説明

双腕ロボットの肩幅空間制限装置及びその装置を具えた双腕ロボット

【課題】双腕ロボットの稼動中に、人が双腕ロボットの側方から近づいても衝突することがなく、双腕ロボットと人とが混在して安全に作業を行うことを可能とすることにある。
【解決手段】腕3を胴体1の左右両側にそれぞれ配置した双腕ロボットの肩幅空間を制限する装置において、腕3の肩関節13を、肩ヨー軸13aと肩ピッチ軸13bとで構成し、腕3の先端部が双腕ロボットの前方の所定範囲内に位置するように肩ヨー軸13aの可動範囲を制限する肩ヨー軸可動範囲制限手段を具えたことを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、双腕ロボットの肩幅空間を制限する装置及びその装置を具えた双腕ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、国内の製造業においては、人的能力を活用したセル生産方式(需要に対応した変機種変量生産方式)が盛んである。一方で、国内の製造業には、社会の少子高齢化による人手不足対策やさらなる生産効率の向上のために、コンピュータによる総合自動化方式へと生産方式を変え、社会環境の変化に対応していく動きがある。
【0003】
このような市場動向から、人的能力が中心のセル生産方式の作業においても、単純で単調な作業を繰り返す組立て作業などは、人間に代わって人間と混在して稼動できる双腕ロボットへのニーズが高まっている。
【0004】
ところで従来、人間に代わって作業できる双腕ロボットとして、いわゆる人間型ロボットのように左右の腕に肩関節として少なくとも2軸の可動軸(ピッチ軸及びロール軸)を持った形態のロボットが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−238350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のロボットのように、人間らしい腕の動きだけを考慮して肩関節にピッチ軸及びロール軸を持たせると、ロボットの前方での作業のために手先の姿勢を変化させる際に、肩のロール軸が大きな角度で作動することがあるため、脇が開く状態すなわち肘がロボットの側方に突出する状態となり、ロボットの稼動中は、人がロボットの側方に安全に近づくことができないという問題があった。
【0006】
それゆえこの発明は、双腕ロボットの肩幅空間を制限することにより、ロボットの稼動中に、人がロボットの動作範囲内に進入してもロボットと衝突することがなく、ロボットと人とが混在して安全に作業を行うことを可能とする、双腕ロボットの肩幅空間制限装置及び、その装置を具えた双腕ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、この発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置は、腕を胴体の左右両側にそれぞれ配置した双腕ロボットの肩幅空間を制限する装置において、前記腕の肩関節を、肩ヨー軸と肩ピッチ軸とで構成し、前記腕の先端部が前記双腕ロボットの前方の所定範囲内に位置するように前記肩ヨー軸の可動範囲を制限する肩ヨー軸可動範囲制限手段を具えたことを特徴とするものである。またこの発明の双腕ロボットは、前記肩幅空間制限装置を具えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
かかる双腕ロボットの肩幅空間制限装置及び、その装置を具えた双腕ロボットにあっては、腕の肩関節が肩ヨー軸と肩ピッチ軸との2つの可動軸で構成され、さらにその肩ヨー軸の回動範囲が、肩ヨー軸可動範囲制限手段によって、前記腕の先端部が前記双腕ロボットの前方の所定範囲内に位置するように制限される。なお、この明細書中「可動軸」とは、駆動用モータと減速機とを具え、その減速機の出力によって所定軸線周りに二部材を相対的に回動させる回動機構または、駆動用モータと減速機とを具え、その減速機の出力によって所定軸線に沿って二部材を相対的に直線移動させる直線移動機構を意味する。
