョブやページの先頭から再印刷する必要があるため、記録媒体やインクなどが無駄になり、ランニングコストの増大を招くこととる。特に大判プリンタにおいては、1ページ分の画像の長さが1メートルを越える場合があり、これを最初から印刷し直す場合には、用紙とインクに多大な無駄が生じる。このような印刷の中断による影響は、無人の自動印刷などを行う場合に特に大きなものとなる。そこで、上記のような無駄を回避するため、印刷が中断した場合には、中断要因を取り除いた後、中断位置から再び印刷を開始することも行われている。
【0003】
このような技術として、特許文献1には、印刷装置が動作できなくなる異常を自動検知した場合に印刷を停止し、中断要因を解消した後に、リカバリ対象ページ内にてユーザが指定したリカバリ位置から印刷を再開する技術が開示されている。これによれば、リカバリ対象ページ内においてユーザが指定したリカバリ位置から再印刷を開始することにより、リカバリ制御による消耗品の節約を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−018568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術では、リカバリ処理を実現するには再開が予想される範囲に該当する画像データを全て保持している必要がある。つまり、ジョブないしはページの多くのデータを保持しなければならず、大量のメモリ資源が必要となるという課題がある。特に大判プリンタにおいては処理するデータが大きくなるため、上記の問題はより顕著なものとなる。
【0006】
また、記録媒体における同一の領域に対して記録ヘッドを複数回走査させる、いわゆるマルチパス印刷方式では、印刷中断時の前後で画像の整合性がとれないなどの問題も発生する。すなわち、マルチパス印刷においては、印刷が中断されることにより記録媒体に所定回数の走査が完了している領域と完了していない領域とが存在することによる。また、印刷中断後には、所定回数の走査が完了していない領域のデータが削除されてしまうため、印刷再開時に走査回数の不足を補うことができず、上記のような画像の不整合を解消することはできなかった。
【0007】
本発明は、記録媒体における同一領域に複数回の走査を行う記録方式にあっても印刷中断前後の画像に不整合が生じることがなく、しかも印刷を再開するために必要とされる画像データ量を抑えることが可能な印刷装置および印刷方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0009】
すなわち、本発明の形態は、記録媒体における同一の領域に記録ヘッドを複数回走査させることにより、前記記録媒体の同一の領域に対して完成した画像を印刷する印刷装置であって、前記記録ヘッドにより印刷を実行させるための画像データを保持する画像データ保持手段と、前記保持手段における画像の保持・開放を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、印刷動作が中断してから印刷動作が再開されるまで、前記中断前に完成されていない画像に対応する画像データを保持させて当該画像データを前記記録動作の再開時に使用させると共に、再開された印刷動作により完成された画像に対応する画像データを開放させることを特徴とする印刷装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、記録媒体における同一領域に複数回の走査を行う記録方式にあっても印刷中断前後の画像に不整合が生じることがなく、しかも印刷を再開するために必要とされる画像データ量を抑えることが可能になる。このため、従来のような印刷中断前後の画像の不整合による画像品質の劣化や、記録媒体などの消耗品の無駄を低減することができ、ランニングコストを向上させることができる。また、少ないメモリ資源を用いることが可能となり、製造コストの低減を図ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態における印刷装置およびこれを備えた印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態における印刷装置の制御系の概略構成を示す図である。
【図3】本実施形態における用紙切れ発生時の印刷動作を示す図である。
【図4】用紙切れによる印刷中断が生じた場合における記録媒体上の領域を示す図である。
【図5】4パス印刷時の印刷再開動作を示す図である。
【図6】1回目の走査におけるバッファの制御方法を示す図である。
【図7】4回目の走査におけるバッファの制御方法を示す図である。
【図8】印刷動作におけるバッファの制御方法を示すフローチャートである。
【図9】印刷再開処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を図面と共に詳細に説明する。
【0013】
