説明

印刷装置

【課題】 画像の上にユーザがサインペン等で手書き文字を記入しても、記入した手書き文字が消えにくくなるような印刷装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 画像が印刷された印刷用紙に、ユーザが文字を記入する場合は、画像の印刷後によるオーバーコートの転写を開始せずに印刷処理を一時停止し、ユーザにより記入完了の指示が入力されたことに応じて、オーバーコートの転写を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を印刷した後にオーバーコートを転写する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のコンパクトフォトプリンタは、表示画面を装着しているタイプが主流となっており、タッチパネル機能を備えているものもある。印刷候補の写真画像を予め表示画面でプレビューしてから印刷している。表示画面も大型化、高解像度化、高画質化が進んでおり、画像を拡大表示して、細部まで確認できるものも出てきている。
【0003】
そのため、従来、写真画像をそのまま印刷するだけであったものが、フレーム等を合成してオリジナル画像を作成して印刷する、画像編集機能を搭載することが可能になってきている。
【0004】
このような画像編集機能を用いて画像に合成するオブジェクトの代表例として、フレーム、スタンプ、ふきだしが挙げられる。ふきだしは、漫画等で使われるセリフ(文字列)部分を表すもので、通常は、被写体人物の顔のそばに配置される。そして、ユーザは、画像に合成して印刷されたふきだし内に、後で、サインペン等で文字を記入することにより、人物がセリフを喋っているような画像を作成することができる。
【0005】
また、コンパクトフォトプリンタとして、昇華性インクを用いた昇華型プリンタがあるが、昇華型プリンタを含む熱転写プリンタは、印刷した画像を保護するために、画像の上にオーバーコートを転写している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−237307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ふきだしを印刷した画像に、特許文献1のように、オーバーコートを転写する場合、以下のような課題が発生する。
【0008】
オーバーコートが転写された印刷物に文字を記入すると、記入した文字や図形は、手で擦ると滲んだり掠れたりしやすい。また、記入した文字は、オーバーコートに保護されないため、紫外線による退色や、指紋の付着、汚れや水濡れに弱い。
【0009】
そこで、本発明では、画像の上にユーザがサインペン等で手書き文字を記入しても、記入した手書き文字が消えにくくなるような印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を達成するため、本発明の印刷装置は、
色インクにより画像を印刷用紙に印刷し、その後、前記画像の上にオーバーコートを転写する印刷手段と、前記画像が印刷された印刷用紙に、ユーザが文字を記入する場合は、前記画像の印刷後に前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始せずに印刷処理を一時停止し、ユーザにより記入完了の指示が入力されたことに応じて、前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始させる制御手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
画像の上にユーザがサインペン等で手書き文字を記入しても、記入した手書き文字が消えにくくなるような印刷装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態にかかる印刷装置および該印刷装置に用いられるカートリッジの外観構成を示す側面図である。
【図2】インクリボンの構成図。
【図3】印刷装置のブロック図。
【図4】従来の印刷物の説明図。
【図5】印刷物の説明図。
【図6】紙カールによる問題を説明する説明図。
【図7】紙カールによる問題を解決する方法の例。
【図8】実施例2の印刷方向補正方法の一例を示す。
【図9】実施例3の紙送り量調整方法の一例を示す。
【図10】実施例1のフローチャートを示す。
【図11】実施例2のフローチャートを示す。
【図12】実施例3のフローチャートを示す。
