説明

印刷装置

【課題】紙ジャムの誤検出を回避して、検出精度を向上させる。
【解決手段】プリンター11は、用紙Pにインクを噴射する記録ヘッド19を搭載したキャリッジ14が主走査方向に往復動することで、用紙Pに情報を印刷する印刷装置であり、用紙Pと接触することで変化するデューティー値に基づいて用紙Pを検知する第1の検知手段と、用紙Pを非接触に検知する第2の検知手段と、第1の検知手段と第2の検知手段が検知した結果に基づいて用紙Pの残留の有無を判定する判定手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吐出したインクを用紙に付着させて画像等を用紙に印刷する印刷装置として、インクジェット式プリンターが広く知られている。インクジェット式プリンターは、主走査方向に沿って往復動するキャリッジに搭載された記録ヘッドからインクを噴射し、副走査方向に沿って搬送される用紙に印刷を行うようになっている。
【0003】
このようなプリンターでは、用紙が搬送経路の途中で詰まり、紙ジャム(紙詰まり)を起こすことがある。そして、紙ジャムを起こした場合は、ユーザーがプリンターのカバーを外し、詰まった用紙を探して除去する必要があるが、用紙が破断されたような場合、全ての紙片が除去されないことがあった。この結果、除去されなかった紙片が、主走査方向に移動するキャリッジに押されて変形し、ユーザーによる除去が困難になることがあった。
【0004】
そこで、下記特許文献1に記載のプリンターでは、搬送経路上に残留する用紙の有無をジャム検出専用の固定された非接触センサーを用いて確認した。また、下記特許文献2に記載のプリンターでは、キャリッジを移動させるモーターの駆動負荷から用紙の有無を確認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−66969号公報
【特許文献2】特開2010−274442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、固定された非接触センサーが紙ジャムを検出する場合、紙ジャムの状態に依っては、用紙が破断されて非接触センサーが用紙を正しく検出できないことがあった。
また、駆動負荷のみで紙ジャムを検出する場合、設定する駆動負荷の基準値が低い場合には紙ジャムを検出できず、また、高い場合には紙ジャムが進行して用紙が破断されるまで検出できないことがあった。
そこで本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、紙ジャムの誤検出を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる印刷装置は、印刷媒体に液体を噴射する記録ヘッドを搭載したキャリッジが往復動することで、前記印刷媒体に情報を印刷する印刷装置であって、前記キャリッジが前記印刷媒体と接触することで変化する物理量に基づいて前記印刷媒体を検知する第1の検知手段と、前記キャリッジが往復動する範囲で前記印刷媒体を非接触に検知する第2の検知手段と、前記第1の検知手段と前記第2の検知手段が検知した結果に基づいて前記印刷媒体の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、接触することで変化する物理量に基づいて印刷媒体を検知する第1の検知手段、および、印刷媒体を非接触に検知する第2の検知手段がそれぞれ検知した2つの結果に基づいて印刷媒体の有無を判定するため、印刷媒体の誤検出を回避すると共に、印刷媒体の検出精度を向上できる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記第1の検知手段は、前記キャリッジが往復動する速度またはトルクに基づいて前記印刷媒体を検知することが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、キャリッジが往復動する速度またはトルクを検出することで印刷媒体を検知できる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記第2の検知手段は、照射した光の反射量に基づいて前記印刷媒体を検知することが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、照射した光の反射量を検出することで印刷媒体を検知できる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記第1の検知手段が前記印刷媒体を検知する第1モードと、前記第1の検知手段および前記第2の検知手段の少なくとも1つが前記印刷媒体を検知する第2モードと、を備え、前記第1モードは、前記印刷媒体に情報を印刷するときに実行され、前記第2モードは、前記第1モードで検知された前記印刷媒体が除去されたことを示す信号に基づいて実行されても良い。
