説明

厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイ用の積層厚膜誘電体構造

【課題】厚膜誘電体ac電子発光ディスプレイに使用される蛍光体の動作安定性を改善するために、新規かつ改良された複合厚膜誘電体構造が提供される。
【解決手段】この新規な構造が、複合厚膜誘電体層とこれらのディスプレイの蛍光体層の底部との間に配置された1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作安定性が改善されたフルカラーacエレクトロルミネセントディスプレイに使用される青色発光蛍光体材料に関する。さらに具体的には、本発明は、高誘電率を有するエレクトロルミネセントディスプレイ内において、複合厚膜誘電層と併用されるアルミニウム酸化物層(複数可)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この出願を通して、この発明と関連する最新技術をさらに十分に記載するために、様々な参考文献が挿入的に引用される。これらの参考文献の開示内容が、参照により本開示に組み込まれる。
【0003】
特許文献1によって例示されたような厚膜誘電体構造が、薄膜エレクトロルミネセント(TFEL)ディスプレイと比較して、絶縁破壊に対する優れた耐性及び減少した作動電圧を提供する。また、厚膜誘電体構造が、蛍光体膜内に注入されることが可能な電荷量を高め、TFELディスプレイよりも高い輝度を提供する。
【0004】
本出願人の特許文献2に記載されているようなフルカラー厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイが、高輝度青色蛍光体材料を使用し、青色サブ−ピクセル及び色変換材料を直接的に照射し、青色光を、赤色及び緑色サブ−ピクセルに対する赤色又は緑色光にダウンコンバートする。青色蛍光体材料が、通常、ユウロピウム活性化チオアルミン酸バリウムである。本出願人の特許文献3では、性能及び安定性を高めるために、薄い真空蒸着アルミニウム酸化物層が、蛍光体層の直下でありかつ蛍光体層と接触して位置するように設けられる。
【0005】
また、従来技術において、アルミニウム酸化物バリアが、エレクトロルミネセントディスプレイ用のバリア層として開示されている。例えば、特許文献4では、厚い誘電性エレクトロルミネセントデバイスにおいて、厚い誘電体層と蛍光体層との間に配置されたアルミニウム酸化物層が開示されている。この開示されたデバイスにおいて、硫化亜鉛層が、最上部アルミニウム酸化物誘電体層とチオアルミン酸塩蛍光体層との間に配置される。アルミニウム酸化物層と硫化亜鉛層との間の界面において光放射のための電子注入が生じるという点において、硫化亜鉛層が、蛍光体層の一部として機能する。硫化亜鉛層が、チオアルミン酸塩材料からの硫黄の損失を抑制する。
【0006】
アルミニウム酸化物層は、有機エレクトロルミネセントデバイスに使用されるものとしても周知であり、このような層が、例えば、特許文献5−13に記載されているように、蛍光体又は基板と隣接して設けられる。
【0007】
これらの前記進歩が、陰極線管(CRT)ベースのテレビ受信機の輝度及び色のスペクトル性能を完全に満たす厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイをもたらす。しかしながら、動作安定性をさらに改善し、テレビ製品規格をより完全に満たすことがいまだなお求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5432015号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0135495号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0017381号明細書
【特許文献4】特開2003−332081号公報
【特許文献5】米国特許第4209705号明細書
【特許文献6】米国特許第4751427号明細書
【特許文献7】米国特許第5229628号明細書
【特許文献8】米国特許第5858561号明細書
【特許文献9】米国特許第6113977号明細書
【特許文献10】米国特許第6358632号明細書
【特許文献11】米国特許第6589674号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2003/0160247号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2004/0115859号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0202157号明細書
【特許文献15】国際公開第00/70917号パンフレット
【特許文献16】国際公開第03/056879号パンフレット
【特許文献17】米国特許出願公開第2004/0033752号明細書
【特許文献18】米国特許出願公開第2006/0027788号明細書
【特許文献19】米国特許出願公開第2005/0202162号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2004/0170864号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】R.W.Jones,“Fundamental Principles of Sol Gel Technology”,The Institute of Metals,1989
