説明

原子炉格納設備

【課題】可燃性ガスの濃度を短時間に低減できる原子炉格納設備を提供する。
【解決手段】2次PCV15で覆われた1次PCV3は、内部にドライウエル6、及び内側圧力抑制プール8及び内側ウエットウエル9を有する第1圧力抑制室7を形成する。1次PCV3と2次PCV15の間には、仕切り床17の下方及び上方に第2圧力抑制室16及び機器設置エリア20が形成される。第2圧力抑制室16が内側圧力抑制プール8に連通する外側圧力抑制プール25及びウエットウエル9に連通する外側ウエットウエル26を有する。破裂板19で封鎖された、外側ウエットウエル26と機器設置エリア20を連絡する複数の開口部18が、仕切り床17に形成される。機器設置エリア20の容積は各ウエットウエルの容積の合計の75%以上120%以下である。複数の触媒式可燃性ガス処理装置27が機器設置エリア20内に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納設備に係わり、特に、沸騰水型原子力プラントに適用するのに好適な原子炉格納設備に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントでは、原子炉圧力容器を覆っている1次原子炉格納容器、1次原子炉格納容器を覆っている鋼製の2次原子炉格納容器、及び2次原子炉格納容器を取り囲む外部容器を有する原子炉格納設備を備えている。
【0003】
この原子炉格納設備の例が、特開2004−85234号公報に記載されている。特開2004−85234号公報に記載された自然放熱型の原子炉格納設備は、1次原子炉格納容器、1次原子炉格納容器を覆っている鋼製の2次原子炉格納容器、及びコンクリート製の外部容器を有する。1次原子炉格納容器は、耐圧機能を有するコンクリート部、及びコンクリート部の内面を覆って気密機能を有するライナを有する。1次原子炉格納容器内には、ダイヤフラムフロアで隔離されたドライウエル及び圧力抑制室が形成されている。圧力抑制室は、圧力抑制プール、及び圧力抑制プールの冷却水の水面上方に形成されるウエットウエルを有する。原子炉圧力容器は、1次原子炉格納容器内に設置されたベデスタルに設置され、ドライウエル内に配置される。
【0004】
仕切り床が、1次原子炉格納容器及び2次原子炉格納容器に取り付けられ、ダイヤフラムフロアとほぼ同じ高さに配置されている。仕切り床の下方には、圧力抑制プールと連通するプールが形成される。このプール内にも冷却水が充填されている。仕切り床には、開口部が形成され、この開口部は破裂板(ラプチャーディスク)によって封鎖されている。機器設置エリアが仕切り床の上方で1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に形成される。
【0005】
燃料貯蔵プール、機器仮置きプール及び原子炉ウェルが、2次原子炉格納容器内で1次原子炉格納容器の上方に配置されている。運転階エリアが、燃料貯蔵プール、機器仮置きプール及び原子炉ウェルの上方で2次原子炉格納容器内に形成される。この運転階エリアは機器設置エリアに連絡されている。冷却水が充填された外周プールが、2次原子炉格納容器と外部容器の間に形成されている。
【0006】
原子炉圧力容器に接続された主蒸気配管等が破断して冷却材喪失事故が発生した場合には、ドライウエル内に主蒸気配管の破断部から高温の蒸気が放出される。この蒸気は、圧力抑制プール内の冷却水中に放出されて凝縮される。これにより、ドライウエル内の圧力上昇が低減される。圧力抑制プール内の冷却水の温度は、蒸気の凝縮により上昇するが、鋼製の2次原子炉格納容器を通して外周プール内の冷却水に伝えられる。結果的に、圧力抑制プール内の冷却水が、外周プール内の冷却水によって冷却され、温度上昇が抑制される。外周プール内の冷却水はその加熱により蒸気になり、外部容器外に放出される。
【0007】
特開2004−85234号公報に記載された原子炉格納設備では、圧力抑制室内の、圧力抑制プールの冷却水液面上方の非凝縮性ガスが溜まっているウエットウエルの圧力が設定圧力以上に上昇した場合には、仕切り床に設けられた破裂板が破裂し、ウエットウエル内のガスが機器設置エリア及び運転階エリアに放出される。このガスの放出によって、ウエットウエル内の圧力上昇が抑制される。
【0008】
特開平8−334585号公報も、自然放熱型の原子炉格納設備を記載している。この原子炉格納設備も、特開2004−85234号公報に記載された原子炉格納設備と同様に、1次原子炉格納容器、1次原子炉格納容器を覆っている鋼製の2次原子炉格納容器、及びコンクリート製の外部容器を有する。特開平8−334585号公報に記載された原子炉格納設備は、特開2004−85234号公報のように仕切り床を設けていないが、1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に形成されて、ウエットウエル内のガス空間と運転階エリアを連絡する通路内で、燃料貯蔵プールの底部の位置に破裂板を設け、この破裂板より上方で1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に、水素反応設備を設置している。
【0009】