【図13】本発明を適用可能な印刷装置の例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、図1〜13に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図4は、従来の印刷物による問題点を示す、断面図および俯瞰図である。従来の印刷物においては、図4(B)のように、印刷用紙10表面がオーバーコート24で保護された上に、ユーザはサインペン203を使って文字や図形11を手書きしていた。文字や図形11は、印刷物の最表面にあるため、ユーザが手204で擦ると、図4(C)のように、記入したインクが手に付着して、文字や図形が滲んだり掠れたりするという問題が発生する。
【0015】
そこで、本発明の印刷装置では、ユーザがサインペン等で、手書き文字を記入した後に、オーバーコートを転写する構成とする。そのため、手書き文字が消えず、さらに、手書き文字もオーバーコートで保護することも可能となる。
【0016】
図1は、本実施形態にかかる印刷装置100および印刷装置100に用いられるカートリッジ110の外観構成を示す側面図である。
【0017】
図1に示すように、印刷装置100は、その側面が開閉しカートリッジ110を矢印120方向に着脱可能なハウジング101を備え、該ハウジング101の上部には、表示部108と操作部103とが配されている。
【0018】
表示部108はLCD等の表示画面から構成され、印刷される画像データを表示したり、印刷に必要な設定データを入力するためのメニューを表示したりする。タッチパネルの機能を有し、不図示の指やスタイラスを使って、印刷する画像を選択したり、画像の中の一部領域を選択・トリミング指定するなど、レイアウト編集することも可能である。
【0019】
操作部103は、印刷装置の電源のON/OFFを指示する電源スイッチ104と、表示部102に表示された各種メニューを選択するための選択スイッチ105とを備える。更に、選択スイッチ105の周囲には、表示部102に表示されたカーソルを所望の位置に移動させるための左右キー106と、上下キー107とが配されている。
【0020】
カートリッジ110には、インクが塗布されているインクリボンと、印刷用紙としてのロール紙とが収納されている。インクリボンには、複数の色インクとオーバーコートが塗布されている。カートリッジ110を印刷装置100に装着する前の状態では、ロール紙はハウジング111により覆われた構成となっており、ユーザがロール紙に直接触れることがない構成となっている。印刷時にはロール紙がカートリッジ110から引き出され、インクリボンに塗布されたインクをプリンタエンジン部のサーマルヘッドによりロール紙に転写して、印刷が行われる。
【0021】
112はロール紙が巻き回されたローラの回転軸であり、カートリッジ110を印刷装置100に装着した際には、印刷装置100が有する給紙モータの回転機構と結合され、印刷装置100によって回転が制御される。
【0022】
113、114は、それぞれインクリボンの供給ローラと巻き取りローラの回転軸である。巻き取りローラの回転軸114は、カートリッジ110を印刷装置100に装着した際には、印刷装置100が有するインクリボン巻上げモータの回転機構と結合され、印刷装置100によって回転が制御される。
【0023】
130は、排出した印刷用紙10を積載する、排紙トレイを示す。
【0024】
図2は、本発明のインクリボン20の構成図である。インクリボン20は、通常の印刷に使うカラーインクYeインク21、Mgインク22、Cyインク23と、印刷用紙10全面に転写して表面を保護するための、オーバーコートインク24から構成される。
【0025】
図3は、本実施形態の印刷装置100の機能構成例及びハード構成例を示すブロック図である。
【0026】
図3において、印刷装置100は、PC2またはメモリカードスロット3に挿入された不図示のメモリカードと、またはデジタルカメラ/デジタルビデオカメラなどの撮像装置4と、インターフェース301を介して接続されている。不図示のメモリカードまたは撮像装置4から入力された不図示の画像データ(例えば、JPEGフォーマット)は、インターフェース301を介して、受信バッファ302に格納される。なお、本実施形態においては、撮像装置4側でプリントデータの生成を行うため、撮像装置4から入力されたプリントデータが受信バッファ302に一旦格納される。
【0027】
受信した画像データは、第1の信号処理部303でリサイズや回転などの前処理を施された後、制御部304により、RAM314またはフレームメモリ307に画像データを格納する。ROM315には、プログラムやグラフィック・ユーザ・インターフェース(以下、GUIと呼ぶ)が格納されている。CPU313は、ROMから読み出したプログラムに基づいて、各ブロックの制御や演算処理を行うことで、後述の処理を実行させる。CPU313により動作したGUIによって、表示部108へプレビュー表示したり、入力部103を用いた部数指定などの印刷指示を行ったり、N−UPやトリミングなどの画像処理関連の指定を行ったりすることが可能である。