図1は本実施形態における印刷装置およびこれを備えた印刷システムの全体構成を示すブロック図である。図1において、本実施形態における印刷システムは、ネットワーク2に接続されたパーソナルコンピュータ等の情報処理装置1と、同じくネットワーク2に接続されたインクジェット方式を採る印刷装置3とによって構成されている。ここに示す印刷装置は、記録媒体を一定量ずつ間欠的に搬送すると共に、インクを吐出するノズルを複数配列してなる記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と交差する方向(例えば直交する方向)へと走査(主走査)させながら記録を行うものとなっている。この種の記録装置は、一般にシリアル型のインクジェットプリンタと呼ばれる。また、本実施形態では、記録媒体の同一の領域に対して、記録ヘッドに配列されているノズル列の中の異なるノズル群を用いて複数回の走査を行うことによって、その同一の領域における画像を完成させるいわゆるマルチパス記録方式を実施可能となっている。さらに、この印刷装置は、幅広のロール紙に記録を行う大判プリンタとしての構成を有する。但し、本発明は本実施形態に示す大判プリンタに限らず、熱転写方式、熱昇華方式などをはじめとするその他のドットプリンタにも適用可能である。また、ネットワーク2には複数の情報処理装置1を接続することも可能である。
【0014】
図2は、本実施形態における印刷装置の制御系の概略構成を示す図である。
ここに示す制御系は、外部接続インターフェース(I/F)4を介してネットワーク2に接続される制御部5を備える。制御部(制御手段)5は印刷装置3の制御および外部からのコマンド解析/実行を行う。ROM6には制御部5にて印刷装置3を動作させるために必要なプログラムなどが格納されている。RAM7には外部からネットワーク2を介して受信した画像データを格納する画像メモリとしての機能と、制御動作によって生成されるデータを一時的に格納するテンポラリ領域としての機能を持つ。また、不揮発メモリ8には電源OFF後も保持し続けたい設定値や種々のパラメータが保存されている。ユーザインターフェース(I/F)9は、LCD/LED/操作キーなどで構成されており、印刷装置3へのユーザからの指示を制御部に入力する。ストレージ10はハードディスク(HDD)などに該当し、外部から受付けたデータを保持しておく機能を持つ。
【0015】
また、制御部5には画像処理部も含まれおり、ROM6に存在するプログラムに基づいて画像データの処理がなされる。印刷ヘッド17からのインクの吐出は、制御部5が記録ヘッド内の電気熱変換体の駆動データ(2値の画像データ)および駆動制御信号(ヒートパルス信号)をヘッドドライバ16に供給することにより行われる。制御部5は記録ヘッドを搭載可能なキャリッジユニットを主走査方向に沿って移動させるためのキャリッジモータ15の駆動を、モータドライバ12を介して制御する。また、制御部5は、記録媒体を副走査方向に搬送するための紙送りモータ14の駆動を、モータドライバ11を介して制御する。さらに制御部5は、後述するように、光学センサ13を利用して記録位置の調整処理(レジストレーション処理)を実行する。
【0016】
また、制御部5は画像処理部とエンジン制御部にて構成される。画像処理部は外部から取得した画像データを、予め定めたプログラムに従って処理すると共に、処理した画像データをRAM7に存在する画像メモリへと格納し、展開処理(伸張処理)などを実施する。エンジン制御部はこの展開処理を経た画像データに基づき印刷装置の各ユニットを制御し、印刷動作を実現する。なお、この制御部5によって本発明の特定手段が構成されている。
【0017】
次に、本実施形態における印刷装置によって行われる印刷動作を説明する。
【0018】
図3は、本実施形態における用紙切れ発生時の印刷動作を示す図である。前述のように本実施形態では、画像を記録するための記録媒体としてロール紙を用いている。このため、画像の記録中にロール紙が全て消費され、用紙切れが生じることがある。この場合、用紙切れを不図示の紙検出センサが検出し、印刷動作を停止させる。この場合、印刷が行われた記録媒体は、印刷の進捗状況によって第1の領域と、第2の領域に大別することができる。第1の領域は、印刷が完了しているため用紙切れの影響を受けない領域19である。第2の領域は、印刷が未完了のため用紙切れの影響を受ける領域20である。この第1の領域19と第2の領域20との境界は、用紙切れ発生ポイント18から一意に決定される。
【0019】
また、用紙切れの影響を受ける領域20は、前述のマルチパス記録を実施している場合、紙切れが生じた際のパス数によって印刷の進捗状況が異なる。すなわち、第2の領域20の中には、記録ヘッドによって走査された回数が異なる領域が形成される。
【0020】
以下、記録媒体の同一の領域を記録ヘッドによって4回主走査を行うことによって画像を完成させる、いわゆる4パス印刷動作を例に採り、紙切れにより印刷が中断した後の再動作を詳細に説明する。
【0021】
