説明

印籠型紙箱の製造方法及び印籠型紙箱の切込み形成装置。

【課題】 少ない工程で安価に、規格の異なる種々の紙箱の製造にも容易に対応することができる印籠型紙箱の製造方法であり、また従来装置に比べて装置が小型で安価であり、また切り屑の発生も少ないので品質の高い印籠型紙箱を製造できる。
【解決手段】 中箱体に印籠嵌合する回動可能な蓋体からなる印籠型紙箱の製法であり、蓋形成部と外枠部14からなる外箱体12に木型11を嵌合して1の枠片に第1の切込みを形成し、木型を抜いた外箱体の外面に化粧紙16を被着して化粧外箱体12´を形成し、化粧外箱体12´に木型11を再度嵌合し、外枠部14の切込み済枠片14A以外の枠片14A,14B,14Bに第2の切込み17を形成することにより化粧外箱体12´を蓋体と外枠体に切り離し、木型11を抜き出して外枠体を中箱体に嵌合して貼着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中箱体に嵌合して施蓋する回動可能な蓋体を有して構成され、菓子箱等に広く用いられている印籠型紙箱の製造方法及びこの印籠型紙箱を製造するための切込み形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
古くから使用されている印籠型紙箱は中箱体に蓋体が被さるように外側から嵌合する構造からなり、中箱体及び蓋体は厚紙で箱状に夫々形成したものからなっている。そして、この印籠型紙箱の製造には、金型と押切り刃を用い、中箱体と蓋体の夫々に金型を嵌合して外側から押し切り刃を押し当てて切断する装置が従来用いられている。
【0003】
また、紙製容器の製造方法として、紙製筒状管体を所要の長さに切断して紙製容器にする技術が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−254964号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の製造装置は、紙箱の4面を同時に切断する自動機械に構成してあるため、同一の規格の紙箱を大量に製造することには向いているが、装置が大型であるという欠点、価格が高いという欠点、金型が高価であるという欠点、規格の異なる紙箱の製造、即ち多品種少量生産に向いていないという欠点がある。また、特許文献1に示す紙製容器の製造方法は、箱型の容器の製造には対応できないという欠点がある。
【0005】
本発明は上述した従来技術の欠点に鑑みなされたもので、少ない工程で安価に紙箱を製造することができるし、規格の異なる種々の紙箱の製造にも容易に対応することができる印籠型紙箱の製造方法を提供すること、また従来装置に比べて装置が小型であるし安価であり、また切り屑の発生も少なく、発生した切り屑は除去することができるので品質の高い印籠型紙箱を製造することができる切込み形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために構成された請求項1に係る発明の手段は、底部の外縁から内枠部が起立した形状からなる中箱体と、蓋部の外縁から嵌合枠部が起立した形状からなり、該中箱体に印籠嵌合する回動可能な蓋体とからなる印籠型紙箱の製造方法であって、蓋形成部と外枠部からなる外箱体に木型を嵌合し、該外枠部を形成する1の枠片に第1の切込みを形成し、木型を抜いた該外箱体の外面に化粧紙を被着して化粧外箱体を形成し、該化粧外箱体に木型を再度嵌合し、前記外枠部の切込み済枠片以外の枠片に第2の切込みを形成することにより該化粧外箱体を前記蓋体と外枠体に切り離し、前記木型を抜き出して該外枠体を前記中箱体に嵌合して貼着するようにしたことにある。
【0007】
そして、前記枠片に第1の切込みを形成した後、該枠片に補強紙を貼着してもよい。
【0008】
また、請求項3に係る発明を構成する手段は、基台と、進退可能なテーブル本体を有し、該基台に設けられた可動テーブルと、該可動テーブルの進退方向に沿った側方に位置して前記基台に搭載され、該可動テーブルの上方に突出した状態で駆動部により回転駆動される切断丸刃を有する切込み形成機構とからなる。
【0009】
そして、前記可動テーブルは、前記基台に設けたテーブル昇降機構により任意の高さに調整可能にするとよい。
【0010】
また、前記切込み形成機構は、前記切断丸刃の近傍に位置して箱案内ローラ体を備えた構成にするとよい。
【0011】
更に、請求項3記載の印籠型紙箱の切込み形成装置に、外箱体の切り屑が流動可能な空隙を有する吸引用木型を用いて切り屑を吸引除去する切り屑吸引機構を設けた構成にするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述の構成にしたから、下記の諸効果を奏する。
