反射型マスクの製造方法
【課題】本発明は、吸収層の側面において下部が上部よりも欠落している場合に、その欠陥を補修し、信頼性の高い反射型マスクを得ることが可能であり、さらには歩留まりの向上を図ることが可能な反射型マスクの製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する補修工程を備えることを特徴とする反射型マスクの製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】本発明は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する補修工程を備えることを特徴とする反射型マスクの製造方法を提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)リソグラフィに用いられる反射型マスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの半導体素子は、回路パターンが描かれた原版であるマスクに露光光を照射し、当該パターンを縮小光学系を介して半導体基板(ウェハ)上に転写するフォトリソグラフィ工程を繰り返し行うことによって、大量生産されている。
【0003】
近年、半導体素子の微細化が進み、フォトリソグラフィの露光波長をより短くして解像度を上げる方法が検討されており、特に波長13.5nmのEUVリソグラフィの開発が進んでいる。
【0004】
EUVリソグラフィでは物質の光吸収の関係で透過型マスクが使えないため、Mo(モリブデン)とSi(シリコン)などの多層膜による反射を利用した反射型マスクが使用される。一般的に、EUVリソグラフィ用反射型マスク(以下、EUVマスクと称する場合がある。)としては、基板上に多層膜が形成され、多層膜上に吸収層がパターン状に形成されたものが用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
EUVマスクにおいて吸収層パターンに欠陥が存在すると、ウェハ上に転写された回路パターンに欠陥が生じることになる。そのため、EUVマスクの製造過程においては、通常、吸収層パターンの欠陥検査が行われ、欠陥が見つかった場合には欠陥修正が行われる。
【0006】
EUVマスクの欠陥には、パターンが余剰に存在している黒欠陥と、パターンが欠落している白欠陥とがある。黒欠陥の修正方法としては、アシストガスを吹きつけながら集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)や電子ビーム(EB:Electron Beam)を照射するガスアシストエッチング法により余剰なパターンを除去する方法が知られている。白欠陥の修正方法としては、FIBやEBを用いた化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によりパターンが欠落している部分に堆積膜を形成する方法が知られている。
【0007】
EUVマスクの欠陥検査では、検査光として深紫外線(DUV:Deep Ultra Violet)が使用されている。EUVマスクは、露光光であるEUVに対してコントラストを高く確保するように多層膜および吸収層が設計されているが、多層膜および吸収層は検査光として使用するDUVに対しては反射率の差が小さい。そこで、吸収層はDUVに対しても反射率が十分小さくなるように表面処理されている。例えば、吸収層表面に自然酸化膜を形成する、吸収層表面に酸素を導入するなどの手法が知られている。
【0008】
金属材料とその酸化物とではエッチング速度が異なるため、吸収層表面に形成された酸化膜と吸収層の内部とではエッチング速度が異なる。そのため、黒欠陥修正の場合、アシストガスを吹きつけながらFIBもしくはEBを照射すると、吸収層の側面において吸収層内部が酸化膜よりも過度にエッチングされ、吸収層パターンが垂直側面を有さなくなり、いわゆるサイドエッチングが発生しやすい。サイドエッチングが発生する要因は、FIBまたはEBの照射量が過剰である、アシストガスが吸収層内部と過剰に反応する、などが知られている。サイドエッチング発生箇所は正常なパターンと比較してEUV光吸収能力が損なわれるため、パターン精度が低下するという問題がある。
【0009】
この問題を解決するために、吸収層のエッチングおよび酸化を交互に複数回実施し、酸化膜を形成しつつエッチングすることで、サイドエッチングを抑制する技術が提案されている(例えば特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−319542号公報
【特許文献2】特開2009−98369号公報
【特許文献3】特開2009−210805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
サイドエッチングの発生によってパターン精度が低下する場合には、不良品となり、歩留まりが下がる要因となる。そこで、従来は、上記のようにサイドエッチングが発生しないように反射型マスクを製造していた。
【0012】
しかしながら、吸収層のエッチングおよび酸化を繰り返し行う黒欠陥の修正方法では、吸収層のエッチングの際に真空度の安定化や加工領域の指定に時間がかかるため、修正に長時間を要する。さらに、吸収層の三次元構造を加味した厳密な膜厚を予測した修正が必要となる。
【0013】
また、マスクブランクスに異物が含まれている場合、EUVマスクの製造過程において異物が除去されることで、パターンが欠落し、吸収層パターンが垂直側面を有さなくなる場合もある。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、吸収層の側面において下部が上部よりも欠落している場合に、その欠陥を補修し、信頼性の高い反射型マスクを得ることが可能であり、さらには歩留まりの向上を図ることが可能な反射型マスクの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する補修工程を備えることを特徴とする反射型マスクの製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、反射型マスクが、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する場合に、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去し、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成することで、側面欠陥部を補修し、反射型マスクの転写特性を回復することが可能である。したがって、反射型マスクの歩留まりを飛躍的に向上させることが可能となる。
【0017】
上記発明においては、上記補修工程前に、上記吸収層積層体の余剰に起因する黒欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する黒欠陥修正工程を有し、上記側面欠陥部が上記黒欠陥修正工程にて形成されたものであることが好ましい。黒欠陥部を修正する際にはサイドエッチングが発生しやすいため、歩留まり低下の原因となるが、本発明を適用することにより歩留まりを高めることが可能である。また、本発明においては側面欠陥部を補修することができるため、従来のように長時間を要してサイドエッチングが生じないように黒欠陥部の修正を行う必要がないので、効率良く反射型マスクを製造することが可能となる。
【0018】
また本発明においては、上記側面欠陥部除去工程では、走査型プローブ顕微鏡の探針で、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去することが好ましい。低ダメージでの吸収層積層体の加工が可能だからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、反射型マスクが、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する場合に、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去し、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成することで、側面欠陥部を補修し、反射型マスクの転写特性を回復することが可能であり、その結果、歩留まりの向上を図ることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の反射型マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図3】本発明の反射型マスクの製造方法における黒欠陥修正工程の一例を示す工程図である。
【図4】本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図5】本発明の反射型マスクの製造方法における側面欠陥部除去工程の一例を示す概略平面図および断面図である。
【図6】本発明の反射型マスクの製造方法における側面欠陥部除去工程の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図7】本発明の反射型マスクの製造方法における堆積膜形成工程の一例を示す概略平面図および断面図である。
【図8】本発明の反射型マスクの製造方法における堆積膜形成工程の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図9】本発明の反射型マスクの製造方法に用いられる反射型マスクの一例を示す概略平面図および断面図である。
【図10】実施例1のシミュレーション1における反射型マスクを示す概略平面図および断面図である。
【図11】実施例1のシミュレーション1によるサイドエッチング量と転写寸法のズレ量との関係を示すグラフである。
【図12】実施例1のシミュレーション2における反射型マスクを示す概略平面図および断面図である。
【図13】実施例1のシミュレーション2による堆積膜厚と転写寸法のズレ量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の反射型マスクの製造方法について詳細に説明する。
【0022】
本発明の反射型マスクの製造方法は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する補修工程を備えることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の反射型マスクの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)〜(e)は、本発明の反射型マスクの製造方法の一例を示す工程図である。図1(a)に例示する反射型マスク1Aは、基板2と、基板2上に形成された多層膜3と、多層膜3上に形成されたキャッピング層4と、キャッピング層4上にパターン状に形成された吸収層積層体7とを有している。吸収層積層体7は、キャッピング層4上に形成された第1吸収層5と、第1吸収層5上に形成された第2吸収層6とを有する。例えば、第1吸収層5がTa(タンタル)などの酸化されやすい金属材料を含有する場合、第2吸収層6は自然酸化膜となる。また、EUVリソグラフィ用反射型マスクのDUVによるパターン欠陥検査を容易にするために、第2吸収層6には検査光のDUVに対して反射率が低い材料を用い、第1吸収層5には露光光のEUVに対して吸収率が高い材料を用いることもある。この反射型マスク1Aは、吸収層積層体7の側面にて第1吸収層5が第2吸収層6よりも過度に欠落している側面欠陥部10aを有している。
まず、図1(a)〜(c)に示すように、反射型マスク1Aの側面欠陥部10aに位置する吸収層積層体7を、走査型プローブ顕微鏡の探針11で削り除去する(側面欠陥部除去工程)。次に、図1(d)〜(e)に示すように、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bの上部に、原料ガス12を吹きつけながら、FIBまたはEB13を照射して、堆積膜8を形成する(堆積膜形成工程)。これにより、側面欠陥部10aが補修された反射型マスク1Bが得られる(図1(b)〜(e)、補修工程)。
【0024】
