説明

印刷装置

【課題】バーコード印刷において適切な種類の用紙にバーコードを印刷する印刷装置を、提供する。
【解決手段】印刷装置10のCPU17は、バーコード印刷に係る印刷要求がホストコンピュータ20から送られてきたときにおいて(S101;NO)、その印刷要求において指定されている用紙の種類がバーコード印刷に適切な用紙の種類であった場合(S103;NO)、バーコード印刷を行い、印刷要求において指定されている用紙の種類がバーコード印刷に適さなかった場合であっても、バーコード印刷に適する種類の用紙を給紙機構14から探し出して、探し出した用紙にバーコードを印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に、関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、適切な種類の用紙が印刷時に選択されるようにするための技術が、開示されている。この技術が適用された印刷装置は、ホストコンピュータから送られてくる印刷要求の中の解像度に関する情報を取得し、その解像度に対応する品位の用紙を選択して、選択した用紙に印刷を行うようになっている。
【特許文献1】特開平07−195775号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、バーコードを印刷する機能を有する印刷装置がある。この種の印刷装置は、バーコード描画コマンドがヘッダに付加されている印刷要求がホストコンピュータから送られてくると、バーコードを印刷するようになっている。
【0004】
ところが、前述したようなバーコード印刷が行える従来の印刷装置は、バーコードを印刷する用紙の種類を選択するように構成されていない。このため、バーコードが印刷される用紙の種類によっては、トナーインクの滲みや擦れが生じてバーコードを構成する線の太さや線の間隔が変化してしまい、バーコードリーダーを用いて情報を読み取るときにそのバーコードから意図した情報を読み取ることができなくなってしまうという問題があった。
【0005】
なお、バーコードがハーフトーンで描かれたり曲線にて構成されたりすることがないことから、バーコードの印刷解像度の変化によって、バーコードリーダーの読み取り精度が変化することはない。このため、バーコード印刷では、バーコードの印刷解像度が印刷要求において指定されることがない。このような事情があるため、前述したようなバーコード印刷が行える従来の印刷装置に対しては、上記の特許文献1に開示されているような解像度に基づいて適切な種類の用紙を選択するという技術を、応用することができないこととなっている。
【0006】
本発明は、前述したような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題は、バーコード印刷において適切な種類の用紙にバーコードが印刷されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために発明された印刷装置は、用紙上に印刷を行うための印刷機構,一種類以上の用紙を前記印刷機構へ供給するための給紙機構,バーコード印刷に適する用紙の種類を特定する情報が記録された記憶部,バーコード印刷に係る印刷要求をホストコンピュータから通信手段を介して受信するための受信部,前記受信部が前記ホストコンピュータから前記印刷要求を受信すると、その印刷要求において用紙の種類を指定する情報として含まれる用紙種類情報と同じ情報が、前記記憶部に存在するか否かを判別し、その用紙種類情報と同じ情報が前記記憶部に存在していた場合に、前記給紙機構に対し、その用紙種類情報にて特定される種類の用紙を前記印刷機構へ供給させるとともに、前記印刷機構に対し、前記給紙機構から供給される用紙にその印刷要求に応じたバーコード印刷を行わせる印刷制御部を備えることを、特徴としている。
【0008】
このように、バーコード印刷に係る印刷要求がホストコンピュータから送られてきたときにおいて、その印刷要求において指定されている用紙の種類がバーコード印刷に適切な用紙の種類であった場合に、バーコード印刷を行うようにすれば、印刷されたバーコードの読み取り精度が悪化することがない。
【0009】
また、本発明の印刷装置においては、印刷要求において指定されている用紙の種類がバーコード印刷に適切な用紙の種類でなかった場合であっても、バーコード印刷に適する種類の用紙が給紙機構に存在しているときには、印刷要求において指定された種類の用紙の代わりに、その給紙機構にあるバーコード印刷に適切な用紙に対し、バーコード印刷を行うようにすることが望ましい。こうすれば、バーコードは、常に適切な種類の用紙に印刷されることとなる。
【発明の効果】
【0010】
従って、本発明によれば、バーコード印刷において適切な種類の用紙にバーコードが印刷されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明を実施するための一つの形態である印刷システムについて説明する。