原子力プラントでは、発生確率が非常に小さい過酷事故が発生しても原子炉格納設備による安全性の確保が要求されている。過酷事故が発生した場合には、原子炉圧力容器内の炉心に装荷された燃料集合体に含まれる燃料棒の被覆管を構成しているジルコニウム合金と水の反応によって多量の水素が発生する。このような多量の水素は、既設の可燃性ガス濃度制御系及び非常用ガス処理系で処理することができなくなる。このため、特開平8−334585号公報に記載された原子炉格納設備では、2次原子炉格納容器内に水素反応設備を設置している。過酷事故で発生した多量の水素が、ドライウエルから圧力抑制プール内に放出され、ウエットウエル内に蓄積される。このウエットウエル内の圧力が設定圧力を超えたとき、破裂板が破裂してガス空間内の水素ガスが1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に設置された水素反応設備内に導かれる。水素反応設備は、水素を酸素と反応させて水を生成し、水素濃度を低減させる。これにより、1次原子炉格納容器内の圧力及び水素濃度が低減される。
【0010】
原子炉格納容器のドライウエル及びウエットウエル内に可燃性ガス濃度低減装置を配置することが、特開平10−227885号公報に記載されている。この可燃性ガス濃度低減装置は、チムニ内に触媒を配置している。冷却材喪失事故が発生したとき、水素及び酸素を含む蒸気が破断箇所から原子炉格納容器のドライウエル内に放出される。水素及び酸素はチムニ内に流入し触媒の作用によって結合されて水になる。このように、可燃性ガス濃度低減装置によってドライウエル内の可燃性ガス(水素)の濃度が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−85234号公報
【特許文献2】特開平8−334585号公報
【特許文献3】特開平10−227885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特開平8−334585号公報に記載された原子炉格納設備では、過酷事故時に発生した多量の水素は、破裂板の破裂によって水素反応設備に導かれて酸素と結合して水を生成する。このように、発生した水素が処理されて水素濃度が低減される。
【0013】
しかしながら、発明者は、特開平8−334585号公報に記載された原子炉格納設備を詳細に検討した結果、この原子炉格納設備では、水素反応設備が2次原子炉格納容器内の狭い空間に設置されているため、水素濃度の低減に時間を要するという新たな課題が存在することを発見した。
【0014】
本発明の目的は、可燃性ガスの濃度を短時間に低減することができる原子炉格納設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、1次原子炉格納容器内に形成された第1圧力抑制室が、冷却水が充填される第1圧力抑制プール、及び第1圧力抑制プールの冷却水の水面より上方に形成される第1空間領域を有し、
1次原子炉格納容器とこの1次原子炉格納容器を覆う2次原子炉格納容器の間に配置された仕切り床が1次原子炉格納容器及び2次原子炉格納容器に設置され、
第1圧力抑制プールと連通して冷却水が充填される第2圧力抑制プール、及び第2圧力抑制プールの冷却水の水面より上方に形成され、第1空間領域に連通された第2空間領域を有する第2圧力抑制室が、仕切り床の下方で1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に形成され、
機器設置エリアが、仕切り床の上方で1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に形成され、
破裂板によって封鎖されてこの破裂板が破裂したとき第2空間領域と機器設置エリアを連絡する複数の開口部が、仕切り床に形成され、
複数の可燃性ガス処理装置が機器設置エリアに連絡され、
機器設置エリア内の空間の容積が、第1空間領域の容積及び第2空間領域の容積を合計した容積の75%以上120%以下の範囲にあることにある。
【0016】
機器設置エリア内の空間の容積が、第1空間領域の容積及び第2空間領域の容積を合計した容積の75%以上120%以下の範囲にあり、この機器設置エリアに連絡される複数の可燃性ガス処理装置を設けることによって、事故時にドライウエル内に蒸気と共に放出された水素をそれらの可燃性ガス処理装置によって効率良く処理することができる。このため、1次原子炉格納容器に放出された水素の濃度を短時間に低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、事故時に1次原子炉格納容器内に放出される可燃性ガスの濃度を短時間に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好適な一実施例である原子炉格納設備の縦断面図である。
【図2】図1に示す触媒式可燃性ガス処理装置の拡大縦断面図である。
【図3】触媒式可燃性ガス処理装置を設置していない原子炉格納設備において、過酷事故時における各部での圧力の時間変化を示す特性図である。
【図4】触媒式可燃性ガス処理装置を設置していない原子炉格納設備において、過酷事故時における各部での水素ガス濃度の時間変化を示す特性図である。
【図5】触媒式可燃性ガス処理装置を設置した原子炉格納設備において、触媒式可燃性ガス処理装置の設置位置及び基数を変えた場合での、過酷事故時における各部での水素ガス濃度の時間変化を示す特性図である。
【図6】触媒式可燃性ガス処理装置を設置した原子炉格納設備において、触媒式可燃性ガス処理装置の設置位置による各部での水素ガス重量の時間変化を示す特性図である。