【0009】
従って、この発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置及び、その装置を具えたこの発明の双腕ロボットによれば、腕の肩関節が肩ヨー軸と肩ピッチ軸とで構成されていて肩ロール軸を持たないことから、双腕ロボットの作業エリアが双腕ロボットの前方の所定範囲である場合には、作業指令(例えば、手先の位置・姿勢の指令)によってその双腕ロボットが如何なる動作状態になっても、常に脇を締めた状態のままで作業をすることとなるので、腕の肘が双腕ロボットの左右側方に突出することがなく、双腕ロボットの稼動中に双腕ロボットの左右側方に人もしくは物体が近づいても衝突することがない。
【0010】
一方で、双腕ロボットが前方の作業エリアで作業している間に、双腕ロボットの腕の左右側方に人もしくは物体が近づいた場合でも、肩ヨー軸可動範囲制限手段が肩ヨー軸の可動範囲を、腕の先端部が双腕ロボットの前方の所定範囲内に位置するように制限するので、双腕ロボットはその腕の左右側方で作業することができないことから、人もしくは物体と双腕ロボットの腕とが衝突することがないため、人と双腕ロボットとが隣接して安全に作業を行うことが可能となる。
【0011】
さらに、人もしくは物体が双腕ロボットの腕の左右側方に存在していて、肩ヨー軸の可動範囲が制限されている間も、双腕ロボットは肩ヨー軸以外の腕の可動軸(例えば肩ピッチ軸、肘ピッチ軸、手首ロール軸、手首ピッチ軸、手首ヨー軸)等を自由に動かすことができ、肩ヨー軸もその制限された可動範囲内では動かすことができる。従って、人もしくは物体が双腕ロボットの腕の左右側方に存在する間も、双腕ロボットは全体の動作を停止する必要がなく、前方の作業エリアで作業を継続させることができ、それゆえ双腕ロボットの作業効率を高めることができる。
【0012】
なお、この発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置及び、その装置を具えたこの発明の双腕ロボットにおいては、前記胴体は、腰ヨー軸を具え、また当該装置は、その腰ヨー軸の回動を制限する腰ヨー軸回動制限手段を具えてもよく、このようにすれば、双腕ロボットの左右側方に人もしくは物体が存在する場合に腰ヨー軸の回動を制限(例えば停止あるいは範囲制限)でき、その左右側方に人もしくは物体が存在しない場合は適宜作業空間を拡大することができる。
【0013】
また、この発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置及び、その装置を具えたこの発明の双腕ロボットにおいては、腕は、肘に近い部分ほど胴体に近くなるように傾いて延在していても良く、このようにすれば、双腕ロボットの腕の肘を肩幅の地面方向への投影面内に納めることができるので、双腕ロボットの幅を狭めることができ、必要設置面積を減少させることができる。また、腕が肘に近い部分ほど胴体に近くなるように胴体側に傾いて延在していることから、人間らしい形態を奏することができ、周囲が受ける威圧感や恐怖心を減ずることができる。
【0014】
さらに、この発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置及び、その装置を具えたこの発明の双腕ロボットにおいては、前記肩ヨー軸の軸線は、下方へ行くほど前記胴体に近くなるように傾いて延在していても良く、このようにすれば、双腕ロボットの腕が肩ヨー軸の軸線周りに回動しても肘が双腕ロボットの左右側方に突出しづらいので、人と双腕ロボットとが隣接して作業をする際の安全性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置の一実施例を具える、この発明