説明

印刷装置

【課題】印刷手段で印刷がなされた後の用紙を一旦貯留部に貯留する印刷装置において、搬送手段により貯留部に送られて来る用紙を1枚1枚区別して正確に検出する。
【解決手段】用紙に印刷する印刷手段3と、この印刷手段3によって印刷がなされた用紙Pを複数枚、重なり合う状態で一時貯留しておく用紙貯留部4と、印刷がなされた用紙Pを印刷手段3から用紙貯留部4に搬送する搬送手段7Aと、用紙貯留部4内に搬送された用紙Pを、用紙重なりの方向に移動させる用紙移動手段41とを備えてなる印刷装置において、前記搬送の途中の用紙P並びに、用紙貯留部4内の用紙Pに検出光を照射する向きに配置された反射式の光電センサS3を設け、さらに、この光電センサS3の出力信号を受け、用紙Pの前記移動に伴う該信号のレベル変化に基づいて、用紙Pを1枚ずつ区別して示す用紙検出信号を生成する信号処理部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置、特に詳細には、印刷された後の用紙を一時的に貯留しておく構成を有する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点等から印刷に用いる用紙の使用量を減らすことが望まれており、そのために、用紙の表面および裏面に印刷を行う両面印刷が盛んに行われている。両面印刷を行う両面印刷装置としては、例えば孔版印刷を行う両面孔版印刷装置が提案されており、この装置の一例として、穿孔製版された孔版原紙を外周面に巻装した円筒状の第1ドラムと第2ドラムを隣接して配設し、第1ドラムで用紙の表面に印刷を行い、表面が印刷された用紙を第2ドラムに搬送して該第2ドラムで用紙の裏面に印刷を行う装置が知られている。このような両面印刷装置においては、版面となる孔版原紙にプレスローラ等によって用紙を押圧させ、ドラムの回転により用紙を搬送しながら印刷がなされる。
【0003】
上述のような両面印刷装置においては、第1ドラムによって印刷がなされた用紙を乾燥させるために、それらを重ねた状態で一時貯留しておく用紙貯留部が設けられることが多い(特許文献1参照)。そしてその用紙貯留部内には、上記特許文献1にも示されているように、搬送手段によって第1ドラムから送られて来た用紙を、用紙重なりの方向に順次移動させる用紙移動手段が設けられることもある。そのような用紙移動手段を設ければ、用紙貯留部の例えば左端側から用紙を搬入させた後、用紙移動手段によって用紙を右端側に送り、その位置から順次用紙を引き出して第2ドラムに給紙できるので、小型に形成した用紙貯留部の中で円滑に用紙を送ることが可能になる。
【0004】
また上記用紙移動手段には、用紙貯留部内に搬送された用紙の搬送方向先端部を把持する把持部が搭載される一方、第1ドラムから用紙貯留部に用紙を搬送する手段には、用紙を離脱可能に保持して、用紙の先端部が上記把持部に進入したとき、その用紙を離脱させる用紙保持手段が設けられることもある。そのような構成によって用紙を搬送手段から用紙移動手段の把持部に移載させれば、用紙が貯留部内で飛び跳ねたり、不正な姿勢で用紙移動手段に保持されたりすることを防止して、用紙を常に正しい姿勢で貯留させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−297942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の用紙保持手段を有する搬送手段と、上記の把持部を有する用紙移動手段とを備えてなる印刷装置においては、用紙搬送手段が搬送する用紙の先端部が把持部に対して一定の位置に来たところで、搬送手段を停止させるとともに用紙を保持手段から離脱させることが求められる。つまり、そのようになっていなければ、各用紙が把持部に対してまちまちの相対位置で把持されることになるので、その後段の処理、例えば用紙移動手段から用紙を受け取って第2ドラムに向けて再給紙する処理等においてエラー動作を招くことも有り得るからである。
【0007】
