説明

参照変形体の固定具、超音波探触子、及び超音波診断装置

【課題】スクリーニングを行なった際に、参照変形体が超音波探触子の超音波送受信面からずれるのを抑制する。
【解決手段】本発明の参照変形体の下部固定具24は、超音波探触子1の超音波送受信面50の周縁に沿って枠状に形成されるとともに参照変形体16の鍔部材22の裏面に当接する挟持面28が形成された下部枠体30と、挟持面28の反対側の面から垂設され超音波探触子に係止可能な係止部32が形成された下部係合部材34とを有して構成される。上部固定具26は、参照変形体の直方体部材20の周縁に沿って枠状に形成されるとともに参照変形体の鍔部材の表面と当接する挟持面38が形成された上部枠体40と、上部枠体の端部から垂設され下部枠体に係止可能な係止部42が形成された上部係合部材44とを有して構成される。そして、下部枠体及び上部枠体の挟持面には突起36,46が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、参照変形体の固定具、超音波探触子、及び超音波診断装置に係り、特に、被検体の生体組織の硬さ又は軟らかさを示す弾性画像を生成する際に、超音波探触子の超音波送受信面に装着される参照変形体の固定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、超音波探触子により被検体内部に超音波を送信し、被検体内部から生体組織の構造に応じた超音波の反射エコー信号を受信し、例えばBモード像等の断層像を構成して診断用に表示するものである。
【0003】
近年、手動又は機械的な方法により超音波探触子で被検体を圧迫しながら超音波受信信号を計測し、計測時間が異なる2つの超音波受信信号のフレームデータに基づいて圧迫により生じた生体各部の変位を求め、その変位データに基づいて生体組織の弾性を表す弾性画像を生成することが行なわれている。
【0004】
この時、弾性率が既知である参照変形体を、超音波探触子の超音波送受信面に装着して、この参照変形体の圧迫に対する変位に基づいて、被検体に加わる圧力を求めることが知られている。特許文献1には、参照変形体を超音波探触子の超音波送受信面に装着する固定具の様々な固定機構が開示されている。
【0005】
例えば特許文献1には、参照変形体を、直方体部材とこの直方体部材の周縁に形成された鍔部材で形成し、鍔部材を上下一対の固定具で挟持するとともに、下部固定具を超音波探触子に係合させることにより、参照変形体を超音波送受信面に装着することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−259541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の参照変形体の固定技術は、スクリーニングを行なった際に、参照変形体が超音波探触子の超音波送受信面からずれることについては考慮されていないと考えられる。
【0008】
すなわち、参照変形体は例えばオイル系のゲル素材、アクリルアミドなどの水をベースとしたゲル素材、シリコンなどの軟らかい素材をベースとして形成されている。したがって、単に鍔部材を上下一対の固定具で挟持するだけだと、例えば参照変形体を被検体の体表面に当てた状態で平行移動させたり角度を変えたりしながらスクリーニングを行った際に、参照変形体が超音波送受信面からずれるおそれがある。参照変形体が大きくずれた場合には、固定具から外れてしまうおそれもある。
【0009】
そこで本発明は、スクリーニングを行なった際に、参照変形体が超音波探触子の超音波送受信面からずれるのを抑制する固定具を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明を適用してなる参照変形体の固定具は、直方体部材とこの直方体部材の周縁に形成された鍔部材とを有する参照変形体を超音波探触子の超音波送受信面に装着するものであって、参照変形体の鍔部材を両面から挟持する一対の第1及び第2の固定具を備えて構成される。第1の固定具は、超音波探触子の超音波送受信面の周縁に沿って枠状に形成されるとともに参照変形体の鍔部材の裏面に当接する挟持面が形成された第1の枠体と、この第1の枠体の挟持面の反対側の面から垂設されるとともに超音波探触子に係止可能な係止部が形成された第1の係合部材とを有して構成される。第2の固定具は、参照変形体の直方体部材の周縁に沿って枠状に形成されるとともに参照変形体の鍔部材の表面と当接する挟持面が形成された第2の枠体と、第2の枠体の端部から参照変形体の鍔部材の側面に沿って垂設されるとともに第1の枠体に係止可能な係止部が形成された第2の係合部材とを有して構成される。