【非特許文献2】Stiles,Kamkar,Journal of Applied Physics Vol 100(2006)pp 074508 1−5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、希土類活性化種でドープされたアルカリ土類蛍光体acエレクトロルミネセントディスプレイに関し、このディスプレイが改善された作動期間を備える。改善された作動期間が、複合厚膜誘電体層の上面の上に1つ又はそれ以上の材料の層を設けることによって得られ、有害なイオンに対するバリアとして機能するように十分に厚く、また、弱導電性であり、複合層の実効電気容量を最大化し、同様な同じ厚さの非−導電層と比較してこの層を通した動作電圧降下を減らし、この層の存在によるディスプレイの動作電圧の実質的な増加を防ぐ。この層の電気伝導率が、十分に小さく、異なる電圧が印加された隣接するピクセル間において、大きな電流が流れず、ピクセルクロストークが実質的に回避される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態では、1つ又はそれ以上の層が、アルミニウム酸化物層であって、このアルミニウム酸化物層が、複合厚膜誘電体層と、ディスプレイの蛍光体層の下に位置した異なる非鉛−含有組成の1つ又はそれ以上の薄膜誘電体層との間に位置する。アルミニウム酸化物層(複数可)が、単にアルカリ土類蛍光体薄膜層と接触して又は直接的に隣接するだけでは使用されない。
【0012】
本発明の態様によると、本発明は、改善された厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイであり、複合厚膜誘電体層とディスプレイの蛍光体層の下に位置した異なる非鉛−含有組成物の他の薄膜誘電体層との間に1つ又はそれ以上の材料の層を含み、前記層(複数可)が、有害イオンに対するバリアとして機能し、弱導電性である。
【0013】
本発明の他の態様によると、本発明は、改善された厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイであり、複合厚膜誘電体層とディスプレイの蛍光体層の下に位置した異なる非鉛−含有組成物の他の薄膜誘電体層との間に1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層を含み、アルミニウム酸化物の単一層が設けられ場合、前記ディスプレイ内において、最上部のアルミニウム酸化物層が、蛍光体膜と接触しない。
【0014】
本発明の他の態様によると、本発明は、改善された複合厚膜誘電体構造であり、前記構造が、(a)複合厚膜誘電体層;、(b)前記複合厚膜誘電体構造の上に及び隣接して設けられた1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層;、(c)(b)上の非鉛−含有組成物の1つ又はそれ以上の薄膜誘電体層;及び(d)任意に、前記(c)薄膜誘電体層の間に、並びに/又は前記(c)薄膜誘電体層の上に及び隣接して設けられた1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層を含む。
【0015】
本発明のさらなる態様によると、本発明は、改善された複合厚膜誘電体構造であり、前記構造が、複合厚膜誘電体層;、前記複合厚膜誘電体層上に及び接触して設けられた第1の組の1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層;、前記第1の組のアルミニウム酸化物層上の非鉛−含有組成の1つ又はそれ以上の第1薄膜誘電体層;前記第1薄膜誘電体層の上に設けられた第2の組の1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層;、任意的な、前記第2の組のアルミニウム酸化物層上の非鉛−含有組成物の一組の1つ又はそれ以上の第2薄膜誘電体層;、及び任意的な、前記第2薄膜誘電体層上に設けられた第3の組の1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層を含む。
【0016】
この態様において、希土類金属活性アルカリ土類蛍光体材料が、第3アルミニウム酸化物層の上に設けられる。
【0017】
本発明の他の態様によると、本発明は、改善された厚膜誘電体エレクトロルミネセントディスプレイであり、複合厚膜誘電体層及び希土類活性アルカリ土類蛍光体膜を含み、このディスプレイが、複合厚膜誘電体層と、ディスプレイの蛍光体層の下に位置した異なる非鉛−含有組成の他の薄膜誘電体層との間に、1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層を含む。
【0018】
本発明のさらに他の態様によると、本発明は、厚膜誘電体エレクトロルミネセントディスプレイであり、順に、基板;,金属電極層;,複合厚膜誘電体層;,第1アルミニウム酸化物層;,チタン酸バリウム層;,任意の第2アルミニウム酸化物層;,任意のタンタル酸バリウム層;,任意の第3アルミニウム酸化物層;,及び蛍光体薄膜層を含む。
【0019】
この態様において、アルミニウム窒化物層が、蛍光体層の上に設けられ、次に、薄いITO上部電極層がある。
【0020】
本発明のさらに他の態様によると、本発明は、acエレクトロルミネセントディスプレイであり、複合厚膜誘電体層と、複合厚膜誘電体層上に蒸着された希土類活性アルカリ土類蛍光体とを含み、少なくとも1つの真空−蒸着アルミニウム酸化物層が、複合厚膜誘電体層の上面上に直接的に設けられ、さらに、前記複合厚膜誘電体層が、成形電極パターンを備えた基板上に次の逐次的な段階によって形成される。
−誘電性粉末を含むペーストを印刷することにより高誘電率層を蒸着する段階、次に印刷された層を焼結する段階、及び印刷されかつ焼結された層上に金属有機蒸着(MOD:metal organic deposition)法を使用して形成された平坦化層を蒸着し、これによって複合厚膜誘電体層を形成する段階;
−前記複合厚膜誘電体層上にアルミニウム酸化物層を真空蒸着する段階;及び
−スパッタリング又はMOD法を使用してアルミニウム酸化物層上に少なくとも1つの無鉛高誘電率層を蒸着する段階。
【0021】
本発明の態様において、第2真空蒸着アルミニウム酸化物層が、前記誘電体構造の無鉛高誘電率層上に蒸着され、第2無鉛高誘電率層が、第2真空蒸着アルミニウム酸化物層上に蒸着される。
【0022】
本発明のさらなる態様において、無鉛高誘電率材料が、チタン酸バリウムを含む。
【0023】
本発明のさらなる態様において、第2無鉛高誘電率層が、タンタル酸バリウムを含む。
【0024】
また、本発明のさらなる態様において、蛍光体膜の蒸着の前に、付加的なアルミニウム酸化物層が、複数の高誘電体層の上に真空蒸着される。
【0025】
また、本発明のさらなる態様において、第2無鉛高誘電率層が、スパッタリング法を使用して蒸着される。
【0026】
また、本発明のさらなる態様において、第2無鉛高誘電率層が、MOD法を使用して蒸着される。
【0027】