図2(a)〜(d)および図1(a)〜(e)は、本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、基板2上に、多層膜3と、キャッピング層4と、第1吸収層5および第2吸収層6を含む吸収層積層体7とが積層された反射型マスクブランクス1Cを準備する。次に、図示しないが、吸収層積層体7上にフォトレジストパターンを形成し、フォトレジストパターンの開口部に位置する吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をプラズマエッチングし、フォトレジストパターンを除去して、図2(b)に示すように吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をパターニングする。吸収層積層体7の加工の際には、図2(b)および図3(a)に示すように、吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)の余剰に起因する黒欠陥部20が形成される場合がある。なお、図2(b)は図3(a)のA−A線断面図であり、図3(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)のパターニング後、黒欠陥部20が検出された場合には、黒欠陥部20を修正するために、図2(c)に示すように、黒欠陥部20に、アシストガス21を吹きつけながら、FIBまたはEB22を照射して、黒欠陥部20に位置する吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をエッチングする。その結果、図2(d)に示すように、黒欠陥部20に位置する吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)が除去される。吸収層積層体7においては、上述したように、第2吸収層6が第1吸収層5の材料の酸化膜であったり、第2吸収層6が検査光のDUVに対して反射率が低い材料を含有し、第1吸収層5が露光光のEUVに対して吸収率が高い材料を含有していたりする。そのため、第1吸収層5および第2吸収層6のエッチング速度が異なり、それにより、図2(d)および図3(b)に示すように吸収層積層体7の側面において第1吸収層5が第2吸収層6よりも過度に除去されてしまう場合がある。すなわち、サイドエッチングが発生する場合がある。これは、吸収層積層体7の側面にて第1吸収層5が第2吸収層6よりも欠落している側面欠陥部10aとなる。なお、図2(d)は図3(b)のB−B線断面図であり、図3(b)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
そこで本発明においては、側面欠陥部10aを補修するために、上述の図1(a)〜(e)に示すように、反射型マスク1Aの側面欠陥部10aに位置する吸収層積層体7を、走査型プローブ顕微鏡の探針11で除去し(側面欠陥部除去工程)、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bの上部に、原料ガス12を吹きつけながらFIBまたはEB13を照射して、堆積膜8を形成する(堆積膜形成工程)。これにより、側面欠陥部10aが補修された反射型マスク1Bが得られる(補修工程)。
【0025】
図4(a)〜(e)は、本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図4(a)に示すように、基板2上に、多層膜3と、キャッピング層4と、第1吸収層5および第2吸収層6を含む吸収層積層体7とが積層された反射型マスクブランクス1Cを準備する。反射型マスクブランクスの製造時には、異物が付着したり混入したりする場合がある。例えば図4(a)に示すように、第1吸収層5に異物25が混入する場合がある。このような反射型マスクブランクス1Cを用いて、図4(b)に示すように吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をパターニングすると、吸収層積層体7のパターニング過程において異物25が除去されて、図4(c)に示すように吸収層積層体7の側面において第1吸収層5が第2吸収層6よりも欠落してしまう場合がある。これは、吸収層積層体7の側面にて第1吸収層5が第2吸収層6よりも欠落している側面欠陥部10aとなる。
そこで本発明においては、側面欠陥部10aを補修するために、上述の図1(a)〜(e)と同様に、図4(c)〜(e)に示すように、反射型マスク1Aの側面欠陥部10aに位置する吸収層積層体7を、走査型プローブ顕微鏡の探針11で除去し(側面欠陥部除去工程)、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bの上部に、原料ガス12を吹きつけながらFIBまたはEB13を照射して、堆積膜8を形成する(堆積膜形成工程)。これにより、側面欠陥部10aが補修された反射型マスク1Bが得られる(補修工程)。
【0026】
このように本発明においては、反射型マスクが、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する場合に、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去し、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成することで、側面欠陥部を補修し、良好な転写特性を備える反射型マスクを製造することが可能である。したがって本発明においては、反射型マスクが側面欠陥部を有する場合であっても、反射型マスクの転写特性を回復することができるので、反射型マスクの歩留まりを大幅に向上させることが可能となる。
【0027】
以下、本発明の反射型マスクの製造方法における各工程について説明する。
【0028】
1.補修工程
本発明における補修工程は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する工程である。
【0029】
以下、補修工程における側面欠陥部除去工程および堆積膜形成工程、ならびに側面欠陥部を有する反射型マスクについて説明する。
【0030】
(1)側面欠陥部除去工程
本発明における側面欠陥部除去工程は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する工程である。
【0031】
側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する方法としては、吸収層積層体を局所的に除去することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)の探針で削る方法、エネルギービームを照射する方法などを用いることができる。
【0032】
中でも、SPMの探針で除去する方法が好ましい。この方法では、サイドエッチングが起こらないからである。また、エネルギービームを照射する方法に比べて、吸収層積層体を除去する際の反射型マスクへのダメージを低減することができるからである。一般的にSPMは高さ方向の制御が困難であることから、反射型マスク表面を引っ掻いてしまうおそれがあるが、本発明における側面欠陥部では下層の第1吸収層が上層の第2吸収層よりも欠落しているため、そのような不具合が起こることなく修正が可能である。
【0033】
SPMの探針で除去する方法の場合、SPMの探針としては、特に限定されるものではなく、一般的に使用されている探針を用いることができ、例えばダイヤモンド探針等が挙げられる。
【0034】
エネルギービームを照射する方法の場合、エネルギービームとしては、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を局所的にエッチングできるものであれば特に限定されるものではないが、FIBまたはEBが好ましく用いられる。これらは、高度な微細加工が可能であり、微細な側面欠陥部にも対応できるからである。
この方法の場合、側面欠陥部に位置する吸収層積層体にアシストガスを供給しながらエネルギービームを照射することにより、吸収層積層体をガスアシストエッチングしてもよい。エネルギービームのみを用いる場合に比較して、吸収層積層体を良好にエッチングすることができる。FIBの場合、アシストガスを用いてもよく用いなくてもよい。一方、EBの場合、アシストガスが必要である。
エネルギービームの照射条件としては、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を局所的にエッチングでき、かつ、サイドエッチングが発生しないような条件であれば特に限定されるものではなく、適宜選択される。
従来、黒欠陥を修正する際に、サイドエッチングが発生しないように、吸収層のエッチングおよび酸化を繰り返し行う場合、修正に時間および手間を要するなどの不具合があった。これに対し本発明においては、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する際に、サイドエッチングが発生しないような条件に設定したとしても、側面欠陥部では下層の第1吸収層が上層の第2吸収層よりも欠落しており、第2吸収層が第1吸収層の材料の酸化膜である場合等には第2吸収層の厚みは薄いので、多大な時間および手間を要することなく修正が可能である。
【0035】
側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する際、図示しないが側面欠陥部に対して同等の大きさで吸収層積層体を除去してもよく、図5(a)、(b)に例示するように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を大きく除去してもよく、図6(a)、(b)に例示するように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を小さく除去してもよい。側面欠陥部を確実に補修するためには、側面欠陥部に対して吸収層積層体が大きく除去されるように設定することが好ましいが、側面欠陥部では第1吸収層は欠落しているものの第2吸収層は存在するので、側面欠陥部の位置を正確に検出するのが困難となる場合がある。そのため、側面欠陥部に対して吸収層積層体が小さく除去されることもある。
なお、図5(b)は図5(a)のC−C線断面図であり、図6(b)は図6(a)のD−D線断面図であり、図5(a)および図6(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
【0036】
吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部の形状としては、本発明における補修工程により反射型マスクの転写特性を回復することができれば特に限定されるものではなく、例えば側面欠陥部の形状と同じであってもよく異なっていてもよい。
【0037】
(2)堆積膜形成工程
本発明における堆積膜形成工程は、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する工程である。
【0038】
堆積膜の形成方法としては、通常、原料ガスを供給しながらエネルギービームを照射する方法が用いられる。
原料ガスとしては、FIBまたはEBを用いたCVD法を適用する場合に一般的に用いられるガスを使用することができる。例えば、フェナントレン、ナフタレン、ピレンなどの炭化水素系のガス、タングステンカルボニル(W(CO)6)、クロムカルボニル(Cr(CO)6)、コバルトカルボニル(Co2(CO)8)、鉄カルボニル(Fe(CO)5)等の金属カルボニル、Trimethyl(methylcyclopentadienyl)platinum(MeCpPt(Me)3)などの金属含有ガス、テトラエトキシシラン(TEOS)、1,3,5,7-Tetramethylcyclotetra-siloxaneなどのシリコン含有ガスを用いることができる。炭素を含む堆積膜は、形状制御が容易であるという利点を有する。また、タングステンやクロムなどの金属を含む堆積膜は、高い遮光性を得ることができるという利点を有する。
エネルギービームとしては、側面欠陥部除去部に局所的に堆積膜を形成することができるものであれば特に限定されないが、FIBまたはEBが好ましく用いられる。これらは、高度な微細加工が可能であり、微細な側面欠陥部除去部にも対応できるからである。中でも、ダメージを低減できることから、EBが好適である。
【0039】
堆積膜を形成する際、側面欠陥部除去部に対して同等の大きさで堆積膜を形成してもよく、側面欠陥部除去部に対して堆積膜を大きく形成してもよく、側面欠陥部除去部に対して堆積膜を小さく形成してもよい。側面欠陥部を確実に補修するためには、側面欠陥部除去部に対して堆積膜が大きく形成されるように設定することが好ましい。
また、堆積膜を形成する際、側面欠陥部に対して同等の大きさで堆積膜を形成してもよく、側面欠陥部に対して堆積膜を大きく形成してもよく、側面欠陥部に対して堆積膜を小さく形成してもよい。例えば図5(a)、(b)に示すように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を大きく除去した場合であって、図7(a)、(b)に例示するように側面欠陥部除去部10bに対して同等の大きさで堆積膜8を形成した場合には、側面欠陥部10aに対して堆積膜8は大きく形成される。また、例えば図6(a)、(b)に示すように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を小さく除去した場合であって、図8(a)、(b)に例示するように側面欠陥部除去部10bに対して同等の大きさで堆積膜8を形成した場合には、側面欠陥部10aに対して堆積膜8は小さく形成される。側面欠陥部を確実に補修するためには、側面欠陥部に対して堆積膜が大きく形成されるように設定することが好ましいが、側面欠陥部では第1吸収層は欠落しているものの第2吸収層は存在するので、側面欠陥部の位置を正確に検出するのが困難となる場合がある。そのため、側面欠陥部に対して堆積膜が小さく形成されることもある。このように側面欠陥部に対して堆積膜が小さく形成されている場合であっても、良好な転写特性を示す反射型マスクを得ることは可能である。
なお、図7(b)は図7(a)のE−E線断面図であり、図8(b)は図8(a)のF−F線断面図であり、図7(a)および図8(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
【0040】