【0011】
そして、第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に凹凸が形成されてなることを特徴としている。
【0012】
これによれば、参照変形体の鍔部材が挟まれて押圧される第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に凹凸が形成されているので、この凹凸が参照変形体のすべり止めの効果を奏し、スクリーニングを行なっても、参照変形体が超音波探触子の超音波送受信面からずれるのを抑制することができる。
【0013】
より具体的には、第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に突起を形成することにより凹凸を形成することができる。この場合、第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方の各辺に、互いに間隔をあけて複数の突起を形成するのが好ましい。また、第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方の各辺に互いに間隔をあけて複数の突起を形成されるとともに、複数の突起は、対向する辺について対称位置に形成するのが好ましい。
【0014】
また、参照変形体の鍔部材に穴が形成されている場合には、第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に、参照変形体の鍔部材に形成された穴に対応して柱状の突起を形成することにより凹凸を形成することができる。これによれば、参照変形体の鍔部材に形成された穴に枠体の挟持面から起立する柱状の突起が嵌まるので、参照変形体のスクリーニングに伴うずれを規制することができる。
【0015】
また、第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に、この枠体の辺に沿って突条を形成することにより凹凸を形成することができる。これによれば、スクリーニングの際の参照変形体のずれ方向に対して略直交する方向に突条が形成されるので、効果的に参照変形体のずれを抑制することができる。
【0016】
さらに、参照変形体の鍔部材の辺に沿って溝が形成されている場合、第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に、参照変形体の鍔部材の辺に沿って形成された溝に対応して、枠体の辺に沿って突条を形成することにより凹凸を形成することができる。これによれば、参照変形体の鍔部材の溝に枠体の突条がかみ合うように嵌まるので、参照変形体のスクリーニングに伴うずれを規制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、スクリーニングを行なった際に、参照変形体が超音波探触子の超音波送受信面からずれるのを抑制する固定具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
【図2】参照変形体の固定具の第1実施例を示す図である。
【図3】参照変形体の固定具の第2実施例を示す図である。
【図4】参照変形体の固定具の第3実施例を示す図である。
【図5】参照変形体の固定具の第4実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用してなる参照変形体の固定具、超音波探触子、及び超音波診断装置の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一機能部品については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0020】
図1は、本実施形態の超音波診断装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の超音波診断装置は、超音波を利用して被検体の診断部位の断層画像を得るとともに、生体組織の硬さ又は軟らかさを表す弾性画像を生成して表示するものである。
【0021】
図1に示すように、超音波診断装置100は、被検体との間で超音波を送受信する超音波探触子1と、超音波探触子1に送信パルスを供給する送信回路2と、超音波探触子で受信された反射エコー信号を受信する受信回路3と、送信回路2と受信回路3を制御する超音波送受信制御回路4と、受信回路3で受信された反射エコー信号に対して整相加算処理を行なう整相加算回路5と、整相加算回路5で整相加算されたRF信号フレームデータに対して各種信号処理を行なう信号処理部6と、白黒スキャンコンバータ7とを備えている。