搬送手段およびそこに搭載された用紙保持手段を上述のように作動させるためには、搬送手段が搬送している用紙がある所定の位置に来たことを正確に検出し、その検出時点から一定のタイミングで搬送手段および用紙保持手段に作動制御信号を送ることが必要である。そして、この要求を満たすためには、次々に搬送されて来る用紙を、所定位置に配置したセンサによって1枚1枚正確に区別して検出する必要がある。
【0008】
ここで、用紙検出のために多く用いられているセンサの一つとして、反射式の光電センサが挙げられる。この種のセンサは比較的安価であるので、上記印刷装置にも適用したいところであるが、従来、それは困難であると考えられてきた。以下、その点について詳しく説明する。
【0009】
貯留部に搬送されて来る用紙を検出するセンサは、基本的に貯留部と極めて近い位置、例えば貯留部内の用紙と向き合うような位置(以下、これを好適位置という)に配設するのが好ましい。なぜなら、その好適位置よりも搬送方向のかなり上流側で用紙を検出する場合は、用紙がその検出位置から貯留部に来るまでの間に搬送速度ムラが生じるようなこともあるので、用紙検出後所定のタイミングで搬送手段およびその用紙保持手段の作動を制御しても、用紙が前記把持部に対してまちまちの相対位置で把持されてしまう可能性が有るからである。
【0010】
しかし、上記の好適位置に配置するセンサとして反射式の光電センサを用いた場合は、例えば1枚目の用紙を該センサが検出した後、その用紙が貯留部内の用紙移動手段に移されると、次に2枚目の用紙がセンサの前面に到達するまでの間も、センサは貯留部内の用紙からの反射光を受光し続けることになる。そのため、順次搬送されて来る用紙を1枚1枚区別して正確に検出することが困難になるのである。
【0011】
以上の問題は両面印刷装置に限らず、その他の例えば多色印刷装置等、一つの印刷手段で印刷がなされた後の用紙を搬送手段で用紙貯留部に送り、そこで一旦貯留するように構成された印刷装置において同様に発生し得るものである。
【0012】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、前述したような印刷手段と、用紙貯留部と、用紙搬送手段と、用紙を貯留部内において用紙重なりの方向に移動させる用紙移動手段とを備えてなる印刷装置において、貯留部に順次搬送されて来る用紙を、反射式の光電センサを用いて1枚1枚区別して正確に検出可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による印刷装置は、
用紙に印刷する印刷手段と、
この印刷手段によって印刷がなされた用紙を複数枚、重なり合う状態で一時貯留しておく用紙貯留部と、
印刷がなされた用紙を前記印刷手段から前記用紙貯留部に搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって用紙貯留部内に搬送された用紙を、該用紙貯留部内において前記重なりの方向に移動させる用紙移動手段とを備えてなる印刷装置において、
前記搬送の途中の用紙並びに、前記用紙貯留部内の用紙に検出光を照射する向きに配置された反射式の光電センサと、
この光電センサの出力信号を受け、用紙の前記移動に伴う該信号のレベル変化に基づいて、用紙を1枚ずつ区別して示す用紙検出信号を生成する信号処理部とが設けられたことを特徴とするものである。
【0014】
なお上記の「重なり合う状態」とは、用紙どうしが互いに間隔を置いて重なっている状態と、用紙どうし一部でも接触して重なっている状態の双方を含むものとする。
【0015】
また上記信号処理部は一例として、光電センサが前記搬送の途中にある用紙からの反射光を検出したときのその出力信号レベルと、該光電センサが上記反射光を検出する直前に用紙貯留部内の用紙からの反射光を検出したときのその出力信号レベルとの間に有る閾値を設定し、この閾値と光電センサの出力信号との大小関係に基づいて用紙検出信号を生成するように構成される。
【0016】
さらに本発明の印刷装置においては、
前記用紙移動手段に搭載されて、前記搬送手段により用紙貯留部内に搬送された用紙の搬送方向先端部を把持する把持部と、