の双腕ロボットの一実施例の全体を示す斜視図、図2は、その実施例の双腕ロボットの全体を示す正面図、図3は上記実施例の双腕ロボットの側面図、図4は上記実施例の双腕ロボットの平面図、図5は上記実施例の双腕ロボットの背面図、図6(a)は、上記実施例の双腕ロボットが前方の所定作業空間内で作業する場合のその双腕ロボットの左腕を示す正面図、図6(b)〜(f)はその左腕の動作状態を示す平面図、そして図7(a),(b)は、上記実施例の双腕ロボットにおいて左肩ヨー軸を双腕ロボット自身からみて左方向に90度回動させた場合及び腰ヨー軸を双腕ロボット自身からみて左方向に90度回動させた場合をそれぞれ示す説明図である。
【0016】
ここで、図6中の角度Θは、双腕ロボットの初期状態を図1から図5に示す状態とした場合にその初期状態での肩ヨー軸の回動角度(この場合0度)と、その肩ヨー軸が回動した状態における回動角度とがなす角度を示しており、さらにその角度Θは、図6中の肩ヨー軸を中心として右回りを−(マイナス)、左回りを+(プラス)としている。
【0017】
図1に示すように、上記実施例の双腕ロボットの肩幅空間制限装置を具える、上記実施例の双腕ロボットは、胴体1と、その胴体1のロボット自身から見て左右側方(図2,4,5では右側及び左側)に位置する二本の腕3とを具えるとともに、胴体1の上端部に、例えば視覚センサを搭載した図示しない頭を支持する首関節5を具えており、その首関節5は、頭を軸線P1周りに前後に傾動させる首ピッチ軸と、その頭を軸線Y1周りに左右に回動させる首ヨー軸とを可動軸として有している。またこの実施例の双腕ロボットは、下端部が床面に固定されて上端部で胴体1を支持する円柱状の支持脚7を具えるとともに、その支持脚7の上端部と胴体1の下端部との間に腰関節9を具えており、その腰関節9は、胴体1を支持脚7に対して軸線Y1周りに左右に回動させる腰ヨー軸9aを可動軸として有している。
【0018】
さらにこの実施例の双腕ロボットは、胴体1と各腕3の上腕11との間の肩関節13と、各腕3の上腕11と下腕15との間の肘関節17と、各腕3の下腕15とここでは図示しない手との間の手首関節19と、各腕3の下腕15に設けられた下腕ねじり関節21とをそれぞれ具えており、これらの関節の可動軸は、下記の如く各軸線周りに回動もしくは傾動するものである。
【0019】
すなわち、肩関節13は、図2及び図5に示すように、胴体1の左右の側面に設けられた略コ字状をなす二つのブラケット23に挟まれて配置され、胴体1に対し腕3全体を軸線Y2周りに相対的に左右に回動させる肩ヨー軸13aと、その肩ヨー軸13aの軸線Y2と互いに直交して軸線P2を配置され、胴体1に対し腕3全体をその軸線P2周りに相対的に前後に傾動させる肩ピッチ軸13bとを可動軸として有している。ここで、上記ブラケット23の先端部は、胴体1に対して斜め下方に15度傾いて配置されていることから、各肩ヨー軸13aの軸線Y2は、図2に示すように、胴体1の上下方向に延在する中心線である上記軸線Y1に対して胴体1側に15度傾いて、下方へ行くほど胴体1に近くなるように延在しており、それに伴い、各肩ヨー軸13aの軸線Y2と互いに直交する各肩ピッチ軸13bの軸線P2も、床面に対して15度傾いている。そして腕3の上腕11は、肘関節17に近い部分ほど胴体1に近くなるように傾いて延在している。
【0020】
さらに、図1に示すように、各肘関節17は、上腕11に対し下腕15を、軸線P2に平行な軸線P3周りに上下に傾動させる肘ピッチ軸17aを可動軸として有し、また各手首関節19は、下腕15に対してここでは図示しない手を軸線P4周りに相対的に上下に傾動させる手首ピッチ軸19aと、その手を軸線P4に直交する軸線Y3周りに相対的に左右に回動させる手首ヨー軸19bとを可動軸として有し、そして下腕ねじり関節21は、下腕15に対して、手首関節19を軸線R周りにねじる下腕ロール軸21aを可動軸として有しており、結果として各腕は、合計6つの可動軸、すなわち6自由度を有し、これら可動軸の軸配置により、この二本の腕3は特異点がなく自由な姿勢を作ることが可能である。
