説明

反り量測定装置、該反り量測定装置を有する浮上搬送コンベア、及び反り量測定方法

【課題】薄板Sの反り量の測定を測定するための装置(反り量測定装置47)を簡易なものにすること。
【解決手段】薄板Sを浮上させた仮想の浮上状態をシミュレーションして求められかつ薄板Sの固有の反り量と関連づけて薄板Sの板幅方向の位置と浮上量との関係を示す浮上挙動テーブルを参照しつつ、計測された薄板Sの浮上量に基づいて、薄板Sの固有の反り量を推定することにより、薄板Sの反り量を測定すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薄板ガラス等の薄板の反り量を測定するための反り量測定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーン搬送の分野においては、薄板ガラス等の薄板の平坦度を検査する際には、薄板を定盤の平坦な上面に載置して、隙間ゲージを定盤の上面と薄板の裏面との間に挿入することにより、人手によって薄板の反り量を測定している。しかしながら、薄板を定盤の上面に載置した際に、薄板には自重が働いており、重力の影響を受けない薄板の固有の反り量、換言すれば、薄板の内部応力のみによる薄板の固有の反り量を測定することができない。そのため、薄板の固有の反り量を測定することを可能にした反り量測定方法も開発されおり(特許文献1参照)、先行技術に係る反り量測定方法の構成について簡単に説明すると、次のようになる。
【0003】
即ち、先行技術に係る反り量測定方法にあっては、測定ヘッドの上面に形成されたノズルから浮上ガスを噴出させて、浮上ガスの圧力によって薄板を浮上させる。次に、薄板の浮上中に、測定ヘッドのノズルからの浮上ガスの噴出を停止すると共に、測定ヘッドの上方に配設されたレーザ距離センサによって薄板の表面までの距離を計測する。そして、薄板の速度がほぼ0になった時、換言すれば、薄板が自由落下する直前の無重力状態の時に、レーザ距離センサによって計測された薄板の表面までの距離に基づいて薄板の反り量を算出する。これにより、薄板の固有の反り量を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−68620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、先行技術に係る反り量測定方法にあっては、薄板を固有の反り量よりも高く浮上させており、薄板の固有の反り量が大きい場合には、それに伴って、薄板を浮上量を高く設定する必要がある。一方、薄板の浮上量を高く設定すると、薄板の姿勢維持及び薄板と周辺機器との干渉回避を考慮しなければならず、薄板の反り量を測定するための装置(反り量測定装置)が大掛かりなものになるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の反り量測定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴は、薄板の固有の反り量を測定するための反り量測定装置において、薄板の浮上量を計測する浮上量計測手段と、薄板を浮上させた仮想の浮上状態をシミュレーションして求められかつ薄板の固有の反り量と関連づけて薄板の板幅方向の位置と浮上量との関係を示す浮上挙動テーブル(浮上量テーブル)を記憶する浮上挙動テーブル記憶手段と、前記浮上挙動テーブル記憶手段に記憶された前記浮上挙動テーブルを参照しつつ、前記浮上量計測手段によって計測された薄板の浮上量に基づいて、薄板の固有の反り量を推定する反り量推定手段と、を具備したことを要旨とする。
【0008】
なお、本願の特許請求の範囲及び明細書において、「薄板」とは、例えば薄板ガラス、薄板金属、薄板樹脂等を含む意である。
【0009】
第1の特徴によると、薄板を浮上させて、前記浮上量計測手段によって薄板の浮上量を計測する。そして、前記反り量推定手段により、前記浮上挙動テーブルを参照しつつ、前記浮上量計測手段によって計測された薄板の浮上量に基づいて、薄板の固有の反り量を推定する。これにより、薄板の固有の反り量に応じて薄板の浮上量を設定することなく、薄板の固有の反り量を測定することができる。