前記搬送手段において用紙を離脱可能に保持し、保持している用紙の先端部が前記把持部に進入したときその用紙を離脱させる用紙保持手段と、
前記用紙検出信号が入力された後、所定のタイミングで搬送手段を停止させるとともに、前記用紙保持手段を用紙離脱状態に設定する制御手段とが設けられることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
反射式の光電センサを前述の好適位置に配設した場合は、前述した通りそのセンサが、搬送されて来る用紙からの反射光だけでなく、貯留部内の用紙からの反射光も継続的に受光することになる。しかし、搬送手段から貯留部内の用紙移動手段に移された用紙は、用紙移動手段によりセンサから離れる方向に移動するので、この用紙からの反射光を検出しているときのセンサ出力信号レベルは連続的に低下するようになる。そしてこのとき、別の新しい用紙が送られて来れば、センサは近接位置に来たその新しい用紙からの反射光を受光するので、センサ出力信号レベルは急激に増大する。本発明の印刷装置は、この点に着目して得られたものであって、光電センサの出力信号を受け、用紙の上記移動に伴う該信号のレベル変化に基づいて、用紙を1枚ずつ区別して示す用紙検出信号を生成する信号処理部を備えたことにより、貯留部に順次搬送されて来る用紙を1枚1枚区別して正確に検出可能となる。
【0018】
また、本発明の印刷装置において特に、前記用紙移動手段に搭載されて、前記搬送手段により用紙貯留部内に搬送された用紙の搬送方向先端部を把持する把持部と、前記搬送手段において用紙を離脱可能に保持し、保持している用紙の先端部が前記把持部に進入したときその用紙を離脱させる用紙保持手段と、前記用紙検出信号が入力された後、所定のタイミングで搬送手段を停止させるとともに用紙保持手段を用紙離脱状態に設定する制御手段とが設けられた場合は、用紙を1枚ずつ区別して示す用紙検出信号に基づいて、用紙を上記把持部に対して常に一定の相対位置関係で把持させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による印刷装置の概略構成を示す側面図
【図2】上記印刷装置の要部を示す一部破断側面図
【図3】上記印刷装置における用紙貯留部の一部を示す側面図
【図4】上記印刷装置の用紙検出に関連する電気的構成を示すブロック図
【図5】図4の構成におけるセンサの出力信号波形と、他の要素の駆動タイミングを示すタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態による両面孔版印刷装置1の概略構成図であり、図2はその要部を拡大して示す側面図である。この両面孔版印刷装置1は図1に示すように、装置ハウジング10と、この装置ハウジング10の一側面つまり同図中の左側面に設けられて、印刷媒体である複数枚の用紙Pを積載保持する給紙台2と、この給紙台2から給紙される用紙Pの一表面に印刷する第1の孔版印刷部3と、一表面に印刷がなされた用紙Pを複数枚一時的に貯留する用紙貯留部(以下、単に貯留部という)4と、この貯留部4に貯留されていた用紙Pの他表面に印刷する第2の孔版印刷部5と、装置ハウジング10の他側面つまり同図中の右側面に設けられて、両面すなわち一表面および他表面に印刷がなされた用紙Pを積載保持する排紙台6とを備えている。
【0021】
またこの両面孔版印刷装置1は、給紙台2から第1の孔版印刷部3に用紙Pを給紙する給紙部7と、第1の孔版印刷部3から貯留部4の内部へ用紙Pを搬送する第1中間搬送部7Aと、貯留部4の内部から第2の孔版印刷部5まで用紙Pを搬送する第2中間搬送部8と、第2の孔版印刷部5から排紙台6まで用紙Pを搬送する排紙部9とを備えている。
【0022】
給紙部7は、給紙台2に積載された用紙Pの上方に位置するように配設されたピックアップローラ71と、このピックアップローラ71によってピックアップされた用紙Pを所定のタイミングで第1の孔版印刷部3に給紙するタイミングローラ72とで概略構成されている。タイミングローラ72は1対のニップローラから構成されており、このタイミングローラ72が停止すると第1の孔版印刷部3への用紙給紙が止められる。
【0023】
