説明

原子炉振動監視装置及びその方法

【課題】原子炉圧力容器内に傾斜して設置された炉内構造物に対しても振動の測定を可能とする原子炉振動監視装置及びその方法を提供する。
【解決手段】原子炉振動監視装置は、原子炉圧力容器3の外側面に設置され原子炉内の炉内構造物に超音波パルスを入射する送信用超音波トランスジューサ1と、送信用超音波トランスジューサ1と電気的に接続され送信信号を送信する超音波送信器6と、原子炉圧力容器3の外側面に設置され反射した反射超音波パルスを受信して受信した反射超音波パルスを受信信号に変換する受信用超音波トランスジューサ2と、受信用超音波トランスジューサ2と電気的に接続され受信信号を受信する超音波受信器7と、超音波送信器6と電気的に接続され超音波送信器に信号を入力しかつ超音波受信器7と電気的に接続され超音波受信器7から信号を受信して処理する信号処理装置8と、信号処理装置8により処理された振動情報を表示する表示装置9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉の炉内構造物の振動を監視する原子炉振動監視装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子炉の炉内構造物の健全性を確認する手段として、炉内構造物の振動振幅や振動周波数を測定し、その値や傾向を評価する手法がある。この炉内構造物の振動を測定する手法としては、振動センサを炉内に設置し、信号ケーブルによって信号を炉外に取り出す手法が一般的である。
【0003】
しかし、この手法は、信号ケーブルを原子炉の内外に引き回す必要があり、測定準備作業が膨大になる。
【0004】
これに対し、超音波式振動測定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この超音波式振動測定装置は、原子炉圧力容器の外側に超音波センサを設置し、超音波パルスを原子炉圧力容器を介して炉内に伝播させる。炉内に伝播した超音波パルスは、シュラウドやジェットポンプのような炉内構造物に当たって反射する。反射した超音波パルスは、再び、原子炉圧力容器を介して超音波センサに戻ってくる。
【0006】
シュラウド等の炉内構造物が振動すれば、戻ってきた反射超音波パルスは、これらの振動により、伝播時間が多少変化する。この超音波パルスの伝播時間の変化をΔt(sec)とすれば、以下の(1)式が示すように、シュラウド等の炉内構造物の振動振幅L(m)は計算される。
【数1】

【0007】
ここに、炉水の音速度をC(m/sec)とする。
【0008】
このΔLを時系列的にプロットすることにより、シュラウド等の炉内構造物の振動波形を合成することができる。
【特許文献1】特許第3782559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来の原子炉振動監視装置及びその方法においては、使用する超音波センサは、超音波の送受信が兼用であるために、例えば、ジェットポンプのように原子炉圧力容器に対して傾斜して設置されているような場合には、超音波パルスはジェットポンプに当たって斜めに反射してしまうので、反射超音波パルスは超音波発信位置に戻らず、反射超音波パルスを受信できなくなってしまい、炉内構造物の振動が測定できないという課題があった。
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、原子炉圧力容器内に傾斜して設置された炉内構造物に対しても振動の測定を可能とする原子炉振動監視装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の原子炉振動監視装置においては、原子炉圧力容器の外側面に設置され送信信号を超音波パルス信号に変換し原子炉内の炉内構造物に超音波パルスを入射する送信用超音波トランスジューサと、この送信用超音波トランスジューサと電気的に接続され前記送信信号を送信する超音波送信器と、前記原子炉圧力容器の外側面に設置され前記炉内構造物で反射した反射超音波パルスを受信して受信した前記反射超音波パルスを受信信号に変換する受信用超音波トランスジューサと、この受信用超音波トランスジューサと電気的に接続され前記受信信号を受信する超音波受信器と、前記超音波送信器と電気的に接続され前記超音波送信器に信号を入力しかつ前記超音波受信器と電気的に接続され前記超音波受信器から信号を受信して処理する信号処理装置と、この信号処理装置により処理された前記炉内構造物の振動情報を表示する表示装置とを有することを特徴とするものである。