【0010】
本発明の第2の特徴は、薄板を浮上させた浮上状態で搬送方向へ搬送する浮上搬送コンベアにおいて、コンベア本体と、前記コンベア本体に設けられ、薄板を搬送方向へ搬送する搬送機構と、前記コンベア本体に搬送方向に沿って配設され、内部が浮上ガスを噴出する浮上ガス供給源に接続され、上面に浮上ガスを噴出するノズルが形成された複数の浮上ユニットと、第1の特徴からなる反り量測定装置と、を具備したことを要旨とする。
【0011】
なお、本願の特許請求の範囲及び明細書において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたこと、及び一体形成されたことを含む意であって、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、「浮上ガス」とは、圧縮空気(エア)、アルゴンガス、窒素ガス等を含む意である。
【0012】
第2の特徴によると、前記浮上ガス供給源の作動によって各浮上ユニットの内部に浮上ガスを供給して、各浮上ユニットの前記ノズルから浮上ガスを噴出させると共に、前記搬送機構を適宜に動作させる。これにより、浮上ガスの圧力によって薄板を浮上させた浮上状態で、搬送方向へ搬送(搬送方向へ浮上搬送)することができる。
【0013】
薄板の浮上状態中(薄板の浮上搬送中を含む)において、前述のように、前記反り量推定手段により、前記浮上挙動テーブルを参照しつつ、前記浮上量計測手段によって計測された薄板の浮上量に基づいて、薄板の固有の反り量を推定する。これにより、薄板の固有の反り量に応じて薄板の浮上量を設定することなく、薄板の固有の反り量を測定することができる。
【0014】
本発明の第3の特徴は、薄板における固有の反り量を測定するための反り量測定方法において、薄板を浮上させる浮上ステップと、前記浮上ステップの終了後に、薄板の浮上量を計測する浮上量計測ステップと、前記浮上量計測ステップの終了後に、薄板を浮上させた仮想の浮上状態をシミュレーションして求められかつ薄板の固有の反り量と関連づけて薄板の板幅方向の位置と浮上量との関係を示す浮上挙動テーブルを参照しつつ、計測された薄板の浮上量に基づいて、薄板の固有の反り量を推定する反り量推定ステップと、を具備したことを要旨とする。
【0015】
第3の特徴によると、薄板の固有の反り量と関連づけて薄板の板幅方向の位置と浮上量との関係を示す前記浮上挙動テーブルを参照しつつ、計測された薄板の浮上量に基づいて、薄板の固有の反り量を推定しているため、薄板の固有の反り量に応じて薄板の浮上量を設定することなく、薄板の固有の反り量を測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄板の固有の反り量に応じて薄板の浮上量を設定することなく、薄板の固有の反り量を測定できるため、薄板の姿勢維持及び薄板と周辺機器との干渉回避を考慮する必要がなくなり、薄板の反り量の測定を測定するための装置(反り量測定装置)を簡易なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る浮上搬送コンベアの正面図である。
【図2】図2(a)は、浮上挙動テーブルを示す図、図2(b)は、薄板の反りパターンを示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る浮上搬送コンベアの部分平面図である。
【図4】図3におけるIV-IV線に沿った図である。
【図5】図3におけるV-V線に沿った拡大断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る反り量測定方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図1から図6を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向を、「FR」は、後方向を、「L」は、左方向を、「R」は、右方向をそれぞれ指してある。
【0019】
