説明

印刷装置

【課題】 印刷装置の状態に応じて、消耗品が交換すべき状態であることを、適切なタイミングで出力することができる印刷装置を提供する。
【解決手段】
制御部10は、消耗品の基本寿命値J0を、消耗品の交換の判断条件となるJ値の初期値として取得する(S3)。次に、変数Yを1に設定し(S4)、条件表から、消耗品XのY番目の条件を満たすか否かを判定する(S5)。条件を満たしていれば(S5:YES)、その条件に対応する係数表のパラメータをJ値に乗算する(S6)。
次に、変数Yをインクリメントし(S7)、条件表にY番目の項目が存在すれば(S8:YES)、処理がS5に戻る。Y番目の項目が存在しなければ(S8:NO)、消耗品の個別印刷枚数が、算出されたJ値を超えているか否かをチェックする(S9)。個別印刷枚数が算出されたJ値を超えていれば(S9:YES)、その消耗品の警告通知を行う(S10)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自機に取り付けられた消耗品を消耗して印刷処理を実行する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置として、印刷装置自身に備えられている消耗品を交換する必要があるか否かを判断し、必要がある場合にその旨を外部に通知する機能を有するものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トナー残量や感光ドラムの使用時間などをチェックし、それら消耗品が消耗して交換すべき状態となったことを検出した場合に、その旨を外部に通知するプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−158763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されたプリンタは、プリンタの状態によらず一律に消耗品が交換すべき状態となったと判断する。そのため、以下のような問題が生じる可能性がある。
【0006】
例えば、高品質な印刷結果を要求する高品質モードと、通常の品質を要求する通常モードと、を切り替え可能なプリンタでは、高品質モードの場合は、通常モードよりも消耗品の早めの交換が必要になる。これは、印刷結果を高品質に保つ必要があるためである。このとき、消耗品を交換すべき状態となったと判断する判断基準が印刷のモードにかかわらず一律であると、実際には交換すべき消耗度合にもかかわらずその通知が行われず、高品質な印刷結果が得られないといった不都合が生じる。
【0007】
また、1つの印刷ジョブあたりの消耗量が多い利用状況の場合(例えば、多数ページの印刷ジョブの要求を受けることが多い場合)と少ない利用状況の場合とがある。消耗量が多い利用状況の場合は、少ない場合よりも消耗品の早めの交換が必要となる。これは、印刷ジョブを実行中に消耗品を大量に消耗した結果、印刷結果の品質が劣化する恐れがあるためである。このとき、利用状況における消耗量の多少にかかわらず判断基準が一律であると、実際には交換すべき消耗度合にもかかわらずその通知が行われず、その印刷ジョブの印刷実行中に印刷結果の品質が低下してしまう、といった不都合が生じる。
【0008】
このように、設定されている印刷モードや印刷装置の利用状況によっては、消耗品が交換すべき状態となったことの通知が適切なタイミングにてユーザに実行されない場合があった。
【0009】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、印刷装置の状態に応じて、消耗品が交換すべき状態であることを、適切なタイミングで出力することができる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、自機に取り付けられた消耗品を消耗して印刷処理を実行する印刷装置であって、印刷品質に関する印刷モード、および、印刷履歴のうち、少なくともいずれか一方を含む上記印刷装置の状態に基づいて、上記消耗品を交換すべき交換タイミングとなったことを判断するための判断条件を設定する設定手段と、上記消耗品が上記設定手段により設定された判断条件を満たしたか否かを判断する判断手段と、上記判断条件を満たしたことを上記判断手段が判断した場合に、上記消耗品が交換タイミングとなったことを出力する出力手段と、を備えることを特徴とする印刷装置である。
