説明

原稿搬送装置及び画像読取装置

【課題】 原稿の搬送不良を抑えるとともに、原稿を安定して搬送して良好な読取画像を得ることができる原稿搬送装置及び画像読取装置を提供することにある。
【解決手段】 給紙トレイ上の原稿を1枚に分離して給紙する給紙ローラ21及び分離部材22と、分離された原稿を搬送する搬送ローラ対23と、搬送ローラ対にて搬送される読み取り中の原稿の後端が給紙ローラ21と分離部材22のニップ部を通過するまで給紙ローラ21を停止させる第1の搬送モードと、原稿の後端が給紙ローラ21と分離部材22のニップ部を通過する前に給紙ローラ21を再駆動させて前記ニップ部を通過した後に給紙ローラ21を停止状態に戻す第2の搬送モードと、を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿を読み取る画像読取装置及びこの画像読取装置に搭載される原稿搬送装置に関するものであり、詳しくは読取手段が配置された読取位置に原稿を搬送する原稿搬送制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原稿画像を読み取る原稿読取装置として、ベルトやローラで搬送した原稿をプラテンガラス上に静止させて読取光学系を走査させて画像を読み取るようにしたもの、いわゆる原稿固定読取方式と、移動する原稿を静止させた読取光学系で原稿画像を読み取るようにしたもの、いわゆるシートスルー読取方式の二種のタイプが一般的に知られている。
【0003】
特に、後者のシートスルー読取方式は、所定の読取位置に対して原稿を移動させながら読み取るため原稿の処理時間が短く、また原稿搬送機構が簡単な構造で部品点数も少ないので低コスト化が実現できるとの利点がある。
【0004】
このシートスルー読取方式の原稿読取装置に備えられる原稿搬送装置は、原稿を載置する給紙トレイと、給紙トレイ上の原稿を繰り出すための昇降自在な繰り出しローラと、繰り出された原稿を1枚に分離して給紙する給紙ローラ及び摩擦分離部材からなる分離手段と、1枚に分離された給紙された原稿の先端が突き当って原稿の先端を整合させるとともに読取位置に送るレジストローラ対と読取位置を通過した原稿を下流に搬送する搬送ローラ対とからなる搬送手段と、原稿を排紙トレイに排紙する排紙ローラ対とを備えている。
【0005】
そして、給紙ローラは、レジストローラ対に原稿の先端を突き当てて整合した後に停止され、レジストローラ対は原稿を給紙ローラと分離部材のニップ部から引き抜きつつ搬送し、読取位置を通過させる。
【0006】
このような従来の原稿搬送装置では、原稿が読取位置の上流に配置されたローラのニップから開放された時、すなわち原稿の後端が給紙ローラと分離部材のニップ部を通過した時に搬送手段に負荷変動が生じて速度ムラが発生する。特に、長さが短い小サイズ原稿は、給紙ローラと分離部材のニップ部から引き抜かれる時点では、その先端が搬送ローラ対に未到達でレジストローラ対のみによって搬送されている。つまり、小サイズ原稿は、不安定な搬送状態での読み取り中に給紙ローラと分離部材のニップ部から引き抜かれるので、原稿の速度ムラ、原稿ブレ、原稿スキューが発生し、読み取った原稿画像に著しい歪みが発生していた。
【0007】
このような問題点を解決するものとして、例えば特許文献1がある。この特許文献1では、原稿トレイ上の原稿を前送りローラと給紙ローラで給紙する。そして、レジストローラ対に原稿の先端を突き当てて整合した後に給紙ローラを停止し、その後レジストローラ対を駆動して原稿を読取位置に供給する。その後、レジストローラ対を駆動した時点から原稿サイズ毎に定められた時間が経過した後に前送りローラと給紙ローラをレジストローラ対の原稿搬送速度(V2)よりも大きい原稿搬送速度(V1)で駆動する。これによって、給紙ローラとレジストローラ対との間で原稿に撓み(ループ)を形成し、原稿後端が給紙ローラから離れる際に生じる原稿速度の変動を原稿の撓みによって吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−15100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のものでは、一定量の撓みを形成する時間は給紙ローラを駆動させなければならず、また全てのサイズの原稿に対してレジストローラ対で送られる原稿の後端が給紙ローラと分離部材とのニップ位置を通過するまで前送りローラと給紙ローラを駆動するため、全てのサイズ原稿で重送や搬送不良を引き起こす恐れが生じる。
