説明

印刷装置

【課題】パルスモータの駆動力により被印字媒体の搬送を行う印刷装置において、目標速度までの加減速を確実に円滑に実行する。
【解決手段】印刷装置1は、パルスモータ24と、被印字テープ3Aを搬送するプラテンローラ22と、複数の発熱素子を備え、かつ搬送方向と直交する方向に沿った複数の発熱領域ごとに可変に分割して給電可能なサーマルヘッド23と、パルスモータ24の回転速度を制御するモータ駆動回路31と、ライン印字データごとに通電態様を切り替えつつ、印字データに対応した通電制御を行うサーマルヘッド制御回路32と、を有する。そして、パルスモータ24の停止状態から最高速度状態までの間に対応した所定の第1パルス数範囲の1/2である1ブロックを単位として、現在速度と目標速度との偏差によりパルスモータ24の回転速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被印字媒体に対し所望の印字形成を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サーマルヘッドを用いる印刷装置においては、搬送手段が被印字媒体を搬送し、その搬送される被印字媒体に対しサーマルヘッドの複数の発熱素子が印字を行い、印刷物を作成する。搬送手段の駆動源としてパルスモータ(ステッピングモータ)を用いる従来技術として、例えば、特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
上記従来技術のようにパルスモータを用いる印刷装置では、パルスモータの目標速度の設定は、サーマルヘッドでの通電制御内容に対応して行われる。すなわち、サーマルヘッドは、それぞれが複数の発熱素子を備えた複数の発熱領域(ブロック)へと可変に分割可能に構成されており、それら分割された発熱領域ごとに個別に通電可能となっている。これにより、罫線や黒ベタ領域の印字を行うとき等の多数の発熱素子への通電を行う必要がある場合であっても、複数の発熱領域を時系列的に近接した間隔で順次通電することにより、限られたエネルギ量の範囲内で多数の発熱素子に対する通電を円滑かつ確実に行い、当該罫線や黒ベタ領域等の印字を確実に実行することができる。そして、上記従来技術では、印刷時に何個の発熱領域に分割するべきであるか(=分割数)を、印刷するドット数によって動的に変動させる、いわゆる動的分割駆動が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−320941号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、上記動的分割駆動の実行に対応して、上記目標速度の算出時に、算出する目標速度の値自体を、例えば前回のドットラインのモータ周期や予め記憶されたモータ基本周期等を用いて所定の制約にしたがって補正する。これにより、上記動的分割駆動において多分割から少分割への急激な変動や少分割から多分割への急激な変動を行うときに、モータ回転周期の変動によって駆動音が大きくなったり脱調するのを防止することができる。
【0006】
しかしながら、上記のように算出する目標速度の値自体を補正する手法では、加減速条件によっては円滑な動作ができなくなるおそれがある。この結果、目標速度までの加減速を円滑に実行できない可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、パルスモータの駆動力により被印字媒体の搬送を行う印刷装置において、目標速度までの加減速を確実に円滑に実行できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明は、パルスモータと、前記パルスモータの駆動力を用いて被印字媒体を搬送するための搬送手段と、前記被印字媒体を前記搬送方向に印字解像度に区分してなる各印字ライン上にドットをそれぞれ形成する複数の発熱素子を備えるとともに、前記搬送方向と直交する方向に沿った複数の発熱領域ごとに可変に分割して給電可能なサーマルヘッドと、前記パルスモータの回転速度を制御する搬送制御手段と、前記搬送手段による搬送の開始後、印字を行うための印字データを1つの前記印字ライン単位に分割したライン印字データごとに通電態様を切り替えつつ、前記印字データに対応した通電制御を行う印字制御手段と、を有する、印刷装置であって、前記印刷装置の動作環境に係わる第1動作環境情報に基づき、前記発熱領域への1回の通電時間を決定する通電時間決定手段と、Nを2以上の整数としたとき、前記パルスモータの停止状態から最高速度状態までの間に対応した所定の第1ライン数範囲の1/Nである1ブロックを単位として、前記1ブロックにおける前記パルスモータの加減速開始点から加減速完了点までの加減速挙動をそれぞれ定めた複数種類の加減速テーブルを記憶した、第1記憶手段と、予め離散して段階的に定められた前記パルスモータの複数の設定速度を記憶した、第2記憶手段と、処理起点となる起点ブロックから前記起点ブロックのN個後の順番のブロックまでの、処理対象となる第2ライン数範囲に関する第2動作環境情報に基づき、前記第2ライン数範囲における、同時に通電される前記複数の発熱素子の最大値である最大同時オンドット数を決定するオンドット数決定手段と、前記オンドット数決定手段により決定された前記最大同時オンドット数に基づき、前記第2ライン数範囲における、分割されて給電される前記発熱領域の数の最大値である最大分割数を決定する分割数決定手段と、前記通電時間決定手段により決定された前記通電時間と、前記分割数決定手段により決定された前記最大分割数とに基づき、前記ライン印字データごとの通電タイミングの間隔である印字周期を決定する印字周期決定手段と、前記第2記憶手段に記憶された前記複数の設定速度の中から、前記印字周期決定手段により決定された前記印字周期に応じた速度を、目標速度として選択する目標速度選択手段と、前記目標速度選択手段により選択された前記目標速度が、前記第1記憶手段に記憶された前記1ブロック単位の加減速テーブルの適用範囲外となる場合には、適用範囲内となるように、前記選択された目標速度を、前記第2記憶手段に記憶された前記複数の設定速度に含まれる別の速度に置き換える、目標速度置換手段と、現在の速度と、前記別の速度に置き換えられた新たな目標速度とに基づき、前記第1記憶手段に記憶された前記複数種類の加減速テーブルから、対応する特定の加減速テーブルを選択するテーブル選択手段と、を有し、前記搬送制御手段は、前記テーブル選択手段により選択された前記特定の加減速テーブルを用いて前記パルスモータの回転速度を制御し、前記印字制御手段は、前記印字決定手段により決定された前記印字周期に基づき、前記通電制御を行うことを特徴とする。
【0009】
本願発明の印刷装置においては、搬送手段が被印字媒体を搬送し、その搬送される被印字媒体に対し、サーマルヘッドの複数の発熱素子が印字を行い、印刷物を作成する。
【0010】
ここで、搬送手段の駆動源としてはパルスモータが用いられ、パルスモータの回転速度は搬送制御手段によって制御される。パルスモータはパルス1つを与えること(励磁相を次の状態に切り替えること)で所定角度の回転を行い、当該パルスを与える間隔を短くしたり長くしたりすることで回転速度の制御が行われる。当該間隔を徐々に短くすることで回転速度を加速することができ、当該間隔を徐々に長くすることで回転速度を減速することができる。本願発明においては、このようなパルスモータの加速挙動(若しくは、減速挙動)を実現するために、予め、パルス付与間隔の最小値及びその最小値まで減少させるときの態様(若しくは、最大値及びその最大値まで増大させるときの態様)をパターン化し、複数種類の加減速テーブルとして用意しておく。これにより、搬送制御手段が実際にパルスモータの回転速度を制御する際には、当該複数種類のテーブルからいずれか1つを選択し、当該選択した加減速テーブルに沿ってパルスモータへパルスを発することにより、所望の加速挙動(若しくは減速挙動)を容易に実現することができる。