【0011】
このように構成された印刷装置は、消耗品が交換タイミングとなったと判断するための判断条件を、印刷装置に設定されている印刷モード、または印刷装置の印刷履歴を参照して設定する。
【0012】
従って、消耗品が交換すべき状態であることを、印刷モードや印刷履歴に応じた適切なタイミングで出力することができる。
なお、消耗品とは、プリンタや複写機にて用いられるトナーやインクなどの記録材のほか、感光ドラム、ピックアップローラなど、使用により消耗し、交換を必要とする物が該当する。
【0013】
また、消耗品が交換すべき交換タイミングとなったことを判断するための判断条件は様々に設定できる。例えば、その消耗品を取り付けてから印刷装置が印刷した枚数や、その消耗品自体が動作した(利用された)回数、またはその消耗品の消耗度合にて規定することが考えられる。
【0014】
また、消耗品が交換タイミングとなったことの出力とは、例えばユーザに通知するための画面表示および警告音の出力や、印刷装置内の処理装置または印刷装置と通信可能な外部機器への制御信号の出力などが該当する。
【0015】
請求項2に記載の印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置において、上記印刷装置の状態には、通常の品質で印刷する通常モードと、上記通常モードよりも高品質で印刷する高品質モードと、のいずれかから選択可能な印刷モードが含まれており、上記設定手段は、上記印刷装置が上記高品質モードの場合には、上記印刷装置が上記通常モードである場合よりも上記消耗品の交換タイミングが早期となるように上記判断条件を設定することを特徴とする。
【0016】
このように構成された印刷装置では、高品質で印刷する高品質モードの場合には、通常モードより早期に交換タイミングとなったと判断するため、より消耗品の消耗度合が小さく、印刷品質が劣化しにくい状態において、消耗品が交換タイミングとなったことを出力することとなる。
【0017】
従って、高品質な印刷結果を求められる場合に、消耗品の消耗度合が大きいために適切な印刷結果が得られなくなるという可能性を低減することができる。
請求項3に記載の印刷装置は、請求項1または請求項2に記載の印刷装置において、上記印刷装置の状態には、印刷履歴として、上記印刷装置が既に実行した印刷処理における印刷量の平均値である平均印刷量が含まれており、上記設定手段は、上記平均印刷量が多くなるほど、上記消耗品の交換タイミングが早期となるように上記判断条件を設定することを特徴とする。
【0018】
このように構成された印刷装置では、平均印刷量が多い場合には、平均印刷量が少ない場合よりも早期に交換タイミングとなったと判断される。平均印刷量は、その印刷装置が実行した印刷処理に基づく値であるから、平均印刷量からは、その印刷装置において今後要求される印刷ジョブにおける印刷量の予想をたてることができる。そして、平均印刷量が多いということは、今後の印刷ジョブにおいて予想される印刷量が多いということになる。つまり、予想される印刷量が多い印刷装置ほど、早期に交換タイミングとなったことを出力することとなる。
【0019】
従って、平均印刷量が多い場合には、消耗品の消耗度合が比較的小さい段階において交換タイミングとなったことを出力するため、消耗品が交換タイミングとなったことの出力が遅れ、そのために適切な印刷結果が得られなくなるという可能性を低減することができる。また、平均印刷量が少ない場合には、上述した交換タイミングとなったことの判断が遅くなる(より大きな消耗度合にて、交換が必要と判断するようになる)ため、必要以上に早く交換タイミングとなったと出力してしまうことを抑制できる。
【0020】
なお、平均印刷量とは、印刷枚数であってもよいし、1つの印刷ジョブの印刷によって消耗する消耗量にて規定される値であってもよい。
請求項4に記載の印刷装置は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置において、上記設定手段が、上記印刷装置の状態に基づいて、上記判断条件を設定するためのパラメータを選択し、上記選択されたパラメータと、上記消耗品について予め定められた初期判断条件と、に基づいて、上記判断条件を算出することを特徴とする。
【0021】