堆積膜の厚みとしては、所望のEUVの吸収率が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、堆積膜の組成や、後述するように多層膜と吸収層積層体との間にバッファ層が形成されている場合にはバッファ層の厚みなどに応じて適宜選択される。炭化水素系のガスを用いて堆積膜を形成する場合、堆積膜の厚みは、例えば、5nm〜200nm程度とすることができ、好ましくは50nm〜150nmの範囲内である。堆積膜の厚みが薄すぎると、所望のEUVの吸収率を得ることが困難であり、堆積膜の厚みが厚すぎると、成膜に時間を要するからである。
【0041】
(3)側面欠陥部を有する反射型マスク
本発明における補修工程に用いられる反射型マスクは、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有するものである。
以下、反射型マスクにおける各構成について説明する。
【0042】
(a)側面欠陥部
本発明における反射型マスクの側面欠陥部は、吸収層積層体が垂直側面を有しておらず、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落しているものである。
【0043】
側面欠陥部は、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落しているものであればよく、側面欠陥部の形成要因としては特に限定されるものではない。例えば、図2(b)〜(d)に示すように側面欠陥部10aが黒欠陥部20の修正の際に形成されたものであってもよく、図4(a)〜(c)に示すように側面欠陥部10aが反射型マスクブランクス1Cの製造時に付着または混入した異物25に因るものであってもよく、図示しないが側面欠陥部が吸収層積層体(第1吸収層および第2吸収層)のパターニングの際に形成されたものであってもよい。中でも、側面欠陥部は黒欠陥部を修正する際に形成されたものであることが好ましい。黒欠陥部を修正する際にはサイドエッチングが発生しやすいため、歩留まり低下の原因となるが、本発明を適用することにより歩留まりを高めることができるからである。また、本発明においては側面欠陥部を補修することができるため、従来のように長時間を要してサイドエッチングが生じないように黒欠陥部の修正を行う必要がなく、効率良く反射型マスクを製造することができるからである。
【0044】
側面欠陥部の大きさとしては、特に限定されるものではなく、例えば、側面欠陥部の反射領域側の端部に対して垂直な方向の距離は、10nm〜500nm程度である。側面欠陥部の上記距離が短すぎるものは、側面欠陥部が存在していても転写特性に大きな影響を及ぼさない場合があり、側面欠陥部の上記距離が長すぎるものは、第1吸収層が欠落しているために第2吸収層の自己支持性が損なわれる場合がある。
なお、側面欠陥部の反射領域側の端部に対して垂直な方向の距離とは、図9(a)、(b)に示すような側面欠陥部10aの反射領域側の端部に対して垂直な方向の距離dをいう。側面欠陥部が黒欠陥部を修正する際に形成されたものである場合には、側面欠陥部10aの上記距離dは、サイドエッチング量とも称される。
なお、図9(b)は図9(a)のG−G線断面図であり、図9(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
【0045】
(b)吸収層積層体
本発明における反射型マスクに用いられる吸収層積層体は、多層膜上にパターン状に形成され、多層膜上に形成された第1吸収層と第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有するものであり、反射型マスクを用いたEUVリソグラフィにおいてEUVを吸収するものである。
【0046】
第1吸収層の材料としては、EUVを吸収可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Ta、TaN、TaSi、TaSiN、TaGe、TaGeN、TaB、TaBN、Taを主成分とする材料などのTaまたはTa合金を含むTa系材料や、Cr、Crを主成分としN、O、Cから選ばれる少なくとも1つの成分を含有する材料などのCrを含むCr系材料が用いられる。さらに、WN、TiN等も使用可能である。
【0047】
第2吸収層の材料としては、EUVを吸収可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、第2吸収層は、上記第1吸収層の材料の酸化膜であってもよく、上記第1吸収層とは別に成膜されたものであってもよい。
中でも、第2吸収層の材料は、EUVリソグラフィ用反射型マスクのDUVによるパターン欠陥検査を容易にするために、検査光のDUVに対する反射率が低いものであることが好ましい。このような第2吸収層の材料としては、例えば、上記Ta系材料の酸化物や、Cr(クロム)、SiO(酸化ケイ素)などが挙げられる。
【0048】
本発明においては、上述したように側面欠陥部が黒欠陥修正工程にて形成されたものであることが好ましいことから、第2吸収層の材料は、上記第1吸収層の材料よりもエッチング速度が遅いものであることが特に好ましい。このような第2吸収層の材料としては、上記第1吸収層の材料に応じて適宜選択される。第1吸収層および第2吸収層の材料の好ましい組み合わせとしては、具体的に、第1吸収層が上記Ta系材料を含有し、第2吸収層が上記Ta系材料の酸化物を含有する場合などを挙げることができる。
【0049】
第1吸収層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、CVD法、蒸着法などが用いられる。
【0050】
第2吸収層の成膜方法としては、第1吸収層および第2吸収層の材料に応じて適宜選択される。例えば、第2吸収層が第1吸収層の材料の酸化物を含有する場合、第2吸収層は第1吸収層の材料の自然酸化膜であってもよく、第1吸収層表面を酸化して第2吸収層(酸化膜)を形成してもよく、第1吸収層成膜時と同じ原料を用い、酸素を導入しながら成膜して第2吸収層(酸化膜)を形成してもよい。具体的に、第1吸収層が上記Ta系材料を含有し、第2吸収層が上記Ta系材料の酸化物を含有する場合、TaまたはTa合金は非常に酸化されやすいことから、第2吸収層は第1吸収層の材料の自然酸化膜となり得る。また、第2吸収層が第1吸収層の材料の酸化物を含有しない場合、第2吸収層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、CVD法、蒸着法などが用いられる。
【0051】
第1吸収層および第2吸収層をパターン状に形成する方法としては、通常、フォトリソグラフィ法が用いられる。具体的には、多層膜が形成された基板上に第1吸収層および第2吸収層を形成し、第2吸収層上にフォトレジスト層を形成し、フォトレジスト層をパターニングし、フォトレジストパターンをマスクとして第1吸収層および第2吸収層をエッチングし、残存するフォトレジストパターンを除去して、第1吸収層および第2吸収層をパターン状に形成する。フォトリソグラフィ法としては、一般的な方法を用いることができる。
【0052】
(c)多層膜
本発明における反射型マスクに用いられる多層膜は、基板上に形成されるものである。
多層膜の材料としては、一般的に反射型マスクの多層膜に使用されるものを用いることができ、中でも、EUVに対する反射率が極めて高い材料を用いることが好ましい。反射型マスク使用時においてコントラストを高めることができるからである。EUVを反射する多層膜としては、通常、Mo/Siの周期多層膜が用いられる。また、特定の波長域で高い反射率が得られる多層膜として、例えば、Ru/Siの周期多層膜、Mo/Beの周期多層膜、Mo化合物/Si化合物の周期多層膜、Si/Nbの周期多層膜、Si/Mo/Ruの周期多層膜、Si/Mo/Ru/Moの周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ruの周期多層膜等も用いることができる。
【0053】
多層膜を構成する各層の膜厚や、各層の積層数としては、使用する材料に応じて異なるものであり、適宜調整される。例えば、Mo/Siの周期多層膜としては、数nm程度の厚さのMo膜とSi膜とが40層〜60層ずつ積層された多層膜を用いることができる。
【0054】
多層膜の厚みとしては、例えば280nm〜420nm程度とすることができる。
多層膜の成膜方法としては、例えば、イオンビームスパッタ法やマグネトロンスパッタ法などが用いられる。
【0055】
(d)キャッピング層
本発明に用いられる反射型マスクにおいては、多層膜と吸収層積層体との間にキャッピング層が形成されていてもよい。キャッピング層は、多層膜の酸化防止や、反射型マスクの洗浄時の保護のために設けられるものである。キャッピング層が形成されていることにより、多層膜の最表面がSi膜やMo膜である場合には、Si膜やMo膜が酸化されるのを防ぐことができる。Si膜やMo膜が酸化されると、多層膜の反射率が低下するおそれがある。
【0056】
キャッピング層の材料としては、上記機能を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、SiやRu等が挙げられる。
また、キャッピング層の厚みとしては、例えば2nm〜15nm程度とすることができる。
キャッピング層の成膜方法としては、スパッタリング法等を挙げることができる。
【0057】
(e)バッファ層
本発明に用いられる反射型マスクにおいては、多層膜と吸収層積層体との間にバッファ層が形成されていてもよい。バッファ層は、下層の多層膜に損傷を与えるのを防止するために設けられるものである。バッファ層が形成されていることにより、吸収層積層体をドライエッチング等の方法でパターンエッチングする際に、下層の多層膜がダメージを受けるのを防止することができる。
本発明において、多層膜上に上記キャッピング層が形成されている場合には、通常、多層膜上にキャッピング層およびバッファ層の順に積層される。
【0058】
バッファ層の材料としては、耐エッチング性が高いものであればよく、通常、吸収層積層体とエッチング特性の異なる材料、すなわち吸収層積層体とのエッチング選択比が大きい材料が用いられる。バッファ層および吸収層積層体のエッチング選択比は5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。さらに、バッファ層の材料としては、低応力で、平滑性に優れた材料であることが好ましい。特にバッファ層の平滑性は、0.3nmRms以下であることが好ましい。このような観点から、バッファ層の材料は、微結晶またはアモルファス構造であることが好ましい。
このようなバッファ層の材料としては、例えば、SiO2、Al2O3、Cr、CrN等が挙げられる。
【0059】
また、バッファ層の厚みとしては、例えば5nm〜100nm程度とすることができる。
バッファ層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などが挙げられる。SiO2を用いる場合は、RFマグネトロンスパッタ法によりSiO2ターゲットを用いてArガス雰囲気下で、多層膜上にSiO2を成膜するのが好ましい。
【0060】
(f)基板
本発明における反射型マスクに用いられる基板としては、一般的に反射型マスクの基板に使用されるものを用いることができ、例えば、ガラス基板や金属基板を使用することができる。中でも、ガラス基板が好ましく用いられる。ガラス基板は、良好な平滑性および平坦度が得られるので、特に反射型マスク用基板として好適である。ガラス基板の材料としては、例えば、石英ガラス、低熱膨張係数を有するアモルファスガラス(例えばSiO2−TiO2系ガラス等)、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等が挙げられる。また、金属基板の材料としては、例えば、シリコン、Fe−Ni系のインバー合金等が挙げられる。
【0061】
基板は、反射型マスクの高反射率および転写精度を得るために、平滑性が0.2nmRms以下であることが好ましく、また平坦度が100nm以下であることが好ましい。なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。また、平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を示す値である。この値は、基板表面を元に最小二乗法で定められる平面を焦平面としたとき、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある最も低い位置の高低差の絶対値である。また、上記平滑性は10μm角エリアでの平滑性であり、上記平坦度は142mm角エリアでの平坦度である。
【0062】
また、基板の厚みとしては、例えば6mm〜7mm程度とすることができる。
【0063】
2.黒欠陥修正工程
本発明の反射型マスクの製造方法は、上記補修工程前に、上記吸収層積層体の余剰に起因する黒欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する黒欠陥修正工程を有することが好ましい。上述したように、黒欠陥部を修正する際にはサイドエッチングが発生しやすいため、歩留まり低下の原因となるが、本発明を適用することにより歩留まりを高めることができるからである。また、本発明においてはサイドエッチングのような側面欠陥部を補修することができるため、従来のように長時間を要してサイドエッチングが生じないように黒欠陥部の修正を行う必要がなく、効率良く反射型マスクを製造することができるからである。
【0064】
