説明

印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラム

【課題】効率的に印鑑照合を行うことが可能な印鑑照合装置を提供する。
【解決手段】営業店端末110は、帳票の帳票イメージを取得するイメージ読取部112と、取得された帳票イメージ全体から印影の候補を探索する印影探索部118と、探索された印影の候補に対して、印鑑照合のための優先度を設定する設定部としての印影候補位置判断部124と、設定された優先度に基づいて、印鑑照合において用いる印影の候補を選択する選択部としての印影候補管理部122と、選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う印鑑照合部128とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金融機関では、取引を行う際に、営業店端末を用いて帳票に押印された印鑑の照合を行うことにより、本人確認を実施している。一般的な印鑑照合の流れは以下の通りである。
【0003】
まず、第1のステップとして、営業店端末は、営業店端末に接続されたスキャナにより帳票がスキャンされることにより、帳票イメージを取得する。次いで、第2のステップとして、営業店端末は、口座番号/科目をキーとして、顧客の印鑑イメージが保管された印鑑サーバより、該当の印鑑イメージを取得する。次いで、第3のステップとして、営業店端末は、第1のステップで取得した帳票イメージから、押印領域を切り出して印影を取得する。そして、第4のステップとして、営業店端末は、第3のステップで取得した印影と、第2のステップで取得した印鑑イメージとを照合する。
【0004】
例えば、特許文献1では、上記第3のステップにおいて、帳票の種類ごとに印影を切り出す位置(押印欄または押印領域)が指定されている。また、例えば、特許文献2では、帳票の押印領域以外の領域に印鑑が押印されている場合に、印影を切り出す位置をオペレータが再設定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3491636号明細書
【特許文献2】特開2000−137821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、帳票の押印領域以外の領域に印鑑が押印されている場合は、オペレータが帳票イメージを目視して押印箇所を確認し、その上で印影を切り出す位置を再設定する必要があるため、オペレータの負荷が重くなり、取引時間が増大するという問題があった。さらに、帳票に複数の印影がある場合には、オペレータが正規の印影である可能性が高い印影を容易に把握することができず、取引時間がさらに増大するという問題があった。
【0007】
したがって、上述した従来の技術では、帳票の押印領域以外の領域に印鑑が押印されている場合や、帳票に複数の印影がある場合などにおいて、効率的に印鑑照合を行うことができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、効率的に印鑑照合を行うことが可能な、新規かつ改良された印鑑照合装置、印鑑照合方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、帳票の帳票イメージを取得する取得部と、前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、前記探索部により探索された印影の候補に対して、印鑑照合のための優先度を設定する設定部と、前記設定部により設定された優先度に基づいて、印鑑照合において用いる印影の候補を選択する選択部と、前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部とを備えることを特徴とする印鑑照合装置が提供される。
【0010】
前記設定部は、前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、当該判別結果に基づいて、前記優先度の設定を行ってもよい。
【0011】
前記設定部は、前記判別結果に基づいて、前記帳票の押印欄の領域内にない印影の候補に対しては、当該印影の候補の領域と前記帳票の押印欄の領域との距離を算出し、当該算出結果に基づいて、前記優先度の設定を行ってもよい。
【0012】
前記設定部は、前記算出結果に基づいて、前記算出された距離の値が小さい印影の候補ほど、前記優先度を高く設定してもよい。
【0013】
前記設定部は、前記探索部により探索された印影の候補の領域と前記帳票の押印欄の領域との距離を算出し、当該算出結果に基づいて、前記優先度の設定を行ってもよい。
【0014】
前記設定部は、前記算出結果に基づいて、前記算出された距離の値が小さい印影の候補ほど、前記優先度を高く設定してもよい。
【0015】
前記設定部は、前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、当該判別結果に基づいて、前記帳票の押印欄の領域内にある印影の候補に対しては、特定の優先度を設定し、前記選択部は、前記特定の優先度が設定された印影の候補のみ印鑑照合において用いる印影の候補として選択してもよい。