このように構成された印刷装置では、交換タイミングとなったことを判断するための判断条件が、印刷装置の状態に基づいて選択されるパラメータを用いて算出される。従って、印刷装置の状態に基づいて、適切に判断条件を定めることができる。
【0022】
請求項5に記載の印刷装置は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の印刷装置において、上記設定手段が、上記印刷装置が印刷処理を実行するごとに、上記判断条件を設定することを特徴とする。
【0023】
このように構成された印刷装置では、印刷処理を実行するごとに判断条件の設定を変更するので、利用状況などが刻々と変わっても、消耗品が交換すべき状態であることを出力するタイミングを、常に適切なタイミングにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】印刷装置を示すブロック図
【図2】印刷装置管理情報を示す図
【図3】消耗品管理情報を示す図
【図4】条件表およびそれに対応する係数表を示す図
【図5】通知処理の処理手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[実施形態]
(1)全体構成
本実施形態の印刷装置1は、図1に示すように、LAN(Local Area Network)2を介して、複数のパーソナルコンピュータ(以下「PC」という)3と相互に通信可能に接続されており、PC3からの印刷要求に応じて、印刷処理を実行するレーザプリンタである。
【0026】
印刷装置1は、プリンタ機能とネットワーク通信機能とを備えた装置であり、制御部10、外気温センサ20、時計30、画像形成部40、操作部50、表示部60,ネットワークインタフェース70(I/F70)などを備え、これらがバス80によって接続されている。
【0027】
制御部10は、CPU11、ROM12、RAM13、フラッシュメモリ14などを備えたマイコンを中心に構成されており、ROM12に記憶されている各種制御プログラムに基づいて、画像形成部40、表示部60、I/F70等の各部を制御する。また、外気温センサ20の入力信号に基づいて、印刷装置1が設置される場所の気温を測定する。
【0028】
なお、上述したフラッシュメモリ14には、図2に示す印刷装置管理情報と、図3に示す消耗品管理情報と、図4(a),(b)に示すような条件表および係数表が記憶されている。
【0029】
印刷装置管理情報には、課金モード、トナーセーブモード、累計印刷枚数、印刷回数、平均印刷枚数、の項目が記憶される。
課金モードおよびトナーセーブモードは、印刷装置1の印刷品質を設定するモードである。課金モードがONの場合は高品質の印刷(例えば、高精細である印刷)を行い、課金モードがOFFの場合には通常品質の印刷を行う。トナーセーブモードがONの場合はトナー使用量を制限した印刷を行い、OFFの場合にはトナー使用量を制限せず、用紙に印刷される画像の欠けなどを低減した印刷を行う。これら課金モードおよびトナーセーブモードは、操作部50による入力操作,またはPC3からの入力操作によりユーザが自由に設定できる。
【0030】
また、累積印刷枚数は、所定の期間(例えば、過去1ヶ月間,印刷装置1の使用を開始した時点から現在まで、など)に印刷装置1が印刷した枚数の積算値である。印刷回数は、上述した所定の期間内に印刷装置1が実行した印刷ジョブの回数である。平均印刷枚数は、上述した印刷回数にて累積印刷枚数を除した値であり、1つの印刷ジョブあたりの平均の印刷枚数である。なお、累積印刷枚数,印刷回数および平均印刷枚数は、1つの印刷ジョブに基づく印刷処理が終了するごとに値が更新される。
【0031】
また、消耗品管理情報には、管理対象となる消耗品の番号1〜4と、それらに対応する基本寿命値J0,個別印刷枚数,特殊用紙印刷枚数,使用経過時間,の項目が記憶される。
【0032】
本実施形態においては、消耗品の番号1〜4が、それぞれ後述するピックアップローラ41,トナーカートリッジ42,感光ドラム43,定着器44である。なお、これらは消耗品の一例であって実際は上述したものに限らない。
【0033】
基本寿命値J0は、消耗品ごとに予め設定されている値であって、その値は印刷枚数を示している。そして、この基本寿命値J0の値に、印刷装置1の状態に基づくパラメータを乗算することで、実際に交換すべきタイミングとなったことを判断する判断条件(J値)を算出する。この算出方法については後述する通知処理にて説明する。
