説明

卵胞のインビトロ成熟方法

本発明は、卵胞及び卵母細胞の成熟に使用する方法に関する。より具体的には、本発明は、卵胞及び卵母細胞のインビボ及びインビトロ成熟方法における、ホスファターゼであるPTENのインヒビター、例えば、オキソバナデート及びペルオキソバナデート錯体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟に使用する方法に関する。より具体的には、本発明は、卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟方法における、ホスファターゼであるPTENのインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
成熟を達成するための卵胞の活性化の誘導は、研究目的のみならず多数の応用分野において強く望まれている。原始卵胞は、インビトロ受精のための卵母細胞の供給源として潜在的に役に立ち得るものであるが、活性化及び成熟された卵胞を他の用途、例えば、化学療法後又は放射線照射後の癌の治療に利用することも非常に重要である。しかしながら、現在は、原始卵胞を活性化する手段がなく、これは、潜在的に重要な卵母細胞の供給源が利用されないままであることを示す。インビトロ受精に関する議論を踏まえて、そのような考察がますます重要になっている。
【0003】
病院では、女性の原始卵胞が成長し始めることができなければ、すなわち、休止状態から活性化され得なければ、その卵胞は、卵胞刺激ホルモン(FSH)などのホルモンに対して応答しないであろう。そうすると、その女性は不妊症であることとなり、彼女自身の卵母細胞をインビトロ受精に使用することができない。現在では、上述のように、インビトロ受精のための卵母細胞の供給源として原始卵胞を使用するための技術が存在しない。かくして、各種の用途のために卵胞のインビボ及び/又はインビトロ活性化及び成熟のいずれかを誘導するための方法を開発することが当該技術分野において必要とされている。
【0004】
先行技術文献においては、イノシトールリン脂質のイノシトール環上の3’−OHをリン酸化する、脂質キナーゼのホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)が開示されている。脂質ホスファターゼであるPTEN(phosphatase and tensin homolog deleted on chromosome ten)は当該プロセスを逆行させ、かくして、PI3Kの作用の主要な負の調節因子として作用する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cantley, Science 2002, 296: 1655−1657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、原始卵胞の活性化を抑制する因子としてPTENを同定した。卵母細胞特異的にPten遺伝子が欠失したマウスモデルにおいて、全ての原始卵胞が時期尚早に活性化された。
【0007】
したがって、本発明は、PTENの1つ又は複数のインヒビターの使用を含む、卵胞及び卵母細胞のインビトロ活性化及び成熟のための方法を提供する。前記方法は、インビトロ受精のための卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟の間に卵胞を活性化するために用いることができる。前記卵胞は、未成長卵胞、例えば、原始卵胞、中間卵胞(intermediate follicle)、及び一次卵胞であってよい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、PTENの1つ又は複数のインヒビターを含む生理学的に許容される媒体中で卵胞及び/又は卵母細胞をインキュベートする工程を含んでよい。前記媒体は、FSH及び/又はCGなどのゴナドトロピンをさらに含んでよい。
【0009】
インキュベートの期間は、卵胞及び/又は卵母細胞の活性化及び/又は成熟が得られるのに十分な任意の時間であってよい。
【0010】
PTENインヒビターは、卵胞及び/又は卵母細胞の活性化及び/又は成熟が得られる任意の濃度、例えば、1nMから1.0mM、特に1.0から100μMの間の濃度で存在してよい。
【0011】
本発明の好ましい実施態様では、卵胞及び/又は卵母細胞の活性化及び/又は成熟は、以下の工程:(i)適切な対象から卵胞及び/又は卵母細胞の活性化及び/又は成熟のための適切な細胞及び/又は器官を得る工程、(ii)例えば実質的に37℃かつ約5%のCOにおいて、加湿インキュベーター中で前記細胞及び/又は器官を培養する工程、(iii)前記卵胞及び/又は卵母細胞の活性化及び/又は成熟を誘導するために、1nMから1.0mM、好ましくは1.0から100μMの間の濃度のPTENインヒビターとともに一時的又は持続的に前記細胞及び/又は器官をインキュベートする工程、及び(iv)本発明の範囲内で得られたものを利用する工程を含む。
【0012】
本発明に係る方法は、ヒトの卵胞、又は家畜若しくは絶滅危惧種などの動物に由来する卵胞に適用することができる。前記家畜は、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ネコ、及びイヌなどであってよい。
【0013】
本発明は、卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟、具体的には、原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞のインビトロ活性化の改善において使用するための医薬の調製における、1つ又は複数のPTENインヒビターの使用も提供する。
【0014】
卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟、具体的には、原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞のインビトロ活性化を促進するための1つ又は複数のPTENインヒビターを含む組成物も提供する。前記組成物は、製薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤も含むことができる。
【0015】
PTENインヒビターは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、WO 2005/097119及び対応する米国出願10/599,748、WO 2004/075897及び対応する米国出願US10/546,632に開示されている。
【0016】
PDZドメイン相互作用、特にMAGI(membrane associated guanylate kinase proteins with inverse orientation)と結合したPTENにおけるPDZドメインの間の相互作用のインヒビターは、本発明に係るPTEN活性のインヒビターとして使用することができる。その様なインヒビターは、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、WO 2004/092346、US7,141,600、WO 2006/07542に開示されている。
【0017】
ペルオキソバナジウム錯体が、PTENの強力なインヒビターであることが示されている(Schmid et al. FEBS Lett 2004, 566: 35-38; Rosivatz et al. ACS Chem Biol 2006, 1 : 780−790)。
【0018】
ペルオキソバナジウム錯体の合成は、Shaver et al.(Inorg Chem 1993, 32:3109−3113)、Rosivatz et al.(ACS Chem Biol 2006, 1: 780−790)、及びPosner et al.(J Biol Chem 1994,269:4596−604)に開示されているように実施することができる。
【0019】
本発明によって使用することができる化合物の例は、
bpV(bipy)、カリウムビスペルオキソ(ビピリジン)オキソバナデート(V)、K[VO(O10]・
bpV(phen)、カリウムビスペルオキソ(l,10−フェナントロリン)オキソバナデート(V)、K[VO(OI2
bpV(pic)、二カリウムビスペルオキソ(ピコリナト)オキソバナデート(V)、K[VO(ONO]・
bpV−HOpic、二カリウムビスペルオキソ(5−ヒドロキシピリジン−2−カルボキシル)オキソバナデート(V) K[VO(ONO]・
VO−pic、ジ−(ピコリネート)オキソバナデート(IV)、VOC1010NO
VO−OHpic、ジ−(3−ヒドロキシピコリネート)オキソバナデート(IV)、VOC1010NO
bpV−biguan、カリウムビスペルオキソ(フェニルビグアニド)オキソバナデート(V)、K[VO(O11
VO−biguan、ジ−(フェニルビグアニド)オキソバナデート(IV)、VOC162010
bpV−isoqu、二カリウムビスペルオキソ(イソキノリンカルボン酸)オキソバナデート(V)、K[VO(O10NO];
下式
【化1】