【0010】
本発明の目的は、原稿の搬送不良を低減するとともに原稿を安定して搬送し、良好な読取画像を得ることができる原稿搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために本発明の原稿搬送装置は、給紙ローラを停止させた状態で搬送ローラ対を駆動して、原稿の後端を給紙ローラと分離部材のニップ部を通過させる第1の搬送モードと、給紙ローラと前記搬送ローラ対とを駆動して原稿の後端を給紙ローラと分離部材のニップ部を通過させる第2の搬送モードと、を原稿の長さによって選択して実行する制御手段を設けた。
【0012】
また、本発明の画像読取装置は、搬送ローラ対を駆動して原稿を搬送させるとともに給紙ローラを停止させて給紙ローラと分離部材のニップ部を通過させる第1の搬送モードと、搬送ローラ対を駆動して原稿を搬送させるとともに給紙ローラを停止させた後に給紙ローラを搬送ローラ対の原稿搬送速度と同一な速度で再駆動して原稿を給紙ローラと分離部材のニップ部を通過させる第2の搬送モードと、を原稿の長さによって選択して実行する制御手段を設けた。
【発明の効果】
【0013】
原稿の長さによって原稿の後端が給紙ローラと分離部材のニップ部を抜ける際の給紙ローラの駆動を制御するようにしたので、原稿のサイズに応じて適切な原稿搬送が可能となり、原稿の搬送不良を抑えて良好な読取画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る原稿搬送装置及び原稿搬送装置が搭載される原稿読取装置を示す断面図である。
【図2】本発明に係る原稿搬送装置における給紙系の駆動機構を示す駆動図である。
【図3】本発明の係る繰出ローラの遅延機構を示す部分断面図である。
【図4】本発明の係る原稿搬送装置の制御ブロック図である。
【図5】本発明の係る原稿搬送装置における片面読取動作のメイン制御フローチャート図である。
【図6】本発明の係る原稿搬送装置におけるレジスト処理を示す制御フローチャート図である。
【図7】本発明の係る原稿搬送装置における第1の搬送処理を示す制御フローチャート図である。
【図8】本発明の係る原稿搬送装置における第2の搬送処理を示す制御フローチャート図である。
【図9】本発明の係る原稿搬送装置における第1の搬送処理の原稿搬送状態を示す模式図である。
【図10】本発明の係る原稿搬送装置における第1の搬送処理の原稿搬送状態を示す模式図である。
【図11】原稿搬送装置と原稿読取装置を連結するヒンジ装置のヒンジカバーを示す正面図及びヒンジカバーの取付状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る原稿搬送装置及び原稿搬送装置が搭載される原稿読取装置本体を示す断面図である。
【0016】
図1において、Aは読取装置本体Hに搭載された原稿搬送装置である。原稿搬送装置Aは、原稿読取装置本体Hの上面を覆うように配置され、ヒンジ装置14によって原稿読取装置本体1の上面に対して開閉自在に取り付けられている。
【0017】
原稿読取装置本体Hは、コンタクトガラス1を介してランプ等の光源3からの光を搬送される原稿に照射し、その反射光を複数のミラー4で反射させて集光レンズ5を介してCCD6などの読取手段により光電変換した原稿画像よみとる。すなわち、コンタクトガラス1上面が原稿読取装置本体Hの読取部を構成している。なお、原稿読取装置本体Hは原稿を載置可能な面積のコンタクトガラス2も備えており、原稿搬送装置Aを開閉してコンタクトガラス2に載置された原稿を光源3やミラー4などからなる光源ユニットを副走査方向に移動させることによってコンタクトガラス2を介して原稿の画像を読み取ることもできる。
【0018】
原稿搬送装置Aは、複数枚の原稿を載置可能な給紙トレイ10と、読み取られた原稿を収納する排紙トレイ12と、給紙トレイ20上の原稿の最上面に接して原稿を繰り出す昇降自在な繰出ローラ20と、繰り出された原稿を給紙する給紙ローラ21と、給紙ローラ21に圧接されて原稿の重送を阻止する高摩擦係数の分離部材32と、原稿の先端を突き当てて整合した後にコンタクトガラス1上に供給する一対のレジストローラ対23と、コンタクトガラス1の下流側に設けられてコンタクトガラス1を通過した原稿を搬送する一対の搬送ローラ24と、が設けられている。また、一対の搬送ローラ24の下流側には原稿を排紙トレイ12に排紙するに排紙ローラ対25が設けられている。
【0019】
