双方向DC−DCコンバータ
【課題】電力回生時においてもダイオードのリカバリを低減して、高効率化を図る双方向DC−DCコンバータ。
【解決手段】第1直流電源Viの両端に接続され、第1リアクトルLTの第1巻線1aと第1スイッチTr1とからなる第1直列回路と、第1スイッチの両端に接続され、第1リアクトルの第2巻線1bと第2リアクトルLrと第2スイッチTr2と第3スイッチTr3と第2直流電源Voとからなる第2直列回路と、第1スイッチの両端に接続され、第4スイッチTr4と第2直流電源Voとからなる第3直列回路と、各スイッチをオン/オフさせることにより第1直流電源と第2直流電源との間で、昇圧動作及び降圧動作を行なう制御回路10とを有する。
【解決手段】第1直流電源Viの両端に接続され、第1リアクトルLTの第1巻線1aと第1スイッチTr1とからなる第1直列回路と、第1スイッチの両端に接続され、第1リアクトルの第2巻線1bと第2リアクトルLrと第2スイッチTr2と第3スイッチTr3と第2直流電源Voとからなる第2直列回路と、第1スイッチの両端に接続され、第4スイッチTr4と第2直流電源Voとからなる第3直列回路と、各スイッチをオン/オフさせることにより第1直流電源と第2直流電源との間で、昇圧動作及び降圧動作を行なう制御回路10とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧動作及び降圧動作を行なう双方向DC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用電力変換器として高効率、低ノイズ化を実現できるリカバリレス昇圧チョッパ回路が知られている。図14は従来のリカバリレス昇圧チョッパ回路の回路構成図である。図14において、全波整流回路B1は、交流電源Vacに接続され、交流電源Vacからの交流電源電圧を整流して正極側出力端P1及び負極側出力端P2に出力する。
【0003】
全波整流回路B1の正極側出力端P1と負極側出力端P2との間には、昇圧リアクトルL1に巻回された昇圧巻線5a(巻数n1)及び巻き上げ巻線5b(巻数n2)とZCSリアクトルL2とダイオードD11と平滑コンデンサC1と電流検出抵抗Rdとからなる第1直列回路が接続されている。
【0004】
全波整流回路B1の正極側出力端P1と負極側出力端P2との間には、昇圧リアクトルL1の昇圧巻線5aとMOSFETからなるスイッチQ1と電流検出抵抗Rdとからなる第2直列回路が接続されている。昇圧巻線5aと巻き上げ巻線5bとスイッチQ1のドレインとの接続点と平滑コンデンサC1との間にはダイオードD12が接続されている。
【0005】
スイッチQ1は、制御回路100のPWM制御によりオン/オフする。ダイオードD11と平滑コンデンサC1とで整流平滑回路を構成する。平滑コンデンサC1には並列に負荷RLが接続され、平滑コンデンサC1はダイオードD11の整流電圧を平滑して直流出力を負荷RLに出力する。電流検出抵抗Rdは、全波整流回路B1に流れる入力電流を検出する。制御回路100は、誤差増幅器111、乗算器112、誤差増幅器113、OSC114、PWMコンパレータ116を有する。
【0006】
誤差増幅器111は、基準電圧E1が+端子に入力され、平滑コンデンサC1の電圧が−端子に入力され、平滑コンデンサC1の電圧と基準電圧E1との誤差が増幅され、誤差電圧信号を生成して乗算器112に出力する。乗算器112は、誤差増幅器111からの誤差電圧信号と全波整流回路B1の正極側出力端P1からの全波整流電圧とを乗算して乗算出力電圧を誤差増幅器113の+端子に出力する。
【0007】
誤差増幅器113は、電流検出抵抗Rdで検出した入力電流に比例した電圧が−端子に入力され、乗算器112からの乗算出力電圧が+端子に入力され、電流検出抵抗Rdによる電圧と乗算出力電圧との誤差が増幅され、誤差電圧信号を生成してこの誤差電圧信号をフィードバック信号FBとしてPWMコンパレータ116に出力する。OSC114は、一定周期の三角波信号を生成する。
【0008】
PWMコンパレータ116は、OSC114からの三角波信号が−端子に入力され、誤差増幅器113からのフィードバック信号FBが+端子に入力され、フィードバック信号FBの値が三角波信号の値以上のときにオンで、フィードバック信号FBの値が三角波信号の値未満のときにオフとなるパルス信号を生成し、該パルス信号をスイッチQ1のゲートに印加する。
【0009】
即ち、PWMコンパレータ116は、スイッチQ1に対して、誤差増幅器113による電流検出抵抗Rdの出力と乗算器112の出力との差信号に応じたデューティパルスを提供する。デューティパルスは、交流電源電圧及び直流負荷電圧の変動に対して一定周期で連続的に補償するパルス幅制御信号である。このような構成により、交流電源電流波形が交流電源電圧波形に一致するように制御されて、力率が大幅に改善される。
【0010】
次に、図14に示すリカバリレス昇圧チョッパ回路の動作を説明する。まず、スイッチQ1をオンさせると、交流電源電圧を整流した電圧により、Vac→B1→5a→Q1→Rd→B1→Vacで電流が流れる。スイッチQ1の電流はゼロから始まるので、スイッチQ1はZCS(ゼロ電流スイッチング)動作となる。そして、ダイオードD11に流れる電流は減少してゼロとなり、ダイオードD11はオフ状態となる。リカバリー時間の間には、ダイオードD11のリカバリによるスパイク電流がスイッチQ1に流れるが、スパイク電流はZCSリアクトルL2のインピーダンスにより制限される。
【0011】
次に、スイッチQ1をオフさせると、スイッチQ1をオンした時に昇圧リアクトルL1に蓄えられたエネルギーにより昇圧リアクトルL1に流れる電流は、急激にはZCSリアクトルL2には流れない。即ち、昇圧リアクトルL1に流れる電流とZCSリアクトルL2に流れる電流との差の電流が、ダイオードD12を介して平滑コンデンサC1に流れて負荷RLに電力が供給される。ダイオードD12に流れる電流は、直線的に減少する。
【0012】
また、ZCSリアクトルL2に蓄えられたエネルギーによりZCSリアクトルL2に流れる電流は、ダイオードD11を介して平滑コンデンサC1に流れて負荷RLに電力が供給される。ダイオードD11に流れる電流は、直線的に増加する。そして、ZCSリアクトルL2に流れる電流が昇圧リアクトルL1に流れる電流と等しくなったとき、ダイオードD12に流れる電流はゼロとなる。