[式中、
Rはシクロアルキル基であり、
Aは低級アルキレン基であり、
カルボスチリル核の3位及び4位の間の結合は、単結合又は二重結合を意味する]
の化合物;
下式
【化2】

[式中、
R1は、H、C1−C3アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR3、(CHXCOR3、(CHCOR3、(CHSOR3、(CHXR3、(CHSOXR3、(CHXSOR3、(CHNR3R4、又は(CHCO(CHXR3であり;
R2は、H、C1−C3アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR3、(CHXCOR3、(CHCOR3、(CHSOR3、(CHXR3、(CHSOXR3、(CHXSOR3、(CHNR3R4、又は(CHCO(CHXR3であり;
R3、R5、R6は、独立して、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R4は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、NHSOR5、NHCOR5、又はNR5R6;
m=0から3;n=0から3;及びXはO又はNR4である]
から選択されるアスコルビン酸誘導体又はデヒドロアスコルビン酸誘導体;
下式
【化3】

[式中、
R1は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、COXR2、COR2、SOXR2、又はSOR2であり;
R2は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR4、(CHXCOR4、(CHX R4、(CHSOXR4、(CHXSO2R4、NHSOR4、NHCOR4、NHCOR4、NHCOCOR4、又はNR4R5であり;
R3は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR4、(CHXCOR4、(CHXR4、(CH2SOXR4、(CHXSOR4、NHSOR4、NHCOR4、NHCOR4、NHCOCOR4、又はNR4R5であり;
R4は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり:
R5は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、NHSOR6、NHCOR6、NHCOR6、NR6R7、又はN=C(R6R7)であり;
R6は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R7は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
n=0から3;及びXはO又はNR5である]
の化合物;
下式
【化4】