【0012】
まず、本実施形態の印刷システムの構成を説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の印刷システムの構成図である。印刷システムは、印刷装置10とホストコンピュータ20とからなる。印刷装置10とホストコンピュータ20は、パラレルケーブル、ネットワークケーブル及びUSBケーブル等の通信手段を介して接続されている。
【0014】
印刷装置10は、ホストコンピュータ20から印刷要求を受信して動作する装置であり、主要な構成として、外部I/F装置11,操作表示盤12,印刷機構13,給紙機構14,DRAM15,ROM16,CPU17,EEPROM18,及び、ASIC19を、内蔵している。
【0015】
外部I/F装置11は、ホストコンピュータ20から印刷要求を受信するユニットであり、具体的には、いわゆる通信インターフェースポートである。
【0016】
操作表示盤12は、利用者からの各種の指示を受け付けたり各種の画面を表示するための機器である。具体的には、この操作表示盤12には、ボタンやタッチスクリーンが組み込まれている。
【0017】
印刷機構13は、用紙上への印刷を実際に行なう機構である。給紙機構14は、その印刷機構13に一種類以上の用紙を供給する機構であり、用紙の束を充填するための用紙カセットが着脱自在に装着されるスロットを一基以上備えている。
【0018】
DRAM15は、ホストコンピュータ20から送られてくる印刷要求の一時記憶に使用されるとともに、印刷機構13へ供給すべきビデオデータの生成に使用される揮発性メモリである。
【0019】
ROM16は、印刷装置10を制御するためのプログラムや、印刷要求に基づいてビデオデータを生成する際に使用されるフォントデータを記憶した不揮発性メモリである。
【0020】
CPU17は、ROM16内のプログラムに従って各部を統合的に制御する制御回路である。
【0021】
EEPROM18は、電源投入の有無に拘わらず印刷に係る各種の設定を記録しておくための書込可能メモリである。
【0022】
ASIC19は、各ハードウエア11〜18間のデータや指示の遣り取りを制御するインターフェース回路モジュールが組み込まれた半導体集積回路であり、各ハードウエア11〜18に接続されている。
【0023】
一方、ホストコンピュータ20は、一般的に市販されているパーソナルコンピュータであり、液晶ディスプレイ等の表示装置,キーボードやマウス等の入力装置,及び、これら表示装置や入力装置に接続される本体からなっている。具体的なハードウエア構成及びソフトウエア構成の説明及び図示は省略するが、その本体には、CPU,RAM,CDD,DVDD,通信インターフェース回路(パラレルインターフェース回路,ネットワークインターフェース回路,USBインターフェース回路など),HDDが内蔵され、HDDには、オペレーティングシステムを実現するためのプログラム群及びデータ群,利用者に様々なツールを提供する各種のアプリケーションを実現するためのプログラム群及びデータ群,印刷装置10を含む各種の周辺機器の制御を行うためのドライバプログラム群が、記録されている。そして、この図示せぬHDDに記録されているドライバプログラム群の中には、印刷要求を生成して印刷装置10へ送信する処理を行うためのプリンタドライバ21が、含まれている。
【0024】
次に、ホストコンピュータ20から印刷要求が送られてきた際に印刷装置10が実行する処理について、説明する。
【0025】
印刷装置10では、ホストコンピュータ20から印刷要求が送られてくると、ASIC19内の図示せぬDMAコントローラが印刷要求を外部I/F装置11からDRAM15に転送する。なお、ASIC19内の図示せぬDMAコントローラや外部I/F装置11は、前述した受信部に相当している。そして、DMA転送がなされた後、CPU17がROM16から所定のプログラムを読み出して処理を開始する。図2は、このときCPU17が実行する処理の流れを示す図である。
【0026】
まず、CPU17は、バーコード印刷以外の印刷の指示を受けたか否かを、判別する(S101)。具体的には、CPU17は、受信した印刷要求のヘッダにバーコード描画コマンドが含まれているか否かを、判別する。
【0027】
そして、バーコード印刷以外の印刷の指示を受けていた場合(S101;YES)、すなわち、受信した印刷要求のヘッダにバーコード描画コマンドが含まれていなかった場合、CPU17は、その印刷要求に応じた印刷を図示せぬ印刷機構に行わせる処理を開始し(S107)、図2に係る処理を終了する。
【0028】