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明の原子炉振動監視方法においては、原子炉圧力容器の外側面に設置された送信用超音波トランスジューサで原子炉内の炉内構造物に超音波パルスを入射し、前記原子炉圧力容器の外側面に設置された受信用超音波トランスジューサで前記炉内構造物で反射した反射超音波パルスを受信し、受信した反射超音波パルスの信号を処理して前記炉内構造物の振動を測定することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の原子炉振動監視装置及びその方法によれば、送信用超音波トランスジューサと受信用超音波トランスジューサを用いて、炉内構造物が原子炉圧力容器に対して傾いている場合でも、炉内構造物からの反射超音波パルスを受信できるので、炉内構造物の振動を測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る原子炉振動監視装置及びその方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態の原子炉振動監視装置の概略構成を示す構成図である。
【0016】
まず、原子炉振動監視装置の基本構成について、図1を用いて説明する。
【0017】
本図に示すように、送信用超音波トランスジューサ1及び受信用超音波トランスジューサ2は、原子炉圧力容器3の外側面に設置されている。この送信用超音波トランスジューサ1は、ケーブル4aを介して、原子炉格納容器5の原子炉格納容器信号取出口5aを経由して原子炉格納容器5の外側又は原子炉格納容器5の内側に設置された超音波送信器6に電気的に接続されている。
【0018】
同様に、受信用超音波トランスジューサ2は、ケーブル4bを介して、原子炉格納容器5の原子炉格納容器信号取出口5aを経由して原子炉格納容器5の外側又は原子炉格納容器5の内側に設置された超音波受信器7に電気的に接続されている。
【0019】
この超音波送信器6及び超音波受信器7は、信号処理装置8に電気的に接続されている。信号処理装置8は、表示装置9に電気的に接続され、信号処理装置8によって計測された振動波形や振動のスペクトル等を表示する。
【0020】
図2は、図1の超音波信号の伝播状態を示す説明図である。
【0021】
本図に示すように、信号処理装置8からトリガパルスが超音波送信器6に入力される。超音波送信器6により、送信用超音波トランスジューサ1に電気パルス信号10が付加されると、超音波トランスジューサ1内おいて電気パルス信号10が超音波信号に変換され、原子炉圧力容器3内において超音波パルス11が発生する。
【0022】
この超音波パルス11は、原子炉圧力容器3内を伝播し、炉水12中に放射される。この炉水12中を伝播した入射超音波パルス13は、例えば、ジェットポンプ等の炉内構造物14に入射されて反射する。入射超音波パルス13が入射された炉内構造物14の表面が原子炉圧力容器3に対して傾斜しているときには、反射超音波パルス15は、反射の法則により炉内構造物14の傾斜角度に応じた方向に傾斜して伝播することになる。
【0023】
この傾斜して伝播した反射超音波パルス15は、炉水12と原子炉圧力容器3の境界に到達したときに、屈折によりさらに大きな傾斜角度で、原子炉圧力容器3内を伝播する反射超音波パルス16となる。
【0024】
上記受信用超音波トランスジューサ2は、予め求めておいた反射超音波パルス16の到達点に設置しておき、反射超音波パルス16を検出する。このようにして検出された超音波パルス16は、受信用超音波トランスジューサ2内において電気パルス信号に変換される。この電気パルス信号を超音波受信器7において信号の増幅及びフィルタリング等の信号処理が行われる。
【0025】
さらに、超音波受信器7の信号は、例えば、マイクロコンピュータや周波数復調器(FM復調器、FM:Frequency Modulation)で構成される信号処理装置8でディジタル信号に変換され、この信号処理によって振動情報が得られる。
【0026】
そして、信号処理装置8により処理された炉内構造物14の振動情報が表示装置9に表示される。この表示装置9において、この入力された振動振幅波形、振動の周波数応答、振動振幅や振動位相の変化傾向(トレンド)が表示される。
【0027】
このように構成された本実施の形態において、まず、図3に基づいて超音波パルス信号により振動を測定する方法を説明する。
【0028】
図3は、図1の反射超音波信号を利用して振動測定を行なう方法を示す説明図である。
【0029】
本図に示すように、使用する超音波パルスは、電気パルス信号10としてDCパルス信号が用いられる。送信用超音波トランスジューサ1からの超音波パルス11が、原子炉圧力容器3を経由して炉水12中に入射超音波パルス13として照射される。この照射された入射超音波パルス13は、炉内構造物14に入射されて反射する。
【0030】
