説明

印字装置、インクジェットヘッドのクリーニング装置、及び、インクジェットヘッドのクリーニング方法

【課題】印字性能の劣化を抑制することを可能とする。
【解決手段】 インクを吐出するための複数のノズル穴からなるノズル列が形成されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと対向した状態で前記ノズルプレートに接触する撥インク性の撥インク面と、前記撥インク面が前記ノズルプレートに接触した状態で前記ノズルプレートとの間に隙間を形成するとともに前記撥インク面よりもインクの接触角が小さい親インク性の親インク面と、前記親インク面に形成された複数の吸引口と、を備えた吸引ノズルを含むクリーニング装置と、を具備することを特徴とする印字装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、印字装置、インクジェットヘッドのクリーニング装置、及び、インクジェットヘッドのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドのノズルプレートは、インクを吐出するノズル穴を有している。このようなインクジェットヘッドにおいては、ノズル穴からインクを吐出した際に、ノズル穴の周辺に余分なインクが残らないように、ノズルプレートの表面が撥インク性に保たれることが多い。
【0003】
このようなインクジェットヘッドに対して、ノズルプレート上のノズル穴近傍に付着したインク等のクリーニングを吸引ノズルで吸引クリーニングする技術がある。例えば、吸引ノズルをノズルプレート上のノズル穴近傍に接触させながら摺動させて吸引クリーニングを行う、あるいは、吸引ノズルをノズルプレートと接触しないように隙間を保って移動させて吸引クリーニングを行う方法が提案されている。また、吸引ノズルの吸引力がノズル穴からのインク吐出方向の鉛直方向に作用するとノズル穴近傍でインクが引きちぎられやすくノズル内に気泡が発生する要因となることを避けるため、吸引力がインク吐出方向と交差する方向に作用するような空気の流れを考慮した吸引ノズルの構造なども提案されている。
【0004】
ノズルプレート表面は、インク吐出性能安定化のために撥インク性を有するように処理されているため、インクを弾く。このため、吸引ノズルによって吸引クリーニングした際に、ノズルプレート表面に微小なインク滴となって残りやすく、また、このように残ったインク滴は空気流だけでは移動させにくい。したがって、ノズルプレート表面から残留インクを取り去ることができず、微小なインク滴が残るため、結果として、ノズルプレート表面のノズル穴近傍の撥インク性が悪化して、印字品質を悪化させるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−201028号公報
【特許文献2】特開2006−213026号公報
【特許文献3】特開2009−137210号公報
【特許文献4】特開2006−181837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態の目的は、印字性能の劣化を抑制することが可能な印字装置、インクジェットヘッドのクリーニング装置、及び、インクジェットヘッドのクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態によれば、
インクを吐出するための複数のノズル穴からなるノズル列が形成されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと対向した状態で前記ノズルプレートに接触する撥インク性の撥インク面と、前記撥インク面が前記ノズルプレートに接触した状態で前記ノズルプレートとの間に隙間を形成するとともに前記撥インク面よりもインクの接触角が小さい親インク性の親インク面と、前記親インク面に形成された複数の吸引口と、を備えた吸引ノズルを含むクリーニング装置と、を具備することを特徴とする印字装置が提供される。
【0008】
本実施形態によれば、
インクジェットヘッドのクリーニング装置であって、撥インク性の撥インク面と、前記撥インク面に対して窪み、前記撥インク面よりもインクの接触角が小さい親インク性の親インク面と、前記親インク面に形成された複数の吸引口と、を備えた吸引ノズルを具備することを特徴とするクリーニング装置が提供される。
【0009】
本実施形態によれば、
インクを吐出するための複数のノズル穴からなるノズル列が形成されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドと対向した状態で移動しながら吸引クリーニングを行う吸引ノズルを含むクリーニング装置に適用可能なインクジェットヘッドのクリーニング方法であって、前記インクジェットヘッドと対向した状態で前記ノズルプレートに前記吸引ノズルの撥インク面を接触させるとともに、前記ノズルプレートと前記吸引ノズルの親インク面との間に隙間を形成し、前記親インク面に形成された複数の吸引口から、前記隙間の空気流によって引き寄せられたインクを吸引する、ことを特徴とするクリーニング方法が提供される。
【0010】
本実施形態によれば、