【0022】
また、整相加算回路5で整相加算されたRF信号フレームデータから計測時刻の異なる一対のRF信号フレームデータを選択するRF信号フレームデータ選択部8と、一対のRF信号フレームデータに基づいて変位/歪みを演算する変位・歪み演算部9と、一対のRF信号フレームデータに基づいて被検体に加えられている圧力を演算する圧力演算部10と、演算された変位/歪み、及び圧力に基づいて弾性率を演算して弾性フレームデータを生成する弾性率演算部11と、生成された弾性フレームデータに各種処理を施す弾性データ処理部12と、カラースキャンコンバータ13と、白黒スキャンコンバータ7から出力される断層画像及びカラースキャンコンバータ13から出力される弾性画像に基づいていずれか一方を選択したり、両者を並べたり、両者を重畳したりする切替加算部14と、切替加算部14からの出力される画像を表示する画像表示器15とを備えている。
【0023】
また、超音波探触子1の超音波送受信面に装着された参照変形体16と、参照変形体16を超音波送受信面に固定する固定具17と、超音波探触子1を上下方向に移動させ、被検体を加圧する被検体圧迫機構18とを備えている。検者が手動で超音波探触子1を上下方向に移動させて被検体を圧迫する場合には、被検体圧迫機構18は不要となる。なお参照変形体16は超音波探触子1の超音波送受信面に密着されて固定されるものである。
【0024】
以下、超音波診断装置100の各構成要素の詳細を説明する。超音波探触子1は、図示は省略したがその中には超音波の発生源であるとともに反射エコーを受信する多数の振動子が短冊状に配列して内蔵されており、機械式または電子的にビーム走査を行って被検体に超音波を送信及び受信する。各振動子は、一般に、入力されるパルス波、又は連続波の送波信号を超音波に変換して発射する機能と、被検体の内部から発射する反射エコーを電気信号(反射エコー信号)に変換して出力する機能を有して形成される。
【0025】
送信回路2は、超音波探触子1を駆動して超音波を発生させるための送波パルスを生成するとともに、内蔵された送波整相加算回路によって送信される超音波の収束点をある深さに設定するものである。受信回路3は、超音波探触子1で受信した反射エコー信号を所定のゲインで増幅するものである。超音波送受信制御回路4は、送信回路2及び受信回路3を制御することにより超音波を送信及び受信するタイミングを制御するものである。受信回路3で増幅された各振動子の数に対応した数の反射エコー信号が整相加算回路5に入力される。
【0026】
整相加算回路5は、受信回路3で増幅された反射エコー信号の位相を制御し、RF信号フレームデータを形成するものである。信号処理部6は、整相加算回路5からのRF信号フレームデータを入力して、ゲイン補正、ログ補正、検波、輪郭強調、フィルタ処理等の各種信号処理を行なうものである。
【0027】
白黒スキャンコンバータ7は、信号処理部6から出力されるRF信号フレームデータを超音波周期で取得し、このRF信号フレームデータを表示するためテレビジョン方式の周期で読み出すための断層走査手段及びシステムの制御を行うための手段、例えば、信号処理部6からのRF信号フレームデータをディジタル信号に変換するA/D変換器と、このA/D変換器でディジタル化された断層画像データを時系列に記憶する複数枚のフレームメモリと、これらの動作を制御するコントローラなどを含んで構成される。
【0028】
RF信号フレームデータ選択部8は、整相加算回路5から出力されるRF信号フレームデータをRF信号フレームデータ選択部8内に備えられたフレームメモリ内に順次確保し(現在確保されたRF信号フレームデータをRF信号フレームデータNとする。)、超音波診断装置の制御命令に従って時間的に過去のRF信号フレームデータN−1、N−2、N−3・・・N−Mの中から1つのRF信号フレームデータを選択し(RF信号フレームデータXとする。)、変位・歪み演算部9に1組のRF信号フレームデータNとRF信号フレームデータXを出力する役割を担うものである。整相加算回路5から出力される信号をRF信号フレームデータと記述したが、RF信号を複素復調したI,Q信号の形式になった信号であってもよい。
【0029】