炉内構造物14が原子炉圧力容器3に対しθ(度)傾斜しているときには、反射した反射超音波パルス15は2θ(度)の方向へ伝播することになる。この反射超音波パルス15が、炉水12と原子炉圧力容器3の境界に到達したときには、超音波パルスが斜めに伝播していること及び炉水12と原子炉圧力容器3の音速度の相違により、超音波パルス16がさらに屈折する。
【0031】
すなわち、反射超音波パルス15が原子炉圧力容器3内を伝播する屈折角度α(度)は、スネルの法則により、以下の(2)式が示すように計算される。
【数2】

【0032】
ここに、炉水12中の超音波音速度をCwater(m/sec)、原子炉圧力容器3中の超音波音速度をCvessel(m/sec)とする。
【0033】
ここで、(2)式から分かるように、屈折角度α(度)は、炉水の音速度によって決まる。この炉水の音速度は、炉水の温度に依存する。
【0034】
上述ように、屈折角度α(度)で原子炉圧力容器3内を伝播した超音波パルスは、受信用超音波トランスジューサ2によって受信される。感度良く超音波エコーを受信するためには、炉水の温度によっては、受信用超音波トランスジューサ2の位置を調整する必要がある。超音波技術便便覧(日刊工業新聞社、改訂4版、第1202頁〜第1203頁)に記載があるように、25℃での音速度はCwater=1,497(m/sec)であるが、287.8℃での音速度はCwater=980(m/sec)となる。圧力容器中の音速度をCvessel=6,000(m/sec)とし、例えば、θ=1度とすれば、25℃のときの伝播角度α(25)=8度、287.8℃のときの伝播角度α(287.8)=12.3°と計算される。例えば、原子炉圧力容器3の板厚を160mmとすれば、炉水が25℃から287.8℃に上昇したときには、160mm×tan(8度)−160mm×tan(12.3度)=−12.4mmとなり、受信用超音波トランスジューサ2の最適な受信位置が約12mm変化する。
【0035】
非破壊検査便覧[新版](日本非破壊検査協会編、昭和53年4月、第458頁〜第459頁)や新非破壊検査便覧((社)日本非破壊検査協会編、1992年10月、第458頁〜第459頁)に記載があるように、2つの超音波トランスジューサを使用して、板厚計測や欠陥検出を行なう超音波探傷方法は広く使用されている。これらの例では、2つの超音波トランスジューサの位置は、原子炉圧力容器3の板厚Dだけを考慮している。しかし、炉内構造物14からの超音波エコーを最適な位置で受信するため、本実施の形態においては、炉水の温度を考慮して受信用超音波トランスジューサ2の位置を調整している。
【0036】
送信用超音波トランスジューサ1から送信される超音波パルスである電気パルス信号10に対して、受信用超音波トランスジューサ2において超音波パルス17a、17bが検出される。
【0037】
図4は、図1の送信される超音波パルス信号と受信される超音波パルス信号を示す説明図で、(a)はその送信用超音波トランスジューサ1から送信される超音波パルスである電気パルス信号10のタイミングチャート、(b)はその受信用超音波トランスジューサ2において受信される超音波パルス17aのタイミングチャート、(c)はその受信用超音波トランスジューサ2において受信される超音波パルス17bのタイミングチャートである。
【0038】
炉内構造物14が振動している場合は、受信された超音波パルス信号17a、17bの検出される時間は、炉内構造物の振動振幅に比例して変動する。図3の実線で示すように、炉内構造物14が振動していないときの伝播時間をT(秒)とすると、以下の(3)式が示すように、この伝播時間Tは計算される。
【数3】

【0039】
また、図3の破線で示すように、炉内構造物14が振動して振動振幅がΔLのときは、Lは(L+ΔL)となる。超音波パルスの伝搬時間Tの変化分をΔtとすると、以下の(4)式が示すように、この伝播時間Δtは計算される。
【数4】

【0040】
従って、以下の(5)式が示すように、振動振幅ΔLは計算される。
【数5】

【0041】
よって、図1で示す信号処理装置8において伝播時間の変化分Δtを測定すれば、振動振幅ΔLを測定することができる。
【0042】
ここで、超音波パルス信号10を発生させる時間間隔をT(秒)とすると、その時間間隔T(秒)毎に離散的に振動振幅を測定することができる。
【0043】
図5は、図1の離散的な振動振幅の測定値から実際の振動波形を再構成する方法を示す説明図である。本図に示すように、離散的な信号を得ることができる。
【0044】
周波数f(Hz)の振動信号を再生するために、サンプリング定理を使用する。以下の(6)式が示すように、超音波パルス信号を発生させる時間間隔T(秒)より周波数f(Hz)を求めることができる。
【数6】

【0045】
例えば、100Hzの振動振幅を再生するためには、200Hz(T=50msec)間隔で超音波を発生させればよいことになる。
【0046】