【0016】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、帳票の帳票イメージを取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索ステップと、前記探索ステップで探索された印影の候補に対して、印鑑照合のための優先度を設定する設定ステップと、前記設定ステップで設定された優先度に基づいて、印鑑照合において用いる印影の候補を選択する選択ステップと、前記選択ステップで選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合ステップとを有することを特徴とする印鑑照合方法が提供される。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、帳票の帳票イメージを取得する取得部と、前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、前記探索部により探索された印影の候補に対して、印鑑照合のための優先度を設定する設定部と、前記設定部により設定された優先度に基づいて、印鑑照合において用いる印影の候補を選択する選択部と、前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部ととして機能させるためのプログラムが提供される。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、帳票の帳票イメージを取得する取得部と、前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、前記押印欄の領域内にあると判別された印影を印鑑照合に用いる印影として選択する選択部と、前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部とを備えることを特徴とする印鑑照合装置が提供される。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、帳票の帳票イメージを取得する取得ステップと、前記取得ステップで取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索ステップと、前記探索ステップで探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別する判別ステップと、前記判別ステップで前記押印欄の領域内にあると判別された印影を印鑑照合に用いる印影として選択する選択ステップと、前記選択ステップで選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合ステップとを有することを特徴とする印鑑照合方法が提供される。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、帳票の帳票イメージを取得する取得部と、前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、前記押印欄の領域内にあると判別された印影を印鑑照合において用いる印影として選択する選択部と、前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部ととして機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、効率的に印鑑照合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る印鑑照合システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1における営業店端末のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】図1における印鑑照合システムが実行する第1の印鑑照合処理のフローチャートである。
【図4】図1における印鑑照合システムが実行する第2の印鑑照合処理のフローチャートである。
【図5】押印領域座標を説明するための説明図である。
【図6】印影候補領域座標を説明するための説明図である。
【図7】方式1を満たした場合の帳票イメージにおける押印欄の拡大図である。
【図8】方式2を満たした場合の帳票イメージの拡大図である。
【図9】図3の第1の印鑑照合処理におけるステップS128の処理まで完了した際の印影候補データの一例を示す説明図である。
【図10】印影2に対して印鑑照合を実施した後の印影候補データの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
まず、本発明の実施の形態に係る印鑑照合システムについて説明する。図1は、本実施の形態に係る印鑑照合システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【0025】
図1において、印鑑照合システム10は、営業店100に設置される営業店端末110およびスキャナ130と、センタ200に設置される印鑑サーバ210と、通信網300とを含む。営業店端末110は、本発明の印鑑照合装置の一例である。通信網300は、営業店100に設置される営業店端末110と、センタ200に設置される印鑑サーバ210を接続する専用線である。
【0026】
営業店100は、銀行などの金融機関における店舗に該当する。ただし、営業店100は金融機関における店舗に限られない。営業店100には、営業店端末110およびスキャナ130が設置される。
【0027】
