説明

印刷装置および印刷方法

【課題】基材のうち、インクが印刷されていない非印刷部分の、該基材の長手方向の長さを短く抑える。
【解決手段】ブランケットロール13に転写された供給凹部11内のインクが、ブランケットロール13の回転移動に伴い移送ロール14に対向する位置に到達するまでの間は、移送ロール14とブランケットロール13とを互いに離間させ、かつ移送ロール14による基材Wの移送を停止しておき、ブランケットロール13上のインクが、ブランケットロール13の回転移動に伴い移送ロール14に対向する位置に到達したときに、移送ロール14による基材Wの移送を開始させ、かつ移送ロール14およびブランケットロール13を相対的に接近移動させて基材Wを介してこれらの両ロール14、13を互いに当接させることでインクを基材Wに印刷させる制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置および印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、長尺状の基材にその長手方向に間隔をあけてインクを印刷する印刷装置として、例えば下記特許文献1に示されるような、インクが供給される供給凹部が形成されたグラビアロールと、供給凹部内から転写されたインクを基材に印刷するブランケットロールと、基材をその厚さ方向に挟むブランケットロールの反対側に配設された押圧ロールと、を備える構成が知られている。
そしてこの印刷装置では、ブランケットロールとグラビアロールとが互いに逆向きに回転しながら当接し合い、かつブランケットロールと押圧ロールとが互いに逆向きに回転しながら基材を介して当接し合った状態を保ったまま基材にインクを印刷する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−289983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の印刷装置では、基材のうち、インクが印刷されていない非印刷部分の、該基材の長手方向の長さを短く抑えることに改善の余地があった。
なお例えば、インクがハードコート材溶液であって、ハードコートフィルムを製造する装置の場合には、供給凹部が、グラビアロールの外周面上を全周にわたって連続して延在し、ハードコート材溶液を基材にその長手方向に沿って連続して印刷するため、基材において前記非印刷部分の長手方向の長さを短く抑えるといった課題が生ずることはない。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、基材のうち、インクが印刷されていない非印刷部分の、該基材の長手方向の長さを短く抑えることができる印刷装置および印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の印刷装置は、インクが供給される供給凹部が形成されたグラビアロールと、前記供給凹部内から転写されたインクを長尺状の基材に印刷するブランケットロールと、前記基材をその長手方向に移送する移送ロールと、を備え、前記基材を、ブランケットロールと移送ロールとの間に挟み込んだ状態で移送しつつ、該基材に、前記ブランケットロール上のインクを印刷する印刷装置であって、前記移送ロールおよびブランケットロールは、相対的に互いに接離可能に配設され、前記ブランケットロールに転写された前記供給凹部内のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達するまでの間は、前記移送ロールとブランケットロールとを互いに離間させ、かつ前記移送ロールによる基材の移送を停止しておき、前記ブランケットロール上のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達したときに、前記移送ロールによる前記基材の移送を開始させ、かつ前記移送ロールおよびブランケットロールを相対的に接近移動させて前記基材を介してこれらの両ロールを互いに当接させることで前記インクを基材に印刷させる制御部を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の印刷方法は、長尺状の基材にその長手方向に間隔をあけてインクを印刷する印刷方法であって、本発明の印刷装置を用い、前記ブランケットロールに転写された前記供給凹部内のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達するまでの間は、前記移送ロールとブランケットロールとを互いに離間させ、かつ前記移送ロールによる基材の移送を停止しておき、前記ブランケットロール上のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達したときに、前記移送ロールによる前記基材の移送を開始させ、かつ前記移送ロールおよびブランケットロールを相対的に接近移動させて前記基材を介してこれらの両ロールを互いに当接させることで前記インクを基材に印刷することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ブランケットロールに転写された前記供給凹部内のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い移送ロールに対向する位置に到達するまでの間は、移送ロールとブランケットロールとを互いに離間させ、かつ移送ロールによる基材の移送を停止しておき、ブランケットロール上のインクが、移送ロールに対向する位置に到達したときに、移送ロールによる基材の移送を開始させ、かつ移送ロールおよびブランケットロールを相対的に接近移動させて基材を介してこれらの両ロールを互いに当接させるので、ブランケットロールの外周面のうち、インクが転写されていない空白部分が移送ロールに対向している間は、基材を移送せずにブランケットロールから離反させておくことが可能になり、基材のうち、インクが印刷されていない非印刷部分の、該基材の長手方向の長さを短く抑えることができる。
【0009】
ここで、前記移送ロールをその軸線回りに回転可能に支持する回転手段がサーボモータとされ、前記制御部は、前記移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに接近移動し、かつ前記移送ロールによる前記基材の移送を開始したときから、前記移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに離間移動し、かつ前記移送ロールによる前記基材の移送を停止した後、再度、前記移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに接近移動し、かつ前記移送ロールによる前記基材の移送を開始するまでの間の、前記回転手段の回転移動量が設定範囲内に保たれるように、該回転手段の駆動を制御してもよい。
【0010】
この場合、移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに接近移動し、かつ移送ロールによる基材の移送を開始したとき、つまり印刷を開始したときから、移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに離間移動し、かつ移送ロールによる基材の移送を停止した後、つまり印刷が完了した後、再度、印刷を開始するまでの間の、前記回転手段の回転移動量を設定範囲内に保つことが可能になり、基材にインクを印刷する長手方向のピッチ間隔を同等に保つことができる。
【0011】
また、前記移送ロールは、前記ブランケットロールに対して接離可能に配設されるとともに、前記基材を前記ブランケットロール側に向けて突となるように屈曲させつつ該基材に転がり接触し、前記基材を前記移送ロール側に向けて送り出す送り出し装置と、前記移送ロールと、の間に配設され、前記基材を屈曲させつつ該基材に転がり接触するダンサーロールと、該ダンサーロールを、前記基材に対して進退可能に支持する支持手段と、前記基材のうち、前記送り出し装置と前記移送ロールとの間に位置する部分に生ずる該基材の長手方向の張力を測定する張力測定手段と、を備え、前記制御部は、前記張力測定手段からの測定値に基づいて前記張力が設定範囲内に保たれるように、前記支持手段による前記ダンサーロールの前記基材側に向けた進退移動量を調整してもよい。
【0012】
この場合、基材を屈曲させつつ該基材に転がり接触する移送ロールが、ブランケットロールに対して接離可能に配設されているので、移送ロールをブランケットロールに対して接近移動させると、基材に生ずる長手方向の張力が増大し、後退移動させると基材に生ずる長手方向の張力が減少するが、この張力が設定範囲を超えようとしたときに、ダンサーロールを基材に対して進退移動させることにより、基材に生ずる張力を調整し設定範囲内に保つことが可能になる。
したがって、例えば基材や移送ロールに傷が付いたり、基材が変形したりする等、基材や移送ロールが損傷するのを抑制することができる。
【0013】
さらに、前記移送ロールとブランケットロールとの軸間距離を測定する距離測定手段を備え、前記制御部は、前記軸間距離が設定範囲内に保たれるように、前記移送ロールおよびブランケットロールを相対的に互いに接近若しくは離反させてもよい。
【0014】