第1の中間搬送部7Aは、第1の孔版印刷部3によって一表面(図1、2中の上表面)に印刷がなされた用紙Pを円弧状の軌跡に沿って反転させて該一表面を下側に向けさせる反転装置73と、反転された用紙Pを貯留部4の内部に搬入する搬入装置74とで概略構成されている。
【0024】
第2中間搬送部8は、貯留部4内で後述の下端支持部41に下端部が支持された用紙Pを貯留部4外に搬出する搬出装置81と、この搬出装置81によって搬出された用紙Pをピックアップするピックアップローラ82と、このピックアップローラ82によってピックアップされた用紙Pを順次所定のタイミングで第2の孔版印刷部5に搬送するタイミングローラ83とによって概略構成されている。上記タイミングローラ83は、モータM1によって駆動される1対のニップローラから構成されており、またピックアップローラ82も基本的に同様の構成とされている。
【0025】
ピックアップローラ82の用紙搬送方向やや下流側には、搬送される用紙Pの先端を検出する第1センサS1が配設され、またタイミングローラ83の用紙搬送方向やや下流側には、同じく搬送される用紙Pの先端を検出する第2センサS2が配設されている。
【0026】
一方排紙部9は、第2の孔版印刷部5によって他表面が印刷されて両面印刷が完了した用紙Pを、排紙台6に向けて搬出する排出装置84から構成されている。
【0027】
上記搬入装置74、搬出装置81および排出装置84は、それぞれ所定間隔を空けて配置された1対のプーリ74a、81a、84aと、それら1対のプーリ74a、81a、84aの外周に掛け渡されて各々プーリ74a、81a、84aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト74b、81b、84bと、吸引用のファン74c、81c、84cとを備えている。なお搬送ベルト74b、81b、84bには、それぞれ図示外の多数の孔が形成されている。
【0028】
搬入装置74は、そのファン74cが、搬送ベルト74bを収容しているケース(図示せず)内の空気を吸引し、ひいては搬送ベルト74bの上記孔から空気を吸引して、この搬送ベルト74bの搬送面に吸引力を発生させる。搬入装置74は、反転装置73から送られて来た用紙Pをこの吸引力によって1枚だけ搬送ベルト74bに吸引保持し、そして搬送ベルト74bの回転によりその用紙Pを貯留部4内に搬入する。なおプーリ74a、ファン74cはそれぞれ、モータM3、M4によって駆動される。他の搬出装置81および排出装置84も、基本的にこの搬入装置74と同様の構成とされている。
【0029】
上述のように構成された各装置74、81、84は、プーリ74a、81a、84aを回転させて搬送ベルト74b、81b、84bを移動させると共に、ファン74c、81c、84cを回転させて前述の吸引力を発生させることにより、用紙Pを吸引保持しながら搬送する。
【0030】
なお搬入装置74は、1対のプーリ74aの外周に掛け渡された搬送ベルト74bおよびファン74cを並列に複数備えて、これらで一枚の用紙Pを吸引保持して搬送するようにしてもよい。その点は、搬出装置81および排出装置84も同様である。
【0031】
反転装置73は図2に明示されるように、円弧状の軌跡に沿って配設された4つのプーリ73aと、これら4つのプーリ73aの外周に掛け渡され該プーリ73aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト73bと、吸引用のファン73cとを備えて、上記装置74、81、84と略同様に作動するものとされている。
【0032】
他方、第1の孔版印刷部3は、第1ドラム31と第1プレスローラ32とから構成されている。また図2に示すように第1ドラム31の用紙搬送方向下流側には、用紙Pを第1ドラム31から剥ぎ取る剥取爪33が設けられている。第1ドラム31は内部に図示しないインクカートリッジを有しており、該第1ドラム31の外周面には孔版原紙(図示せず)が巻装される。この孔版原紙は、図示外の製版部において、入力された画像データに基づいて感熱穿孔して製版されたものである。そして第1ドラム31の回転に同期駆動するタイミングローラ72により、第1ドラム31とプレスローラ32との間に用紙Pが送り込まれ、その一表面がプレスローラ32によって孔版原紙に押圧されることにより、該一表面に孔版印刷がなされる。