そして、上述した各ローラを駆動制御することによって、給紙トレイ10上の原稿は、給紙トレイ10から排紙トレイ12に至るU字状の搬送経路を搬送される。
【0020】
次に、各ローラの駆動構成について説明すると、各ローラは正逆転自在な1つの駆動モータMTによって駆動する。また、駆動モータMTの駆動伝達機構は、複数のギヤやプーリ、プーリに巻き掛けられたタイミングベルトからなり、駆動モータMTとともに原稿搬送装置のリア側に配置されている。
【0021】
駆動伝達機構は、図9に示すように繰出ローラ20及び給紙ローラ21に駆動を伝達するための給紙系の駆動伝達機構と、レジストローラ対23の駆動ローラ及び搬送ローラ対24の駆動ローラに駆動を伝達するための搬送系の駆動伝達機構と、排紙ローラ対25の駆動ローラに駆動を伝達する排紙系の駆動伝達機構で構成されている。そして、給紙系、搬送系、排紙系の駆動伝達機構は、駆動手段としての単一の駆動モータMTに連結されている。
【0022】
図2は給紙系の駆動伝達機構を示す駆動機構図である。給紙系の駆動伝達機構は、図2に示すようにクラッチ手段としての第1の電磁クラッチCL1を備えており、この第1の電磁クラッチCL1を制御することで駆動モータMTからの駆動を繰出ローラ20及び給紙ローラ21に伝達または遮断して繰出ローラ20及び給紙ローラ21の駆動を制御する。また、搬送系の駆動伝達機構は、第2の電磁クラッチCL2を備えており、この第2の電磁クラッチCL2を制御することで駆動モータMTからの駆動をレジストローラ対23、搬送ローラ対23に伝達、遮断し、駆動をレジストローラ対23、搬送ローラ対24の駆動を制御する。排紙系の駆動伝達機構は、排紙ローラ対35に駆動モータMTの駆動が直接伝達され、駆動モータMTの正逆転駆動によって正逆転駆動する。
【0023】
繰出ローラ30のシャフト50は、図2に示すように支持ホルダ19に回転自在に支持されている。支持ホルダ19はその一端を給紙ローラ21のシャフト21aに回動自在に支持されている。また、支持ホルダ19は給紙ローラ21のシャフト21aと駆動連結されており、シャフト21aの正逆転によって支持ホルダ19が上下方向に回動するように構成されている。これによって、繰出ローラ20が原稿に接触する繰出位置と原稿から離間した待機位置に昇降する。さらに支持ホルダ19には、給紙ローラ31のシャフト21aの回転を繰出ローラ20のシャフト50に伝達する複数のギヤZ1、Z2、Z3、Z4、Z5が取り付けられている。
【0024】
ここで、繰出ローラ20には遅延機構が設けられており、給紙ローラ21が所定量駆動した後に駆動するようになっている。図3(a)、(b)は繰出ローラ20の遅延機構を示す部分断面図であり、図3(a)は繰出ローラ20に駆動が伝達されていない状態を示し、図3(b)は繰出ローラ20に駆動が伝達されている状態を示している。
【0025】
図3(a)(b)に示すように繰出ローラ20のシャフト50には伝達部材51が固定して取り付けられている。この伝達部材51にはシャフト50の延設方向に係合片52が形成されている。
【0026】
繰出ローラ20はその一端側が円筒状になっており、繰出ローラ20の内側には係合部材53がシャフト50に回転自在に取り付けられている。係合部材53には伝達部材51の係合片52が係合する係合溝54が形成されており、この係合溝54は係合片52の側部と当接する一方面54a及びこれに対向する他方面54b、さらに係合片52の先端と当接する傾斜したテーパー面54cとからなっている。また、係合部材53における係合溝54の反対側の端面には歯状のラチエット爪55が設けられており、このラチエット爪55はシャフト50の回転方向によって繰出ローラ20の歯状のラチエット溝20aに係合する。
【0027】
次に、遅延動作について説明する。図3(a)に示すように係合部材53のラチエット爪55が繰出ローラ20のラチエッチ溝20aとかみ合っていない状態から駆動モータの駆動し、給紙ローラ21のシャフト21aを原稿給紙方向に回転させると、シャフト21aの回転駆動は複数のギヤZ1〜Z5を介して繰出ローラ20のシャフト50に伝達される。そして、シャフト50の回転に伴なって伝達部材51も図3(a)に示す矢印方向に回転する。そして、伝達部材51の回転によって係合片52の先端が係合溝54の傾斜したテーパ面54cを摺動付勢し、係合部材53が繰出ローラ20のラチエット溝20a側に移動する。これによって、図3(b)に示すように係合部材53のラチエット爪55と繰出ローラ20のラチエット溝20aがかみ合い、伝達部材51の係合片52の側部が係合溝54の一方面54aに当接し、シャフト50の駆動が伝達部材51及び係合部材53を介して繰出ローラ20に伝達される。すなわち、係合溝54の一方面54aと他方面54bとの間隔に相当する回転量だけ繰出ローラ20は給紙ローラ21に対して遅延して回転する。なお、本実施の形態では遅延機構における遅延量を、後に述べる第2の搬送処理における給紙ローラ21を駆動するための設定パルス数(パルスB)に相当する量としている。