この場合、例えば、移送ロール若しくはブランケットロールを交換する等のメンテナンス時に、移送ロールとブランケットロールとの軸間距離が設定範囲外になったとしても、これらの両ロールを相対的に互いに接近若しくは離反させることで、この距離を設定範囲内に収めることが可能になり、メンテナンスの高効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る印刷装置および印刷方法によれば、基材のうち、インクが印刷されていない非印刷部分の、該基材の長手方向の長さを短く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第1実施形態として示した印刷装置の全体図であって、グラビアロールの供給凹部内からインクをブランケットロールに転写する転写工程を示す概略図である。
【図2】図1に示す印刷装置であって、ブランケットロールから基材にインクを印刷する印刷工程を示す概略図である。
【図3】本発明に係る第2実施形態として示した印刷装置の要部概略図である。
【図4】本発明に係る第3実施形態として示した印刷装置の要部概略図である。
【図5】本発明に係る第4実施形態として示した印刷装置であって、転写工程を示す要部概略図である。
【図6】図5に示す印刷装置であって、印刷工程を示す要部概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る印刷装置の一実施形態を、図1および図2を参照しながら説明する。
本実施形態の印刷装置1は、インクが供給される供給凹部11が外周面に形成されたグラビアロール12と、供給凹部11内から転写されたインクを長尺状の基材Wに印刷するブランケットロール13と、基材Wをその長手方向に移送する移送ロール14と、を備え、基材Wを、ブランケットロール13と移送ロール14との間に挟み込んだ状態で移送しつつ、基材Wに、ブランケットロール13上のインクを印刷する構成となっている。
【0018】
グラビアロール12、ブランケットロール13および移送ロール14それぞれの回転軸線O1、O2、O3は、水平方向に沿って互いに平行に延在している。
以下、グラビアロール12の回転軸線O1を第1軸線O1といい、ブランケットロール13の回転軸線O2を第2軸線O2といい、移送ロール14の回転軸線O3を第3軸線O3という。
グラビアロール12は、ブランケットロール13の鉛直方向の直上方に配設され、移送ロール14は、グラビアロール12より鉛直方向の下方で、かつグラビアロール12およびブランケットロール13から水平方向にずれた位置に配設されている。グラビアロール12、ブランケットロール13および移送ロール14それぞれの外径は互いに同等になっている。
【0019】
グラビアロール12には、その外周面側から外側に向かうに従い漸次、鉛直方向の上方に向けて延びるインク貯留壁21が配設されている。
インク貯留壁21の上面は、グラビアロール12の第1軸線O1回りの回転方向の前方を向く斜め上方を向いている。グラビアロール12の外周面のうち、インク貯留壁21の上面に水平方向で対向する部分と、インク貯留壁21の上面と、の間に、インクが貯留されている。
そして、グラビアロール12の第1軸線O1回りの回転移動に伴い、供給凹部11が、インク貯留壁21の上面に水平方向で対向したとき、つまり貯留されているインク内を通過したときに、この供給凹部11内にインクが貯留される。
【0020】
またグラビアロール12において、インク貯留壁21よりも前記回転方向の前方に位置し、かつブランケットロール13と当接する部分よりも前記回転方向の後方に位置する部分には、供給凹部11内のインクのうち、供給凹部11から外側にはみ出した部分を掻き取る掻き取り板22が配設されている。
供給凹部11の第1軸線O1回りに沿う大きさは、グラビアロール12の外周面の周長よりも短くなっている。
グラビアロール12を第1軸線O1回りに回転可能に支持する第1回転手段はサーボモータとなっている。
【0021】
ブランケットロール13は、剛体ロールと、剛体ロールを形成する材質よりも軟らかい軟材質で形成されるとともに剛体ロールの外周面に全周にわたって配設されたシート材と、を備えている。
ブランケットロール13は、例えば流体圧シリンダ若しくはモータ等の第1駆動手段23により鉛直方向に移動可能に支持されている。ブランケットロール13は、第1駆動手段23によりグラビアロール12に対してこのグラビアロール12の鉛直方向の下方から進退するように支持されている。また、ブランケットロール13が第1駆動手段23により下降端位置に位置したときに、第2軸線O2、および移送ロール14の第3軸線O3それぞれの鉛直方向の位置が同等になる。
ブランケットロール13を第2軸線O2回りに回転可能に支持する第2回転手段はサーボモータとなっている。
【0022】