変位・歪み演算部9は、RF信号フレームデータ選択部8によって選択された1組のRF信号フレームデータに基づいて1次元又は2次元の相関処理を実行し、断層画像上の各計測点の変位又は移動ベクトル(変位の方向と大きさ)を計測し、変位フレームデータと相関フレームデータを生成し、変位フレームデータから歪みを演算するものである。歪みの演算については、例えば、その変位を空間微分することによって計算上で求めるものとする。この移動ベクトルの検出法としては、例えば、ブロック・マッチング法やグラジェント法がある。ブロック・マッチング法は、画像を例えばN×N画素からなるブロックに分け、現フレーム中の着目しているブロックにもっとも近似しているブロックを前フレームから探索し、これらを参照して符号化を行うものである。
【0030】
圧力演算部10は、RF信号フレームデータを用いて、被検体と参照変形体16との境界を検出し、検出されたRF信号フレームデータにおける境界の座標を境界座標データとする。そして、境界座標データを用いてRF信号フレームデータにおける参照変形体16からのRF信号を抽出し、被検体と参照変形体16の境界に与えられた圧力を演算により求める。
【0031】
弾性率演算部11は、変位・歪み演算部9から出力される歪み情報と、圧力演算部10から出力される圧力情報から弾性率を演算して、弾性率の数値データ(弾性フレームデータ)を生成し、弾性データ処理部12とカラースキャンコンバータ13に出力するものである。弾性率の内の一つである、例えばヤング率Ymの演算については、以下の数1式に示すように、各演算点における応力(圧力)を各演算点における歪みで除することにより求める。下記数式において、i,jの指標は、フレームデータの座標を表す。
【0032】
(数1)Ymi,j=圧力(応力)i,j/(歪みi,j) (i,j=1,2,3,…)
【0033】
弾性データ処理部12は、弾性率演算部11から算出された弾性フレームデータに座標変面内におけるスムージング処理、コントラスト最適化処理や、フレーム間における時間軸方向のスムージング処理などの様々な画像処理を行なって、カラースキャンコンバータ13に送出するようになっている。
【0034】
カラースキャンコンバータ13は、弾性データ処理部12から出力される弾性フレームデータを変換してカラーの弾性画像を生成し、切替加算部14を介して画像表示器15に表示させるようになっている。つまり、カラースキャンコンバータ13は、予め設定された弾性(変位、歪み又は弾性率)の上限値及び下限値の範囲に基づいて、弾性画像に階調化(例えば、256階調)された赤、緑、青などの色相コードを付与する。例えば、弾性フレームデータの弾性率が大きく計測された硬い領域は青色コードに変換し、逆に弾性率が小さく計測された柔らかい領域は赤色コードに変換する。なお、カラースキャンコンバータ13に代えて、白黒スキャンコンバータを用いることができる。この場合は、弾性率が大きく計測された硬い領域は輝度を明るく、逆に弾性率が小さく計測された柔らかい領域は輝度を暗くするなどにより、弾性率の分布を表すことができる。
【0035】
切替加算部14は、白黒スキャンコンバータ7から出力される白黒の断層像データと、カラースキャンコンバータ13から出力されるカラーの弾性画像データとを入力し、両画像を切り替えていずれか一方を表示させる機能と、両画像の一方を半透明にして加算合成して画像表示器15に重ねて表示させる機能と、両画像を並べて表示させる機能を有して形成されている。
【0036】
画像表示器15は、白黒スキャンコンバータ7によって得られた時系列の断層画像データと、カラースキャンコンバータ13によって得られた時系列の弾性画像を表示するものである。切替加算部14を介して白黒スキャンコンバータ7及びカラースキャンコンバータ13から出力される画像データをアナログ信号に変換するD/A変換器と、このD/A変換器からアナログビデオ信号を入力して画像として表示するカラーテレビモニタとからなる。
【0037】
被検体圧迫機構18は、モータやワイヤなどにより超音波探触子1を上下方向に移動させ、被検体を加圧するものである。なお、操作者が超音波探触子1を上下方向に手動で移動させてもよい。
【0038】
一般に、弾性画像を表示するために行なう圧迫動作は、超音波探触子1で超音波送受信を行なうとともに被検体を圧迫して診断部位の体腔内に応力分布を与える。本実施形態の超音波診断装置100では、超音波探触子1の超音波送受信面には固定具17を用いて参照変形体16が装着されており、参照変形体16を被検体の体表に接触させた状態で、被検体を圧迫する。
【0039】