【0028】
一方、後述する原稿搬送動作において、原稿はその先端をレジストローラ対23に突き当てて整合し、その後レジストローラ対23によって原稿の搬送が開始される。このとき、遅延機構の係合部材53は図3(b)に示すように繰出ローラ20のラチエット爪20aにかみ合った状態になっている。そして、レジストローラ対23によって搬送される原稿の移動に追従して繰出ローラ20は、図3(b)に示す矢印方向に回転する。これによって、繰出ローラ20のラチエット溝20aが係合部材53を伝達部材51側に移動させつつ、ラチエット爪55とのかみ合いが外れる。このとき、係合部材53は、その係合溝54のテーパー面54cが停止した伝達部材51の係合片52の先端に当接し、テーパー面54cに沿って繰出ローラ20と同一方向(図3(b)に示す矢印方向)に回転する。つまり、係合部材53は回転しつつ移動し、係合溝54の他方面54bが伝達部材51の係合片52の側部に当接して停止する。このとき、繰出ローラ20のラチエット溝20aは係合部材53のラチエット爪55から完全に外れ、ラチエット爪55の端部に乗り上げる形で空転する。これによって、遅延機構は図3(a)に示す状態に戻され、給紙ローラ21が再び駆動を開始する際には給紙ローラ21に対して遅れて繰出ローラ20が駆動されるようになる。
【0029】
図4は、原稿搬送装置の制御系の構成を示す制御ブロック図である。図1及び図4に基づき原稿搬送装置の制御系について説明する。
【0030】
給紙トレイ10には、給紙トレイ10上に原稿が載置されたことを検出するエンプティセンサS1が配置されている。また、レジストローラ対33の手前には給紙される原稿の端部を検出するレジストセンサS2が配置され、レジストローラ対33とコンタクトガラス1の間にはリードセンサS3が配置されている。
【0031】
これらの各センサS1、S2、S3は、図4に示すように装置全体の駆動を制御するCPUが実装された制御基板(制御部)100に接続されており、各センサからの検知信号に基づいて、駆動モータMT及び第1の電磁クラッチCL1、第2の電磁クラッチCL2が制御される。
【0032】
また、給紙トレイ上には、原稿の幅方向に移動し、原稿の幅方向両端部を規制する一対の規制部材11が設けられており、給紙トレイ10上の一対の規制部材11が移動されることによってスライドボリュームVRの抵抗値が変位する。このスライドボリュームVRからの出力電圧は、制御部100に設けられたAD変換回路で10ビットのデジタルデータとしてRAMに格納される。そして、10ビットデータによって原稿の幅方向の長さが検出される。
【0033】
給紙トレイ10には原稿の給紙方向の長さを検出する第1センサS5、第2センサS6が原稿給紙方向に間隔を隔てて配置されている。そして、第1、第2センサS5、S6は、その検出された原稿長さによって幅方向の長さが異なる複数のサイズの原稿群に分類する。つまり、第1、第2センサS5、S6の両方が原稿を検出していれば、給紙トレイ10上の原稿がLG(T)、B4(T)、A3(T)、LD(T)のいずれかであると判別する。また、第2センサS6が原稿を検出せず、第1センサS5が原稿を検出していれば、給紙トレイ10上の原稿がB5(T)、LT(T)、A4(T)のいずれかであると判別する。さらに、第1、第2センサS5、S6が原稿を検出していなければ、給紙トレイ10上の原稿がST(Y)、A5(Y)、B5(Y)、A5(T)、A4(Y)、LT(Y)、ST(T)のいずれかであると判別される。
【0034】
上述したようにその幅方向が異なるサイズに分類された原稿は、一対の規制部材11の移動に伴なって出力値が変位するスライドボリュームVRの出力値によって検出された原稿の幅方向の長さ情報によって原稿サイズが特定される。なお、ROMには特定された原稿のサイズに応じた原稿の幅、長さのデータが予め格納されており、この各原稿サイズに対応したデータを実際の原稿幅や原稿長として原稿の搬送動作を制御している。
【0035】