インクを吐出するための複数のノズル穴からなるノズル列が形成されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドと対向した状態で移動しながら吸引クリーニングを行う吸引ノズルを含むクリーニング装置に適用可能なインクジェットヘッドのクリーニング方法であって、前記インクジェットヘッドと対向する位置への進入に伴って、前記ノズルプレートの表面のインク滴をかき集めてインク滴溜まりを形成し、前記吸引ノズルの移動に伴って、前記ノズルプレートの表面のインク滴を前記インク溜まりに合体させながら吸引する、ことを特徴とするクリーニング方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本実施形態の印字装置であるインクジェット記録装置1の構成例を概略的に示す図である。
【図2】図2は、図1に示したインクジェット記録装置におけるインクジェットヘッドの構成を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】図3は、図2に示したインクジェットヘッドを第2方向に沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。
【図4】図4は、図2に示したインクジェットヘッドをクリーニングするためのクリーニング装置の構造を概略的に示す斜視図である。
【図5】図5は、図4に示したクリーニング装置を構成する吸引ノズルの構造を概略的に示す斜視図である。
【図6】図6は、図5に示した吸引ノズルのインクジェットヘッドに対する移動状態を説明するための斜視図である。
【図7】図7は、吸引ノズルがインクジェットヘッドと対向する位置に進入する際の、吸引口と、ノズルプレート及びノズル穴との位置関係を示す図である。
【図8】図8は、インクジェットヘッドと吸引ノズルとが対向した状態を示す移動方向に直交する面内での断面図である。
【図9】図9は、インクジェットヘッドと吸引ノズルとが対向した状態を示す移動方向に平行な面内での断面図である。
【図10】図10は、本実施形態における吸引ノズルの傾斜面の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本実施形態の印字装置であるインクジェット記録装置1の構成例を概略的に示す図である。
【0014】
すなわち、インクジェット記録装置1は、記録媒体である用紙にカラー印刷を行うものである。用紙としては、例えば、普通紙(plain paper)、コート紙(coated paper)、OHP用紙(OHP sheet)等を用いることが可能である。
【0015】
インクジェット記録装置1の筐体114内には、手差しトレイ104またはペーパーカセット105から、印字部100を介して排紙トレイ111または排紙トレイ112へ至る用紙経路Pが設けられている。手差しトレイ104及びペーパーカセット105には、積層された用紙を一枚ずつ分離して用紙経路Pへ供給する給紙機構106が設けられている。用紙経路Pには、印字部100おいて印字が行われた用紙を排紙トレイ111または排紙トレイ112に排紙する排紙機構107、用紙の排紙先を排紙トレイ111または排紙トレイ112に振り分ける振分ゲート110、振分ゲート110によって振り分けられた用紙を排紙トレイ112に向けて用紙を搬送する用紙搬送機構113などが設けられている。
【0016】
印字部100は、ドラム102と、印字ユニット103と、によって構成されている。このような印字部100では、ドラム102の外周に用紙を担持した状態で所定速度で回転しながら、印字ユニット103によって印字データに基づく印字を行う。
【0017】
印字ユニット103は、例えば、4つのノズルユニット120C(シアン)、120Y(イエロー)、120M(マゼンタ)、120B(ブラック)を備えている。用紙経路Pにおいて、給紙機構106側を上流側とし、排紙機構107側を下流側とすると、各ノズルユニット120C、120Y、120M、120Bは、上流側からこの順に配置されている。
【0018】
各ノズルユニット120C、120Y、120M、120Bは、後述するインクジェットヘッド2を複数備えている。各ノズルユニット120C、120Y、120M、120Bにおける複数のインクジェットヘッドは、ドラムの回転軸と平行な第1方向に沿って配置されている。本実施形態において、各ノズルユニット120C、120Y、120M、120Bは、それぞれのインクジェットヘッド2のノズルをドラム102の上方に対向させるように配置されている。
【0019】
また、このインクジェット記録装置1は、後述するクリーニング装置3を備えている。
【0020】
図2は、図1に示したインクジェット記録装置1におけるインクジェットヘッド2の構成を概略的に示す分解斜視図である。
【0021】
すなわち、インクジェットヘッド2は、主要部10、ノズルプレート20、マスクプレート30、及び、ホルダ40を備えている。このインクジェットヘッド2は、上記したドラムの回転軸と平行な第1方向Xを長手方向とした概略直方体形状である。なお、以下の説明において、第1方向Xに概ね直交する方向を第2方向Yとし、X−Y平面に直交する方向を第3方向Zとし、第3方向Zに沿った「上」とは上記したドラム側(あるいは、重力方向)に相当し、第3方向Zに沿った「下」とはドラムから遠ざかる側(あるいは、反重力方向)に相当する。
【0022】
主要部10は、絶縁基板11、枠体12、圧電部材13などを備えて構成されている。
【0023】
絶縁基板11は、例えば、アルミナなどのセラミックス製であり、第1方向Xに沿って延出した概略長方形の板状に形成されている。この絶縁基板11は、ノズルプレート20と対向する側に上面11Aを有するとともに、ホルダ40と対向する側に下面11Bを有している。このような絶縁基板11は、インク供給口11in及びインク排出口11outを有している。これらのインク供給口11in及びインク排出口11outは、上面11Aから下面11Bまで貫通している。