営業店端末110は、例えば金融機関の行員が顧客対応や入出金処理等の業務を行う際に使用する端末である。スキャナ130は、営業店端末110に接続され、取引に用いる帳票等の読み取りを行う。
【0028】
センタ200には、印鑑サーバ210が設置される。印鑑サーバ200は、顧客の登録印、すなわち印鑑イメージを保持する。
【0029】
営業店端末110は、イメージ読取部112、帳票識別部114、帳票情報データベース(DB)116、印影探索部118、印影切出部120、印影候補管理部122、印影候補位置判断部124、印鑑データ取得部126および印鑑照合部128を備える。
【0030】
イメージ読取部112は、本発明の取得部の一例であり、スキャナ130により読み取られた帳票イメージを取得する。帳票識別部114は、イメージ読取部112が取得した帳票イメージから「店番」等の光学文字認識(OCR:Optical Character Recognition)を行うとともに、帳票の種類を特定する。帳票情報DB116は、帳票の種類ごとに設定された押印領域の情報を管理する。
【0031】
印影探索部118は、本発明の探索部の一例であり、イメージ読取部112が取得した帳票イメージから印影を探索する。印影切出部120は、印影探索部118により探索された印影をイメージとして切り出す。印影候補管理部122は、本発明の選択部の一例であり、印影切出部120により切り出された印影のイメージを管理する。
【0032】
印影候補位置判断部124は、本発明の設定部の一例であり、帳票において印影と押印領域の距離を測定する。印鑑データ取得部126は、印鑑サーバ210から印鑑イメージを取得する。印鑑照合部128は、本発明の照合部の一例であり、印影切出部120により切り出された印影のイメージと、印鑑データ取得部126が取得した印鑑イメージとを照合する。印鑑照合処理は、自動で行うようにしても良いし、両方のイメージを表示してオペレータに確認させて確認結果の入力を受けるようにしても良い。また、オペレータに確認させる際に自動照合の結果を表示するようにしても良い。
【0033】
次に、図1における営業店端末110のハードウェア構成について説明する。図2は、図1における営業店端末110のハードウェア構成を概略的に示すブロック図である。
【0034】
営業店端末110は、CPU(Central Processing Unit)12と、ROM(Read Only Memory)14と、RAM(Random Access Memory)16と、内部バス18とを備える。また、営業店端末110は、ブリッジ20と、外部バス22と、インタフェース24と、入力装置26と、出力装置28と、ストレージ装置(HDD)30と、ドライブ32と、通信装置34とを備える。
【0035】
CPU12は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って営業店端末110内の動作全般を制御する。また、CPU12は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM14は、CPU12が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM16は、CPU12の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバスなどから構成される内部バス18により相互に接続されている。
【0036】
内部バス18は、ブリッジ20を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バスなどの外部バス22に接続されている。なお、必ずしも内部バス18、ブリッジ20および外部バス22を分離構成する必要はなく、一のバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0037】
入力装置26は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、マイク、スイッチおよびレバーなどユーザが情報を入力するための入力手段と、ユーザによる入力に基づいて入力信号を生成し、CPU12に出力する入力制御回路などから構成されている。営業店端末110のユーザは、該入力装置26を操作することにより、営業店端末110に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。
【0038】
出力装置28は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置およびランプなどの表示装置を含む。さらに、出力装置28は、スピーカおよびヘッドホンなどの音声出力装置を含む。出力装置28は、例えば、再生されたコンテンツを出力する。具体的には、表示装置は再生された映像データ等の各種情報をテキストまたはイメージで表示する。一方、音声出力装置は、再生された音声データ等を音声に変換して出力する。また、出力装置28は、印刷データを紙などの印刷媒体に印刷して帳票を発行することも可能である。
【0039】