【0013】
次に、スイッチQ1をオンさせると、ZCSリアクトルL2の電流は直線的に減少し、ゼロとなった時にダイオードD11はオフとなる。ZCSリアクトルL2に流れる電流が減少するに従って、スイッチQ1に流れる電流は増加し、昇圧リアクトルL1に流れる電流と等しくなったときに、ZCSリアクトルL2の電流がゼロとなる。従って、ZCS動作となる。
【0014】
このように、主スイッチQ1をオン時にZCSを行わせることにより、整流ダイオードのリカバリーによる損失を低減させ、電流の変化を緩やかにすることにより、高効率、低ノイズのスイッチング動作を行わせることができる。
【特許文献1】再公表2004−095682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図14に示すリカバリレス昇圧チョッパ回路では、昇圧時にダイオードのリカバリを低減するものである。
【0016】
また、車両減速時には例えば降圧チョッパ回路により電力回生動作が行なわれるが、このときには、降圧チョッパ回路のダイオードのリカバリを低減することができなかった。
【0017】
本発明は、電力回生時においてもダイオードのリカバリを低減して、高効率化を図ることができる双方向DC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、第1直流電源の直流電圧を昇圧して第2直流電源に供給するとともに、前記第2直流電源の直流電圧を降圧して前記第1直流電源に供給する双方向DC−DCコンバータであって、第1巻線と第2巻線とが直列接続され且つ電磁結合する第1リアクトルと、前記第1直流電源の両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第1巻線と第1スイッチとからなる第1直列回路と、前記第1スイッチの両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第2巻線と第2リアクトルと第2スイッチと第3スイッチと前記第2直流電源とからなる第2直列回路と、前記第1スイッチの両端に接続され、第4スイッチと前記第2直流電源とからなる第3直列回路と、前記第1、第2、第3及び第4スイッチをオン/オフさせることにより前記第1直流電源と前記第2直流電源との間で、昇圧動作及び降圧動作を行なう制御回路とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の双方向DC−DCコンバータにおいて、前記制御回路は、前記降圧動作時に前記第3スイッチと前記第4スイッチとをオフさせて前記第1リアクトルに蓄積されたエネルギーを前記第1直流電源に放電させ、前記第3スイッチをターンオンさせて前記第2リアクトルによりゼロ電流スイッチングを行い、前記第1ダイオードの電流が緩やかに減少して前記第1ダイオードをターンオフさせることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項2記載の双方向DC−DCコンバータにおいて、前記制御回路は、さらに、前記第4スイッチをターンオンさせて、前記第1リアクトルの前記第2巻線に発生する誘導起電力により前記第3スイッチの電流を減少させ、前記第3スイッチのゼロ電圧及びゼロ電流スイッチングターンオフを行なわさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電力回生時においてもダイオードのリカバリを低減して、高効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の双方向DC−DCコンバータの実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は実施例1の双方向DC−DCコンバータを示す回路構成図である。図1に示す双方向DC−DCコンバータは、第1直流電源Viの直流電圧を昇圧して第2直流電源Voに供給するとともに、第2直流電源Voの直流電圧を降圧して第1直流電源Viに供給する。即ち、双方向DC−DCコンバータは、昇圧チョッパ回路に電力回生機能を付加した回路構成となっており、電力回生時には、降圧チョッパ回路として動作する。
【0024】
図1において、第1直流電源Viの両端には、平滑コンデンサCiが接続され、第2直流電源Voの両端には、平滑コンデンサCoが接続されている。
【0025】
第1リアクトルLTは、巻数n1の第1巻線1aと巻数n2の第2巻線1bとが図示しないコアに巻回され電磁結合し且つ直列に接続されている。第1直流電源Viの両端には、第1リアクトルLTの第1巻線1aと第1スイッチTr1とからなる第1直列回路が接続されている。第1スイッチTr1のコレクタ−エミッタ間には、第1リアクトルLTの第2巻線1bと第2リアクトルLrと第2スイッチTr2と第3スイッチTr3と第2直流電源Voとからなる第2直列回路が接続されている。なお、第2リアクトルLrは、第1リアクトルLTの第1巻線1aと第2巻線1bとの間のリーケージインダクタンスであっても良い。
【0026】
第1スイッチTr1の両端に接続され、第4スイッチTr4と第2直流電源Voとからなる第3直列回路が接続されている。
【0027】
第1スイッチTr1乃至第4スイッチTr4の各々のスイッチは、ゲートとエミッタとコレクタとを有する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)からなる。なお、第1スイッチTr1乃至第4スイッチTr4の各々のスイッチは、例えば、MOSFETを用いても良い。
【0028】
第1スイッチTr1のコレクタ−エミッタ間には、第1ダイオードD1が並列に接続され、第2スイッチTr2のコレクタ−エミッタ間には、第2ダイオードD2が並列に接続され、第3スイッチTr3のコレクタ−エミッタ間には、第3ダイオードD3が並列に接続され、第4スイッチTr4のコレクタ−エミッタ間には、第4ダイオードD4が並列に接続されている。
【0029】
制御回路10は、スイッチTr1〜Tr4のゲートにゲート信号Tr1g〜Tr4gを印加して、スイッチTr1〜Tr4をオン/オフさせることにより直流電圧の昇圧動作及び降圧動作を行なう。
【0030】
次に、実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作を図2及び図3に示す降圧動作時の各部のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0031】