【0015】
[適用例5]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記判定手段は、前記第1の検知手段および前記第2の検知手段の少なくとも1つが前記印刷媒体を検知した場合、前記印刷媒体の残留を判定することが好ましい。
このような構成によれば、第1の検知手段および第2の検知手段の少なくとも1つが印刷媒体を検知した場合に印刷媒体の残留を判定するため、印刷媒体の残留を迅速に判定できる。
【0016】
[適用例6]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記判定手段は、前記第1の検知手段および前記第2の検知手段の何れも前記印刷媒体を検知した場合、前記印刷媒体の残留を判定することが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、第1の検知手段および第2の検知手段の何れも印刷媒体を検知した場合、印刷媒体の残留を判定するため、印刷媒体の残留を確実に判定できる。
【0018】
[適用例7]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記キャリッジが指定された区間を前記第2モードで移動する場合、前記判定手段は、前記第2の検知手段の検知結果に依らず、前記第1の検知手段の検知結果に基づいて残留を判定することが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、キャリッジが指定された区間を移動する場合、第1の検知手段の検知結果に基づいて判定される。
【0020】
[適用例8]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記判定手段は、前記第2の検知手段が前記印刷媒体を検知した場合、前記第1の検知手段が前記印刷媒体を検知したことを判定する判定基準を下げ、前記判定基準で前記第1の検知手段が前記印刷媒体を検知した場合、前記印刷媒体の残留を判定することが好ましい。
【0021】
このような構成によれば、印刷媒体の残留を判定する判定精度を向上できる。
【0022】
[適用例9]
上記適用例にかかる印刷装置において、前記判定手段が前記印刷媒体の残留を判定した場合、前記第2モードが実行され、前記印刷媒体の残留が再度判定されることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、残留した印刷媒体の除去を確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】プリンターの斜視図。
【図2】プリンターの概略断面図。
【図3】プリンターの制御部の構成を示す図。
【図4】紙ジャム復帰処理の流れを示すフローチャート。
【図5】本実施形態1における紙片の残留を確認する処理の流れを示すフローチャート。
【図6】本実施形態2における紙片の残留を確認する処理の流れを示すフローチャート。
【図7】デューティーの基準値を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、印刷装置について図面を参照して説明する。
【0026】
(実施形態1)
図1は、外装ケースを取り外した状態のインクジェット方式の印刷装置(以下、プリンター11と呼ぶ。)の斜視図を示す。また、図2は、プリンター11の概略断面図を示す。
このプリンター11は、上側が開口する略四角箱状の本体ケース12を備え、この本体ケース12内に架設されたガイド軸13には記録手段としてのキャリッジ14が主走査方向Xに沿って往復動可能な状態で設けられている。
キャリッジ14が背面側で固定された無端状のタイミングベルト15は、本体ケース12の背板内面上に配設された一対のプーリー16,17に巻き掛けられ、一方のプーリー16と駆動軸が連結された駆動手段としてのキャリッジモーター(以下、「CRモーター18」と呼ぶ。)が正逆転駆動されることにより、キャリッジ14は主走査方向Xに往復動する構成となっている。
【0027】