ここで、超音波探触子1の超音波送受信面に参照変形体16が装着された状態で被検体を圧迫して弾性画像を生成する場合、参照変形体16を超音波送受信面にしっかりと固定することが求められる。すなわち、参照変形体は例えばオイル系のゲル素材、アクリルアミドなどの水をベースとしたゲル素材、シリコンなどの軟らかい素材をベースとして形成されている。したがって、例えば参照変形体16を被検体の体表面に当てた状態で平行移動させたり角度を変えたりしながらスクリーニングを行った際に、参照変形体16が超音波送受信面からずれるおそれがある。参照変形体が大きくずれた場合には、固定具17から外れてしまうおそれもある。
【0040】
以下、本実施形態の特徴部となる参照変形体16の固定具17について、各実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0041】
図2は、参照変形体16の固定具17の第1実施例を示す図である。まず、本実施例で用いられる参照変形体16について説明する。図2(a)は参照変形体16の斜視図である。図2(a)に示すように、参照変形体16は、直方体部材20と直方体部材20の周縁に形成された鍔部材22とを有して形成されている。なお直方体部材20と鍔部材22は一体形成されている。
【0042】
参照変形体16は、音響結合材料や音響レンズ素材などの超音波減衰が小さく、かつ、音速、音響インピーダンスが生体内のものに近いなど、生体との音響結合特性に優れ、同時に、形状復元性及び保形性にも優れた素材にて構成された材料を用いることが好ましい。例えば参照変形体16は、オイル系のゲル素材やアクリルアミドなどの水をベースとしたゲル素材、シリコンなどをベースとして形成することができる。粘性の低いアクリルアミドなど素材によって構成されていれば、圧迫操作に俊敏に応答するため圧力計測に適している。
【0043】
本実施例の固定具17は、参照変形体16の鍔部材22を両面から挟持する一対の固定具つまり第1の固定具としての下部固定具24と第2の固定具としての上部固定具26を備えて構成されている。図2(b)は下部固定具24の斜視図であり、図2(c)は上部固定具26を底面側から見た平面図である。
【0044】
図2(b)に示すように、下部固定具24は、超音波探触子1の超音波送受信面の周縁に沿って枠状に形成されるとともに、参照変形体16の鍔部材22の裏面に当接する挟持面28が形成された下部枠体30と、下部枠体30の挟持面28の反対側の面から垂設されるとともに超音波探触子に係止可能な係止部32が形成された下部係合部材34とを有して形成されている。
【0045】
また、下部枠体30の挟持面28には、複数の突起36が形成されている。突起36は、下部枠体30の挟持面28の対向する辺について対称位置に形成されている。つまり、下部枠体30の挟持面28の対向する長辺の対称位置にそれぞれ3つの突起36が形成されており、対向する短辺の対称位置にそれぞれ1つの突起36が形成されている。
【0046】
なお本実施例は、下部枠体30の長辺及び短辺のそれぞれに一対の下部係合部材34を設ける例を示しているが、これに限らず長辺と短辺のいずれかに一対の下部係合部材34を設けてもよい。要は、下部固定具24を超音波探触子1に係止可能に構成されていればよい。
【0047】
一方、図2(c)に示すように、上部固定具26は、参照変形体16の直方体部材20の周縁に沿って枠状に形成されるとともに、参照変形体16の鍔部材22の表面と当接する挟持面38が形成された上部枠体40と、上部枠体40の端部から参照変形体16の鍔部材22の側面に沿って垂設されるとともに下部枠体30に係止可能な係止部42が形成された上部係合部材44とを有して形成されている。本実施例では、上部係合部材44は、上部枠体40の長辺にそれぞれ2つずつ設けられており、短辺にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0048】
また、上部枠体40の挟持面38には、複数の突起46が形成されている。突起46は、上部枠体40の挟持面38の対向する辺について対称位置に形成されている。つまり、上部枠体40の挟持面38の対向する長辺の対称位置にそれぞれ3つの突起36が形成されており、対向する短辺の対称位置にそれぞれ1つの突起36が形成されている。
【0049】
図2(d)は、参照変形体16が下部固定具24及び上部固定具26に組み付けられた状態を示す斜視図である。図2(d)に示すように、参照変形体16の直方体部材20が上部固定具26の上部枠体40の中央の穴から出るようにセットされた状態で、下部固定具24と上部固定具26を組み付ける。これにより、参照変形体16の鍔部材22が下部固定具24及び上部固定具26の挟持面28及び38に挟まれた状態で組み付けられる。なお、上部固定具26に設けられた6箇所の上部係合部材44の係止部42を下部枠体30に引っかけることにより、下部固定具24と上部固定具26は参照変形体16を挟んで組み付けられる。