[式中、
Aは5又は6員環であり;R1は、H、C1−C3アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR3、(CHXCOR3、(CHCOR3、(CHSOR3、(CHXR3、(CHSOXR3、(CHXSOR3、NHSOR3、NHCOR3、NHCOR3、NHCOCOR3、NR3R4、又は(CHCO(CHX3であり;
R2は、H、C1−C3アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR3、(CHXCOR3、(CHCOR3、(CHSOR3、(CHXR3、(CHSOXR3、(CHXSOR3、NHSOR3、NHCOR3、NHCOR3、NHCOCOR3、NR3R4、又は(CHCO(CHX3であり;
R3は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R4は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、NHSOR5、NHCOR5、又はNR5R6であり;
R5は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R6は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;n=0から3;m=0から3;及びXは、O又はNR4であり;Aは、飽和、不飽和、又は芳香族であってよく、任意にN及びOを含んでよい]
の化合物;
下式
【化5】

[式中、
R1は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR3、(CH2XCOR3、(CH2XR3、(CHCOR3、(CHSOXR3、又は(CH)mXSOR3であり;
R2は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R3は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R4は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、NHSOR5、NHCOR5、N=C(R5R6)、又はNR5R6であり;
R5は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R6は、H、C1−C4アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;m=1から3;n=0から3;及びXはO又はNR4である]
下式
【化6】

[式中、
Rlは、O、C1−C4 アルキル、(CHCOXR2、(CHXCOR2、(CHXR2、(CHCOR2、(CHSOXR2、(CHXSO2R2、又は(CHSOR2であり;
R2は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、NHSOR4、NHCOR4、NHCOR4、NHCOCOR4、又はNR4R5であり;
R3は、H、Cl−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、NHSOR4、NHCOR4、NHCOR4、NHCOCOR4、又はNR4R5であり;
R4は、H、Cl−C4 アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R5は、H、C1−C4 アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R6は、出現するごとに、水素、ハロゲン、NO、R4 Rl0、C1−C4 アルキル、NH(CHCO(CHXR2、(CHCOXR2、(CHXCOR2、(CHXR2、(CHCOR2、(CHPSOXR2、又は(CHXSOR2から独立に選択され;
R7は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、SO R4、NHSO R4、NHCO R4、又はNR8R9であり;
R8は、独立に、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR2、又は (CHXR2であり;
R9は、独立に、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR2、(CHXR2、(CHCOXR2、(CHXCOR2、(CHX R2、(CHCOR2、(CHSOX R2、(CHXSOR2、又は(CHSOR2であり;
R10は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、SOR4、NHSOR4、NHCOR4、又はNR8R9であり;
mは独立に0又は1であり;n=1〜5;p=0〜5;q=0〜5;XはO又はNR3であり;及びZはO又はNR7である]
の置換された1,10−フェナントロリン−5,6−ジオン;
下式
【化7】

[式中、
R1は、H、NO、NR5R6、ハロゲン、シアノ、アルキル、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシ、COR2、又はCONR5R6であり;
R2及びR3は、独立に、H、C1−C4 アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R4は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、SOR2、NHSOR2、NHCOR2、NHCOR2、N=CR2R3、又はNR5R6であり;
R5は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOX R2、(CHX R2、(CHCO(CHX R2、SOR2、(CHCO(CHCOXR2、又は(CHXOR2であり;
R6は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOX R2、(CHX R2、(CHCO(CHX R2、SOR2、(CHCO(CHCOXR2、又は(CHCOR2であり;
m=0〜3;n=0〜3;及びXはCR2R3、O、又はNR4である]
の置換されたフェナントレン−9,10−ジオン;
下式
【化8】

[式中、
R1は、H、NO、NR5R6、ハロゲン、シアノ、アルキル、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシ、COR2、CONR5R6、SOR2、又はSONR2 R3であり;
R2及びR3は、独立に、H、C1−C4 アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R4は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、SOR2、NHSOR2、NHCOR2、NHCOR2、N=CR2R3、又はNR5R6であり;
R5は、H、C1−C4アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR2、(CHXR2(CHCO(CHX R2、SOR2、(CHCO(CHCOXR2、又は(CHCOR2であり;
R6は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR2、(CHXR2、(CHCO(CHX R2、SOR2、(CHCO(CHCOXR2、又は(CHCOR2であり;
m=0〜3;n=0〜3;及びXはCR2R3、O、又はNR4である]
の化合物;
下式
【化9】

[式中、
R1は、H、NO、NR5R6、ハロゲン、シアノ、アルキル、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシ、COR2、又はCONR5R6であり;
R2及びR3は、独立に、H、C1−C4 アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R4は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、SOR2、NHSOR2、NHCOR2、NHCO2R2、N=CR2R3、又はNR5R6であり;
R5は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOX R2、(CHXR2、(CHCO(CHX R2、SOR2、(CHCO(CHCOXR2、又は(CHCOR2であり;
R6は、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOX R2、(CHXR2、(CHCO(CHX R2、SOR2、(CHCO(CHCOXR2、又は(CHCOR2であり;
m=0〜3;n=0〜3;及びXはCR2R3、O、又はNR4である]
の置換されたフェナントレン−9−オール;
下式
【化10】