【0028】
入力部103は、必ずしも操作パネルである必要はなく、タッチパネルを使用しても良い。例えば、表示部108に表示したGUIをタッチすることにより、部数指定などの印刷指示を行ったり、N−UPやトリミングなどの画像処理関連の指定を行ったり、画像の一部をタッチすることで座標入力しても良い。
【0029】
ユーザにより、GUIによって入力部303から印刷指示が行われると、第2の信号処理部309は、フレームメモリ307またはRAM314に格納された画像データを、プリンタエンジン部320が直接解釈できるフォーマットに画像変換する。そして、紙送りのタイミングにあわせてプリンタエンジン部320に送信する。本発明のような3色インクを使用するプリンタの場合、単色のイエロー面、マゼンタ面、シアン面(以下、それぞれYe面、Mg面、Cy面と称す)のそれぞれのデータがプリンタエンジン部320送信され、このデータに応じて各色のインクが転写される。本発明では、Cyインクの転写が終わった、画像の印刷後に、印刷物の表面を保護するために、オーバーコートインクを、有効印刷領域全体に転写する。
【0030】
なお、本実施形態においては、プリントデータが受信されるため、第2の信号処理部309は、必ずしも必要な構成ではなく、プリントデータをプリンタエンジン部320に直接送信するようにしてもよい。また、印刷指示については、撮像装置4から印刷のジョブが送信された場合は、このジョブに応じて制御部304が制御を行う。
【0031】
また、印刷装置100にエラーが発生した場合は、例えば、表示部108にエラーアイコンを点滅させて、ユーザに注意を促す。なお、印刷装置100の中に保持して再利用したいプリントデータや、ダウンロード可能なテンプレートデータは、記録媒体制御部310を経由してハードディスクなどの記録媒体311もしくはリムーバブルディスク(拡張記録媒体)312に格納することができる。
【0032】
(実施例1)
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。
【0033】
図5は、本発明の印刷物を説明する、断面図および俯瞰図である(図5(A))。本発明の印刷物は、記入した文字や図形11を手で擦っても、滲んだり掠れたりすることはない。
【0034】
本発明の印刷物を印刷する手順を、図を使って順に説明する。印刷用紙10表面に、サインペン203で文字や図形11を手書き入力する(図5(B))。印刷用紙10表面全体にオーバーコート24を転写する(図5(C))。文字や図形11は、オーバーコート24によって表面を保護されるため、印刷用紙10表面をユーザが手204で擦っても、滲んだり掠れたりすることはない(図5(D))。
【0035】
図6は、紙がカールした時の問題点を説明する説明図である。
【0036】
印刷用紙10が、紙搬送ローラ140で紙を送り出した時、紙の中央部が窪む、通称「凹カール」になっていると(図6(A))、排紙トレイ130上で、用紙先端に行くほど紙が浮くため、サインペン203によりサインしづらいという問題がある。
【0037】
また、印刷用紙10が、紙搬送ローラ140で紙を送り出した時、紙の中央部が膨らむ、通称「凸カール」になっていると(図6(B))、排紙トレイ130上で、用紙中央部に行くほど紙が浮くため、サインペン203によりサインしづらいという問題がある。
【0038】
図7は、紙カールによる問題を解決するための方法の一例である。紙搬送ローラ140を用いて、印刷用紙10をプリンタ101内部に引き込むことで、露出する紙送り量を小さくし、印刷用紙10が浮かないようにすることで(図7(A))、用紙先端にサインしづらい問題を解決することができる。
【0039】
用紙先端以外にサインする場合の解決方法として、排紙トレイ130に用紙押さえ機構201を追加することにより(図7(B))、印刷用紙10の用紙中央部を浮かないようにして、サインしづらいという問題を解決することができる。
【0040】
図10は、実施例1のフローチャートを示す。
【0041】
まず初めに、画像データの入ったメモリカードを印刷装置に装着することで、画像データを入力する(S1001)。
【0042】
画像データを、印刷データのレイアウト確認方法として、LCD画面にプレビュー表示する(S1002)。
【0043】