ストレージ装置30は、データ格納用の装置である。ストレージ装置30は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読み出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置などを含んでもよい。ストレージ装置30は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。このストレージ装置30は、ハードディスクを駆動し、CPU12が実行するプログラムや各種データを格納する。
【0040】
ドライブ32は、記憶媒体用リーダライタであり、営業店端末110に内蔵、あるいは外付けされる。ドライブ32は、装着されている磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体36に記録されている情報を読み出して、RAM16に出力する。
【0041】
通信装置34は、例えば、通信網300やスキャナ130に接続するための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。また、通信装置34は、無線LAN(Local Area Network)対応通信装置であっても、有線による通信を行うワイヤー通信装置であってもよい。
【0042】
なお、図1に示したイメージ読取部112および印鑑データ取得部126は、例えばCPU12および通信装置34に対応する。帳票識別部114、印影探索部118、印影切出部120、印影候補位置判断部124および印鑑照合部128は、例えばCPU12に対応する。帳票情報DB116は、例えばCPU12およびストレージ装置30に対応する。印影候補管理部122は、例えばCPU12およびRAM16に対応する。
【0043】
次に、図1における印鑑照合システム10が実行する第1の印鑑照合処理について説明する。図3は、図1における印鑑照合システム10が実行する第1の印鑑照合処理のフローチャートである。なお、営業店端末110が実行する印鑑照合に関連しない処理、例えば入出金処理については、本発明とは関係がないため説明を省略する。
【0044】
図3において、まず、営業店端末110において、例えば「イメージスキャン」キー(図示しない)が押下されると、スキャナ130は、スキャナ130上の所定の位置に載置された帳票から帳票イメージを取得する。そして、営業店端末110のイメージ読取部112は、スキャン130が取得した帳票イメージを取得する(ステップS102)。
【0045】
なおこのとき、帳票イメージは、帳票の辺を基準に帳票部分が切り出された状態であるものとする。これは、スキャナイメージの背景輝度と帳票部分の輝度との差によってイメージ中の帳票辺を検出することにより可能である。このとき、帳票辺の傾きを画像回転により補正すると正立した帳票イメージを得ることができる。あるいは、取得したスキャナイメージの中で、帳票辺の座標を特定し、いずれかの頂点を基準点とすることにより、帳票部分を切り出さなくとも同等の処理を行うこともできる。
【0046】
次いで、営業店端末110の帳票識別部114は、イメージ読取部112が取得した帳票イメージから帳票の種類を特定するとともに、帳票に記載された「店番」、「科目」および「口座番号」などの光学文字認識(OCR)を行う(ステップS104)。
【0047】
次いで、営業店端末110の印鑑データ取得部126は、ステップS104において帳票識別部114により文字認識された「店番」、「科目」および「口座番号」などをキーとして、印鑑サーバ210から該当する印鑑イメージを検索する(ステップS106)。
【0048】
次いで、印鑑サーバ210は、ステップS106において印鑑データ取得部126により検索された印鑑イメージを営業店端末110に送信する(ステップS108)。
【0049】
次いで、営業店端末110の印鑑データ取得部126は、ステップS108において印鑑サーバ210から送信された印鑑イメージを取得する(ステップS110)。
【0050】
次いで、営業店端末110の帳票識別部114は、ステップS104において特定した帳票の種類、および文字認識した「科目」などをキーとして、帳票情報DB116から帳票の押印領域の情報、例えば押印領域座標(Xa,Ya)、(Xb,Yb)を取得する(ステップS112)。ここで、押印領域とは、帳票において印鑑が押印されているはずの場所、すなわち押印欄のことである。また、押印領域座標とは、図5に示すように、帳票イメージにおける1点、例えば左上隅を基点とした、押印領域の左上隅の座標(Xa,Ya)と右下隅の座標(Xb,Xb)のことである。
【0051】
次いで、営業店端末110の印影探索部118は、印鑑照合部128による印鑑照合に用いる印影の候補(以下、「印影候補」という。)をイメージ読取部112が取得した帳票イメージ全体から探索するとともに、探索された印影候補領域の座標(Xlm,Ylm)、(Xmn,Ymn)を取得する(ステップS114)。ここで、印影候補領域とは、円形の印影候補を矩形で囲んだ領域のことである。また、印影候補領域座標とは、図6に示すように、帳票イメージにおける1点、例えば左上隅を基点とした、印影候補領域の左上隅の座標(Xln,Yln)と右下隅の座標(Xmn,Ymn)のことである。なお、ステップS114では、印影候補領域座標は、全ての印影候補に対して取得する。印影候補領域の座標内におけるnは探索された印影候補を特定するための標記とする。例えば、最初に探索された印影候補の座標は、(Xl1,Yl1)、(Xm1,Ym1)とし、次に探索された印影候補の座標は、(Xl2,Yl2)、(Xm2,Ym2)とする。ここで、印影を囲む矩形は印影に外接するようにして座標を決定してもよいし、欠け等を考慮して印影から所定量外側を囲むようにしてもよい。