この4パス動作では、記録ヘッドのノズル列を4つのノズル群に分け、各ノズル群の幅に相当する距離だけ記録媒体をノズルの配列方向と直交する方向に沿って搬送すると共に、異なるノズル群によって同一領域を4回主走査することで画像を完成させる。このため、用紙切れによる印刷動作の中断時に4回の主走査が終了していない領域は画像が未完成な状態にある未完成領域20(図3に示す第2の領域20)となる。
【0022】
図4は、用紙切れによる印刷動作の中断時における記録媒体上の領域23a,23b,23cおよび24,25,26,27を示す図である。これらの領域は記録媒体の搬送方向(Y方向)において同一の長さを有する。各領域の長さは、記録ヘッドのノズル列を4等分してなる4つのノズル群それぞれの長さに相当する。従って、4パス記録時には、各ノズル群が各ノズル領域を1回ずつ走査することとなる。以下の説明において領域23a,23b,23cおよび24,25,26,27をノズル群によって走査される走査領域と称す。
【0023】
図4では走査領域27に対して1回の走査が行われた時点で紙切れが生じ、記録動作が中断された状態を示している。ここで、走査領域23a,23b,23cは、記録ヘッドの4回の走査によって画像が完成している領域を示している。また領域24は4回目の走査が行われている間に紙切れが生じ画像が未完成となっている可能性がある領域を示している。さらに領域25は3回の主走査によって画像が75パーセント完成している領域を、領域26は2回の主走査によって画像が50パーセント完成している領域を、領域27は1回の主走査で画像が25パーセント完成している領域をそれぞれ示している。また、図中、(1),(2),(3),(4),(5),(6),(7)は、各走査領域23a,23b,23c,24,25,26,27に記録すべき画像のデータ(画像データ)をそれぞれ示している。また、画像データ(1)〜(7)は、同一領域を走査する回数n(ここではn=4(nは1以上の整数))分の画像データを示している。従って、例えば画像データ(4)の1回分の走査に対応する画像データは、(画像データ(4))×1/nのデータとなっている。
【0024】
本実施形態では印刷動作の途中で紙切れが発生した場合、印刷動作を再開させるために、印刷が停止した主走査を含めて数回前の走査からデータを保持するようになっている。すなわち、図4に示す状況では、印刷未完了の走査領域(図4の24〜27)に対応する画像データをRAM7に設けられたバッファ(画像データ保持手段)34に保持するようになっている。
【0025】
ここで、印刷再開後の記録動作を説明する。
【0026】
印刷再開時には図5に示すように、領域24〜27に対応する画像データを利用して順次、縁なし印刷を行う。この画像データは、RAM7に設けられたバッファ34に保持されたデータである。また、走査領域27の後に続く走査領域に対応する画像データについては、通常の画像データ生成処理を実施し、生成した画像データに基づいて各走査領域に対して印刷動作を実行していく。この制御によれば、用紙切れによって印刷が突然中断されたとしても、用紙補給後に未完成領域24から印刷を再開することで適正な画像を形成することができる。すなわち、中断前に走査領域24〜27に対して記録された画像と、中断後に走査領域30〜33に記録された画像21とを重ね合わせることで、中断前に完成された第1の領域19に形成された画像に対して領域21に完成された画像を連続させることができる。
【0027】
また、印刷再開時に領域21に対して使用される画像データは、中断前に領域20に対して使用される画像データと同一であるため、画質としては中断が発生しなかった場合と同等の出力結果を得ることが可能となる。なお、領域21に対する縁なし印刷は、用紙上端29からはみ出た領域28にのみインクを吐出させないようにすることで実現することができる。
【0028】
次に、上記印刷制御におけるバッファ34の制御方法について図6および図7を参照しつつ説明する。なお、以下の説明においても、4回の走査で画像を完成させる4パス記録を例に採り説明する。
【0029】
図6は1回目の走査の画像データがバッファ34に保持されている状態を示している。すなわち、走査領域23a,23b,23c,24に対応する画像データ(1),(2),(3),(4)が保持されている。また、図7は、バッファ34に画像データ35〜38が保持されている状態を示している。これらの画像データ35〜38は、図5に示す走査領域24〜27に対応している。
【0030】
同様に2回目から5回目までの走査に対応する画像データは、図7に示すようにバッファ34に保持される。この際、バッファ34を開放せずに5スキャン目までの画像データを保持させ続けると、図7のようにバッファ34の全ての領域に画像データが格納されることとなる。そのため、バッファ34に保持されている画像データの中で、印刷が完了している画像に対応する画像データ40の全部ないしは一部をバッファ34から開放しない限り、次の6走査目のデータを保持させることはできない。
【0031】