図2は実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作時の回路図である。図2では、電力回生時に使用される回路を図1より抜き出した回路図が示されている。電力回生時には、第1直流電源Viは負荷抵抗Rとして機能する。
【0032】
図3において、Tr3gはスイッチTr3のゲート信号、Tr4gはスイッチTr4のゲート信号、Tr3vはスイッチTr3のコレクタ−エミッタ間電圧、Tr3iはスイッチTr3のコレクタ電流、Tr4vはスイッチTr4のコレクタ−エミッタ間電圧、Tr4iはスイッチTr4のコレクタ電流、D1iはダイオードD1の電流、D1vはダイオードD1の両端電圧、LTiは第1リアクトルLTの電流を示す。降圧動作は、モードM0〜M4の回路状態に分けられる。モードM0〜M4において、スイッチTr1,Tr2はオフ状態であるため、図2では、Tr1,Tr2の文字は図示していない。
【0033】
まず、モードM0では、ゲート信号Tr3gとゲート信号Tr4gとによりスイッチTr3とスイッチTr4とは共にオフしているため、入力側と出力側とは切り離されている状態である。このとき、LT→R→D1→LTの経路で電流D1i,LTiが流れる。即ち、第1リアクトルLTに蓄積されたエネルギーが負荷抵抗Rに放電されて負荷電圧を保持している。また、電圧Tr3v,Tr4vは略第2直流電源Voの電圧となる。
【0034】
モードM1の時刻t0において、ゲート信号Tr3gによりスイッチTr3がターンオンすると、第2リアクトルLrの作用により電流Tr3iは緩やかに立ち上がる。このため、スイッチTr3のゼロ電流スイッチングターンオンを実現できる。
【0035】
また、ダイオードD1に流れていた電流D1iは入力(Vo)ラインへの遷移が開始され、電流D1iは緩やかに減少して時刻t1でゼロとなり、モードM2に移行する。このため、ダイオードD1のリカバリレスターンオフを実現できる。
【0036】
モードM3の時刻t2において、ゲート信号Tr4gによりスイッチTr4がターンオンすると、スイッチTr3に流れていた電流がスイッチTr4へ転流する状態になるが、その転流の遷移は第2リアクトルLrの作用により緩やかな遷移となる。ダイオードD2の緩やかなターンオフにより、ダイオードD2においてもリカバリレス動作が実現できる。
【0037】
また、第2リアクトルLrによりスイッチTr4の電流Tr4iは、傾きをもって立ち上がる。このため、スイッチTr4のゼロ電流スイッチングターンオンを実現できる。また、スイッチTr3に流れる電流Tr3iは、第1リアクトルLTの第2巻線1bに発生する誘導起電力により減少して、ゼロになる。電圧Tr3vがゼロの状態で電流Tr3iが緩やかに立ち下がるため、モードM4の時刻t3において、スイッチTr3のゼロ電圧・ゼロ電流スイッチングターンオフを実現できる。
【0038】
次に、スイッチTr4がターンオフすると、時刻t4においてモードM0に移行する。このようにして降圧動作時に各スイッチのソフトスイッチング動作を実現できる。
【0039】
次に、実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作を図4及び図5に示す昇圧動作時の各部のタイミングチャートを参照しながら説明する。図4は実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作時の回路図である。図4において、昇圧動作時には、第2直流電源Voは負荷抵抗Rとして機能する。
【0040】
図5において、Tr1vはスイッチTr1のコレクタ−エミッタ間電圧、Tr1iはスイッチTr1のコレクタ電流、D3iはダイオードD3の電流、D4iはダイオードD4の電流を示す。なお、モードM0〜M2において、スイッチTr3とスイッチTr4とはオフ状態であるため、図4では、Tr3,Tr4の文字は図示していない。
【0041】
まず、モードM0では、スイッチTr1がオンし、Vi→1a→Tr1→Viの経路で電流Tr1iが流れる。このとき、ダイオードD3,D4には電流は流れず、出力側(Vo)や第1リアクトルLTからの逆電圧を阻止している。
【0042】
モードM1において、スイッチTr1がターンオフしスイッチTr2がオンすると、ダイオードD3に直列には第2リアクトルLrが接続されているため、電流D3iは急激には流れない。このため、始めのうちは、Vi→1a→D4→Co→Viの経路で電流D4iが流れる。
【0043】
次に、第1リアクトルLTの第2巻線1bに発生する電圧によって第2リアクトルLrに流れる電流、即ちダイオードD3に流れる電流D3iが緩やかに増加する。このため、ダイオードD4からダイオードD3への電流の転流が発生し、ダイオードD4は緩やかにターンオフする。
【0044】
そして、スイッチTr1がターンオンすると、電流D3iが流れているダイオードD3には第2リアクトルLrが直列に接続されているため、電流減少時の傾きが抑えられ、モードM2において、緩やかにターンオフする。さらに、スイッチTr1のターンオン時の電流Tr1iの増加も第1リアクトルLTにより緩やかになるため、スイッチTr1のターンオン時の電流Tr1iと電圧Tr1vとの重なりが小さくなり、スイッチTr1のゼロ電流スイッチングを実現できる。
【0045】
なお、スイッチング周波数を20kHzとして電圧500Vを電圧200Vまで降圧させた場合の各部波形のシミュレーション結果を図6〜図9に示した。図6はダイオードD1の電流波形を示す。図7はダイオードD2の電流波形を示す。図6からもわかるように、モードM2での電流D1iは、第2リアクトルLrにより緩やかに減少していることからダイオードD1はリカバリが発生せずにターンオフしている。図7からもわかるように、ダイオードD2の電流波形から、リカバリレス動作でターンオフしている。
【0046】
これにより、ダイオードD1,D2のリカバリによる電力損失がなくなるため、より高効率化を図ることができる。
【0047】
図8はスイッチTr3の電圧Tr3vの波形及び電流Tr3iの波形を示す。図9はスイッチTr4の電圧Tr4vの波形及び電流Tr4iの波形を示す。図8からもわかるように、スイッチTr3がターンオンするとき、第2リアクトルLrにより電流Tr3iは0Aから緩やかに立ち上がるので、スイッチTr3はゼロ電流スイッチング動作を実現できる。