また、本発明のさらなる態様において、最初に蒸着された無鉛高誘電率層が、スパッタリング法を使用して蒸着される。
【0028】
本発明の他の特徴及び利点が、以下の詳細な記載から明らかとなる。しかしながら、この詳細な記載及び具体例が、本発明の実施形態を示すものであるが、説明のみを目的とするものであると理解されるべきであり、本発明の範囲及び精神内において、様々な変更及び修正が、前記詳細な記載から当業者には明らかなものとなる。
【0029】
本発明が、本願明細書の詳細な記載及び添付図面からさらに完全に理解されるが、これらは説明のみを目的とするものであり、本発明の意図する範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来技術に従って構成されたアルミニウム酸化物層の配置を示す厚膜誘電体エレクトロルミネセントディスプレイの一部の断面の概略図を示す。
【図2】本発明の実施形態に従うアルミニウム酸化物層の配置を示す厚膜誘電体エレクトロルミネセントデバイスの一部の断面の概略図である。
【図3】本発明のさらなる実施形態に従うアルミニウム酸化物層の配置を示す厚膜誘電体エレクトロルミネセントデバイスの一部の断面の概略図である。
【図4】本発明のまたさらなる実施形態に従うアルミニウム酸化物層の配置を示す厚膜誘電体エレクトロルミネセントデバイスの一部の断面の概略図である。
【図5】エイジング時間の関数としての、本発明の改善された及び改善されていないエレクトロルミネセントデバイスの輝度のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の他の特徴及び利点が、以下の詳細な記載から明らかとなる。しかしながら、この詳細な記載及び具体例が、本発明の実施形態を示すものであるが、説明のみを目的とするものであると理解されるべきであり、本発明の範囲及び精神内において、様々な変更及び修正が、前記詳細な記載から当業者には明らかなものとなる。
【0032】
本発明は、複合厚膜誘電体層と希土類活性化種でドープされた薄膜蛍光体層とを含む厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイであり、このディスプレイが、改善された作動期間を有する。この改善された作動期間が、1つ又はそれ以上の材料の層の提供によるものであり、1つ又はそれ以上の層の少なくとも1つが、複合厚膜誘電体層の上端と隣接し及び接触し、有害なイオンに対するバリアとして機能するために十分に厚く、また、弱導電性である。また、本発明が、1つ又はそれ以上の材料の層を組み込んだ改善された複合厚膜誘電体構造であり、少なくとも1つの層が、複合厚膜誘電体層の上端と直接的に隣接する及び接触する。本発明の実施形態において、材料が、アルミニウム酸化物である。本発明の実施形態の様々な態様において、アルミニウム酸化物層(複数可)が、1つ又はそれ以上の非鉛−含有組成の薄膜誘電体層内(すなわち、その間に)に設けられ、この薄膜誘電体層が、厚膜誘電性ディスプレイ内に設けられるが、ディスプレイの蛍光体層の下に位置する。
【0033】
図1が、従来技術において周知であるようなディスプレイの断面の一部の概略図を示す。ディスプレイ10が、金属導体層14(すなわち、金)、厚膜誘電体層(すなわち、PMT−PT)及び平坦化層18を備えた基板12を有する。厚膜誘電体層16と平坦化層18とで、複合厚膜誘電体層20を形成する。アルミニウム酸化物層30が、蛍光体層40と隣接して示される。薄膜誘電体層、次にITOトランスポート電極(図示しない)と同様に、さらにアルミニウム窒化物層が、蛍光体層40の上部に設けられることも可能である(図示しない)。図面に示していないが、複合厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイの他の態様も存在する。
【0034】
一方、本発明は、有害なイオンに対するバリアとして機能する膜として設けられた1つ又はそれ以上の材料の層を有する改善された複合厚膜誘電体構造であり、このイオンが、複合厚膜誘電体層、下部電極、又はディスプレイが構成される基板内から生じうるものであり、同時に弱導電性であり、層の実効電気容量を最大化し、同じ厚さの同様な非−導電層と比較して層を通した作動電圧降下を減らし、結果として、層の存在により、ディスプレイの作動電圧の実質的な増加を防ぐ。
【0035】
図2が、本発明のある非制限的な実施形態を示す。ディスプレイ10が、金属導体層14(すなわち、金)、厚膜誘電体層(すなわち、PMN−PT)16及び平坦化層18を備えた基板12を有する。厚膜誘電体層16と平坦化層18とで、複合厚膜誘電体層20を形成する。アルミニウム酸化物層22が、複合厚膜誘電体層20上に設けられる。アルミニウム酸化物層22上に、チタン酸バリウム層24が設けられ、続いて、タンタル酸バリウム層26、次に、任意的なアルミニウム酸化物層30、続いて、蛍光体層40が設けられる。アルミニウム窒化物薄膜層が、蛍光体40の上部に設けられることも可能であり(図示しない)、誘電体層として機能し、光学的に透明なITO電極が、アルミニウム窒化物層上に設けられることが可能である(図示しない)。図面に示していないが、複合厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイの他の態様も存在する。
【0036】
図3が、本発明の他の非制限的な実施形態を示す。ディスプレイ10が、金属導体層14(すなわち、金)、厚膜誘電体層(すなわち、PMN−PT)16及び平坦化層18を備えた基板12を有する。厚膜誘電体層16と平坦化層18とで、複合厚膜誘電体層20を形成する。アルミニウム酸化物層22が、複合厚膜誘電体層20上に設けられる。アルミニウム酸化物層22上に、チタン酸バリウム層24が設けられ、続いて、さらにアルミニウム酸化物層23、続いて、タンタル酸バリウム層26(任意的なアルミニウム酸化物層30が、タンタル酸バリウム層26上に設けられることが可能である)、続いて、蛍光体層40が設けられる。アルミニウム窒化物層が、蛍光体40の上部に設けられることも可能であり(図示しない)、薄膜誘電体層として機能し、光学的に透明なITO電極が(図示しない)、アルミニウム窒化物層上に設けられることが可能である。図面に示していないが、複合厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイの他の態様も存在する。