黒欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する方法としては、エネルギービームを照射することで吸収層積層体を局所的にエッチングすることができる方法であれば特に限定されるものではない。中でも、黒欠陥部に位置する吸収層積層体にアシストガスを供給しながらエネルギービームを照射することにより、吸収層積層体をガスアシストエッチングする方法が好ましく用いられる。エネルギービームのみを用いる場合に比較して、吸収層積層体を良好にエッチングすることができるからである。また、ガスアシストエッチングではサイドエッチングが発生しやすいため、本発明を適用するのが好ましい。
【0065】
エネルギービームとしては、黒欠陥部に位置する吸収層積層体を局所的にエッチングできるものであれば特に限定されるものではないが、FIBまたはEBが好ましく用いられる。これらは、高度な微細加工が可能であり、微細な黒欠陥部にも対応できるからである。
【0066】
3.側面欠陥部検査工程
本発明の反射型マスクの製造方法は、上記補修工程前に、上記反射型マスクの上記側面欠陥部を検査する側面欠陥部検査工程を有することが好ましい。上記黒欠陥修正工程が行われる場合には、上記黒欠陥修正工程後に、側面欠陥部検査工程が行われる。
【0067】
側面欠陥部の検査方法としては、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を検出できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、電子顕微鏡を用いる方法が挙げられる。
【0068】
4.その他の工程
本発明の反射型マスクの製造方法は、上記の補修工程、黒欠陥修正工程、および側面欠陥部検査工程の他に、反射型マスクブランクスを準備する準備工程、吸収層をパターニングする吸収層パターニング工程などを有していてもよい。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
(1)シミュレーション1
本発明の効果をシミュレーションにより詳しく検証した。シミュレータは、Panoramic Technology社製EM-Suiteを使用した。またシミュレーションは、実際のEUVマスク構造およびEUV転写装置の光学系をモデルに実施した。
EUVマスクの構造は、図10(a)、(b)に示すように、酸化珪素からなる基板2上に、モリブデンおよび珪素(膜厚2.8nm/4.2nm)の40対からなる多層膜3と、珪素からなるキャッピング層4(膜厚11nm)とが順に積層され、キャッピング層4上に、線幅225nmのラインパターンの吸収層積層体7(窒化タンタルからなる第1吸収層5およびタンタルの酸化物からなる第2吸収層6)(膜厚51nm)が形成された構造とした。さらに、側面欠陥部10a(サイドエッチング発生箇所)として、サイドエッチング量31を0〜100nmの範囲で変化させた。なお、図10(b)は図10(a)のH−H線断面図であり、図10(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
転写条件は、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFET(Small Field Exposure Tool)の光学系に設定し、NA=0.3、σ=0.3/0.7(inner/outer)とした。転写寸法は、ウェハ上へ5分の1縮小露光した光学像から寸法を算出した。
【0071】
図11にサイドエッチング量31と転写寸法のズレ量との関係を示す。なお、吸収層積層体7の線幅は225nmであり、縮小倍率は5分の1であるので、図11において転写寸法のズレ量=0nmは転写寸法=45nmを表す。図11から読み取ると、サイドエッチング量31が30nm以上となると転写寸法が5%変動することが予想される。そのため、30nm以上のサイドエッチングが発生した場合にはEUV転写特性の回復が必要となる。
【0072】
(2)シミュレーション2
次に、本発明における補修工程がEUV転写特性の回復に有効であることをシミュレーションにより検証した。
シミュレーションに使用した堆積膜の位置と形状は、図10(a)、(b)および図12(a)、(b)に示すように、側面欠陥部10a(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体7を除去し、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bに矩形の堆積膜8を形成したモデルで検証した。なお、図12(b)は図12(a)のI−I線断面図であり、図12(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。EUVマスクのその他の構造は、上記の図10(a)、(b)に示すEUVマスクの構造と同様とした。
シミュレーション条件は上記シミュレーション1と同様とした。堆積膜8は炭化水素として光学定数を指定した。
【0073】
図13に、サイドエッチング量31を30nm,50nm,75nm,100nmとした条件における、堆積膜厚と転写寸法のズレ量との関係を示す。なお、吸収層積層体7の線幅は225nmであり、縮小倍率は5分の1であるので、図13において転写寸法のズレ量=0nmは転写寸法=45nmを表す。
シミュレーションの結果、サイドエッチング量毎に堆積膜を適切な膜厚で形成することで、転写寸法のズレ量はゼロ、つまり正常部と同等な転写寸法に近づき、本発明における補修工程が側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)のEUV転写特性の回復に有効であることが確認された。
シミュレーション結果によると、サイドエッチング量が50nm発生した場合は、堆積膜を30nm程度堆積することでEUV転写寸法のズレ量を5%以内とすることができる。同様に、サイドエッチング量が100nm発生した場合は、堆積膜を40nm程度、望ましくは50nm程度堆積することで、EUV転写寸法のズレ量を5%以内とすることができる。なお、シミュレーションでは堆積膜として炭化水素を想定したが、より遮光能力の高いタングステンやクロムなどの金属含有膜であってもよい。
【0074】
[実施例2]
まず、酸化珪素からなる基板上に、モリブデンと珪素(膜厚2.8nm/4.2nm)の40対からなる多層膜と、珪素からなるキャッピング層(膜厚11nm)とが順に積層され、キャッピング層上に吸収層積層体(窒化タンタルからなる第1吸収層およびタンタルの酸化物からなる第2吸収層)(膜厚51nm)がパターン状に形成された反射型マスクを準備した。第1吸収層および第2吸収層のパターンは、線幅225nmのラインパターンであり、黒欠陥部として幅100nm、長さ300nmサイズのラインが膨らんだ黒欠陥部を形成した。
次に、黒欠陥部に、フッ化キセノンからなるエッチング用ガスを導入しながらFIBを照射するガスアシストエッチングにより、黒欠陥部をエッチング除去した。FIB装置には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製フォトマスク修正用FIB装置SIR7(ガリウムイオン、加速電圧15kV)を使用した。黒欠陥部修正箇所を電子顕微鏡で観察したところ、吸収層積層体にサイドエッチングが発生していることが確認された。このとき、サイドエッチング量は100nmであった。
次に、上記FIB装置を用いて、エッチングガスを導入しながらFIBを照射することで、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)にある吸収層積層体を除去した。
次いで、上記FIB装置を用いて、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に、原料ガスを導入しながらFIBを照射することで、堆積膜を形成した。このとき、原料ガスにはフェナントレンを使用した。上記実施例1で算出したとおり、堆積膜を50nmの膜厚で堆積した。
【0075】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【0076】
[実施例3]
黒欠陥部の修正、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体の除去、および堆積膜の形成において、FIBに替えてEBを利用したこと以外は、実施例2と同様にした。
EB装置には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製FIB−SEMダブルビーム装置XVision200を使用した。このとき、EBの加速電圧は1keVとし、原料ガスにはフェナントレンを使用した。
【0077】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【0078】
[実施例4]
黒欠陥部の修正においてFIBを利用し、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体の除去においてFIBに替えて走査型プローブ顕微鏡の探針を利用し、堆積膜の形成においてFIBに替えてEBを利用したこと以外は、実施例2と同様にした。
走査型プローブ顕微鏡には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製マスク欠陥修正装置SPM6300を使用した。
EB装置には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製FIB−SEMダブルビーム装置XVision200を使用した。このとき、EBの加速電圧は1keVとし、原料ガスにはフェナントレンを使用した。
【0079】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【0080】
[実施例5]
まず、酸化珪素からなる基板上に、モリブデンと珪素(膜厚2.8nm/4.2nm)の40対からなる多層膜と、珪素からなるキャッピング層(膜厚11nm)とが順に積層され、キャッピング層上に吸収層積層体(窒化タンタルからなる第1吸収層およびタンタルの酸化物からなる第2吸収層)(膜厚51nm)がパターン状に形成された反射型マスクを準備した。第1吸収層および第2吸収層のパターンは、線幅225nmのラインパターンである。
反射型マスクを、(株)ニューフレアテクノロジー社製、マスクパターン欠陥検査装置NPI−6000EUVαを使用してパターン欠陥検査を行ったところ、線幅225nmのラインパターンに欠陥が検出された。この欠陥を電子顕微鏡で観察したところ、吸収層積層体に幅75nm、長さ75nmのサイドエッチングが確認された。
次に、実施例2と同様にして、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)にある吸収層積層体を除去し、堆積膜を形成した。この際、フェナントレンを原料ガスとしてFIBを照射することで、膜厚50nmの堆積膜を形成した。
【0081】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B … 反射型マスク
1C … 反射型マスクブランクス
2 … 基板
3 … 多層膜
4 … キャッピング層
5 … 第1吸収層
6 … 第2吸収層
7 … 吸収層積層体
8 … 堆積膜
10a … 側面欠陥部
10b … 側面欠陥部除去部
11 … 走査型プローブ顕微鏡の探針
12 … 原料ガス
13 … FIBまたはEB
20 … 黒欠陥部
21 … アシストガス
22 … FIBまたはEB
【技術分野】
【0001】
本発明は、極紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)リソグラフィに用いられる反射型マスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの半導体素子は、回路パターンが描かれた原版であるマスクに露光光を照射し、当該パターンを縮小光学系を介して半導体基板(ウェハ)上に転写するフォトリソグラフィ工程を繰り返し行うことによって、大量生産されている。
【0003】
近年、半導体素子の微細化が進み、フォトリソグラフィの露光波長をより短くして解像度を上げる方法が検討されており、特に波長13.5nmのEUVリソグラフィの開発が進んでいる。
【0004】
EUVリソグラフィでは物質の光吸収の関係で透過型マスクが使えないため、Mo(モリブデン)とSi(シリコン)などの多層膜による反射を利用した反射型マスクが使用される。一般的に、EUVリソグラフィ用反射型マスク(以下、EUVマスクと称する場合がある。)としては、基板上に多層膜が形成され、多層膜上に吸収層がパターン状に形成されたものが用いられている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
EUVマスクにおいて吸収層パターンに欠陥が存在すると、ウェハ上に転写された回路パターンに欠陥が生じることになる。そのため、EUVマスクの製造過程においては、通常、吸収層パターンの欠陥検査が行われ、欠陥が見つかった場合には欠陥修正が行われる。
【0006】
EUVマスクの欠陥には、パターンが余剰に存在している黒欠陥と、パターンが欠落している白欠陥とがある。黒欠陥の修正方法としては、アシストガスを吹きつけながら集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)や電子ビーム(EB:Electron Beam)を照射するガスアシストエッチング法により余剰なパターンを除去する方法が知られている。白欠陥の修正方法としては、FIBやEBを用いた化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)によりパターンが欠落している部分に堆積膜を形成する方法が知られている。