【0024】
枠体12は、例えば、金属製であり、矩形枠状に形成されている。この枠体12は、絶縁基板11の上面11Aに配置されている。圧電部材13は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)製であり、絶縁基板11の上面11Aにおいて枠体12で囲まれた内側に配置されている。各圧電部材13は、第1方向Xに概ね直交する第2方向Yに沿って延出している。これらの圧電部材13は、第1方向Xに沿って並んでいる。第1方向Xに沿って並んだ一対の圧電部材13の間には、第2方向Yに沿って延出したインク圧力室14がスリット状に形成される。
【0025】
図示した例では、第1方向Xに沿って並んだ圧電部材13の列が2列形成されている。複数のインク供給口11inは、絶縁基板11の略中央部、つまり、2列の圧電部材13の列の間において第1方向Xに沿って並んでいる。複数のインク排出口11outは、絶縁基板11の周辺部、つまり、圧電部材13と枠体12との間において第1方向Xに沿って並んでいる。このような構成により、インク供給口11inのそれぞれからインク圧力室14に向けてインクが供給され、インク圧力室14を通過したインクがインク排出口11outのそれぞれから排出される。
【0026】
ノズルプレート20は、例えば、ポリイミド製であり、第1方向Xに沿って延出した概略長方形の平板状に形成されている。このノズルプレート20は、第3方向Zに沿って主要部10の上方に配置されている。このノズルプレート20は、マスクプレート30と対向する側に上面(あるいは、ノズルプレート表面)20Aを有するとともに、主要部10と対向する側に下面20Bを有している。このノズルプレート20の下面20Bと、枠体12及び圧電部材13とは、図示しない接着剤により接着されている。
【0027】
このようなノズルプレート20は、ノズル穴21を有している。各ノズル穴21は、インク圧力室14に対向して形成されている。これらのノズル穴21は、X−Y平面において円形であり、略同一径を有するように形成されている。ノズル穴21の径は、例えば、30μmである。
【0028】
複数のノズル穴21は、概略第1方向Xに沿って並んでおり、ノズル列211及び212を形成している。図示した例では、ノズルプレート20には、2列のノズル列211及び212が形成されているが、ノズル列は1列であっても良いし3列以上であっても良い。ノズル列211とノズル列212との間隔、つまり、ノズル列211を形成するノズル穴21の中心と、ノズル列212を形成するノズル穴21の中心との第2方向Yに沿った距離は、例えば、6mmである。
【0029】
本実施形態においては、ノズル列211を形成するノズル穴21の並び方向及びノズル列212を形成するノズル穴21の並び方向は、いずれもインクジェットヘッド2の長手方向である第1方向Xと平行であるものとして、以下説明するが、厳密には、各ノズル列211及び212を形成するそれぞれのノズル穴21が第1方向Xに沿った同一直線上に位置していない場合もある。
【0030】
図示した例では、ノズル列211の互いに隣接するノズル穴21は、第1方向Xに沿った同一直線上に形成されていない。同様に、ノズル列212の互いに隣接するノズル穴21も、第1方向Xに沿った同一直線上に形成されていない。ここでは、3個のノズル穴21A、21B、21Cが徐々に第2方向Yにずれて形成され、2個おきに並んだノズル穴21が第1方向Xに沿った同一直線上に形成されている。つまり、3個のノズル穴21A、21B、21Cは、第1方向X及び第2方向Yに対して交差する直線上に形成されている。
【0031】
マスクプレート30は、例えば、金属製であり、ノズルプレート20を囲む枠状に形成されている。このマスクプレート30は、第3方向Zに沿って主要部10の上方に配置されている。このマスクプレート30は、ノズルプレート20の外径と略同等の長方形状の開口部30Hを有している。このマスクプレート30と、枠体12とは、図示しない接着剤により接着されている。
【0032】
ホルダ40は、第3方向Zに沿って主要部10の下方に配置されている。このホルダ40は、インク供給口11inに向けてインクを導入するためのインク導入路41、及び、インク排出口11outから排出されたインクを回収するインク回収路42を有している。インク導入路41には、図示しないインクタンクからインクを導入するための導入用パイプ51が接続されている。インク回収路42には、インクをインクタンクに回収するための回収用パイプ52が接続されている。このホルダ40は、主要部10と対向する側に上面40Aを有している。このホルダ40の上面40Aと、絶縁基板11の下面11Bとは、図示しない接着剤により接着されている。
【0033】
図3は、図2に示したインクジェットヘッド2を第2方向Yに沿って切断した構造を概略的に示す断面図である。ここでは、圧電部材13を含む断面を図示している。
【0034】
枠体12及び圧電部材13が配置された絶縁基板11は、ホルダ40と接着されている。圧電部材13は、Y−Z平面内に台形状の断面を有している。ノズルプレート20は、枠体12に接着されるとともに圧電部材13にも接着されている。マスクプレート30は、ノズルプレート20よりも外側で枠体12に接着されている。マスクプレート30の開口部30Hには、ノズルプレート20が配置されている。このとき、ノズルプレート20の上面20Aは、マスクプレート30の上面30Aよりも第3方向Zに突出している。