【図7】触媒式可燃性ガス処理装置を設置した原子炉格納設備において、触媒式可燃性ガス処理装置の設置位置を変えたときにおける、水素ガス処理量の時間変化を示す特性図である。
【図8】触媒式可燃性ガス処理装置を設置した原子炉格納設備において、機器設置エリアの容積を変えたときにおける、水素ガス処理量の時間変化を示す特性図である。
【図9】触媒式可燃性ガス処理装置を設置した原子炉格納設備において、機器設置エリアの容積を変えたときにおける、機器設置エリアの水素濃度の時間変化を示す特性図である。
【図10】触媒式可燃性ガス処理装置を設置した原子炉格納設備において、破裂板の破裂後の経過時間をパラメータにしたときにおける、水素ガス処理量の、機器設置エリアの容積による影響を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特開平8−334585号公報に記載された原子炉格納設備では、水素反応設備が、前述したように、1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に形成されて、ウエットウエルと運転階エリアを連絡する通路内に設置されている。水素反応設備が設置された領域は、1次原子炉格納容器が2次原子炉格納容器の近くまで迫っており、非常に狭い領域になっている。発明者らは、このように狭い領域に水素反応設備を設置したのでは、その領域内の水素が水素反応設備により処理されてその領域内の水素濃度が低下して、その領域内の水素が少なくなり過ぎるので、ウエットウエル内の水素濃度が高い状態であっても、水素反応設備による水素の処理効率が低下するとの新たな課題の発生を見出したのである。このため、1次原子炉格納容器内の水素濃度の低減に長時間を要することになる。
【0020】
そこで、発明者らは、特開2004−85234号公報に記載された原子炉格納設備において、仕切り床上方の機器設置エリア内に可燃性ガス処理装置を設置すれば良いとの考えを思い付いた。そして、発明者らは、機器設置エリア内に設置した触媒式可燃性ガス処理装置による可燃性ガスである水素の処理について検討した。この検討結果を以下に説明する。
【0021】
機器設置エリアに触媒式可燃性ガス処理装置を設置しない場合におけるウエットウエル、機器設置エリア及び運転階エリアのそれぞれの圧力の、破裂板の破裂時点からの時間経過に伴う変化を図3に示す。過酷事故の発生により上昇したウエットウエル内の圧力は、破裂板が破裂した後に減少し、その破裂時点から約15分が経過した後では、その減少度合いが低下する。機器設置エリア及び運転階エリア内の各圧力は、ウエットウエル内の圧力の低下に伴って上昇する。機器設置エリア及び運転階エリア内の各圧力は、同じように変化し、同じ値を示している。単に、ウエットウエルと称した場合は、1次原子炉格納容器内に形成された第1圧力抑制室内の、第1圧力抑制プールの冷却水の水面より上方に形成される第1空間領域(後述の実施例における内側ウエットウエル9)、及び1次原子炉格納容器とこの1次原子炉格納容器を覆う2次原子炉格納容器の間に形成された第2圧力抑制室内の、第2圧力抑制プールの冷却水の水面より上方に形成された第2空間領域(後述の実施例における外側ウエットウエル26)の両者を合せた領域を意味する。
【0022】
機器設置エリアに触媒式可燃性ガス処理装置を設置しない場合におけるウエットウエル、機器設置エリア及び運転階エリアのそれぞれの水素濃度の、破裂板の破裂時点からの時間経過に伴う変化を図4に示す。過酷事故の発生によりウエットウエル内の水素濃度は高い状態になっている。破裂板が破裂した後、ウエットウエル内の水素濃度が減少する。機器設置エリア及び運転階エリア内の各水素濃度は、破裂板の破裂後に上昇する。機器設置エリア内の水素濃度の上昇度合いは、運転階エリア内の水素濃度のそれよりも大きくなっている。すなわち、破裂板の破裂前では0であった、機器設置エリアおよび運転階エリアのそれぞれの水素濃度が破裂板の破裂に伴い増大し、これに対して、ウエットウエルの水素濃度が低下している。ウエットウエルから放出された水素が直接流入する機器設置エリアの水素濃度の上昇が顕著であり、運転階エリアの水素濃度の4〜5倍の増加となっている。これは、水素が蓄積されていたウエットウエルから放出された水素濃度の高い混合気体が機器設置エリアに直接流入するためであり、さらには、機器設置エリアでの水素ガスの希釈の度合いが小さいためである。この状態は、破裂した破裂板を通して機器設置エリアに水素ガスが流入する間、維持される。この間、機器設置エリアの水素濃度が運転階エリアの水素濃度よりも高くなる。
【0023】
図3及び図4は、過酷事故時の圧力及び水素濃度の挙動についての解析結果を示している。解析の対象とした過酷事故は、主蒸気管の破断及び炉心内への注水の失敗を想定した。なお、この解析では、機器設置エリア内の空間の容積(機器設置エリア内の全容積から機器設置エリアに設置された機器及び配管の容積を差し引いた容積)を、ウエットウエルの容積の113%としている。これらの解析は、解析コードとして、原子力プラントの過酷事故を評価するMAAPコードを用いて行った。MAAPコードは、“http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g21206bj.pdf“等の文献に紹介されている。後述の図5から図10に示された解析結果も、MAAPコードを用いて得られたものである。ウエットウエルの容積とは、上記した第1圧力抑制室内の、第1圧力抑制プールの冷却水の水面より上方に形成される第1空間領域(後述の実施例における内側ウエットウエル9)の容積、及び上記した第2圧力抑制室内の、第2圧力抑制プールの冷却水の水面より上方に形成された第2空間領域(後述の実施例における外側ウエットウエル26)の容積を合計した容積である。