プレビュー表示を確認しながら、操作パネル103やLCD画面108のタッチパネル機能を用いて、印刷データをレイアウトする。(S1003)例えば、1頁分の印刷データに2画面を配置する2−up指定や、ふき出し領域を追加する。
【0044】
印刷データのレイアウトを確認後、操作部を用いて、印刷を開始する。(S1004)
印刷データのレイアウトを元に、入力画像データを印刷画像に変換し、面順次でYe面⇒Mg面⇒Cy面の順に画像を転写する。(S1005)
【0045】
全ての色インク(Ye、Mg、Cy)の転写が完了し、印刷画像を印刷後、オーバーコートを転写する前に、サイン記入位置で印刷用紙10の搬送を停止して、印刷処理を一時停止する(S1006)。サイン記入位置とは、印刷用紙の一部が印刷装置外に露出し、ユーザは印刷用紙にサインを記入可能となる位置である。より多くの印刷用紙の領域が露出したほうが、ユーザはサインを記入しやすくなる。そこで印刷用紙がカット紙の場合は、印刷用紙の端部を紙搬送ローラ140で挟持した状態の位置まで印刷用紙を搬送させるとよい。印刷用紙がロール紙の場合は実施例3で、搬送量について説明する。
【0046】
ユーザにより手書きサインが記入されるのをまつ(S1007)。
【0047】
手書きサインの記入が終わったら、ユーザは、操作部を用いて、サイン記入完了通知を出す(S1008)。詳しくは、ユーザが表示部に表示されているサイン完了ボタンを選択して押下する操作を行うと、サイン完了通知が発行される。
【0048】
印刷装置100は、サイン記入完了通知を受け取ると、印刷を再開して(S1009)、オーバーコートの転写を開始する(S1010)。
【0049】
オーバーコートの転写が完了すると、印刷用紙10を排紙トレイ130に排出し、印刷を終了する(S1011)
【0050】
図13は、本発明を適用可能なエンジンタイプの一例である。図13(A)は、排紙方向が上で、用紙タイプがロール紙のエンジンでの適用例である。図13(B)は、排紙方向が前で、用紙タイプがカット紙のエンジンでの適用例である。図13(C)は、排紙方向が上で、用紙タイプがカット紙のエンジンでの適用例である。以上より、オーバーコートの前に印刷を一時中断し、紙の搬送量を制御して、サイン記入位置を指定できることが可能なものであれば、本発明はどんなタイプのエンジンでも適用できる。
【0051】
以上より、印刷用紙10の上に文字や図形11などのサイン部分を記入し、オーバーコート24で覆って保護した、印刷物を得ることができる。
【0052】
本実施例では、色インクの転写がおわり画像の印刷が完了した後、オーバーコートの転写を行わず、ユーザがサインを記入し終えるまで、印刷処理を一時停止した。このような処理は、例えば、印刷モードが、サイン記入モードのときにのみ行い、サイン記入モードでないときは、色インクの印刷後、すぐにオーバーコートの転写を開始するようにしてもよい。
【0053】
また、印刷モードではなく、例えばふきだしや文字記入枠のような文字記入領域を画像に合成して画像と共に印刷する場合にのみ、上述のようにオーバーコートの処理を一時停止させてもよい。
【0054】
(実施例2)
図8は、実施例2の印刷方向補正方法の一例を示す。
【0055】
本実施例では、ユーザがサインを記入するふきだしやサイン記入枠等の文字記入領域を印刷する位置を、ユーザが印刷設定時に自由に設定可能である。
【0056】
また、印刷処理が開始され、印刷用紙が紙搬送ローラ140に狭持されると、オーバーコートの転写が完了するまで、紙搬送ローラ140による印刷用紙の挟持は解除されず、挟持された状態で、紙搬送ローラ140回転させることで印刷用紙が搬送される。これは、紙搬送ローラ140による挟持を解除すると、印刷用紙の位置がずれてしまうため、正しい位置にインクやオーバーコートを転写できなくなってしまうからである。
【0057】
そのため、オーバーコート転写前に、ユーザがサインを記入するために印刷処理を一時停止させたときに紙搬送ローラに狭持されている位置に、文字記入領域が印刷されているといった状況が発生しうる。また、オーバーコートの転写前に、印刷用紙の一部が印刷装置外に露出する位置まで搬送させて印刷処理を一時停止させたとしても、文字記入領域の合成位置によっては、文字記入領域が印刷装置の外に露出しない位置に印刷されているといった状況も発生しうる。そのため、本実施例では、印刷処理の一時停止時に文字記入領域が、印刷装置の外部に露出され、ユーザがサインを記入可能となるように、印刷データを回転させて印刷方向を180度回転させる処理を行っている。
【0058】