[式中、
R1は、H、NO、NR3R4、ハロゲン、シアノ、アルキル、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシ、(CHCOXR3、COR2、SOR2、SONR3 R4、NHSOR3、NHCOR3、NHCOR3、NHCOCOR3、NR3R4、又はCONR3R4であり;
R2は、H、C1−C4 アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R3及びR4は、独立に、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR2、(CHOR2、又は(CHCO(CHXR2であり;
m=0〜3;n=0〜3;及びXはO又はNR2である]
の置換されたナフタレン−1,2−ジオン;
下式
【化11】

[式中、
R1は、H、NO、NR3R4、ハロゲン、シアノ、アルキル、アルキルアリール、カルボニル、カルボキシ、(CHCOXR3、COR2、SOR2、SONR3 R4、NHSOR3、NHCOR3、NHCOR3、NHCOCOR3、NR3R4、又はCONR3R4であり;
R2は、H、C1−C4 アルキル、アリール、又はアルキルアリールであり;
R3及びR4は、独立に、H、C1−C4 アルキル、アリール、アルキルアリール、(CHCOXR2、(CHOR2、又は(CHCO(CHmXR2であり;
m=0−3;n=0〜3;及びXはO又はNR2である]
の置換されたナフタレン−1,4−ジオン;並びに
下式
【化12A】