移送ロール14は、基材Wに転がり接触しながら、基材Wを鉛直方向の下方から上方に向けて移送する。基材Wは、移送ロール14の外周面のうち、ブランケットロール13側を向く部分に接触しながら移送される。また、移送ロール14は、基材Wをブランケットロール13側に向けて突となるように屈曲させながら移送する。
移送ロール14およびブランケットロール13は、相対的に互いに接離可能に配設されている。図示の例では、移送ロール14が、例えば流体圧シリンダ若しくはモータ等の第2駆動手段29によりブランケットロール13に対して水平方向に進退可能に支持されている。
移送ロール14を第3軸線O3回りに回転可能に支持する第3回転手段はサーボモータとなっている。
【0023】
本実施形態では、この印刷装置1はさらに、基材Wを移送ロール14側に向けて送り出す送り出し装置24と、移送ロール14と、の間に配設され、基材Wを屈曲させつつ該基材Wに転がり接触するダンサーロール25と、ダンサーロール25を、基材Wに対して進退可能に支持する支持手段26と、基材Wのうち、送り出し装置24と移送ロール14との間に位置する部分に生ずる該基材Wの長手方向の張力を測定する張力測定手段27と、を備えている。
【0024】
ダンサーロール25は、基材Wに鉛直方向の上方から転がり接触する。基材Wは、ダンサーロール25により、鉛直方向の下方に向けて突となるように屈曲された状態で移送される。
支持手段26は、ダンサーロール25を鉛直方向に移動可能に支持している。支持手段26は例えば流体圧シリンダ若しくはモータ等となっている。支持手段26はダンサーロール25の下方に配設されている。
張力測定手段27は、ダンサーロール25と移送ロール14との間に配設されている。
【0025】
さらに本実施形態では、移送ロール14とブランケットロール13との軸間距離を測定する距離測定手段28が配設されている。
距離測定手段28は、移送ロール14を第3軸線O3回りに回転可能に支持し、かつ第2駆動手段29により移送ロール14とともにブランケットロール13に対して進退移動させられる図示されない第1躯体、およびブランケットロール13を第2軸線O2回りに回転可能に支持する図示されない第2躯体のうちのいずれか一方に装着され、他方に向けてレーザー光を照射する本体部28aと、他方に装着され、本体部28aからのレーザー光を本体部28aに向けて反射させる反射板28bと、を備えている。
図示の例では、本体部28aが第1躯体に装着され、反射板28bが第2躯体に装着されている。なお、反射板28bを配設せずに、本体部28aからのレーザー光を、第2躯体の外表面から直接反射させるようにしてもよい。
【0026】
そして、移送ロール14とブランケットロール13との軸間距離が設定範囲内に保たれるように、移送ロール14およびブランケットロール13を相対的に互いに接近若しくは離反させる制御部を備えている。
例えば、ブランケットロール13若しくは移送ロール14を交換したとき等に、移送ロール14とブランケットロール13との軸間距離を距離測定手段28により測定し、この際の測定値を本体部28aから制御部に送信し、制御部が、この測定値が予め設定されていた範囲内にあるか否かを判定し、設定範囲外にあると判定した場合には、制御部から第2駆動手段29に信号を送信し、第2駆動手段29を駆動させることにより、移送ロール14をブランケットロール13に対して接近若しくは離反させ、前記軸間距離を設定範囲内に収める。
【0027】
さらに本実施形態では、前記制御部は、ブランケットロール13に転写された供給凹部11内のインクが、ブランケットロール13の第2軸線O2回りの回転移動に伴い移送ロール14に対向する位置に到達するまでの間は、移送ロール14とブランケットロール13とを互いに離間させ、かつ移送ロール14による基材Wの移送を停止しておき、ブランケットロール13上のインクが、ブランケットロール13の回転移動に伴い移送ロール14に対向する位置に到達したときに、移送ロール14による基材Wの移送を開始させ、かつ移送ロール14およびブランケットロール13を相対的に互いに接近移動させて基材Wを介してこれらの両ロール14、13を互いに当接させることでインクを基材Wに印刷させるようになっている。
【0028】
なお本実施形態では、ブランケットロール13に供給凹部11内のインクが転写されたときから、このインクが、ブランケットロール13の回転移動に伴い、移送ロール14に対向する位置に到達するまでの間に、ブランケットロール13を第1駆動手段23により下降移動させ、ブランケットロール13の第2軸線O2、および移送ロール14の第3軸線O3それぞれの鉛直方向の位置を同等にしておく。
【0029】
