説明

原料凝集粒子粉末およびその製造方法、超電導線材およびその製造方法、ならびに超電導機器

【課題】 臨界電流が高い超電導線材の製造に有用な原料凝集粒子粉末およびその製造方法、原料凝集粒子粉末を用いた超電導線材およびその製造方法、ならびに超電導線材を含む超電導機器を提供する。
【解決手段】 Bi、Pb、Sr、CaおよびCuからなる群から選ばれる1つ以上の元素を含む酸化物または複合酸化物で形成される原料粒子1a,1bの集合物である原料粒子粉末1を二酸化炭素ガスおよび水分が除去されたドラム11内に配置する工程と、ドラム11を回転させることにより原料粒子1a,1bを凝集させて原料凝集粒子2aを形成する工程とを含む原料凝集粒子粉末の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨界電流の高い超電導線材を製造するために有用な原料凝集粒子粉末およびその製造方法に関し、またかかる原料凝集粒子粉末を用いて製造される超電導線材およびその製造方法、ならびにその超電導線材を含む超電導機器に関する。
【背景技術】
【0002】
Bi、Pb、Sr、Ca、CuおよびOを含有するBi系超電導線材は、高温酸化物超電導線材として代表的なものであり、超電導線材として広く活用されている。
【0003】
このようなBi系超電導線材は、一般に、Bi、Pb、Sr、Ca、CuおよびOを目的とする化学組成に対して化学量論的に含む原料粒子粉末を金属シースに充填し、この原料粒子粉末が充填された金属シースを塑性加工して線材を形成し、この線材を熱処理することによって製造される。ここで、塑性加工とは、原料粉末が充填された金属シースを塑性変形させて線材を形成する加工の総称であり、伸線加工、圧延加工、プレス加工などが含まれる。
【0004】
また、上記の原料粒子粉末は、Bi、Pb、Sr、CaおよびCuをそれぞれ含む酸化物または炭酸塩などを、目的とするBi系超電導体の化学組成に対応する化学量論比で配合、混合した後、焼成して得られたものを粉砕、混合して製造される。
【0005】
こうして得られた原料粒子粉末は、かさ密度が低く、平板状の粒子の集合物であるため流動性が低く、金属シースへの充填の際にタッピングが必要であり、金属シースへの原料粒子粉末の充填が不均一となり、充填量も大きくすることができなかった。
【0006】
このため、原料粉末のかさ密度および流動性を高め、金属シースに原料粒子粉末を均一に充填するとともにその充填量を増大させて、超電導電流が流れる超電導フィラメント部分の断面積を増大させることにより、臨界電流を高めるために、原料粒子凝集させた原料凝集粉粒子から構成される粉末を製造することが検討されている。
【0007】
しかし、Bi系超電導線材の製造に用いられる原料粒子粉末は、二酸化炭素ガスおよび水分などの不純物を吸着しやすく、二酸化炭素ガスおよび水分が吸着した原料粒子粉末を用いてBi系超電導線材を製造すると、原料粒子粉末を焼結して超電導体結晶を形成させても、吸着した二酸化炭素ガスおよび水分がガス化し、超電導体結晶間の結合が弱くなり、臨界電流が低い超電導線材しか得られない。
【0008】
一般的な原料凝集粒子の粉末、たとえば酸化鉄凝集粒子粉末の製造方法としては、乾式造粒方法をはじめ各種の粒子凝集方法が提案されているが(たとえば、特許文献1を参照)、Bi系超電導線材の製造に用いられる原料粒子粉末については、二酸化炭素ガスおよび水分の吸着が大きいため、臨界電流を高めるような原料粒子粉末の凝集方法が提案されていなかった。
【特許文献1】特開2001−2423号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、臨界電流が高い超電導線材の製造に有用な原料凝集粒子粉末およびその製造方法、原料凝集粒子粉末を用いた超電導線材およびその製造方法、ならびに超電導線材を含む超電導機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、Bi、Pb、Sr、CaおよびCuからなる群から選ばれる1つ以上の元素を含む酸化物または複合酸化物で形成される原料粒子の集合物である原料粒子粉末を二酸化炭素ガスおよび水分が除去されたドラム内に配置する工程と、ドラムを回転させることにより原料粒子を凝集させて原料凝集粒子を形成する工程とを含む原料凝集粒子粉末の製造方法である。
【0011】