図1、図3、及び図4に示すように、本発明の実施形態に係る浮上搬送コンベア1は、例えば薄板ガラス等の薄板Sを浮上させた浮上状態で搬送方向(前後方向)へ搬送するものであって、搬送方向へ延びたコンベア本体(コンベアフレーム)3を具備している。また、コンベア本体3は、搬送方向へ延びた支持台5と、この支持台5の下側に一体的に設けられた複数本の支柱7と、複数本の支柱7間に連結するように設けられた複数の連結部材9とを備えている。
【0020】
支持台5には、薄板Sを搬送方向へ搬送する搬送機構11が設けられており、この搬送機構11の具体的な構成は、次のようになる。
【0021】
支持台5の左端部付近には、薄板Sの裏面を支持する複数の第1搬送ローラ13がブラケット15を介して搬送方向に間隔を置いて設けられており、各第1搬送ローラ13は、搬送方向に直交する搬送幅方向(左右方向)に平行な軸心周りに回転可能である。そして、支持台5の左端部付近の適宜位置には、対応関係にある複数の第1搬送ローラ13を搬送幅方向に平行な軸心周りに回転させる複数(1つのみ図示)の第1搬送モータ17が搬送方向に沿って設けられている。更に、各第1搬送モータ17の出力軸には、搬送方向へ延びた第1駆動軸19がカップリング等を介して一体的に設けられており、各第1駆動軸19は、支持台5にベアリング等を介して軸心(第1駆動軸19の軸心)周りに回転可能に支持されてあって、対応関係にある複数の第1搬送ローラ13のローラ軸にウォーム21とウォームホイール23を介して連動連結してある。
【0022】
同様に、支持台5の右端部付近には、薄板Sの裏面を支持する複数の第2搬送ローラ25がブラケット27を介して搬送方向に間隔を置いて設けられており、各第2搬送ローラ25は、搬送幅方向に平行な軸心周りに回転可能である。そして、支持台5の左端部付近の適宜位置には、対応関係にある複数の第2搬送ローラ25を搬送幅方向に平行な軸心周りに回転させる複数(1つのみ図示)の第2搬送モータ29が搬送方向に沿って設けられている。更に、各第2搬送モータ29の出力軸には、搬送方向へ延びた第2駆動軸31がカップリング等を介して一体的に設けられており、各第2駆動軸31は、支持台5にベアリング等を介して軸心(第2駆動軸31の軸心)周りに回転可能に支持されてあって、対応関係にある複数の第2搬送ローラ25のローラ軸にウォーム33とウォームホイール35を介して連動連結してある。
【0023】
図3及び図5に示すように、支持台5には、圧縮空気(浮上ガスの一例)を収容する複数のチャンバー37が搬送方向へ間隔を置いて配設されており、各チャンバー37は、搬送幅方向へ延びている。また、各チャンバー37の下面には、圧縮空気をチャンバー37の内部へ供給する圧縮空気供給源(浮上ガス供給源の一例)としての供給ファン(本発明の実施形態にあっては、ファンフィルタユニット)39がブラケット41を介して設けられている。
【0024】
各チャンバー37の上面には、圧縮空気の圧力によって薄板Sを浮上させる中空状の複数の浮上ユニット43が搬送方向及び搬送幅方向に沿って配設されており、換言すれば、支持台5には、複数の浮上ユニット43が複数のチャンバー37を介して搬送方向及び搬送幅方向に沿って配設されている。また、複数の浮上ユニット43によって、搬送領域(薄板Sを搬送するための領域)Tが区画形成(形成)されるようになっている。
【0025】
各浮上ユニット43の内部は、チャンバー37の内部に連通してあって、換言すれば、チャンバー37を介して供給ファン39に接続されており、各浮上ユニット43の上面には、圧縮空気を噴出する矩形枠状のノズル45が外縁に沿って形成されている。ここで、各浮上ユニット43のノズル45は、特開2006−182563号公報に示すように、鉛直方向(浮上ユニット43の上面に垂直は方向)に対して浮上ユニット43の中心側へ傾斜するように構成されている。
【0026】
なお、浮上ユニット43の上面に矩形枠状のノズル45が形成される代わりに、スリット状又は丸穴状の複数のノズルが形成されるようにしても構わない。
【0027】
続いて、浮上搬送コンベア1の搬送動作について説明する。
【0028】