制御部には、グラビアロール12を第1軸線O1回りに回転させる第1回転手段、およびブランケットロール13を第2軸線O2回りに回転させる第2回転手段から逐次、回転移動量のデータが送信されており、これらのデータに基づいて、ブランケットロール13に転写された供給凹部11内のインクが、移送ロール14に対向する位置に到達したか否かを判定する。
【0030】
制御部には、移送ロール14を第3軸線O3回りに回転させる第3回転手段から回転移動量のデータが送信されている。
そして、この制御部は、移送ロール14およびブランケットロール13が相対的に互いに接近移動し、かつ移送ロール14による基材Wの移送を開始したとき、つまり印刷を開始したときから、移送ロール14およびブランケットロール13が相対的に互いに離間移動し、かつ移送ロール14による基材Wの移送を停止した後、つまり印刷が完了した後、再度、印刷を開始するまでの間の、第3回転手段の回転移動量が設定範囲内に保たれるように、第3回転手段の駆動を制御するようになっている。
【0031】
例えば、制御部は、印刷を開始したときから完了したときまでの間の、第3回転手段の回転移動量が、予め設定されていた範囲外にあると判定した場合には、次に印刷を再開するまでの間に、制御部から第3回転手段に信号を送信し、第3回転手段を駆動させて回転移動量を設定範囲内に収める。
なおこの際、第3回転手段は、移送ロール14を第3軸線O3回りに、基材Wを移送ロール14側から送り出し装置24側に移送するような逆回転、若しくはこれとは反対の、基材Wを送り出し装置24側から移送ロール14側に移送するような正回転をさせる。
【0032】
さらに制御部には、張力測定手段27から測定値が送信され、該制御部は、この測定値が予め設定されていた範囲内にあるか否かを判定し、設定範囲外にあると判定した場合には、制御部から支持手段26に信号を送信し、支持手段26を駆動させることにより、ダンサーロール25を鉛直方向に移動させ、基材Wに加わる張力を調整し設定範囲内に収める。
【0033】
次に、以上のように構成された印刷装置1の作用について説明する。
【0034】
グラビアロール12とブランケットロール13とを互いに当接させた状態で、これらの両ロール12、13をそれぞれ回転軸線O1、O2回りに互いに逆方向に回転させる。そして、グラビアロール12の供給凹部11がインク内を通過したときに供給凹部11内にインクが満たされる。その後、供給凹部11が掻き取り板22を通過することで、供給凹部11内のインクのうち、供給凹部11から外側にはみ出した部分が掻き取られた後に、この供給凹部11が、グラビアロール12のうちブランケットロール13と当接している下端位置に到達し、供給凹部11内のインクがブランケットロール13上に転写される。
【0035】
その後、ブランケットロール13の回転移動に伴い、このロール13上のインクが、移送ロール14に対向する位置に到達したとき、若しくは到達するまでの間に、第1駆動手段23によりブランケットロール13を下降させる。そして、ブランケットロール13上のインクが移送ロール14に対向する位置に到達したときに、移送ロール14を、第2駆動手段29によりブランケットロール13に向けて前進移動させるとともに第3回転手段により第3軸線O3回りに回転させ、印刷を開始する。なおこの際、ブランケットロール13および移送ロール14をそれぞれの回転軸線O2、O3回りに互いに逆方向に回転させる。
【0036】
次に、ブランケットロール13上のインクの基材Wへの印刷が完了したときに、移送ロール14を第2駆動手段29によりブランケットロール13から後退移動させるとともに第3軸線O3回りの回転を停止させ、かつ第1駆動手段23によりブランケットロール13を上昇させグラビアロール12に当接させる。
このとき、前述のように印刷を開始したときからの、第3回転手段の回転移動量が、設定範囲外にある場合には、次に印刷を開始するときまでに、制御部から第3回転手段に信号を送信し、第3回転手段を駆動させてその回転移動量を設定範囲内に収める。
以降は前述と同様の操作を繰り返す。
【0037】
ここで以上の過程において、移送ロール14のブランケットロール13に対する進退移動に伴い、張力測定手段27による測定値が設定範囲外になったときに、支持手段26を駆動させダンサーロール25を基材Wに対して進退移動させることで、この基材Wに加わる張力を調整し設定範囲内に収める。
【0038】