【0034】
個別印刷枚数とは、その消耗品を交換してから、その消耗品を利用して印刷を行った印刷枚数の累積値であり、特殊用紙印刷枚数とは、その消耗品を交換してからのOHP用紙などの特殊用紙に印刷した枚数の累積値である。また、使用経過時間は、その消耗品を交換してからの時間を示しており、項目内では「年:月:日」として表している。
【0035】
なお、消耗品管理情報における個別印刷枚数、特殊用紙印刷枚数、使用経過時間の各値は、1つの印刷ジョブに基づく印刷処理が終了するごとに値が更新される。
また、条件表は、消耗品が交換すべきタイミングとなったことを判断するための判断条件の設定に用いる条件の一覧であり、係数表は、条件表の各条件に対応するパラメータであるが、詳細は後述する通知処理にて説明する。
【0036】
時計30は、一般的なコンピュータシステムにおいて通常備えられている周知のリアルタイムクロックであり、印刷装置1の電源のオン・オフにかかわらず常に内蔵バッテリ(図示略)で動作するものである。この時計30により、制御部10は現在時刻を知ることができる。
【0037】
画像形成部40は、制御部10からの印刷指示に従って印刷処理を実行する。この画像形成部40は、印刷処理の実行により消耗し交換が必要となる消耗品として、給紙カセットに載置されている記録媒体としての用紙を搬出するピックアップローラ41、トナー(現像剤)を収容するトナーカートリッジ42、トナーによる像を現像する感光ドラム43、加熱ローラおよび加圧ローラによりトナーを用紙に定着させる定着器44を備えている。なお、本実施形態において、トナーカートリッジ42と感光ドラム43は別体であり、それぞれ単独で交換可能に構成されている。
【0038】
本実施形態の印刷装置1では、PC3から印刷要求を受けた場合に、制御部10が画像形成部40に対して印刷処理の実行を指示する。これを受けた画像形成部40は、その指示に基づいて用紙への印刷を実行する。
【0039】
操作部50は、ユーザにより操作可能な各種スイッチ等が設けられてなるものである。ユーザは、この操作部50に設けられた各種スイッチを操作することにより、当該印刷装置1に対する各種設定、処理要求等を行うことができる。
【0040】
表示部60は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)やLEDなどを備えてなるものであり、当該印刷装置1の動作状態など、種々の情報が表示される。また、後述する通知処理において消耗品が交換すべき状態であることが表示される。
【0041】
I/F70は、当該印刷装置1がLAN2を介して複数のPC3と相互にデータ通信を行うための周知のインタフェース装置である。
また、PC3は、図示は省略したものの、CPU、ROM、RAM、HDD、キーボード、マウス、ディスプレイなどを備えた一般的な構成である。そして、このPC3のHDDには、オペレーティングシステム(OS)や、文書作成ソフト、画像編集ソフト等の各種アプリケーションソフトがインストールされている。そのため、PC3のユーザは、これらアプリケーションソフトで作成・編集等した画像を印刷装置1に送信し、その送信先の印刷装置1にて用紙への印刷を行わせることができる。
(2)通知処理
印刷装置1が実行する通知処理の処理手順を、図5に記載するフローチャートに基づいて説明する。印刷装置1では、その動作開始後、制御部10内のCPU11が、ROM12に記憶されている通知処理のプログラムを読み出し、このプログラムに従って処理を実行する。なお本処理は、PC3からの要求に応じて印刷処理を実行した後のタイミング,印刷装置1の電源をONとしたタイミング,および,上述した消耗品のいずれかを交換したタイミングで実行される。
【0042】
この通知処理は、上述した各消耗品について、消耗品を交換すべき交換タイミングとなったか否かを判断する判断条件を消耗品ごとに設定し、その条件を満たした場合に、その消耗品が交換すべき状態であることを表示部60にて表示する処理である。
【0043】
本処理では、まず、変数Xを1に設定する(S1)。この変数Xは、警告の要否を判断する判断対象となる消耗品の番号(図3の消耗品管理情報における消耗品の番号)と対応する値である。
【0044】
次に、全ての消耗品について、上述した判断を行ったか否かをチェックする(S2)。具体的には、変数XがX>4を満たしていれば全ての消耗品について判断を行っていると判定する。全ての消耗品について上述した判断を行っていれば(S2:YES)、本処理を終了する。