【0048】
さらに、モードM4のスイッチTr4への緩やかな転流によりスイッチTr3を流れる電流Tr3iが0Aになった状態でターンオフする。このため、スイッチTr3のターンオフ時でもゼロ電流スイッチング動作を実現できる。
【0049】
また、図9からもわかるように、スイッチTr4がターンオンするとき、第2リアクトルLrによりスイッチTr4に流れる電流Tr4iは0Aから緩やかに立ち上がるので、スイッチTr4のゼロ電流スイッチング動作を実現できる。従って、スイッチング損失を低減でき、より高効率化を図ることができる。
【0050】
また、出願人は実施例1の回路と従来の回路との特性の比較評価を行なった。図10に比較評価を行なった従来の降圧チョッパ回路の回路構成図を示す。図11は図10に示す従来の降圧チョッパ回路のダイオードDにおけるターンオフ電圧Dvの波形及び電流Diの波形を示す図である。図12は実施例1の双方向DC−DCコンバータのダイオードにおけるターンオフ電圧Dvの波形及び電流Diの波形を示す図である。
【0051】
図11と図12とを比較すると、図12に示す実施例1の回路が、スイッチング損失やノイズの原因となるダイオードのリカバリ電流を大幅に抑制していることがわかる。
【0052】
さらに、出願人は実施例1の回路と従来の回路との効率の比較を行なった。図13は実施例1の方式と従来の方式との出力電流に対する効率比較を示す図である。実施例1の回路と従来の回路とのそれぞれについて、入力電圧130V、出力電圧70V、スイッチング周波数80kHzの条件で動作させている。図13から、全ての出力電流において、実施例1の回路が従来の回路よりも効率が良いことがわかる。
【0053】
なお、本発明は上記実施例1の双方向DC−DCコンバータに限定されるものではない。例えば、図1のスイッチTr2を削除し、ダイオードD2のカソードとダイオードD3のカソードとの間にIGBTからなるスイッチTr5とダイオードD5との並列回路を接続した双方向DC−DCコンバータを用いても、実施例1と同様な動作及び効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の双方向DC−DCコンバータを示す回路構成図である。
【図2】実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作時の回路図である。
【図3】実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作時の各部のタイミングチャートである。
【図4】実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作時の回路図である。
【図5】実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作時の各部のタイミングチャートである。
【図6】直流電圧を降圧させた場合のダイオードD1の電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】直流電圧を降圧させた場合のダイオードD2の電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図8】直流電圧を降圧させた場合のスイッチTr3の電圧波形及び電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】直流電圧を降圧させた場合のスイッチTr4の電圧波形及び電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】従来の降圧チョッパ回路の回路構成図である。
【図11】図10に示す従来の降圧チョッパ回路のダイオードにおけるターンオフ電圧波形及び電圧波形を示す図である。
【図12】実施例1の双方向DC−DCコンバータのダイオードにおけるターンオフ電圧波形及び電圧波形を示す図である。
【図13】実施例1の方式と従来の方式との出力電流に対する効率比較を示す図である。
【図14】従来のリカバリレス昇圧チョッパ回路の回路構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1a 第1巻線
1b 第2巻線
10 制御回路
Vi 第1直流電源
Vo 第2直流電源
Ci,Co 平滑コンデンサ
Tr1,Tr2 スイッチ
Tr3 スイッチ
Tr4 スイッチ
LT 第1リアクトル
Lr 第2リアクトル
D1〜D4 ダイオード
R 負荷抵抗
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇圧動作及び降圧動作を行なう双方向DC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用電力変換器として高効率、低ノイズ化を実現できるリカバリレス昇圧チョッパ回路が知られている。図14は従来のリカバリレス昇圧チョッパ回路の回路構成図である。図14において、全波整流回路B1は、交流電源Vacに接続され、交流電源Vacからの交流電源電圧を整流して正極側出力端P1及び負極側出力端P2に出力する。
【0003】
全波整流回路B1の正極側出力端P1と負極側出力端P2との間には、昇圧リアクトルL1に巻回された昇圧巻線5a(巻数n1)及び巻き上げ巻線5b(巻数n2)とZCSリアクトルL2とダイオードD11と平滑コンデンサC1と電流検出抵抗Rdとからなる第1直列回路が接続されている。
【0004】
全波整流回路B1の正極側出力端P1と負極側出力端P2との間には、昇圧リアクトルL1の昇圧巻線5aとMOSFETからなるスイッチQ1と電流検出抵抗Rdとからなる第2直列回路が接続されている。昇圧巻線5aと巻き上げ巻線5bとスイッチQ1のドレインとの接続点と平滑コンデンサC1との間にはダイオードD12が接続されている。
【0005】
スイッチQ1は、制御回路100のPWM制御によりオン/オフする。ダイオードD11と平滑コンデンサC1とで整流平滑回路を構成する。平滑コンデンサC1には並列に負荷RLが接続され、平滑コンデンサC1はダイオードD11の整流電圧を平滑して直流出力を負荷RLに出力する。電流検出抵抗Rdは、全波整流回路B1に流れる入力電流を検出する。制御回路100は、誤差増幅器111、乗算器112、誤差増幅器113、OSC114、PWMコンパレータ116を有する。