各供給ファン39の作動によって各チャンバー37の内部に圧縮空気を供給することにより、各浮上ユニット43の内部に圧縮空気を供給して、各浮上ユニット43のノズル45から圧縮空気を噴出させる。また、各第1搬送モータ17の駆動によって複数の第1搬送ローラ13を軸心周りに回転させると共に、各第2搬送モータ29の駆動によって複数の第2搬送ローラ25を軸心周りに回転させる。これにより、圧縮空気の圧力によって薄板Sを浮上させた浮上状態で、複数の浮上ユニット43と薄板Sの間に圧縮空気溜まり層(浮上ガス溜まり層の一例)Fを生成しつつ(図5参照)、搬送方向へ搬送(搬送方向へ浮上搬送)することができる。
【0029】
続いて、本発明の実施形態の要部(に反り量測定装置47)について説明する。
【0030】
図1に示すように、浮上搬送コンベア1は、薄板Sの反り量(最大反り量)を測定するための反り量測定装置47を具備しており、この反り量測定装置47の具体的な構成は、次のようになる。なお、反り量測定装置47による薄板Sの反り量の測定にあたっては、予め薄板Sの反りパターンが目視又は別の検査によって認識されていることを前提している。
【0031】
支持台5の左側の適宜位置には、L型の第1支持アーム49が設けられており、この第1支持アーム49の先端部は、搬送領域Tの上方に位置してある。また、第1支持アーム49の先端部には、薄板Sの板幅方向(搬送幅方向)の第1所定位置(板幅方向の一方側の所定位置)までの距離、換言すれば、薄板Sの板幅方向の第1所定位置における浮上量を計測する第1レーザ距離センサ51が設けられている。
【0032】
同様に、支持台5の右側の適宜位置には、L型の第2支持アーム53が設けられており、この第2支持アーム53の先端部は、搬送領域Tの上方に位置してある。また、第2支持アーム53の先端部には、薄板Sの板幅方向の第2所定位置(板幅方向の他方側の所定位置)までの距離、換言すれば、薄板Sの板幅方向の第2所定位置における浮上量を計測する第2レーザ距離センサ55が設けられている。
【0033】
なお、薄板Sの板幅方向の浮上量を計測する浮上量計測器として第1レーザ距離センサ51及び第2レーザ距離センサ55を用いる代わりに、CCDカメラ等の別の浮上量計測器を用いても構わない。
【0034】
支持台5の近傍には、コントローラ57が配設されており、このコントローラ57は、制御プログラム等を記憶するメモリと、制御プログラムの処理を実行するCPUとを備えてあって、コントローラ57には、第1レーザ距離センサ51及び第2レーザ距離センサ55が電気的に接続されている。また、コントローラ57のメモリは、浮上挙動テーブル記憶部59としての機能を有してあって、コントローラ57のCPUは、反り量推定部61としての機能及び平坦度判定部63としての機能を有している。そして、浮上挙動テーブル記憶部59、反り量推定部61、及び平坦度判定部63の具体的な内容は、次のようになる。
【0035】
浮上挙動テーブル記憶部59は、薄板Sの固有の反り量と関連づけて薄板Sの板幅方向の位置と浮上量との関係を示す浮上挙動テーブル(浮上量テーブル)を薄板Sの反りパターン毎に記憶するものであって、薄板Sが一般的な反りパターン(図2(b)参照)を有する場合には、浮上挙動テーブルの内容は、図2(a)に示すようになる。また、浮上挙動テーブルは、各浮上ユニット43のノズル45から圧縮空気を噴出させて、圧縮空気の圧力によって薄板Sを浮上させた仮想の浮上状態をシミュレーションして得られたものである。そして、薄板Sの板幅方向の位置と浮上量との関係は、次のような関係式によって表される。
【0036】
H(x)=f(P(x),E,A,W,δ,………) (関係式)
ここで、H(x)は、薄板Sの板幅方向の端部からxだけ離れた箇所における浮上量のことであって、P(x)は、各浮上ユニット43のノズル45から噴出された圧縮空気の圧力分布のことであって、圧縮空気の圧力分布は、xの関数になっている。また、Eは、薄板Sのヤング率のことであって、Aは、薄板Sの面積のことであって、Wは、薄板Sの重量のことである。更に、δは、薄板Sの固有の反り量のことであって、例えば3t〜20t(tは定数)を用いている。
【0037】