【0007】
EUVマスクの欠陥検査では、検査光として深紫外線(DUV:Deep Ultra Violet)が使用されている。EUVマスクは、露光光であるEUVに対してコントラストを高く確保するように多層膜および吸収層が設計されているが、多層膜および吸収層は検査光として使用するDUVに対しては反射率の差が小さい。そこで、吸収層はDUVに対しても反射率が十分小さくなるように表面処理されている。例えば、吸収層表面に自然酸化膜を形成する、吸収層表面に酸素を導入するなどの手法が知られている。
【0008】
金属材料とその酸化物とではエッチング速度が異なるため、吸収層表面に形成された酸化膜と吸収層の内部とではエッチング速度が異なる。そのため、黒欠陥修正の場合、アシストガスを吹きつけながらFIBもしくはEBを照射すると、吸収層の側面において吸収層内部が酸化膜よりも過度にエッチングされ、吸収層パターンが垂直側面を有さなくなり、いわゆるサイドエッチングが発生しやすい。サイドエッチングが発生する要因は、FIBまたはEBの照射量が過剰である、アシストガスが吸収層内部と過剰に反応する、などが知られている。サイドエッチング発生箇所は正常なパターンと比較してEUV光吸収能力が損なわれるため、パターン精度が低下するという問題がある。
【0009】
この問題を解決するために、吸収層のエッチングおよび酸化を交互に複数回実施し、酸化膜を形成しつつエッチングすることで、サイドエッチングを抑制する技術が提案されている(例えば特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−319542号公報
【特許文献2】特開2009−98369号公報
【特許文献3】特開2009−210805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
サイドエッチングの発生によってパターン精度が低下する場合には、不良品となり、歩留まりが下がる要因となる。そこで、従来は、上記のようにサイドエッチングが発生しないように反射型マスクを製造していた。
【0012】
しかしながら、吸収層のエッチングおよび酸化を繰り返し行う黒欠陥の修正方法では、吸収層のエッチングの際に真空度の安定化や加工領域の指定に時間がかかるため、修正に長時間を要する。さらに、吸収層の三次元構造を加味した厳密な膜厚を予測した修正が必要となる。
【0013】
また、マスクブランクスに異物が含まれている場合、EUVマスクの製造過程において異物が除去されることで、パターンが欠落し、吸収層パターンが垂直側面を有さなくなる場合もある。
【0014】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、吸収層の側面において下部が上部よりも欠落している場合に、その欠陥を補修し、信頼性の高い反射型マスクを得ることが可能であり、さらには歩留まりの向上を図ることが可能な反射型マスクの製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する補修工程を備えることを特徴とする反射型マスクの製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、反射型マスクが、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する場合に、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去し、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成することで、側面欠陥部を補修し、反射型マスクの転写特性を回復することが可能である。したがって、反射型マスクの歩留まりを飛躍的に向上させることが可能となる。
【0017】
上記発明においては、上記補修工程前に、上記吸収層積層体の余剰に起因する黒欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する黒欠陥修正工程を有し、上記側面欠陥部が上記黒欠陥修正工程にて形成されたものであることが好ましい。黒欠陥部を修正する際にはサイドエッチングが発生しやすいため、歩留まり低下の原因となるが、本発明を適用することにより歩留まりを高めることが可能である。また、本発明においては側面欠陥部を補修することができるため、従来のように長時間を要してサイドエッチングが生じないように黒欠陥部の修正を行う必要がないので、効率良く反射型マスクを製造することが可能となる。
【0018】
また本発明においては、上記側面欠陥部除去工程では、走査型プローブ顕微鏡の探針で、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去することが好ましい。低ダメージでの吸収層積層体の加工が可能だからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、反射型マスクが、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する場合に、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去し、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成することで、側面欠陥部を補修し、反射型マスクの転写特性を回復することが可能であり、その結果、歩留まりの向上を図ることが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の反射型マスクの製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図3】本発明の反射型マスクの製造方法における黒欠陥修正工程の一例を示す工程図である。
【図4】本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。
【図5】本発明の反射型マスクの製造方法における側面欠陥部除去工程の一例を示す概略平面図および断面図である。
【図6】本発明の反射型マスクの製造方法における側面欠陥部除去工程の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図7】本発明の反射型マスクの製造方法における堆積膜形成工程の一例を示す概略平面図および断面図である。
【図8】本発明の反射型マスクの製造方法における堆積膜形成工程の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図9】本発明の反射型マスクの製造方法に用いられる反射型マスクの一例を示す概略平面図および断面図である。
【図10】実施例1のシミュレーション1における反射型マスクを示す概略平面図および断面図である。
【図11】実施例1のシミュレーション1によるサイドエッチング量と転写寸法のズレ量との関係を示すグラフである。
【図12】実施例1のシミュレーション2における反射型マスクを示す概略平面図および断面図である。
【図13】実施例1のシミュレーション2による堆積膜厚と転写寸法のズレ量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の反射型マスクの製造方法について詳細に説明する。
【0022】
本発明の反射型マスクの製造方法は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する補修工程を備えることを特徴とするものである。
【0023】
本発明の反射型マスクの製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)〜(e)は、本発明の反射型マスクの製造方法の一例を示す工程図である。図1(a)に例示する反射型マスク1Aは、基板2と、基板2上に形成された多層膜3と、多層膜3上に形成されたキャッピング層4と、キャッピング層4上にパターン状に形成された吸収層積層体7とを有している。吸収層積層体7は、キャッピング層4上に形成された第1吸収層5と、第1吸収層5上に形成された第2吸収層6とを有する。例えば、第1吸収層5がTa(タンタル)などの酸化されやすい金属材料を含有する場合、第2吸収層6は自然酸化膜となる。また、EUVリソグラフィ用反射型マスクのDUVによるパターン欠陥検査を容易にするために、第2吸収層6には検査光のDUVに対して反射率が低い材料を用い、第1吸収層5には露光光のEUVに対して吸収率が高い材料を用いることもある。この反射型マスク1Aは、吸収層積層体7の側面にて第1吸収層5が第2吸収層6よりも過度に欠落している側面欠陥部10aを有している。
まず、図1(a)〜(c)に示すように、反射型マスク1Aの側面欠陥部10aに位置する吸収層積層体7を、走査型プローブ顕微鏡の探針11で削り除去する(側面欠陥部除去工程)。次に、図1(d)〜(e)に示すように、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bの上部に、原料ガス12を吹きつけながら、FIBまたはEB13を照射して、堆積膜8を形成する(堆積膜形成工程)。これにより、側面欠陥部10aが補修された反射型マスク1Bが得られる(図1(b)〜(e)、補修工程)。
【0024】
図2(a)〜(d)および図1(a)〜(e)は、本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、基板2上に、多層膜3と、キャッピング層4と、第1吸収層5および第2吸収層6を含む吸収層積層体7とが積層された反射型マスクブランクス1Cを準備する。次に、図示しないが、吸収層積層体7上にフォトレジストパターンを形成し、フォトレジストパターンの開口部に位置する吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をプラズマエッチングし、フォトレジストパターンを除去して、図2(b)に示すように吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をパターニングする。吸収層積層体7の加工の際には、図2(b)および図3(a)に示すように、吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)の余剰に起因する黒欠陥部20が形成される場合がある。なお、図2(b)は図3(a)のA−A線断面図であり、図3(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)のパターニング後、黒欠陥部20が検出された場合には、黒欠陥部20を修正するために、図2(c)に示すように、黒欠陥部20に、アシストガス21を吹きつけながら、FIBまたはEB22を照射して、黒欠陥部20に位置する吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をエッチングする。その結果、図2(d)に示すように、黒欠陥部20に位置する吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)が除去される。吸収層積層体7においては、上述したように、第2吸収層6が第1吸収層5の材料の酸化膜であったり、第2吸収層6が検査光のDUVに対して反射率が低い材料を含有し、第1吸収層5が露光光のEUVに対して吸収率が高い材料を含有していたりする。そのため、第1吸収層5および第2吸収層6のエッチング速度が異なり、それにより、図2(d)および図3(b)に示すように吸収層積層体7の側面において第1吸収層5が第2吸収層6よりも過度に除去されてしまう場合がある。すなわち、サイドエッチングが発生する場合がある。これは、吸収層積層体7の側面にて第1吸収層5が第2吸収層6よりも欠落している側面欠陥部10aとなる。なお、図2(d)は図3(b)のB−B線断面図であり、図3(b)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
そこで本発明においては、側面欠陥部10aを補修するために、上述の図1(a)〜(e)に示すように、反射型マスク1Aの側面欠陥部10aに位置する吸収層積層体7を、走査型プローブ顕微鏡の探針11で除去し(側面欠陥部除去工程)、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bの上部に、原料ガス12を吹きつけながらFIBまたはEB13を照射して、堆積膜8を形成する(堆積膜形成工程)。これにより、側面欠陥部10aが補修された反射型マスク1Bが得られる(補修工程)。
【0025】
図4(a)〜(e)は、本発明の反射型マスクの製造方法の他の例を示す工程図である。まず、図4(a)に示すように、基板2上に、多層膜3と、キャッピング層4と、第1吸収層5および第2吸収層6を含む吸収層積層体7とが積層された反射型マスクブランクス1Cを準備する。反射型マスクブランクスの製造時には、異物が付着したり混入したりする場合がある。例えば図4(a)に示すように、第1吸収層5に異物25が混入する場合がある。このような反射型マスクブランクス1Cを用いて、図4(b)に示すように吸収層積層体7(第1吸収層5および第2吸収層6)をパターニングすると、吸収層積層体7のパターニング過程において異物25が除去されて、図4(c)に示すように吸収層積層体7の側面において第1吸収層5が第2吸収層6よりも欠落してしまう場合がある。これは、吸収層積層体7の側面にて第1吸収層5が第2吸収層6よりも欠落している側面欠陥部10aとなる。