【0006】
誤差増幅器111は、基準電圧E1が+端子に入力され、平滑コンデンサC1の電圧が−端子に入力され、平滑コンデンサC1の電圧と基準電圧E1との誤差が増幅され、誤差電圧信号を生成して乗算器112に出力する。乗算器112は、誤差増幅器111からの誤差電圧信号と全波整流回路B1の正極側出力端P1からの全波整流電圧とを乗算して乗算出力電圧を誤差増幅器113の+端子に出力する。
【0007】
誤差増幅器113は、電流検出抵抗Rdで検出した入力電流に比例した電圧が−端子に入力され、乗算器112からの乗算出力電圧が+端子に入力され、電流検出抵抗Rdによる電圧と乗算出力電圧との誤差が増幅され、誤差電圧信号を生成してこの誤差電圧信号をフィードバック信号FBとしてPWMコンパレータ116に出力する。OSC114は、一定周期の三角波信号を生成する。
【0008】
PWMコンパレータ116は、OSC114からの三角波信号が−端子に入力され、誤差増幅器113からのフィードバック信号FBが+端子に入力され、フィードバック信号FBの値が三角波信号の値以上のときにオンで、フィードバック信号FBの値が三角波信号の値未満のときにオフとなるパルス信号を生成し、該パルス信号をスイッチQ1のゲートに印加する。
【0009】
即ち、PWMコンパレータ116は、スイッチQ1に対して、誤差増幅器113による電流検出抵抗Rdの出力と乗算器112の出力との差信号に応じたデューティパルスを提供する。デューティパルスは、交流電源電圧及び直流負荷電圧の変動に対して一定周期で連続的に補償するパルス幅制御信号である。このような構成により、交流電源電流波形が交流電源電圧波形に一致するように制御されて、力率が大幅に改善される。
【0010】
次に、図14に示すリカバリレス昇圧チョッパ回路の動作を説明する。まず、スイッチQ1をオンさせると、交流電源電圧を整流した電圧により、Vac→B1→5a→Q1→Rd→B1→Vacで電流が流れる。スイッチQ1の電流はゼロから始まるので、スイッチQ1はZCS(ゼロ電流スイッチング)動作となる。そして、ダイオードD11に流れる電流は減少してゼロとなり、ダイオードD11はオフ状態となる。リカバリー時間の間には、ダイオードD11のリカバリによるスパイク電流がスイッチQ1に流れるが、スパイク電流はZCSリアクトルL2のインピーダンスにより制限される。
【0011】
次に、スイッチQ1をオフさせると、スイッチQ1をオンした時に昇圧リアクトルL1に蓄えられたエネルギーにより昇圧リアクトルL1に流れる電流は、急激にはZCSリアクトルL2には流れない。即ち、昇圧リアクトルL1に流れる電流とZCSリアクトルL2に流れる電流との差の電流が、ダイオードD12を介して平滑コンデンサC1に流れて負荷RLに電力が供給される。ダイオードD12に流れる電流は、直線的に減少する。
【0012】
また、ZCSリアクトルL2に蓄えられたエネルギーによりZCSリアクトルL2に流れる電流は、ダイオードD11を介して平滑コンデンサC1に流れて負荷RLに電力が供給される。ダイオードD11に流れる電流は、直線的に増加する。そして、ZCSリアクトルL2に流れる電流が昇圧リアクトルL1に流れる電流と等しくなったとき、ダイオードD12に流れる電流はゼロとなる。
【0013】
次に、スイッチQ1をオンさせると、ZCSリアクトルL2の電流は直線的に減少し、ゼロとなった時にダイオードD11はオフとなる。ZCSリアクトルL2に流れる電流が減少するに従って、スイッチQ1に流れる電流は増加し、昇圧リアクトルL1に流れる電流と等しくなったときに、ZCSリアクトルL2の電流がゼロとなる。従って、ZCS動作となる。
【0014】
このように、主スイッチQ1をオン時にZCSを行わせることにより、整流ダイオードのリカバリーによる損失を低減させ、電流の変化を緩やかにすることにより、高効率、低ノイズのスイッチング動作を行わせることができる。
【特許文献1】再公表2004−095682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図14に示すリカバリレス昇圧チョッパ回路では、昇圧時にダイオードのリカバリを低減するものである。
【0016】
また、車両減速時には例えば降圧チョッパ回路により電力回生動作が行なわれるが、このときには、降圧チョッパ回路のダイオードのリカバリを低減することができなかった。
【0017】
本発明は、電力回生時においてもダイオードのリカバリを低減して、高効率化を図ることができる双方向DC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題を解決するために、請求項1の発明は、第1直流電源の直流電圧を昇圧して第2直流電源に供給するとともに、前記第2直流電源の直流電圧を降圧して前記第1直流電源に供給する双方向DC−DCコンバータであって、第1巻線と第2巻線とが直列接続され且つ電磁結合する第1リアクトルと、前記第1直流電源の両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第1巻線と第1スイッチとからなる第1直列回路と、前記第1スイッチの両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第2巻線と第2リアクトルと第2スイッチと第3スイッチと前記第2直流電源とからなる第2直列回路と、前記第1スイッチの両端に接続され、第4スイッチと前記第2直流電源とからなる第3直列回路と、前記第1、第2、第3及び第4スイッチをオン/オフさせることにより前記第1直流電源と前記第2直流電源との間で、昇圧動作及び降圧動作を行なう制御回路とを有することを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1記載の双方向DC−DCコンバータにおいて、前記制御回路は、前記降圧動作時に前記第3スイッチと前記第4スイッチとをオフさせて前記第1リアクトルに蓄積されたエネルギーを前記第1直流電源に放電させ、前記第3スイッチをターンオンさせて前記第2リアクトルによりゼロ電流スイッチングを行い、前記第1ダイオードの電流が緩やかに減少して前記第1ダイオードをターンオフさせることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項2記載の双方向DC−DCコンバータにおいて、前記制御回路は、さらに、前記第4スイッチをターンオンさせて、前記第1リアクトルの前記第2巻線に発生する誘導起電力により前記第3スイッチの電流を減少させ、前記第3スイッチのゼロ電圧及びゼロ電流スイッチングターンオフを行なわさせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電力回生時においてもダイオードのリカバリを低減して、高効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の双方向DC−DCコンバータの実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は実施例1の双方向DC−DCコンバータを示す回路構成図である。