以上説明したように、本実施形態による印刷装置1によれば、ブランケットロール13に転写された供給凹部11内のインクが、ブランケットロール13の回転移動に伴い移送ロール14に対向する位置に到達するまでの間は、移送ロール14とブランケットロール13とを互いに離間させ、かつ移送ロール14による基材Wの移送を停止しておき、ブランケットロール13上のインクが、移送ロール14に対向する位置に到達したときに、移送ロール14による基材Wの移送を開始させ、かつ移送ロール14およびブランケットロール13を相対的に接近移動させて基材Wを介してこれらの両ロール14、13を互いに当接させるので、ブランケットロール13の外周面のうち、インクが転写されていない空白部分が移送ロール14に対向している間は、基材Wを移送せずにブランケットロール13から離反させておくことが可能になり、基材Wのうち、インクが印刷されていない非印刷部分の、該基材Wの長手方向の長さを短く抑えることができる。
【0039】
また、印刷を開始したときから印刷が完了した後、再度、印刷を開始するまでの間の、第3回転手段の回転移動量を設定範囲内に保つことが可能になることから、基材Wにインクを印刷する長手方向のピッチ間隔を同等に保つことができる。
さらに、基材Wを屈曲させつつ該基材Wに転がり接触する移送ロール14が、ブランケットロール13に対して接離可能に配設されているので、移送ロール14をブランケットロール13に対して接近移動させると、基材Wに生ずる長手方向の張力が増大し、後退移動させると基材Wに生ずる長手方向の張力が減少するが、この張力が設定範囲を超えようとしたときに、ダンサーロール25を基材Wに対して進退移動させることにより、基材Wに生ずる張力を調整し設定範囲内に保つことが可能になる。
したがって、例えば基材Wや移送ロール14に傷が付いたり、基材Wが変形したりする等、基材Wや移送ロール14が損傷するのを抑制することができる。
【0040】
また、移送ロール14とブランケットロール13との軸間距離が設定範囲内に保たれるように、移送ロール14およびブランケットロール13を相対的に互いに接近若しくは離反させるようになっているので、例えば、移送ロール14若しくはブランケットロール13を交換する等のメンテナンス時に、移送ロール14とブランケットロール13との軸間距離が設定範囲外になったとしても、これらの両ロール14、13を相対的に互いに接近若しくは離反させることで、この距離を設定範囲内に収めることが可能になり、メンテナンスの高効率化を図ることができる。
【0041】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0042】
例えば前記実施形態では、グラビアロール12にインク貯留壁21を配設し、グラビアロール12の外周面とインク貯留壁21の上面との間にインクを貯留したが、図3および図4に示されるようなインク貯留槽31を配設し、このインク貯留槽31内のインクを、図3に示されるようなディスペンサ32、あるいは図4に示されるようなダイコート33を用いて、インクをグラビアロール12の外周面に向けて吐出し供給凹部11内に供給するようにしてもよい。
【0043】
また、前記実施形態に代えて例えば、図5および図6に示されるように、水平方向に沿ってグラビアロール12、ブランケットロール13および移送ロール14をこの順に配設してもよい。
図示の例では、ブランケットロール13が、グラビアロール12と移送ロール14との間を、第3駆動手段34により水平方向に移動可能に配設されていて、グラビアロール12と当接しているときには、移送ロール14との間に水平方向の隙間が配設され、移送ロール14と基材Wを介して当接しているときには、グラビアロール12との間に水平方向の隙間が設けられている。
また、距離測定手段28の本体部28aは、移送ロール14を第3軸線O3回りに回転可能に支持する図示されない第3躯体に装着され、距離測定手段28の反射板28bは、ブランケットロール13を第2軸線O2回りに回転可能に支持し、かつ第3駆動手段34によりブランケットロール13とともに水平方向に移動させられる図示されない第4躯体に装着されている。
【0044】
このように構成された印刷装置2の作用について説明する。
【0045】
グラビアロール12とブランケットロール13とを互いに当接させた状態で、これらの両ロール12、13をそれぞれ回転軸線O1、O2回りに互いに逆方向に回転させる。そして、グラビアロール12の供給凹部11がインク内を通過したときに供給凹部11内にインクが満たされる。その後、供給凹部11が掻き取り板22を通過することで、供給凹部11内のインクのうち、供給凹部11から外側にはみ出した部分が掻き取られた後に、この供給凹部11が、グラビアロール12のうちブランケットロール13と当接している位置に到達し、供給凹部11内のインクがブランケットロール13上に転写される。
【0046】
そして、ブランケットロール13の回転移動に伴い、このロール13上のインクが移送ロール14に対向する位置に到達したときに、ブランケットロール13を第3駆動手段34により移送ロール14に向けて前進移動させるとともに、移送ロール14を第3回転手段により第3軸線O3回りに回転させ、印刷を開始する。