図8(B)は、まだ印刷用紙10が引き出されていない状態である。LCD画面108に表示されたプレビューで印刷データのレイアウトを確認して、写真およびサイン領域が下向きになっていることが分かった。このままの状態で印刷を継続すると、排紙トレイ130上に引き出される印刷用紙10に対し、ユーザが文字などをサインしづらいという問題があった。
【0059】
図8(C)は、図8(B)の問題を解決するため、印刷データを180度回転させて、印刷方向変更の補正したものである。この補正により、印刷データが上向きになり、かつ排紙トレイ130上に引き出された印刷用紙10に対しても、ユーザがサインしやすくなった。
【0060】
図8(A)は、印刷レイアウトのプレビュー方向と印刷方向が一致していない場合、どのように補正するかをまとめた、表である。印刷方向が下向きになっていた場合、常に上向きにしてサインしやすくするよう、印刷方向を補正する。もしプレビュー画像が下向きになっていた場合、常に上向きにして見やすくなるよう、プレビュー方向を補正するものである。右向き、左向きの場合は、プレビュー方向と印刷方向が不一致にならないよう、補正する。
【0061】
図8(D)、図8(E)は、補正前の印刷データのレイアウトが1−upで、下向きの印刷データが指定された場合の、補正例である。
【0062】
図8(F)、図8(G)は、補正前の印刷データのレイアウトが2−upで、下向きの印刷データが指定された場合の、補正例である。このように、印刷データのレイアウトを編集することで、元画像データの方向とは関係なく、印刷データの上下方向が変化することがある。
【0063】
このように、ふきたしやサイン記入枠等の文字記入領域の位置に応じて、印刷方向変更の処理を行う。これにより、一時停止時に、ユーザがサインを記入可能な位置、つまり印刷装置から露出する位置に文字記入領域が印刷されるようになる。
【0064】
図11は、レイアウト方向と印刷方向を比較し、画像の方向を回転し補正するための、フローチャートを示す。
【0065】
画像データを含んだメモリカードを印刷装置に装着することにより、画像データを入力する(S1101)。
【0066】
前記画像データを、印刷データのレイアウト確認方法としてのLCD画面にプレビュー表示する(S1102)。
【0067】
前記プレビュー表示を確認しながら、操作パネル103やLCD画面108のタッチパネル機能を用いて、印刷データをレイアウトする(S1103)。例えば、1頁分の印刷データに2画面を配置する2−up指定や、ふき出し領域を追加する。
【0068】
前記プレビュー画面に表示された印刷データの方向と、排紙トレイ130上に配置される印刷用紙10の印刷方向とを比較する(S1104)。
【0069】
印刷データの方向と、印刷用紙の印刷方向を比較した結果、印刷用紙10の印刷方向が上向きになるよう、印刷データを自動的に回転する(S1105)。印刷用紙10の印刷方向を上向きにする理由は、ユーザが文字など記入しやすい方向を持つものをサインしやすくするためである。
【0070】
印刷データのレイアウトを確認し(S1106)、前記操作部を用いて、印刷を開始する(S1107)。
【0071】
印刷開始後の動作は、実施例1と同様である。
【0072】
以上より、入力された印刷データを検知して、ユーザがサインしやすい向きになるよう、印刷画像の向きを自動的に補正できるようになる。
【0073】
(実施例3)
図9は、紙送り量調整方法の一例を示す。
【0074】
図9(A)は、印刷用紙10をデフォルトのサイン指定位置で停止した状態で、LCD画面108に印刷データのプレビュー150、ステータスメッセージ151、サイン記入完了ボタン152を表示している状態を示している。さらに、印刷用紙10上のサイン領域に、サインペン203を使ってサインを記入している。
【0075】
デフォルトのサイン指定位置は、図9(A)のように、ユーザがプレビュー150画面で追加したサイン領域のうち一つが、サインしやすい位置に来た状態が良い。他の方法としては、画像処理で顔検知を行った後、検知した人物の顔全体がちょうど表示される位置を指定してもよい。この場合、人物の顔にヒゲなどを落書きしたり、顔の脇に人物名を書いたりセリフを手書きするような用途が、想定される。
【0076】
図9(A)では、前記プレビュー150にデフォルトのサイン領域1を強調表示し、ステータスメッセージ151を表示することで、ユーザにサイン領域1にサインするよう促している。
【0077】
なお、サイン記入完了ボタン152を押下すると、実施例1で説明したサイン記入完了通知を出し(S1008)、オーバーコートを転写して印刷を終了する。
【0078】