【0037】
図4が、本発明のさらに他の非制限的な実施形態を示す。ディスプレイ10が、金属導体層14(すなわち、金)、厚膜誘電体層(すなわち、PMN−PT)16及び平坦化層18を備えた基板12を有する。厚膜誘電体層16と平坦化層18とで、複合厚膜誘電体層20を形成する。アルミニウム酸化物層22が、複合厚膜誘電体層20上に設けられる。アルミニウム酸化物層22上に、チタン酸バリウム層24が設けられ、続いて、さらにアルミニウム酸化物層23、続いて、タンタル酸バリウム層26、続いて、さらに他のアルミニウム酸化物層27、次に続いて、蛍光体層40が設けられる。アルミニウム窒化物層が、蛍光体40の上部に設けられることも可能であり(図示しない)、薄膜誘電体層として機能し、次に、光学的に透明なITO電極が、アルミニウム窒化物層上に設けられることが可能である(図示しない)。図面に示していないが、複合厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイの他の態様も存在する。
【0038】
本願明細書において提供された図面は、概略的であり、本発明の様々な非制限的な実施形態を示すものであることを当業者は理解する。厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイ内に他の層が設けられてもよいことが理解される。
【0039】
本発明の態様において、本発明の材料が、有害なイオンに対するバリアとして複合厚膜誘電体層と共に機能し、また弱導電性である。態様において、材料が、複合厚膜誘電体層と蛍光体層の下に位置した異なる非鉛−含有組成物の他の高誘電率薄膜誘電体層との間に設けられたアルミニウム酸化物の薄膜であり、複合厚膜誘電体層の上面又は上部と接触して及び直接的に隣接してよい。アルミニウム酸化物層が、蛍光体層と直接的に隣接する又は接触する単層ではない。アルミニウム酸化物層が、複合厚膜誘電体層の平坦化層の上に設けられ、それと直接的に接触する。さらなるアルミニウム酸化物層が、チタン酸バリウム層の上に設けられることが可能であり、このチタン酸バリウム層が、図面において非制限的な実施形態として示されるように、通常、厚膜誘電性エレクトロルミネセントデバイス内に設けられる。さらに、さらなるアルミニウム酸化物層が、タンタル酸バリウム層の上に設けられることが可能であり、このタンタル酸バリウム層が、図面においても非制限的な実施形態として示されるように、厚膜誘電性エレクトロルミネセントデバイス内に組み込まれうる。従って、本発明では、アルミニウム酸化物層が、(a)複合厚膜誘電体層の平坦化層と直接的に接触し及びその上のみに組み込まれる;(b)(a)と同様であるが、チタン酸バリウム層と直接的に接触し及びその上にも組み込まれる;(c)(a)及び/又は(b)と同様であるが、タンタル酸バリウム層と直接的に接触し及びその上にも組み込まれる。本発明に含まれない唯一の実施形態は、蛍光体層の底(基板側)部と接触するアルミニウム酸化物層を単独で備えたものである。従って、本発明の1つ又はそれ以上のアルミニウム酸化物層が、複合厚膜誘電体層と蛍光体膜の底側と、すなわち、当業者によって理解されるようなディスプレイ構造の表示側と反対との間に提供される。
【0040】
これらのアルミニウム酸化物層(複数可)が、光を生成するための蛍光体層内への電子注入の動力学特性に実質的に影響を及ぼさないことが望ましい。厚膜誘電体層と隣接する下側から蛍光体層内へ注入された電子が、蛍光体層と複合厚膜誘電体層との間の界面に極めて近接して生じるため、本発明のアルミニウム酸化物層(複数可)が、ディスプレイの下部誘電体構造内に十分に深く組み込まれ、これらが、注入電子が生じる領域の下に存在する。さらに具体的には、これらの層内におけるドーパントの存在を含むこれらの層の詳細な化学組成が、電子注入動力学特性に大きな影響を及ぼさない。
【0041】
アルミニウム酸化物層(複数可)の一部の機能は、複合厚膜誘電体構造内の深い部分から、蛍光体層への化学種の移動を最小化することであり、これらが、光を生成する段階において、希土類活性化原子の効率又は電子注入動力学特性を、低下させうる。アルミニウム酸化物層(複数可)が、他の誘電体層又は複合厚膜誘電体層を含むそれに隣接する層の間に位置されうるため、これらを弱導電性とするように、これらが、これらの層から移動する他の原子種でドープされることが可能である。このようなドーピングが、アルミニウム酸化物層(複数可)を通した電圧降下を最小化する。コンデンサで構成された等価電気回路を備えたドープされたアルミニウム酸化物層を示し、レジスタと並列な層の誘電特性を示し、その電気伝導性を示すことにより、このことを理解することが可能である。この層の電気インピーダンスが、パルス波形のフーリエ要素による高周波調波(higher frequency harmonics)及びパルス幅と関連した基本周波数を含む、駆動パルスの周波数分布の関数である。通常、アルミニウム酸化物膜抵抗率が、十分に低くなるように選択されることが可能であり、膜表面に垂直な方向における膜抵抗が、十分に低く、1/2nfCによって近似された層の電気容量のインピーダンスと比較して、この方向の全体のインピーダンスを下げ、ここで、fは、駆動パルスと関連する基本周波数であり、Cが、層電気容量である。この条件を満たす場合、アルミニウム酸化物層を通した電圧降下が、そのインピーダンスが単に容量性である場合におけるそれよりも低くなり、デバイスに対する作動電圧及び閾値電圧が低下する。通常、アルミニウム酸化物層抵抗率が、上記条件を満たすように十分に低くされるが、同時に、膜に沿った方向における膜抵抗がピクセルの間のクロストークを生じるのに十分に高くなるように、アルミニウム酸化物層抵抗率が、高いままであることが可能であり、これは、ピクセル間(inter−pixel)電流が許容可能なレベルまで最小化されるためである。アルミニウム酸化物層の電気抵抗の制御が、層内におけるドーパント濃度及びタイプの制御を通して達成されることが可能である。このようなドーパントが、蒸着組成物の一部として加えられてよく、複合誘電体層又はその全体のデバイスの熱処理の間に、隣接する層からアルミニウム酸化物層(複数可)へ拡散しうる。
【0042】