【0021】
ここで、図6(a),(b)に示すように、この実施例の双腕ロボットの作業空間が当該双腕ロボットの前方のA4横エリア27(縦210mm、横297mm)内に設定されている場合、双腕ロボットの各腕3の手首関節19ひいては手が、図6(c)〜(f)に左腕について例示するようにその作業空間の最大範囲、すなわちA4横エリア27の外周端縁上に沿って移動すると、肩ヨー軸13aの初期位置(肩ピッチ軸13bの軸線P2が、中心軸線Y1と左右肩ヨー軸13aの軸線Y2とを含む平面内に位置する位置)からの、肩ヨー軸13aの回動角度Θは、−3度から−74度までの範囲内で変化する。
【0022】
さらに、この実施例の双腕ロボットは、各関節の駆動モータの作動を制御する図示しない通常の制御装置を具えるとともに、その制御装置に接続された、双腕ロボットにその左右側方から人もしくは物体が接近したことを検知して検知信号を出力する図示しない接近検知センサを具えており、これら制御装置と接近検知センサとは、この実施例の肩幅空間制限装置の肩ヨー軸可動範囲制限手段及び腰ヨー軸回動制限手段を構成している。
【0023】
かかるこの実施例の肩幅空間制限装置及びその肩幅空間制限装置を具えるこの実施例の双腕ロボットにあっては、腕3の肩関節13を肩ヨー軸13aと肩ピッチ軸13bとの二つの可動軸で構成し、さらに上記制御装置が、双腕ロボットへの左右側方からの人もしくは物体の接近を検知して上記接近検知センサが出力する検知信号に基づいて、肩ヨー軸13aの回動範囲を例えば0度から−75度までの範囲内に電気的に制限するとともに腰ヨー軸9aの回動位置を真正面向きの0度に電気的に制限(固定)する。なお、かかる回動制限には、例えば肩ヨー軸13a及び腰ヨー軸9aの回動角度をそれぞれ絶対角で検出するアブソリュートエンコーダを用いると望ましい。
【0024】
従って、この実施例の肩幅空間制限装置及びその肩幅空間制限装置を具えるこの実施例の双腕ロボットによれば、腕3の肩関節13が肩ロール軸を持たないことから、双腕ロボットの作業領域が上方から見て双腕ロボットの前方のA4横エリア27内の場合には、作業指令(例えば、手先の位置・姿勢の指令)によってその双腕ロボットが如何なる動作状態になっても、肩ヨー軸13aの回動角度Θは−3度から−74度の範囲内にあり、双腕ロボットが常に脇を締めた状態のままで作業をすることとなるので、左右の腕3の肘関節17が双腕ロボットの左右側方に突出することがなく、双腕ロボットの稼動中に双腕ロボットの左右側方に人もしくは物体が近づいても左右の腕3と衝突することがない。
【0025】
一方で、双腕ロボットが上方から見て前方のA4横エリア27内の作業空間で作業している間に、双腕ロボットにその左右側方から人もしくは物体が近づくと、その接近を検知して上記接近検知センサが検知信号を出力し、その信号に基づき上記制御装置が、腕3の先端部の手首関節19が上方から見て双腕ロボットの前方のA4横エリア27より僅かに広い所定エリア内に位置するように、肩ヨー軸13aの回動範囲を例えば0度から−75度までの範囲内に制限するとともに、腰ヨー軸9aの回動位置を真正面向きの0度に戻してその向きに固定するので、仮にこの状態から双腕ロボットが作業指令に基づきその双腕ロボットの左右側方に作業範囲を拡大しようとしても、人もしくは物体が上記接近検知センサに検知される範囲内に存在する間は双腕ロボットは図7(a)に示す如く肩ヨー軸13aを左右側方へ大きく回動させて作業範囲を拡大することができず、それゆえ人もしくは物体と双腕ロボットの腕3とは衝突することがなく、人と双腕ロボットとが隣接して安全に作業を行うことが可能となる。
【0026】