その後、ブランケットロール13上のインクの基材Wへの印刷が完了したときに、ブランケットロール13を第3駆動手段34により移送ロール14から離間させてグラビアロール12に当接させるとともに、移送ロール14の第3軸線O3回りの回転を停止させる。
このとき、前述のように印刷を開始したときからの、第3回転手段の回転移動量が、設定範囲外にある場合には、次に印刷を開始するときまでに、制御部から第3回転手段に信号を送信し、第3回転手段を駆動させて回転移動量を設定範囲内に収める。
以降は前述と同様の操作を繰り返す。
【0047】
なお、グラビアロール12、ブランケットロール13および移送ロール14の相対的な配設位置は、これらの形態に限らず、例えば鉛直方向等に沿ってグラビアロール12、ブランケットロール13および移送ロール14をこの順に配設したり、あるいはこれら3つのロール12〜14のうちの1つだけを並べる方向を異ならせたりする等適宜変更してもよい。
【0048】
また、ブランケットロール13に対して接離可能に支持されたクリーニングロールを配設し、このクリーニングロールをブランケットロール13に当接させた状態で両ロールを回転させることで、ブランケットロール13の外周面に付着した汚れを除去してもよい。
さらに、ブランケットロール13の外側に乾燥手段を配設し、ブランケットロール13上のインクを、移送ロール14と対向する位置に到達するまでの間に、乾燥手段により乾燥してもよい。
【0049】
また前記実施形態では、グラビアロール12とブランケットロール13とを互いに接離可能に配設したが、これらの両ロール12、13は常に当接させておいてもよい。
さらに、移送ロール14の第3軸線O3回りの回転を停止した状態で、グラビアロール12の供給凹部11内から、ブランケットロール13の外周面にその周方向に間隔をあけた複数個所にインクを転写した後に、ブランケットロール13と移送ロール14とを基材Wを介して当接させ、かつこれらの両ロール13、14を回転させることにより、ブランケットロール13上の複数個所のインクを連続して基材Wに印刷するようにしてもよい。
【0050】
すなわちまず、グラビアロール12を第1軸線O1回りに連続して回転させた状態で、供給凹部11がブランケットロール13に対向したときに、ブランケットロール13を、第2軸線O2回りに回転させ、かつグラビアロール12に向けて接近移動させ該ロール12に当接させることにより、ブランケットロール13に供給凹部11内のインクを転写し、その後、ブランケットロール13をグラビアロール12から離間移動させ、かつ第2軸線O2回りの回転を停止しておく。そして再度、供給凹部11がブランケットロール13に対向したときに、前述と同様にして供給凹部11内のインクをブランケットロール13に転写する。
以上の工程を繰り返すことによって、ブランケットロール13の外周面に、その周方向に間隔をあけた複数個所にインクを転写する。
そして、ブランケットロール13上の複数個所のインクのうちの一つが、移送ロール14に対向する位置に到達したときに、ブランケットロール13および移送ロール14を相対的に互いに接近移動させ、かつこれらの両ロール13、14を回転させて、ブランケットロール13上の複数個所のインクを連続して順次基材Wに印刷する。
【0051】
さらに、基材Wは、例えばリチウムイオン電池等に使用されるフィルム等であってもよいし、インクは、例えば電極部材等であってもよい。
また、グラビアロール12、ブランケットロール13および移送ロール14それぞれの回転軸線O1、O2、O3は、水平方向に限らず例えば鉛直方向など何れの方向に延在させてもよい。
さらに、送り出し装置24、ダンサーロール25、支持手段26、張力測定手段27および距離測定手段28は配設しなくてもよい。
【0052】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
基材のうち、インクが印刷されていない非印刷部分の、該基材の長手方向の長さを短く抑えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1、2印刷装置
11 供給凹部
12 グラビアロール
13 ブランケットロール
14 移送ロール
24 送り出し装置
25 ダンサーロール
26 支持手段
27 張力測定手段
28 距離測定手段
W 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクが供給される供給凹部が形成されたグラビアロールと、
前記供給凹部内から転写されたインクを長尺状の基材に印刷するブランケットロールと、