一方、バーコード印刷の指示を受けていた場合(S101;NO)、すなわち、受信した印刷要求のヘッダにバーコード描画コマンドが含まれていた場合、CPU17は、ドラフト印刷の指示を受けたか非ドラフト印刷の指示を受けたかを、判別する(S102)。具体的には、CPU17は、受信した印刷要求のヘッダにドラフト印刷コマンドが含まれているか非ドラフト印刷コマンドが含まれているかを、判別する。なお、ドラフト印刷とは、いわゆる試し刷りを言い、非ドラフト印刷は、いわゆる清書を言う。ドラフト印刷は、印刷結果の綺麗さを求めないときに行われる印刷であるため、印刷装置10は、ドラフト印刷が指示されたときには、非ドラフト印刷に比べてトナー量をセーブしたり解像度を下げたりして、印刷を行う。
【0029】
そして、ドラフト印刷の指示を受けていた場合(S102;NO)、すなわち、印刷要求のヘッダにドラフト印刷コマンドが含まれていた場合、CPU17は、その印刷要求に含まれる情報にて指定された用紙のバーコード印刷に対する適否を判別することなく、その印刷要求に応じたバーコード印刷を図示せぬ印刷機構に行わせる処理を開始し(S107)、図2に係る処理を終了する。
【0030】
一方、非ドラフト印刷の指示を受けていた場合(S102;YES)、すなわち、印刷要求のヘッダに非ドラフト印刷コマンドが含まれていた場合、CPU17は、その印刷要求に含まれる用紙カセット識別情報を読み取った後、その用紙カセット識別情報にて特定される用紙カセットに装填されている用紙の種類がバーコード印刷に不適切な用紙の種類であるか否かを、判別する(S103)。なお、印刷装置10のEEPROM18には、給紙機構14の各スロットに装着されている用紙カセットの用紙カセット識別情報とその用紙カセットに装填されている用紙の種類を示す種類情報とその用紙のサイズを示すサイズ情報とが、対応付けて記録されている。また、印刷装置10のROM16には、バーコード印刷に適切な用紙の種類を示す種類情報が、記録されており、このROM16は、前述した記憶部に相当している。CPU17は、EEPROM18とROM16に記録されているこれらの情報を参照して、印刷要求に含まれる用紙カセット識別情報を通じて指定された用紙の種類がバーコード印刷に適しているか否かを、判別する。
【0031】
そして、印刷要求に含まれる用紙カセット識別情報を通じて指定された用紙の種類が再生紙や藁半紙などのようなバーコード印刷に不適切な用紙の種類であった場合(S103;YES)、CPU17は、EEPROM18に記録されている情報を参照して、同じサイズで別の種類の用紙が図示せぬ給紙装置にセットされているか否かを、判別する(S104)。
【0032】
そして、同じサイズで別の種類の用紙が図示せぬ給紙装置にセットされていた場合(S104;YES)、CPU17は、同じサイズであって別の種類の用紙のうちの一つを印刷対象用紙として特定し(S105)、ROM16内の情報を参照して、その特定した印刷対象用紙の種類がバーコード印刷に不適切な用紙の種類であるか否かを、判別する(S103)。
【0033】
一方、同じサイズで別の種類の用紙が図示せぬ給紙装置にセットされていなかった場合(S104;NO)、CPU17は、その上面に設けられている操作表示盤12にエラー画面を表示し(S106)、印刷要求に応じた印刷を印刷機構13に行わせることなく、図2に係る処理を終了する。
【0034】
また、印刷要求に含まれる用紙カセット識別情報を通じて指定された用紙の種類(若しくは、ステップS105において印刷対象用紙として別途特定された用紙の種類)が上質紙のようなバーコード印刷に適した用紙の種類であった場合(S103;NO)、CPU17は、その印刷要求に応じたその種類の用紙へのバーコード印刷を印刷機構13に行わせる処理を開始し(S107)、図2に係る処理を終了する。
【0035】
なお、この図2に係る処理を実行するCPU17は、前述した印刷制御部に相当している。
【0036】
次に、本実施形態の印刷システムの作用及び効果について説明する。
【0037】
利用者が、ホストコンピュータ20において、バーコードをドラフトとして印刷するか、非ドラフトとして印刷するかを選択するとともに、用紙の種類を選択した後、バーコード印刷の実行を指示すると、そのバーコードの画像データを含む印刷要求が、プリンタドライバ21に従った図示せぬCPUによって生成され、その印刷要求がそのホストコンピュータ20から印刷装置10へ送られる。
【0038】
そして、利用者が、バーコードをドラフトとして印刷する(つまり、バーコードの試し刷りをする)ことを選択した場合には、用紙の種類がバーコード印刷に適しているか否かが判別されることなく(S102;NO)、トナー量がセーブされたり解像度が下げられたりした状態で、バーコードが印刷される(S107)。このとき、バーコードは、再生紙や藁半紙などのような種類の用紙に印刷されることもあるが、前述したように、ドラフト印刷は、印刷結果の綺麗さを求めないときに行われる印刷であるため、用紙の種類が上質紙のようなバーコード印刷に適した種類の用紙でなくとも、実用上は問題ない。
【0039】