本実施の形態によれば、送信用超音波トランスジューサ1と受信用超音波トランスジューサ2を用いて、炉内構造物14が原子炉圧力容器3に対して傾いている場合でも、炉内構造物14からの反射超音波パルス17a、17bを受信できるので、炉内構造物14の振動を測定できる。
【0047】
図6は、本発明の第2の実施の形態の原子炉振動監視装置の概略構成を示す構成図であり、図7は、図6の送信RFパルスと受信RFパルスの時間関係及び周波数関係を示す説明図で、(a)はその送信用超音波トランスジューサから送信される送信RFパルスのタイミングチャート、(b)はその受信用超音波トランスジューサにおいて受信される受信RFパルスのタイミングチャートである。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0048】
図6、図7(a)に示すように、超音波送信器6から発生する超音波パルス信号としてRF(無線周波数)パルス信号18が使用される。すなわち、超音波トランスジューサ1に図7(a)に示すRFパルス信号18が入力されると、その結果として発生する入射超音波RFパルス19もRFパルス信号となる。このときのRFパルス信号の搬送波(キャリア)の周波数をf(Hz)とする。このRFパルス信号が炉水12中を伝播し、炉内構造物14に当たって反射し、炉水12と原子炉圧力容器3の境界で屈折し、受信用超音波トランスジューサ2で受信される。
【0049】
この受信された受信RFパルス信号20は、図4に示すように送信される超音波パルス信号および受信される超音波パルス信号と同様に、伝播時間Tまたは(T+Δt)の時間間隔で観測される。炉内構造物14の振動によって、反射RFパルス信号はドップラシフトを起こすため、反射するRFパルス信号の周波数は変化している。
【0050】
炉内構造物14の振動速度をV(m/sec)とすれば、以下の(7)式が示すように、この場合の周波数変化量Δf(Hz)を求めることができる。
【数7】

【0051】
ここに、Cwater(m/sec)は、炉水12の超音波音速度であり、θ(度)は、図6に示した原子炉圧力容器3と炉内構造物14との間の傾斜角度である。
【0052】
周波数変化量Δfの測定方法は、例えば、図6に示す信号処理装置8内において、周波数復調回路を使用して測定される。(7)式において、周波数変化量Δfを測定すれば、振動速度V(m/sec)を逆算することができる。この場合においても振動速度は離散的に測定されるので、図5に示した方法と同様に、測定値を信号処理装置8に取り込み、サンプリング定理を利用して振動速度波形を合成する。このデータを利用することにより、振動振幅波形や振動の加速度波形に変換され、これらが表示装置9に表示される。
【0053】
本実施形態によれば、第1の実施の形態で用いたDCパルス信号10の代わりに、RFパルス信号18を使用することにより、炉内構造物14の振動に伴って発生する超音波パルス信号のドップラシフトを検出することができ、振動振幅及び振動速度を同時に測定することができ、測定精度の向上を図ることができる。
【0054】
図8は、本発明の第3の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のVIIIb‐VIIIb矢視方向を切断して上方から見た構成図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0055】
図8に示すように、炉内構造物14は円で示してある。送信用超音波トランスジューサ1は原子炉圧力容器3の外側面を周方向に移動して、炉内構造物14に超音波パルスが照射される場所を変更している。この変更に伴って、受信用超音波トランスジューサ2の位置も移動する。
【0056】
本実施形態によれば、炉内構造物14の表面が曲面であっても炉内構造物14の振動を測定できる。また、振動の測定箇所を移動して、移動前の炉内構造物14の振動波形と移動後の振動波形を使用することにより、炉内構造物14の振動現象を詳細に測定することができる。
【0057】
図9は、本発明の第4の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のIXb‐IXb矢視方向を切断して上方から見た構成図である。
【0058】
図9に示すように、炉内構造物14は円で示してある。送信用超音波トランスジューサ1の超音波パルス入射角度をβからγに変え、炉内構造物14に超音波パルスが照射する場所を変更する。この変更に伴って、受信用超音波トランスジューサ2の受信角度をβからγに変更している。
【0059】
本実施形態によれば、超音波パルス入射角度をβからγに変えることにより、送信用超音波トランスジューサ1及び受信用超音波トランスジューサ2の位置を移動することなく、振動の測定箇所を変更することができる。また、入射角度及び受信角度の変更前の炉内構造物14の振動波形と入射角度及び受信角度の変更後の振動波形を用いることにより、炉内構造物14の振動現象を詳細に測定することができる。
