説明

即湯システム

【課題】シンプルな構造で安価に製造でき、且つ保温用の電気代等がかからない即湯システムを提供する。
【解決手段】給湯器と出湯栓とを接続する給湯配管の途上に配設され、断熱性を有する貯湯タンクを備え、前記給湯器側から送られる水の水温が、所定の温度より低い場合には、主な前記給湯配管内の水を前記貯湯部内に供給するとともに、前記貯湯タンク内から押し出された残留水を前記出湯栓に供給し、前記給湯器側から送られる水の水温が、所定の温度より高い場合には、前記給湯配管内の湯の一部を前記貯湯タンク内に供給するとともに、前記貯湯部内から押し出された残留水と、前記給湯配管内の前記貯湯部を介さずに直送された湯とを混合して前記出湯栓に供給するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即湯システムに係り、特に、給湯器と端末の給湯栓とを接続する給湯配管の途中に湯を溜めておく貯湯タンクを配設させた即湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯個所で給湯栓が開かれると即時に温水を供給することができる即湯システムとして、給湯器に、上水を供給する給水管と給湯個所に通じる出湯管とが接続され、この給水管と出湯管とは、循環ポンプを設けた戻り管で接続されて循環路が形成され、水栓が閉じられて給湯が使用されない時、給湯器及び循環ポンプを作動してこの循環路で所定温度の温水を循環させる循環保温運転を行い、水栓が開かれて給湯が使用された時、給湯個所に即時に温水が供給されるようにする循環方式のものがある。
【0003】
また、主給湯器と出湯栓との間に保温加熱体を有する即湯ポットを配設し、該即湯ポットの下部に主給湯器からの給湯配管を直結して出湯初期における給湯配管からの冷水のすべてを即湯ポット内に導き、該冷水と即湯ポット内の湯とを即湯ポット内で混合し即湯ポット上部の出湯口から取り出し出湯栓より流出させる構造の貯湯方式のものもある。
【0004】
後者のタイプにあっては、出湯初期において下部から流入する冷水で即湯ポット内に貯留する高温湯が押し上げられ、上部の出湯口からは高温湯だけが取り出されそのまま出湯口から流出するという問題があり、これを解消すべく、主給湯器から即湯ポットへの給湯配管から分岐せるバイパス路を即湯ポットの出湯口に臨ませ、出湯初期における給湯配管からの冷水をバイパス側と即湯ポット側とに分岐し即湯ポットの湯とバイパス路からの冷水を出湯口で混合して出湯せしめる即湯システムも提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平1−266463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、循環方式のものでは、循環ポンプ等の追加部品がコストアップの要因となる。また、貯湯方式のものでは、電気ヒータ等の部品代がかかる外、水を加熱する際に生じる膨張水と圧力を逃がして即湯ポットが水圧によって破損するのを防止するために減圧弁等の安全装置も必要となって、高価なものになってしまうという問題がある。
【0006】
さらに、これら初期費用に加えて、循環ポンプや電気ヒータを作動させ続けることは電気代等の維持費を必要とするばかりか、地球温暖化対策等の環境保全の観点からも好ましくない。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、シンプルな構造で安価に製造でき、且つ保温用の電気代等がかからない即湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る即湯システムは、上述した課題を解決するために、
給湯器と出湯栓とを接続する給湯配管の途中に配設される即湯システムであって、
断熱性を有する貯湯タンクと、
前記給湯配管の途中において前記給湯配管が分岐配管され、前記貯湯タンク内の下部側に位置する給湯口まで配設されるバイパス本管と、
前記バイパス本管と前記給湯配管との分岐部において前記給湯器から供給される湯温を感知し、該湯温が所定の温度以下の場合は湯を前記バイパス本管へと送出し、前記湯温が所定の温度以上の場合は湯の送出先を前記給湯配管へと切替える流路切替手段と、
前記給湯配管の前記バイパス本管より下流側において前記給湯配管が分岐配管され、前記貯湯タンク内の上部側に位置する給湯口まで配設される給湯支管と、
前記給湯配管の前記給湯支管より下流側において分岐配管され前記バイパス本管に接続される、または前記貯等タンク内の下部側に給湯口が位置するように配設されるバイパス支管と、