【0033】
第2の孔版印刷部5は、上記第1の孔版印刷部3と同様に、第2ドラム51と第2プレスローラ52とから構成されている。なお第2ドラム51は第1ドラム31と共に、共通の駆動源であるモータM2によって回転駆動される。また第2ドラム51の用紙搬送方向下流側には、第2ドラム51から用紙Pを剥ぎ取る剥取爪53が設けられている。第2ドラム51は内部に図示しないインクカートリッジを有しており、該第2ドラム51の外周面には孔版原紙(図示せず)が巻装される。この孔版原紙も、上記孔版原紙と同様に画像データに基づいて感熱穿孔して製版されたものである。そして第2ドラム51の回転に同期駆動するタイミングローラ83により、第2ドラム51と第2プレスローラ52との間に用紙Pが送り込まれ、その他表面がプレスローラ52によって孔版原紙に押圧されることにより、該他表面に孔版印刷がなされる。
【0034】
貯留部4は、第1の孔版印刷部3によって一表面に印刷がなされた用紙Pを、第2の孔版印刷部5に送る前に複数枚一時的に貯留するものである。以下、この貯留部4について、その下部を拡大して示す図3も参照して詳しく説明する。貯留部4は図2に示すように、用紙Pの印刷された一表面を斜め下方から支える支持板40aと、支持板40aの両側面(図2中で手前側の面と奥側の面)にそれぞれ支持板40aと略直角に設けられた側面ガイド板40bと、用紙Pの未印刷の他表面を斜め上から覆う覆板40cと、複数枚の用紙Pの下端部を互いに所定間隔を空けて支持する下端支持部41とを備えている。
【0035】
図3に示すように下端支持部41は、間隔を空けて配置されて図示外のモータによって回転される1対のプーリ41aと、これらのプーリ41aの外周に掛け渡されて、プーリ41aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト41bと、この搬送ベルト41bの外周面上に互いに所定間隔空けて立設された複数のプレート41cとを有している。この下端支持部41は、1対のプーリ41aを結ぶ方向つまり図3中の矢印F方向が、用紙Pの搬入方向(矢印D方向)および搬出方向(矢印E方向)と略直交するように配設されている。なおこの下端支持部41は、用紙Pを貯留部4内で用紙重なりの方向に移動させる用紙移動手段を構成している。
【0036】
上記複数のプレート41cはそれぞれ、搬送ベルト41bの搬送方向上流側に隣接するプレート41cに向けて延びる爪片41eを備えている。この爪片41eは金属片等から形成されて、弾性変形可能とされている。そこで、隣り合う1対のプレート41c、41cで構成される凹部41dに用紙Pが挿入されたとき、その下端部を上流側のプレート41cと下流側のプレート41cの爪片41eとで把持して、下端支持部41全体では複数枚の用紙Pを互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持可能となっている。このように、1つのプレート41cと、その隣のプレート41cの爪片41eとにより、本発明における用紙の把持部41fが構成されている。
【0037】
本貯留部4においては、第1中間搬送部7Aによって搬送された用紙Pを受け入れる搬入位置C1(図2では矢印D位置)と、貯留されている用紙Pを第2中間搬送部8に移載させる搬出位置C2(図2では矢印E位置)とが、搬送ベルト41bの搬送移動方向に所定間隔を空けて設定された状態となっている。それらの搬入位置C1および搬出位置C2に位置した把持部41fにおいては、直線状となっている搬送ベルト41b上の把持部41fと比べて、隣り合う1対のプレート41c、41cがより大きく離間した状態となる。そこで搬入位置C1の把持部41fでは、搬送されて来た用紙Pを受け入れ可能であり、また搬出位置C2の把持部41fでは、それまで把持していた用紙Pを解放可能である。
【0038】