【0045】
一方、S2において、全ての消耗品について上述した判断を行っていない場合は(S2:NO)、処理がS3に移行する。
続くS3〜S8の処理によって、変数Xに対応する消耗品(消耗品X)に関して、消耗品Xを交換すべき交換タイミングとなったか否かを判断する判断条件値(J値、印刷枚数にて規定される値)を算出する。なお、S3〜S8におけるJ値の計算例を、本処理の最後に示す。
【0046】
まず、基本寿命値J0を取得する(S3)。ここでは、図3の消耗品管理情報において、消耗品Xにつき、その基本寿命値J0を取得する。取得した値は、本処理における現時点でのJ値(J値の初期値)としてRAM13に記憶される。
【0047】
次に、変数Yを1に設定する(S4)。この変数Yは、図4(a),(b)に示す条件表および係数表の項目を示す値である。
次に、図4(a)に示す条件表を参照して、消耗品XのY番目の条件を満たすか否かを判定する(S5)。例えば、変数Xの値が1、変数Yの値が1であれば、条件表における消耗品1の行かつY=1の列に示される「課金モード=ON?」という条件を満たすか否かを判定する。同様に、変数Xの値が1、変数Yの値が2であれば、「特殊用紙印刷枚数>1000?」という条件について判定され、変数Xの値が3、変数Yの値が3であれば、「新品交換後、1年経過?」という条件について判定される。
【0048】
条件を満たすか否かの判定は、フラッシュメモリ14に記憶される印刷装置管理情報および消耗品管理情報に示される値や、外気温センサ20の出力値などに基づいて行う。
上述したS5において、消耗品XのY番目の条件を満たしていれば(S5:YES)、その条件に対応する係数表のパラメータをJ値に乗算し(S6)、算出した値を新たなJ値として、RAM13に記憶されたJ値を更新する。その後処理がS7に移行する。一方、S5において、消耗品XのY番目の条件を満たしていなければ(S5:NO)、S6を行わずにS7に移行する。
【0049】
次に、変数Yをインクリメント(Y=Y+1)し(S7)、消耗品Xにおける条件表のY番目の項目が存在するか否かをチェックする(S8)。Y番目の項目が存在すれば(S8:YES)、処理がS5に戻る。一方、Y番目の項目が存在しなければ(S8:NO)、処理がS9に移行する。
【0050】
次に、消耗品Xの個別使用枚数が、算出されたJ値を超えているか否かをチェックする(S9)。個別使用枚数は、図3に示す消耗品管理情報の個別印刷枚数の値を、フラッシュメモリ14を参照して取得する。
【0051】
消耗品Xの個別印刷枚数が、算出されたJ値を超えていれば(S9:YES)、その消耗品Xの警告通知を行う(S10)。ここでは、消耗品Xを交換すべきである旨を、表示部60に表示させる。その後、処理がS11に移行する。一方、消耗品Xの個別印刷枚数が、算出されたJ値を超えていなければ(S9:NO)、処理がS11に移行する。
【0052】
次に、変数Xをインクリメント(X=X+1)し(S11)、処理がS2に戻る。
ここで、S3〜S8におけるJ値の算出例を示す。X=1のピックアップローラ41の場合、S3にて基本寿命値J0=10000が取得される。この時点で判断条件値JはJ=10000である。ピックアップローラ41がS5において判断される条件は、課金モードがONか(Y=1),特殊用紙印刷枚数が1000枚以上か(Y=2),外気温が30℃以上か(Y=3)、ピックアップローラ41を新品に交換した後2年経過しているか(Y=4),である。なお、この算出例では、Y=1とY=3の条件を満たすものとして計算する。
【0053】
最初のS5においては、Y=1の条件を満たすと判断されるため、S6に移行し、係数表におけるY=1に対応するパラメータ0.9が乗算される。その結果J値は、J=10000×0.9=9000となる。その後、処理が進行し、2度目のS5においては、Y=2の条件を満たさないと判断されるため、J値は変更されない。3度目のS5においては、Y=3の条件を満たすと判断されるため、S6に移行し、Y=3に対応するパラメータである0.95が乗算される。その結果、J値は、J=9000×0.95=8550となる。4度目のS5においては、Y=4の条件を満たさないと判断されるため、J値は変更されない。その結果、J=8550が最終的なJ値となる。