本実施の形態では、給紙トレイ10に設けられた第1、第2センサS5、S6及びスライドボリュームVRによって原稿の幅、長さ、原稿サイズなどを検出する検出手段を設けたが、検出手段として原稿読取装置本体Hの操作パネルより入力されたサイズをサイズ情報として取得し、このサイズ情報から原稿の幅、長さ、原稿サイズなどを検出するようにしてもよい。
【0036】
次に、上記構成からなる原稿搬送装置の原稿搬送動作について説明する。図5は原稿搬送装置の制御フローチャート図である。また図6はレジスト処理を示す制御フローチャート図、図7は第1の搬送処理を示す制御フローチャート図、図8は第2の搬送処理を示す制御フローチャート図である。なお、本実施の形態の装置は、原稿の片面を読み取る片面読取モードと原稿の両面を読み取る両面読取モードとを備えるが、ここでは片面読取モードにおける片面原稿搬送動作について説明する図5、図6、図7、図8の各制御フローチャート図に基づき説明する。
【0037】
画像形成装置本体Hから給紙指令を受信すると、エンプティセンサS1の原稿検出状態、すなわち給紙トレイ10上に原稿が載置されているか否かを確認する(ST1〜ST2)。給紙トレイ10上に原稿が載置されていることが検出されると原稿サイズを特定する(ST3)。なお、ステップ3(ST3)における原稿サイズ特定処理は、前述したように原稿の幅方向の長さと原稿の給紙方向の長さから原稿のサイズを特定する。
【0038】
原稿サイズを特定されると駆動モータMTが正転駆動し、同時に第1の電磁クラッチCL1をONする(ST4〜ST5)。これによって、繰出ローラ20及び給紙ローラ21が回転駆動し、給紙トレイ10上の原稿が給紙される。そして、レジストセンサS2が原稿の先端を検出するとレジスト処理が実行される(ST6〜ST7)。
【0039】
レジスト処理は図6に示すように、先ず第2の電磁クラッチをOFFし、レジストローラ対23を停止する(ST20)。同時に駆動モータMTの駆動パルス数のカウントを開始し、パルス数が所定パルス数(パルスA)に到達すると第1の電磁クラッチCL1をOFFする(ST21〜ST22)。これによって、繰出ローラ20及び給紙ローラ21は一旦停止される。このとき、原稿の先端はレジストローラ対23のニップ部に突き当てられて撓みが形成されて原稿の先端が整合し、原稿の傾きが矯正される。
【0040】
レジスト処理(ST7)が実行された後、原稿サイズ検出処理(ST3)で検出された原稿の長さPLXが給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置から搬送ローラ対24のニップ位置までの距離LA(図9参照。)よりも長いか否かが判断される。なお、本実施の形態では原稿の長さは特定されたサイズにおける規格上の長さを原稿の長さLPXとしている。
【0041】
そして、原稿の長さLPXが距離LAよりも長ければ第1の搬送処理が実行され(ST8、ST9)、短ければ第2の搬送処理が実行される(ST8、ST10)。なお、本実施の形態では給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置から搬送ローラ対24のニップ位置までの距離LAよりも短いサイズの原稿はST(Y)、A5(Y)であり、距離LAよりも長いサイズの原稿はST(Y)、A5(Y)以外のサイズの原稿である。
【0042】
図9は、給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置P1から搬送ローラ対24のニップ位置P2までの距離LAよりも大きい長さPL1のサイズの原稿を搬送する状態を示す模式図であり、また図10(a)、(b)は給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置から搬送ローラ対24のニップ位置までの距離LAよりも小さい長さPL2のサイズの原稿を搬送する状態を示す模式図である。
【0043】
第1の搬送処理では、図7の制御フローチャートに示しように原稿の先端がレジストローラ対23のニップ部に突き当てた状態で第2の電磁クラッチCL2をONする(ST30)。これによって、レジストローラ対23、搬送ローラ対24が駆動する。このとき、第1の電磁クラッチCL1はOFFとなっているため、停止した給紙ローラ21と分離部材22のニップ部から原稿が引き抜かれつつ搬送され、コンタクトガラス1上を通過することとなる。そして、図9に示すようにレジストローラ対23、搬送ローラ対24によってニップされた状態で原稿の後端が給紙ローラ21と分離部材22によるニップ部から引き抜かれる。このように、搬送される原稿の長さが給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置P1から搬送ローラ対24のニップ位置P2までの距離LAよりも大きい長さPL1の原稿は、その後端が給紙ローラ21と分離部材22によるニップ部から引き抜かれる際にコンタクトガラス1を挟んで配置されたレジストローラ対23と搬送ローラ対24によってニップ搬送されるので、原稿の前記ニップ部から抜ける際の速度変動やばたつきが最小減に抑えられる。