本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造方法においては、ドラム内における二酸化炭素ガス残存濃度を10ppm未満、水分残存濃度を1ppm未満とすることができる。また、ドラムの内圧を101kPa(1気圧)以下とすることができる。
【0012】
また、本発明は、上記の製造方法により得られる原料凝集粒子粉末である。
また、本発明は、上記の原料凝集粒子粉末を金属シースに充填する工程と、原料凝集粒子粉末が充填された前記金属シースを塑性加工して線材を形成する工程と、線材を熱処理する工程とを含む超電導線材の製造方法である。
【0013】
また、本発明は、上記の製造方法により得られる超電導線材である。さらに、 本発明は、上記の超電導線材を含む超電導機器である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、臨界電流が高い超電導線材の製造に有用な原料凝集粒子粉末およびその製造方法、原料凝集粒子粉末を用いた超電導線材およびその製造方法、ならびに超電導線材を含む超電導機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造方法は、図1および図2を参照して、Bi、Pb、Sr、CaおよびCuからなる群から選ばれる1つ以上の元素を含む酸化物または複合酸化物で形成される原料粒子の混合物である原料粒子粉末1を二酸化炭素ガスおよび水分が除去されたドラム11内に配置する工程と、ドラムを回転させることにより原料粒子1a,1bを凝集させて原料凝集粒子2aを形成する工程とを含む。
【0016】
ここで、原料粒子粉末とは、Bi、Pb、Sr、CaおよびCuからなる群から選ばれる1つ以上の元素を含む酸化物または複合酸化物で形成されている原料粒子の集合物をいう。また、原料粒子粉末には、化学組成が異なる2種類以上の原料粒子が含まれていてもよい。具体的には、この原料粒子粉末には、Bi2212(Bi2Sr2CaCu28+δをいう、以下同じ)粒子、(Bi,Pb)2212((Bi,Pb)2Sr2CaCu28+δをいう、以下同じ)粒子、Bi2223(Bi2Sr2Ca2Cu310+δをいう、以下同じ)粒子、(Bi,Pb)2223((Bi,Pb)2Sr2Ca2Cu310+δをいう、以下同じ)粒子、アルカリ土類酸化物粒子、アルカリ土類銅酸化物粒子、銅酸化物粒子、Ca2PbO4粒子、(Bi,Pb)3221((Bi,Pb)3Sr2Ca2CuO10+δをいう、以下同じ)粒子、または上記の化学組成に異なる2種以上の酸化物または複合酸化物を含む粒子が含まれ得る。
【0017】
この原料粒子粉末は、Bi、Pb、Sr、CaおよびCuをそれぞれ含む酸化物または炭酸塩などを、目的とするBi系超電導体の化学組成に対応する化学量論比で配合、混合した後、焼成して得られたものを粉砕、混合して製造される。
【0018】
かかる原料粒子粉末は、直径が1μm〜4μm程度、厚さが0.1μm〜5μm程度の平板状の原料粒子から構成され、粉末のかさ密度が0.5g/cm3〜0.7g/cm3程度と低くなる。
【0019】
本発明による原料凝集粒子粉末の製造には、図1を参照して、たとえば回転造粒装置10が用いられる。この回転造粒装置10は、2つのローラ12上に1つのドラム11が載せられたものであり、ローラ12を回転させることによりドラム11を回転させて、ドラム11内に配置された原料粒子粉末1を構成する原料粒子1a,1bを互いに接触させることにより凝集させて原料凝集粒子2aを造粒することができる。
【0020】
本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造方法は、図2を参照して、上記の原料粒子粉末1を二酸化炭素ガスおよび水分が除去されたドラム11内に配置する工程を含む。原料粒子1a,1bの凝集を二酸化炭素ガスおよび水分が除去されたドラム11内において行なうことにより、粒子表面に二酸化炭素ガスおよび水分を吸着させることなく原料粒子の凝集ができる。こうして、粒子表面に二酸化炭素ガスおよび水分の吸着のない原料凝集粒子粉末が得られるため、後の超電導線材の製造工程において、二酸化炭素ガスおよび水分による超電導体結晶間の結合力低下のおそれがなく、臨界電流の高い超電導線材の製造が可能となる。
【0021】
ここで、ドラム11内に残存する二酸化炭素ガスおよび水分の濃度は、発明の目的から低ければ低いほど好ましい。ドラム11内の二酸化炭素ガス残存濃度は、10ppm未満が好ましく、1ppm以下がより好ましい。また、ドラム11内の水分残存濃度は、1ppm未満(露点温度−80℃未満)が好ましく、0.1ppm以下(露点温度−90℃以下)がより好ましい。
