説明

原子炉の気水分離器

【課題】圧力損失の増加を極力抑え、高蒸気クオリティにおいても低キャリーオーバーを実現できる気水分離器を提供する。
【解決手段】液滴捕獲ガイド3を設けた排水衝突部材2を気水分離器の外筒15の外側に配置し、気水分離器からの排水を排水衝突部材2に沿って水面下に衝撃少なく入水させて気水分離器周りでの液滴の発生を抑制し、かつ、排水が排水衝突部材2に衝突して発生した微細液滴等の蒸気乾燥器への排出を液滴捕獲ガイド3により抑制するので、高蒸気クオリティにおいても気水分離器周りからのキャリーオーバーが大きくならない上、気水分離器周りの流路の一部に限定して排水衝突部材2や液滴捕獲ガイド3を設けて圧力損失の増加を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉で発生した蒸気を冷却水から分離するための気水分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントでは、発電機を駆動する蒸気タービンへ原子炉圧力容器内で発生させた高温高圧な蒸気を供給して発電機の駆動蒸気として用いている。
【0003】
その蒸気の供給を受ける蒸気タービンのタービン翼部分がエロ−ジョンやコロージョンを発生することを抑制するために、原子炉圧力容器内で発生した蒸気は原子炉圧力容器内の複数の気水分離器による気水分離設備で原子炉圧力容器内の冷却水から蒸気を分離して蒸気中の液滴を除去し、その後に同じく原子炉圧力容器内の蒸気乾燥器に通して蒸気に同伴されてくる液滴を蒸気タービン側が求める一定値以下に除去して乾燥蒸気を作る。
【0004】
その気水分離器と蒸気乾燥器は、原子炉圧力容器内に装備され、上述のように2段階で蒸気から液滴を除去する作用を行って、乾燥蒸気を作り、その乾燥蒸気が先に述べた蒸気タービンへ発電機の駆動蒸気として供給されて消費される。このような仕組みの原子炉は、沸騰水型原子炉(以下、BWRという)や改良型沸騰水型原子炉(以下、ABWRという)として知られている。
【0005】
従来の気水分離器は、内筒と外筒との間に排水流路を備えた構造物を上下多段に有し、上下多段間で内筒内と排水流路をピックオフリングを介して連通した構造と、その内筒内の流体に遠心力を与える旋回羽根とを備えて、気水分離部が上下多段に構成された遠心分離機構を備えている(例えば、特許文献1参照。)。これにより内筒内で蒸気と冷却水とが多段階にわたって遠心分離され、分離後の冷却水は排水流路から排水として下方の冷却水中に戻される。一方、分離された蒸気は蒸気乾燥器内に流入してさらに液滴を除去する処理を受けて蒸気タービン側へ供給される。
【0006】
気水分離器の性能の指標の一つに、キャリーオーバーがある。キャリーオーバーは気水分離器から蒸気乾燥器へ液滴として排出される冷却水の蒸気に対する重量比を表わす。キャリーオーバーには、気水分離器内部で気液分離が不十分なため冷却水の一部が液滴状になって蒸気に混入したまま気水分離器から蒸気乾燥器へ排出される気水分離器内部からのキャリーオーバーと、気水分離器周りの水面に気水分離器から排出された排水及び蒸気が衝突することによって発生する液滴が、上昇蒸気によって蒸気乾燥器へ排出される気水分離器周りからのキャリーオーバーとがある。
【0007】
これらキャリーオーバーが大きければそれだけ湿った蒸気が蒸気乾燥器へ排出されることになり、蒸気乾燥器で液滴が充分に除去されなかった場合には、タービン翼を損傷する恐れがあるので、キャリーオーバーについては蒸気タービンの信頼性を確保するために設計限界値が設けられており、その設計限界値の要求値に対して、既存の原子炉の気水分離器は余裕がある。
【0008】
気水分離器周りからのキャリーオーバーを極力抑制する手段として、気水分離器周りの流路を覆う液滴捕獲リングを設けた構造(例えば、特許文献2参照。)や、気水分離器を構成している貫通孔を設けた内筒と外筒の間にデミスターを充填した構造(例えば、特許文献3参照。)が公知である。
【0009】
また、気液分離手段として、気水分離器同士を繋ぐ振動防止板や対面する気水分離器の外壁への衝突を利用して、蒸気から液滴を除去することが公知である(例えば、特許文献4参照。)。
【0010】
さらに、気水分離器の第二段目の分離領域からの排水口を、気水分離器の外筒を取り囲む配管で覆い、且つ配管の上端を閉鎖した構成により、配管の下端から原子炉内の冷却水中に気水分離器の排水が誘導されることが公知である(例えば、特許文献5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−197678号公報