キャリッジ14の下部には、液体状のインクを噴射する記録ヘッド19が設けられ、さらに本体ケース12内において記録ヘッド19と対向する下方位置には、記録ヘッド19と、印刷媒体としての用紙Pとの間隔を規定するプラテン20がX方向に延びる状態で配置されている。また、記録ヘッド19に隣接して、用紙Pの左右の端部を検出するPW(Paper Width)検出器46が配置されている。また、キャリッジ14の上部には、ブラック用およびカラー用の各インクカートリッジ21,22が着脱可能に装填されている。記録ヘッド19は、各インクカートリッジ21,22から供給された各色のインクを、色ごとのノズルから噴射(吐出)する。
【0028】
プリンター11の背面側には、給紙トレイ23と、給紙トレイ23上に積重された多数枚の用紙Pのうち最上位の1枚のみを分離して副走査方向Y(搬送方向の上流側から下流側に向かう方向)に供給する自動給紙装置(Auto Sheet Feeder)24とが設けられている。
【0029】
また、本体ケース12の図1における右側下部には、紙送りモーター(以下、「PFモーター25」と呼ぶ。)が配設されている。用紙Pは、図2に示すように、給紙ローラー33によって給紙トレイ23から記録ヘッド19の下部に供給されたあと、搬送ローラー31及び排紙ローラー32によって副走査方向Yへ搬送される。尚、給紙ローラー33、搬送ローラー31及び排紙ローラー32は、図示しないギヤ機構を介してPFモーター25により駆動される。
そして、このプリンター11では、キャリッジ14を主走査方向Xに往復動させながら記録ヘッド19のノズルから用紙Pに向けてインクを噴射する印刷動作と、用紙Pを副走査方向Yに所定の搬送量で搬送する紙送り動作とを略交互(但し、各動作タイミングは一部重複)に繰り返すことで、用紙Pに文字や画像等の印刷が施されるようになっている。
【0030】
また、プリンター11には、キャリッジ14の移動距離に比例する数のパルスを出力するリニアエンコーダー26がガイド軸13に沿って延びるように架設されており、リニアエンコーダー26の出力パルスを用いて求められるキャリッジ14の主走査方向Xへの移動位置、移動方向及び移動速度に基づいて、キャリッジ14の速度制御及び位置制御が行われるようになっている。なお、プリンター11においてキャリッジ14が所定位置(ホームポジション)に位置した際のキャリッジ14の直下には、記録ヘッド19のノズル目詰まり等の予防や解消のためのクリーニング動作を行うメンテナンス装置28が配設されている。
尚、本実施形態1において、ホームポジションは、キャリッジ移動経路上の印刷領域、即ち、記録ヘッド19が用紙Pに対してインクを噴射することにより記録を施す記録領域外の一方の端部である。
また、プラテン20の下側には、メンテナンス装置28が記録ヘッド19のノズルから吸引したインクが廃棄される廃液タンク29が設けられている。
【0031】
PW検出器46は、LEDを用いて用紙Pに向かって光を照射する発光素子、および、用紙で反射された反射光を受光し、その光量に応じた電圧を出力する受光素子を含む光センサーである。このPW検出器46は、キャリッジ14と共に主走査方向に移動しながら、発光素子から発した光が検出対象の用紙又はプラテン20に当たって反射し、反射した光を受光素子で受光してその受光量に応じて出力電圧が変化する反射型フォトインタラプターである。
【0032】
図3は、CRモーター18やPFモーター25の駆動を制御する制御部100の構成を示す図である。
制御部100は、ROM101、RAM102、ASIC(特定用途向け集積回路)103、MPU104、「不揮発性記憶媒体」としての不揮発性メモリー105、PFモータードライバー106、CRモータードライバー107及びヘッドドライバー108を備えている。
MPU104には、ASIC103を介してキャリッジ14の移動量を検出するリニアエンコーダー26および主走査方向Xの用紙Pの端部を検出するためのPW検出器46の出力信号が入力される。
【0033】
制御部100のシステムバスには、ROM101、RAM102、ASIC103、MPU104及び不揮発性メモリー105が接続されている。
MPU104は、プリンター11の記録制御を実行するための演算処理やその他必要な演算処理を行う。ROM101には、MPU104によるプリンター11の制御に必要な記録制御プログラム(ファームウェア)等が格納されており、記録制御プログラムの処理に必要な各種データ等は不揮発性メモリー105に記憶されている。RAM102は、MPU104の作業領域や記録データ等の格納領域として用いられる。
【0034】
ASIC103は、DCモーターであるPFモーター25及びCRモーター18の速度制御、並びに、記録ヘッド19の駆動制御を行う為の制御回路を有している。即ち、ASIC103は、MPU104から送られてくる制御命令、及びリニアエンコーダー26の出力信号に基づいて、PFモーター25及びCRモーター18の速度制御を行う為の各種演算を行い、その演算結果に基づくモーター制御信号をPFモータードライバー106及びCRモータードライバー107へ送出する。