【0035】
ノズルプレート20の上面20Aは、撥インク性である。例えば、上面20Aは、ポリイミド製のノズルプレート20に撥インク性を呈する材料、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂からなる被膜をコーティングすることによって形成されている。これにより、インク吐出性能を安定化している。
【0036】
図4は、図2に示したインクジェットヘッド2をクリーニングするためのクリーニング装置3の構造を概略的に示す斜視図である。
【0037】
すなわち、クリーニング装置3は、吸引ノズル80、吸引ポンプ91、インク回収ビン92などを備えて構成されている。吸引ノズル80の詳細な構造については後述する。吸引ノズル80とインク回収ビン92とは、配管93を介して接続されている。また、吸引ポンプ91とインク回収ビン92とは、配管94を介して接続されている。
【0038】
この吸引ノズル80は、図示を省略した移動機構により、インクジェットヘッド2の長手方向、つまり、第1方向Xと平行な方向に移動可能である。より具体的には、吸引ノズル80は、インクジェットヘッド2と対向しない位置、例えば図中左側の待機位置と、インクジェットヘッド2に対向する位置との間を移動可能であり、移動しながらインクジェットヘッド2のノズルプレート上あるいはノズル穴近傍に付着したインク等の吸引クリーニングを行う。
【0039】
この吸引クリーニングは、吸引ノズル80が矢印A1で示したように待機位置からインクジェットヘッド2に対向する位置に向かって移動(前進移動)する際、また、吸引ノズル80が矢印A2で示したようにインクジェットヘッド2に対向する位置から待機位置に向かって移動(後進移動)する際に行われる。このようなインクの吸引は、吸引ポンプ91によりインク回収ビン92内の気圧を下げることによって吸引ノズル80とインクジェットヘッド2との隙間に空気流を発生させることにより行われる。
【0040】
なお、ここでは、吸引クリーニングに際して、インクジェットヘッド2の位置は固定される一方で吸引ノズル80が移動する場合について説明するが、逆に、吸引ノズル80の位置は固定される一方でインクジェットヘッド2が移動しても良く、インクジェットヘッド2の位置と吸引ノズル80の位置とが相対的に変化するような構成であれば良い。
【0041】
図5は、図4に示したクリーニング装置を構成する吸引ノズル80の構造を概略的に示す斜視図である。
【0042】
すなわち、吸引ノズル80は、撥インク性の撥インク面81及び82と、撥インク面81及び82よりもインクの接触角が小さい親インク性の親インク面83と、親インク面83に形成された複数の吸引口84A乃至84Cと、を備えている。
【0043】
図示した例では、撥インク面81及び82は、親インク面83を挟む両側にそれぞれ形成されている。つまり、撥インク面81、親インク面83、撥インク面82は、第2方向Yに沿ってこの順に並んでいる。これらの撥インク面81及び82と、親インク面83とは、第1方向Xに沿って延在している。
【0044】
親インク面83は、撥インク面81及び82に対して窪んでいる。つまり、撥インク面81及び82は、図示しないインクジェットヘッドと対向した際にインクジェットヘッドに向かって突出しており、親インク面83は、インクジェットヘッドから遠ざかる側に形成されている。このため、撥インク面81及び82と親インク面83との間には段差が形成されている。このような撥インク面81及び82と親インク面83との段差は、例えば、0.1mmである。
【0045】
吸引口84A乃至84Cのそれぞれは、X−Y平面において円形であり、略同一径を有するように形成されている。吸引口84A乃至84Cの径は、図示しないノズル穴21の径よりも大きく、例えば、30μmである。これらの吸引口84A乃至84Cは、吸引ノズル80の内部で繋がり、配管93と連通している。
【0046】
また、これらの吸引口84A乃至84Cは、第2方向Yに沿った同一直線上に位置しており、この順に並んでいる。ここでは、吸引口84Aは親インク面83における撥インク面81の近傍に形成され、吸引口84Cは親インク面83における撥インク面82の近傍に形成され、吸引口84Aと吸引口84Cとの間の吸引口84Bは親インク面83の略中央に形成されている。吸引口84Aの中心と吸引口84Bの中心との第2方向Yに沿った距離、及び、吸引口84Bの中心と吸引口84Cの中心との第2方向Yに沿った距離は、略同一であり、また、図示しないノズル列211とノズル列212との間隔と略同一であり、例えば、6mmである。
【0047】
また、吸引ノズル80は、撥インク面81及び82と、親インク面83とのそれぞれから下方(つまり、インクジェットヘッドと対向した際にインクジェットヘッドから遠ざかる側)に向かって折り曲げられた傾斜面85A及び85B、86A及び86B、87A及び87Bを備えている。
【0048】
傾斜面85A及び85Bは、撥インク面81を挟んだ両側に形成され、撥インク性である。傾斜面86A及び86Bは、撥インク面82を挟んだ両側に形成され、撥インク性である。傾斜面87A及び87Bは、親インク面83を挟んだ両側に形成され、親インク性である。
【0049】
傾斜面85A、87A、86Aは、第2方向Yに沿ってこの順に並んでおり、吸引ノズル80が矢印A1の向きに前進移動する際の先端部となる。傾斜面85B、87B、86Bは、第2方向Yに沿ってこの順に並んでおり、吸引ノズル80が矢印A2の向きに後進移動する際の先端部となる。