【0060】
図10は、本発明の第5の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のXb‐Xb矢視方向を切断して上方から見た構成図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0061】
図10に示すように、炉内構造物14は円で示してある。送信用超音波トランスジューサ1の位置を変更し、炉内構造物14に超音波パルスが照射する場所を変更する。この変更に伴って、受信用超音波トランスジューサ2を移動せずに受信角度をβからγに変更している。
【0062】
本実施形態によれば、受信用超音波トランスジューサ2を移動せずに振動の測定箇所を変更することができる。また、炉内構造物14の変更前の振動波形と変更後の振動波形を使用することにより、炉内構造物14の振動現象を詳細に測定することができる。
【0063】
図11は、本発明の第6の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のXIb‐XIb矢視方向を切断して上方から見た構成図である。図1と同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0064】
図11に示すように、炉内構造物14は円で示してある。送信用超音波トランスジューサ1の超音波を移動しないで超音波パルス入射角度をβからγに変え、炉内構造物14に超音波パルスが照射する場所を変更する。この変更に伴って、受信用超音波トランスジューサ2の位置を変更し、超音波の受信位置を変更している。
【0065】
本実施形態によれば、送信用超音波トランスジューサ1を移動しないで振動の測定箇所を変更することができる。また、炉内構造物14の変更前の振動波形と変更後の振動波形を使用することにより、炉内構造物14の振動現象を詳細に測定することができる。
【0066】
図12は、本発明の第7の実施の形態の原子炉振動監視装置を示す説明図で、(a)は炉内構造物の固有振動数の表示方法を示す特性図、(b)はしきい値の設定方法を示す特性図である。
【0067】
図12(a)に示すように、信号処理装置8により処理された炉内構造物14の振動情報の周波数分析を行い、固有振動周波数ΔFを求め、図12(b)に示すように、表示装置9において炉内構造物14の固有振動周波数ΔFの経時変化を表示させている。
【0068】
本実施形態によれば、測定した振動信号に基づいて固有振動周波数ΔFの経時変化を表示することができるので、異常振動の把握が容易になり、炉内構造物の信頼性を向上させることができる。
【0069】
以上本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述したような各実施の形態に何ら限定されるものではなく、各実施の形態の構成を組み合わせて、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態の原子炉振動監視装置の概略構成を示す構成図。
【図2】図1の超音波信号の伝播状態を示す説明図。
【図3】図1の反射超音波信号を利用して振動測定を行なう方法を示す説明図。
【図4】図1の送信される超音波パルス信号と受信される超音波パルス信号を示す説明図で、(a)はその送信用超音波トランスジューサから送信される超音波パルスのタイミングチャート、(b)はその受信用超音波トランスジューサにおいて受信される超音波パルスのタイミングチャート、(c)はその受信用超音波トランスジューサにおいて受信される他の超音波パルスのタイミングチャート。
【図5】図1の離散的な振動振幅の測定値から実際の振動波形を再構成する方法を示す説明図。
【図6】本発明の第2の実施の形態の原子炉振動監視装置の概略構成を示す構成図。
【図7】図6の送信RFパルスと受信RFパルスの時間関係及び周波数関係を示す説明図で、(a)はその送信用超音波トランスジューサから送信される送信RFパルスのタイミングチャート、(b)はその受信用超音波トランスジューサにおいて受信される受信RFパルスのタイミングチャート。
【図8】本発明の第3の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のVIIIb‐VIIIb矢視方向を切断して上方から見た構成図。
【図9】本発明の第4の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のIXb‐IXb矢視方向を切断して上方から見た構成図。
【図10】本発明の第5の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のXb‐Xb矢視方向を切断して上方から見た構成図。