【0011】
ここで、モータは、慣性の大きな回転子を回転させる構成であることから、急加速や急減速は困難である。また、各モータの特性上、停止状態から最高速度状態まで、脱調が発生せず効率のよい駆動制御を行えるライン−速度相関が概ね一意的に定まる。そこで、一般的には、パルスモータの停止状態から最高速度状態までの間に対応した所定のライン数範囲(以下適宜、「加減速ライン数」という)を1単位として、上記加減速テーブルでは、上記加減速ライン数における加減速開始点から加減速完了点までの加減速挙動が定められる。すなわち、速度制御時には、現在から上記加減速ライン数だけ後において実現すべきパルスモータの目標速度が設定され、現在速度と、上記加減速パルス後の上記目標速度との偏差に応じて上記加減速テーブルが選択され、モータ速度が制御される。
【0012】
しかしながら、例えば高速印刷モードのように通常よりも高速での搬送が行われる場合は上記加減速ライン数の値(上記所定のライン数範囲の大きさ)が大きくなり、上記のような加減速ライン数を単位とする制御では、加減速テーブルのパターンの種類によっては著しく印字処理が遅くなる恐れがある。このため、例えば通常の速度では文字と文字との間の無印刷部分においてモータ速度を最高速度状態まで加速できていたのが上記高速化によってできなくなったり、多数の発熱素子の通電が必要な罫線や黒ベタ等では(もともと印字処理の遅い時間が長いことから)上記高速化により最高速度が上がっても当該最高速度に到達するまでの時間が増大し、かえって通常印刷モードよりも長い処理時間がかかったりする恐れがある。これを回避するために、トルクの大きなパルスモータを使用して上記加減速ライン数を小さくすることが考えられるが、トルク増大のためにはモータの大型化や重量増大を招いたり特殊な電源が必要となったりする。
【0013】
そこで、本願発明においては、パルスモータの停止状態から最高速度状態までの間に対応した上記所定のライン数範囲(加減速ライン数)を1単位とするのではなく、その1/N(N:2以上の整数)を1ブロックとして、当該ブロック単位で速度制御を行う。すなわち、上記1ブロックでの加減速挙動が加減速テーブルとして第1記憶手段に記憶されており、この加減速テーブルからテーブル選択手段によって選択された特定の加減速テーブルを用いて、搬送制御手段がパルスモータの回転速度を制御する。このようにして従来よりも細かい間隔でテーブルを適用して制御を行うことにより、上記のようにモータの大型化や重量増大を招くことなく、また特殊な電源を用いなくても、高速印刷(高速搬送)に対応することができる。
【0014】
ところで、上記のパルスモータの目標速度の設定は、サーマルヘッドでの通電制御内容に対応して行われる。すなわち、サーマルヘッドには複数の発熱素子が備えられており、当該複数の発熱素子への通電は印字制御手段によって制御される。本願発明においては、サーマルヘッドは、それぞれが複数の発熱素子を備えた複数の発熱領域へと可変に分割可能に構成されており、それら分割された発熱領域ごとに個別に通電可能となっている。これにより、罫線や黒ベタ領域の印字を行うとき等の多数の発熱素子への通電を行う必要がある場合であっても、複数の発熱領域を時系列的に近接した間隔で順次通電することにより、限られたエネルギ量の範囲内で多数の発熱素子に対する通電を円滑かつ確実に行い、当該罫線や黒ベタ領域等の印字を確実に実行することができる。そして、このときに何個の発熱領域に分割するべきであるか(=分割数)については、現在処理中のブロックよりも後に処理するブロックでの処理内容を考慮して、決定される。具体的には、起点ブロックからそのN個後のブロックまでの第2ライン数範囲における(例えばサーマルヘッドの電圧やサーマルヘッドの抵抗値等の)第2動作環境情報に基づき当該第2ライン数範囲の最大同時オンドット数がオンドット数決定手段により決定され、その最大同時オンドット数に応じて、分割数決定手段が当該第2ライン数範囲での最大分割数を決定する。一方このとき、通電時間決定手段により、サーマルヘッドの発熱領域への1回の通電時間が(印刷装置の電圧や温度等の)第1動作環境情報に基づき1回の通電時間を決定される。そして、この決定された通電時間と上記決定された最大分割数とに基づき、印字周期決定手段によって通電タイミング間隔(=印字周期)が決定され、この決定された印字周期に応じて目標速度が決定される。このとき、本願発明においては、パルスモータの複数の設定速度値が予め離散して段階的に定められており、それら複数の設定速度値は第2記憶手段に記憶されている。この記憶された複数の設定速度のうち、前述のようにして決定された印字周期に応じたものが、目標速度として目標速度選択手段により選択される。これにより、目標速度を簡素な制御で容易かつ迅速に決定することができる。
【0015】
ここで、前述した所定のライン数範囲(加減速ライン数)は、パルスモータの停止状態から最高速度状態までの間に対応したものである。したがって、上記のように当該加減速ライン数の1/N(N:2以上の整数)を1ブロックとして制御を行う本願発明の手法では、現在速度と目標速度との差が大きい場合に、モータ性能上、当該1ブロック内では当該目標速度までの加減速を実現できない場合があり得る。そこで、本願発明では、このような場合には、上記のようにして目標速度選択手段により選択された目標速度の置き換えが行われる。すなわち、本願発明では、例えばパルスモータの標準的な特性を表す、停止状態と最高速度状態との間での基準加減速特性を定めたライン−速度相関が予め実測により決定されている。そして、前述のようにして目標速度選択手段によって目標速度が選択されたときに、当該目標速度が上記ライン−速度相関を逸脱し遵守範囲外との値となる場合(言い換えれば、目標速度が上記1ブロック単位の加減速テーブルの適用範囲外となる場合)には、目標速度置換手段が、目標速度の置き換えを行う。つまり、目標速度置換手段は、上記選択された目標速度を、第2記憶手段に記憶された複数の設定速度に含まれる別の速度に置き換えることで、上記ライン−速度相関を逸脱しない遵守範囲内の値となるように(言い換えれば、目標速度が上記1ブロック単位の加減速テーブルの適用範囲内となるように)ようにする。そして、テーブル選択手段は、上記置き換えられた目標速度に基づいて、対応する特定の加減速テーブルの選択を行う。これにより、現在速度と目標速度との差が大きい場合であっても、確実に当該目標速度までの加減速を実行することができる。特にこのとき、上記のように、予め複数用意された設定速度の中から目標速度を別の値に置き換える手法とすることにより、算出する目標速度の値自体を(例えば前回のドットラインのモータ周期や予め記憶されたモータ基本周期等を用いて)所定の制約にしたがって補正する場合のように、加減速条件によっては円滑な動作ができなくなるという可能性がなくなる。すなわち、目標速度までの加減速を確実に円滑に実行することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、パルスモータの駆動力により被印字媒体の搬送を行うとき、目標速度までの加減速を確実に円滑に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の印刷装置の一実施形態の外観を表す斜視図である。
【図2】上カバーを開いた状態の印刷装置を表す斜視図である。
【図3】印刷装置の前後方向に沿う側断面図である。
【図4】印刷装置の制御系を表す機能ブロック図である。
【図5】実測によって決定された基本モータテーブルである。
【図6】停止状態から最高速度状態までの間に対応した24パルスを1単位としてパルスモータを制御する場合、及び、24パルスの1/2である12パルスをブロック単位としてパルスモータを制御する場合、をそれぞれ表す説明図である。