次に、以上のように構成された本実施形態の両面孔版印刷装置1の動作について説明する。なお基本的な各動作は、装置ハウジング10内に設けられた図示外の全体制御装置からの指示に基づいて行われる。
【0039】
両面孔版印刷を行う際には、まずピックアップローラ71が、給紙台2に積載された用紙Pを予め設定された所定時間間隔で順次ピックアップし、タイミングローラ72へ送り込む。タイミングローラ72は用紙Pを第1の孔版印刷部3に搬送する。第1の孔版印刷部3は、搬送された用紙Pの一表面に、前述のようにして画像を印刷する。
【0040】
次に反転装置73が、印刷された一表面が上側を向いた状態になっている用紙Pを、他表面を吸引しながら円弧状の軌跡に沿って送ることにより、一表面が下側を向くように反転させつつ貯留部4内に向けて搬送する。こうして順次搬送されて来た用紙Pを、搬入装置74が上面つまり他表面を吸引保持しながら、貯留部4内に搬入する。
【0041】
貯留部4内に搬入された用紙Pは、図3に示すように、搬入位置C1の凹部41dに先端つまり下端側から挿入される(なお、搬入装置74から用紙Pを離脱させる点に関しては後に詳述する)。このとき、図示外のモータが、用紙搬入と同期して凹部41dが搬入位置C1に位置するようにプーリ41aを回転させる。そこで用紙Pは、順次搬入位置C1に位置する凹部41dに挿入され、その下端部が搬送ベルト41b上の把持部41fに把持される。
【0042】
プーリ41aはそのまま回転されて搬送ベルト41bが移動し続けるので、把持された用紙Pは図3の矢印F方向に搬送移動され、また、その後続けて貯留部4に搬送されて来る用紙Pも同様に把持され、そして移動される。このように用紙Pが貯留部4内で移動される間に、該用紙P上のインクが乾燥する。
【0043】
搬送ベルト41bの移動により搬出位置C2に到達した用紙Pは、前述したようにして把持部41fから解放される。このとき用紙Pの搬出位置C2への到来と同期して、図2に示す搬出装置81のプーリ81aおよびファン81cが図示外のモータによって駆動される。それにより、搬送ベルト81bが上記解放された用紙Pを吸引保持して、貯留部4から搬出する。こうして搬出された用紙Pをピックアップローラ82が順次ピックアップし、タイミングローラ83へ搬送する。タイミングローラ83は、順次所定のタイミングで用紙Pを搬送して第2の孔版印刷部5に送り込む。
【0044】
第2の孔版印刷部5は、搬送された用紙Pの上側の面すなわち他表面に、前述の通りにして画像を印刷する。続いて排出装置84が、印刷された他表面が上側を向いている用紙Pを、その一表面を吸引保持しながら排紙台6に搬送する。以上の通りにして排紙台6には、両面印刷が完了した用紙Pが順次積載される。
【0045】
次に、搬入装置74が貯留部4内に搬送した用紙Pを、該搬入装置74から離脱させる点、そしてそのための用紙検出に関して詳しく説明する。図2に示すように下端支持部41の上方には、搬入装置74によって貯留部4内に搬送されて来た用紙Pを検出する第3センサS3が配設されている。この第3センサS3は、例えば発光ダイオード等から検出光を発し、それが測定対象物で反射したときその反射光をフォトダイオード等により検出することにより、測定対象物の有無を検出する反射式の光電センサである。そしてこの第3センサS3は前述した理由により、貯留部4内の用紙Pと向き合う好適位置に配設され、図中の矢印G方向に検出光を発する。
【0046】
なお貯留部4には、第3センサS3に対面するように配されて用紙Pの上方を覆うカバー部材42が設置されているので、このカバー部材42には上記検出光を通すための貫通孔(図示せず)が設けられている。
【0047】
図4は、上記第3センサS3と、それに関連する電気的構成を示すブロック図である。ここに示す通り第3センサS3の出力信号Soは信号処理部90に入力され、この信号処理部90は上記出力信号Soに基づいて、用紙Pを1枚ずつ区別して示す用紙検出信号Spを出力する。用紙検出信号Spは制御部91に入力され、制御部91はこの用紙検出信号Spが入力されると、モータM4を駆動するモータ駆動回路92に駆動停止信号Stを入力させる。なおこのモータM4は、図2に示すように搬入装置74のファン74cを回転させるものである。