【0022】
また、本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造方法は、図2を参照して、ドラム1を回転させることにより原料粒子粉末1a,1bを凝集させて原料凝集粒子2aを形成する工程を含む。ここで、原料凝集粒子粉末2とは、原料粒子粉末を構成する原料粒子が凝集して形成された原料凝集粒子2a,2bの集合物をいう。
【0023】
原料粒子が凝集して原料凝集粒子を形成する機構は、以下のように考えられる。図2を参照して、ドラム11が回転することにより、原料粒子粉末1の表面付近に位置する任意の原料粒子1aは、原料粒子粉末1の表面付近を転がりながら他の原料粒子1bと接触を繰り返して、原料粒子1a,1bは、その表面エネルギーを最小にするために働く自己凝集力により凝集して原料凝集粒子2aを形成する。さらにドラム11が回転すると、上記過程を繰り返しながら、原料凝集粒子2aが大きくなる。このようにして、原料凝集粒子2a,2bの混合物である原料凝集粒子粉末2が得られる。
【0024】
ここで、原料凝集粒子粉末2は、粒径が10μm〜5mm程度の粒状の原料凝集粒子2a,2bから構成され、粉末のかさ密度が0.8g/cm3〜1.4g/cm3程度と大きく、流動性も高くなる。このため、原料凝集粒子粉末2は、タッピングを行なうことなく、金属シースに均一に充填でき、その充填量を増大することができる。原料凝集粒子粉末を金属シースに均一に充填しかつ充填量を増大することにより、超電導電流が流れる超電導フィラメントの太さを均一にしかつ超電導フィラメントの断面積を増大させ、臨界電流の高い超電導線材の製造が可能となる。
【0025】
本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造方法において、図2を参照して、ドラム11の内圧は、特に制限はないが、101kPa以下であることが好ましい。原料凝集粒子2aは、原料粒子1a,1bの自己凝集力により凝集したものであり、その凝集力が小さいため、ドラム内圧が高いと凝集した粒子が再度分離する可能性が高くなる。かかる観点から、ドラム11の内圧は、1kPa以下であることがより好ましく、1Pa以下であることがさらに好ましい。
【0026】
上記のように、本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造は、ドラムを回転させるだけの簡単な操作により行なわれるため、製造コストの低減を図ることができる。また、ドラムの耐圧が101kPa以下の簡単な装置で足りることから、設備コストの低減を図ることができる。
【0027】
また、本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造は、10℃〜30℃程度の室温雰囲気下で行うことができるため、原料粒子の物性を変化させること無く原料凝集粒子を形成することができるため、目的とする特性を有する超電導線材の製造が容易である。
【0028】
また、本発明にかかる原料凝集粒子粉末は、上記の製造方法により得られることから、金属シースに均一にかつ高密度で充填することが可能であり、臨界電流が高い超電導線材を形成するための好適な原料となる。
【0029】
また、本発明にかかる超電導線材の製造方法は、上記の原料凝集粒子粉末を金属シースに充填する工程と、原料凝集粒子粉末が充填された金属シースを塑性加工して線材を形成する工程と、線材を熱処理する工程とを含む。原料凝集粒子粉末を金属シースに充填することにより、金属シースに均一に充填するとともにその充填量を増大させて、臨界電流が高い超電導線材を作製することができる。
【0030】
また、本発明にかかる超電導機器は、上記の臨界電流が高い超電導線材を含んでいるため、優れた超電導特性を有する。ここで、超電導機器は、上記超電導線材を含むものであれば特に制限なく、超電導ケーブル、超電導コイル、超電導変圧器、超電導限流器、超電導電力貯蔵装置などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