【図7】ROMが記憶した加減速テーブルである。
【図8】ROMが記憶した加減速テーブルである。
【図9】ROMが記憶した加減速テーブルである。
【図10】ROMが記憶した加減速テーブルである。
【図11】24パルスを制御単位としてパルスモータを制御する比較例と、12パルスを制御単位としてパルスモータを制御する本実施形態と、を対比して表す説明図ある。
【図12】ROMが記憶した目標速度テーブルである。
【図13】ROMが記憶した目標速度の目標速度置換テーブルである。
【図14】CPUが実行する制御手順を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0019】
<印刷装置の構成>
本発明の印刷装置の一実施形態の概略構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1〜図3に示すように、本実施形態の印刷装置1は、筺体2と、上カバー5とを備えている。筺体2の前部には、上カバー5に続く後端部に樹脂製のトレー6が立設され、トレー6の前方に電源ボタン7が配置され、電源ボタン7の下方に、カッターユニット8(図3参照)を切断動作させるカッターレバー9が、筺体2の幅方向(左右方向)に移動可能に設けられている。
【0020】
筺体2の左側部には、サーマルヘッド23(図3参照)を上下動させる操作レバー21が上下方向に回動に設けられている。筺体2の背面には、電源コード10が接続され、また、パーソナルコンピュータ26(後述の図4参照)と接続するUSB(Universal Serial Bus)等から構成されるコネクタ部(図示せず)が設けられている。上カバー5は、後方端部において筐体2に回動可能に接続されており、これにより上カバー5は筐体2に対し開閉可能な構造となっている。
【0021】
また、印刷装置1は、図2及び図3に示すように、筐体2の内部空間の後方に、凹状のホルダ収納部4を有している。このホルダ収納部4に、被印字テープ3A(被印字媒体)のロール3を取り付けたロールホルダ3aが、ロール幅方向を筺体2の幅方向に一致させて、被印字テープ3Aをロール上側より繰り出すように収納されている。被印字テープ3Aは、自己発色性を有する被印字層を備えた長尺状の感熱シート(いわゆる、サーマルペーパー)や、該感熱シートの片面に、被着体に貼り付けるための粘着剤層を介して離形紙が張り合わされた長尺状のラベルシート等からなり、巻芯に巻回してロール3を形成している。
【0022】
ロールホルダ3aは、ロール3の幅方向一方側(図2の左側)のガイド部材13と、ロール3の幅方向他方側(図2の右側)の保持部材12と、これら保持部材12とガイド部材13とを連結する軸部材(図示せず)とを備えている。ロール3の巻芯は、ガイド部材13を外した上記軸部材に挿通され、軸部材の巻芯から突出したロール幅方向一方側の端部にガイド部材13が固定される。これにより、ロール3の幅方向一方側端部がガイド部材13に接触し、ロール3の幅方向他方側端部が保持部材12に接触した状態で、ロール3が軸部材4の廻りに回転可能にロールホルダ3aに取り付けられる。
【0023】
ロールホルダ3aのガイド部材13は、図3に示すように、ロール3から繰り出し搬送される被印字テープ3Aを案内するためのテープ搬送方向に延出した案内部13aを備えている。案内部13aの下端は水平に形成されている。一方、ホルダ収納部4の前方部には、水平な載置部20が設けられている。ホルダ収納部4のロール幅方向他方側には、図2に示すように、上向きに開口した長穴状の位置決め溝部16を有するホルダ支持部材15が立設されている。ホルダ収納部4に挿入したロールホルダ3aは、ガイド部材13の案内部13aがホルダ収納部4の載置部20に載置され、保持部材12の取付部12aがホルダ支持部材15の位置決め溝部16に嵌合される。これにより、ロールホルダ3aがホルダ収納部4に着脱自在に取り付けられる。
【0024】
ホルダ収納部4の前方部の載置部20のテープ搬送方向下流側には、図3に示すように、上下動可能に設置されたサーマルヘッド23が配置され、このサーマルヘッド23の上方に、プラテンローラ22(搬送手段)が対向配置されている。ホルダ収納部4の前方部は、載置部20から下方向に折曲して前方に延び、ロール3から繰り出し・搬送される被印字テープ3Aをプラテンローラ22とサーマルヘッド23との対向部へと挿入する挿入口18に至っている。
【0025】
プラテンローラ22は、ロール3からの被印字テープ3Aを上方に移動されたサーマルヘッド23との間で挟持し、パルスモータ24(後述の図4参照)により回転駆動されることによって被印字テープ3Aを搬送する。
【0026】
サーマルヘッド23は、被印字テープ3Aをテープ搬送方向に印字解像度に区分してなる各印字ライン上にドットをそれぞれ形成する、テープ搬送方向と直交する直交方向に配列された複数の発熱素子(図示せず)を備えている。サーマルヘッド23は、印刷データにしたがって発熱素子に通電することによって、プラテンローラ22との間で挟持した被印字テープ3Aの上記被印字層(下側の表面)に対し印字データに応じた印刷を行う。なお、このサーマルヘッド23は、筺体2の左側部の上記操作レバー21を上方に回動させると、下方に移動されてプラテンローラ22から離間し、操作レバー21を下方に回動させると、上方に移動されて被印字テープ3Aを介してプラテンローラ22に圧接され、印刷可能な状態になる。
【0027】
サーマルヘッド23のテープ搬送方向下流側には、被印字テープ3Aの幅方向に移動自在な上記カッターユニット8が配置されている。カッターユニット8は、筺体2の前部下方の上記カッターレバー9を筺体2の幅方向に移動すると、被印字テープ3Aの幅方向に移動して、サーマルヘッド23による印刷が終了し、トレー6に排出された印刷済みの被印字テープ3Aを幅方向に切断する。
【0028】
<印刷操作>
上記印刷装置1の印刷操作について説明する。まず、操作レバー21を上方に回動して、サーマルヘッド23をプラテンローラ22に対し下方に離間した状態に位置させる。その状態で、ロール3を取り付けたロールホルダ3aをホルダ収納部3aに挿入し、ロールホルダ3aの保持部材12の取付部12aをホルダ支持部材15の位置決め溝部16に嵌め込み、ロールホルダ3aのガイド部材13の案内部13aの下面を載置部20に当接させ、ロール3を取り付けたロールホルダ3aをホルダ収納部4に着脱自在に収納する。続いて、被印字テープ3Aの幅方向一方側の端部をガイド部材13の内側面に当接させつつ、ロール3から被印字テープ3Aを引き出し、引き出された被印字テープ3Aの幅方向他方側の端部を挿入口18のロール幅方向他方側の縁部に当接させつつ、被印字テープ3Aを挿入口18に挿入し、被印字テープ3Aの搬送方向先端部をプラテンローラ22とサーマルヘッド23との間に位置させる。その後、上カバー5を閉じてホルダ収納部4の上側を覆う(図1の状態である)。
【0029】
次に、操作レバー21を下方に回動して、サーマルヘッド23を被印字テープ3Aを介してプラテンローラ22に圧接させた状態に位置させる。そして、パルスモータ24(後述の図4参照)によりプラテンローラ22を回転駆動して、プラテンローラ22により被印字テープ3Aを搬送させる一方、サーマルヘッド23の発熱素子に通電して、発熱素子により被印字テープ3Aの印刷面に印刷データに対応した印字を順次印刷させる。サーマルヘッド23を通過した被印字テープ3Aは、上カバー5と筐体2との間からトレー6上に排出される。そして、被印字テープ3Aへの所定の印刷が終了し、カッターユニット8からの排出長さが所定長に達した時点で、カットレバー9を右側方向に移動操作することによって、被印字テープ3Aが幅方向に切断され、所定の印刷を施した所定長のラベル(印刷物)が作成される。
【0030】
<制御系>