そこで本発明においては、側面欠陥部10aを補修するために、上述の図1(a)〜(e)と同様に、図4(c)〜(e)に示すように、反射型マスク1Aの側面欠陥部10aに位置する吸収層積層体7を、走査型プローブ顕微鏡の探針11で除去し(側面欠陥部除去工程)、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bの上部に、原料ガス12を吹きつけながらFIBまたはEB13を照射して、堆積膜8を形成する(堆積膜形成工程)。これにより、側面欠陥部10aが補修された反射型マスク1Bが得られる(補修工程)。
【0026】
このように本発明においては、反射型マスクが、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する場合に、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去し、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成することで、側面欠陥部を補修し、良好な転写特性を備える反射型マスクを製造することが可能である。したがって本発明においては、反射型マスクが側面欠陥部を有する場合であっても、反射型マスクの転写特性を回復することができるので、反射型マスクの歩留まりを大幅に向上させることが可能となる。
【0027】
以下、本発明の反射型マスクの製造方法における各工程について説明する。
【0028】
1.補修工程
本発明における補修工程は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程とを有する工程である。
【0029】
以下、補修工程における側面欠陥部除去工程および堆積膜形成工程、ならびに側面欠陥部を有する反射型マスクについて説明する。
【0030】
(1)側面欠陥部除去工程
本発明における側面欠陥部除去工程は、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、上記側面欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する工程である。
【0031】
側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する方法としては、吸収層積層体を局所的に除去することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、走査型プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)の探針で削る方法、エネルギービームを照射する方法などを用いることができる。
【0032】
中でも、SPMの探針で除去する方法が好ましい。この方法では、サイドエッチングが起こらないからである。また、エネルギービームを照射する方法に比べて、吸収層積層体を除去する際の反射型マスクへのダメージを低減することができるからである。一般的にSPMは高さ方向の制御が困難であることから、反射型マスク表面を引っ掻いてしまうおそれがあるが、本発明における側面欠陥部では下層の第1吸収層が上層の第2吸収層よりも欠落しているため、そのような不具合が起こることなく修正が可能である。
【0033】
SPMの探針で除去する方法の場合、SPMの探針としては、特に限定されるものではなく、一般的に使用されている探針を用いることができ、例えばダイヤモンド探針等が挙げられる。
【0034】
エネルギービームを照射する方法の場合、エネルギービームとしては、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を局所的にエッチングできるものであれば特に限定されるものではないが、FIBまたはEBが好ましく用いられる。これらは、高度な微細加工が可能であり、微細な側面欠陥部にも対応できるからである。
この方法の場合、側面欠陥部に位置する吸収層積層体にアシストガスを供給しながらエネルギービームを照射することにより、吸収層積層体をガスアシストエッチングしてもよい。エネルギービームのみを用いる場合に比較して、吸収層積層体を良好にエッチングすることができる。FIBの場合、アシストガスを用いてもよく用いなくてもよい。一方、EBの場合、アシストガスが必要である。
エネルギービームの照射条件としては、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を局所的にエッチングでき、かつ、サイドエッチングが発生しないような条件であれば特に限定されるものではなく、適宜選択される。
従来、黒欠陥を修正する際に、サイドエッチングが発生しないように、吸収層のエッチングおよび酸化を繰り返し行う場合、修正に時間および手間を要するなどの不具合があった。これに対し本発明においては、側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する際に、サイドエッチングが発生しないような条件に設定したとしても、側面欠陥部では下層の第1吸収層が上層の第2吸収層よりも欠落しており、第2吸収層が第1吸収層の材料の酸化膜である場合等には第2吸収層の厚みは薄いので、多大な時間および手間を要することなく修正が可能である。
【0035】
側面欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する際、図示しないが側面欠陥部に対して同等の大きさで吸収層積層体を除去してもよく、図5(a)、(b)に例示するように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を大きく除去してもよく、図6(a)、(b)に例示するように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を小さく除去してもよい。側面欠陥部を確実に補修するためには、側面欠陥部に対して吸収層積層体が大きく除去されるように設定することが好ましいが、側面欠陥部では第1吸収層は欠落しているものの第2吸収層は存在するので、側面欠陥部の位置を正確に検出するのが困難となる場合がある。そのため、側面欠陥部に対して吸収層積層体が小さく除去されることもある。
なお、図5(b)は図5(a)のC−C線断面図であり、図6(b)は図6(a)のD−D線断面図であり、図5(a)および図6(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
【0036】
吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部の形状としては、本発明における補修工程により反射型マスクの転写特性を回復することができれば特に限定されるものではなく、例えば側面欠陥部の形状と同じであってもよく異なっていてもよい。
【0037】
(2)堆積膜形成工程
本発明における堆積膜形成工程は、上記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する工程である。
【0038】
堆積膜の形成方法としては、通常、原料ガスを供給しながらエネルギービームを照射する方法が用いられる。
原料ガスとしては、FIBまたはEBを用いたCVD法を適用する場合に一般的に用いられるガスを使用することができる。例えば、フェナントレン、ナフタレン、ピレンなどの炭化水素系のガス、タングステンカルボニル(W(CO)6)、クロムカルボニル(Cr(CO)6)、コバルトカルボニル(Co2(CO)8)、鉄カルボニル(Fe(CO)5)等の金属カルボニル、Trimethyl(methylcyclopentadienyl)platinum(MeCpPt(Me)3)などの金属含有ガス、テトラエトキシシラン(TEOS)、1,3,5,7-Tetramethylcyclotetra-siloxaneなどのシリコン含有ガスを用いることができる。炭素を含む堆積膜は、形状制御が容易であるという利点を有する。また、タングステンやクロムなどの金属を含む堆積膜は、高い遮光性を得ることができるという利点を有する。
エネルギービームとしては、側面欠陥部除去部に局所的に堆積膜を形成することができるものであれば特に限定されないが、FIBまたはEBが好ましく用いられる。これらは、高度な微細加工が可能であり、微細な側面欠陥部除去部にも対応できるからである。中でも、ダメージを低減できることから、EBが好適である。
【0039】
堆積膜を形成する際、側面欠陥部除去部に対して同等の大きさで堆積膜を形成してもよく、側面欠陥部除去部に対して堆積膜を大きく形成してもよく、側面欠陥部除去部に対して堆積膜を小さく形成してもよい。側面欠陥部を確実に補修するためには、側面欠陥部除去部に対して堆積膜が大きく形成されるように設定することが好ましい。
また、堆積膜を形成する際、側面欠陥部に対して同等の大きさで堆積膜を形成してもよく、側面欠陥部に対して堆積膜を大きく形成してもよく、側面欠陥部に対して堆積膜を小さく形成してもよい。例えば図5(a)、(b)に示すように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を大きく除去した場合であって、図7(a)、(b)に例示するように側面欠陥部除去部10bに対して同等の大きさで堆積膜8を形成した場合には、側面欠陥部10aに対して堆積膜8は大きく形成される。また、例えば図6(a)、(b)に示すように側面欠陥部10aに対して吸収層積層体7を小さく除去した場合であって、図8(a)、(b)に例示するように側面欠陥部除去部10bに対して同等の大きさで堆積膜8を形成した場合には、側面欠陥部10aに対して堆積膜8は小さく形成される。側面欠陥部を確実に補修するためには、側面欠陥部に対して堆積膜が大きく形成されるように設定することが好ましいが、側面欠陥部では第1吸収層は欠落しているものの第2吸収層は存在するので、側面欠陥部の位置を正確に検出するのが困難となる場合がある。そのため、側面欠陥部に対して堆積膜が小さく形成されることもある。このように側面欠陥部に対して堆積膜が小さく形成されている場合であっても、良好な転写特性を示す反射型マスクを得ることは可能である。
なお、図7(b)は図7(a)のE−E線断面図であり、図8(b)は図8(a)のF−F線断面図であり、図7(a)および図8(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
【0040】
堆積膜の厚みとしては、所望のEUVの吸収率が得られる厚みであれば特に限定されるものではなく、堆積膜の組成や、後述するように多層膜と吸収層積層体との間にバッファ層が形成されている場合にはバッファ層の厚みなどに応じて適宜選択される。炭化水素系のガスを用いて堆積膜を形成する場合、堆積膜の厚みは、例えば、5nm〜200nm程度とすることができ、好ましくは50nm〜150nmの範囲内である。堆積膜の厚みが薄すぎると、所望のEUVの吸収率を得ることが困難であり、堆積膜の厚みが厚すぎると、成膜に時間を要するからである。
【0041】
(3)側面欠陥部を有する反射型マスク
本発明における補修工程に用いられる反射型マスクは、基板と、上記基板上に形成された多層膜と、上記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、上記吸収層積層体が上記多層膜上に形成された第1吸収層と上記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、上記吸収層積層体の側面にて上記第1吸収層が上記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有するものである。
以下、反射型マスクにおける各構成について説明する。
【0042】
(a)側面欠陥部
本発明における反射型マスクの側面欠陥部は、吸収層積層体が垂直側面を有しておらず、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落しているものである。
【0043】
側面欠陥部は、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落しているものであればよく、側面欠陥部の形成要因としては特に限定されるものではない。例えば、図2(b)〜(d)に示すように側面欠陥部10aが黒欠陥部20の修正の際に形成されたものであってもよく、図4(a)〜(c)に示すように側面欠陥部10aが反射型マスクブランクス1Cの製造時に付着または混入した異物25に因るものであってもよく、図示しないが側面欠陥部が吸収層積層体(第1吸収層および第2吸収層)のパターニングの際に形成されたものであってもよい。中でも、側面欠陥部は黒欠陥部を修正する際に形成されたものであることが好ましい。黒欠陥部を修正する際にはサイドエッチングが発生しやすいため、歩留まり低下の原因となるが、本発明を適用することにより歩留まりを高めることができるからである。また、本発明においては側面欠陥部を補修することができるため、従来のように長時間を要してサイドエッチングが生じないように黒欠陥部の修正を行う必要がなく、効率良く反射型マスクを製造することができるからである。
【0044】