反り量推定部61は、浮上挙動テーブル記憶部59に記憶された浮上挙動テーブルを参照しつつ、第1レーザ距離センサ51及び第2レーザ距離センサ55によって計測された薄板Sの板幅方向の第1所定位置及び第2所定位置における浮上量に基づいて、薄板Sの固有の反り量を推定するものである。なお、薄板Sの固有の反り量の推定は、予め設定された適宜の補完式等を用いて行うものである。
【0038】
平坦度判定部63は、反り量推定部61によって推定された薄板Sの固有の反り量に基づいて、薄板Sの平坦度の良否を判定するものである。具体的には、平坦度判定部63は、反り量推定部61によって推定された薄板Sの固有の反り量が判定用の基準の反り量以下の場合には、薄板Sの平坦度を良好と判定し、反り量推定部61によって推定された薄板Sの固有の反り量が判定用の基準の反り量を越える場合には、薄板Sの平坦度を不良と判定するものである。なお、判定用の基準の反り量とは、薄板Sの反りパターン毎に経験的に設定された値である。
【0039】
続いて、本発明の実施形態に係る反り量測定方法について、作用を含めて説明する。
【0040】
本発明の実施形態に係る反り量測定方法は、薄板Sの反り量を測定するための方法であって、(i)浮上ステップ、(ii)浮上量計測ステップ、(iii)反り量推定ステップ、(iv)平坦度判定ステップを具備しており、各ステップの具体的な内容は、次のようになる。
【0041】
(i)浮上ステップ
各供給ファン39の作動によって各チャンバー37の内部に圧縮空気を供給することにより、各浮上ユニット43の内部に圧縮空気を供給して、各浮上ユニット43のノズル45から圧縮空気を噴出させる。これにより、圧縮空気の圧力によって薄板Sを浮上させる(図6におけるステップ1)。
【0042】
なお、薄板Sを浮上させるだけでなく、前述のように、薄板Sを浮上させた浮上状態で搬送方向へ搬送しても構わない。
【0043】
(ii)浮上量計測ステップ
浮上ステップの終了後に、第1レーザ距離センサ51によって薄板Sの板幅方向の第1所定位置における浮上量を計測すると共に、第2レーザ距離センサ55によって薄板Sの板幅方向の第2所定位置における浮上量を計測する(図6におけるステップ2)。
【0044】
(iii)反り量推定ステップ
浮上量計測ステップの終了後に、反り量推定部61により、浮上挙動テーブル記憶部59に記憶された浮上挙動テーブルを参照しつつ、第1レーザ距離センサ51及び第2レーザ距離センサ55によって計測された薄板Sの板幅方向の第1所定位置及び第2所定位置における浮上量に基づいて、薄板Sの固有の反り量を推定する(図6におけるステップ3)。
【0045】
ここで、前述のように、薄板Sの固有の反り量と関連づけて薄板Sの板幅方向の位置と浮上量との関係を示す浮上挙動テーブルを参照しつつ、計測された薄板Sの板幅方向の第1所定位置及び第2所定位置における浮上量に基づいて、薄板Sの固有の反り量を推定しているため、薄板Sの固有の反り量に応じて薄板Sの浮上量を設定することなく、薄板Sの固有の反り量を測定することができる。
【0046】
(iv)平坦度判定ステップ
反り量推定ステップの終了後に、平坦度判定部63により、反り量推定部61によって推定された薄板Sの固有の反り量に基づいて、薄板Sの平坦度の良否を判定する(図6におけるステップ4)。具体的には、反り量推定部61によって推定された薄板Sの固有の反り量が判定用の基準の反り量以下の場合には、平坦度判定部63によって薄板Sの平坦度を良好と判定する(図6におけるステップ4,5)。一方、反り量推定部61によって推定された薄板Sの固有の反り量が判定用の基準の反り量を越える場合には、平坦度判定部63によって薄板Sの平坦度を不良と判定する(図6におけるステップ4,6)。これにより、本発明の実施形態に係る反り量測定方法の一連のステップが終了する。
【0047】
なお、本発明の実施形態に係る反り量測定方法から平坦度判定ステップを省略しても構わない。
【0048】
以上の如く、本発明の実施形態によれば、薄板Sの固有の反り量に応じて薄板Sの浮上量を設定することなく、薄板Sの固有の反り量を測定できるため、薄板Sの姿勢維持及び薄板Sと周辺機器との干渉回避を考慮する必要がなくなり、薄板Sの反り量の測定を測定するための装置(反り量測定装置47)を簡易なものにすることができる。