本実施形態の印刷装置1の制御系について、図4により説明する。図4において、印刷装置1の制御系には、制御回路210が配置されている。制御回路210には、CPU27と、このCPU27に接続されたROM28と、SRAM29とを備えている。なお、ROM28が、各請求項記載の第1記憶手段及び第2記憶手段として機能する。また、CPU27には、インターフェース30を介してモータ駆動回路31(搬送制御手段)と、サーマルヘッド制御回路32(印字制御手段)とが接続され、さらに外部機器としてパーソナルコンピュータ26が接続されている。モータ駆動回路31にはパルスモータ24が接続され、サーマルヘッド制御回路32にはサーマルヘッド23が接続されている。なお、本実施形態では、以下、パルスモータ24について、1ライン−1パルスとして対応づけられている場合を例にとって説明する。また、すなわち、パルスモータ24への1パルスの付与により、プラテンローラ22の回転駆動によって、被印字テープ3Aが、搬送方向に印字解像度に区分した印刷ラインの1ライン分だけ搬送されるようになっている。しかしながら、これに限られるものではなく、その他1ライン−2パルス等、他の対応付けであってもよい。
【0031】
ROM28には、データテーブルとして、加減速テーブル33と、目標速度テーブル35とが記憶され、アプリケーションプログラムとして、印刷データ先読みプログラム36と、目標速度置換テーブル37とが記憶されている。なお、これら加減速テーブル33、目標速度テーブル35、印刷データ先読みプログラム36、及び目標速度置換テーブル37の詳細については、後述の基本モータテーブル34とともに後に説明する。
【0032】
SRAM29は、CPU27のデータ処理に必要な一時的なデータの記憶を行うものであり、プリントバッファ40と、分割数メモリ41とを備えている。
【0033】
プリントバッファ40は、パーソナルコンピュータ26より送信された印刷データを記憶する。
【0034】
分割数メモリ41は、サーマルヘッド23が分割されて給電される発熱領域の数の最大値である最大分割数M(詳細は後述)を記憶する。
【0035】
パルスモータ24は、プラテンローラ22を回転駆動して、プラテンローラ22により被印字テープ3Aを搬送させる。
【0036】
モータ駆動回路31は、パルスモータ24に付与するパルスにより、パルスモータ24を回転駆動し回転速度を制御する。
【0037】
サーマルヘッド制御回路32は、プラテンローラ23による被印字テープ3Aの搬送の開始後、印字を行うための印字データを1つの印字ライン単位に分割したライン印字データごとに通電態様を切り替えつつ、サーマルヘッド23の発熱素子に印字データに対応した通電制御を行う。なおこのとき、サーマルヘッド23の複数の発熱素子は、テープ搬送方向と直交する直交方向に沿って分割した複数の発熱領域ごとに通電可能となっている(詳細は後述)。
【0038】
CPU27は、パーソナルコンピュータ28から送信されプリントバッファ40に記憶された印刷データに基づき、加減速テーブル33等のテーブル類と印刷データ先読みプログラム36等のアプリケーションプログラムなどを使用して、印刷装置1のモータ駆動回路31及びサーマルヘッド制御回路32等の各部を制御して、被印字テープ3Aに印刷データに対応した所定の印刷を行わせる。
【0039】
<本実施形態の特徴>
上記構成において、本実施形態の特徴は、パルスモータ24の停止状態から最高速度状態までの間に対応した所定のパルス数範囲を1単位とするのではなく、その1/N(N:2以上の整数)を1ブロックとして、当該ブロック単位でパルスモータ24の速度制御を行うことである。以下、その詳細を順を追って説明する。
【0040】
<パルスモータの一般的特性>
前述したように、パルスモータ24は、被印字テープ3Aを搬送するプラテンローラ22の駆動源であり、その回転速度は上記モータ駆動回路31によって制御される。パルスモータ24はパルス1つを与えること(励磁相を次の状態に切り替えること)で所定角度の回転を行い、当該パルスを与える間隔(パルス周期)を短くしたり長くしたりすることで回転速度の制御が行われる。当該間隔を徐々に短くすることでパルスモータ24の回転速度を加速することができ、当該間隔を徐々に長くすることでパルスモータ24の回転速度を減速することができる。
【0041】
本実施形態においては、このようなパルスモータ24の加速挙動(若しくは、減速挙動)を実現するために、予め、パルス付与間隔の最小値及びその最小値まで減少させるときの態様(若しくは、最大値及びその最大値まで増大させるときの態様)がパターン化され、ROM28内に、複数種類の上記加減速テーブル33として用意されている(後述の図7〜図10参照)。これにより、モータ駆動回路31が実際にパルスモータ24の回転速度を制御する際には、その複数種類のテーブルからいずれか1つを選択し、当該選択した加減速テーブルに沿ってパルスモータ24へパルスを発することにより、所望の加速挙動(若しくは減速挙動)を容易に実現することができる。
【0042】
<基本モータテーブル>
ここで、モータは、慣性の大きな回転子を回転させる構成であることから、急加速や急減速は困難である。また、各モータの特性上、停止状態から最高速度状態まで、脱調が発生せず効率のよい駆動制御を行えるパルス−速度相関が概ね一意的に定まる。そこで、一般的には、パルスモータ24の停止状態から最高速度状態までの間に対応した所定の第1パルス数範囲(以下適宜、「加減速パルス数」という。)を1単位として、上記複数種類用意される加減速テーブルにおいては、上記加減速パルス数における加減速開始点から加減速完了点までの加減速挙動が定められる。なお、上記第1パルス範囲が各請求項記載の第1ライン数範囲に相当し、上記加減速パルス数が各請求項記載の加減速ライン数に相当している。
【0043】
本実施形態においては、パルスモータ24の、停止状態と最高速度状態との間での基準加減速特性を定めた上記パルス−速度相関(ライン−速度相関)が、上記基本モータテーブル34として実測によって決定されている。図5に、上記基本モータテーブル34の一例を示す。なお、「速度」は、パルスモータ24の速度を、プラテンローラ22による被印字テープ3Aの搬送速度[mm/s]を用いて表したものであり、「ライン」は前述した、被印字テープ3Aを搬送方向に印字解像度に区分した印刷ラインを表す。この例では、パルスモータ24は、停止状態から1ライン後の第1ライン(第1パルス)では24.3[mm/s](パルスモータ24に印加するパルスの間隔である周期に換算すると3484[μs]。以下同様)となり、その次の第2ライン(第2パルス)では36.3[mm/s](周期2336[μs])となり、以降、次第に加速していって、最終の第24ライン(第24パルス)では最高速度1183[mm/s](周期716[μs])に達する特性となっている。
【0044】
したがって、上述の通常の手法に基づけば、上記複数種類用意される加減速テーブルにおいては、上記24パルス(前述の1ライン−1パルスの前提において24ラインに相当)を1単位として、加減速開始点から加減速完了点までの加減速挙動が定められることとなる。この場合、速度制御時には、現在から上記加減速パルス数(24パルス)だけ後において実現すべきパルスモータ24の目標速度が設定され、現在速度と、上記加減速パルス後の上記目標速度との偏差に応じて上記加減速テーブルが選択され、モータ速度が制御されることとなる。
【0045】
しかしながら、例えば高速印刷モードのように通常よりも高速での搬送が行われる場合は上記加減速パルス数の値(上記第1パルス数範囲の大きさ)が大きくなり、上記のような加減速パルス数(上述の例では24パルス)を単位とする制御では、加減速テーブルのパターンの種類によっては著しく印字処理が遅くなる恐れがある。このため、例えば通常の速度では文字と文字との間の無印刷部分においてモータ速度を最高速度状態まで加速できていたのが上記高速化によってできなくなったり、多数の発熱素子の通電が必要な罫線や黒ベタ等では(もともと印字処理の遅い時間が長いことから)上記高速化により最高速度が上がっても当該最高速度に到達するまでの時間が増大し、かえって通常印刷モードよりも長い処理時間がかかったりする恐れがある。これを回避するために、トルクの大きなパルスモータを使用して上記加減速パルス数を小さくすることが考えられるが、トルク増大のためにはモータの大型化や重量増大を招いたり特殊な電源が必要となったりする。