【0052】
次いで、営業店端末110の印影切出部120は、印影探索部118により取得された印影候補領域座標を元に帳票イメージから全ての印影候補のイメージを切り出して、印影候補管理部122は、印影切出部120により切り出された全ての印影候補のイメージを保管する(ステップS116)。
【0053】
次いで、営業店端末110の印影候補管理部122は、未処理の印影候補の有無を判別する(ステップS118)。
【0054】
ステップS118の判別の結果、未処理の印影候補が有るときは(ステップS118で有り)、営業店端末110の印影候補位置判断部124は、印影候補領域が押印領域内にあるか否かを、印影候補領域座標および押印領域座標を利用して、以下の方式1にて判別する(ステップS120)。
[方式1]


図7は、上記方式1を満たした場合の帳票イメージにおける押印欄の拡大図である。
【0055】
ステップS120の判別の結果、印影候補領域が押印領域内にあるときは(ステップS120で押印領域内)、営業店端末110の印影候補位置判断部124は、当該印影候補に優先度「1」を設定する(ステップS122)。そして、次の印影候補に処理を移すために、ステップS118の処理に戻る。
【0056】
ステップS120の判別の結果、印影候補領域が押印領域内にないときは(ステップS120で押印領域外)、営業店端末110の印影候補位置判断部124は、当該印影候補の印影候補領域と押印領域の距離を、以下の方式2にて算出する(ステップS124)。そして、次の印影候補に処理を移すために、ステップS118の処理に戻る。
[方式2]
押印領域の中心座標

印影候補領域の中心座標

印影候補領域と押印領域の距離

図8は、上記方式2を満たした場合の帳票イメージの拡大図である。
【0057】
ステップS118の判別の結果、未処理の印影候補が無いとき、すなわち全ての印影候補に対して上記方式1または上記方式2が適用されたときは(ステップS118で無し)、営業店端末110の印影候補位置判断部124は、上記方式2が適用された印影候補に対して、ステップS124で算出された距離Lnの値が小さい順、すなわち昇順になるように、印影候補をソートする(ステップS126)。
【0058】
次いで、営業店端末110の印影候補位置判断部124は、ソートした印影候補群に対して、順番に優先度を「2」、「3」、「4」…と設定する(ステップS128)。図9は、図3の第1の印鑑照合処理におけるステップS128の処理まで完了した際の印影候補データの一例を示す説明図である。なお、本実施の形態では、優先度の数値が小さい印影候補ほど、印鑑照合における印影候補の選択において優先度の高い印影候補であるものとする。これにより、押印領域外と判断された印影については、優先度を「2」から開始される。
【0059】
次いで、営業店端末110の印影候補管理部122は、印鑑照合未済の印影候補があるか否かを、印影候補データ内を確認して判別する(ステップS130)。印影候補データにおいて、印鑑照合が済んでいない(印鑑照合未済)印影候補には照合済に「0」が設定されている。また、押印領域内と判断された印影候補については、距離に「−」が設定されている。
【0060】
ステップS130の判別の結果、印鑑照合未済の印影候補があるときは(ステップS130で有り)、営業店端末110の印影候補管理部122は、優先度の最も高い印影候補を選択する(ステップS132)。図9の印影候補データ内では、印影2の優先度が最も高く設定されている。
【0061】
次いで、営業店端末110の印鑑照合部128は、ステップS110にて取得された印鑑イメージと、ステップS132にて選択された印影候補のイメージとを用いて、印鑑照合を実施する(ステップS134)。そして、印鑑照合部128は、印鑑照合に使用した印影候補の照合済フラグを「1」に設定する。図10は、印影2に対して印鑑照合を実施した後の印影候補データの一例を示す説明図である。
【0062】
次いで、営業店端末110の印鑑照合部128は、印鑑照合がOKであるかNGであるかを判別する(ステップS136)。
【0063】
ステップS136の判別の結果、印鑑照合がOKであるときは(ステップS136でOK)、本処理を終了する。
【0064】
ステップS136の判別の結果、印鑑照合がNGであるときは(ステップS136でNG)、ステップS130の処理に戻る。
【0065】
ステップS130の判別の結果、印鑑照合未済の印影候補がないときは(ステップS130で無し)、営業店端末110は、印影候補を取得することができなかったものと判断して、例えばオペレータに手動で印影候補領域の設定を行わせる(ステップS138)。このとき、オペレータは帳票イメージから印影位置を目視確認して、マウス操作などにより手動で印影候補領域を設定する。
【0066】
次いで、営業店端末110の印影切出部120は、帳票イメージからオペレータにより設定された印影候補領域を切り出して(ステップS140)、ステップS134の処理に進む。そして、ステップS134の処理では、ステップS110にて取得された印鑑イメージと、ステップS140にて切り出されたイメージとを用いて、印鑑照合を実施する。当該印鑑照合がNGである場合は、金融機関のルールに従って取引を中止するなどの処理を行う。
【0067】