本アルミニウム酸化物層の利点が、前記厚膜誘電体層と蛍光体層の下に位置した異なる非鉛−含有組成物の他の薄膜誘電体層との間におけるその配置から生じる。アルミニウム酸化物層が、前記複合厚膜誘電体層と蛍光体層の下に位置した異なる非鉛−含有組成物の他の薄膜誘電体層との間に設けられ、複合厚膜誘電体層の平坦化層と直接的に対して及び接触してよいが、それが、蛍光体膜層と接触する単独の1つの層としては設けられない。それらの間に組み入れられた1つ又はそれ以上の他の層が存在する。アルミニウム酸化物が、複合厚膜誘電体層の平坦化層の上と蛍光体層との間の位置に設けられる。
【0043】
アルミニウム酸化物層(複合厚膜誘電体層の上及び蛍光体層の底側のどこに組み込まれる場合であっても)が、その総厚さが約25から約50ナノメートルであり、この間の範囲のいずれの厚さとすることが可能である。従って、図2−4において非制限的な方法で示されるように、たとえ、1つ、2つ又は3つのアルミニウム酸化物層がディスプレイ内において蛍光体層の下に設けられる場合でも、及びそれがどこに配置されようとも、各個別層の総厚さが、約25から約50ナノメートルである限り、アルミニウム酸化物層が、1つ又はそれ以上の薄層として(アルミニウム酸化物の複数の薄層の積層物として)蒸着されることが可能である。この態様において、アルミニウム酸化物層の厚さが、約50ナノメートル以下であり、他の態様において、約25ナノメートル以下である。この厚さが、50nm以下のこれらの範囲のいずれの量の増分として設けられることが可能であると理解される。
【0044】
アルミニウム酸化物層(複数可)が改善をもたらす機構は、完全には理解されていないが、デバイスの作動中における電子が蛍光体膜内に注入される効率の減少が生じること、発光する蛍光体材料内におけて電子が活性化種と相互作用する効率の減少が生じること、又は実用的な輝度を提供するように、蛍光体内において生成された光がデバイスから放射される効率が減少することによる、蛍光体材料の実現可能な輝度の減少を生じうる化学種に対するバリアとして、この層(複数可)が機能しうると考えられる。少なくとも1つのアルミニウム酸化物層の最も効果的な配置は、印刷されかつ焼結された誘電体層上に蒸着された平坦化層の直上であり、前記印刷されかつ焼結された誘電体層及び前記平坦化層が、特許文献14の教示のように形成される。簡潔には、ある実施形態において、厚い複合厚膜誘電体層が、以下のように製造されてよい。厚膜誘電体層が、電子工学/半導体産業において周知である厚膜技術によって蒸着され、強誘電性材料から形成されてよい。この層の例となる材料が、BaTiO,PbTiO,マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)及びPMN−PT、マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛を含む材料を含む。このような材料が、これらの誘電体粉末から形成される、又は商用のペーストとして得られうる。グリーンテープ(green tapes),ロール塗布,及びドクターブレード塗布のような厚膜蒸着技術が、当業界において周知であるが、この態様において、スクリーン印刷が最も好ましい。低空隙率、高結晶化度及び最小限のクラッキングを達成するために、多層が好ましく、各蒸着物が、乾燥,ベーキング又は焼結を伴う。厚膜誘電体層の蒸着厚さが、通常、10から300マイクロメートルの範囲である。好ましくは、材料を焼結する前に、加圧が、10,000−50,000psi(70,000−350,000kPa)のような高圧力で、結合された基板,電極,誘電体層部を冷間静水圧プレスすることにより達成される。薄い、第2平坦化層20が、加圧されかつ焼結された厚膜誘電体層上に設けられ、平坦な表面が設けられる。これが、誘電体層18のそれよりも小さな誘電率を有しうる第2セラミック材料から形成される。厚さが、約1−10マイクロメートルである。通常、この第2誘電体層20の所望の厚さが、平滑性に応じたものであり、すなわち、平坦な表面が得られるならば、この層が、可能な限り薄くてよい。平坦な表面を提供するために、好ましくは、ゾルゲル蒸着技術が使用され、また、金属有機蒸着(MOD)と呼ばれ、続いて、高温加熱又は焼成が使用され、セラミック材料に変える。
ゾルゲル蒸着技術が、当業界においてよく理解されており、例えば非特許文献1が参照される。平坦な表面を得る方法で、ゾルゲル材料が、第1誘電体層18上に蒸着される。平坦な表面を提供することに加え、ゾルゲル法が、焼結された厚膜層内の微細孔の充填を促進する。スピン蒸着又はディッピングが、最も好ましい。必要に応じ、ゾルが、様々な段階で蒸着されることが可能である。ゾルゲルの粘度を変化させる、及びスピニング速度を変えることにより、平坦化層の厚さが、制御される。スピニングの後、湿式ゾルの薄層が、表面上に形成される。セラミック表面を形成するために、ゾルゲル平坦化層が、通常1000℃以下で加熱される。ゾル平坦化層が、ディッピングによって蒸着されてもよい。コーティングされる表面が、ゾル内に浸され、次に、通常極めて遅い一定速度で引き出される。平坦化層の厚さが、ゾルの粘度及び引出し速度を変えることにより制御される。ゾル平坦化層が、スクリーン印刷又はスプレーコーティングされてもよい。平坦化層に使用されるセラミック材料が、第1厚膜誘電体層に使用されるSr,Pb及びBaのチタン酸塩、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)のような材料から形成される。
【0045】
さらに、蛍光体層からアルミニウム酸化物層を化学的に分離させるために、蛍光体層の蒸着の前に、前記印刷されかつ焼結された誘電体層及び前記平坦化層よりも高い化学的純度を有する薄膜誘電体層(チタン酸バリウム及び/又はタンタル酸バリウム等)が、少なくとも1つのアルミニウム酸化物層の上に蒸着される。この態様において、BaSr1−xTiO(0<x<1)、又はBaTaが適切な層である。チタン酸バリウム結晶層が、0.05から1.0マイクロメートルの厚さであってよく、ある態様では、0.1から0.3マイクロメートルの厚さでよい。このような厚さが、あわせて複合厚膜誘電体層を形成する第一の厚膜誘電体層又は表面を覆う平坦化層のいずれかの厚さよりも、著しく小さい。この態様において、通常、チタン酸バリウムが、約0.2マイクロメートルの層として設けられ、通常、タンタル酸バリウムが、約0.05マイクロメートルの層として設けられる。アルミニウム酸化物層(複数可)が、複合厚膜誘電体層の上部であって、平坦化層の上で及び平坦化層と接触して設けられることが望ましく、蛍光体層内の構造の下部からの原子種の拡散に対する効果的なバリアを提供するように、効果的に連続したアルミニウム酸化物層が、形成されてよい。