側面欠陥部の大きさとしては、特に限定されるものではなく、例えば、側面欠陥部の反射領域側の端部に対して垂直な方向の距離は、10nm〜500nm程度である。側面欠陥部の上記距離が短すぎるものは、側面欠陥部が存在していても転写特性に大きな影響を及ぼさない場合があり、側面欠陥部の上記距離が長すぎるものは、第1吸収層が欠落しているために第2吸収層の自己支持性が損なわれる場合がある。
なお、側面欠陥部の反射領域側の端部に対して垂直な方向の距離とは、図9(a)、(b)に示すような側面欠陥部10aの反射領域側の端部に対して垂直な方向の距離dをいう。側面欠陥部が黒欠陥部を修正する際に形成されたものである場合には、側面欠陥部10aの上記距離dは、サイドエッチング量とも称される。
なお、図9(b)は図9(a)のG−G線断面図であり、図9(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
【0045】
(b)吸収層積層体
本発明における反射型マスクに用いられる吸収層積層体は、多層膜上にパターン状に形成され、多層膜上に形成された第1吸収層と第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有するものであり、反射型マスクを用いたEUVリソグラフィにおいてEUVを吸収するものである。
【0046】
第1吸収層の材料としては、EUVを吸収可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Ta、TaN、TaSi、TaSiN、TaGe、TaGeN、TaB、TaBN、Taを主成分とする材料などのTaまたはTa合金を含むTa系材料や、Cr、Crを主成分としN、O、Cから選ばれる少なくとも1つの成分を含有する材料などのCrを含むCr系材料が用いられる。さらに、WN、TiN等も使用可能である。
【0047】
第2吸収層の材料としては、EUVを吸収可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、第2吸収層は、上記第1吸収層の材料の酸化膜であってもよく、上記第1吸収層とは別に成膜されたものであってもよい。
中でも、第2吸収層の材料は、EUVリソグラフィ用反射型マスクのDUVによるパターン欠陥検査を容易にするために、検査光のDUVに対する反射率が低いものであることが好ましい。このような第2吸収層の材料としては、例えば、上記Ta系材料の酸化物や、Cr(クロム)、SiO(酸化ケイ素)などが挙げられる。
【0048】
本発明においては、上述したように側面欠陥部が黒欠陥修正工程にて形成されたものであることが好ましいことから、第2吸収層の材料は、上記第1吸収層の材料よりもエッチング速度が遅いものであることが特に好ましい。このような第2吸収層の材料としては、上記第1吸収層の材料に応じて適宜選択される。第1吸収層および第2吸収層の材料の好ましい組み合わせとしては、具体的に、第1吸収層が上記Ta系材料を含有し、第2吸収層が上記Ta系材料の酸化物を含有する場合などを挙げることができる。
【0049】
第1吸収層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、CVD法、蒸着法などが用いられる。
【0050】
第2吸収層の成膜方法としては、第1吸収層および第2吸収層の材料に応じて適宜選択される。例えば、第2吸収層が第1吸収層の材料の酸化物を含有する場合、第2吸収層は第1吸収層の材料の自然酸化膜であってもよく、第1吸収層表面を酸化して第2吸収層(酸化膜)を形成してもよく、第1吸収層成膜時と同じ原料を用い、酸素を導入しながら成膜して第2吸収層(酸化膜)を形成してもよい。具体的に、第1吸収層が上記Ta系材料を含有し、第2吸収層が上記Ta系材料の酸化物を含有する場合、TaまたはTa合金は非常に酸化されやすいことから、第2吸収層は第1吸収層の材料の自然酸化膜となり得る。また、第2吸収層が第1吸収層の材料の酸化物を含有しない場合、第2吸収層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、CVD法、蒸着法などが用いられる。
【0051】
第1吸収層および第2吸収層をパターン状に形成する方法としては、通常、フォトリソグラフィ法が用いられる。具体的には、多層膜が形成された基板上に第1吸収層および第2吸収層を形成し、第2吸収層上にフォトレジスト層を形成し、フォトレジスト層をパターニングし、フォトレジストパターンをマスクとして第1吸収層および第2吸収層をエッチングし、残存するフォトレジストパターンを除去して、第1吸収層および第2吸収層をパターン状に形成する。フォトリソグラフィ法としては、一般的な方法を用いることができる。
【0052】
(c)多層膜
本発明における反射型マスクに用いられる多層膜は、基板上に形成されるものである。
多層膜の材料としては、一般的に反射型マスクの多層膜に使用されるものを用いることができ、中でも、EUVに対する反射率が極めて高い材料を用いることが好ましい。反射型マスク使用時においてコントラストを高めることができるからである。EUVを反射する多層膜としては、通常、Mo/Siの周期多層膜が用いられる。また、特定の波長域で高い反射率が得られる多層膜として、例えば、Ru/Siの周期多層膜、Mo/Beの周期多層膜、Mo化合物/Si化合物の周期多層膜、Si/Nbの周期多層膜、Si/Mo/Ruの周期多層膜、Si/Mo/Ru/Moの周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ruの周期多層膜等も用いることができる。
【0053】
多層膜を構成する各層の膜厚や、各層の積層数としては、使用する材料に応じて異なるものであり、適宜調整される。例えば、Mo/Siの周期多層膜としては、数nm程度の厚さのMo膜とSi膜とが40層〜60層ずつ積層された多層膜を用いることができる。
【0054】
多層膜の厚みとしては、例えば280nm〜420nm程度とすることができる。
多層膜の成膜方法としては、例えば、イオンビームスパッタ法やマグネトロンスパッタ法などが用いられる。
【0055】
(d)キャッピング層
本発明に用いられる反射型マスクにおいては、多層膜と吸収層積層体との間にキャッピング層が形成されていてもよい。キャッピング層は、多層膜の酸化防止や、反射型マスクの洗浄時の保護のために設けられるものである。キャッピング層が形成されていることにより、多層膜の最表面がSi膜やMo膜である場合には、Si膜やMo膜が酸化されるのを防ぐことができる。Si膜やMo膜が酸化されると、多層膜の反射率が低下するおそれがある。
【0056】
キャッピング層の材料としては、上記機能を発現するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、SiやRu等が挙げられる。
また、キャッピング層の厚みとしては、例えば2nm〜15nm程度とすることができる。
キャッピング層の成膜方法としては、スパッタリング法等を挙げることができる。
【0057】
(e)バッファ層
本発明に用いられる反射型マスクにおいては、多層膜と吸収層積層体との間にバッファ層が形成されていてもよい。バッファ層は、下層の多層膜に損傷を与えるのを防止するために設けられるものである。バッファ層が形成されていることにより、吸収層積層体をドライエッチング等の方法でパターンエッチングする際に、下層の多層膜がダメージを受けるのを防止することができる。
本発明において、多層膜上に上記キャッピング層が形成されている場合には、通常、多層膜上にキャッピング層およびバッファ層の順に積層される。
【0058】
バッファ層の材料としては、耐エッチング性が高いものであればよく、通常、吸収層積層体とエッチング特性の異なる材料、すなわち吸収層積層体とのエッチング選択比が大きい材料が用いられる。バッファ層および吸収層積層体のエッチング選択比は5以上であることが好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上である。さらに、バッファ層の材料としては、低応力で、平滑性に優れた材料であることが好ましい。特にバッファ層の平滑性は、0.3nmRms以下であることが好ましい。このような観点から、バッファ層の材料は、微結晶またはアモルファス構造であることが好ましい。
このようなバッファ層の材料としては、例えば、SiO2、Al2O3、Cr、CrN等が挙げられる。
【0059】
また、バッファ層の厚みとしては、例えば5nm〜100nm程度とすることができる。
バッファ層の成膜方法としては、例えば、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法などが挙げられる。SiO2を用いる場合は、RFマグネトロンスパッタ法によりSiO2ターゲットを用いてArガス雰囲気下で、多層膜上にSiO2を成膜するのが好ましい。
【0060】
(f)基板
本発明における反射型マスクに用いられる基板としては、一般的に反射型マスクの基板に使用されるものを用いることができ、例えば、ガラス基板や金属基板を使用することができる。中でも、ガラス基板が好ましく用いられる。ガラス基板は、良好な平滑性および平坦度が得られるので、特に反射型マスク用基板として好適である。ガラス基板の材料としては、例えば、石英ガラス、低熱膨張係数を有するアモルファスガラス(例えばSiO2−TiO2系ガラス等)、β石英固溶体を析出した結晶化ガラス等が挙げられる。また、金属基板の材料としては、例えば、シリコン、Fe−Ni系のインバー合金等が挙げられる。
【0061】
基板は、反射型マスクの高反射率および転写精度を得るために、平滑性が0.2nmRms以下であることが好ましく、また平坦度が100nm以下であることが好ましい。なお、平滑性を示す単位Rmsは、二乗平均平方根粗さであり、原子間力顕微鏡を用いて測定することができる。また、平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を示す値である。この値は、基板表面を元に最小二乗法で定められる平面を焦平面としたとき、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある最も低い位置の高低差の絶対値である。また、上記平滑性は10μm角エリアでの平滑性であり、上記平坦度は142mm角エリアでの平坦度である。
【0062】
また、基板の厚みとしては、例えば6mm〜7mm程度とすることができる。
【0063】
2.黒欠陥修正工程
本発明の反射型マスクの製造方法は、上記補修工程前に、上記吸収層積層体の余剰に起因する黒欠陥部に位置する上記吸収層積層体を除去する黒欠陥修正工程を有することが好ましい。上述したように、黒欠陥部を修正する際にはサイドエッチングが発生しやすいため、歩留まり低下の原因となるが、本発明を適用することにより歩留まりを高めることができるからである。また、本発明においてはサイドエッチングのような側面欠陥部を補修することができるため、従来のように長時間を要してサイドエッチングが生じないように黒欠陥部の修正を行う必要がなく、効率良く反射型マスクを製造することができるからである。
【0064】
黒欠陥部に位置する吸収層積層体を除去する方法としては、エネルギービームを照射することで吸収層積層体を局所的にエッチングすることができる方法であれば特に限定されるものではない。中でも、黒欠陥部に位置する吸収層積層体にアシストガスを供給しながらエネルギービームを照射することにより、吸収層積層体をガスアシストエッチングする方法が好ましく用いられる。エネルギービームのみを用いる場合に比較して、吸収層積層体を良好にエッチングすることができるからである。また、ガスアシストエッチングではサイドエッチングが発生しやすいため、本発明を適用するのが好ましい。
【0065】
エネルギービームとしては、黒欠陥部に位置する吸収層積層体を局所的にエッチングできるものであれば特に限定されるものではないが、FIBまたはEBが好ましく用いられる。これらは、高度な微細加工が可能であり、微細な黒欠陥部にも対応できるからである。
【0066】
3.側面欠陥部検査工程
本発明の反射型マスクの製造方法は、上記補修工程前に、上記反射型マスクの上記側面欠陥部を検査する側面欠陥部検査工程を有することが好ましい。上記黒欠陥修正工程が行われる場合には、上記黒欠陥修正工程後に、側面欠陥部検査工程が行われる。
【0067】
側面欠陥部の検査方法としては、吸収層積層体の側面にて第1吸収層が第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を検出できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、電子顕微鏡を用いる方法が挙げられる。
【0068】
4.その他の工程
本発明の反射型マスクの製造方法は、上記の補修工程、黒欠陥修正工程、および側面欠陥部検査工程の他に、反射型マスクブランクスを準備する準備工程、吸収層をパターニングする吸収層パターニング工程などを有していてもよい。
【0069】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
(1)シミュレーション1
本発明の効果をシミュレーションにより詳しく検証した。シミュレータは、Panoramic Technology社製EM-Suiteを使用した。またシミュレーションは、実際のEUVマスク構造およびEUV転写装置の光学系をモデルに実施した。