を備えることを特徴とする即湯システムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る即湯システムによれば、シンプルな構造で安価に製造でき、且つ保温用の電気代等がかからない即湯システムが得られる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係る即湯システムについて、添付図面を参照して説明する。
【0011】
浴室3が設けられた建物内に引き込まれた建築給水配管5は、同図に示すように、浴室3の外部において分岐し、一方は給湯器4に、他方は浴室3内のサーモスタット付水栓9の給水接続口9aに接続される。また、給湯器4からは、給湯配管7が延設され、その終端はサーモスタット付水栓9の給湯接続口9bに接続される。
【0012】
給湯配管7の途中には、即湯システム2を構成する貯湯タンク8が設けられる。
【0013】
この貯湯タンク8は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチロール等のプラスティック系の材料を発泡成形させた断熱材を、溶着等により例えば円筒状或いは中空角柱状のステンレス製のタンク等に施し、貯湯タンク8内に溜められた湯は容易には冷めないようになっている。
【0014】
サーモスタット付水栓9は、内部に設けられたサーモスタットを介して、給水接続口9aから流入する水と給湯接続口9bから流入する湯とを良好に混合して、適温の温水とすることができるものである。このサーモスタット付水栓9からは、シャワー96(図1参照。)を分岐させることもできる。なお、サーモスタット付水栓9は、本発明の出湯栓を構成する。
【0015】
給湯装置1を長時間使用しないでいると、給湯配管7内に残った残存水の水温は低下するが、貯湯タンク8内に貯留された湯の温度は、貯湯タンク8が断熱材から形成されていることから大きく低下することはない。
【0016】
図1に、上述した即湯システム2の浴室内における配置を示す。浴室3内に、洗い場91の一端には浴槽92が設置され、その洗い場91側の側面はバスエプロン93により閉塞される。洗い場91側には、洗い場カウンタ94を介して洗い場水栓95が取設される。この洗い場水栓95からは、シャワー96が分岐する。
【0017】
このように形成された浴室3内において、即湯システム2は、湯が給湯配管7を通過中に熱を失い湯温が低下することを抑えるために、貯湯タンク8の出湯口8bとサーモスタット付水栓9の給湯接続口9bとを接続する給湯配管7の長さをできるだけ短くするように、サーモスタット付水栓9に近接して洗い場カウンタ94内に収納することが望ましい。洗い場カウンタ94を有さない浴室では、バスエプロン93の裏面等に設置される。
【0018】
次に、本発明に係る即湯システムの第1の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図2は、本実施形態に係る即湯システム2Aを備える給湯装置1の全体的な概要を模式的に示す構成図である。
【0019】
本実施の形態に係る即湯システム2Aは、同図に示すように、貯湯タンク8に加え、給湯支管10、バイパス本管11、サーモスタット付切替弁12及びバイパス支管13を備え、給湯配管7に直接接続されるのではなく、これらバイパス本管10やバイパス支管12等を介して接続される。
【0020】
給湯支管10は、給湯配管7から分岐配管され、終端は貯湯タンク8の上部に設けられた上部給湯口8cに接続される。給湯支管10への流量と下流側の給湯配管7への流量との比率は、それぞれの管径の比によって、或いは流量調整弁を設けることによって調整される。
【0021】
バイパス本管11は、給湯配管7から給湯支管10が分岐する分岐点より上流側において給湯配管7から分岐配管され、終端は貯湯タンク8の下部に設けられた下部給湯口8dに接続される。
【0022】
このバイパス本管11が給湯配管7から分岐する分岐点には、サーモスタット付切替弁12が取り付けられる。サーモスタット付切替弁12は、内部にサーモスタットを有し、給湯器4側から送られる湯の温度が所定の温度(例えば50℃程度)より低ければこの湯をバイパス本管11側へ送出し、所定温度より高くなればこれを給湯配管7側へ送出するように流路を切り替える機能を備える。
【0023】
本実施形態におけるサーモスタット付切替弁12は、本発明における流路切替手段を構成する。なお、流路切替手段としては、例えば、温度センサが感知した水温に従って流路を自動的に切り替える三方電磁弁等であってもよい。
【0024】
バイパス本管11の下流近傍からは、バイパス支管13が分岐配管され、終端は給湯配管7から給湯支管10が分岐する分岐点より下流側において給湯配管7に接続される。バイパス支管13の流量は、バイパス本管11のそれよりも小さくなるよう設定され、それは、通常それぞれの管径の比によって調整されるが、流量調整弁を設けることによって調整してもよい。