【0024】
発明者らは、触媒式可燃性ガス処理装置を仕切り床より上方で1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間に配置した場合における1次原子炉格納容器と2次原子炉格納容器の間での水素濃度の、破裂板が破裂した後における変化を、MAAPコードを用いて解析した。この解析結果を図5に示す。この解析結果は、2基の触媒式可燃性ガス処理装置を機器設置エリア内に配置した第1ケース、及び1基の触媒式可燃性ガス処理装置を機器設置エリア内に配置し、1基の触媒式可燃性ガス処理装置を運転階エリア内に配置した第2ケースについて示している。なお、第1ケース及び第2ケースにおけるウエットウエル、機器設置エリア及び運転階エリアのそれぞれの圧力の変化は、図3と同じである。これは、触媒式可燃性ガス処理装置による水素の処理量が、空気及び水蒸気を含む全ガス量に対して相対的に微量であるからである。
【0025】
図5に示す解析結果と図4に示す解析結果を比較したとき、図5から明らかであるように、触媒式可燃性ガス処理装置を設置したエリアでの水素濃度が低下している。機器設置エリアの水素濃度は、第1及び第2ケース共、運転階エリアの水素濃度より高い状態が維持される。ウエットウエル及び運転階エリアのそれぞれの水素濃度の変化は、第1ケース及び第2ケースで実質的に同じである。また、機器設置エリアの水素濃度は、第2ケースよりも第1ケースで低くなっている。なお、原子力プラントの運転時には、ウエットウエルには窒素ガス、及び機器設置エリア及び運転階エリアには空気が存在する。上記したウエットウエル、機器設置エリア及び運転階エリアの各水素濃度は、破裂板の破裂後において、それぞれの領域に存在する気体(例えば、窒素ガス、空気)を考慮したときの水素の濃度である。
【0026】
図5に示された2ケース、すなわち、第1及び第2ケースのそれぞれについて、各エリアに存在する水素ガスの重量の、破裂板の破裂時点からの時間経過に伴う変化を図6に示す。なお、図6における水素ガス重量は、破裂板の破裂前にウエットウエルに存在した水素ガスの重量で規格化している。機器設置エリアでは、第1ケースの水素ガス重量が第2ケースの水素ガス重量よりも小さくなっている。運転階エリアでは、第2ケースの水素ガス重量が第1ケースの水素ガス重量よりも小さくなっている。
【0027】
第1及び第2ケースについて、触媒式可燃性ガス処理装置による水素の処理量を図7に示す。図7に示す水素の処理量は、図6と同様に、破裂板の破裂前にウエットウエルに存在した水素ガス重量で規格化している。図7に示された各特性によれば、どちらのケースも2基の触媒式可燃性ガス処理装置を使用しているにもかかわらず、2基の触媒式可燃性ガス処理装置を機器設置エリアに設置している第1ケースでの水素の処理量が、1基の触媒式可燃性ガス処理装置を機器設置エリアに設置している第2ケースのそれよりも約70%大きくなる。これは、ウエットウエルからの水素ガスが破裂板の破裂によって機器設置エリアに直接放出されるため、機器設置エリアの水素濃度が高くなり、運転階エリアよりも機器設置エリアに設置された触媒式可燃性ガス処理装置による水素処理効率が高くなるのである。このことから、可燃性ガスである水素を処理する触媒式可燃性ガス処理装置を、1次原子炉格納容器内に形成された、高濃度の水素ガスが蓄積されているウエットウエルから水素ガスが直接放出される機器設置エリアに設置することによって、水素の処理効率を高めることができる。換言すれば、破裂板の破裂後に高い水素濃度が保持される機器設置エリアに触媒式可燃性ガス処理装置を設置することによって、水素の処理効率を向上させることができる。この結果、触媒式可燃性ガス処理装置の設置基数を低減することが可能である。
【0028】
機器設置エリアの容積が触媒式可燃性ガス処理装置の水素の処理効率に与える影響を、図8を用いて説明する。図8には、機器設置エリア内に形成された空間の容積(機器設置エリアの全容積から、機器設置エリア内に配置された機器及び配管の容積を除いた容積)をウエットウエルの容積で規格化した値で、113%のケース(以下、ケースAという)及び13%のケース(以下、ケースBという)の2ケースについて、機器設置エリアに2基の触媒式可燃性ガス処理装置を設置した状態でのそれぞれの水素ガスの処理量を示している。この水素ガスの処理量は、図7と同様に、破裂板の破裂前にウエットウエルに存在した水素ガス重量で規格化している。図8に示された特性に基づいて、機器設置エリア内に形成された空間の容積がウエットウエルの容積の113%であるケースAの場合には、その空間の容積の13%であるケースBの場合に比べて、水素ガスの処理量が100%以上大きくなることが分かった。
【0029】
図8に示された2つのケースのそれぞれにおける機器設置エリアの水素濃度の時間経過に伴う変化を図9に示す。機器設置エリアの水素濃度は、ケースBよりも機器設置エリア内の空間容積がウエットウエル容積の113%であるケースAのほうが高くなる。これは、機器設置エリア内に形成された空間の容積が小さい場合には、破裂板の破裂によってウエットウエルから機器設置エリアに放出された可燃性ガスが空間内に存在する絶対量が相対的に小さく触媒式可燃性ガス処理装置により処理され水素濃度低減の効果が相対的に大きくなり、機器設置エリアの水素濃度が低下するためである。このように水素濃度が低くなるため、機器設置エリア内の空間容積が小さい場合に水素ガスの処理効率が低下する。この結果、触媒式可燃性ガス処理装置の水素ガス処理効率を高くするためには、ウエットウエルから可燃性ガスが最初に放出される空間の有効容積を大きくする必要がある。