【特許文献2】特開平8−179077号公報
【特許文献3】特開2004−245656号公報
【特許文献4】特開2000−153118号公報
【特許文献5】特開2000−199797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
今後、国内で予定されている既設の沸騰水型原子炉の出力向上や米国で建設が予定されている高経済性単純化沸騰水型原子炉(以下、ESBWRという)、及びABWRよりさらに出力を増大した次世代原子炉(以下、次世代BWRという)においては、現行ABWRよりも気水分離器入口での蒸気クオリティ(全質量流量に対する蒸気質量流量の割合)が大きくなる。
【0013】
蒸気クオリティが大きくなる(蒸気速度が大きくなる)と気水分離器の第2段、第3段の排水流路から排出された排水及び蒸気が、気水分離器周りの水面に衝突することによって発生する液滴の量が増加し、その液滴が上昇蒸気によって蒸気乾燥器へ排出されるために、気水分離器周りからのキャリーオーバーが増加する。
【0014】
気水分離器周りからのキャリーオーバーを防ぐために気水分離器周りの流路を完全に覆う液滴捕獲リングを設けると、気水分離器周りの流路における圧力損失が増加する。また、気水分離器を構成している内筒と外筒に貫通孔を設け、その間にデミスターを充填した気水分離器においても、気液二相流がデミスター部を通過するため圧力損失が増加する。
【0015】
また、気液分離促進のために、気水分離器内部からの液滴を含む蒸気を対面する気水分離器の外壁に衝突させると、気水分離器周りにおいて径が小さい液滴を発生させる可能性がある。径が小さい液滴は蒸気の上昇速度が小さくても蒸気乾燥器へ排出されるため、気水分離器周りからのキャリーオーバーが増加する恐れがある。
【0016】
気水分離器の排水口を配管で覆う構成により排水を強制的に下方の冷却水側に誘導する構成では、第二段目の排水口から排出される蒸気が上部空間へ抜けることができずに再循環水中に含まれてしまうことが懸念される。再循環水中に含まれる蒸気の量が増えると、BWRやABWRでは再循環水を循環させるジェットポンプあるいはインターナルポンプのポンプ性能を低下させる恐れがある。
【0017】
本発明の目的は、圧力損失の増加を極力抑え、高蒸気クオリティにおいても低キャリーオーバーを実現できる気水分離設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の課題の解決手段は、原子炉圧力容器内に並列配置した複数個の気水分離器で、その原子炉圧力容器内で蒸気を冷却水から分離する気水分離設備において、その気水分離器の外周に存在する空間の一部分に限定して配置され、下側に開放された形状の液滴捕獲ガイドを有する構成の気水分離設備である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の気水分離設備によれば、圧力損失の増加を極力抑え、気水分離器周りからのキャリーオーバーを低く維持することができ、沸騰水型原子炉を採用したプラントの信頼性向上に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の液滴捕獲ガイド付排水衝突部材を設けた気水分離器群の縦断面図である。
【図2】本発明の実施例1による液滴捕獲ガイド付排水衝突部材の構造と気水分離器群への配置を示した説明図である。
【図3】本発明の実施例2による液滴捕獲ガイド付排水衝突部材の構造と気水分離器群への配置を示した説明図である。
【図4】本発明の実施例3による液滴捕獲ガイドの構造と気水分離器群への配置を示した説明図である。
【図5】本発明の気水分離器が採用される改良型沸騰水型原子炉の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の各実施例を適用する対象のABWRの構成を、図5により説明する。図5に示すように、ABWRは、熱を発生する炉心21、炉心21を取り囲むシュラウド22およびシュラウドヘッド23、シュラウドヘッド23に取り付けられて並列に配置された複数の気水分離器1、その上方にある蒸気乾燥器24、圧力容器25内の冷却水を循環させるインターナルポンプ26を備えている。
【0023】
インターナルポンプ26によって炉心21に送り込まれた冷却水は、炉心21で加熱されて沸騰し、蒸気と水の気液二相流となる。この気液二相流は、圧力容器25内の気水分離器1で蒸気と水に分離される。