【0048】
以下、図4の構成における第3センサS3の出力信号波形と、他の要素の駆動タイミングを示す図5も参照して、上記の構成による作用を説明する。第3センサS3の出力信号Soのレベル(ここでは電圧レベル)は、図5(1)に示すように周期的に変化する。すなわち、印刷開始段階で貯留部4内に用紙Pが全く存在しないとき、そのレベルは0(ゼロ)に近いが、1枚目の用紙Pが搬入装置Pによって貯留部4内に搬送されて来ると、そこからの反射光を第3センサS3が検出して、該信号Soのレベルは急激にL1まで立ち上がる。そしてこの用紙Pが図3に示した下端支持部41によって前述のように移動されると、第3センサS3から用紙Pまでの距離が次第に増大することにより、第3センサS3の出力信号Soのレベルが次第に低下する。
【0049】
そして、上記用紙Pが移動している最中に次の用紙Pが搬入装置74により搬送されて第3センサS3の前まで来ると、今度は第3センサS3がその近接位置に来た2枚目の用紙Pからの反射光を検出するので、出力信号SoのレベルはL2から急激に再度L1まで増大する。以下、用紙Pの貯留部4への搬入に伴って、この出力信号Soの周期的な変化が繰り返される。
【0050】
上記出力信号Soが入力される信号処理部90は、上記2つのレベルL1、L2の間に有る閾値Lrefを設定し、この閾値Lrefと出力信号Soのレベルとを比較する。そして信号処理部90は、図5の(2)に示すように、出力信号Soが閾値Lref以上であれば比較的高レベルとなり、出力信号Soが閾値Lref未満であれば比較的低レベルとなるパルス状の用紙検出信号Spを出力する。用紙検出信号Spは、このように1枚の用紙検出毎にHレベルに立ち上がるので、次々に送られて来る用紙Pを1枚1枚区別して示すものとなっている。
【0051】
なお従来は、反射式の光電センサを前記好適位置に配置する場合も、普通に真っ直ぐな経路を送られる用紙を検出する場合と同様に、センサの出力信号Soが0(ゼロ)レベルに近いか、あるいはそれよりも高いレベルに有るかという点だけに基づいて用紙検出することが考えられていた。したがって、図5の(1)に即して考えれば、領域W1は用紙無し、領域W2は用紙有りという判断になってしまうので、用紙を1枚1枚区別して検出することが困難視されていた。
【0052】
制御部91は、上記パルス状の用紙検出信号Spを受けると、図5の(3)に示すように、該信号Spの立ち上がりから所定時間Tdを置いたタイミングで前記駆動停止信号Stを出力する。それにより搬入装置74のファン74cは、図5の(4)に示すように、1枚の用紙Pを搬送する毎に駆動、停止を繰り返すことになる。ファン74cが停止すれと、搬送ベルト41bに吸着されていた用紙Pがそこから離脱して、下端支持部41の把持部41f内に移載、把持される。そして上記所定時間Tdが適正値に設定されることにより、上記ファン74cが停止するタイミングは、用紙Pの下端部が把持部41f内に所定長さだけ進入する時点とされる。以上により、いずれの用紙Pも把持部41fに対して一定の相対位置を保って把持されるようになる。
【0053】
一方、図3に示した下端支持部41のプーリ41aは、それを回転させる図示外のモータの作動が上記用紙検出信号Spの立ち上がりタイミングと同期してON-OFFされる。そこで、このプーリ41aによって回転される搬送ベルト41bは、図5の(5)に示すように駆動、停止を繰り返すものとなる。この図5の(5)および(1)から分かる通り、第3センサS3の出力信号Soのレベルが前述のように低下し始めるのは、搬送ベルト41bの駆動つまり、用紙Pの移動が始まる時点である。
【0054】
なお図5の(3)に示した所定時間Tdは、搬入装置74から下端支持部41への用紙移載に関わる諸条件に応じて適宜定めればよい。勿論、その値は0(ゼロ)であっても構わない。また用紙検出信号Spは、本実施形態におけるように搬入装置74のファン74cを停止させるタイミングを定めるために利用する他、その他の要素の動作を制御するために利用することも可能である。