【0050】
図2(e)は、図2(d)に示した参照変形体16、下部固定具24及び上部固定具26が超音波探触子1に組みつけられた状態を示す縦断面図である。図2(e)に示すように、下部固定具24の下部係合部材34に設けられた係止部32を超音波探触子1に引っかけることにより、参照変形体16、下部固定具24及び上部固定具26が超音波探触子1に組みつけられる。このように参照変形体16、下部固定具24及び上部固定具26を超音波探触子1に組みつけることにより、参照変形体16の直方体部材20の裏面が超音波探触子の超音波送受信面50に密着するようになっている。
【0051】
本実施例によれば、参照変形体16の鍔部材22を挟んで押圧する下部枠体30及び上部枠体40の挟持面28,38に突起36,46が形成されて凹凸が形成されているので、この凹凸が参照変形体16のすべり止めの効果を奏し、スクリーニングを行なっても、参照変形体16が超音波探触子1の超音波送受信面からずれるのを抑制することができる。また、スクリーニングや圧迫を加えた場合に、参照変形体16の直方体部材20に大きな歪みを与えることなく参照変形体16の固定が可能となる。また、本実施例のように下部枠体30及び上部枠体40の挟持面28,38にまんべんなく突起36,46を形成することにより、あらゆる方向にスクリーニングを行っても参照変形体16が超音波送受信面からずれたり、固定具17から外れたりすることを防止できる。
【0052】
なお、突起36,46は、半球、円柱、多角柱、円錐台、多角錐台などの形状とすることができる。また、突起の上面を例えば波状などに形成してもよい。また、突起36,46は、下部枠体30及び上部枠体40の挟持面28,38の対応する位置に形成することもできるし、参照変形体16の鍔部材22を挟み込んだ状態において、交互に鍔部材を押圧するような位置に形成することもできる。
【0053】
また、下部枠体30及び上部枠体40の挟持面28,38のいずれか一方のみ突起を形成してもよい。また、本実施例では下部枠体30及び上部枠体40の挟持面28,38の長辺にそれぞれ3つ、短辺にそれぞれ1つの突起を形成したが、これには限られず、下部枠体30及び上部枠体40の挟持面28,38に適宜の間隔で複数の突起を形成することができる。
【0054】
また、本実施例の参照変形体16は、直方体部材20の周縁の高さ方向下端に鍔部材22を形成する例を示したが、これに限らず、直方体部材20の周縁の高さ方向中央に鍔部材22を形成することもできる。この場合、参照変形体16を超音波探触子1に組み付けた際に参照変形体16が超音波探触子1の超音波送受信面50に密接するように、下部固定具24の下部係合部材34の長さ寸法を適宜調整すればよい。
【実施例2】
【0055】
続いて、参照変形体の第2実施例について説明する。図3は、参照変形体16の固定具17の第2実施例を示す図である。本実施例は、参照変形体16の鍔部材22に複数の穴が形成されている点、下部枠体30の挟持面28に柱状の突起が形成される点、及び上部枠体40の挟持面38に凹部が形成されている点のみが第1実施例と異なるので、第1実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0056】
図3(a)に示すように、本実施例の参照変形体16は、鍔部材22に複数の穴60が形成されている。より具体的には、鍔部材22の長辺にそれぞれ3つの穴60が形成されており、短辺にそれぞれ1つの穴60が形成されている。
【0057】
一方、図3(b)に示すように、下部枠体30の挟持面28には、参照変形体16の鍔部材22に形成された穴60に対応した位置に柱状の突起62が形成されている。また、図3(c)に示すように、上部枠体40の挟持面38には、参照変形体16の鍔部材22に形成された穴60に対応した位置に凹部64が形成されている。突起62と凹部64は、オス―メスのように対になって形成されている。これにより、参照変形体16を挟んで下部固定具24と上部固定具26を組み付ける際に、参照変形体16の鍔部材22に形成された穴60に、下部枠体30の挟持面28から起立する柱状の突起62が通って嵌まるようになっている。
【0058】
本実施例によれば、参照変形体16の鍔部材22に形成された穴60に下部枠体30の挟持面28から起立する柱状の突起62が嵌まるので、あらゆる方向にスクリーニングを行っても参照変形体16のスクリーニングに伴うずれを規制することができる。その結果、参照変形体16が固定具17から外れないようにすることができる。