【0050】
撥インク面81とこれに繋がった傾斜面85A及び85B、及び、撥インク面82とこれに繋がった傾斜面86A及び86Bのそれぞれは、摩擦抵抗が小さく、耐薬品性を有し、且つ、撥インク性を有する材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂など)によって形成されるか、基材上に表面処理(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂などからなる被膜のコーティング)を施すことによって形成される。
【0051】
親インク面83とこれに繋がった傾斜面87A及び87Bは、親インク性を有する材料(例えば、ステンレスなど)によって形成されるか、基材上に親インク性を有するような表面処理(例えば、プラズマCVD法などによる酸化チタン薄膜の成膜)を施すことによって形成される。
【0052】
本実施形態においては、ステンレス製の基材の両側にフッ素系樹脂からなる被膜をコーティングし、基材が露出している部分が親インク面83及び傾斜面87A及び87Bとなり、被膜がコーティングされている部分が撥インク面81及び傾斜面85A及び85B、及び、撥インク面82及び傾斜面86A及び86Bとなる。撥インク面81及び82と親インク面83との段差は、基材上にコーティングされた被膜の厚さに相当する。
【0053】
また、吸引ノズル80は、撥インク面81及び82の外側にそれぞれ形成されたガイド88を備えている。このガイド88は、撥インク面81及び82よりも上方(つまり、インクジェットヘッドに近接する側)に向かって突出している。このようなガイド88は、例えば、撥インク性を有する材料(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂など)によって形成されている。撥インク面81及び82及び親インク面83を挟んで向かい合うガイド88の間の間隔、つまり、第2方向Yに沿った距離は、インクジェットヘッドの長手方向に直交する第2方向Yの幅と略同一である。
【0054】
図6は、図5に示した吸引ノズル80のインクジェットヘッド2に対する移動状態を説明するための斜視図である。
【0055】
すなわち、吸引ノズル80は、第1ポジション(待機位置)P1から矢印A1の方向に移動し、傾斜面85A、86A、87Aを先端部としてインクジェットヘッド2と対向する位置に進入する。このとき、吸引ノズル80は、一対のガイド88がインクジェットヘッド2のマスクプレート30を挟持するため、安定して直線的に移動可能である。
【0056】
吸引ノズル80は、インクジェットヘッド2と対向する位置を越えた第2ポジションP2に到達した後、矢印A2の方向に移動し、傾斜面85B、86B、87Bを先端部としてインクジェットヘッド2と対向する位置に進入する。このときも、吸引ノズル80の一対のガイド88は、インクジェットヘッド2のマスクプレート30を挟持する。そして、吸引ノズル80は、再び第1ポジションP1まで移動する。
【0057】
吸引ノズル80による吸引クリーニングは、矢印A1の方向の移動の際、及び、矢印A2の方向の移動の際の少なくとも一方で行われる。
【0058】
図7は、吸引ノズル80がインクジェットヘッド2と対向する位置に進入する際の、吸引口84A乃至84Cと、ノズルプレート20及びノズル穴21との位置関係を示す図である。ここでは、図6におけるBの方向から見たときの吸引ノズル80の平面図、及び、図6におけるCの方向から見たときのインクジェットヘッド2の平面図が示されている。
【0059】
ノズルプレート20の第2方向Yに沿った幅は、撥インク面81及び82の間に位置する親インク面83の第2方向Yに沿った幅よりも広い。吸引ノズル80がインクジェットヘッド2と対向した状態では、ノズルプレート20は、親インク面83を跨ぎ、撥インク面81及び82の双方と対向する。
【0060】
上記の通り、インクジェットヘッド2のノズルプレート20は、マスクプレート30よりも吸引ノズル80の側に突出しており、また、吸引ノズル80の撥インク面81及び82は、親インク面83よりもインクジェットヘッド2の側に突出している。このため、吸引ノズル80がインクジェットヘッド2と対向した状態では、撥インク面81及び82の双方は、ノズルプレート20に接触する。具体的には、撥インク面81及び82の双方における斜線部分と、ノズルプレート20の斜線部分とが接触する。撥インク面81及び82がノズルプレート20に接触した状態では、親インク面83は、ノズルプレート20とは接触せず、後述するようにノズルプレート20との間に隙間を形成する。
【0061】
なお、吸引ノズル80がインクジェットヘッド2と対向した状態では、マスクプレート30は、撥インク面81及び82のいずれとも接触しないし、当然のことながら親インク面83とも接触しない。
【0062】
つまり、吸引ノズル80がインクジェットヘッド2と対向した状態では、その移動方向(つまり、矢印A1及びA2の方向)と平行な方向から隙間に空気を取り込むことが可能な開口が形成され、移動方向に対して直交する方向は、ノズルプレート20と撥インク面81及び82とが接触するため塞がっている。
【0063】
吸引ノズル80の吸引口84A乃至84Cのそれぞれは、吸引ノズル80がインクジェットヘッド2と対向した状態で、インクジェットヘッド2のノズルプレート20に形成されたノズル穴21と対向する位置からずれた位置に形成されている。つまり、吸引ノズル80がインクジェットヘッド2の直下(鉛直方向)に位置しながら移動する際に、吸引口84A乃至84Cのいずれもノズル穴21の直下に位置することはない。換言すると、吸引口84A乃至84Cのいずれもノズル列211及び211の双方の直下を通過することはない。