【0024】
分離された蒸気には湿分が多く含まれた湿り蒸気となっているので、圧力容器25内の蒸気乾燥器24で湿分がさらに取り除かれて乾燥蒸気とされ、クオリティを増した蒸気は、主蒸気配管27を通って図示しない発電機を駆動する蒸気タービンに送られる。
【0025】
また、気水分離器1で分離された冷却水は、給水ノズル28から供給される給水と圧力容器25内で混合され、ダウンカマ29に流れ込み、インターナルポンプ26によって炉心21へ再循環する。
【0026】
個々の気水分離器1は、図1の構成を有する。即ち、図1に示した気水分離器1は、上下3段構成の遠心分離作用を利用した気水分離器である。その気水分離器1は、シュラウドヘッド23上部に連通するようにシュラウドヘッド23に固定されたスタンドパイプ11、スタンドパイプ11の上端に固定されてスタンドパイプ11に連通接続されて流路面積の小さいスタンドパイプ11と流路面積が大きい後述の内筒14とを接続するディフューザ12、ディフューザ12内に固定されて蒸気と水の二相流に旋回力を付与するスワラー13、ディフューザ12の上端に固定されてディフューザ12に連通接続された内筒14、内筒14の外周囲を隙間を持って囲うように配置された外筒15、外筒の上端を塞ぐ板とその中央部に設けられた短管から成るピックオフリング16、内筒と外筒との間の隙間に設定されて内筒14内上端からの排水を下方に導く流路として用いられる排水流路17、外筒とスタンドパイプ11との間の隙間を持って排水流路の排水口として形成された排水流路出口18、詳細には後述する液滴捕獲ガイド3が設けられて外筒15に支持されている排水衝突部材2とにより構成される。図1では、気水分離器1の各段の同等機能部品に同一数字を符号として印して各段ごとの同等機能部品の識別のためにその数字に添えて記号a、b、cを印して区別している。
【0027】
第1段排水流路出口18aは第1段外筒15aの下端が下方に開口しており、気水分離器周りに形成される水面30より下側に開口が存在している。第2段排水流路出口18b及び第3段排水流路出口18cは、第2段外筒15b及び第3段外筒15cの下端が水平方向に開口しており、気水分離器周りに形成される水面30より上側に開口が存在している。
【0028】
液滴捕獲ガイド3を設けた排水衝突部材2は、外筒15の外側の、第2段排水流路出口18bより上側から気水分離器周りに形成される水面30より下側にかけて設けられる。
【0029】
第1実施例による液滴捕獲ガイド3を設けた排水衝突部材2の構成が図2に示されている。図2(a)は、図1のA−A断面である。複数の気水分離器1を格子状に配置し、第2段排水流路出口18bが隣接する気水分離器1の外筒15外側に固定して設けた排水衝突部材2に対面するように配置される。
【0030】
図2(b)は、排水衝突部材2の斜視図であり、排水衝突部材2の上端には、液滴捕獲ガイド3が設けられる。液滴捕獲ガイド3は断面がL字型若しくは、他の実施例では有るが、図3(b)のようにコの字型であり、いずれも開口面が垂直下向きとなる下側に開放された形状を有する。
【0031】
図2(c)は、図2(b)に示した第1実施例による排水衝突部材2の変形例であり、図2(b)と同様の下側に開放された形状を有するが、加えて排水衝突部材2の垂直面に排水案内溝4が設けられている。
【0032】
次に、以上のような構成にした第1実施例による気水分離器1の作用を以下に説明する。スタンドパイプ11から流入した気液二相流はスワラー13により旋回力を与えられ、遠心分離作用により密度の大きい水が外側に押し出され、密度の小さい蒸気が中心に集まる。
【0033】
外側に押し出された水は内筒14とピックオフリング16のギャップから内筒14と外筒15で形成された排水流路17を通って排水流路出口18から原子炉圧力容器内の冷却水である炉水に戻される。本実施例の気水分離器1は、このように液膜を排水する機構が3段設けてある。
【0034】
このうちの第2段排水流路出口18bから排出される排水は、第2段排水流路出口18bに対面するように設けられた排水衝突部材2に衝突し、排水衝突部材2の垂直面上で液膜を形成し、流下することで気水分離器1周りの水面下に排出される。
【0035】
第2排水流路出口18bからの排水が、速度の大きい蒸気と共に気水分離器1周りに形成される炉水水面に衝突することが抑制され、気水分離器1周りでの液滴の発生が抑制される。
【0036】