さらに、人もしくは物体が双腕ロボットの腕3の左右側方にいる間、すなわち肩ヨー軸13aの回動範囲が電気的に制限されている間も、双腕ロボットは肩ヨー軸13a及び腰ヨー軸9a以外の可動軸を自由に動かすことができ、肩ヨー軸13aも制限された回動範囲内では動かすことができる。従って、人もしくは物体が双腕ロボットの腕3の左右側方に存在する間も、双腕ロボット全体の動作を停止する必要はなく、前方のA4横エリア27の作業空間内で作業を継続させることができ、それゆえ双腕ロボットの作業効率を高めることができる。
【0027】
さらに、この実施例の肩幅空間制限装置及びその肩幅空間制限装置を具えるこの実施例の双腕ロボットによれば、胴体1が腰ヨー軸9aを具え、また上記制御装置が、その腰ヨー軸9aの回動も上記接近検知センサの検知信号に基づき電気的に制限(固定)するので、双腕ロボットの腕3の左右側方に人もしくは物体が存在する場合には腰ヨー軸9aの回動を制限して、図7(b)に示すように腰ヨー軸9aの回動により作業空間を拡大することがないようにでき、その一方、双腕ロボットの腕3の左右側方の近くに人もしくは物体が存在しない場合は、適宜作業空間を拡大することができる。
【0028】
また、この実施例の肩幅空間制限装置及びその肩幅空間制限装置を具えるこの実施例の双腕ロボットによれば、腕3の上腕11が、肘関節17に近い部分ほど胴体1に近くなるように胴体1側に傾いて延在していることから、双腕ロボットの肩幅を狭くすることができるとともに、肘を肩幅の地面方向への投影面内に納めることができるので、双腕ロボットの幅を狭めることができ、必要設置面積を減少させることができる。また、腕3が胴体1側に傾いて延在していることから、人間らしい形態を奏することができ、周囲が受ける威圧感や恐怖心を減ずることができる。
【0029】
さらに、この実施例の肩幅空間制限装置及びその肩幅空間制限装置を具えるこの実施例の双腕ロボットによれば、肩ヨー軸13aの軸線Y2が、下方へ行くほど胴体1に近くなるように傾いて延在していることから、双腕ロボットの腕3が肩ヨー軸13aの軸線Y2周りに回動しても肘関節17が双腕ロボットの左右側方に突出しづらいので、人と双腕ロボットとが隣接して作業をする際の安全性をより高めることができる。
【0030】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述した実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更することができるものであり、例えば、胴体1を支持脚7で床面に固定せずに天井から吊り下げてもよく、もしくは人間型ロボットのように可動脚を設けてもよい。さらに、肩ヨー軸13a及び/又は腰ヨー軸9aの回動を制限するために制御装置に入力する信号は、頭に設けた視覚センサからの信号でもよい。そして、肩ヨー軸可動範囲制限手段は、上記例の電気的なものに代えてあるいは加えて、例えばストッパ部材を肩ヨー軸と干渉する位置と干渉しない位置との間で動かして肩ヨー軸の可動範囲を機械的に制限するものを用いても良く、また腰ヨー軸回動制限手段も同様に、上記例の電気的なものに代えてあるいは加えて、腰ヨー軸の回動を機械的に制限するものを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0031】
かくしてこの発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置及び、その装置を具えたこの発明の双腕ロボットによれば、腕の肩関節が肩ヨー軸と肩ピッチ軸とで構成されていて肩ロール軸を持たないことから、双腕ロボットの作業エリアが双腕ロボットの前方の所定範囲である場合は、作業指令(例えば、手先の位置・姿勢の指令)によりその双腕ロボットが如何なる動作状態になっても、常に脇を締めた状態のままで作業をすることとなるので、腕の肘が双腕ロボットの左右側方に突出することがなく、双腕ロボットの稼動中に双腕ロボットの左右側方に人もしくは物体が近づいても衝突することがない。