【0054】
このように、図4(a)の条件表に示される条件を満たすことで、図4(b)の係数表に示されるパラメータが乗算されてJ値が変化する。パラメータの値が1より小さいものは、その条件を満たすとJ値が減少する。すなわち、消耗品を交換すべきと判断するための判断条件となる個別印刷枚数が小さくなり、早期に交換が必要であると通知されるようになる。
(3)発明の効果
上述した構成の印刷装置1では、消耗品が交換タイミングとなったと判断されたときに、表示部60にその旨を表示させることでユーザに通知する。また、その交換タイミングとなったと判断するための判断条件を、設定されている課金モードおよびトナーセーブモード,印刷履歴,印刷装置1の設置場所の気温などの印刷装置1の状態に基づいて設定する。
【0055】
従って、印刷装置1の状態に応じて、交換すべきタイミングとなったと判断するための判断条件値(J値)が変化するため、消耗品が交換すべき状態であることを、印刷装置1の状態に応じた適切なタイミングで通知することができる。
【0056】
例えば、高品質で印刷する課金モードがONの場合には、課金モードがOFFの場合よりも早期に交換タイミングとなったと判断する。つまり、より消耗品の消耗度合が小さく、印刷品質が劣化しにくい状態において、消耗品が交換タイミングとなったことを通知することとなるため、消耗品の消耗度合が大きいために高品質な印刷結果が得られなくなるという可能性を低減することができる。
【0057】
また、平均印刷枚数が多い場合には、平均印刷枚数が少ない場合よりも早期に交換タイミングとなったと判断される。平均印刷枚数は、印刷装置1が実行した印刷処理に基づく値であるから、平均印刷枚数からは、印刷装置1において今後要求される印刷ジョブにおける印刷枚数の予想をたてることができる。そして、平均印刷枚数が多いということは、今後の印刷ジョブにおいて実行されると予想される印刷枚数が多いということになる。つまり、予想される印刷枚数が多くなるほど、早期に交換タイミングとなったことが通知されることとなる。
【0058】
従って、平均印刷枚数が多い場合には、消耗品の消耗度合が比較的小さい段階において交換が必要となったと判断するため、消耗品が交換タイミングとなったことの通知が遅れ、そのために適切な印刷結果が得られなくなるという可能性を低減することができる。また、平均印刷枚数が少ない場合には、平均印刷枚数が多い場合よりも大きな消耗度合にて消耗品の交換が必要と判断するようになるため、必要以上に早く交換タイミングとなったと通知してしまうことを抑制できる。
【0059】
また、上述した構成の印刷装置1では、消耗品が交換すべきタイミングとなったと判断するための判断条件値Jが、係数表に示されるパラメータを用いて算出される。従って、印刷装置1の状態に基づいて、適切に判断条件値Jを定めることができる。
【0060】
また、上述した構成の印刷装置1では、印刷処理を実行するごとに判断条件値の設定を変更するので、利用状況などが刻々と変わっても、消耗品が交換すべき状態であることを通知するタイミングを、常に適切なタイミングにすることができる。
(4)変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0061】
例えば、上記実施形態においては、消耗品が交換すべき交換タイミングとなったことを判断するための判断条件値Jは、印刷枚数にて規定される値である構成を例示したが、それ以外の値で規定されていてもよい。例えば、その消耗品の消耗度合(トナーカートリッジであれば、トナー残量の値)にて規定することが考えられる。
【0062】
また上記実施形態においては、印刷履歴として平均印刷枚数を算出し、その値に基づいて判断条件値Jを変更する構成を例示したが、平均印刷枚数に替えて、1つの印刷ジョブあたりの平均消耗量(例えばトナー消費量やピックアップローラの磨耗量)を測定し、その値に基づいて判断条件値Jを変更する構成であってもよい。
【0063】
また上記実施形態においては、図4(a)に示す条件表の条件を満たした場合に、図4(b)に示す係数表のパラメータをJ値に乗算する構成を例示したが、J値にパラメータを加算または減算する構成であってもよい。また、図4(b)に示す係数表のパラメータは全て1以下であるが、消耗品が消耗しにくい条件を満たす場合には、パラメータを1以上の値と設定することでJ値を大きくするように構成してもよい。このように構成すれば、消耗品が消耗しにくい条件を満たすと、消耗品を交換すべきと判断するための判断条件値(J値)が大きくなるため、個別印刷枚数がJ値に到達するタイミングが遅くなることから、より遅いタイミングで交換が必要であると通知されるようになる。従って、消耗品が消耗しにくい使用状況において、消耗品をより長く使うことができる。