また、ASIC103は、MPU104から送出される記録データ等に基づいて、記録ヘッド19の制御信号を演算生成してヘッドドライバー108へ送出して記録ヘッド19を駆動制御する。ASIC103は、情報処理装置としてのパーソナルコンピューター(PC)301等との情報伝送を実現するホストIF112を有している。
【0035】
ところで、上述したプリンター11が印刷処理中において、用紙Pが紙ジャム(紙詰まり)を起こすと、用紙Pがキャリッジ14及び記録ヘッド19の移動範囲内に入り込み、印刷動作に伴って主走査方向Xに沿って往復移動するキャリッジ14や記録ヘッド19と当接することがある。この結果、用紙Pによってキャリッジ14の移動が阻害されるため、CRモーター18の駆動負荷が大きくなる。
【0036】
CRモーター18は、キャリッジ14を一定速度で移動させる制御を行うが、キャリッジ14の駆動負荷が大きくなると物理量としてのキャリッジ14の移動速度が低下する。ここで、制御部100は、リニアエンコーダー26の出力信号から移動速度の低下を検出し<第1モード>、所定の移動速度を下回った場合、紙ジャムが発生したと判定する。
【0037】
図4は、キャリッジ14が主走査方向Xに沿って印刷中に制御部100が紙ジャムの発生を判定した場合、実行される紙ジャム復帰処理<第2モード>の流れを示すフローチャートである。
この処理が開始されると、制御部100は、キャリッジ14を他方の方向に移動させ、ホームポジションに退避させる(ステップS200)。
次に、制御部100は、ユーザーに対して紙ジャムの発生を通知し、キャリッジ14の往復動領域の近傍における紙片除去を要求する(ステップS202)。本実施形態1では、ユーザーへの通知先は、何れも図示を略した、プリンター11に設置された表示パネルや、プリンター11が接続されたPC301の表示画面を想定する。
ユーザーは、表示された通知を視認して紙片を除去し、通知と共に表示される確認ボタンを押下する。
【0038】
制御部100は、確認ボタンの押下を確認し(ステップS204)、押下されるまで待機する(ステップS204でNo)。
制御部100が確認ボタンの押下を確認した場合(ステップS204でYes)、制御部100はキャリッジ14の主走査方向への移動開始を指示する(ステップS206)。この指示に従い、キャリッジ14は所定の速度でホームポジションから主走査方向に再移動を開始する。
【0039】
次に、制御部100は、デューティー値とPW検出器46の出力から、キャリッジ14の移動範囲内における紙片の残留を確認する(ステップS210)。本実施形態1では図5に示す処理を実行する。
即ち、最初に、制御部100は物理量としてのデューティー値を取得する(ステップS230)。デューティー値は、制御部100がCRモータードライバー107から得られるデューティー信号に基づいて算出する。
続いて、制御部100は、取得したデューティー値が予め決定された判定基準(基準値)を超えているか、否かを判定する(ステップS232)<第1の検知手段>。
【0040】
周知のように、ブラシ付きDCモーターを使用した場合、そのトルク/回転数特性はデューティー値に比例する。従って、デューティー値が基準値を超えた場合、残留紙片が原因でCRモーター18の駆動負荷が増大したと判断できる。
従って、デューティー値が基準値を超えていると判定した場合(ステップS232でYes)、制御部100は紙片が残留していると判定し(ステップS240)、図4のステップS210に戻る。
【0041】
他方で、デューティー値が基準値を超えていないと判定した場合(ステップS232でNo)、制御部100は、キャリッジ14の位置情報をリニアエンコーダー26から取得し、現在の位置はPW検出器46が誤検出する可能性があるか、否かを判定する(ステップS233)。
ここで、誤検出とは、PW検出器46の検出領域に含まれるプラテン20の形状等により、PW検出器46がプラテン20を用紙Pであると判断することである。誤検出する可能性がある領域の情報は、設計段階において決定されて不揮発性メモリー105に記憶されていても良く、また、PW検出器46によるメジャーメント操作により決定されて不揮発性メモリー105に記憶されていても良い。また、誤検出の可能性判定を行わない様態も想定できる。
ステップS233において、現在の位置は誤検出する可能性があると判定した場合(ステップS233でYes)、ステップS238に進む。また、現在の位置は誤検出する可能性がないと判定した場合(ステップS233でNo)、制御部100はPW検出器46の出力を取得する(ステップS234)。