【0025】
本実施の形態に係る即湯システム2Aは上記のように構成されており、以下その動作について説明する。なお、以下の各図において、各管及び貯湯タンク8内の塗りつぶしは湯を、ハッチングは水をそれぞれ示すものとする。
【0026】
本給湯装置1を初めて使用する場合や、長期に亘って使用しなかった後に使用する場合は、図3に示すように、各管内及び貯湯タンク8内の残存水は冷め切っている。その状態で給湯器4を点火すると、出湯初期においてはサーモスタット付切替弁12を水が通過するので、この水はサーモスタットの働きによりバイパス本管11側へと導通され、その後、主に貯湯タンク8から給湯支管10を経由して、また一部はバイパス支管13を経由して給湯配管7へと戻され、給水配管6からの水と混合されてサーモスタット付水栓9から吐出される。この水は、従来通り暫くの間冷たいままである。
【0027】
給湯器4の使用を継続すると、図4に示すように、給湯器4で加熱された湯がサーモスタット付切替弁12に到達し、この湯の送出先は、給湯配管7側へと切り替わる。
【0028】
そして、給湯配管7を通過する湯の一部は、給湯支管10へと分流し、貯湯タンク8内に溜められる。この湯は、貯湯タンク8内の残存水より比重が小さいので上澄みとして貯留され、貯湯タンク8底部にある残存水は、下部給湯口8dからバイパス本管11、バイパス支管13を経て、給湯配管7へと送られる。
【0029】
給湯配管7に送られた残存水及びサーモスタット付切替弁12から直送された湯は、サーモスタット付水栓9に至り、給水配管6からの水と混合されて、適温の湯となって吐出される。この時点において、給湯装置1の本来の機能が発揮され始める。
【0030】
なおも給湯器4の使用を継続すると、図5に示すように、貯湯タンク8内における給湯器4からの湯の量は増加し、遂には貯湯タンク8は給湯器4からの湯で満タンとなって、下部給湯口8dからバイパス本管11、バイパス支管13を経て、給湯配管7へと送られる。この時点でサーモスタット付水栓9の給湯接続口9bに送出される湯は、全て給湯器4からの湯で占められ、給湯装置1の本来の機能が完全に発揮される。
【0031】
このように貯湯タンク8内は高温の湯で満タンになっているので、ここで給湯器4の使用を終了しても、貯湯タンクの断熱効果により、貯湯タンク8内の湯温は高いまま、次に使用する人のための準備ができた状態に保たれる。
【0032】
次の人が使用するときには、図6に示すように、給湯配管7内の水温は下がっているので、給湯器4からの湯に押された給湯配管7内の水は、サーモスタット付切替弁12によってバイパス本管側へと送出される。すると、比重の大きいこの水は、貯湯タンク8の下部給湯口8dから貯湯タンク8内の湯を押し上げ、湯は、上部給湯口8cから給湯支管10、給湯配管7を経由して、サーモスタット付水栓9に至り、給水配管6からの水と混合されて、適温の湯となって吐出される。
【0033】
このまま使用を継続すると、図7に示すように、やがて給湯器4からの湯がサーモスタット付切替弁12に至り、流路がバイパス本管11から給湯配管7側へと切り替えられ、給湯配管7を通過する湯の一部は、給湯支管10へと分流し、上部給湯口8cから貯湯タンク8内に溜められる。この湯は、バイパス本管11から貯湯タンク8内に送られた冷水より比重が小さいので上澄みとして貯留され、貯湯タンク8底部にある冷水は、下部給湯口8dからバイパス本管11、バイパス支管13を経て、給湯配管7へと送られる。
【0034】
給湯配管7に送られた残存水及びサーモスタット付切替弁12から直送された湯は、サーモスタット付水栓9に至り、給水配管6からの水と混合されて、適温の湯となって吐出される。これは、図4に示した最初に使用する場合と同様である。
【0035】
なおも給湯器4の使用を継続すると、図7に示すように、貯湯タンク8内における給湯器4からの湯の量は増加し、遂には貯湯タンク8は給湯器4からの湯で満タンとなって、下部給湯口8dからバイパス本管11、バイパス支管13を経て、給湯配管7へと送られる。この時点でサーモスタット付水栓9の給湯接続口9bに送出される湯は、全て給湯器4からの湯で占められる。これは、図6に示した最初に使用する場合と同様である。
【0036】
このように、本実施形態に係る即湯システム2Aによれば、電気ヒータ等を必要とせず、安価な断熱材で製造されながら、2回目以降に使用する場合は、最初から適温の湯を得ることが可能となる。
【0037】
続いて、本実施形態に係る即湯システムの変形例について、図9を参照して説明する。
【0038】