【0030】
ウエットウエルから破裂板の破裂によって最初に可燃性ガスが放出される空間である機器設置エリア内に形成された空間の容積に対する水素ガス処理量の依存性を図10に示す。図10における機器設置エリア及び水素処理量は、前述したように、規格化した値を使用している。図10には、破裂板の破裂時点から15分及び30分のそれぞれのケースに対する特性が記載されている。各ケース共、機器設置エリア内の空間の容積が大きくなるにつれて水素の処理量は増加する。しかしながら、ウエットウエルの容積で規格化された、機器設置エリア内の空間の容積が75%以上では、水素の処理量の増加度合いが飽和傾向となる。これは、ウエットウエルの容積に対する機器設置エリア内の空間の容積の割合が75%よりも小さい領域では、機器設置エリア内の空間の容積に対して触媒式可燃性ガス処理装置で処理された水素ガス量が無視できず、機器設置エリア内の水素濃度が低下するが、ウエットウエルの容積に対する機器設置エリア内の空間の容積の割合が75%以上の領域では水素処理量がその空間内の水素濃度に及ぼす影響が小さくなるためである。このため、破裂板の破裂時点でウエットウエルから最初に可燃性ガスが放出される空間である機器設置エリア内の空間の容積をウエットウエルの容積の75%以上にすることによって、破裂板の破裂時点以降の機器設置エリア内の空間の水素濃度を高くすることができ、機器設置エリア内に設置した触媒式可燃性ガス処理装置による水素の処理効率を向上させることができる。この結果、2次原子炉格納容器内に設置される触媒式可燃性ガス処理装置の基数を低減できる。
【0031】
また、ウエットウエルの容積に対する機器設置エリア内の空間の容積の割合が120%を超えた場合には、機器設置エリア内での水素の処理量が低下する。このため、ウエットウエルの容積に対する機器設置エリア内の空間の容積の割合は、120%以下にすることが望ましい。この場合、破裂板開放後の該空間の水素濃度を高くすることができ、設置した触媒式処理機(反応器)の処理能力を最大能力の95%以上を維持可能であることがわかる。その結果、空間容積が過少あるいは過大である場合に比べて処理量が大きく維持でき、可燃性ガス処理系である触媒式反応器の数を低減可能である。
【0032】
以上に述べた検討結果を考慮した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0033】
本発明の好適な一実施例である、原子力プラントに用いられる原子炉格納設備を、図1を用いて説明する。本実施例の原子炉格納設備1は、1次原子炉格納容器3、2次原子炉格納容器15及び複数の触媒式可燃性ガス処理装置27を備えている。1次原子炉格納容器3は、上蓋4を含んでおり、コンクリートマット34上に設置される。1次原子炉格納容器3が、コンクリートマット34上に設置された鋼製の2次原子炉格納容器15内に配置される。2次原子炉格納容器15が、コンクリートマット34上に設置された鉄筋コンクリート製の外部容器33内に配置される。
【0034】
ペデスタル11が、1次原子炉格納容器3内に配置され、コンクリートマット34上に設置される。原子炉圧力容器2がペデスタル11上に設置される。円筒状のγ線遮へい体5が,原子炉圧力容器2を取り囲んでおり、ペデスタル11上に設置される。環状のダイヤフラムフロア10の外周部が1次原子炉格納容器3の内面に設置され、ダイヤフラムフロア10の内周部がペデスタル11に設置される。
【0035】
ドライウエル6と第1圧力抑制室7がダイヤフラムフロア10によって隔離されている。ドライウエル6はダイヤフラムフロア10の上方に配置され、環状の第1圧力抑制室7がダイヤフラムフロア10の下方に配置されてペデスタル11を取り囲んでいる。原子炉圧力容器2がドライウエル6内に配置される。冷却水を充填した内側圧力抑制プール(第1圧力抑制プール)8、及び内側圧力抑制プール8の冷却水の水面よりも上方の空間である内側ウエットウエル(第1空間領域)9が、第1圧力抑制室7内に形成されている。複数のベント通路12がペデスタル11内に形成され、ペデスタル11の周方向に所定の間隔を置いて配置される。各ベント通路12の上端がドライウエル6に開放され、各ベント通路12の下端部が内側圧力抑制プール8の冷却水中に開放されている。
【0036】
主蒸気配管37及び給水配管38が原子炉圧力容器2に接続される。主蒸気配管37は、1次原子炉格納容器3、2次原子炉格納容器15及び外部容器33を貫通してタービン(図示せず)に接続される。給水配管38は、1次原子炉格納容器3、2次原子炉格納容器15及び外部容器33を貫通して、タービンから排気される蒸気を凝縮する復水器(図示せず)に接続される。
【0037】
1次原子炉格納容器3は、ABWRで用いられている鉄筋コンクリート製格納容器(RCCV)であり、コンクリートマット34上に設置される円筒部と、円筒部の上端部に設けられて天井部を形成するトップスラブを有する。上蓋4はトップスラブに取り外し可能に設置される。
【0038】