【0064】
また、吸引口84A乃至84Cのそれぞれは、ノズル列211及び212と対向する位置を挟む両側にそれぞれ形成されている。具体的には、吸引ノズル80がインクジェットヘッド2の直下に位置しながら移動する際に、吸引口84A(第1吸引口に相当)及び吸引口84B(第2吸引口に相当)はノズル列211の両側を移動し、吸引口84B(第1吸引口に相当)及び吸引口84C(第2吸引口に相当)はノズル列212の両側を移動する。
【0065】
図示した例では、ノズルプレート20に2列のノズル列211及び212が形成されているが、ノズル列は1列であっても良いし3列以上であっても良く、いずれの場合であっても、ノズル列の両側を吸引口が移動する構成が望ましい。つまり、ノズルプレート20に形成されるノズル列の数をnとしたとき、吸引ノズル80に形成される吸引口の数は少なくとも(n+1)とすることが望ましい。
【0066】
図8は、インクジェットヘッド2と吸引ノズル80とが対向した状態を示す移動方向に直交する面内(Y−Z平面)での断面図である。図9は、インクジェットヘッド2と吸引ノズル80とが対向した状態を示す移動方向に平行な面内(X−Z平面)での断面図である。
【0067】
吸引ノズル80を移動させながらノズルプレート20の上面20Aにおけるノズル穴21の近傍に付着したインク等の吸引クリーニングを行うに際しては、インクジェットヘッド2と吸引ノズル80とが対向した状態において、マスクプレート30よりも吸引ノズル80の側に突出したノズルプレート20は、親インク面83よりもインクジェットヘッド2の側に突出した撥インク面81及び82と接触する。このとき、ノズルプレート20と親インク面83との間には、隙間dが形成される。つまり、ノズルプレート20に形成されたノズル穴21が親インク面83に接触することはないし、親インク面83に形成された吸引口84A乃至84Cがノズルプレート20に接触することもない。
【0068】
ここで、ノズルプレート20の上面20Aは、上記の通り、インク吐出性能の安定化のため撥インク性を有するように処理されている(ここでは、撥インク性を呈する被膜によってコーティングされている)。このため、上面20Aに残留したインクは、弾かれてインク滴となりやすい。
【0069】
一方で、上面20Aとの間に隙間dを形成する親インク面83では、インクが馴染みやすく、上面20Aのインク滴を合体させ、インクの集合体(以降、インク溜りと称する場合がある)200が形成されやすくなる。
【0070】
吸引ノズル80による吸引が開始されると、移動方向Aに対して平行な方向(第1方向X)から隙間dに空気が取り込まれ、吸引口84A乃至84Cの各々に向かって空気流eが形成される。隙間dに形成されたインク溜り200は、他のインク滴やゴミ等とともに隙間dを流れる空気流eによって吸引口84A乃至84Cに引き寄せられて合体しながら、吸引口84A乃至84Cから吸引される。
【0071】
これにより、ノズルプレート20の上面20Aでのインク滴の残留を抑制することができ、清浄化できる。また、吸引ノズル80において、親インク面83での微小なインク滴の残留を抑制することができ、親インク面上の残留インクによるノズルプレート20の汚染を防止できる。このため、インク吐出性能を安定化し、印字性能の劣化を抑制することが可能となる。
【0072】
また、ノズルプレート20の上面20Aと接触して摺動する撥インク面81及び82は、摩擦抵抗が小さい。このため、吸引ノズル80がスムースに移動可能となるとともに、上面20Aを傷付け撥インク性が破壊されてインクを弾かなくなることを抑制することができる。したがって、上面20Aの撥インク面81及び82と接触する領域について撥インク性を維持することが可能となる。
【0073】
また、撥インク面81及び82では、インクが弾かれ、インク溜りの形成を抑制することができる。このため、上面20Aの撥インク面81及び82と接触する領域でのインクの残留及びインクの固着を抑制することが可能となる。このため、インク吐出性能を安定化し、印字性能の劣化を抑制することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態においては、親インク面83の両側に撥インク面81及び82が位置しているため、親インク面83に形成されるインク溜り200の広がりを抑制することが可能となる。
【0075】
また、本実施形態においては、親インク面83の吸引口84A乃至84Cは、ノズルプレート20と対向する位置に形成されている。また、ノズルプレート20のノズル穴21は、吸引ノズル80の親インク面83と対向する位置に形成されている。つまり、吸引口84A乃至84Cは、ノズル穴21と対向する位置からずれた位置に形成されている。ノズル列211を形成するノズル穴21は、親インク面83上の吸引口84Aと吸引口84Bとの間の位置に対向している。ノズル列212を形成するノズル穴21は、親インク面83上の吸引口84Bと吸引口84Cとの間の位置に対向している。図示した例では、ノズル穴21のそれぞれは、隣接する2つの吸引口の略中間の位置に対向している。
【0076】
このため、吸引ノズル80の移動に伴い、吸引口84A乃至84Cのそれぞれは、ノズル穴21と対向する位置からずれた位置を移動することになる。より具体的には、吸引口84A及び84Bは、ノズル列211と対向する位置を挟む両側を移動する。また、吸引口84B及び84Cは、ノズル列212と対向する位置を挟む両側を移動する。