図3の第1の印鑑照合処理によれば、押印欄の外に印鑑が押印された帳票に対して、オペレータの操作なしに印鑑照合を行うことができる。また、押印欄に近い印影から順に全ての印影に対して印鑑照合を行うことができるため、顧客がどの印鑑が正しいのか分からずに複数の印鑑を帳票に押したような場合においても、正しく印鑑照合を行うことができる。通常、押印領域以外に印影が複数ある、すなわち帳票に複数の印鑑が押印されている場合、押印領域により近い印影が正規の印影である可能性が高いため、印鑑照合に用いる印影は押印領域により近いものが好ましい。
【0068】
以上により、図3の第1の印鑑照合処理によれば、帳票の押印領域以外の領域に印鑑が押印されている場合や、帳票に複数の印影がある場合などにおいて、効率的に印鑑照合を行うことができる。
【0069】
なお、図3の第1の印鑑照合処理では、印影候補領域が押印領域内にないときに、当該印影候補の印影候補領域と押印領域の距離を算出していたが、印影候補領域が押印領域内にあるか否かの判別を行わずに、全ての印影候補の印影候補領域と押印領域の距離を算出して、上述したように印影候補の優先度を設定してもよい。この場合、算出した距離がある値(たとえば、押印領域の中心座標から押印領域の矩形の頂点までの距離あるいは押印領域の矩形の辺までの距離等)よりも小さいときは、印影候補領域が押印領域内にあると判別するようにしてもよい。
【0070】
次に、図1における印鑑照合システム10が実行する第2の印鑑照合処理について説明する。図4は、図1における印鑑照合システム10が実行する第2の印鑑照合処理のフローチャートである。本第2の印鑑照合処理は、上述した第1の印鑑照合処理におけるステップS130の処理の後からステップS134の処理の前までの処理を変更したものである。変更した処理以外の処理は、上述した第1の印鑑照合処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0071】
図4において、ステップS130の判別の結果、印鑑照合未済の印影候補があるときは(ステップS130で有り)、営業店端末110の印影候補管理部122は、優先度が「1」の印影候補があるか否かを判別する(ステップS142)。
【0072】
ステップS142の判別の結果、優先度が「1」の印影候補があるときは(ステップS142で「1」)、営業店端末110の印影候補管理部122は、優先度が「1」の当該印影候補を選択して(ステップS144)、上述したステップS134の処理に進む。優先度としての「1」は、本発明の特定の優先度の一例である。
【0073】
ステップS142の判別の結果、優先度が「1」の印影候補がないときは(ステップS142で「他」)、上述したステップS138の処理に進んで、例えばオペレータに手動で印影候補領域の設定を行わせてもよく、また、金融機関のルールに従って取引を中止するなどの処理を行って、本処理を終了してもよい。
【0074】
図4の第2の印鑑照合処理によれば、優先度が「1」の印影候補のみを正規の印影と判断し、顧客が誤って押印してしまった押印欄以外の印影については印鑑照合を実施しないため、安全に金融取引を行うことができる。
【0075】
以上により、図4の第2の印鑑照合処理によれば、帳票の押印領域以外の領域に印鑑が押印されている場合や、帳票に複数の印影がある場合などにおいて、効率的かつ安全に印鑑照合を行うことができる。
【0076】
また、本発明の目的は、前述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記憶した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても達成される。
【0077】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0078】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW等の光ディスク、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0079】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0080】
さらに、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その拡張機能を拡張ボードや拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0082】
10 印鑑照合システム
100 営業店
110 営業店端末
112 イメージ読取部
114 帳票識別部
116 帳票情報データベース(DB)
118 印影探索部
120 印影切出部
122 印影候補管理部
124 印影候補位置判断部
126 印鑑データ取得部
128 印鑑照合部
130 スキャナ
200 センタ
210 印鑑サーバ
300 通信網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帳票の帳票イメージを取得する取得部と、
前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、
前記探索部により探索された印影の候補に対して、印鑑照合のための優先度を設定する設定部と、
前記設定部により設定された優先度に基づいて、印鑑照合において用いる印影の候補を選択する選択部と、