【0059】
なお、本実施例では、上部枠体40の挟持面38に凹部64を形成しているが、突起62の高さ寸法を短くした場合には、凹部64を形成する必要はない。また、本実施例では、下部枠体30の挟持面28に突起62を形成したが、これに限らず、上部枠体40の挟持面38に突起62を形成してもよい。また、下部枠体30の挟持面28及び上部枠体40の挟持面38の両方に突起62を形成してもよい。
【0060】
また、下部枠体30の挟持面28に突起62を形成し、上部枠体40の挟持面38に凹部64を形成することに加えて、下部枠体30の挟持面28の突起62の周囲及び上部枠体40の挟持面38の凹部64の周囲に、例えば半球などの突起を形成してもよい。突起は、半球、円柱、多角柱、円錐台、多角錐台、幾何学模様などの形状とすることができる。また、突起の上面を例えば波状などに形成してもよい。
【実施例3】
【0061】
続いて、参照変形体の第3実施例について説明する。図4は、参照変形体16の固定具17の第3実施例を示す図である。本実施例は、参照変形体16の鍔部材22の辺に沿って複数の溝が形成されている点、下部枠体30の挟持面28及び上部枠体40の挟持面38に辺に沿って複数の突条が形成されている点のみが第1実施例と異なるので、第1実施例と同様の構成については説明を省略する。
【0062】
図4(a)に示すように、本実施例の参照変形体16の鍔部材22には辺に沿って複数の溝70が形成されている。より具体的には、参照変形体16の鍔部材の表面の長辺及び短辺にそれぞれ辺に沿って3本の溝70が形成されている。なお、図4(a)には図示されていないが、参照変形体16の鍔部材22の裏面にも、表面と同様に、長辺及び短辺にそれぞれ辺に沿って3本の溝70が形成されている。
【0063】
一方、図4(b)に示すように、下部枠体30の挟持面28には、参照変形体16の鍔部材22の裏面の辺に沿って形成された溝70に対応する位置に、下部枠体30の辺に沿って複数の突条72が形成されている。また、図4(c)に示すように、上部枠体40の挟持面38には、参照変形体16の鍔部材22の表面の辺に沿って形成された溝70に対応する位置に、下部枠体30の辺に沿って複数の突条74が形成されている。
【0064】
本実施例によれば、図4(e)に示すように、参照変形体16が下部固定具24と上部固定具26に挟まれて組みつけられたときに、参照変形体16の鍔部材22の溝70と、下部枠体30の挟持面28及び上部枠体40の挟持面38に形成された突条72,74がかみ合うように挟持される。したがって、スクリーニングの際の参照変形体16のずれを規制することができる。特に、スクリーニングの際の参照変形体16のずれ方向に対して略直交する方向に溝70と突条72,74が形成されるので、効果的に参照変形体のずれを抑制することができる。
【0065】
なお、本実施例では直線状の溝70及び突条72,74を示したが、これに限らず、溝70及び突条72,74は、波線、破線、格子状、水玉、幾何学模様に形成することができる。
【実施例4】
【0066】
続いて、参照変形体の第4実施例について説明する。図5は、参照変形体16の固定具17の第4実施例を示す図である。本実施例は、変形参照体が固定具の役割も果たすように一体形成された場合の実施例である。
【0067】
図5(a)は本実施例の参照変形体の側面図である。図5(b)は参照変形体の底面図である。図5(c)は参照変形体を超音波探触子1に組み付けた状態を示す縦断面図である。図5(a)〜図5(c)に示すよう、本実施例の参照変形体は、超音波探触子1の超音波送受信面50に接する直方体部材からなる参照変形部80と、参照変形部80の周縁から超音波探触子1に沿って垂設される固定部82とを有して構成されており、固定部82の開口端には、ゴム状部84が設けられている。
【0068】
参照変形体は、直接、超音波探触子1にかぶせるように装着され、ゴム状部84によって超音波探触子1に固定される。また、図5(b),(c)に示すように、本実施例では、固定部82の超音波探触子1と接する面に、上下2段に突起86,88が形成されている。
【0069】
本実施例によれば、突起86,88が参照変形体のすべり止めの効果を奏するので、参照変形体を超音波探触子1に装着してスクリーニングを行なっても、参照変形体が超音波探触子1の超音波送受信面50からずれるのを抑制することができる。
【0070】
なお、突起は、半球、円柱、多角柱、円錐台、多角錐台、直方体や波状、幾何学模様に形成することができる。の突起であってもよい。また、突起の上面を例えば波状などに形成してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 超音波探触子