前記基材をその長手方向に移送する移送ロールと、
を備え、
前記基材を、ブランケットロールと移送ロールとの間に挟み込んだ状態で移送しつつ、該基材に、前記ブランケットロール上のインクを印刷する印刷装置であって、
前記移送ロールおよびブランケットロールは、相対的に互いに接離可能に配設され、
前記ブランケットロールに転写された前記供給凹部内のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達するまでの間は、前記移送ロールとブランケットロールとを互いに離間させ、かつ前記移送ロールによる基材の移送を停止しておき、
前記ブランケットロール上のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達したときに、前記移送ロールによる前記基材の移送を開始させ、かつ前記移送ロールおよびブランケットロールを相対的に接近移動させて前記基材を介してこれらの両ロールを互いに当接させることで前記インクを基材に印刷させる制御部を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置であって、
前記移送ロールをその軸線回りに回転可能に支持する回転手段がサーボモータとされ、
前記制御部は、
前記移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに接近移動し、かつ前記移送ロールによる前記基材の移送を開始したときから、
前記移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに離間移動し、かつ前記移送ロールによる前記基材の移送を停止した後、
再度、前記移送ロールおよびブランケットロールが相対的に互いに接近移動し、かつ前記移送ロールによる前記基材の移送を開始するまでの間の、前記回転手段の回転移動量が設定範囲内に保たれるように、該回転手段の駆動を制御することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の印刷装置であって、
前記移送ロールは、前記ブランケットロールに対して接離可能に配設されるとともに、前記基材を前記ブランケットロール側に向けて突となるように屈曲させつつ該基材に転がり接触し、
前記基材を前記移送ロール側に向けて送り出す送り出し装置と、前記移送ロールと、の間に配設され、前記基材を屈曲させつつ該基材に転がり接触するダンサーロールと、
該ダンサーロールを、前記基材に対して進退可能に支持する支持手段と、
前記基材のうち、前記送り出し装置と前記移送ロールとの間に位置する部分に生ずる該基材の長手方向の張力を測定する張力測定手段と、を備え、
前記制御部は、前記張力測定手段からの測定値に基づいて前記張力が設定範囲内に保たれるように、前記支持手段による前記ダンサーロールの前記基材側に向けた進退移動量を調整することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷装置であって、
前記移送ロールとブランケットロールとの軸間距離を測定する距離測定手段を備え、
前記制御部は、前記軸間距離が設定範囲内に保たれるように、前記移送ロールおよびブランケットロールを相対的に互いに接近若しくは離反させることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
長尺状の基材にその長手方向に間隔をあけてインクを印刷する印刷方法であって、
請求項1記載の印刷装置を用い、
前記ブランケットロールに転写された前記供給凹部内のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達するまでの間は、前記移送ロールとブランケットロールとを互いに離間させ、かつ前記移送ロールによる基材の移送を停止しておき、
前記ブランケットロール上のインクが、該ブランケットロールの回転移動に伴い前記移送ロールに対向する位置に到達したときに、前記移送ロールによる前記基材の移送を開始させ、かつ前記移送ロールおよびブランケットロールを相対的に接近移動させて前記基材を介してこれらの両ロールを互いに当接させることで前記インクを基材に印刷することを特徴とする印刷方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−240304(P2012−240304A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112504(P2011−112504)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】