【0049】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、第1レーザ距離センサ51及び第2レーザ距離センサ55によって計測された薄板Sの板幅方向の第1所定位置及び第2所定位置における浮上量に基づいて、薄板Sの固有の反り量を推定する代わりに、別の走査式レーザ距離センサを用い、この走査式レーザ距離センサを薄板Sの板幅方向に走査させつつ、走査式レーザ距離センサによって検出された薄板Sの浮上量に基づいて、薄板Sの固有の反り量を推定しても構わない。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0050】
S 薄板
T 搬送領域
1 浮上搬送コンベア
3 コンベア本体
5 支持台
11 搬送機構
13 第1搬送ローラ
17 第1搬送モータ
25 第2搬送ローラ
29 第2搬送モータ
37 チャンバー
39 供給ファン
43 浮上ユニット
45 ノズル
47 反り量測定装置
49 第1支持アーム
51 第1レーザ距離センサ
53 第2支持アーム
55 第2レーザ距離センサ
57 コントローラ
59 浮上挙動テーブル記憶部
61 反り量推定部
63 平坦度判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板の反り量を測定するための反り量測定装置において、
薄板の浮上量を計測する浮上量計測手段と、
薄板を浮上させた仮想の浮上状態をシミュレーションして求められかつ薄板の固有の反り量と関連づけて薄板の板幅方向の位置と浮上量との関係を示す浮上挙動テーブルを記憶する浮上挙動テーブル記憶手段と、
前記浮上挙動テーブル記憶手段に記憶された前記浮上挙動テーブルを参照しつつ、前記浮上量計測手段によって計測された薄板の浮上量に基づいて、薄板の固有の反り量を推定する反り量推定手段と、を具備したことを特徴とする反り量測定装置。
【請求項2】
前記反り量推定手段によって推定された薄板の固有の反り量に基づいて、薄板の平坦度の良否を判定する平坦度判定手段と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載の反り量測定装置。
【請求項3】
薄板を浮上させた浮上状態で搬送方向へ搬送する浮上搬送コンベアにおいて、
コンベア本体と、
前記コンベア本体に設けられ、薄板を搬送方向へ搬送する搬送機構と、
前記コンベア本体に搬送方向に沿って配設され、内部が浮上ガスを噴出する浮上ガス供給源に接続され、上面に浮上ガスを噴出するノズルが形成された複数の浮上ユニットと、
請求項1又は請求項2に記載の反り量測定装置と、を具備したことを特徴とする反り量測定装置を有する浮上搬送コンベア。
【請求項4】
薄板の反り量を測定するための反り量測定方法において、
薄板を浮上させる浮上ステップと、
前記浮上ステップの終了後に、薄板の浮上量を計測する浮上量計測ステップと、
前記浮上量計測ステップの終了後に、薄板を浮上させた仮想の浮上状態をシミュレーションして求められかつ薄板の固有の反り量と関連づけて薄板の板幅方向の位置と浮上量との関係を示す浮上挙動テーブルを参照しつつ、計測された薄板の浮上量に基づいて、薄板の固有の反り量を推定する反り量推定ステップと、を具備したことを特徴とする反り量測定方法。
【請求項5】
前記反り量推定ステップの終了後に、推定された薄板の固有の反り量に基づいて、薄板の平坦度の良否を判定する平坦度判定ステップと、を具備したことを特徴とする請求項4に記載の反り量測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−237243(P2011−237243A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108047(P2010−108047)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】