図1に示す双方向DC−DCコンバータは、第1直流電源Viの直流電圧を昇圧して第2直流電源Voに供給するとともに、第2直流電源Voの直流電圧を降圧して第1直流電源Viに供給する。即ち、双方向DC−DCコンバータは、昇圧チョッパ回路に電力回生機能を付加した回路構成となっており、電力回生時には、降圧チョッパ回路として動作する。
【0024】
図1において、第1直流電源Viの両端には、平滑コンデンサCiが接続され、第2直流電源Voの両端には、平滑コンデンサCoが接続されている。
【0025】
第1リアクトルLTは、巻数n1の第1巻線1aと巻数n2の第2巻線1bとが図示しないコアに巻回され電磁結合し且つ直列に接続されている。第1直流電源Viの両端には、第1リアクトルLTの第1巻線1aと第1スイッチTr1とからなる第1直列回路が接続されている。第1スイッチTr1のコレクタ−エミッタ間には、第1リアクトルLTの第2巻線1bと第2リアクトルLrと第2スイッチTr2と第3スイッチTr3と第2直流電源Voとからなる第2直列回路が接続されている。なお、第2リアクトルLrは、第1リアクトルLTの第1巻線1aと第2巻線1bとの間のリーケージインダクタンスであっても良い。
【0026】
第1スイッチTr1の両端に接続され、第4スイッチTr4と第2直流電源Voとからなる第3直列回路が接続されている。
【0027】
第1スイッチTr1乃至第4スイッチTr4の各々のスイッチは、ゲートとエミッタとコレクタとを有する絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)からなる。なお、第1スイッチTr1乃至第4スイッチTr4の各々のスイッチは、例えば、MOSFETを用いても良い。
【0028】
第1スイッチTr1のコレクタ−エミッタ間には、第1ダイオードD1が並列に接続され、第2スイッチTr2のコレクタ−エミッタ間には、第2ダイオードD2が並列に接続され、第3スイッチTr3のコレクタ−エミッタ間には、第3ダイオードD3が並列に接続され、第4スイッチTr4のコレクタ−エミッタ間には、第4ダイオードD4が並列に接続されている。
【0029】
制御回路10は、スイッチTr1〜Tr4のゲートにゲート信号Tr1g〜Tr4gを印加して、スイッチTr1〜Tr4をオン/オフさせることにより直流電圧の昇圧動作及び降圧動作を行なう。
【0030】
次に、実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作を図2及び図3に示す降圧動作時の各部のタイミングチャートを参照しながら説明する。
【0031】
図2は実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作時の回路図である。図2では、電力回生時に使用される回路を図1より抜き出した回路図が示されている。電力回生時には、第1直流電源Viは負荷抵抗Rとして機能する。
【0032】
図3において、Tr3gはスイッチTr3のゲート信号、Tr4gはスイッチTr4のゲート信号、Tr3vはスイッチTr3のコレクタ−エミッタ間電圧、Tr3iはスイッチTr3のコレクタ電流、Tr4vはスイッチTr4のコレクタ−エミッタ間電圧、Tr4iはスイッチTr4のコレクタ電流、D1iはダイオードD1の電流、D1vはダイオードD1の両端電圧、LTiは第1リアクトルLTの電流を示す。降圧動作は、モードM0〜M4の回路状態に分けられる。モードM0〜M4において、スイッチTr1,Tr2はオフ状態であるため、図2では、Tr1,Tr2の文字は図示していない。
【0033】
まず、モードM0では、ゲート信号Tr3gとゲート信号Tr4gとによりスイッチTr3とスイッチTr4とは共にオフしているため、入力側と出力側とは切り離されている状態である。このとき、LT→R→D1→LTの経路で電流D1i,LTiが流れる。即ち、第1リアクトルLTに蓄積されたエネルギーが負荷抵抗Rに放電されて負荷電圧を保持している。また、電圧Tr3v,Tr4vは略第2直流電源Voの電圧となる。
【0034】
モードM1の時刻t0において、ゲート信号Tr3gによりスイッチTr3がターンオンすると、第2リアクトルLrの作用により電流Tr3iは緩やかに立ち上がる。このため、スイッチTr3のゼロ電流スイッチングターンオンを実現できる。
【0035】
また、ダイオードD1に流れていた電流D1iは入力(Vo)ラインへの遷移が開始され、電流D1iは緩やかに減少して時刻t1でゼロとなり、モードM2に移行する。このため、ダイオードD1のリカバリレスターンオフを実現できる。
【0036】
モードM3の時刻t2において、ゲート信号Tr4gによりスイッチTr4がターンオンすると、スイッチTr3に流れていた電流がスイッチTr4へ転流する状態になるが、その転流の遷移は第2リアクトルLrの作用により緩やかな遷移となる。ダイオードD2の緩やかなターンオフにより、ダイオードD2においてもリカバリレス動作が実現できる。
【0037】
また、第2リアクトルLrによりスイッチTr4の電流Tr4iは、傾きをもって立ち上がる。このため、スイッチTr4のゼロ電流スイッチングターンオンを実現できる。また、スイッチTr3に流れる電流Tr3iは、第1リアクトルLTの第2巻線1bに発生する誘導起電力により減少して、ゼロになる。電圧Tr3vがゼロの状態で電流Tr3iが緩やかに立ち下がるため、モードM4の時刻t3において、スイッチTr3のゼロ電圧・ゼロ電流スイッチングターンオフを実現できる。
【0038】