【0046】
<ブロック単位の速度制御>
そこで、本実施形態においては、パルスモータ24の停止状態から最高速度状態までの間に対応した上記第1パルス数範囲(加減速パルス数)を1単位とするのではなく、その1/N(N:2以上の整数。この例ではN=2)を1ブロックとして、当該ブロック単位で速度制御を行う。具体的には、例えば図6(a)に示すような、停止状態(概念的に「速度0」で表す)からの加速開始後、上記加減速パルス数(24パルス)で最高速度状態(「速度120」で表す)となる特性の上記パルスモータ24に対し、本実施形態では、図6(b)に示すように、12パルスを1単位として、速度制御を行う。
【0047】
すなわち、本実施形態での速度制御時には、現在から12パルスだけ後において実現すべきパルスモータ24の目標速度が設定され、現在速度と、上記12パルス後の上記目標速度との偏差に応じて上記加減速テーブルが選択され、モータ速度が制御されることとなる。そのために、本実施形態では、12パルス範囲でのパルスモータ24の加減速開始点から加減速完了点までの複数種類の加減速挙動を定めた、上記加減速テーブル33が予め用意されている。
【0048】
<加減速テーブル>
加減速テーブル33の例を図7、図8、図9、及び図10に示す。図7〜図10において、「Tm0」はパルスモータ24の加減速開始点の速度(言い換えれば周期)であり、「Tm1′」はパルスモータ24の加減速完了点の速度(言い換えれば周期)であり、「ライン」は、前述同様、被印字テープ3Aを搬送方向に印字解像度に区分した前述の印刷ラインを示す。
【0049】
図7〜図10において、本実施形態では後述のように目標速度が0〜6の7段階に離散的に設定されている(図12参照)のに対応し、加減速開始点の速度Tm0、加減速完了点の速度Tm1′も、「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」の7つの区分番号で表される7段階に区分されている。そして、「0」区分のTm0で加減速開始して「0」区分のTm1′で加減速開始終了する「0→0」テーブル、「0」区分のTm0で加減速開始して「1」区分のTm1′で加減速開始終了する「0→1」テーブル、・・、「0」区分のTm0で加減速開始して「6」区分のTm1′で加減速開始終了する「0→6」テーブル、「1」区分のTm0で加減速開始して「0」区分のTm1′で加減速開始終了する「1→0」テーブル、・・、「6」区分のTm0で加減速開始して「5」区分のTm1′で加減速開始終了する「6→5」テーブル、「6」区分のTm0で加減速開始して「6」区分のTm1′で加減速開始終了する「6→6」テーブル、の合計7×7=49個の加減速テーブル(図7〜図10中の太線黒枠参照)が含まれている。各加減速テーブル中の数字は、上記12パルス範囲におけるパルスごと(ラインごと)の加減速時のモータ24の速度を、前述と同様、プラテンローラ22による被印字テープ3Aの搬送速度[mm/s]に対応させて周期[μs]に換算して表したものであり、前述の図5に示した基本モータテーブル34から抜粋された値となっている。
【0050】
本実施形態では、以上のような49個の加減速テーブル33から選択された特定の1つの加減速テーブルを用いて、モータ駆動回路31がパルスモータ24の回転速度を制御する。このようにして従来よりも細かい間隔でテーブルを適用して制御を行うことにより、上記のようにモータの大型化や重量増大を招くことなく、また特殊な電源を用いなくても、高速印刷(高速搬送)に対応することができる。この効果を、比較例を参照しつつ、図11(a)及び図11(b)により説明する。
【0051】
<比較例と実施形態との比較>
24パルスを制御単位としてパルスモータ24を制御する比較例での挙動を図11(a)に示す。一方、12パルスを制御単位としてパルスモータ24を制御する本実施形態での挙動を図11(b)に示す。
【0052】
制御態様の一例として、例えば、現在最高速度状態にあるパルスモータ24を、現在から60パルス(60ライン)後の時点で停止させたい場合を考える。この場合、図11(a)の比較例では、上述のように24パルスが1つの制御単位となることから、60パルス経過後に停止させるためには、制御上48パルス経過後の時点で停止させておかねばならない。このため、例えば24パルス経過後の時点で、上記基準加速度特性に基づく加減速テーブル(24パルス単位で規定)を用いて最高速度から減速を開始しなければならない。
【0053】
これに一方、12パルスを制御単位としてパルスモータ24を制御する本実施形態での挙動を図11(b)に示す。この場合、上述のように12パルスが1つの制御単位となることから、ちょうど60パルス経過後の時点で停止させる制御とすれば足りる。この結果、上記比較例とは異なり、最高速度状態を38パルス経過時点まで続け、38パルス経過後の時点で、上記基準加速度特性に基づく加減速テーブル(12パルス単位で規定)を2つ用いて最高速度から減速を開始すればよい。これにより、上記図11(a)の比較例よりも、最高速度である状態を、24パルス経過時点〜36パルス経過時点までの分(12パルス分)長く続けることができる。すなわち、比較例よりも細かい間隔でテーブルを適用し制御を行うことにより、例えば高速印刷(高速搬送)を行う場合等においても、効率のよい制御を行うことが可能となるのである。
【0054】
<目標速度の設定>
ここで、既に述べた上記パルスモータ24の目標速度の設定は、サーマルヘッド23での通電制御内容に対応して行われる。以下、その詳細を説明する。
【0055】
前述したように、本実施形態においては、サーマルヘッド23は、それぞれが複数の発熱素子を備えた複数の発熱領域へと可変に分割可能に構成されており、それら分割された発熱領域ごとに個別に通電可能となっている。これにより、罫線や黒ベタ領域の印字を行うとき等の多数の発熱素子への通電を行う必要がある場合であっても、複数の発熱領域を時系列的に近接した間隔で順次通電することにより、限られたエネルギ量の範囲内で多数の発熱素子に対する通電を円滑かつ確実に行い、当該罫線や黒ベタ領域等の印字を確実に実行することができる。そして、このときに何個の発熱領域に分割するべきであるか(=分割数)については、現在処理中のブロックよりも後に処理するブロックでの処理内容を考慮して、決定される。
【0056】
<最大同時オンドット数の決定>
本実施形態では、具体的には、まず、起点ブロックからそのN(この例ではN=2)個後までの第2パルス数範囲(各請求項記載の「第2ライン数範囲」に相当)における、サーマルヘッド23の電圧やサーマルヘッド23の抵抗値等の第2動作環境情報に基づき、当該第2パルス数範囲の最大同時オンドット数が決定される。このとき、前述の印刷データ先読プログラム36が用いられる。すなわち、CPU27は、印刷データ先読みプログラム36を用いて、現在の印刷の処理起点となる起点ブロックからその起点ブロックのN個(本実施形態では2個)後の順番のブロックまでの上記第2パルス数範囲の印刷データの先読みを行い、上記最大同時オンドット数を決定する。最大同時オンドット数を決定した後は、その最大同時オンドット数に応じて、当該第2パルス数範囲での最大分割数Mが決定される。
【0057】