【0077】
これにより、複数の吸引口84A乃至84Cからインク溜り200を効率よく吸引することが可能となる。また、ノズル穴21の近傍において、ノズル穴21の両側に位置する吸引口からバランスよく吸引されるため、インクが引きちぎられてノズル内に気泡が発生するといった不具合の発生も抑制することが可能となる。
【0078】
また、本実施形態において、吸引ノズル80は、吸引口84A乃至84Cのそれぞれとノズル穴21のそれぞれとの位置が適切になるように、一対のガイド88によりインクジェットヘッド2のマスクプレート30を挟持しながら移動する。このため、吸引ノズル80の第2方向Yの移動が規制され、吸引口84A乃至84Cとノズル穴21との位置関係を適切な状態に維持することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態において、隙間dを形成するノズルプレート20の上面20Aから親インク面83までの第3方向Zに沿った距離は、0.05mm以上0.1mm以下である。隙間dを形成する距離が0.1mmより広い場合には、インク滴が合体しにくくなり、また、インク溜り200を吸引する空気流eの流速が遅くなりインク溜り200を吸引する吸引力が弱くなってしまう。また、隙間dを形成する距離が0.05mmより狭い場合には、空気の流れが阻害されてしまい、インク滴等を引き寄せにくくなってしまう。したがって、上記の範囲に設定することにより、インク溜り200を形成しやすくなるとともにインク溜り200を吸引する適度な流速の空気流eを形成することが可能となり、インク溜り200を吸引しやすくなる。
【0080】
図10は、吸引ノズル80の傾斜面の作用を説明するための図である。ここでは、親インク面83に繋がった傾斜面87Aの作用について説明するが、傾斜面87Bについても同様である。
【0081】
吸引ノズル80が矢印A1の方向に移動する場合、傾斜面87Aは、インクジェットヘッド2と対向する位置に進入する先端部となる。この傾斜面87Aは、ノズルプレート20の上面20Aに対して鋭角θ(<90°)をなし、親インク面83から離れるほど上面20Aから遠ざかるように形成されている。
【0082】
このような傾斜面87Aは、親インク面83と同様に、ノズルプレート20には接触していないが、インクジェットヘッド2と対向する位置への進入に伴って、ノズルプレート20の上面20Aのインク滴をかき集めて合体させ、インク溜り200を形成する。このとき、傾斜面87Aが上記の通り上面20Aに対して鋭角をなしているため、上面20Aからインク滴をかき落とすことがなく、傾斜面87Aと上面20Aとの間にインク溜り200を形成することが可能となる。
【0083】
そして、吸引ノズル80の移動に伴って、ノズルプレート20の上面20Aのインク滴をインク溜り200に合体させながら吸引する。このとき、傾斜面87Aと上面20Aとの間のインク溜り200は、吸引ノズル80の移動経路上のインク滴と順次合体する一方で、親インク面83と上面20Aとの間に引き寄せられ、吸引口84A乃至84Cから吸引される。
【0084】
このように、吸引ノズル80の移動方向の先端部が傾斜面であることにより、インクジェットヘッド2と対向する位置にスムースに進入することができ、ノズルプレート20からインク滴をかき落とすこともないため、周囲の汚染を抑制することが可能となる。また、インク滴をインク溜り200に合体させやすくなり、このインク溜り200を吸引することで、ノズルプレート20の上面20A及び親インク面83でのインク滴の残留を抑制することが可能となる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態によれば、印字性能の劣化を抑制することが可能な印字装置、インクジェットヘッドのクリーニング装置、及び、インクジェットヘッドのクリーニング方法を提供することができる。
【0086】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1…インクジェット記録装置
2…インクジェットヘッド
20…ノズルプレート 20A…上面
21…ノズル穴 211及び212…ノズル列
30…マスクプレート
3…クリーニング装置
80…吸引ノズル
81及び82…撥インク面 83…親インク面
84A乃至C…吸引口
85A及び85B…傾斜面 86A及び86B…傾斜面 87A及び87B…傾斜面
88…ガイド
d…隙間
200…インク溜り(集合体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための複数のノズル穴からなるノズル列が形成されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドと対向した状態で前記ノズルプレートに接触する撥インク性の撥インク面と、前記撥インク面が前記ノズルプレートに接触した状態で前記ノズルプレートとの間に隙間を形成するとともに前記撥インク面よりもインクの接触角が小さい親インク性の親インク面と、前記親インク面に形成された複数の吸引口と、を備えた吸引ノズルを含むクリーニング装置と、
を具備することを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記吸引口のそれぞれは、前記ノズル穴と対向する位置からずれた位置に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記複数の吸引口は、前記ノズル列と対向する位置を挟む両側にそれぞれ形成された第1吸引口及び第2吸引口を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の印字装置。