【図11】本発明の第6の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)はその原子炉圧力容器と炉内構造物との関係図、(b)は(a)のXIb‐XIb矢視方向を切断して上方から見た構成図。
【図12】本発明の第7の実施の形態の原子炉振動監視装置の構成を示す説明図で、(a)は炉内構造物の固有振動数の表示方法を示す特性図、(b)はしきい値の設定方法を示す特性図。
【符号の説明】
【0071】
1…送信用超音波トランスジューサ、2…受信用超音波トランスジューサ、3…原子炉圧力容器、4a…ケーブル、4b…ケーブル、5…原子炉格納容器、5a…原子炉格納容器信号取出口、6…超音波送信器、7…超音波受信器、8…信号処理装置、9…表示装置、10…電気パルス信号、11…超音波パルス、12…炉水、13…入射超音波パルス、14…炉内構造物、15…反射超音波パルス、16…反射超音波パルス、17a、17b…超音波パルス、18…RFパルス信号、19…入射超音波RFパルス、20…受信RF超音波パルス、α…屈折角度、β,γ…超音波パルスの入射角度又は受信角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の外側面に設置され送信信号を超音波パルス信号に変換し原子炉内の炉内構造物に超音波パルスを入射する送信用超音波トランスジューサと、
この送信用超音波トランスジューサと電気的に接続され前記送信信号を送信する超音波送信器と、
前記原子炉圧力容器の外側面に設置され前記炉内構造物で反射した反射超音波パルスを受信して受信した前記反射超音波パルスを受信信号に変換する受信用超音波トランスジューサと、
この受信用超音波トランスジューサと電気的に接続され前記受信信号を受信する超音波受信器と、
前記超音波送信器と電気的に接続され前記超音波送信器に信号を入力しかつ前記超音波受信器と電気的に接続され前記超音波受信器から信号を受信して処理する信号処理装置と、
この信号処理装置により処理された前記炉内構造物の振動情報を表示する表示装置とを有することを特徴とする原子炉振動監視装置。
【請求項2】
前記送信信号は、無線周波数パルス信号であることを特徴とする請求項1記載の原子炉振動監視装置。
【請求項3】
前記送信用超音波トランスジューサは、超音波パルスの入射角度を変更できることを特徴とする請求項1又は2記載の原子炉振動監視装置。
【請求項4】
前記受信用超音波トランスジューサは、超音波パルスの受信角度を変更できることを特徴とする請求項1又は2記載の原子炉振動監視装置。
【請求項5】
前記送信用超音波トランスジューサは、超音波パルスの入射角度を変更でき、前記受信用超音波トランスジューサは、超音波パルスの受信角度を変更できることを特徴とする請求項1又は2記載の原子炉振動監視装置。
【請求項6】
前記信号処理装置は、受信した信号の周波数分析を行なって前記炉内構造物の固有振動周波数を算出し、前記表示装置は、この固有振動周波数の経時変化を表示することを特徴とする請求項1又は2記載の原子炉振動監視装置。
【請求項7】
原子炉圧力容器の外側面に設置された送信用超音波トランスジューサで原子炉内の炉内構造物に超音波パルスを入射し、
前記原子炉圧力容器の外側面に設置された受信用超音波トランスジューサで前記炉内構造物で反射した反射超音波パルスを受信し、
受信した反射超音波パルスの信号を処理して前記炉内構造物の振動を測定することを特徴とする原子炉振動監視方法。
【請求項8】
前記送信用超音波トランスジューサの位置及び前記受信用超音波トランスジューサの超音波受信角度を変更し、前記炉内構造物に入射される超音波パルスの位置を変えて振動測定箇所を変更することを特徴とする請求項7記載の原子炉振動監視方法。
【請求項9】
前記送信用超音波トランスジューサの超音波入射角度及び前記受信用超音波トランスジューサの位置を変更し、前記炉内構造物に入射される超音波パルスの位置を変えて振動測定箇所を変更することを特徴とする請求項7記載の原子炉振動監視方法。
【請求項10】
前記送信用超音波トランスジューサの位置及び前記受信用超音波トランスジューサの位置を変更し、前記炉内構造物に入射される超音波パルスの位置を変えて振動測定箇所を変更することを特徴とする請求項7記載の原子炉振動監視方法。
【請求項11】
前記送信用超音波トランスジューサの超音波入射角度及び前記受信用超音波トランスジューサの超音波受信角度を変更して、前記炉内構造物に入射される超音波パルスの位置を変えて振動測定箇所を変更することを特徴とする請求項7記載の原子炉振動監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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