例えば、前述の図11(b)の例では、起点ブロックは0〜12パルスまでの範囲となり、上記第2パルス数範囲は、起点ブロックから2個後(N=2)の、24パルス〜36パルスまでを含む、0〜36パルスまでの範囲となる。例えばこの0〜36パルスまでの範囲に罫線や黒ベタ領域等の印字を行う印字データが含まれている場合には、当該罫線や黒ベタ領域を印字するために最大同時オンドット数が非常に多くなることから、この0〜36パルスまでの範囲での上記最大分割数Mは、例えばサーマルヘッド23において分割可能に設定されている最大の値となる。このようにして決定された最大分割数Mは、SRAM29の上記分割数メモリ41に記憶される。
【0058】
<通電時間の決定>
一方、このときまた、サーマルヘッド23の各発熱領域への1回の通電時間Thが、例えば公知の手法で検出した印刷装置1の電圧や印刷装置1の周囲の温度等の第1動作環境情報に基づき、決定される。一例としては、印刷装置1の周囲温度が低い場合には被印字テープ3Aの感熱シートの発色に時間がかかることから通電時間Thが長めに設定される。あるいは、印刷装置1の電圧が高めになっている場合には、高電圧印加により被印字テープ3Aの感熱シートの発色が短時間に完了することから通電時間Thが短めに設定される。
【0059】
<印字周期の決定>
そして、上記のようにして決定された通電時間Thと上記決定された最大分割数Mとに基づき、発熱素子への通電タイミング間隔(言い換えれば分割された各領域の通電タイミング間隔)である印字周期Tが、T=Th×Mによって決定される。その後、この決定された印字周期Tに応じて目標速度が決定される。このとき、本実施形態においては、上記目標速度テーブル35において、パルスモータ24の複数の設定速度値が予め離散して段階的に定められている。
【0060】
<目標速度テーブル>
目標速度テーブル35の例を図12に示す。前述したように、目標速度は「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」の7つの区分番号で表される7段階に区分されて離散的に設定されている。各区分において、「速度」の欄に当該区分で設定された目標速度[mm/s]が記載され、「周期」の欄に各目標速度の値を周期[μs]に換算したものが記載されている。この例では「0」区分の目標速度は0[mm/s]、「1」区分の目標速度は24.3[mm/s](換算された周期Tm1=3484[μs])、「2」区分の目標速度は45.0[mm/s](換算された周期Tm1=1884[μs])、「3」区分の目標速度は69.0[mm/s](換算された周期Tm1=1228[μs])、「4」区分の目標速度は91.7[mm/s](換算された周期Tm1=924[μs])、「5」区分の目標速度は107.8[mm/s](換算された周期Tm1=786[μs])、「6」区分の目標速度は118.3[mm/s](換算された周期Tm1=716[μs])となっている。
【0061】
そして、これらの区分それぞれの目標速度(言い換えれば周期Tm1。以下同様)のうち、前述のようにして決定された印字周期Tに応じたものが、制御において使用するべき目標速度(周期Tm1)として選択される。その選択の際には、算出された印字周期Tより周期Tm1の値が大きく(言い換えれば速度が遅く)、かつ区分番号が最大となるような目標速度が選択される。例えば前述のようにして算出された印字周期Tが900[μs]であった場合には、これよりも大きいTm1=924[μs]に対応した「4」区分における、目標速度91.7[mm/s]が選択される。算出された印字周期Tが1000[μs]であった場合には、(1000[μs]に近い924[μs]に対応した「4」区分ではなく)これよりも大きいTm1=1228[μs]に対応した「3」区分における、目標速度69.0[mm/s]が選択される。これは、仮に速度設定の速い側に合わせて選択すると前述の脱調等が発生する恐れがあり、常に速度設定の遅い側に合わせて選択することで上記の恐れを回避しているのである。以上のようにして、目標速度テーブル35を利用することで、印字周期Tに応じて、目標速度を簡素な制御で容易かつ迅速に決定することができる。
【0062】
<目標速度の置きかえ>
ここで、上記加減速パルス数は、既に述べたように、パルスモータ24の停止状態から最高速度状態までの間(24パルスの範囲)に対応したものである。したがって、上記のように当該加減速パルス数の1/2(12パルスの範囲)を1ブロックとして制御を行う本実施形態の手法では、現在速度と目標速度との差が大きい場合に、モータ性能上、当該1ブロック内では当該目標速度までの加減速を実現できない場合があり得る。そこで、本実施形態では、このような場合には、目標速度テーブル35を用いて上記のようにして選択された目標速度の置き換えが行われる。
【0063】
すなわち、本実施形態では、上記のようにして設定された目標速度が、当該目標速度が、図5に示した基本モータテーブル34の表す上記パルス−速度相関を逸脱する遵守範囲外の値となり(言い換えれば上記加減速テーブル33の適用範囲外の値となり)そのままでは脱調等の不具合が発生する場合には、目標速度の置き換えを行う。つまり、上記のようにして図12の中から一旦選択された目標速度を、図12中の別の目標速度に置き換えることで、上記パルス−速度相関を逸脱せず遵守範囲内の値となるように(言い換えれば上記加減速テーブル33の適用範囲内の値となるように)する。このとき、本実施形態においては、上記目標速度置換テーブル37を用いて、上記の目標速度の置きかえが行われる。
【0064】
<目標速度置換テーブル>
目標速度置換テーブル37の例を図13に示す。この目標速度置換テーブルは、図12と同様、「0」「1」「2」「3」「4」「5」「6」の7つの区分番号で離散的に表された速度区分を用いて設定されている。「Tm0」は現在速度(詳細には当該現在速度を周期に換算したもの。以下適宜、単に「現在速度Tm0」と称する)を表しており、「Tm1」は上記目標速度テーブル35を用いて設定された目標速度(詳細には当該目標速度を周期に換算したもの。以下適宜、単に「目標速度Tm1」等と称する)を表している。そして、「Tm0」の欄と「Tm1」の欄との交点に位置する区分番号が、当該現在速度Tm0から目標速度Tm1へ加減速するときに、実際に使用される最終的な目標速度Tm1′の区分番号を表している。その際、斜線ハッチングのない部分は、前述の置きかえが行われず目標速度テーブル35で設定された値がそのまま用いられる(すなわちTm1′=Tm1)の部分である。一方、斜線ハッチングが施された部分は、目標速度テーブル35で設定された値に対し前述の置きかえが行われる(言い換えればTm1′≠Tm1)部分である。
【0065】
図13において、例えば、「0」区分の現在速度Tm0から「0」区分の目標速度Tm1への設定となっている場合には、そのまま「0」区分が最終的な目標速度Tm1′として設定される。同様に「0」区分の現在速度Tm0から「1」区分、「2」区分、「3」区分、「4区分」、の目標速度Tm1への設定となっている場合には、そのまま「1」区分、「2」区分、「3」区分、「4区分」がそれぞれ最終的な目標速度Tm1′として設定される。これに対して、「0」区分の現在速度Tm0から「5」区分の目標速度Tm1への設定となっている場合には、そのままでは12パルス範囲内ではこの指定による大きな加速を行うことはできない(基本モータテール部34のパルス−速度相関を逸脱する値となる)ことから、「5」区分から1つ低速側にシフトした「4」区分が最終的な目標速度Tm1′として設定される。つまり、「5」区分から「4」区分への目標速度の置きかえが行われる。同様に、「0」区分の現在速度Tm0から「6」区分の目標速度Tm1への設定となっている場合も、「4」区分が最終的な目標速度Tm1′として設定され、「6」区分から「4」区分への目標速度の置きかえが行われる。
【0066】