【0042】
続いて、制御部100は出力した値から、PW検出器46が紙を検出したか、否かを判定する(ステップS236)<第2の検知手段>。
ここで、PW検出器46が紙を検出したと判定した場合(ステップS236でYes)、制御部100は紙片が残留していると判定し(ステップS240)<判定手段>、図4のステップS210に戻る。
他方で、PW検出器46が紙を検出しないと判定した場合(ステップS236でNo)、制御部100は紙片が残留していないと判定し(ステップS238)、図4のステップS210に戻る。
【0043】
尚、本実施形態1では、処理の流れの理解を容易にすべく、最初にデューティー値で判定し、次にPW検出器46の出力で判定したが、この順序には限定されず、判定する順序が逆であっても良い。また、デューティー値で判定するスレッドと、PW検出器46の出力で判定するスレッドが独立して実行され、デューティー値が基準値を超えるか、または、PW検出器46が紙片を検出した場合に、ステップS210に割り込む様態でも良い。
【0044】
図4に戻り、制御部100が紙片の残留を判定した場合(ステップS212でYes)、制御部100はキャリッジ14の移動中止を指示する(ステップS216)。
続いて、制御部100は、キャリッジ14をホームポジションに退避させる(ステップS218)。
次に、制御部100は、ユーザーに対して紙ジャムの残留を通知し、紙片除去を要求する(ステップS220)。本実施形態1では、プリンター11に設置された表示パネルや、プリンター11が接続されたPC301の表示画面に通知する。
一方、ユーザーは、表示された通知を視認して紙片を探索して除去し、通知と共に表示される確認ボタンを押下する。
【0045】
制御部100は、確認ボタンの押下を確認し(ステップS222)、押下されるまで待機する(ステップS222でNo)。
制御部100が確認ボタンの押下を確認した場合(ステップS222でYes)、即ち、確認ボタンが押下されてユーザーが用紙Pを除去したことを示す信号が出力された場合、制御部100は残留通知を所定回数繰り返したか、否かを判定する(ステップS224)。
ここで、制御部100が残留通知を所定回数繰り返していないと判定した場合(ステップS224でNo)、ステップS206に戻り、再度用紙Pの除去を確認する。
他方で、制御部100が残留通知を所定回数繰り返したと判定した場合(ステップS224でYes)、一連の処理を終了する。この場合、異常終了を示す情報を戻り値として終了しても良い。
【0046】
また、ステップS212において、制御部100が紙片の残留を判定しない場合(ステップS212でNo)、制御部100は、主走査方向へ移動しているキャリッジ14が終端まで移動したか、否かを判定する(ステップS214)。
ここで、キャリッジ14が終端まで移動していないと判定した場合(ステップS214でNo)、ステップS210に戻り紙片の残留を確認する。
他方で、キャリッジ14が終端まで移動したと判定した場合(ステップS214でYes)、一連の処理を終了する。この場合、正常終了を示す情報を戻り値として終了しても良い。
尚、第1の検知手段、第2の検知手段および判定手段は、前記したハードウェアと、ROM101や不揮発性メモリー105に格納されたプログラムが協働することにより、各機能を実現する。
【0047】
以上述べた実施形態1では、紙ジャムを起こした紙片がプラテン20の上方に向って残留し、キャリッジ14の移動方向の側面と当接する場合には、最初にデューティー値が基準値を超えるため、デューティー値の判定処理(ステップS232)で紙片の残留が判定される。
他方で、紙ジャムを起こした紙片がプラテン20に沿って低い状態で残留し、キャリッジ14や記録ヘッド19と当接しない場合には、デューティー値は変化せず、PW検出器46の出力値が基準値を超えるため、PW検出器46による判定処理(ステップS236)で紙片の残留が判定される。
【0048】
このように、残留する紙片の状態に応じて何れか方法で検出できるため、紙片の残留を迅速に検知でき、キャリッジ14の移動を早急に停止できる。この結果、キャリッジ14が紙片と接触した状態で移動を続け、残留した紙片が破れてキャリッジ14の中央部に付着したり、キャリッジ14の周囲に巻き込まれたりすることを回避でき、キャリッジ14周辺の紙片を取り除くためのメンテナンスに要する手間やコストを低減できる。
また、プラテン20の形状等により、PW検出器46がプラテン20を用紙Pであると判断する可能性がある領域では、PW検出器46による検出は行わず、デューティー値のみで紙片の残留を判定するため、誤検出を回避できる。