【0064】
また上記実施形態においては、消耗品が交換すべきタイミングとなったと判断した場合に、表示部60にその旨の表示を行う構成を例示したが、それ以外の方法で出力する構成であっても良い。
【0065】
例えば、PC3に対して、印刷装置1の消耗品が交換すべきタイミングとなったことを表示させる信号を出力することや、図示しない音声出力装置に警報音を発報させる信号を出力することが考えられる。
【0066】
また上記以外には、印刷装置1の印刷処理を制限するように、印刷装置1の設定を変更する(印刷装置1の制御部10内部にて設定を変更するための信号出力を行う)ように構成しても良い。
【0067】
また上記実施形態においては、印刷装置1の設置された場所の気温を測定して、J値の判断に利用する構成を例示したが、印刷装置1の設置された場所の湿度や汚れ(粉塵等の飛散量)などを測定し、J値の判断に利用する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1…印刷装置、10…制御部、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…フラッシュメモリ、20…外気温センサ、30…時計、40…画像形成部、41…ピックアップローラ、42…トナーカートリッジ、43…感光ドラム、44…定着器、50…操作部、60…表示部、70…ネットワークインタフェース、80…バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機に取り付けられた消耗品を消耗して印刷処理を実行する印刷装置であって、
印刷品質に関する印刷モード、および、印刷履歴のうち、少なくともいずれか一方を含む前記印刷装置の状態に基づいて、前記消耗品を交換すべき交換タイミングとなったことを判断するための判断条件を設定する設定手段と、
前記消耗品が前記設定手段により設定された判断条件を満たしたか否かを判断する判断手段と、
前記判断条件を満たしたことを前記判断手段が判断した場合に、前記消耗品が交換タイミングとなったことを出力する出力手段と、を備える
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷装置の状態には、通常の品質で印刷する通常モードと、前記通常モードよりも高品質で印刷する高品質モードと、のいずれかから選択可能な印刷モードが含まれており、
前記設定手段は、前記印刷装置が前記高品質モードの場合には、前記印刷装置が前記通常モードである場合よりも前記消耗品の交換タイミングが早期となるように前記判断条件を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷装置の状態には、印刷履歴として、前記印刷装置が既に実行した印刷処理における印刷量の平均値である平均印刷量が含まれており、
前記設定手段は、前記平均印刷量が多くなるほど、前記消耗品の交換タイミングが早期となるように前記判断条件を設定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記設定手段は、
前記印刷装置の状態に基づいて、前記判断条件を設定するためのパラメータを選択し、
前記選択されたパラメータと、前記消耗品について予め定められた初期判断条件と、に基づいて、前記判断条件を算出する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記設定手段は、前記印刷装置が印刷処理を実行するごとに、前記判断条件を設定する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−224018(P2010−224018A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68540(P2009−68540)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】