また、利用者が、バーコードを非ドラフトとして印刷する(つまり、バーコードの清書を行う)ことを選択した場合には、用紙の種類がバーコード印刷に適しているか否かが判別され(S102;YES,S103)、用紙の種類がバーコード印刷に適していなかったときには、バーコード印刷に適した種類の用紙が探索され(S103;YES,S104;NO,S105)、それでも無い場合には、操作表示盤12にエラーが表示されてバーコード印刷を行うことなく強制終了する(S104;YES,S106)。逆に、用紙の種類がバーコード印刷に適していたときや、バーコード印刷に適した種類の用紙が探索できたときには、その用紙にバーコードが印刷されることとなる(S103;NO,S107)。従って、非ドラフト印刷のときには、バーコード印刷に適した種類の用紙にしかバーコードが印刷されないため、印刷されたバーコードには、トナーインクの滲みや擦れが生じることがない。
【0040】
このように、本実施形態の印刷システムによれば、バーコード印刷に適切な種類の用紙があるときには、その適切な種類の用紙にバーコードが印刷されるようになる。
【0041】
ところで、前述した本実施形態の印刷システムでは、バーコード印刷に適切な種類の用紙が印刷装置10に無い場合には、操作表示盤12にエラーが表示される(S106)として説明したが、これに限定されるものではない。この場合、例えば、エラーを表示すべき旨の情報が印刷装置10からホストコンピュータ20へ送信されて、ホストコンピュータ20のプリンタドライバ21がその情報を受けて液晶ディスプレイ等の表示装置上にエラーを表示するようになっていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態の印刷システムの構成図
【図2】ホストコンピュータから送られてきた印刷要求に応じて印刷装置が実行する処理の流れを示す図
【符号の説明】
【0043】
10 印刷装置
11 外部I/F装置
12 操作表示盤
13 印刷機構
14 給紙機構
15 DRAM
16 ROM
17 CPU
18 EEPROM
19 ASIC
20 ホストコンピュータ
21 プリンタドライバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙上に印刷を行うための印刷機構,
一種類以上の用紙を前記印刷機構へ供給するための給紙機構,
バーコード印刷に適する用紙の種類を特定する情報が記録された記憶部,
バーコード印刷に係る印刷要求をホストコンピュータから通信手段を介して受信するための受信部,
前記受信部が前記ホストコンピュータから前記印刷要求を受信すると、その印刷要求において用紙の種類を指定する情報として含まれる用紙種類情報と同じ情報が、前記記憶部に存在するか否かを判別し、その用紙種類情報と同じ情報が前記記憶部に存在していた場合に、前記給紙機構に対し、その用紙種類情報にて特定される種類の用紙を前記印刷機構へ供給させるとともに、前記印刷機構に対し、前記給紙機構から供給される用紙にその印刷要求に応じたバーコード印刷を行わせる印刷制御部
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷制御部は、受信した印刷要求に含まれる用紙種類情報と同じ情報が前記記憶部に存在していなかった場合には、前記給紙機構の用紙の中から、前記記憶部に記録されている情報にて特定される種類の用紙を探索し、前記給紙機構の用紙の中から探索できたときには、前記給紙機構に対し、その探索された用紙を前記印刷機構へ供給させるとともに、前記印刷機構に対し、前記給紙機構から供給される用紙にその印刷要求に応じたバーコード印刷を行わせる
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷制御部は、前記給紙機構の用紙の中から、前記記憶部に記録されている情報にて特定される種類の用紙が探索できなかったときには、操作盤にエラーを表示する
ことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷制御部は、前記給紙機構の用紙の中から、前記記憶部に記録されている情報にて特定される種類の用紙が探索できなかったときには、エラーを表示すべき旨を示す情報を前記ホストコンピュータへ送信する
ことを特徴とする請求項2記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷制御部は、受信した印刷要求にドラフト印刷コマンドが含まれている場合に、その印刷要求に含まれる用紙種類情報と同じ情報が前記記憶部に存在しているか否かを、判別する
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−224350(P2006−224350A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38420(P2005−38420)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】