次に、スイッチTr4がターンオフすると、時刻t4においてモードM0に移行する。このようにして降圧動作時に各スイッチのソフトスイッチング動作を実現できる。
【0039】
次に、実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作を図4及び図5に示す昇圧動作時の各部のタイミングチャートを参照しながら説明する。図4は実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作時の回路図である。図4において、昇圧動作時には、第2直流電源Voは負荷抵抗Rとして機能する。
【0040】
図5において、Tr1vはスイッチTr1のコレクタ−エミッタ間電圧、Tr1iはスイッチTr1のコレクタ電流、D3iはダイオードD3の電流、D4iはダイオードD4の電流を示す。なお、モードM0〜M2において、スイッチTr3とスイッチTr4とはオフ状態であるため、図4では、Tr3,Tr4の文字は図示していない。
【0041】
まず、モードM0では、スイッチTr1がオンし、Vi→1a→Tr1→Viの経路で電流Tr1iが流れる。このとき、ダイオードD3,D4には電流は流れず、出力側(Vo)や第1リアクトルLTからの逆電圧を阻止している。
【0042】
モードM1において、スイッチTr1がターンオフしスイッチTr2がオンすると、ダイオードD3に直列には第2リアクトルLrが接続されているため、電流D3iは急激には流れない。このため、始めのうちは、Vi→1a→D4→Co→Viの経路で電流D4iが流れる。
【0043】
次に、第1リアクトルLTの第2巻線1bに発生する電圧によって第2リアクトルLrに流れる電流、即ちダイオードD3に流れる電流D3iが緩やかに増加する。このため、ダイオードD4からダイオードD3への電流の転流が発生し、ダイオードD4は緩やかにターンオフする。
【0044】
そして、スイッチTr1がターンオンすると、電流D3iが流れているダイオードD3には第2リアクトルLrが直列に接続されているため、電流減少時の傾きが抑えられ、モードM2において、緩やかにターンオフする。さらに、スイッチTr1のターンオン時の電流Tr1iの増加も第1リアクトルLTにより緩やかになるため、スイッチTr1のターンオン時の電流Tr1iと電圧Tr1vとの重なりが小さくなり、スイッチTr1のゼロ電流スイッチングを実現できる。
【0045】
なお、スイッチング周波数を20kHzとして電圧500Vを電圧200Vまで降圧させた場合の各部波形のシミュレーション結果を図6〜図9に示した。図6はダイオードD1の電流波形を示す。図7はダイオードD2の電流波形を示す。図6からもわかるように、モードM2での電流D1iは、第2リアクトルLrにより緩やかに減少していることからダイオードD1はリカバリが発生せずにターンオフしている。図7からもわかるように、ダイオードD2の電流波形から、リカバリレス動作でターンオフしている。
【0046】
これにより、ダイオードD1,D2のリカバリによる電力損失がなくなるため、より高効率化を図ることができる。
【0047】
図8はスイッチTr3の電圧Tr3vの波形及び電流Tr3iの波形を示す。図9はスイッチTr4の電圧Tr4vの波形及び電流Tr4iの波形を示す。図8からもわかるように、スイッチTr3がターンオンするとき、第2リアクトルLrにより電流Tr3iは0Aから緩やかに立ち上がるので、スイッチTr3はゼロ電流スイッチング動作を実現できる。
【0048】
さらに、モードM4のスイッチTr4への緩やかな転流によりスイッチTr3を流れる電流Tr3iが0Aになった状態でターンオフする。このため、スイッチTr3のターンオフ時でもゼロ電流スイッチング動作を実現できる。
【0049】
また、図9からもわかるように、スイッチTr4がターンオンするとき、第2リアクトルLrによりスイッチTr4に流れる電流Tr4iは0Aから緩やかに立ち上がるので、スイッチTr4のゼロ電流スイッチング動作を実現できる。従って、スイッチング損失を低減でき、より高効率化を図ることができる。
【0050】
また、出願人は実施例1の回路と従来の回路との特性の比較評価を行なった。図10に比較評価を行なった従来の降圧チョッパ回路の回路構成図を示す。図11は図10に示す従来の降圧チョッパ回路のダイオードDにおけるターンオフ電圧Dvの波形及び電流Diの波形を示す図である。図12は実施例1の双方向DC−DCコンバータのダイオードにおけるターンオフ電圧Dvの波形及び電流Diの波形を示す図である。
【0051】
図11と図12とを比較すると、図12に示す実施例1の回路が、スイッチング損失やノイズの原因となるダイオードのリカバリ電流を大幅に抑制していることがわかる。
【0052】
さらに、出願人は実施例1の回路と従来の回路との効率の比較を行なった。図13は実施例1の方式と従来の方式との出力電流に対する効率比較を示す図である。実施例1の回路と従来の回路とのそれぞれについて、入力電圧130V、出力電圧70V、スイッチング周波数80kHzの条件で動作させている。図13から、全ての出力電流において、実施例1の回路が従来の回路よりも効率が良いことがわかる。
【0053】
なお、本発明は上記実施例1の双方向DC−DCコンバータに限定されるものではない。例えば、図1のスイッチTr2を削除し、ダイオードD2のカソードとダイオードD3のカソードとの間にIGBTからなるスイッチTr5とダイオードD5との並列回路を接続した双方向DC−DCコンバータを用いても、実施例1と同様な動作及び効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1の双方向DC−DCコンバータを示す回路構成図である。
【図2】実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作時の回路図である。
【図3】実施例1の双方向DC−DCコンバータの降圧動作時の各部のタイミングチャートである。
【図4】実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作時の回路図である。
【図5】実施例1の双方向DC−DCコンバータの昇圧動作時の各部のタイミングチャートである。