【0049】
(実施形態2)
次に、本発明の実施形態2について、図6および図7を参照して説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同じ部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
実施形態1では、デューティー値が基準値を超えるか、または、PW検出器46が紙片を検出した場合に紙片が残留していると判定したが、本実施形態2では、PW検出器46が紙片を検出し、かつ、デューティー値が基準値を超えた場合、紙片が残留していると判定する。
【0050】
図6は、本実施形態2におけるステップS210の処理の流れを示すフローチャートである。また、図7は、誤検出領域の有無の違いによるデューティーの基準値の変動を示す図である。
本実施形態2では、最初に、制御部100はPW検出器46の出力を取得する(ステップS250)。
【0051】
続いて、制御部100は取得した出力から、PW検出器46が紙を検出したか、否かを判定する(ステップS252)。
ここで、PW検出器46が紙を検出しないと判定した場合(ステップS252でNo)、紙片は残留していないと判定し(ステップS264)、図4のステップS210に戻る。
他方で、PW検出器46が紙を検出したと判定した場合(ステップS252でYes)、制御部100は、キャリッジ14の位置情報をリニアエンコーダー26から取得し、現在の位置はPW検出器46が誤検出する可能性があるか、否かを判定する(ステップS254)。
【0052】
ここで、現在の位置は誤検出する可能性がないと判定した場合(ステップS254でNo)、制御部100は、デューティーの基準値を図7に示すように下げる。即ち、制御部100はD1からD2に下げ(ステップS256)、ステップS258に進む。
尚、本実施形態2では、デューティーの基準値(D1,D2)は予め決定され、不揮発性メモリー105に記憶された様態を想定するが、これには限定されず、デューティーの基準値に対して掛け合わせる係数をPW検出器46の出力に応じて変更しても良い。また、PW検出器46の出力に応じてデューティーの基準値を一意に変更しても良い。
【0053】
また、他方で、現在の位置は誤検出する可能性があると判定した場合(ステップS254でYes)、制御部100はデューティーの基準値(D1)を下げることなくステップS258に進む。
ステップS258では、制御部100はデューティー値を取得する。続いて、制御部100は、取得したデューティー値が基準値を超えているか、否かを判定する(ステップS260)。
【0054】
ここで、デューティー値が基準値を超えていると判定した場合(ステップS260でYes)、制御部100は紙片が残留していると判定し(ステップS262)、図4のステップS210に戻る。
他方で、デューティー値が基準値を超えていないと判定した場合(ステップS260でNo)、紙片は残留していないと判定し(ステップS264)、図4のステップS210に戻る。
以上の処理により、図7に示すように誤検出領域がない場合、主走査位置XSにおいてPW検出器46の出力が基準値P1を超えて紙片を検出することで、デューティーの基準値はD1からD2に下がる。この結果、主走査位置X1においてデューティー値がD2を越えるため、制御部100は紙片の残留を判定できる。尚、デューティー値がD2を越えない場合、主走査位置XEにおいてPW検出器46が紙片を検出しなくなるため、デューティーの基準値はD2からD1に戻る。
【0055】
以上述べた実施形態2では、PW検出器46が基準値P1を超えた場合に、デューティーの基準値をD1からD2に下げ、PW検出器46の出力とデューティー値の両方で紙片の残留を判定するため、紙片の残留を早期に判定し、キャリッジ14の移動による紙片の破れを回避できる。また、PW検出器46が紙片以外のゴミや付着物を検出した場合であっても、デューティー値が基準値を超えない場合には紙片と判定しないため、紙片の誤検出を回避できる。
また、図7に示すように、プラテン20の形状やプラテンに付着したゴミや油脂等により生じる誤検出領域内に紙片が残留する場合、誤検出領域においてPW検出器46が紙片を誤検出するため、出力が基準値P1を超えてもデューティーの基準値はD1に維持される。キャリッジ14が紙片の近傍まで移動すると、デューティー値は主走査位置X2において基準値D1を超えるため、制御部100は紙片の残留を判定する。
このように、PW検出器46が基準値P1を超えた場合であっても、デューティーの基準値は緩和されることなくD1を維持するため、誤検出を回避して紙片の残留を確実に判定できる。
【0056】