さらに、「1」区分の現在速度Tm0から「5」区分、「6」区分の目標速度Tm1への設定となっている場合も、「5」区分から「4」区分へ、「6」区分から「4」区分への目標速度の置きかえが行われる。また、「2」区分の現在速度Tm0から「5」区分、「6」区分の目標速度Tm1への設定となっている場合も、「5」区分から「4」区分へ、「6」区分から「4」区分への目標速度の置きかえが行われる。また、「3」区分の現在速度Tm0から「6」区分の目標速度Tm1への設定となっている場合も、「6」区分から「5」区分への目標速度の置きかえが行われる。
【0067】
また、「5」区分の現在速度Tm0から「0」区分、「1」区分、「2」区分への目標速度Tm1への設定となっている場合も、そのままでは12パルス範囲内ではこの指定による大きな減速を行うことはできない(基本モータテール部34のパルス−速度相関を逸脱する値となる)ことから、「0」区分から「3」区分へ、「1」区分から「3」区分へ、「2」区分から「3」区分への、目標速度の置きかえがそれぞれ行われる。同様に、「6」区分の現在速度Tm0から「0」区分、「1」区分、「2」区分、「3」区分への目標速度Tm1への設定となっている場合も、「0」区分から「4」区分へ、「1」区分から「4」区分へ、「2」区分から「4」区分へ、「3」区分から「4」区分への、目標速度の置きかえがそれぞれ行われる。
【0068】
本実施形態では、上記のようにして必要に応じ適宜置き換えられた目標速度Tm1′を加減速完了点の最終的な目標速度Tm1′として、対応する特定の加減速テーブル33の選択(図7〜図10参照)を行う。これにより、現在速度と目標速度との差が大きい場合であっても、確実に当該目標速度までの加減速を実行することができる。
【0069】
<制御フロー>
図14は、上記の内容を実現するために制御回路210のCPU27が実行する制御手順を示すフローチャートである。図14のフローは、例えば印刷装置1の電源ボタン7が押されることにより開始される。
【0070】
図14において、まず、ステップS10で、CPU27は、SRAM29のプリントバッファ40及び分割数メモリ41の記憶内容を初期化し、また印刷速度を初期値0とする。その後、ステップS15に移る。
【0071】
ステップS15では、CPU27は、プリントバッファ40に記憶されている印刷データを、現在処理中の起点ブロックからそのN個後のブロックまでの第2パルス数範囲で先読みし、当該第2パルス数範囲における上記第2動作環境情報に基づき、第2パルス数範囲おいてサーマルヘッド23の同時に通電される複数の発熱素子の最大同時オンドット数を決定する。その後、ステップS20に移る。
【0072】
ステップS20では、CPU27は、上記ステップS15で決定された最大同時オンドット数に応じて、上記第2パルス数範囲における、サーマルヘッド23の上記最大分割数Mを決定する。その後、ステップS25に移る。
【0073】
ステップS25では、CPU27は、上記第1動作環境情報に基づき、サーマルヘッド23の発熱領域への1回の通電時間Thを決定し、その決定された通電時間と上記ステップS20で決定された最大分割数Mとに基づき、印字周期T(=Th×M)を決定する。その後、ステップS30に移る。
【0074】
ステップS30では、CPU27は、目標速度テーブル35の複数の設定速度の中から、上記ステップS25で決定された印字周期Tに応じた速度を、前述の手法により目標速度Tm1として選択する。その後、ステップS35に移る。
【0075】
ステップS35では、CPU27は、上記ステップS35で選択された目標速度Tm1を、目標速度テーブル35の複数の設定速度に含まれる別の設定速度に置換する必要があるか否か(言い換えれば、図13の斜線ハッチングの部分に該当するか否か)を判定する。現在速度Tm0と目標速度Tm1との差が大きく、目標速度が基本モータテーブル34の遵守範囲外となる場合には、ステップS35の判定が満たされ(ステップS35:YES)、ステップS40に移る。
【0076】
ステップS40では、CPU27は、上記ステップS35で選択された目標速度Tm1を、前述のようにして、目標速度テーブル35の複数の設定速度に含まれる別の設定速度に置き換え、新たな目標速度Tm1′とする。その後、ステップS45に移る。
【0077】
一方、上記ステップS35において、現在速度Tm0と目標速度Tm1との差が小さく目標速度が基本モータテーブル34の遵守範囲内となる場合にはステップS35の判定が満たされず(ステップS35:YES)、目標速度Tm1をそのまま新たな目標速度Tm1′として、ステップS45に移る。
【0078】
ステップS45では、CPU27は、パルスモータ24の現在速度Tm0が次の速度すなわち目標速度Tm1′と異なるか否か(現在速度≠次の速度であるか否か)を判定する。パルスモータ24の現在速度Tm0が目標速度Tm1′と同一であれば判定が満たされず(ステップS45:NO)、ステップS50に移る。パルスモータ24の現在速度Tm0が目標速度Tm1′と異なれば判定が満たされ(ステップS45:YES)、ステップS55に移る。
【0079】
ステップS50では、CPU27は、パルスモータ24に設定する目標速度(言い換えればパルス周期)を現在設定されている目標速度(言い換えればパルス周期)のままとし、パルスモータ24の現在速度を維持させる。その後、ステップS55に移る。
【0080】
ステップS55では、CPU27は、図7〜図10に示す複数(上記の例では49個)の加減速テーブル33の中から、加減速開始点が現在速度Tm0であり、加減速完了点が目標速度が上記のようにして決定した目標速度Tm1′であるような加減速テーブルを選択し、パルス周期を設定する。その後、ステップS60に移る。
【0081】
ステップS60では、CPU27は、モータ駆動回路31に制御信号を出力して、モータ駆動回路31に上記ステップS55で決定されたパルス周期に基づいた周期で1パルスを付与し、モータ駆動回路31によりパルスモータ24を1パルス分回転駆動させ、被印字テープ3Aを1ライン分搬送させる。その一方、CPU27は、サーマルヘッド制御回路32に制御信号を出力して、サーマルヘッド制御回路32によりサーマルヘッド23の複数の発熱領域に対し、上記ステップS55で決定されたパルス周期に基づいた周期で、かつ上記ステップS20で決定された分割数に基づいた分割態様で給電させ、被印字テープ3Aにライン印刷データに対応した1ラインの印刷を行わせる。その後、ステップS65に移る。
【0082】
ステップS65では、CPU27は、被印字テープ3Aに対し1ブロックのパルス数範囲内に存在する全印刷ライン数、すなわち規定ライン数の印刷が終了したか否かを判定する。本実施形態では、12パルスで1ブロックのパルス数範囲を構成するので、規定ライン数は12ラインである。被印字テープ3Aに対する規定ライン数の印刷が終了した場合は判定が満たされ(ステップS65:YES)、ステップS70に移る。被印字テープ3Aに対する規定ライン数の印刷が終了していない場合は判定が満たされず(ステップS65:NO)、上記ステップS45に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0083】
ステップS70では、CPU27は、被印字テープ3Aに対しプリントバッファ40に記憶された印刷データに対応した全てのライン数の印刷が終了したか否かを判定する。印刷データに対応した全てのライン数の印刷が終了すれば判定が満たされ(ステップS70:YES)、このフローを終了する。印刷データに対応した全てのライン数の印刷が終了していなければ判定が満たされず(ステップS70:NO)、上記ステップS15に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0084】