【化12B】

[式中、
nは、0、1、又は2であり;
X1は、NH、N(CH)、CH、CH(CH)、C(CH32、O、S、S(O)、又はSOであり:
R0は、C1−C3 アルキル、シクロプロピル、ハロ、OR5、及びS(O)R5(式中、mは0、1、又は2である)からなる群から選択され;
R1及びR2は、C2−C8 アルケニル、フェニルシクロプロピル、フェニルプロペニル、R6−X2−C(R8)(R8)−R7−、R6−X2−N(R8)−R7−、及びR10X3R7−からなる群から独立に選択され;
R3及びR4は、独立に、水素、メチル、又はエチルであり;
R5は、メチル又はエチルであり;
R6は、水素、C1−C10 アルキル、アリール、W、Y、NH、NHCONR3R4、NHCOOR3、及びNHSOR9からなる群から選択され;
R7は、直接結合、1から10の炭素原子を有するアルキル基、アリール、−(NH)(CHCHO)(NH)− (式中、pは0又は1であり、qは1から4の整数である)、及びWからなる群から選択され;
R8は、H、Y、OH、−NHCONR3R4、−NHCOOR3、−NHSOR9、−(CHCOR3、及び(CHCONR3R4(式中、rは1から3の整数である)からなる群から選択され;
R9は、アリール又はC1−C6 アルキルであり;
R10は、C1−C10 アルキル、アリール、及びWから選択され;
X2は、直接結合、−NH−、−N(CH)−、−NCONR3R4、−NCOOR3、及び−NSOR9からなる群から選択され;
X3は、O、S、SO、及びSOから選択され;
X4は、−CH−、C−ハロゲン、−C(CH3)、又は−C(C5)から選択され;
Wは、飽和炭素環式基又は飽和複素環式基であり;
Yは、COOH、COOR3、CONR3R4、CONHSOR5、ヒドロキシメチル、−CHCOOH、CHCONR3R4、及び5−テトラゾリルからなる群から選択され;
Zは、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、又は−CO−である]
の化合物
である。
【0020】
PTENをコードする核酸を標的とする、アンチセンスオリゴヌクレオチド及び二本鎖RNAが、本発明に係るPTENインヒビターとして使用することができる。その様な化合物は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、WO 01/07457及びWO 01/90341、WO 2004/27030及びWO 2004/63329、並びに対応する米国特許US6,020,199及びUS6,284,538に開示されている。PTENに特異的なインヒビターとして作用する抗体及び/又は抗体断片も本発明の範囲内である。
【0021】
本発明は、原始卵胞のインビトロ活性化に使用することが潜在的に可能である化合物を同定するための方法も提供する。前記方法は、PTEN活性のインヒビターとして作用する化合物の機能を測定する工程を含む。
【0022】
PTEN活性は、Schmid et al(FEBS Lett 2004,566:35−38)によって開示されているようにリン酸の放出として測定することができる。本質的には、組換えPTENの酵素活性は、50ng/μl BSA、150μM合成ジパルミトイル−PtdIns(3,4,5)P3(Cell Signals)、及び0.25%(w/v)オクチルグリコシド(Sigma)を含有する200mM Tris、pH7.4中において30℃で30分間に亘って測定される。酵素反応を停止するために、0.7倍量の呈色剤(3.6M HCl及び17mMモリブデン酸アンモニウム中の2.3mg/mlマラカイトグリーン)をアッセイ系に添加する。その混合物を20分間に亘って放置して、625nmの吸光を測定する。
【0023】
化合物が100μM未満のIC50、好ましくは10μM未満のIC50、又はより好ましくは1μM未満のIC50を有する場合は、前記化合物をPTENの阻害剤として同定する。
【0024】
PTENインヒビターの機能は、PTENの存在下におけるPI3Kキナーゼ活性の増大を測定することによって検証することができ、PI3Kキナーゼ活性は、セリン473におけるAktのリン酸化レベルを測定することによっても測定できる。
【0025】
本発明は、本発明の方法による原始卵胞の活性化を含む、卵母細胞のインビトロ成熟方法も提供する。
【0026】
本発明は、必要な胚を移植する工程を含む、インビトロ受精の方法であって、前記胚が、成熟した卵母細胞を精子で処理する工程を含む方法によって製造され、前記卵母細胞が、本発明の方法による原始卵胞の活性化を含む方法によって製造される、方法も提供する。
【0027】
本発明は、卵母細胞に由来する胚を雌性の哺乳動物に移植する工程を含む、雌性の哺乳動物における、インビトロ受精又は胚移植後の胚の発達を改善するための方法であって、前記卵母細胞が、本発明の方法による原始卵胞の活性化を含む方法によって製造される、方法も提供する。
【0028】
本発明は、1つ又は複数のPTENインヒビターを含む組成物の投与を含む、卵胞及び卵母細胞のインビボ活性化及び成熟のための方法も提供する。好ましくは、前記投与は、局所注射、より好ましくは卵胞内又は卵巣被膜内注射で為される。前記卵胞は、原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞であってよい。前記方法は、家畜又は絶滅危惧種などの動物又は人に適用することができる。前記家畜は、例えば、ウマ、ウシ、ブタ、ネコ、及びイヌであってよい。
【0029】
前記局所注射は、腹腔鏡検査又は超音波を用いて実施してよい。
【0030】
本発明は、卵胞及び卵母細胞のインビボ活性化及び成熟、具体的には、原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞のインビボ活性化に使用するための医薬組成物の調製における、1つ又は複数のPTENインヒビターの使用も提供する。前記組成物は、局所注射又は他のタイプの局所送達、好ましくは、卵胞内又は卵巣被膜内注射によって投与されることを意図することができる。前記組成物は、ヒト又は獣医学的用途を意図することができる。