また、排水衝突部材2に排水案内溝4が設けられていると、排水衝突部材2に沿った排水が促進される。また、気水分離器1周りの液滴が上昇する蒸気により運ばれる際、排水衝突部材2の上端に設けられた液滴捕獲ガイド3によりその液滴が蒸気乾燥器24へ排出されることを抑制できる。
【0037】
以上のことから、蒸気クオリティが大きくなる(蒸気速度が大きくなる)ことがあっても気水分離器1周りからのキャリーオーバーが大きくならない。
【0038】
図1及び図2には、第2段排水流路出口18bに対面するように設けられた排水衝突部材2を記載しているが、排水流路出口18が水平方向で気水分離器周りに形成される水面30より上側に開口が存在している第3段以降において、排水流路出口に対面するように排水衝突部材2を設けることで同様の作用が得られる。
【実施例2】
【0039】
第2実施例による気水分離器1は図3に示されている。この第2実施例においては、既述の第1実施例における液滴捕獲ガイド3を両面側に設けた排水衝突部材2で隣接する気水分離器1を連結している。その他の構成は第1実施例と同じである。
【0040】
第2実施例では、排水衝突部材2を隣接し合う気水分離器1同士を連結する形態で配置することで、第1実施例とは異なり、排水衝突部材2を気水分離器群の連結支持構造として利用することで、気水分離器同士の連結具を新規に採用することなく気水分離器1の振動を抑えるようにした構造が提供できる。その他の作用は第1実施例と同じである。
【実施例3】
【0041】
第3実施例による気水分離器1は図4に示されている。この第3実施例においては、既述の第1実施例におる液滴捕獲ガイド3が設けられる対象を、排水衝突部材2から隣接する気水分離器1の外筒15外壁に置き換えたものである。
【0042】
この第3実施例による気水分離器1の構造では、排水流路出口18は隣接する気水分離器1の外筒15外壁に対面するように配置され、その対面位置の上方にて、外筒15外壁の部位に、図4(b)のように、液滴捕獲ガイド3が設置される。液滴捕獲ガイド3は断面がL字型で、図4(b)のように、開口面が垂直下向きとなる下側に開放された形状を有する。
【0043】
この第3実施例では、隣接する気水分離器1の外筒15外壁を排水衝突部材2′として兼用することで、排水が外筒15外壁に衝突した際に微小液滴が発生して上昇気流に同伴される可能性があるが、液滴捕獲ガイド3で捕獲することにより蒸気乾燥器への排出を抑制できる。その他の作用は第1実施例と同じである。
【0044】
以上に説明したように、本発明の各実施例では、気液二相流に旋回力を付与するスワラー13、気液二相流が通過する内筒14、内筒14の外部を取り囲むようにして内筒14の内壁面側に分離された液膜を外部へ排出するための排水流路17を形成するための外筒15、排水流路17入口に設けたピックオフリング16、内筒14へ気液二相流を導くスタンドパイプ11、流路面積の小さい前記スタンドパイプ11と流路面積が大きい前記内筒14を接続するディフューザ12を備え、前記内筒14と前記外筒15と前記ピックオフリング16で複数段の排水流路17と排水流路出口18を形成した気水分離器1であって、外筒15の外側に、衝突面の法線方向が水平方向となる排水衝突部材2を設け、下から二段目の排水流路出口18bの位置よりも高い排水衝突部材2又は外筒15外壁(排水衝突部材2′)の部位に、断面がL字型若しくはコの字型で開口面が垂直下向きとなる液滴捕獲ガイド3を備えている。
【0045】
また、第2実施例では、前記排水衝突部材2を隣接する気水分離器1の間に配置し、その排水衝突部材2にて隣接する気水分離器1同士を連結して気水分離器群の耐振動等の強度を増してある。
【0046】
また、第1実施例や第2実施例において、さらに排水衝突部材2の排水が流下する面に排水案内溝4を幅広く蛇行させて設けた場合には、排水衝突部材2に付着した液滴を幅広く排水案内溝4に集めて集約し迅速に炉水中に戻せる。
【0047】
また、いずれの実施例でも排水衝突部材2の下端が、外筒15の外部空間に形成される炉水の水面より下側にあるので、排水衝突部材2の面に接して流下する排水がその水面に直接落下するのに比較して衝撃少なく入水するので微細液滴の泡沫が水面上の上部空間に飛散して上昇気流に同伴されることが少ない。
【0048】
いずれの実施例でも、隣接する気水分離器1に設けた排水衝突部材2或いは、その排水衝突部材2に代えて兼用する外筒15外壁(排水衝突部材2′)に対面するように排水流路出口18を配置して、複数の気水分離器1を三角格子状に配置を周到している。
【0049】