EUVマスクの構造は、図10(a)、(b)に示すように、酸化珪素からなる基板2上に、モリブデンおよび珪素(膜厚2.8nm/4.2nm)の40対からなる多層膜3と、珪素からなるキャッピング層4(膜厚11nm)とが順に積層され、キャッピング層4上に、線幅225nmのラインパターンの吸収層積層体7(窒化タンタルからなる第1吸収層5およびタンタルの酸化物からなる第2吸収層6)(膜厚51nm)が形成された構造とした。さらに、側面欠陥部10a(サイドエッチング発生箇所)として、サイドエッチング量31を0〜100nmの範囲で変化させた。なお、図10(b)は図10(a)のH−H線断面図であり、図10(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。
転写条件は、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFET(Small Field Exposure Tool)の光学系に設定し、NA=0.3、σ=0.3/0.7(inner/outer)とした。転写寸法は、ウェハ上へ5分の1縮小露光した光学像から寸法を算出した。
【0071】
図11にサイドエッチング量31と転写寸法のズレ量との関係を示す。なお、吸収層積層体7の線幅は225nmであり、縮小倍率は5分の1であるので、図11において転写寸法のズレ量=0nmは転写寸法=45nmを表す。図11から読み取ると、サイドエッチング量31が30nm以上となると転写寸法が5%変動することが予想される。そのため、30nm以上のサイドエッチングが発生した場合にはEUV転写特性の回復が必要となる。
【0072】
(2)シミュレーション2
次に、本発明における補修工程がEUV転写特性の回復に有効であることをシミュレーションにより検証した。
シミュレーションに使用した堆積膜の位置と形状は、図10(a)、(b)および図12(a)、(b)に示すように、側面欠陥部10a(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体7を除去し、吸収層積層体7が除去された側面欠陥部除去部10bに矩形の堆積膜8を形成したモデルで検証した。なお、図12(b)は図12(a)のI−I線断面図であり、図12(a)において多層膜およびキャッピング層は省略されている。EUVマスクのその他の構造は、上記の図10(a)、(b)に示すEUVマスクの構造と同様とした。
シミュレーション条件は上記シミュレーション1と同様とした。堆積膜8は炭化水素として光学定数を指定した。
【0073】
図13に、サイドエッチング量31を30nm,50nm,75nm,100nmとした条件における、堆積膜厚と転写寸法のズレ量との関係を示す。なお、吸収層積層体7の線幅は225nmであり、縮小倍率は5分の1であるので、図13において転写寸法のズレ量=0nmは転写寸法=45nmを表す。
シミュレーションの結果、サイドエッチング量毎に堆積膜を適切な膜厚で形成することで、転写寸法のズレ量はゼロ、つまり正常部と同等な転写寸法に近づき、本発明における補修工程が側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)のEUV転写特性の回復に有効であることが確認された。
シミュレーション結果によると、サイドエッチング量が50nm発生した場合は、堆積膜を30nm程度堆積することでEUV転写寸法のズレ量を5%以内とすることができる。同様に、サイドエッチング量が100nm発生した場合は、堆積膜を40nm程度、望ましくは50nm程度堆積することで、EUV転写寸法のズレ量を5%以内とすることができる。なお、シミュレーションでは堆積膜として炭化水素を想定したが、より遮光能力の高いタングステンやクロムなどの金属含有膜であってもよい。
【0074】
[実施例2]
まず、酸化珪素からなる基板上に、モリブデンと珪素(膜厚2.8nm/4.2nm)の40対からなる多層膜と、珪素からなるキャッピング層(膜厚11nm)とが順に積層され、キャッピング層上に吸収層積層体(窒化タンタルからなる第1吸収層およびタンタルの酸化物からなる第2吸収層)(膜厚51nm)がパターン状に形成された反射型マスクを準備した。第1吸収層および第2吸収層のパターンは、線幅225nmのラインパターンであり、黒欠陥部として幅100nm、長さ300nmサイズのラインが膨らんだ黒欠陥部を形成した。
次に、黒欠陥部に、フッ化キセノンからなるエッチング用ガスを導入しながらFIBを照射するガスアシストエッチングにより、黒欠陥部をエッチング除去した。FIB装置には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製フォトマスク修正用FIB装置SIR7(ガリウムイオン、加速電圧15kV)を使用した。黒欠陥部修正箇所を電子顕微鏡で観察したところ、吸収層積層体にサイドエッチングが発生していることが確認された。このとき、サイドエッチング量は100nmであった。
次に、上記FIB装置を用いて、エッチングガスを導入しながらFIBを照射することで、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)にある吸収層積層体を除去した。
次いで、上記FIB装置を用いて、吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に、原料ガスを導入しながらFIBを照射することで、堆積膜を形成した。このとき、原料ガスにはフェナントレンを使用した。上記実施例1で算出したとおり、堆積膜を50nmの膜厚で堆積した。
【0075】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【0076】
[実施例3]
黒欠陥部の修正、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体の除去、および堆積膜の形成において、FIBに替えてEBを利用したこと以外は、実施例2と同様にした。
EB装置には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製FIB−SEMダブルビーム装置XVision200を使用した。このとき、EBの加速電圧は1keVとし、原料ガスにはフェナントレンを使用した。
【0077】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【0078】
[実施例4]
黒欠陥部の修正においてFIBを利用し、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体の除去においてFIBに替えて走査型プローブ顕微鏡の探針を利用し、堆積膜の形成においてFIBに替えてEBを利用したこと以外は、実施例2と同様にした。
走査型プローブ顕微鏡には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製マスク欠陥修正装置SPM6300を使用した。
EB装置には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製FIB−SEMダブルビーム装置XVision200を使用した。このとき、EBの加速電圧は1keVとし、原料ガスにはフェナントレンを使用した。
【0079】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【0080】
[実施例5]
まず、酸化珪素からなる基板上に、モリブデンと珪素(膜厚2.8nm/4.2nm)の40対からなる多層膜と、珪素からなるキャッピング層(膜厚11nm)とが順に積層され、キャッピング層上に吸収層積層体(窒化タンタルからなる第1吸収層およびタンタルの酸化物からなる第2吸収層)(膜厚51nm)がパターン状に形成された反射型マスクを準備した。第1吸収層および第2吸収層のパターンは、線幅225nmのラインパターンである。
反射型マスクを、(株)ニューフレアテクノロジー社製、マスクパターン欠陥検査装置NPI−6000EUVαを使用してパターン欠陥検査を行ったところ、線幅225nmのラインパターンに欠陥が検出された。この欠陥を電子顕微鏡で観察したところ、吸収層積層体に幅75nm、長さ75nmのサイドエッチングが確認された。
次に、実施例2と同様にして、側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)にある吸収層積層体を除去し、堆積膜を形成した。この際、フェナントレンを原料ガスとしてFIBを照射することで、膜厚50nmの堆積膜を形成した。
【0081】
側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所を含むラインパターンを、キヤノン(株)社製EUV露光装置SFETを使用して、ウェハ上に塗布したレジストへ5分の1縮小転写した。次に、レジストを現像することでレジストパターンを得た。
このレジストパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ社製SEM型寸法測定機(CG4000)にて観察することで、補修箇所の転写特性評価を行った。側面欠陥部(サイドエッチング発生箇所)に位置する吸収層積層体を除去して、堆積膜を形成した箇所は、正常なパターンと同等のレジストパターンが形成されていることをSEM観察で確認した。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B … 反射型マスク
1C … 反射型マスクブランクス
2 … 基板
3 … 多層膜
4 … キャッピング層
5 … 第1吸収層
6 … 第2吸収層
7 … 吸収層積層体
8 … 堆積膜
10a … 側面欠陥部
10b … 側面欠陥部除去部
11 … 走査型プローブ顕微鏡の探針
12 … 原料ガス
13 … FIBまたはEB
20 … 黒欠陥部
21 … アシストガス
22 … FIBまたはEB
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された多層膜と、前記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、前記吸収層積層体が前記多層膜上に形成された第1吸収層と前記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、前記吸収層積層体の側面にて前記第1吸収層が前記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、前記側面欠陥部に位置する前記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、
前記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程と
を有する補修工程を備えることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項2】
前記補修工程前に、前記吸収層積層体の余剰に起因する黒欠陥部に位置する前記吸収層積層体を除去する黒欠陥修正工程を有し、前記側面欠陥部が前記黒欠陥修正工程にて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクの製造方法。
【請求項3】
前記側面欠陥部除去工程では、走査型プローブ顕微鏡の探針で、前記側面欠陥部に位置する前記吸収層積層体を除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射型マスクの製造方法。
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された多層膜と、前記多層膜上にパターン状に形成された吸収層積層体とを有し、前記吸収層積層体が前記多層膜上に形成された第1吸収層と前記第1吸収層上に形成された第2吸収層とを有し、前記吸収層積層体の側面にて前記第1吸収層が前記第2吸収層よりも欠落している側面欠陥部を有する反射型マスクの、前記側面欠陥部に位置する前記吸収層積層体を除去する側面欠陥部除去工程と、
前記吸収層積層体が除去された側面欠陥部除去部に堆積膜を形成する堆積膜形成工程と
を有する補修工程を備えることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項2】
前記補修工程前に、前記吸収層積層体の余剰に起因する黒欠陥部に位置する前記吸収層積層体を除去する黒欠陥修正工程を有し、前記側面欠陥部が前記黒欠陥修正工程にて形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクの製造方法。
【請求項3】
前記側面欠陥部除去工程では、走査型プローブ顕微鏡の探針で、前記側面欠陥部に位置する前記吸収層積層体を除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の反射型マスクの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−238801(P2011−238801A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109607(P2010−109607)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基板(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代半導体材料・プロセス基板(MIRAI)プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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