以上のフローにおいて、上記ステップS15の手順が各請求項に記載のオンドット数決定手段として機能し、上記ステップS20の手順が分割数決定手段として機能し、上記ステップS25の手順は各請求項に記載の通電時間決定手段として機能すると共に印字周期決定手段としても機能する。また、上記ステップS30の手順が各請求項記載の目標速度選択手段として機能し、上記ステップS35の手順が目標速度判定手段として機能し、上記ステップS40の手順が目標速度置換手段として機能し、上記ステップS55の手順がテーブル選択手段として機能する。
【0085】
以上説明したように、本実施形態の印刷装置1によれば、パルスモータ24の停止状態から最高速度状態までの間に対応した所定のパルス数範囲を1単位とするのではなく、その1/N(N:2以上の整数)を1ブロックとして、当該ブロック単位でパルスモータ24の速度制御を行う。これにより、現在速度と目標速度との差が大きい場合であっても、確実に当該目標速度までの加減速を実行することができる。特にこのとき、上記のように、予め複数用意された設定速度の中から必要に応じて目標速度を別の値に置き換える手法とすることにより、算出する目標速度の値自体を(例えば前回のドットラインのモータ周期や予め記憶されたモータ基本周期等を用いて)所定の制約にしたがって補正する場合のように、加減速条件によっては円滑な動作ができなくなるという可能性がなくなる。すなわち、目標速度までの加減速を確実に円滑に実行することができる。また、パルスモータ24の大型化や重量増大を招くことなく、また特殊な電源を用いなくても、高速印刷(高速搬送)に対応することができる。
【0086】
また、本実施形態では特に、図14のステップS35において、目標速度テーブル35により選択された目標速度Tm1が基本モータテーブル34の遵守範囲内であると判定された場合には、当該選択された値をそのまま最終的な目標速度Tm1′として加減速テーブルを選択する。これにより、現在速度と目標速度との差がそれほど大きくなく1ブロック(12パルス範囲)内で当該目標速度までの加減速を実現できる場合には、目標速度の置換を行わずに確実に迅速な処理を行うことができる。
【0087】
なお、上記図4中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0088】
なお、上記図14に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0089】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0090】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0091】
1 印刷装置
3A 被印字テープ(被印字媒体)
22 プラテンローラ(搬送手段)
23 サーマルヘッド
28 ROM(第1記憶手段、第2記憶手段)
31 モータ駆動回路(搬送制御手段)
32 サーマルヘッド制御回路(印字制御手段)
33 加減速テーブル
34 基本モータテーブル
35 目標速度テーブル
37 CPU
210 制御回路
Tm0 現在速度
Tm1 目標速度
Tm1′ 最終的な目標速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスモータと、
前記パルスモータの駆動力を用いて被印字媒体を搬送するための搬送手段と、
前記被印字媒体を前記搬送方向に印字解像度に区分してなる各印字ライン上にドットをそれぞれ形成する複数の発熱素子を備えるとともに、前記搬送方向と直交する方向に沿った複数の発熱領域ごとに可変に分割して給電可能なサーマルヘッドと、
前記パルスモータの回転速度を制御する搬送制御手段と、
前記搬送手段による搬送の開始後、印字を行うための印字データを1つの前記印字ライン単位に分割したライン印字データごとに通電態様を切り替えつつ、前記印字データに対応した通電制御を行う印字制御手段と、
を有する、印刷装置であって、
前記印刷装置の動作環境に係わる第1動作環境情報に基づき、前記発熱領域への1回の通電時間を決定する通電時間決定手段と、
Nを2以上の整数としたとき、前記パルスモータの停止状態から最高速度状態までの間に対応した所定の第1ライン数範囲の1/Nである1ブロックを単位として、前記1ブロックにおける前記パルスモータの加減速開始点から加減速完了点までの加減速挙動をそれぞれ定めた複数種類の加減速テーブルを記憶した、第1記憶手段と、
予め離散して段階的に定められた前記パルスモータの複数の設定速度を記憶した、第2記憶手段と、
処理起点となる起点ブロックから前記起点ブロックのN個後の順番のブロックまでの、処理対象となる第2ライン数範囲に関する第2動作環境情報に基づき、前記第2ライン数範囲における、同時に通電される前記複数の発熱素子の最大値である最大同時オンドット数を決定するオンドット数決定手段と、
前記オンドット数決定手段により決定された前記最大同時オンドット数に基づき、前記第2ライン数範囲における、分割されて給電される前記発熱領域の数の最大値である最大分割数を決定する分割数決定手段と、
前記通電時間決定手段により決定された前記通電時間と、前記分割数決定手段により決定された前記最大分割数とに基づき、前記ライン印字データごとの通電タイミングの間隔である印字周期を決定する印字周期決定手段と、
前記第2記憶手段に記憶された前記複数の設定速度の中から、前記印字周期決定手段により決定された前記印字周期に応じた速度を、目標速度として選択する目標速度選択手段と、
前記目標速度選択手段により選択された前記目標速度が、前記第1記憶手段に記憶された前記1ブロック単位の加減速テーブルの適用範囲外となる場合には、適用範囲内となるように、前記選択された目標速度を、前記第2記憶手段に記憶された前記複数の設定速度に含まれる別の速度に置き換える、目標速度置換手段と、
現在の速度と、前記別の速度に置き換えられた新たな目標速度とに基づき、前記第1記憶手段に記憶された前記複数種類の加減速テーブルから、対応する特定の加減速テーブルを選択するテーブル選択手段と、
を有し、
前記搬送制御手段は、
前記テーブル選択手段により選択された前記特定の加減速テーブルを用いて前記パルスモータの回転速度を制御し、
前記印字制御手段は、
前記印字決定手段により決定された前記印字周期に基づき、前記通電制御を行う
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記目標速度選択手段により選択された前記目標速度が前記加減速テーブルの適用範囲内となるか適用範囲外となるかを判定する、目標速度判定手段を有し、
前記目標速度判定手段により前記目標速度が前記適用範囲外であると判定された場合には、前記目標速度置換手段は前記選択された目標速度を前記別の速度に置き換えるとともに、前記テーブル選択手段は前記目標速度置換手段により置き換えられた新たな目標速度に基づいて前記特定の加減速テーブルを選択し、
前記目標速度判定手段により前記目標速度が前記適用範囲内であると判定された場合には、前記テーブル選択手段は前記目標速度選択手段により選択された前記目標速度に基づく加減速テーブルを選択する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の印刷装置において、
前記搬送手段が、前記被印字媒体としての、被着体に貼り付けるための粘着剤層と被印字層とを備えた被印字テープを搬送するとともに、
前記サーマルヘッドが、前記搬送手段により搬送される前記被印字テープに含まれる前記被印字層に印字形成することにより、印字ラベルを作成する印字ラベル作成装置である
ことを特徴とする印刷装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−22925(P2013−22925A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162615(P2011−162615)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】