【0032】
一方で、双腕ロボットが前方の作業エリアで作業している間に、双腕ロボットの腕の左右側方に人もしくは物体が近づいた場合でも、肩ヨー軸可動範囲制限手段が肩ヨー軸の回動範囲を、腕の先端部が双腕ロボットの前方の所定範囲内に位置するように制限するので、双腕ロボットはその腕の左右側方で作業することができないことから、人もしくは物体と双腕ロボットの腕部とが衝突することがないため、人と双腕ロボットとが隣接して安全に作業を行うことが可能となる。
【0033】
さらに、人もしくは物体が双腕ロボットの腕部の左右側方に存在していて、肩ヨー軸の回動範囲が制限されている間も、双腕ロボットは肩ヨー軸以外の腕の可動軸(例えば肩ピッチ軸、肘ピッチ軸、手首ロール軸、手首ピッチ軸、手首ヨー軸)等を自由に動かすことができ、肩ヨー軸もその制限された回動範囲内で動かすことができる。従って、人もしくは物体が双腕ロボットの腕の左右側方に存在する間も、双腕ロボットは全体の動作を停止する必要がなく、前方の作業エリアで作業を継続させることができ、それゆえ双腕ロボットの作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の双腕ロボットの肩幅空間制限装置の一実施例を具える、この発明の双腕ロボットの一実施例の全体を示す斜視図である。
【図2】上記実施例の双腕ロボットの全体を示す正面図である。
【図3】上記実施例の双腕ロボットの側面図である。
【図4】上記実施例の双腕ロボットの平面図である。
【図5】上記実施例の双腕ロボットの背面図である。
【図6】(a)は、上記実施例の双腕ロボットが前方の作業空間内で作業する場合のその双腕ロボットの左腕を示す正面図、(b)〜(f)はその左腕の動作状態を示す平面図である。
【図7】(a),(b)は、上記実施例の双腕ロボットにおいて左肩ヨー軸を双腕ロボット自身からみて左方向に90度回動させた場合及び腰ヨー軸を双腕ロボット自身からみて左方向に90度回動させた場合をそれぞれ示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1 胴体
3 腕
5 首関節
7 支持脚
9 腰関節
9a 腰ヨー軸
11 上腕
13 肩関節
13a 肩ヨー軸
13b 肩ピッチ軸
15 下腕
17 肘関節
17a 肘ピッチ軸
19 手首関節
19a 手首ピッチ軸
19b 手首ヨー軸
21 下腕ねじり関節
21a 下腕ロール軸
23 ブラケット
27 A4横エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕を胴体の左右両側にそれぞれ配置した双腕ロボットの肩幅空間を制限する装置において、
前記腕の肩関節を、肩ヨー軸と肩ピッチ軸とで構成し、
前記腕の先端部が前記双腕ロボットの前方の所定範囲内に位置するように前記肩ヨー軸の可動範囲を制限する肩ヨー軸可動範囲制限手段を具えたことを特徴とする、双腕ロボットの肩幅空間制限装置。
【請求項2】
前記胴体は、腰ヨー軸を具え、
前記腰ヨー軸の回動を制限する腰ヨー軸回動制限手段を具えたことを特徴とする、請求項1に記載の双腕ロボットの肩幅空間制限装置。
【請求項3】
前記腕は、肘に近い部分ほど前記胴体に近くなるように傾いて延在していることを特徴とする、請求項1または2に記載の肩幅空間制限装置。
【請求項4】
前記肩ヨー軸の軸線は、下方へ行くほど前記胴体に近くなるように傾いて延在していることを特徴とする、請求項1から3までの何れかに記載の肩幅空間制限装置。
【請求項5】
腕を胴体の左右両側にそれぞれ配置した双腕ロボットにおいて、
請求項1から4までの何れかに記載の肩幅空間制限装置を具えたことを特徴とする、双腕ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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