(1)化粧紙を貼着した外箱体に回転する切断丸刃で切込みを形成して蓋体を形成するから、製造効率に優れているし、仕上がりのよい印籠型紙箱を製造できる。
(2)外箱体は可動テーブルにより水平移動し、回転する切断丸刃により切込みを形成するので、切断面の仕上がりが綺麗であり品質の高い紙箱を製造することができる。
(3)可動テーブルは高さの調整が可能であるから、深さの異なる種々の規格の紙箱の製造に対応することができる。
(4)切込み形成機構は、切断丸刃の近傍に位置して箱案内ローラ体を備えているから、切込み形成時に紙箱、特に化粧紙に擦り傷を付けることがなく高品質の紙箱を製造することができる。
(5)外箱体の切り屑は流動可能な空隙を有する吸引用木型を用いて吸引除去する切り屑吸引機構を設けたから、紙箱内に切り屑が残って品質を損なう事態を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る印籠型紙箱の製造方法について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。先ず、印籠型紙箱1の構成について説明する。2は該印籠型紙箱1を構成する厚紙製の中箱体を示し、該中箱体2は平面略四角形に形成した四角形の底部3と、該底部3の4辺から起立する内枠部4から構成してある。そして、該内枠部4は底部3の一対の長辺から起立した長手の内枠片4A、4Aと、一対の短辺から起立し、該内枠片4A、4Aに連結する連結内枠片4B、4Bとから形成してあり、中箱体2の内部は、収容部5になっている。
【0014】
6は前記中箱体2に印籠嵌合して施蓋する回動可能な厚紙製の蓋体を示す。7は該蓋体6を構成する蓋部で、該蓋部7は中箱体2の内枠部4の外形と同形の四角形に形成してある。8は該蓋部7の4辺から起立する嵌合枠部で、該嵌合枠部8は一対の長辺から起立した長手の嵌合長片8A、8Aと、一対の短辺から起立し、該嵌合長片8A、8Aに連結する嵌合短片8B、8Bとからなっている。9は中箱体2の内枠部4に貼着した外枠体で、該外枠体9は一対の長枠片9A,9Aと、該長枠片9A,9Aに連結する一対の短枠片9B,9Bとかなっている。
【0015】
次に、第2の実施の形態として、上述した構成からなる印籠型紙箱1の製造方法に用いる切込み形成装置について、図7乃至図9を参照しつつ説明する。図において、21は切込み形成装置、22は該切込み形成装置21を構成する基台を示す。23は該基台22を構成する4本の支持脚で、該各支持脚23は下端側に高さ調整アジャスタ23Aを有し、上端側には縦方向にガイド穴23Bが形成してある。24、24は前後の支持脚23,23に架設した上部連結材で、その下方に下部連結材25,25が架設してある。そして、上部連結材24,24間に横連結材26,26が架設してあり、基台22は平面において前後方向に長尺の長方形をなしている。
【0016】
27は可動テーブルで、該可動テーブル27は基台22と略同形の昇降枠体28と、該昇降枠体28の長手方向両端側から下方に突出し、前記支持脚23のガイド穴23Bに摺動可能に挿入され、昇降枠体28を水平状態で昇降させる4本のガイド軸29,29、・・と、昇降枠体28の上面に幅方向に離間して長手方向に設けた一対のガイドレール30,30と、該ガイドレール30,30を走行する走行輪31,31、・・を下面に有し、矢示イ、ロ方向に水平移動する平板からなるテーブル本体32とから構成してある。
【0017】
33は前記可動テーブル27を昇降させるテーブル昇降機構を示す。34は該テーブル昇降機構33を構成する支持フレームで、該支持フレーム34は基台22に固着される前後一対の架設材34A、34Aと、該架設材34A、34Aに間隙を存して架設した一対の連結材34B、34Bとから構成してある。35、35は前記支持フレーム34に搭載した一対のウォームギヤで、該各ウォームギヤ35のウォームホイールは前記連結材34B,34Bに設けたギヤボックス35Aに格納し、該ウオームホイールに歯合するウォーム35Bは上端を可動テーブル27の昇降枠体28に接続してある。そして、該ウォームギヤ35、35は支持フレーム34に軸受けを介して設けられ、基端に回動ハンドル36Aを有する操作軸36によって回動操作するようになっている。
【0018】