【0044】
一方、第2の搬送処理では、原稿の後端が給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置を通過する際に給紙ローラ21をレジストローラ対23と等速で所定量回転させ、レジストローラ対23による原稿搬送を補助するようにしている。
【0045】
この第2の搬送処理では図8の制御フローチャートに示すように、先ず原稿の先端がレジストローラ対23のニップ部に突き当てた状態で第2の電磁クラッチCL2をONする(ST40)。これによって、レジストローラ対23、搬送ローラ対24が回転駆動し、原稿はコンタクトガラス1に向って搬送される。その後、図10(a)に示すように原稿の先端をリードセンサS3が検出すると同時に駆動モータMTの駆動パルス数のカウントを開始する。そして、パルス数が選択パルス数(パルスX)到達するまで原稿は、レジストローラ対23によって給紙ローラ21と分離部材22とのニップ位置から引き抜かれつつ搬送される。なお、このとき繰出ローラ20はレジストローラ対23で搬送される原稿の上面に接触し、原稿に追従して回転する。
【0046】
パルス数が選択パルス数(パルスX)に到達すると第1の電磁クラッチCL1をONする(ST41〜ST43)。これによって、図10(b)に示すように原稿の後端側の所定位置が給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置に到達した時点で給紙ローラ21はレジストローラ23と同一速度で原稿を送るように駆動する。そのとき繰出ローラ20は前述した遅延機構によって回転しないので、レジストローラ対23及び給紙ローラ21の駆動によって搬送される原稿の後端が繰出ローラ20の位置を通過しても繰出ローラ20が給紙トレイ10上の次原稿を繰り出すことがない。このような構成によって原稿の重送や原稿ジャムなどの搬送不良を未然に防ぐことができる。
【0047】
そして、第1の電磁クラッチCL1をONして給紙ローラ21を駆動すると同時に駆動モータMTの駆動パルス数のカウントを開始し、パルス数が設定パルス数(パルスB)に到達すると第1の電磁クラッチCL1をOFFして給紙ローラ21を停止する(ST44〜ST25)。この過程において、図10(b)に示すように原稿の後端は給紙ローラ21に送られつつ、給紙ローラ21と分離部材22のニップ部を通過する。これによって、速度変動を生じさせることなく、原稿を安定した状態で給紙ローラ21と分離部材22のニップ部を通過させることができ、原稿の前記ニップ位置から抜ける際の速度変動やばたつきが最小減に抑えられる。
【0048】
なお、上記選択パルス数(パルスX)は、原稿のサイズ毎に対応するパルス数が予めROMに記憶してあり、原稿のサイズに対応したパルス数が選択パルス数(パルスX)として設定される。選択パルス数(パルスX)に相当する距離LXは、原稿長さLP2、原稿の後端から原稿の所定位置までの距離L1、給紙ローラ21と分離部材22の圧接位置P1からリードセンサS3の原稿検出位置P3に至る距離LBとしたとき、LX=PL2−L1−LBで算出される(図10(a)参照)。また、上記設定パルス数(パルスB)は、本実施の形態において原稿の所定位置を原稿後端より5mmの位置とし、原稿の後端が給紙ローラ21と分離部材22の圧接位置に到達してから5mmに相当する送り量を駆動した後に給紙ローラ21を停止するようにしている。つまり、本実施の形態において、設定パルス数(パルスB)は10mmに相当する駆動パルス数が設定されている。
【0049】
第1の搬送処理または第2の搬送処理が実行された原稿はコンタクトガラス1の読取位置で原稿画像を読み取られた後に搬送ローラ対24、排紙ローラ対25によって排紙トレイ12に排紙される。この搬送過程で原稿の後端がレジストセンサS2で検出されるとエンプティセンサS1で給紙トレイ20上に原稿があるか否かを確認する(ST11〜ST12)。
【0050】