素原料としてのBi23、PbO、SrCO3、CaCO3およびCuOの粉末を、Bi1.8Pb0.3Sr1.9Ca2.0Cu3.010+δの標準組成となるような化学量論比で配合、混合した後、101kPaの酸素および窒素の混合ガス(酸素濃度8体積%)雰囲気下、780℃で8時間焼成して得られた多結晶体を粉砕して、原材料粒子粉末を調製した。この原料粒子粉末は、かさ密度0.7g/cm3であり、直径が1μm〜4μm、厚さが0.1μm〜5μmの平板状の原料粒子の混合物であった。ここで、かさ密度(ρ)は、定量カップに一定体積V(単位cm3)の原料粒子粉末または原料凝集粒子粉末入れ、その粒子粉末の質量M(単位g)を測定して、ρ=M/Vより算出した。また、粒子の大きさの測定は、SEM(走査型電子顕微鏡)により行なった。
【0032】
次に、図2を参照して、内径(D)15cm×内長(L)34cmのドラム11内に2000gの原料粒子粉末1を配置した。次いで、ドラム11内の空気を二酸化炭素ガス濃度1ppm以下で水分濃度0.1ppm以下の乾燥空気を用いて1時間パージした後、ドラム11内の乾燥空気を真空ポンプで除去して、ドラム内圧を0.1Pa、ドラム内残存二酸化炭素ガス濃度を1ppm以下、ドラム内残存水分濃度を0.1ppm以下(露点温度−90℃以下)とした。
【0033】
次に、雰囲気温度30℃において、ドラム11を回転数57rpmで4時間回転させることにより、原料粒子1a,1bを凝集させた原料凝集粒子2a,2bの混合物である原料凝集粒子粉末2を形成させた。得られた原料凝集粒子粉末は、かさ密度が0.95g/cm3であり、粒径が10μm以上の原料凝集粒子の混合物であった。
【0034】
次に、この原料凝集粒子粉末を直径46mmの銀管に充填した後、伸線加工して、直径10mmのクラッド線材を得た。この上記クラッド線材55本を束ねて再び直径46mmの銀管に挿入し、伸線加工して、原材料粉末がフィラメント状となった多芯線材を得た。
【0035】
次に、上記多芯線材を1次圧延して、銀比1.5で55芯のフィラメントで構成された幅4.2mm、厚さ0.24mmのテープ状の銀被覆線材を得た。
【0036】
次いで、上記のテープ状銀被覆線材を、101kPaの酸素および窒素の混合ガス(酸素濃度8体積%)雰囲気下、825℃、30時間の条件で1回目の熱処理を行なって、1次の超電導線材(1次線材)を得た。なお、銀比とは、線材の横断面(幅×厚さ方向の断面)におけるフィラメント部分の面積に対する銀部分の面積の比をいう。
【0037】
次に、上記1次線材を8%の圧下率で2次圧延を行なった。なお、圧下率とは、以下の式(1)
圧下率(%)={1−(圧延後の線材の厚さ)/(圧延前の線材の厚さ)}×100 ・・・(1)
で定義されるものである。
【0038】
次いで、2次圧延後の線材を、101kPaの酸素および窒素の混合ガス(酸素濃度8体積%)雰囲気下、822℃、50時間の条件で2回目の熱処理を行ない、超電導線材(2次線材)を得た。
【0039】
得られた超電導線材の臨界電流を四端子法により、77K、0Tの条件で測定したところ、130Aと大きな値が得られた。ここで、臨界電流は、超電導線材1cm当たり1μVの電圧を発生させるときの電流と定義した。結果を表1にまとめた。ここで、表1において、粉末の断面積占有率(%)とは、図2を参照して、ドラム11の垂直方向の断面積(S0+S1)に対する原料粒子粉末の占有断面積(S1)の百分率(100×S1/(S0+S1))をいう。また、周速v(m/s)とは、図2を参照して、ドラム11の内周上における回転速度をいう。
【0040】
(実施例2〜7)
実施例1と同様にして作製した原料粒子粉末を用いて、表1に示す条件で、原料凝集粒子粉末を作製した。得られた原料凝集粒子粉末のかさ密度を、表1に示した。表1から明らかなように、本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造方法により、適正なかさ密度を有する粉末が容易に得られる。
【0041】
(比較例1)
原料粒子粉末から原料凝集粒子粉末を作製することなく、原料粒子粉末自体を銀管に充填したこと以外は、実施例1と同様にして超電導線材を作製した。得られた超電導線材の臨界電流は、100Aであった。結果を表1にまとめた。
【0042】
(比較例2)
原料粒子粉末を構成する原料粒子を湿式スプレー(噴霧乾燥)法により凝集させて原料凝集粒子を形成させたこと以外は、実施例1と同様にして超電導線材を作製した。得られた超電導線材の臨界電流は90Aであった。結果を表1にまとめた。
【0043】