本変形例に係る即湯システム2Bは、同図に示すように、給湯配管7と給湯支管10との分岐部と、バイパス支管13と給湯配管7との接続部との間に水圧調整手段としての流量調整弁14を備える点で、第1の実施形態におけるものと基本的に相違し、他の構成は第1の実施形態と実質的に同じであり、同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
第1の実施形態に係る即湯システム2Aは、給湯配管7に接続される給湯支管10、バイパス本管11及びバイパス支管13を備え、多数の配管分岐部を有するため管内の湯が上述したように上手く流れず、また、貯湯タンク7内の湯水がスムーズに入れ替わらない虞がある。そこで、流量調整弁14を設けることにより、斯かる不具合発生の可能性を低減させようとするものである。したがって、この目的を達成できるものであれば、水圧調整手段として圧力調整弁を用いてもよい。
【0040】
図10に示すのは、第1の実施形態に係る即湯システムの他の変形例である。この変形例に係る即湯システム2Cは、基本的構成は上述した変形例と同じであるが、バイパス本管11を貯湯タンク8内に収納した構成となっている。
【0041】
また、貯湯タンク8内の下部給湯口8d近傍には、流入する水の勢いにより流入水と貯湯タンク8内の湯とが混合することを防止するために攪拌防止傘15が設けられる。
【0042】
これらにより、即湯システムをコンパクトに形成することができ、さらに使い勝手が向上する。
【0043】
以上に説明した実施態様は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なものによって置換した実施態様を採用することが可能であるが、これらの実施態様も本発明の範囲に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1に示された即湯システムの浴室内の配置を示す図。
【図2】本発明に係る即湯システムの第1の実施形態の概要を示す構成図。
【図3】本実施形態に係る即湯ユニットを長期間不使用後初めて使う場合の出湯初期における流路を示す図。
【図4】図3に示した状態から更に使用を継続して流路が変更された状態を示す図。
【図5】図4に示した状態から更に使用を継続して貯湯タンクが温水で満タンになった状態を示す図。
【図6】本実施形態に係る即湯ユニットを次の人が使う場合の出湯初期における流路を示す図。
【図7】図6に示した状態から更に使用を継続して流路が変更された状態を示す図。
【図8】図7に示した状態から更に使用を継続して貯湯タンクが温水で満タンになった状態を示す図。
【図9】第1の実施形態に係る即湯ユニットの変形例を示す図。
【図10】第1の実施形態に係る即湯ユニットの他の変形例を示す図。
【符号の説明】
【0045】
1 給湯装置
2A,2B 即湯システム
3 浴室
4 給湯器
5 建築給水配管
6 給水配管
7 給湯配管
8 貯湯タンク
8a 入湯口
8b 出湯口
8c 上部給湯口
8d 下部給湯口
9 サーモスタット付水栓
9a 給水接続口
9b 給湯接続口
10 給湯支管
11 バイパス本管
12 サーモスタット付切替弁
13 バイパス支管
14 流量調整弁
15 攪拌防止傘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯器と出湯栓とを接続する給湯配管の途中に配設される即湯システムであって、
断熱性を有する貯湯タンクと、
前記給湯配管の途中において前記給湯配管が分岐配管され、前記貯湯タンク内の下部側に位置する給湯口まで配設されるバイパス本管と、
前記バイパス本管と前記給湯配管との分岐部において前記給湯器から供給される湯温を感知し、該湯温が所定の温度以下の場合は湯を前記バイパス本管へと送出し、前記湯温が所定の温度以上の場合は湯の送出先を前記給湯配管へと切替える流路切替手段と、
前記給湯配管の前記バイパス本管より下流側において前記給湯配管が分岐配管され、前記貯湯タンク内の上部側に位置する給湯口まで配設される給湯支管と、
前記給湯配管の前記給湯支管より下流側において分岐配管され前記バイパス本管に接続される、または前記貯等タンク内の下部側に給湯口が位置するように配設されるバイパス支管と、
を備えることを特徴とする即湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−52885(P2009−52885A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316966(P2008−316966)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【分割の表示】特願2005−337360(P2005−337360)の分割
【原出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】