図9(B)は、ユーザがサイン指定位置を微調整して、印刷用紙10の紙送り量を変更する例を示す。図9(B)では、サイン領域2をユーザが手204でタッチして決定することが可能である。サイン領域は表示される画像内において指定可能である。サイン領域2が決定されると、サイン領域2がサインしやすい位置になるよう、印刷用紙10の紙送り量を微調整している。なお、タッチする位置は、あらかじめ決められたサイン領域でなくてもよく、タッチした位置が記入しやすい位置になるよう、紙送り量を微調整してもよい。
【0079】
図9(C)、図9(D)は、サイン領域が印刷用紙10の下部に来た場合の、デフォルトのサイン指定位置と、ユーザが微調整した後のサイン指定位置を示す。図9(C)は、サイン領域がサインしやすい位置に来ているが、人物の顔が印刷装置100内部に残っており、人物の顔周辺にサインを記入することが出来ない。図9(D)は、写っている人物がサインしやすい位置に来るよう、ユーザがプレビュー150をタッチして、微調整した結果である。
【0080】
図9(E)、図9(F)は、サイン領域が印刷用紙10の上端に来た場合の、デフォルトのサイン指定位置と、ユーザが微調整した後のサイン指定位置を示す。
【0081】
図9(E)に関し、本発明の印刷装置100では、グリップローラ140(図6)が印刷面の一部を保持していなければならない。そのため、サイン領域が印刷用紙10上端にあると、デフォルトの状態では、サイン領域の上端がサイン指定位置まで引き出せないという問題があった。
【0082】
図9(F)は、印刷用紙10に余白部分を付加して、印刷面の先端がサイン指定位置になる位置まで引き出せるよう、微調整した結果である。この構成では、印刷用紙10は余白が付加できるようになっている必要があり、ロール紙であることが望ましい。
【0083】
図12は、サイン領域が最適位置に来るように、紙の送り量を調整するための、フローチャートを示す。
【0084】
印刷開始前までの動作は実施例1と同じとし、実施例3では、印刷開始以降の動作だけを説明する。
【0085】
印刷データのレイアウトを確認後、印刷を開始する(S1201)。
【0086】
印刷データのレイアウトを元に、各画面の画像データを、面順次でYe面⇒Mg面⇒Cy面の順に転写する(S1202)。
【0087】
各画像転写後、印刷用紙10をサイン指定位置(デフォルト)で停止する(S1203)。サイン指定位置のデフォルトは、印刷データのレイアウトを元に、自動で決まるものである。
【0088】
前記サイン記入位置から、紙搬送ローラ140が解釈できる紙送りステップ数に変換し、紙送り量を算出する(S1204)。
【0089】
前記紙送り量を元に、紙送りを実施する(S1205)。
【0090】
サイン位置の微調整が指定されたら(S1206)、サイン指定位置を微調整して(S1207)、S1204に戻る。
【0091】
印刷処理の一時停止時に、ユーザにより、手書きサインが記入されるので、サイン記入が完了するのを待つ(S1208)。
【0092】
ユーザは、サインを完了すると、サイン完了ボタン152を押下する。印刷装置は、サイン完了ボタンが押下されるとサイン記入完了通知を出す(S1209)。サイン位置を微調整して、別のサイン指定位置にサインしたい場合は、S1206に戻る。
【0093】
サイン記入完了通知を出した後、印刷を再開する(S1210)。
【0094】
印刷用紙10の上に、オーバーコートを転写して(S1211)、印刷を終了する(S1212)。
【0095】
以上より、印刷データのレイアウトを元に、自動で決められたサイン指定位置で印刷用紙10を止め、サインを記入することが出来るようになる。また、その後ユーザがサイン指定位置を微調整して、サインを記入することが出来るようになる。
【0096】
(その他の実施例)
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。上述の実施形態の一部を適宜組み合わせて実現してもよい。
【0097】
また、上述の実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、記録媒体から直接、或いは有線/無線通信を用いてプログラムを実行可能なコンピュータを有するシステム又は装置に供給し、そのプログラムを実行する場合も本発明に含む。
【0098】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータに供給、インストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も本発明に含まれる。
【0099】
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0100】