【0031】
本発明は、卵胞及び卵母細胞のインビボ活性化及び成熟、具体的には、原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞のインビボ活性化に使用するための1つ又は複数のPTENインヒビターを含む組成物も提供する。前記組成物は、製薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤をさらに含むことができる。前記組成物は、局所注射、好ましくは卵胞内又は卵巣被膜内注射用に製剤化することができる。前記組成物は、ヒト又は獣医学的用途を意図することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、卵母細胞からPTENを欠失させたマウスにおける原始卵胞の過剰活性化を示す図である。35日齢のマウスに由来する卵巣をパラフィンに埋め込み、8μmの厚みの切片を作製して、ヘマトキシリンで染色した。A.対照マウス:対照の正常マウスでは、原始卵胞が存在する(挿入図の矢印)。B〜C.卵母細胞のPTENが欠失しているマウス。PTENが欠失している卵母細胞では、全ての卵胞が早熟に成長し(C,矢印)、卵巣全体が非常に大きい(B)。
【図2】図2は、PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞におけるAktシグナル伝達の促進を示す図である。卵母細胞をPD5及びPD12−14においてPtenloxP/loxP;GCre+マウス及びPtenloxP/loxPマウスの卵巣から単離して、ウエスタンブロットを実施した。(A)PD12−14 PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞及びPtenloxP/loxP卵母細胞におけるp−Akt(セリン473)及び全Aktのレベル。(B)PD12−14 PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞及びPtenloxP/loxP卵母細胞におけるキットリガンド(KL)処理(100ng/ml、2分)によるAkt(p−Akt、セリン473)の活性化。Aktのレベルは内部対照を使用した。(C)p−Akt(セリン473)、rpS6、p−rpS6(セリン235/6)、p−mTOR(セリン2448)、p−TSC2(スレオニン1462)、及びp−S6K(スレオニン289)を示す、PD5及びPD12−14におけるPtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞及びPtenloxP/loxP卵母細胞におけるシグナル伝達試験。全Aktのレベル、mTOR、TSC2、S6K、及びβ−アクチンを内部対照として使用した。全ての実験を少なくとも3回繰り返した。ウエスタンブロットのためにPD5卵母細胞を単離するために、10−15PtenloxP/loxP;GCre+マウス又はPtenloxP/loxPマウスを各レーンで使用した。PD12−14卵母細胞の単離のために、3−5PtenloxP/loxP;GCre+マウス又は6−10 PtenloxP/loxPマウスをレーン毎に使用した。各レーンに、30から40μgのタンパク質サンプルをロードした。
【図3】図3は、PTENインヒビターが、培養したマウス卵巣中の原始卵胞の生存及び発達を促進することを示す図である。原始卵胞を含有する出産後4日のマウス卵巣を、(A)担体又は(B)PTENインヒビターbpv(Hopic)とともに8日間に亘って培養した。PTENインヒビターは、培養卵巣中の卵胞の生存率を改善する(B中の矢印にたいしてA中の矢印、PTENインヒビターで処理した卵巣における壊死から救われていることを示す)。また、PTENインヒビターは、原始卵胞を成長段階に活性化するための重要なステップである、平坦な前顆粒膜細胞(矢頭、A)から球状の顆粒膜細胞(矢頭、B)への増殖及び分化を刺激する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
現在、動物又はヒトの原始卵胞がインビトロで培養される場合には、それらの成長を開始させ、成熟させることが非常に困難である。本発明によれば、PTENインヒビターの存在下において、ヒト又は家畜/絶滅危惧種由来の原始卵胞をインビトロで活性化すること、すなわち、原子卵胞の成長を開始させることが可能である。これらの活性化された卵胞は、次いで、成熟するまで培養され、インビトロ受精に使用できる。
【0034】
前記方法は、ヒト又は家畜/絶滅危惧種に由来する原始卵胞を含有する卵巣の切片を培養し、1つ又は複数のPTENインヒビターで一時的に処理して、その成長を開始させる。卵胞の成長が誘導されたら、PTENインヒビターを断ち、現在利用可能な技術を用いて、更なる卵胞培養を通常通りに維持する。
【0035】
この方法は、天然には活性化され得ない原始卵胞を有する女性、又は癌の化学療法又は放射線照射を経る女性に有用である。この方法は、卵胞の供給源及びインビトロ受精の成功率を増大させるために、家畜又は絶滅危惧種の原始卵胞をインビトロで活性化するためにも使用できる。
【0036】
培養した卵胞切片におけるPTEN活性の効果的な抑制は、同時に培養されるマウス卵巣の切片を使用して観察することができる。
【実施例】
【0037】
(実施例1)哺乳動物の卵胞活性化における卵母細胞PI3K経路の機能的役割