印刷完了済みの画像に対応する画像データ40を開放するための条件は、1走査目のデータが含まれる走査領域23と24の印刷が完全に終了することである。例えば、走査領域24から印刷を再開させる際には、走査領域24への画像形成時に使用される画像データ35を利用する1走査目から4走査目を印刷し直す必要がある。つまり、印刷再開時には1走査目から4走査目までの画像データが必要となるため、この段階では、1走査目で参照するデータ(35、40)をまだ開放することができない。従って、本実施形態では、印刷再開時に必要となる画像データ35を開放することなくバッファ34に保持し続けることにより印刷再開を可能にしている。また走査領域24への印刷が完成することにより初めて1走査目で使用する画像データのみ開放することが可能となる。
【0032】
用紙切れなどの影響により図7における4走査目の印刷が実施できなかった場合を想定すると、走査領域24の印刷中に動作が停止している状況となる。この状況における印刷の進捗状況は図4に示した状況に合致する。この場合、走査領域24の印刷が完成していないため、画像データ35を開放することができない。つまり図4の状況においては、印刷が完了しているにも関わらず印刷完了済みの画像データ40を開放することができないこととなる。また、この状況では、6走査目のデータをバッファ34に保持させることもできない。しかし、本実施形態では用紙切れなどの中断要因が解除された場合には、画像が完成していない領域24から印刷を再開させるようになっており、その際にバッファ34に保持されている1走査目の画像データを使用する。これによりバッファ34の画像データ40を開放することが可能となり、開放させた領域には6走査目のデータを保持させることができ、その後の印刷動作を進めることが可能になる。
【0033】
次に、印刷動作時におけるバッファ34の制御方法を図8に示すフローチャートに従って説明する。本実施形態において、紙切れが生じていない通常の印刷フローでは、バッファ34内が一杯になるまで各走査領域に対応する画像データを内部バッファに保持させる。すなわち、バッファ34内に空領域が存在するか否かの判断(ステップS101)と、空領域が存在すると判断された場合には走査データを保持させる動作(ステップS102)を行う。
【0034】
またステップS101で内部バッファ34が一杯になったと判断された場合には、印刷が完了している走査領域が存在するか否かを判断する(ステップS103)。ここで、印刷が完了している走査領域が存在する場合には、その走査領域に対応する画像データを開放可能な画像データとして判断し、その画像データをバッファ34から開放する(S104)。以上の動作により、図7に示すように5回目の走査まで印刷が完了した場合には、バッファ34の先頭の領域に保持されている画像データ、すなわち1回目の走査でしか使用しない画像データ(1)を開放する(ステップS104)。つまり、N回目の走査に使用する画像データを保持するバッファ34内の先頭領域は、(N+パス数(n))回目の走査の印刷が完了次第、その走査に使用した画像データを開放する。例えば、4回目の走査に使用する画像データが先頭領域35に保持されている場合、その画像データは8回目の走査が完了したときに初めて開放可能となる。以上のステップS101〜S104の処理を処理すべきデータがなくなるまで繰り返す(ステップS107)。
【0035】
一方、ステップS105において用紙切れなどにより印刷が中断したと判断された場合には上記の処理とは異なり、印刷再開処理を行う(S106)。以下、図9のフローチャートに基づき本実施形態において実施される印刷再開処理を説明する。
【0036】
用紙補充などにより印刷停止要因が解除されると(ステップS201)、ステップS202〜S205に示す印刷再開処理が開始される。ステップ202では、現在印刷が停止した走査から印刷が完了していない走査領域(未完了領域)を算出し、算出した未完了領域から印刷を再開すべき位置を特定する。図5においては、30〜33が未完了領域である。次いで、特定した再開位置から再開後の1回目の走査において使用する画像データを生成し、これをバッファ34に保持させる(ステップS203)。なお、図6に示す画像データ(1)〜(4)が1回目の走査に使用する画像データに該当する。
【0037】
次に、1回目の走査を実施する際の記録ヘッドの位置(図7の35)と、印刷再開時の用紙の先端(図5の29)とが一致するように用紙の頭出しを実施する(S204)。この後、既に印刷が完了している走査領域(図7の19)を印刷しないようにして、印刷を再開することにより縁なし印刷を行う(S205)。この印刷が完了している走査領域に対して印刷を行わないようにする方法としては、印刷が完了している画像のデータ(図7の40)を白データに置き換える方法がある。また、印刷が完了している領域に対応する記録ヘッドのノズル群におけるインク吐出を促すトリガとなるヒートパルスなどによって制限する方法などもある。また、後者のインク吐出を制限する方法は画像データには依存しないため、内部バッファに保持されている画像データ40がどのようなデータであっても影響はない。従って、この場合には、バッファ34に保持されている画像データ40を先に開放することが可能であり、後続の走査におけるデータの生成およびバッファへの保持を進めておくことも可能となる。これにより、更にバッファ使用効率を向上させることが可能である。