また、以上のような手法を実施する装置は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。
【符号の説明】
【0057】
11…プリンター、12…本体ケース、13…ガイド軸、14…キャリッジ、15…タイミングベルト、16,17…プーリー、18…CRモーター、19…記録ヘッド、20…プラテン、21,22…インクカートリッジ、23…給紙トレイ、24…自動給紙装置、25…PFモーター、26…リニアエンコーダー、28…メンテナンス装置、29…廃液タンク、31…搬送ローラー、32…排紙ローラー、33…給紙ローラー、46…PW検出器、100…制御部、101…ROM、102…RAM、103…ASIC、104…MPU、105…不揮発性メモリー、106…PFモータードライバー、107…CRモータードライバー、108…ヘッドドライバー、112…ホストIF、301…PC、P…用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に液体を噴射する記録ヘッドを搭載したキャリッジが往復動することで、前記印刷媒体に情報を印刷する印刷装置であって、
前記キャリッジが前記印刷媒体と接触することで変化する物理量に基づいて前記印刷媒体を検知する第1の検知手段と、
前記キャリッジが往復動する範囲で前記印刷媒体を非接触に検知する第2の検知手段と、
前記第1の検知手段と前記第2の検知手段が検知した結果に基づいて前記印刷媒体の有無を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記第1の検知手段は、前記キャリッジが往復動する速度またはトルクに基づいて前記印刷媒体を検知することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれかに記載の印刷装置において、
前記第2の検知手段は、照射した光の反射量に基づいて前記印刷媒体を検知することを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記第1の検知手段が前記印刷媒体を検知する第1モードと、
前記第1の検知手段および前記第2の検知手段の少なくとも1つが前記印刷媒体を検知する第2モードと、を備え、
前記第1モードは、前記印刷媒体に情報を印刷するときに実行され、
前記第2モードは、前記第1モードで検知された前記印刷媒体が除去されたことを示す信号に基づいて実行されることを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記判定手段は、前記第1の検知手段および前記第2の検知手段の少なくとも1つが前記印刷媒体を検知した場合、前記印刷媒体の残留を判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4に記載の印刷装置において、
前記判定手段は、前記第1の検知手段および前記第2の検知手段の何れも前記印刷媒体を検知した場合、前記印刷媒体の残留を判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項5乃至6のいずれかに記載の印刷装置において、
前記キャリッジが指定された区間を前記第2モードで移動する場合、
前記判定手段は、前記第2の検知手段の検知結果に依らず、前記第1の検知手段の検知結果に基づいて残留を判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項6に記載の印刷装置において、
前記判定手段は、前記第2の検知手段が前記印刷媒体を検知した場合、
前記第1の検知手段が前記印刷媒体を検知したことを判定する判定基準を下げ、前記判定基準で前記第1の検知手段が前記印刷媒体を検知した場合、前記印刷媒体の残留を判定することを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項4乃至8のいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記判定手段が前記印刷媒体の残留を判定した場合、
前記第2モードが実行され、前記印刷媒体の残留が再度判定されることを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−28102(P2013−28102A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166463(P2011−166463)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】