【0046】
さらに、本発明は、特に、複合厚膜誘電体層を使用したエレクトロルミネセントデバイスに適用することが可能であり、この複合厚膜誘電体層が、2つ又はそれ以上の酸化物化合物を含む複合材料である厚い誘電体材料の高誘電率誘電体層を含み、この酸化物化合物が、熱処理又はデバイス操作に応じて蛍光体性能に有害である酸素又は関連する化学種を放出しうるものであり、厚い誘電体の表面が、デバイス構造を通してクラック又はピンホールを生じる蛍光体の厚さの規模にでこぼこであり、複合厚膜誘電体層が、このような種の分散を助け、この結果、デバイスの作動期間にわたる作業効率及び輝度の損失の一因となる結合したボイドを含みうる。特許文献1,特許文献15及び特許文献16に記載されているように、このような適当な複合厚膜誘電体層が、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の平坦化層を備えたマグネシウムニオブ酸鉛(PMN)又はマグネシウムニオブ酸チタン酸鉛(PMN−PT)焼結厚膜層を含む(これらの開示内容は、それらの全体が本願明細書に組み込まれる)。
【0047】
本発明の態様における蛍光体が、アルカリ土類蛍光体であり、さらなる態様においては、式AB:REからなり、ここで、Aは、1つ又はそれ以上のMg,Ca,Sr又はBaであり、Bは、少なくとも1つのAl又はInであり、Cは、少なくとも1つのS又はSeであり、S及びSeを含めた濃度の0.2未満である相対原子濃度の酸素を含んでよい。REは、所要の光スペクトルを生成する1つ又はそれ以上の希土類活性化種であり、好ましくはEu又はCeである。xの値は、2−4であり、yの値は、4−7である。蛍光体材料の最も望ましい態様は、ユウロピウムで活性化されたBaAlである。
【0048】
また、本発明が、複合厚膜誘電体層内における応力を軽減するように機能しうるものであり、デバイス構造内において蓄積した応力を特定の位置に集中させるよりはむしろ複合厚膜誘電体層の厚さを通して蓄積した応力を分配することによって、層又は完成したエレクトロルミネセントディスプレイの製造に使用される加熱処理段階の間においてクラックが形成されるのを抑制する又は防ぐ。
【0049】
本発明は、セラミック、ガラス又はガラスセラミック基板上に構成されたエレクトロルミネセントディスプレイに適用可能である。ガラス基板が使用される場合には、ガラス基板からの原子種が、ディスプレイ処理の間において上向きに拡散しうるが、複合誘電体構造内に組み込まれたアルミニウム酸化物層が、蛍光体層までのこれらの種の移動を抑制しうる。
【0050】
本発明は、特に、希土類−活性化アルカリ土類チオアルミン酸塩蛍光体材料、特に、ユウロピウム活性化チオアルミン酸バリウムを組み込んだ厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイの作動期間を改善するために行われる。これらの蛍光体を安定化する詳細な機構は理解されていないが、有害種が蛍光体と反応することを防ぐことが、希土類活性化種がホストチオアルミン酸塩化合物の結晶格子内に溶けたままであることを確保するために役立ちうる。蛍光体の酸素との反応が、蛍光体からのアルミニウム酸化物の析出を生じ、残りの材料が、さらにバリウムリッチとなる。多くの異なるチオアルミン酸化合物が、アルミニウムに対して異なる割合のアルカリ土類元素と共に、及び各組成に対して異なる結晶構造で存在することが知られているが、これらの全てが有効な蛍光体ホストではない。
【0051】
また、本発明が、本発明のアルミニウム酸化物層を蒸着するために使用される方法を提供する。バリア層が、物理的又は化学的蒸着技術を使用して蒸着されることが可能である。これが、低圧酸素−含有雰囲気内で実行されるこれらの材料用の蒸着方法にまで拡張され、ここで、酸素が、厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイ構造内に組み込まれ、元素アルミニウム又は元素硫黄のような還元された元素種が存在しないことを確保するにより、複合厚膜誘電体層及び/又は蛍光体層を安定化する。このような方法の例が、酸素−含有環境下における反応性スパッタリングである。
【0052】
概して、上記開示内容が、本発明を説明する。以下の特定の実施例を参照することにより、さらなる完全な理解が得られる。これらの実施例が、単に説明を目的として記載され、本発明の範囲の制限を意図するものではない。状況が手段を示す又は与えているように、形式上の変更及び同等物への置換が、考えられる。本願明細書において、特有の用語が使用されているが、このような用語は、記述的な意味において意図されたものであって、制限を目的するものではない。
【0053】
以下の実施例が、本発明のいくつかの好ましい実施形態を明らかにするために提供されるが、それらの範囲の制限を意図するものではない。
【実施例1】
【0054】
この実施例は、従来技術のデバイスの動作安定性及び性能を説明するために役立つ。ユウロピウムで活性化されたチオアルミン酸バリウムを含む薄膜蛍光体層を組み込んだ厚膜誘電性エレクトロルミネセントディスプレイが、構成された。このディスプレイ用の基板が、厚さ0.1cmを有する5cm×5cmガラスから成っていた。本出願人による同時係属の特許文献17(その開示内容が、その全体を参照することにより本願明細書に組み込まれる)において例示された方法に従って、金の電極が、基板上に蒸着され、続いて、マグネシウムニオブ酸−チタン酸鉛厚膜高誘電率誘電体層、及びPZT平坦化層が蒸着された。特許文献11(その全体が、参照により本願明細書に組み込まれる)に従って、約120ナノメートルの厚さを有するチタン酸バリウムの薄膜誘電体層が、蒸着された。約50ナノメートルの厚さを有するタンタル酸バリウムの第2薄膜層が、チタン酸バリウム層の上にスパッタリング法によって蒸着された。約25ナノメートルの厚さを有するアルミニウム酸化物から構成された第3薄膜層が、タンタル酸バリウム層の上にスパッタリング法によって蒸着された。次に、極めて薄い硫化アルミニウムシード層、続いてユウロピウムドープバリウム硫化アルミニウム組成物が蒸着され、一度熱処理された両層が、蒸着され、バリウムに対してユウロピウムの約3の原子百分率で活性化された400ナノメートル厚チオアルミン酸バリウム蛍光体膜から構成された蛍光体層を形成した。蛍光体の結晶構造が、特許文献18に記載されているような、及び非特許文献2において記載され、代わりにα−BaAlと呼ばれるような、BaAl(I)であった。蛍光体組成物が、特許文献19に記載されたような方法に従って蒸着された。