ここで、湿式スプレー法とは、アルコールなどの揮発性溶媒に原料粒子粉末を分散させたスラリーを高温(たとえば、120℃〜240℃)気流中の炉内に噴霧することにより生じた液滴を瞬時に気化させ原料粒子を凝集させて得られる原料凝集粒子を回収して原料凝集粒子粉末を作製することをいう。比較例2においては、アルコールとしてエタノールに原料粒子を分散させたスラリーを140℃の窒素ガス気流中の円筒型間接加熱式炉内に噴霧し、バッグフィルタ回収方式で回収することにより、原料凝集粒子粉末を作製した。
【0044】
【表1】

【0045】
表1の実施例1においては、原料粒子粉末を構成する原料粒子を、二酸化炭素ガスおよび水分を除去したドラム内に配置し、このドラムを回転させて、原料粒子が凝集して粒状の原料凝集粒子が形成された。この原料凝集粒子から構成される原料凝集粒子粉末は、原料粒子粉末よりもかさ密度が高く(比較例1における原料粒子粉末のかさ密度は0.7g/cm3、実施例1における原料凝集粒子粉末のかさ密度は0.95g/cm3)、流動性も高いため、タッピングをすることなく金属シースに均一にかつ高密度に充填することができ、臨界電流の高い超電導線材(比較例1における超電導線材の臨界電流は100A、実施例1における超臨界電流の臨界電流は130A)を製造することができた。
【0046】
一方、表1の比較例2によると、原料粒子を湿式スプレー法により凝集させて得られた原料凝集粉末から構成される原料凝集粉末も、原料粒子粉末よりもかさ密度が高く(比較例1における原料粒子粉末のかさ密度は0.7g/cm3、実施例1における原料凝集粒子粉末のかさ密度は1.2g/cm3)、流動性が高いため、タッピングすることなく金属シースに均一にかつ高密度に充填できたが、得られた超電導線材の臨界電流は低くかった(比較例1における超電導線材の臨界電流は100A、比較例2における超臨界電流の臨界電流は90A)。
【0047】
これは、湿式スプレー法による粒子凝集方法においては、溶媒であるアルコールを気化させる際の熱によりアルコールの分解または酸化により生じる二酸化炭素ガスが原料凝集粒子に吸着して残存するため、原料凝集粒子から構成される原料凝集粒子粉末を充填した金属シースを塑性変形し熱処理により焼結して超電導線材を製造する際に、残存した二酸化炭素ガスにより超電導体結晶間の結合が弱くなり、臨界電流が低下したものと考えられる。
【0048】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明にかかる原料凝集粒子粉末の製造方法において用いられる装置の一例を示す模式図である。
【図2】図1のII方向の断面を示す模式図である。
【符号の説明】
【0050】
1 原料粒子粉末、1a,1b 原料粒子、2 原料凝集粒子粉末、2a,2b 原料凝集粒子、10 回転造粒装置、11 ドラム、12 ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bi、Pb、Sr、CaおよびCuからなる群から選ばれる1つ以上の元素を含む酸化物または複合酸化物で形成される原料粒子の集合物である原料粒子粉末を二酸化炭素ガスおよび水分が除去されたドラム内に配置する工程と、前記ドラムを回転させることにより前記原料粒子を凝集させて原料凝集粒子を形成する工程とを含む原料凝集粒子粉末の製造方法。
【請求項2】
前記ドラム内における二酸化炭素ガス残存濃度が10ppm未満、水分残存濃度が1ppm未満である請求項1に記載の原料凝集粒子粉末の製造方法。
【請求項3】
前記ドラムの内圧が101kPa以下である請求項1または請求項2に記載の原料凝集粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の製造方法により得られる原料凝集粒子粉末。
【請求項5】
請求項4に記載の原料凝集粒子粉末を金属シースに充填する工程と、前記原料凝集粒子粉末が充填された前記金属シースを塑性加工して線材を形成する工程と、前記線材を熱処理する工程とを含む超電導線材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により得られる超電導線材。
【請求項7】
請求項6に記載の超電導線材を含む超電導機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−1820(P2007−1820A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184753(P2005−184753)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】