そして、給紙トレイ10上に原稿があれば第1の電磁クラッチCL1をONして次原稿の給紙を開始する。給紙トレイ10上に原稿がなく、搬送されている原稿が最終原稿であると認識すれば、駆動モータMTの駆動パルスのカウントを開始し、所定パルス数(パルスC)にパルス数が到達した時点で駆動モータMTを停止し、第1、第2の電磁クラッチCL1、CL2をOFFして全ての搬送動作を終了する(ST13〜ST14)。なお、上記所定パルス数(パルスC)は原稿がレジストセンサS2の位置から排紙トレイ12に確実に排紙される距離に相当する駆動パルス数である。
【0051】
ここで、原稿搬送装置Aを覆うカバー部材13のリア側にはヒンジ装置14を覆うヒンジカバー41が設けられている。このヒンジカバー41はヒンジ装置14に手やものが挟まれること、またヒンジ装置14のグリスなどが外部に散乱することを防止する。
【0052】
図11(a)はヒンジカバー41を平面状に拡げて示す展開図、図11(b)はヒンジカバー41を原稿搬送装置Aのカバー部材13に取り付けた状態を示す部分断面図である。ヒンジカバー41は弾性を有するフィルム部材からなり、図11(a)に示すように本体部41aと、図11(a)における破線に沿って本体部41aに対して折り曲げられる折曲部41bと、折曲部41bの略中央からと延びた折返部41cと、折返部41cの先端に円形状の止め部41dと、本体部41a内の一部を切り欠いた切欠部41eで形成されている。また、ヒンジカバー41の折曲部41bには両面テープ42が貼り付けられている。
【0053】
そして、図11(b)に示すようにヒンジカバー41は、両面テープ42によって折曲部41bがカバー部材13の背面に取り付けられ、取り付けられたヒンジカバー41の本体部41aがヒンジ装置14のリア側面を覆うようになっている。そして、取り付け状態において折返部41cを湾曲変形し、本体部41a側に折り返し、その先端の円形状の止め部41dを本体部41aの切欠部41eに挿入して係合している。この止め部41dと切欠部41eの係合によって本体部41aと折曲部41bとの折り曲げ角度が大きくなることが防止され、ヒンジ装置14を覆う位置に本体部41aを常に位置付けることが可能となる。
【0054】
上記の実施の形態によれば、レジストローラ対23と搬送ローラ対24の2組のローラ対で原稿を搬送していない場合には、少なくとも原稿の後端が給紙ローラ21を通過するまで給紙ローラ21を駆動し、原稿を補助搬送するようにしたので、原稿を搬送が不安定になることがなく、安定した状態で給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置を通過させることができ、原稿の前記ニップ位置から抜ける際の速度変動やばたつきが最小減に抑えられる。
【0055】
また、給紙ローラ21の原稿搬送速度をレジストローラ対23の原稿搬送速度を同一にしたので、給紙ローラが原稿を強く弾き出すことによる原稿のばたつきや給紙ローラ21とレジストローラ対23との間に撓みが形成されることによる原稿の搬送不良を未然に防ぐことができる。
【0056】
さらに、原稿の後端側の位置が給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置に到達した時点から原稿の後端がニップ位置を抜けるまでの僅かな時間だけ、給紙ローラ21による補助搬送を行うようにしたので、原稿の重送や搬送不良を防止できる。
【0057】
また、繰出ローラ20の駆動伝達系に遅延機構を設けたので、給紙ローラ21を僅かに回転駆動させても繰出ローラ20は駆動しないので、原稿の後端と次原稿の先端が重なった状態で給紙ローラ21と分離部材22のニップ位置に次原稿を繰り出すことがなく、重送や搬送不良を防止することができる。
【符号の説明】
【0058】
H 原稿読取装置
A 原稿搬送装置
1 コンタクトガラス
10 給紙トレイ
20 繰出ローラ
21 給紙ローラ
22 分離部材
23 レジストローラ対
24 搬送ローラ対
50 シャフト
51 伝達部材
52 係合片
53 係合部材
54 係合溝
S3 リードセンサ
S5 第1のセンサ
S6 第2のセンサ
VR ボリューム
MT 駆動モータ
CL1 第1の電磁クラッチ
CL2 第2の電磁クラッチ
100 制御基板(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載置する給紙トレイと、この給紙トレイ上の原稿を繰り出す繰出ローラと、繰り出された原稿を給紙する給紙ローラと、前記給紙ローラに圧接して原稿を分離する分離部材と、原稿を読み取る読取位置に1枚に分離された原稿を搬送する搬送ローラ対と、を備えた原稿搬送装置において、