いずれの実施例も、液滴捕獲ガイド3は気水分離器1の外筒15の外側全周囲を覆うように配置するのではなく、気水分離器1の外筒15の外側空間を上昇する蒸気等の流体の通気抵抗を抑制するために、図2、図3、図4のように、気水分離器1の外周に存在する空間の一部分に限定して配置され、衝突した排水等による微細液滴の上昇気流による蒸気乾燥器24側への同伴を液滴捕獲ガイド3で抑制しながらも、気水分離器1の外周に存在する空間の通気抵抗の大幅な増加を抑制した。
【0050】
以上に述べたように、気水分離器からの排水の衝突面の法線方向が水平方向となる衝突部材を設け、衝突部材の上端に、衝突面に垂直かつ鉛直方向に平行な断面がL字型若しくはコの字型で開口面が垂直下向きとなる液滴捕獲ガイドを、気水分離器外周空間の一部分に限定して配置することで、気水分離器からの排水を排水衝突部材に沿って気水分離器周りに形成される水面下に排出することにより、気水分離器周りでの液滴の発生を抑制し、かつ、排水衝突部材の上端に設けた液滴捕獲ガイドにより液滴が蒸気乾燥器へ排出されることを抑制できるため、高蒸気クオリティにおいても気水分離器周りからのキャリーオーバーが大きくならない。また、気水分離器周りの流路の一部にのみ排水衝突部材や液滴捕獲ガイドの新規構造物を設けることにより、その流路の圧力損失の増加を抑えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、沸騰水型原子炉の原子炉圧力容器内に装備される気水分離器に利用可能性がある。
【符号の説明】
【0052】
1 気水分離器
2 排水衝突部材
2′ 排水衝突部材を兼ねる外筒
3 液滴捕獲ガイド
4 排水案内溝
11 スタンドパイプ
12 ディフューザ
13 スワラー
14 内筒
15 外筒
16 ピックオフリング
17 排水流路
18 排水流路出口
21 炉心
22 シュラウド
23 シュラウドヘッド
24 蒸気乾燥器
25 圧力容器
26 インターナルポンプ
27 主蒸気配管
28 給水ノズル
29 ダウンカマ
30 水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器内に並列配置した複数個の気水分離器で、前記原子炉圧力容器内の蒸気を前記原子炉圧力容器内の冷却水から分離する気水分離設備において、
前記気水分離器の外周に存在する空間に、前記外周の空間の一部分に限定して配置され、下側に開放された形状の液滴捕獲ガイドを有することを特徴とした気水分離設備。
【請求項2】
前記1項において、前記液滴捕獲ガイドは、前記気水分離器の外側に水平放射状方向へ配置してあることを特徴とした気水分離設備。
【請求項3】
前記2項において、前記気水分離器に板面を隣接する他の前記気水分離器側に向けて排水衝突部材を備え、
前記排水衝突部材に前記液滴捕獲ガイドを備え、
前記排水衝突部材の下部が、前記冷却水の水面下となる位置に成るように下方へ延長されていることを特徴とした気水分離設備。
【請求項4】
前記3項において、前記放射状方向へ前記排水衝突部材の板面と前記液滴捕獲ガイドが延長されて配置されていることを特徴とした気水分離設備。
【請求項5】
前記4項において、隣接し合う前記気水分離器同士を前記排水衝突部材で連結してあることを特徴とした気水分離設備。
【請求項6】
前記3項から5項のいずれか一項において、前記排水衝突部材は、前記排水衝突部材に排水案内溝を備えることを特徴とした気水分離設備。
【請求項7】
前記3項から6項のいずれか一項において、前記気水分離器を三角格子状に配置し、隣接し合う前記気水分離器の一方に設けた前記排水衝突部材に向けて、隣接し合う他方の前記気水分離器の排水流路出口からの排水が排出されるように、前記他方の前記気水分離器の排水流路出口が配置されていることを特徴とした気水分離器。
【請求項8】
前記1項又は2項において、前記液滴捕獲ガイドが、前記気水分離器の外筒の外壁に設置されていることを特徴とした気水分離設備。
【請求項9】
前記8項において、前記気水分離器を三角格子状に配置し、前記外壁の方向へ、隣接する他の前記気水分離器の排水流路出口からの排水が排出されるように、前記排水流路出口が配置されていることを特徴とした気水分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−191080(P2011−191080A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55231(P2010−55231)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】