原子炉ウェル22、燃料貯蔵プール23及び機器仮置きプール24が、1次原子炉格納容器3に設けられ、1次原子炉格納容器3の上方に配置される。原子炉ウェル22が原子炉圧力容器3の真上に配置され、燃料貯蔵プール23及び機器仮置きプール24が原子炉ウェル22の両脇に配置されている。
【0039】
環状の仕切り床17が、燃料貯蔵プール23の底面よりも下方で1次原子炉格納容器3と2次原子炉格納容器15の間に配置される。仕切り床17の内周部が1次原子炉格納容器3の外面に設置され、仕切り床17の外周部が2次原子炉格納容器15の内面に設置される。環状の第2圧力抑制室16が、仕切り床17よりも下方で1次原子炉格納容器3と2次原子炉格納容器15の間に形成され、1次原子炉格納容器3を取り囲んでいる。第2圧力抑制室16内には、冷却水が充填された環状の外側圧力抑制プール(第2圧力抑制プール)25、及び外側圧力抑制プール25の冷却水の水面よりも上方に存在する環状の外側ウエットウエル(第2空間領域)26が形成されている。内側圧力抑制プール8と外側圧力抑制プール25は、1次原子炉格納容器3の円筒部に形成された複数の連通孔13によって連絡されている。内側ウエットウエル9と外側ウエットウエル26は、複数の連通孔14によって連絡されている。
【0040】
機器設置エリア20が、仕切り床17よりも上方で1次原子炉格納容器3と2次原子炉格納容器15の間に形成されており、1次原子炉格納容器の円筒部を取り囲んでいる。機器設置エリア20内に形成された空間の容積は内側ウエットウエル9及び外側ウエットウエル26のそれぞれの容積を合計した容積(以下、ウエットウエル容積という)の容積の113%になっている。機器設置エリア20内に形成された空間とは、機器設置エリア20内に設置された機器(例えば、触媒式可燃性ガス処理装置27)及び配管を除外した、機器設置エリア20内の空間であり、空気が存在している空間である。運転階エリア21が、原子炉ウェル22、燃料貯蔵プール23及び機器仮置きプール24の上方で2次原子炉格納容器15内に形成される。運転階エリア21の床面を形成する運転床(図示せず)が、2次原子炉格納容器15内に形成されている。原子炉ウェル22、燃料貯蔵プール23及び機器仮置きプール24のそれぞれの上端部は、運転床によって取り囲まれている。運転床は円形の横断面を有している。運転床の側面と2次原子炉格納容器15の内面の間には、環状間隙39が形成される。なお、この環状隙間39は、機器設置エリア20と運転階エリア21を連絡すればよいので、環状でなく周方向において何箇所か存在する通路にしてもよい。機器設置エリア20と運転階エリア21は環状間隙39によって連絡される。燃料貯蔵プール23及び機器仮置きプール24が、1次原子炉格納容器3の円筒部の外面よりも外側に張り出しているので、環状間隙39の内面の直径が1次原子炉格納容器3の円筒部の外面の直径よりも大きくなっている。
【0041】
環状の仕切り床17を貫通する複数の開口部18が仕切り床17に形成されている。破裂板19が、開口部18内に配置され、仕切り床17に設置されている。開口部8は、通常状態において破裂板19によって封鎖されており、破裂板19が破裂したときに機器設置エリア20と外側ウエットウエル26を連絡する。破裂板19は、0.42MPaの圧力で破裂するように構成されている。
【0042】
複数の触媒式可燃性ガス処理装置27が、図1に示すように、機器設置エリア20内に設置される。それぞれの触媒式可燃性ガス処理装置27は、別々に、各開口部18の真上に配置されている。
【0043】
触媒式可燃性ガス処理装置27の構成を、図2を用いて詳細に説明する。触媒式可燃性ガス処理装置27は、横断面が例えば矩形の筒状体であるケーシング28、及び水素と酸素の結合反応を促進させる触媒が充填された触媒層29を有する。触媒層29よりも下方でケーシング28の下端部にはガス流入口30が形成され、触媒層29よりも上方でケーシング28の上端部にはガス流出口31が形成されている。触媒式可燃性ガス処理装置27は、ケーシング28の下端に取り付けられた複数(例えば、4本)の支持部材32によって、仕切り床17の上面に設置される。ガス流入口30は開口部18の真上に位置している。ガス流入口30は支持部材32の相互間を通して機器設置エリア20内の空間に連絡される。ガス流出口31もその空間に連絡される。
【0044】
原子力プラントの運転中、1次原子炉格納容器3内のドライウエル6及び内側ウエットウエル9、及び2次原子炉格納容器15内の外側ウエットウエル26には、不活性ガスである窒素ガスが充填されている。機器設置エリア20及び運転階エリア21は、原子力プラントの運転中でも作業員が出入りできるように空気雰囲気になっている。
【0045】
冷却水が充填された外周プール35が、2次原子炉格納容器15と外部容器33の間に形成され、2次原子炉格納容器15を取り囲んでいる。外周プール35は外側圧力抑制プール25を取り囲んでいる。
【0046】
原子力プラントの運転中に、1次原子炉格納容器3内で主蒸気配管37が破断したとする。原子炉圧力容器2内の圧力が低下するので、原子炉圧力容器内の高温高圧の冷却水は、蒸気になって主蒸気配管37の破断箇所からドライウエル6内に噴出する。このとき、通常であれば、原子力プラントに設けられた安全系の高圧炉心注水系が作動して炉心内に冷却水が注水され、炉心に装荷されている各燃料集合体に含まれる複数の燃料棒が冷却される。主蒸気配管37が破断して高圧炉心注水系が作動した場合は、単なる冷却材喪失事故である。しかしながら、万が一、その高圧炉心注水系が何らかの原因により作動しなかった場合には、前述した過酷事故となる。