37はテーブル本体32の進退方向に沿った側方に位置して基台22に搭載した回転切断機構を示し、該回転切断機構37はボックス状に形成され、側板38Aに横長のスリット状の刃先突出窓38Bが開口形成してあるケーシング38と、前記刃先突出窓38Bから刃先を若干、3〜5mm突出させた状態でケーシング38内に回転可能に軸支された切断丸刃39と、プーリー40、41、駆動ベルト42を介して該切断丸刃39を毎分約3,000回転の高速で回転駆動する電動モータ43とから構成してある。
【0019】
また、44、44は切断する外箱体12を覆う化粧紙16がケーシング38の側板38Aに擦って傷が付くのを防止するための一対の箱案内ローラ体を示す。該各箱案内ローラ体44は縦断面略コ字状の基板に複数個のローラ44A,44A、…を回動可能に軸支した構成からなり、刃先突出窓38Bの横方向両側に位置して側板38Aに形成した横長の開口38C、38Cに各ローラ42Aを0.1mm程度側板38Aから突出した状態で設けてある。
【0020】
本実施の形態に係る切込み形成装置21は上述の構成からなるが、以下に該装置21を用いる印籠型紙箱1の製造方法について説明する。図において、11は製造方法に用いる木型である。12は蓋体6と外枠体9を形成するために形成した外箱体で、該外箱体12は底形成部13と、外枠部14とから形成してある。この外枠体12に木型11を嵌合して切込み形成時に変形しないようにし、外枠部14を形成する1の面の長枠片14Aに全長にかけて第1の切込み15を形成する。この第1の切込み形成工程は、テーブル昇降機構33を操作して可動テーブル27のテーブル本体32の高さを調整し、切断丸刃39に対して外箱体12の切込み形成位置を合わせた後、電動モータ43を始動して切断丸刃39を高速回転させ、テーブル本体32上の外箱体12を箱案内ローラ体44に案内させながら矢示イ方向に押動する。これにより、水平移動する外箱体12はその1の長枠片14Aに第1の切込み15を形成することができる。
【0021】
第1の切込み15を形成した外箱体12は、図4に示すように化粧紙16を貼着して外面を全面的に覆って化粧外箱体12´に形成する。この外箱体12に化粧紙16を貼着する作業は既存の自動機械により行うことができる。次に、化粧外箱体12´に木型11を再度嵌合して切込み形成時の変形が生じないようにし、可動テーブル27上で切断丸刃39により、外枠部14の他の長枠片14A及び短枠片14B、14Bの3片に第2の切込み17を形成する。この際、化粧外箱体12´の各外枠片14A,14B,14Bを覆う化粧紙16は箱案内ローラ体44、44に当接し、ケーシング38の側板38Aには直接接しないようにしたから、化粧紙16に擦傷が付いて紙箱の品質を損なうことを防止できる。
【0022】
このようにして、化粧外箱体12´を蓋体6と外枠体9に形成する。最後に、化粧外箱体12´から木型11を抜き取り、外枠体9を中箱体2に嵌合し、接着剤で貼着することにより、印籠型紙箱1を製造することができる。
【0023】
なお、化粧紙16に蓋体6を回動可能に支持するための強度性が十分でない場合は、第1の切込み15を形成した段階で、補強紙を貼着するとよい。
【0024】
図6は本実施の形態の変形例を示す。18は傾斜切込み形成台を示し、該傾斜切込み形成台18はテーブル本体32に乗る下面19Aが水平面になり、化粧外箱体12´を乗せる上面19Bが傾斜面になった台本体19と、該台本体19の傾斜面19Bにねじ止め手段により変位可能、かつ着脱可能に設けた一対の係止用角木20,20とから構成してある。
【0025】
この傾斜切込み形成台18を用いることにより、蓋体6が傾斜縁を有する印籠型紙箱1を構成するための化粧外箱体12´に傾斜した第2の切込み17´を容易に形成することができる。また、一対の係止用角木20,20の間隔を調整することにより、大きさの異なる化粧外箱体12´への形成に対応することができる。
【0026】
次に、第2の実施の形態に係る切込み形成装置を図10乃至図12に基づき説明する。なお、第1の」実施の形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して援用し、その説明を省略する。図において、51は切り屑吸引機構、52は該切り屑吸引機構51を構成する吸引用木型を示し、該吸引用木型52は紙箱の内法寸法と同形に形成した下型板53と、該下型板53と同形で、中央に吸引口54Aを形成した上型板54と、該上型板54と下型板53との間に切り屑が流動可能な空隙55を形成すべく挟装した円板状の2枚のスペーサー56,56とから構成してある。なお、形成する空隙55は、切込み形成時の紙箱の変形を防止し、かつ切り屑が流動できる間隔が望ましく、本実施の形態では約5mmに設定してある。また、スペーサーには、小さいサイズのものを互いに接しない状態で4枚挟装してもよい。
【0027】