【0055】
次の蛍光体蒸着物の熱処理が、数分間の間、約680℃から730℃の範囲におけるピーク温度での空気の3容量パーセント以下を含む窒素から構成された制御雰囲気下で実施された。次に、50ナノメートル厚アルミニウム窒化物層が、参照によりその全体が本願明細書に組み込まれる特許文献20に例示された方法に従って、スパッタリング蒸着された。最後に、インジウムスズ酸化物膜が、デバイス上に第2電極を形成するためにスパッタリング蒸着された。
【0056】
30ナノ秒のパルス幅を有し、光閾値電圧(optical threshold voltage)を超える平方メートルボルトあたり250カンデラの輝度を生成するのに十分な大きさである、240Hz交流極性方形波電圧波形(alternating polarity square wave voltage waveform)を適用することにより、デバイスが、試験された。図5に示されたグラフにおける曲線1が、一定の係数によってスケーリングされた時間の関数とする正規化された輝度を示し、デバイスが30%デユーティサイクルでの150Hzの低周波数において作動された場合における、デバイスの予測作動時間を与える。グラフの横軸が、対数のタイムスケールを示し、約100時間の動作後、デバイスの初期輝度が、対数的に減少したことがわかる。
【実施例2】
【0057】
この実施例が、従来技術と比較した本発明の利点を説明するために役立つ。チタン酸バリウム層の蒸着の前に、PZT平坦化層上に、スパッタリング法を使用して50ナノメートル厚アルミニウム酸化物層が蒸着されたことを除き、ディスプレイが、実施例1のそれと同様に構成された。図5に示されたグラフにおける曲線2が、実施例1に記載されたデバイスと同様な条件下で作動されたこのデバイスに対する予測作動時間データの関数として正規化された輝度を示す。また、実施例1のデバイスのそれと同様に、初期輝度が、対数的に減少したが、対数的な減少の傾きが、著しく小さく、実施例1のデバイスに対するものよりも実質的に長い作動時間を与えた。
【実施例3】
【0058】
この実施例が、本発明の代替の実施形態の利点を示すために役立つ。タンタル酸バリウム層の蒸着の前に、チタン酸バリウム層上に、スパッタリング法を使用して付加的な50ナノメートル厚アルミニウム酸化物層が蒸着されたことを除き、ディスプレイが、実施例2のそれと同様に構成された。図5に示されたグラフにおける曲線3が、実施例1及び2に記載されたデバイスと同様な条件下で作動されたこのデバイスに対する作動時間データの関数として正規化された輝度を示す。また、実施例1及び2のデバイスのそれと同様に、このデバイスの初期輝度が、対数的に減少した。対数的な減少の傾きが、実施例2のそれと同様であったが、PZT平坦化層と直接的に接触する組み込まれたアルミニウム酸化物層を設けることで、動作安定性の最も大幅な改善が達成されることが示されている。
【実施例4】
【0059】
この実施例が、異なる結晶構造を有する交互のユウロピウム活性化チオアルミン酸バリウム蛍光体相を有する従来技術のデバイスの動作安定性及び性能を説明するために役立つ。処理条件が、特許文献18に記載されているような、及び非特許文献2において記載され、代わりにβ−BaAlと呼ばれるような、BaAl(II)の蛍光体膜を設けるように調節されたことを除き、3つのディスプレイデバイスが、実施例1のディスプレイと同様に構成された。通常、β−BaAl蛍光体膜を備えた従来技術の厚い誘電体デバイスが、低い輝度を示すが、β−BaAl蛍光体膜を備えたそれらの寿命が長い。この実施例のデバイスが、実施例1のデバイスと同じ条件下で試験され、初期輝度の半分となるまでの、約13,000時間の平均予測作動期間が得られた。
【実施例5】
【0060】
この実施例が、β−BaAl蛍光体膜を備えたエレクトロルミネセントデバイスの寿命を改善する本発明の利点を説明するために役立つ。本発明の実施形態に従って、チタン酸バリウム層の蒸着前に、付加的なアルミニウム酸化物の25ナノメートル厚層が、PZT平坦化層上にスパッタリングされたことを除き、3つのディスプレイデバイスが、実施例4のそれらと同様に構成された。この実施例のデバイスが、実施例4のデバイスと同じ条件下で試験され、初期輝度の半分となるまでの、約28,000時間の平均予測寿命が得られた。
【符号の説明】
【0061】
10 ディスプレイ
12 基板
14 金属導体層
16 厚膜誘電体層
18 平坦化層
20 複合厚膜誘電体層
22,23,27,30 アルミニウム酸化物層
24 チタン酸バリウム層
26 タンタル酸バリウム層
40 蛍光体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改善された複合厚膜誘電体構造を含むエレクトロルミネセントディスプレイであって、
前記構造が、
複合厚膜誘電体層と、
前記複合厚膜誘電体層の上面上に設けられたアルミニウム酸化物または他の原子種でドープされたアルミニウム酸化物の1つ又はそれ以上の層であって、25から50nmの厚さを有し、有害なイオンに対するバリアとして機能し、かつ弱導電性である層と、
薄膜蛍光体層と、
を含み、
前記アルミニウム酸化物または他の原子種でドープされたアルミニウム酸化物の1つ又はそれ以上の層の少なくとも1つが、前記蛍光体層と直接的に接触しないことを特徴とするエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項2】
前記構造が、前記アルミニウム酸化物または他の原子種でドープされたアルミニウム酸化物の1つ又はそれ以上の層の上に、非鉛−含有組成の1つ又はそれ以上の薄膜誘電体層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項3】