6 信号処理部
12 弾性データ処理部
15 画像表示器
16 参照変形体
17 固定具
20 直方体部材
22 鍔部材
24 下部固定具
26 上部固定具
28,38 挟持面
30 下部枠体
32,42 係止部
34 下部係合部材
36,46 突起
40 上部枠体
44 上部係合部材
50 超音波送受信面
60 穴
62 突起
64 凹部
70 溝
72,74 突条
100 超音波診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体部材と該直方体部材の周縁に形成された鍔部材とを有する参照変形体を超音波探触子の超音波送受信面に装着する固定具であって、
前記固定具は、前記参照変形体の鍔部材を両面から挟持する一対の第1及び第2の固定具を備え、
前記第1の固定具は、前記超音波探触子の超音波送受信面の周縁に沿って枠状に形成されるとともに前記参照変形体の鍔部材の裏面に当接する挟持面が形成された第1の枠体と、該第1の枠体の挟持面の反対側の面から垂設されるとともに前記超音波探触子に係止可能な係止部が形成された第1の係合部材とを有し、
前記第2の固定具は、前記参照変形体の直方体部材の周縁に沿って枠状に形成されるとともに前記参照変形体の鍔部材の表面と当接する挟持面が形成された第2の枠体と、前記第2の枠体の端部から前記参照変形体の鍔部材の側面に沿って垂設されるとともに前記第1の枠体に係止可能な係止部が形成された第2の係合部材とを有し、
前記第1及び第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に凹凸が形成されてなる参照変形体の固定具。
【請求項2】
前記凹凸は、前記第1及び前記第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に形成された突起である請求項1の参照変形体の固定具。
【請求項3】
前記凹凸は、前記第1及び前記第2の枠体の挟持面の少なくとも一方の各辺に、互いに間隔をあけて形成された複数の突起である請求項1又は2の参照変形体の固定具。
【請求項4】
前記凹凸は、前記第1及び前記第2の枠体の挟持面の少なくとも一方の各辺に互いに間隔をあけて形成されるとともに、対向する辺について対称位置に形成された複数の突起である請求項1乃至3のいずれか1項の参照変形体の固定具。
【請求項5】
前記凹凸は、前記第1及び前記第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に、前記参照変形体の鍔部材に形成された穴に対応して形成された柱状の突起である請求項1乃至4のいずれか1項の参照変形体の固定具。
【請求項6】
前記凹凸は、前記第1及び前記第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に、該枠体の辺に沿って形成された突条である請求項1の参照変形体の固定具。
【請求項7】
前記凹凸は、前記第1及び前記第2の枠体の挟持面の少なくとも一方に、前記参照変形体の鍔部材の辺に沿って形成された溝に対応して、枠体の辺に沿って形成された突条である請求項1又は6の参照変形体の固定具。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項の参照変形体の固定具と、該固定具に固定された参照変形体とを備えてなる超音波探触子。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項の参照変形体の固定具と該固定具に固定された参照変形体とを備えてなる超音波探触子と、該超音波探触子を介して被検体に超音波を送受信し、前記被検体の断層部位のRF信号フレームデータに基づいて断層画像を生成する断層画像構成手段と、前記RF信号フレームデータに基づいて前記断層部位における組織の歪み又は弾性率を求める弾性情報演算手段と、前記弾性情報演算手段で求めた歪み又は弾性率に基づいて弾性画像を生成する弾性画像構成手段と、前記断層画像及び/又は前記弾性画像を表示する表示手段とを備えた超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−263963(P2010−263963A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115989(P2009−115989)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】