【0055】
以上、両面孔版印刷装置1に適用された実施形態について説明したが、本発明はそれに限らず、印刷手段で印刷された用紙を貯留部に重ねて一旦貯留させ、そして貯留部内で用紙をその重なりの方向に移動させる構成を有するその他の印刷装置、例えば用紙反転ユニットは持たない多色印刷装置等に対しても適用可能であり、その場合も前述と同様の効果を奏するものである。すなわち、そのような構成を有する印刷装置において、印刷手段から用紙を貯留部に送る際に、その用紙を1枚ずつ区別して検出したい要望がある場合は、本発明を適用してその要望に応えることができる。
【0056】
また、本発明を両面孔版印刷装置に適用する場合も、印刷装置は上記実施形態の装置に限られるものではなく、例えば装置ハウジング10の上側に、原稿の画像を読み取るスキャナ部や、スキャナ部で読み取った原稿画像の画像データに基づいて生成された孔版画像データに基づいて孔版原紙を穿孔して製版を行う製版部等を備えた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 両面孔版印刷装置
2 給紙台
3 第1の孔版印刷部
4 用紙貯留部
5 第2の孔版印刷部
6 排紙台
7 給紙部
7A 第1中間搬送部
8 第2中間搬送部
9 排紙部
10 装置ハウジング
31 第1ドラム
32 第1プレスローラ
41 下端支持部(用紙移動手段)
41f 把持部
51 第2ドラム
52 第2プレスローラ
73 反転装置
74 搬入装置
82 ピックアップローラ
83 タイミングローラ
90 信号処理部
91 制御部
92 モータ駆動回路
M4 モータ
P 用紙
S3 第3センサ(反射式光電センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に印刷する印刷手段と、
この印刷手段によって印刷がなされた用紙を複数枚、重なり合う状態で一時貯留しておく用紙貯留部と、
印刷がなされた用紙を前記印刷手段から前記用紙貯留部に搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって用紙貯留部内に搬送された用紙を、該用紙貯留部内において前記重なりの方向に移動させる用紙移動手段とを備えてなる印刷装置において、
前記搬送の途中の用紙並びに、前記用紙貯留部内の用紙に検出光を照射する向きに配置された反射式の光電センサと、
この光電センサの出力信号を受け、用紙の前記移動に伴う該信号のレベル変化に基づいて、用紙を1枚ずつ区別して示す用紙検出信号を生成する信号処理部とが設けられたことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記信号処理部が、前記光電センサが前記搬送の途中にある用紙からの反射光を検出したときのその出力信号レベルと、該光電センサが前記反射光を検出する直前に用紙貯留部内の用紙からの反射光を検出したときのその出力信号レベルとの間の値に有る閾値を設定し、この閾値と光電センサの出力信号との大小関係に基づいて用紙検出信号を生成するものであることを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記用紙移動手段に搭載されて、前記搬送手段により用紙貯留部内に搬送された用紙の搬送方向先端部を把持する把持部と、
前記搬送手段において用紙を離脱可能に保持し、保持している用紙の先端部が前記把持部に進入したときその用紙を離脱させる用紙保持手段と、
前記用紙検出信号が入力された後、所定のタイミングで搬送手段を停止させるとともに、前記用紙保持手段を用紙離脱状態に設定する制御手段とが設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−156817(P2011−156817A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22085(P2010−22085)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】