【図6】直流電圧を降圧させた場合のダイオードD1の電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図7】直流電圧を降圧させた場合のダイオードD2の電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図8】直流電圧を降圧させた場合のスイッチTr3の電圧波形及び電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図9】直流電圧を降圧させた場合のスイッチTr4の電圧波形及び電流波形のシミュレーション結果を示す図である。
【図10】従来の降圧チョッパ回路の回路構成図である。
【図11】図10に示す従来の降圧チョッパ回路のダイオードにおけるターンオフ電圧波形及び電圧波形を示す図である。
【図12】実施例1の双方向DC−DCコンバータのダイオードにおけるターンオフ電圧波形及び電圧波形を示す図である。
【図13】実施例1の方式と従来の方式との出力電流に対する効率比較を示す図である。
【図14】従来のリカバリレス昇圧チョッパ回路の回路構成図である。
【符号の説明】
【0055】
1a 第1巻線
1b 第2巻線
10 制御回路
Vi 第1直流電源
Vo 第2直流電源
Ci,Co 平滑コンデンサ
Tr1,Tr2 スイッチ
Tr3 スイッチ
Tr4 スイッチ
LT 第1リアクトル
Lr 第2リアクトル
D1〜D4 ダイオード
R 負荷抵抗
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電源の直流電圧を昇圧して第2直流電源に供給するとともに、前記第2直流電源の直流電圧を降圧して前記第1直流電源に供給する双方向DC−DCコンバータであって、
第1巻線と第2巻線とが直列接続され且つ電磁結合する第1リアクトルと、
前記第1直流電源の両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第1巻線と第1スイッチとからなる第1直列回路と、
前記第1スイッチの両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第2巻線と第2リアクトルと第2スイッチと第3スイッチと前記第2直流電源とからなる第2直列回路と、
前記第1スイッチの両端に接続され、第4スイッチと前記第2直流電源とからなる第3直列回路と、
前記第1、第2、第3及び第4スイッチをオン/オフさせることにより前記第1直流電源と前記第2直流電源との間で、昇圧動作及び降圧動作を行なう制御回路と、
を有することを特徴とする双方向DC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記降圧動作時に前記第3スイッチと前記第4スイッチとをオフさせて前記第1リアクトルに蓄積されたエネルギーを前記第1直流電源に放電させ、前記第3スイッチをターンオンさせて前記第2リアクトルによりゼロ電流スイッチングを行い、前記第1ダイオードの電流が緩やかに減少して前記第1ダイオードをターンオフさせることを特徴とする請求項1記載の双方向DC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御回路は、さらに、前記第4スイッチをターンオンさせて、前記第1リアクトルの前記第2巻線に発生する誘導起電力により前記第3スイッチの電流を減少させ、前記第3スイッチのゼロ電圧及びゼロ電流スイッチングターンオフを行なわさせることを特徴とする請求項2記載の双方向DC−DCコンバータ。
【請求項1】
第1直流電源の直流電圧を昇圧して第2直流電源に供給するとともに、前記第2直流電源の直流電圧を降圧して前記第1直流電源に供給する双方向DC−DCコンバータであって、
第1巻線と第2巻線とが直列接続され且つ電磁結合する第1リアクトルと、
前記第1直流電源の両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第1巻線と第1スイッチとからなる第1直列回路と、
前記第1スイッチの両端に接続され、前記第1リアクトルの前記第2巻線と第2リアクトルと第2スイッチと第3スイッチと前記第2直流電源とからなる第2直列回路と、
前記第1スイッチの両端に接続され、第4スイッチと前記第2直流電源とからなる第3直列回路と、
前記第1、第2、第3及び第4スイッチをオン/オフさせることにより前記第1直流電源と前記第2直流電源との間で、昇圧動作及び降圧動作を行なう制御回路と、
を有することを特徴とする双方向DC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記降圧動作時に前記第3スイッチと前記第4スイッチとをオフさせて前記第1リアクトルに蓄積されたエネルギーを前記第1直流電源に放電させ、前記第3スイッチをターンオンさせて前記第2リアクトルによりゼロ電流スイッチングを行い、前記第1ダイオードの電流が緩やかに減少して前記第1ダイオードをターンオフさせることを特徴とする請求項1記載の双方向DC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御回路は、さらに、前記第4スイッチをターンオンさせて、前記第1リアクトルの前記第2巻線に発生する誘導起電力により前記第3スイッチの電流を減少させ、前記第3スイッチのゼロ電圧及びゼロ電流スイッチングターンオフを行なわさせることを特徴とする請求項2記載の双方向DC−DCコンバータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−261136(P2009−261136A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107209(P2008−107209)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年10月20日社団法人電気学会中国支部発行の「平成19年度電気・情報関連学会中国支部 第58回連合大会講演論文集」に発表
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年10月20日社団法人電気学会中国支部発行の「平成19年度電気・情報関連学会中国支部 第58回連合大会講演論文集」に発表
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】
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