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリでもよい。
【0101】
また、プログラムの供給方法としては、コンピュータネットワーク上のサーバに本発明を形成するコンピュータプログラムを記憶し、接続のあったクライアントコンピュータがコンピュータプログラムをダウンロードしてプログラムするような方法も考えられる。
【0102】
また、実施例ではタッチパネル形態のLCD表示装置を例に挙げているが、マウスを使った操作や、LCD以外の表示装置を使ったものでも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色インクにより画像を印刷用紙に印刷し、その後、前記画像の上にオーバーコートを転写する印刷手段と、
前記画像が印刷された印刷用紙に、ユーザが文字を記入する場合は、前記画像の印刷後に前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始せずに印刷処理を一時停止し、ユーザにより記入完了の指示が入力されたことに応じて、前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始させる制御手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記画像と共に文字記入領域を印刷する場合に、前記制御手段は、前記画像の印刷後に前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始せず、ユーザにより記入完了の指示が入力されたことに応じて、前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷手段による画像の印刷およびオーバーコートの転写の時に、印刷用紙を挟持しながら搬送させるための搬送手段を有し、
前記色インクによる画像の印刷および前記オーバーコートの転写が完了するまでは、前記搬送手段は、前記印刷用紙を挟持し続けていることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記文字記入領域の位置に応じて、画像および文字記入領域を180度回転させることにより、画像の印刷方向を変更する印刷方向変更手段と、を有することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記印刷方向変更手段は、前記印刷処理の一時停止時に前記印刷装置の外に露出している印刷用紙の部分に、前記文字記入領域が位置するように前記画像および前記文字記入領域を回転させることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷処理を一時停止したときに、前記搬送手段により挟持されている位置に前記文字記入領域が配置されている場合に、前記印刷方向変更手段により前記画像の印刷方向を変更することを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記印刷手段による画像の印刷およびオーバーコートの転写時に、印刷用紙を挟持しながら搬送させるための搬送手段を有し、
前記色インクによる画像の印刷および前記オーバーコートの転写が完了するまでは、前記搬送手段は、前記印刷用紙を挟持し続けていることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記制御手段は、ユーザが文字を記入するための印刷モードに設定されている場合に、前記画像の印刷後に前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始せずに印刷処理を一時停止し、ユーザにより記入完了の指示が入力されたことに応じて、前記印刷手段による前記オーバーコートの転写を開始させることを特徴とする請求項1または7に記載の印刷装置。
【請求項9】
文字を記入する位置を前記画像内において指定する指定手段を有し、
前記印刷用紙はロール紙であり、前記制御手段は、前記画像の印刷後に、前記指定手段により指定された位置が、前記印刷装置から露出する位置まで前記ロール紙を搬送させることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−111878(P2013−111878A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260904(P2011−260904)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】