【0047】
このような過酷事故が発生した場合には、主蒸気配管37の破断箇所からドライウエル6に噴出した蒸気は、可燃性ガスである多量の水素を含んでいる。ドライウエル6内の、水素を含む高温高圧の蒸気は、各ベント通路12を通って内側圧力抑制プール8内の冷却水中に放出される。蒸気は、その冷却水によって凝縮される。内側圧力抑制プール8内の冷却水は、蒸気を凝縮することによって温度が上昇する。内側圧力抑制プール8内の温度が上昇した冷却水は、上部に位置する連通孔13を通して外側圧力抑制プール25内に流入し、鋼製の2次原子炉格納容器15に接触する外周プール35内の冷却水によって冷却される。外周プール35内の冷却水で冷却された外側圧力抑制プール25内の冷却水は、下部に位置する連通孔13を通して内側圧力抑制プール8内に戻される。内側圧力抑制プール8内の冷却水は、このように、外周プール35内の冷却水によって冷却されるので、ベント通路12から放出される蒸気を効率良く凝縮することができる。この蒸気の凝縮によってドライウエル6内の圧力上昇が抑制される。外周プール35内の冷却水は、外側圧力抑制プール25内の冷却水によって加熱されて蒸気になる。発生したこの蒸気は、2次原子炉格納容器15と外部容器33の間に形成される環状通路36を上昇して、外部容器33の天井部に形成された開口(図示せず)から外部容器33の外部に放出される。外周プール35内の冷却水の水面が設定水位よりも低下した場合には、外周プール35内に冷却水が補給される。
【0048】
蒸気に含まれた水素は、圧力抑制プール8内の冷却水によって凝縮されないので、内側ウエットウエル9及び連通孔14を通って外側ウエットウエル26に到達する。このように、各ベント通路12によって導かれた水素は、内側ウエットウエル9及び外側ウエットウエル26内に蓄積される。水素の蓄積により、内側ウエットウエル9及び外側ウエットウエル26内の圧力が上昇する。外側ウエットウエル26内の圧力が0.42MPaまで上昇したとき、開口部18を封鎖している破裂板19が破裂する。
【0049】
外側ウエットウエル26及び内側ウエットウエル9内の窒素ガス及び水素ガスが、開口部18内を上昇し、ガス流入口30よりケーシング28内に流入する。この水素ガス等は、ケーシング28内の触媒層29に到達する。触媒槽29には、機器設置エリア20に存在する酸素を含む空気がガス流入口30より供給される。触媒槽29に流入した水素と酸素は、触媒槽29に存在する触媒の作用によって結合されて水になる。触媒槽29から排気された空気等のガスは、ケーシング28内を上昇してガス流出口31から機器設置エリア20の空間に放出される。水素と酸素の結合反応が発熱反応であるので、触媒槽29内で空気が加熱されて空気の温度が上昇する。温度が上昇した空気がケーシング28内を上昇するので、ケーシング28による煙突効果によって、機器設置エリア20の空気がガス流入口30よりケーシング28内に流入しやすくなる。このため、触媒槽29内での水素と酸素の結合反応がさらに促進される。
【0050】
開口部18を上昇した水素は、機器設置エリア20に設置された複数の触媒式可燃性ガス処理装置27によって酸素と結合されるので、効率良く水素を処理することができ、図9に示すケースAのように機器設置エリア20の水素濃度を低減することができる。機器設置エリア20で水素が効率良く処理されるので、運転階エリア21の水素濃度の上昇が抑制される。
【0051】
過酷事故が発生してから破裂板19が破裂するまでの間、ドライウエル6に放出された水素の影響により、内側ウエットウエル9及び外側ウエットウエル26内の圧力が上昇する。この圧力が0.42MPaに到達したとき、破裂板19が破裂し、内側ウエットウエル9及び外側ウエットウエル26内の圧力が、開口部18を通して、瞬時に、機器設置エリア20に開放される。この結果、図3に示すように、内側ウエットウエル9及び外側ウエットウエル26内の圧力が低下し、機器設置エリア20及び運転階エリア21の圧力が上昇し、各エリアの圧力は約0.15MPaで静定される。
【0052】
本実施例は、機器設置エリア20の空間の容積をウエットウエル容積の113%にし、この機器設置エリア20に複数の触媒式可燃性ガス処理装置27を設置しているので、破裂板19の破裂によって外側ウエットウエル26から放出された水素を効率良く処理することができる。このため、過酷事故時に1次原子炉格納容器3内に放出された水素を短時間に処理することができる。空気が存在する機器設置エリア20及び運転階エリア21のそれぞれの水素濃度の増加を抑制することができ、それらのエリアにおける水素と酸素の急激な反応を防止することができる。
【0053】
本実施例では、触媒式可燃性ガス処理装置27を、破裂板19を設置した開口部18の真上に配置しているので、破裂板19が破裂したときに開口部18を通過する水素濃度の高いガスを触媒式可燃性ガス処理装置27に導くことができるので、触媒式可燃性ガス処理装置27による水素の処理効率がさらに向上する。
【0054】
本実施例では、機器設置エリア20の空間の容積をウエットウエル容積の113%にしているが、機器設置エリア20の空間の容積をウエットウエル容積の75%以上120%以下の範囲に含まれる任意の値に設定しても、上記した各効果を得ることができる。
【0055】