原稿の長さを検出する検出手段と、原稿を搬送するために前記給紙ローラ及び搬送ローラ対の駆動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記給紙ローラを停止させた状態で前記搬送ローラ対を駆動して、原稿の後端を前記給紙ローラと前記分離部材のニップ部を通過させる第1の搬送モードと、前記給紙ローラと前記搬送ローラ対とを駆動して原稿の後端を前記給紙ローラと前記分離部材のニップ部を通過させる第2の搬送モードと、前記検出手段で検出された原稿の長さによって前記第1の搬送モードと前記第2の搬送モードのいずれかを選択する選択手段と、を有することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記給紙ローラによる原稿搬送速度と前記搬送ローラ対による原稿搬送速度を同一速度となるように前記給紙ローラ及び前記搬送ローラ対を制御することを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記読取位置の下流に配置されて前記読取位置を通過した原稿を搬送する送りローラ対を備え、前記選択手段は、原稿の長さが前記給紙ローラから前記送りローラ対に至る距離よりも長い場合は前記第1の搬送モードを選択し、原稿の長さが前記前記給紙ローラから前記送りローラに至る距離よりも短い場合は前記第2の搬送モードを選択することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記第2の搬送モードにおける前記給紙ローラは、原稿の後端側の所定位置が前記給紙ローラと前記分離部材のニップ部に到達した時点で駆動し、原稿の後端が前記給紙ローラと前記分離部材のニップ部を通過した後に停止するように駆動制御されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
前記給紙ローラを一定量回転させた後に前記繰出ローラを回転させる遅延手段を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の原稿搬送装置。
【請求項6】
前記制御手段は、停止した前記第1の搬送ローラ対に原稿の先端を突き当てて整合させた後に前記給紙ローラを停止させ、その後に前記搬送ローラを駆動し、前記第1の搬送モードまたは第2の搬送モードを実行するように原稿の搬送を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の原稿搬送装置。
【請求項7】
原稿を載置する給紙トレイと、この給紙トレイ上の原稿を繰り出す繰出ローラと、繰り出された原稿を給紙する給紙ローラと、前記給紙ローラに圧接して原稿を分離する分離部材と、原稿を読み取る読取位置に1枚に分離された原稿を搬送する搬送ローラ対と、前記読取位置を通過する原稿を読み取る読取手段と、を備えた画像読取装置において、
原稿の長さ情報を取得し、この長さ情報からシートの長さを特定する検出手段と、
前記給紙ローラ及び前記搬送ローラ対の駆動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記搬送ローラ対を駆動して原稿を搬送させるとともに前記給紙ローラを停止させて前記給紙ローラと前記分離部材のニップ部を通過させる第1の搬送モードと、
前記搬送ローラ対を駆動して原稿を搬送させるとともに前記給紙ローラを停止させた後に前記給紙ローラを前記搬送ローラ対の原稿搬送速度と同一な速度で再駆動して原稿を前記給紙ローラと前記分離部材のニップ部を通過させる第2の搬送モードと、
前記検出手段で特定された原稿の長さによって前記第1の搬送モードと前記第2の搬送モードのいずれかを選択する選択手段と、を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
前記給紙ローラを一定量回転させた後に前記繰出ローラを回転させる遅延手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−250807(P2012−250807A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124565(P2011−124565)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】