哺乳動物の卵胞活性化における卵母細胞PI3K経路の機能的役割を試験するために、卵母細胞において特異的に活性化するgrowth differentiation factor(Gdf−9)プロモーター媒介Creリコンビナーゼを発現するトランスジェニックマウス(Lan et al.,Biol.Reprod.2004,71:1469)GCreマウスと称される)と、PtenloxP/loxPマウス(Groszer et al.,Science 2001,294:2186)とを交配させることによってマウス卵母細胞からPten遺伝子を欠失させた。6から34週齢の試験期間の間に、PtenloxP/loxP;GCre+のメス、すなわち、卵母細胞からPTENを欠失させたマウスが、最大で一匹の子を産んだが、成人期の早期(すなわち、12から13週齢後)に不妊になった。卵母細胞からのPtenの欠失がマウスの妊娠をどのように妨げるのか試験するために、本発明者は、PtenloxP/loxP;GCre+マウス及び対照(PtenloxP/loxP)マウスにおける原始卵胞発達の第一波を比較した。PtenloxP/loxP;GCre+マウス及び対照マウスの妊娠後の日にち(PD)で5日目の卵巣には、明確な形態学的相違は認められなかった。双方の遺伝子型の卵巣は、平坦な前顆粒膜細胞に覆われた小さな卵母細胞を含有する多数の原始卵胞、及び大きくなった卵母細胞を含有する幾つかの活性化した卵胞を同程度の数で有していた。PD35までに、PtenloxP/loxP;GCre+卵巣(図1,B)は対照の卵巣よりも大きい状態であり、より活性化された卵胞を顕著に含有していた(図1,C)。実際は、原始卵胞が変異型の卵胞では認められなかったが、対照の卵胞における大半の卵胞は依然として原始段階にあった。したがって、原始卵胞のプール全体が、PtenloxP/loxP;GCre+卵胞では活性化されていた。
【0038】
かくして、原始卵胞のプールの活性化が、卵胞枯渇につながった。これによって、PtenloxP/loxP;GCre+マウスにおけるPOF(早熟卵巣不全)が生じる。これらのマウスにおいて観察された表現型は、ヒトのPOFと類似している(Beck−Peccoz and Persani,Orphanet.J.Rare.Dis.2006,1:9)。PtenloxP/loxP;GCre+卵胞における卵母細胞の肥大の促進の根底にある分子メカニズムを解明するために、PD12−14 PtenloxP/loxP;GCre+マウス及び対照マウスの卵胞から単離した卵母細胞におけるAktシグナル伝達を調べた。インビトロで培養して、血清飢餓状態にしたPtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞において、リン酸−Akt(p−Akt、セリン473)のレベルが上昇していることが認められた。加えて、卵母細胞表面受容体であるKitを解して卵母細胞を成長させる際にPI3K経路を活性化することができる(Reddy et al.Dev.Biol.2005,281:160)、Kitリガンド(KL)が、対照の卵母細胞よりも、PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞において大きくAktを活性化した(図2 2B)。かくして、卵母細胞におけるPtenの欠失は、卵母細胞のPI3K/Aktシグナル伝達の促進を生じさせる。PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞における卵母細胞成長の促進の原因を調べるために、PI3K/Aktシグナル伝達の促進が、リボソームタンパク質S6(rpS6)の活性化の増大を引き起こすかどうか試験した。PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞及び対照の卵母細胞との間に明らかな形態学的相違がない発達段階である(図2,A−C)、PD5において、Aktの活性化が、PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞において既に促進されていた(図2C、PD5、p−Akt)。これは、rpS6の発現(図2C,PD5,rpS6)及びリン酸化(活性化を示す)の促進と相関している(図2C,PD5,p−rpS6,セリン235/6)。この結果は、卵母細胞におけるGdf−9−Cre媒介Pten欠失がまさに生じた際に、タンパク質翻訳の促進が既に開始していたことを示唆する。同様に、PD12−14におけるPtenloxP/loxP;GCre+卵巣から単離した卵母細胞において、促進されたPI3K/Aktシグナル伝達が、rpS6の発現及びリン酸化の双方の上昇を生じさせる(図2C,PD12−14)。しかしながら、mammalian target of rapamycin(mTOR)−p70 S6キナーゼ(S6K)カスケードの活性化は、Ptenの欠失によって増大せず、リン酸−mTOR(p−mTOR、セリン2448)、リン酸−チューブリン/TSC2(p−TSC2、スレオニン1462)、及びリン酸−S6K(p−S6K、スレオニン389)はPD5及びPD12−14において、PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞及び対照の卵母細胞において類似したままであった(図2C)。かくして、rpS6の活性化の促進は、rpS6発現の上昇自体によって生じていた(図2C)。しかしながら、変異型の卵母細胞におけるrpS6及びs6Kのリン酸化は、PI3K特異的インヒビターであるLY294002及びmTOR特異的インヒビターであるラパマイシンに対して感受性を有し、このことは、PtenloxP/loxP;GCre+卵母細胞におけるrpS6の活性化がPI3K及びmTORの活性化に依存することを示す。未知の卵巣内因子が幾つかの原始卵胞を刺激して、成長促進するが、残りの卵胞は休止したままであることは以前から仮説があった。
【0039】
(実施例2)PTENインヒビターは、培養したマウス卵胞における原始卵胞の生存及び発達を促進する
妊娠後の日にちで4日目のマウス卵巣を無菌で取り出し、Cell Strainer(40μmの孔径)(BD Biosciences,Stockholm,Sweden)において、10μMのPTENインヒビターであるbpV−HOpic(二カリウムビスペルオキソ(5−ヒドロキシピリジン−2−カルボキシル)オキソバナデート(V)、K[VO(ONO])とともに又は無しで、28mMアスコルビン酸及び0.3%(w/v)BSAを添加した1mlのα−MEM培地(Gibco−BRL)中で卵巣全体を培養した。培養期間にわたって三分の一の培地を新しい培地に毎日交換して、加湿インキュベーター(5%CO、37℃)で、培養卵巣をインキュベートした。固定化するために、前記卵巣をPBSで一度洗浄して、4%パラホルムアルデヒドで一晩固定化し、形態分析用の埋め込みを実施した。