各触媒式可燃性ガス処理装置27は、水平方向において開口部18の真上からずれた位置で、機器設置エリア20に配置し、仕切り床17上に設置してもよい。この場合でも、複数の触媒式可燃性ガス処理装置27が、ウエットウエル容積の113%の容積を有する機器設置エリア20に配置されているので、上記した実施例と同様に、水素の処理効率を向上させることができ、1次原子炉格納容器3内の水素を短時間に処理することができる。しかしながら、各触媒式可燃性ガス処理装置27は、水平方向において開口部18の真上からずれた位置で、機器設置エリア20に配置されているので、破裂板19が破裂した後に開口部18から機器設置エリア20内に放出された水素は、上記した実施例よりも機器設置エリア20内の空気によって希釈される。このため、上記した実施例よりも水素濃度が低下したガスが触媒槽29に導かれるので、上記した実施例に比べて水素の処理効率が低下する。
【0056】
図1に示す実施例では、機器設置エリア20内に動的機器を設けない触媒式可燃性ガス処理装置27を設置しているが、機器設置エリア20に動的機器(例えば、ブロア)を設けた供給配管を接続し、この供給配管を、外部容器33の外部に設置された触媒式可燃性ガス処理装置27のガス流入口30に接続してもよい。この構成においては、機器設置エリア20に接続された戻り配管がガス排出口31に接続される。破裂板19の破裂によって機器設置エリア20に放出された水素は、動的機器の駆動によって、機器設置エリア20内の空気と共に、供給配管を通して触媒式可燃性ガス処理装置27に導かれ、触媒式可燃性ガス処理装置27内で処理される。触媒式可燃性ガス処理装置27から排出された、水素濃度が低下したガスは、戻り配管を通して機器設置エリア20に戻される。このような実施例でも、機器設置エリア20に直接放出された水素を触媒式可燃性ガス処理装置27で処理するので、図1に示す実施例と同様に、水素の処理効率を向上させることができる。しかしながら、触媒式可燃性ガス処理装置27を外部容器33の外部に配置するその実施例では、動的機器が必要になり、配管の引き回しも必要になる。このような実施例に比べて、機器設置エリア20に触媒式可燃性ガス処理装置27を設置する図1に示す実施例は、動的機器、及び配管の引き回しが不要であり、原子炉格納設備の構成を単純化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、沸騰水型原子力プラントに適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1…原子炉格納設備、2…原子炉圧力容器、3…1次原子炉格納容器、6…ドライウエル、7…第1圧力抑制室、8…内側圧力抑制プール、9…内側ウエットウエル、10…ダイヤフラムフロア、11…ペデスタル、12…ベント通路、15…2次原子炉格納容器、16…第2圧力抑制室、17…仕切り床、18…開口部、19…破裂板、20…機器設置エリア、21…運転階エリア、25…外側圧力抑制プール、26…外側ウエットウエル、27…触媒式可燃性ガス処理装置、28…ケーシング、29…触媒層、33…外部容器、35…外周プール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器を内蔵する1次原子炉格納容器と、前記1次原子炉格納容器を覆う2次原子炉格納容器と、水素を処理する複数の可燃性ガス処理装置を備え、
前記1次原子炉格納容器が、前記原子炉圧力容器が配置されるドライウエル、及び前記ドライウエルと隔離される第1圧力抑制室を内部に形成しており、
前記第1圧力抑制室が、冷却水が充填される第1圧力抑制プール、及び前記第1圧力抑制プールの前記冷却水の水面より上方に形成される第1空間領域を有し、
前記1次原子炉格納容器と前記2次原子炉格納容器の間に配置された仕切り床が前記1次原子炉格納容器及び前記2次原子炉格納容器に設置され、
前記第1圧力抑制プールと連通して冷却水が充填される第2圧力抑制プール、及び前記他のプールの前記冷却水の水面より上方に形成され、前記第1空間領域に連通された第2空間領域を有する第2圧力抑制室が、前記仕切り床の下方で前記1次原子炉格納容器と前記2次原子炉格納容器の間に形成され、
機器設置エリアが、前記仕切り床の上方で前記1次原子炉格納容器と前記2次原子炉格納容器の間に形成され、
前記機器設置エリアに連絡された運転階エリアが、前記機器設置エリアの上方で前記1次原子炉格納容器と前記2次原子炉格納容器の間に形成され、
破裂板によって封鎖されて前記破裂板が破裂したとき前記第2空間領域と前記機器設置エリアを連絡する複数の開口部が、前記仕切り床に形成され、
前記複数の可燃性ガス処理装置が前記機器設置エリアに連絡され、
前記機器設置エリア内の空間の容積が、前記第1空間領域の容積及び前記第2空間領域の容積を合計した容積の75%以上120%以下の範囲にあることを特徴とする原子炉格納設備。
【請求項2】
前記可燃性ガス処理装置が前記開口部の真上に配置される請求項1に記載の原子炉格納設備。
【請求項3】
前記可燃性ガス処理装置が、前記機器設置エリア内に配置され、内部に触媒層を有している請求項1または2に記載の原子炉格納設備。
【請求項4】
前記2次原子炉格納容器を覆う外部容器を有し、冷却水を充填する外周プールが、前記2次原子炉格納容器と前記外部容器の間に形成されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の原子炉格納設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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