【0038】
なお、以上の説明では、縁なし印刷によって印刷を再開させる場合を示したが、本発明は縁なし印刷で印刷を再開させるものに限定されない。例えば、ユーザの要望に従って印刷動作中断前に完成された画像と、印刷動作中断後に印刷される画像とをつなぎ合わせるための糊代を付加することも可能である。この糊代は再開時の印刷動作によって記録される画像データの位置を制御し、再開時の記録媒体の先端より記録媒体の搬送方向上流側に印刷すべき画像の位置をずらすことで形成でき、その幅も前記画像の位置を調整することによって制御可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、印刷を再開させる位置を未完成領域以降に定めた場合を例に採り説明したが、印刷再開位置を未完性領域直前の完成済み領域内に定めることも可能である。
【0040】
また、上記実施形態では、記録媒体における同一領域を記録ヘッドの異なるノズル群を用いて複数回走査させることにより、前記同一の領域における画像を完成させる印刷方式を採る場合を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、記録媒体における同一領域を記録ヘッドの同一のノズル群を用いて複数回走査させることにより、画像を完成させる印刷方式を用いる場合にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 情報処理装置
2 ネットワーク
3印刷装置
5 制御部
6 ROM
7 RAM
8 不揮発メモリ
17 記録ヘッド
34 バッファ
40 印刷が完了画像の画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体における同一の領域に記録ヘッドを複数回走査させることにより、前記記録媒体の同一の領域に対して完成した画像を印刷する印刷装置であって、
前記記録ヘッドにより印刷を実行させるための画像データを保持する画像データ保持手段と、
前記保持手段における画像の保持・開放を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、印刷動作が中断してから印刷動作が再開されるまで、前記中断前に完成されていない画像に対応する画像データを保持させて当該画像データを前記記録動作の再開時に使用させると共に、再開された印刷動作により完成された画像に対応する画像データを開放させることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記中断時に完成されていない画像に対応する画像データを特定し、前記印刷動作が開始されるまで前記特定された画像データを保持させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記記録ヘッドが前記同一の領域に対して画像を完成させるための走査の回数によって、前記中断時に完成されていない画像に対応する画像データを特定することを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御手段は、印刷再開時に使用する画像データを制御することにより、前記中断前の印刷動作で印刷された画像と、再開した印刷動作によって記録された画像をつなぎ合わせるための糊代を制御可能であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドは、画像データに応じてインクを吐出する複数のノズルを配列したノズル列を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
記録媒体における同一の領域に記録ヘッドを複数回走査させることにより、前記記録媒体の同一の領域に対して完成した画像を印刷する印刷方法であって、
前記記録ヘッドにより印刷を実行させるための画像データを保持するデータ保持工程と、
前記データ保持工程における画像の保持、開放を制御する制御工程と、を備え、
前記制御工程は、印刷動作が中断されてから印刷動作が再開されるまで、前記中断前に完成されていない画像に対応する画像データを保持させて当該画像データを前記記録動作の再開時に使用させると共に、再開された印刷動作により完成された画像に対応する画像データを開放させることを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−20527(P2012−20527A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160999(P2010−160999)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】