【0040】
PTENインヒビターは、培養卵巣における卵胞の生存率を向上する(図3B矢印に対して、図3A矢印)。このことは、PTENインヒビターで処理した卵胞は壊死から救出されたことを示す。また、PTENインヒビターは、原始卵胞を成長段階へと活性化するために必要なステップである、平坦な前顆粒細胞(図3Aの矢頭)の球状の顆粒細胞(図3Bの矢頭)への増殖及び分化を刺激する。
【0041】
結論
これらの実験データは、卵母細胞のPTENが卵胞活性化の抑制因子として働くことを示す。卵母細胞内のPTEN/PI3Kシグナル伝達カスケードは、卵母細胞の成長の開始に役割を担っているようである。本発明者は、各個体の卵母細胞におけるPI3K経路の活性化が、原始卵胞の運命、すなわち、休止したままでいるか否か、ある時期に活性化されるか否か、又は原始段階から直接閉鎖するか否かを決定するのに重要であることを提示する。さらに、原始卵胞の過剰な活性化及び枯渇によって引き起こされる、Ptenを卵胞特異的に欠失したマウスのPOFの特有の卵巣表現型が示されている。かくして、本試験の発見は、広く生理学的及び臨床的意味を有し、正常な卵巣の生理及び卵巣疾患の発症の双方における深い理解に寄与する。ヒトでは、POFは、初潮がない(原発性無月経)ことに特徴付けられる原発性卵巣異常又は40歳前の卵胞の早期枯渇/卵胞生産の停止(続発性無月経)として定義され、1%の確率で生じると見積もられている(Beck−Peccoz and Persani,Orphanet.J.Rare.Dis.2006,1:9)。POFの様々なあり得る原因のうち、卵胞の過剰な活性化及び枯渇を生じさせる遺伝的変異が、ヒトにおいては、その1つである可能性がある。一方、それら双方が卵母細胞のPI3K経路の活性化不足によって生じ得る、卵胞活性化の遅延及び/又は過剰な原始卵胞の閉鎖が、他方からPOFを生じさせ得る。卵母細胞におけるPTEN/PI3Kシグナル伝達ネットワークの重要性の認識が、哺乳動物の卵巣の生理学的及び病理学的プロセスの理解に関する新しい展望を開く。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTENインヒビターの使用を含む、卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟方法。
【請求項2】
前記卵胞が原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成熟卵母細胞がインビトロ受精にさらに使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記卵胞又は卵母細胞がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記卵胞又は卵母細胞が動物由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記PTENインヒビターが、
ビスペルオキソ(ビピリジン)オキソバナデート、
ビスペルオキソ(1,10−フェナントロリン)オキソバナデート、
ビスペルオキソ(ピコリナト)オキソバナデート、
ビスペルオキソ(5−ヒドロキシピリジン−2−カルボキシル)オキソバナデート、
ジ−(ピコリネート)オキソバナデート、
ジ−(3−ヒドロキシピコリネート)オキソバナデート、
ビスペルオキソ(フェニルビグアニド)オキソバナデート、
ジ−(フェニルビグアニド)オキソバナデート、及び
ビスペルオキソ(イソキノリンカルボン酸)オキソバナデート
から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に規定の卵胞の活性化を含む、卵母細胞のインビトロ成熟方法。
【請求項8】
必要な胚を移植する工程を含むインビトロ受精方法であって、前記胚が成熟卵母細胞を精子に接触させる工程を含む方法によって製造され、前記卵母細胞が請求項7に記載の方法によって製造される、方法。
【請求項9】
PTENインヒビターとして作用する化合物の機能の測定を含む、卵胞及び/又は卵母細胞のインビトロ成熟に使用することが潜在的に可能な化合物の同定方法。
【請求項10】
卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟を改善するための使用、並びに原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞のインビトロ活性化における使用のための医薬の調製における、1つ又は複数のPTENインヒビターの使用。
【請求項11】
卵胞及び卵母細胞のインビトロ成熟、並びに原始卵胞、中間卵胞、及び一次卵胞などの未成長卵胞のインビトロ活性化の促進のための、1つ又は複数のPTENインヒビターを含む組成物。
【請求項12】
製薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
1つ又は複数のPTENインヒビターを含む組成物の投与を含む、卵巣及び卵母細胞のインビボ活性化及び/又は成熟方法。
【請求項14】
前記投与が局所注射によって実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記投与が卵胞内又は卵巣被膜内注射によって実施される、請求項14に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−509670(P2011−509670A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543086(P2010−543086)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050049
【国際公開番号】WO2009/091332
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(510197128)
【Fターム(参考)】