57は紙箱の切り屑を吸引除去するための切り屑吸引機で、該切り屑吸引機57は、吸引機本体57Aと、該吸引機本体57Aに接続され、先端側が前記上型板の吸引口53Aに挿入して接続する可撓性の吸引ホース57Bとから構成してある。
【0028】
従来、紙箱の素材によっては切込みを形成する際に切り屑が出て箱内に残り、紙箱の品質を損なう原因になることから、紙箱製造後に切り屑を除去する作業が必要であったが、本実施の形態によれば、切込み形成時に切り屑を吸引除去するから、作業効率を損なうことなく高品質の紙箱を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1乃至図6は本発明の第1の実施の形態に係り、図1は蓋部を開いた状態で示す印籠型紙箱の斜視図である。
【図2】外箱体に木型を嵌合する工程を示す説明図である。
【図3】外箱体に第1の切込みを形成する工程を示す説明図である。
【図4】外箱体の外面に化粧紙を貼着する工程を示す説明図である。
【図5】外箱体を蓋部と外枠体に分離する工程を示す説明図である。
【図6】傾斜切込み形成台の斜視図である。
【図7】図7乃至図9は第2の実施の形態に係り、図7は一部を破断にして示す切込み形成装置の正面図である。
【図8】一部を破断にして示す切込み形成装置の平面図である。
【図9】一部を破断にして示す切込み形成装置の側面図である。
【図10】図10乃至図12は第3の実施の形態に係り、図10は吸引用木型の斜視図である。
【図11】上型板を外した吸引用木型の斜視図である。
【図12】切り屑吸引機構の使用状態説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 印籠型紙箱
2 中箱体
3 底部
4 内枠部
6 蓋体
7 蓋部
8 嵌合枠部
9 外枠体
11 木型
12 外箱体
13 底形成部
14 外枠部
15 第1の切込み
16 化粧紙
17 第2の切込み
21 切込み形成装置
22 基台
27 可動テーブル
33 テーブル昇降機構
37 回転切断機構
39 切断丸刃
44 箱案内ローラ体
51 切り屑吸引機構
52 吸引用木型
55 空隙
57 吸引機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部の外縁から内枠部が起立した形状からなる中箱体と、蓋部の外縁から嵌合枠部が起立した形状からなり、該中箱体に印籠嵌合する回動可能な蓋体とからなる印籠型紙箱の製造方法であって、蓋形成部と外枠部からなる外箱体に木型を嵌合し、該外枠部を形成する1の枠片に第1の切込みを形成し、木型を抜いた該外箱体の外面に化粧紙を被着して化粧外箱体を形成し、該化粧外箱体に木型を再度嵌合し、前記外枠部の切込み済枠片以外の枠片に第2の切込みを形成することにより該化粧外箱体を前記蓋体と外枠体に切り離し、前記木型を抜き出して該外枠体を前記中箱体に嵌合して貼着するようにしてなる印篭型紙箱の製造方法。
【請求項2】
前記枠片に第1の切込みを形成した後、該枠片に補強紙を貼着することを特徴とする請求項1記載の印籠型紙箱の製造方法。
【請求項3】
基台と、進退可能なテーブル本体を有し、該基台に設けられた可動テーブルと、該可動テーブルの進退方向に沿った側方に位置して前記基台に搭載され、該可動テーブルの上方に突出した状態で駆動部により回転駆動される切断丸刃を有する切込み形成機構とから構成してなる印籠型紙箱の切込み形成装置。
【請求項4】
前記可動テーブルは、前記基台に設けたテーブル昇降機構により任意の高さに調整可能であることを特徴とする請求項3記載の印籠型紙箱の切込み形成装置。
【請求項5】
前記切込み形成機構は、前記切断丸刃の近傍に位置して箱案内ローラ体を備えていることを特徴とする請求項3記載の印籠型紙箱の切込み形成装置。
【請求項6】
請求項3記載の印籠型紙箱の切込み形成装置に、外箱体の切り屑が流動可能な空隙を有する吸引用木型を用いて切り屑を吸引除去する切り屑吸引機構を設けたことを特徴とする印籠型紙箱の切込み形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−159639(P2006−159639A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354506(P2004−354506)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(504450394)松井電機工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】