前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部と、
を備えることを特徴とする、印鑑照合装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、当該判別結果に基づいて、前記優先度の設定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の印鑑照合装置。
【請求項3】
前記設定部は、前記判別結果に基づいて、前記帳票の押印欄の領域内にない印影の候補に対しては、当該印影の候補の領域と前記帳票の押印欄の領域との距離を算出し、当該算出結果に基づいて、前記優先度の設定を行うことを特徴とする、請求項2に記載の印鑑照合装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記算出結果に基づいて、前記算出された距離の値が小さい印影の候補ほど、前記優先度を高く設定することを特徴とする、請求項3に記載の印鑑照合装置。
【請求項5】
前記設定部は、前記探索部により探索された印影の候補の領域と前記帳票の押印欄の領域との距離を算出し、当該算出結果に基づいて、前記優先度の設定を行うことを特徴とする、請求項1に記載の印鑑照合装置。
【請求項6】
前記設定部は、前記算出結果に基づいて、前記算出された距離の値が小さい印影の候補ほど、前記優先度を高く設定することを特徴とする、請求項5に記載の印鑑照合装置。
【請求項7】
前記設定部は、前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、当該判別結果に基づいて、前記帳票の押印欄の領域内にある印影の候補に対しては、特定の優先度を設定し、
前記選択部は、前記特定の優先度が設定された印影の候補のみ印鑑照合において用いる印影の候補として選択することを特徴とする、請求項1に記載の印鑑照合装置。
【請求項8】
帳票の帳票イメージを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索ステップと、
前記探索ステップで探索された印影の候補に対して、印鑑照合のための優先度を設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定された優先度に基づいて、印鑑照合において用いる印影の候補を選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合ステップと、
を有することを特徴とする、印鑑照合方法。
【請求項9】
コンピュータを、
帳票の帳票イメージを取得する取得部と、
前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、
前記探索部により探索された印影の候補に対して、印鑑照合のための優先度を設定する設定部と、
前記設定部により設定された優先度に基づいて、印鑑照合において用いる印影の候補を選択する選択部と、
前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部と、
として機能させるための、プログラム。
【請求項10】
帳票の帳票イメージを取得する取得部と、
前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、
前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、
前記押印欄の領域内にあると判別された印影を印鑑照合に用いる印影として選択する選択部と、
前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部と、
を備えることを特徴とする、印鑑照合装置。
【請求項11】
帳票の帳票イメージを取得する取得ステップと、
前記取得ステップで取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索ステップと、
前記探索ステップで探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別する判別ステップと、
前記判別ステップで前記押印欄の領域内にあると判別された印影を印鑑照合に用いる印影として選択する選択ステップと、
前記選択ステップで選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合ステップと、
を有することを特徴とする、印鑑照合方法。
【請求項12】
コンピュータを、
帳票の帳票イメージを取得する取得部と、
前記取得部が取得した帳票イメージ全体から印影の候補を探索する探索部と、
前記探索部により探索された印影の候補の領域が前記帳票の押印欄の領域内にあるか否かを判別し、
前記押印欄の領域内にあると判別された印影を印鑑照合において用いる印影として選択する選択部と、
前記選択部により選択された印影の候補を用いて印鑑照合を行う照合部と、
として機能させるための、プログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−197787(P2011−197787A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61177(P2010−61177)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】