【請求項4】
前記ノズル列の数をnとしたとき、前記吸引口の数は少なくとも(n+1)であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項5】
前記吸引口の径は、前記ノズル穴の径よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項6】
前記撥インク面は、前記親インク面を挟む両側にそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項7】
前記吸引ノズルは、前記インクジェットヘッドと対向した状態で前記インクジェットヘッドを挟持するガイドを備えたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項8】
前記吸引ノズルは、前記インクジェットヘッドと対向する位置に進入する先端部が前記ノズルプレートの上面に対して鋭角をなす傾斜面であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項9】
前記隙間を形成する前記ノズルプレートの上面から前記親インク面までの距離は、0.05mm以上0.1mm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項10】
前記ノズルプレートの上面は、撥インク性であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の印字装置。
【請求項11】
インクジェットヘッドのクリーニング装置であって、
撥インク性の撥インク面と、
前記撥インク面に対して窪み、前記撥インク面よりもインクの接触角が小さい親インク性の親インク面と、
前記親インク面に形成された複数の吸引口と、
を備えた吸引ノズルを具備することを特徴とするクリーニング装置。
【請求項12】
前記撥インク面は、前記親インク面を挟む両側にそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項11に記載のクリーニング装置。
【請求項13】
前記吸引ノズルは、さらに、前記撥インク面の外側にそれぞれ形成されるとともに前記撥インク面よりも上方に向かって突出したガイドを備えたことを特徴とする請求項12に記載のクリーニング装置。
【請求項14】
前記吸引ノズルは、さらに、前記撥インク面及び前記親インク面から下方に向かって折り曲げられた傾斜面を備えたことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載のクリーニング装置。
【請求項15】
インクを吐出するための複数のノズル穴からなるノズル列が形成されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドと対向した状態で移動しながら吸引クリーニングを行う吸引ノズルを含むクリーニング装置に適用可能なインクジェットヘッドのクリーニング方法であって、
前記インクジェットヘッドと対向した状態で前記ノズルプレートに前記吸引ノズルの撥インク面を接触させるとともに、前記ノズルプレートと前記吸引ノズルの親インク面との間に隙間を形成し、
前記親インク面に形成された複数の吸引口から、前記隙間の空気流によって引き寄せられたインクを吸引する、
ことを特徴とするクリーニング方法。
【請求項16】
前記吸引口のそれぞれは、前記ノズル穴と対向する位置からずれた位置を移動することを特徴とする請求項15に記載のクリーニング方法。
【請求項17】
前記複数の吸引口は、前記ノズル列と対向する位置を挟む両側を移動することを特徴とする請求項15または16に記載のクリーニング方法。
【請求項18】
前記吸引ノズルは、前記インクジェットヘッドのマスクプレートを挟持しながら移動することを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載のクリーニング方法。
【請求項19】
移動方向と平行な方向から前記隙間に空気を取り込んで空気流を形成することを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1項に記載のクリーニング方法。
【請求項20】
インクを吐出するための複数のノズル穴からなるノズル列が形成されたノズルプレートを含むインクジェットヘッドと対向した状態で移動しながら吸引クリーニングを行う吸引ノズルを含むクリーニング装置に適用可能なインクジェットヘッドのクリーニング方法であって、
前記インクジェットヘッドと対向する位置への進入に伴って、前記ノズルプレートの上面のインク滴をかき集めてインク滴溜まりを形成し、
前記吸引ノズルの移動に伴って、前記ノズルプレートの上面のインク滴を前記インク溜まりに合体させながら吸引する、
ことを特徴とするクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−91419(P2012−91419A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241280(P2010−241280)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】