前記アルミニウム酸化物または他の原子種でドープされたアルミニウム酸化物の1つ又はそれ以上の層が、前記1つ又はそれ以上の薄膜誘電体層上に及び/又は前記1つ又はそれ以上の薄膜誘電体層の間に設けられたことを特徴とする請求項2に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項4】
前記1つ又はそれ以上の薄膜誘電体層が、チタン酸バリウム及びタンタル酸バリウムから選択されたことを特徴とする請求項3に記載の改善されたエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項5】
前記1つ又はそれ以上の層が、アルミニウム酸化物であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項6】
前記構造が、順に、複合厚膜誘電体層、アルミニウム酸化物層、チタン酸バリウム層、及び薄膜蛍光体層を備えることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項7】
前記構造が、順に、複合厚膜誘電体層、アルミニウム酸化物層、チタン酸バリウム層、タンタル酸バリウム層、及び薄膜蛍光体層を備えることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項8】
前記構造が、順に、複合厚膜誘電体層、アルミニウム酸化物層、チタン酸バリウム層、タンタル酸バリウム層、アルミニウム酸化物層、及び薄膜蛍光体層を備えることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項9】
前記構造が、順に、複合厚膜誘電体層、アルミニウム酸化物層、チタン酸バリウム層、アルミニウム酸化物層、タンタル酸バリウム層、アルミニウム酸化物層、及び薄膜蛍光体層を備えることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項10】
前記構造が、順に、複合厚膜誘電体層、アルミニウム酸化物層、チタン酸バリウム層、アルミニウム酸化物層、タンタル酸バリウム層、及び薄膜蛍光体層を備えることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項11】
前記蛍光体層が、チオアルミン酸塩であることを特徴とする請求項5に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項12】
前記蛍光体層が、AB:REによって表され、
Aが、1つ又はそれ以上のMg,Ca,Sr又はBaであり、
Bが、少なくとも1つのAl又はInであり、
Cが、少なくとも1つのS又はSeであり、
REが、希土類種であり、
xが、2から4であり、yが、4から7である
ことを特徴とする請求項11に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項13】
前記希土類種が、Eu及びCeから選択されたことを特徴とする請求項12に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項14】
前記蛍光体が、ユウロピウムで活性化されたBaAlであることを特徴とする請求項13に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項15】
前記構造が、前記蛍光体層上にアルミニウム窒化物層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項16】
前記構造が、前記アルミニウム窒化物層上にITO透明層をさらに含むことを特徴とする請求項15に記載のエレクトロルミネセントディスプレイ。
【請求項17】
厚膜誘電体構造を含むエレクトロルミネセントディスプレイであって、
前記構造が、
(a)複合厚膜誘電体層、
(b)前記複合厚膜誘電体構造の上に隣接して設けられたアルミニウム酸化物層、
(c)(b)の上のチタン酸バリウム層、
(d)(c)の上の任意のタンタル酸バリウム層、及び
(e)(c)の上及び/又は(d)の上に設けられた任意のさらなるアルミニウム酸化物層、
を含むことを特徴とするディスプレイ。
【請求項18】
前記アルミニウム酸化物層が、25から50nmの厚さを有することを特徴とする請求項17に記載のディスプレイ。
【請求項19】
前記アルミニウム酸化物層が、50nm以下の厚さを有することを特徴とする請求項17に記載のディスプレイ。
【請求項20】
前記ディスプレイが、チオアルミン酸蛍光体層を含むことを特徴とする請求項17に記載のディスプレイ。
【請求項21】
前記蛍光体層が、AB:REによって表され、
Aが、1つ又はそれ以上のMg,Ca,Sr又はBaであり、
Bが、少なくとも1つのAl又はInであり、
Cが、少なくとも1つのS又はSeであり、
REが、Eu又はCeであり、
xが、2から4であり、yが、4から7である
ことを特徴とする請求項20に記載のディスプレイ。
【請求項22】
前記蛍光体が、ユウロピウムで活性化されたBaAlであることを特徴とする請求項21に記載のディスプレイ。
【請求項23】
前記構造が、前記蛍光体層上にアルミニウム窒化物層をさらに含むことを特徴とする請求項20に記載のディスプレイ。
【請求項24】
前記構造が、前記アルミニウム窒化物層上にITO透明層をさらに含むことを特徴とする請求項23に記載のディスプレイ。
【請求項25】
前記ディスプレイが、前記複合厚膜誘電体層の下に金属電極層を備えた基板を含むことを特徴とする請求項17に記載のディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−84614(P2013−84614A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−279912(P2012−279912)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2010−504402(P2010−504402)の分割
【原出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(508120846)アイファイアー・アイピー・コーポレーション (7)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】